説明

弾性ローラの製造方法

【課題】芯金の下端面の加工の状態によらず、芯金の下端面をより確実に支持することにより、高精度な弾性ローラを低コストで得る方法を提供すること。
【解決手段】押出機に連結されたクロスヘッドに連続的に複数の芯金を供給し、各芯金を鉛直下方に搬送しつつ、各芯金の周囲を原料ゴム組成物で被覆する工程を有する弾性ローラの製造方法であって、該工程は該クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面を芯金支持部材の支持面にて支持しつつ、その芯金を鉛直下方に搬送する工程を含み、
該芯金支持部材の支持面は、該芯金の搬送方向に対して傾斜自在に構成され、該芯金支持部材は、該クロスヘッドから押出されてきた芯金下端面が該芯金支持部材の支持面に対して傾斜しているときに該芯金下端面と該芯金支持部材の支持面とが面で接触した状態にてその芯金を支持可能であることを特徴とする弾性ローラの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置等に用いられる弾性ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置等において、帯電ローラや搬送ローラ等に用いられる、芯金の周囲がゴムで被覆された弾性ローラを低コストで製造する方法として特許文献1には以下の方法が記載されている。すなわち、クロスヘッドに連続的に芯金を供給しつつ、クロスヘッドに接続された押出成形機からゴム熔融物をクロスヘッドに供給し、クロスヘッドから芯金とゴム組成物とを共押出しすることにより芯金の周囲をゴム組成物で被覆する工程を有する方法である。このとき、クロスヘッドから鉛直下方に押出されてきた芯金を自由落下させてしまうと、芯金の周囲を被覆しているゴム組成物の被膜が芯金の自重により部分的に伸ばされ、厚みの管理が困難となる場合がある。そのため、クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面を支持部材で支持しつつ、その芯金を鉛直下方に搬送することが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−227754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、芯金の中にはその端面が芯金周面に対して直角に加工されていないものがある。かかる芯金の端面を特許文献1に記載されている支持部材で支持しようとした場合、芯金を点で支持することとなり、鉛直下方に搬送中に芯金の位置がずれてしまうことがあった。クロスヘッドから連続的に押出されてくる複数本の芯金は、それらの外周を被覆しているゴム組成物の層で連結されている。このため、当該ずれによる振動が、まさにクロスヘッドの出口においてゴム組成物と共に共押出しされている状態にある芯金に伝わり、この芯金の周囲を被複しているゴム組成物の層の厚みが不均一となるおそれがある。
【0005】
そこで本発明の目的は、芯金の下端面の加工の状態によらず、芯金の下端面をより確実に支持することにより、高精度な弾性ローラを低コストで得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性ローラの製造方法は、押出機に連結されたクロスヘッドに連続的に複数の芯金を供給し、各芯金を鉛直下方に搬送しつつ、各芯金の周囲を原料ゴム組成物で被覆する工程を有する弾性ローラの製造方法であって、
該工程は、該クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面を芯金支持部材の支持面にて支持しつつ、その芯金を鉛直下方に搬送する工程を含み、
該芯金支持部材の支持面は、該芯金の搬送方向に対して傾斜自在に構成され、該芯金支持部材は、該クロスヘッドから押出されてきた芯金下端面が該芯金支持部材の支持面に対して傾斜しているときに、該芯金下端面と該芯金支持部材の支持面とが面で接触した状態にてその芯金を支持可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、芯金の下端面の加工の状態によらず、芯金の下端面をより確実に支持することにより、高精度な弾性ローラを低コストで得る方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】接触帯電方式の転写手段を用いた電子写真装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】弾性ローラを模式的に示す図である。
【図3】弾性ローラの製造装置を模式的に示した図である。
【図4】押出機に連結されたクロスヘッドの断面模式図である。
【図5】(a)は、従来から知られている芯金支持部材を模式的に示した図であり、(b)は、芯金下端面と芯金支持面との接触面積が小さくなる場合を模式的に示した図である。
【図6】本発明に係る芯金支持部材を模式的に示した図であり、(a)は、圧縮バネ式、(b)は、球体保持式、(c)は、スポンジ式の傾斜部材を持つ芯金支持部材を模式的に示した図である。
【図7】芯金の振れ測定を模式的に示した図である。
【図8】芯金下端面と芯金支持面のずれ測定を模式的に示した図である。
【図9】弾性ローラの切断を模式的に示した図であり、(a)は切断前、(b)は切断後の弾性ローラを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明により、クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面と支持部材との支持状態に与える芯金下端面の傾きの影響を緩和することができる。その結果、芯金の鉛直下方への一連の搬送をより安定して行なうことができるため、高精度な弾性ローラを安定的に生産し得る。本発明により得られる弾性ローラは、例えば図1に示すような電子写真装置等において帯電ローラおよび搬送ローラ等に用いることができる。図1の電子写真装置は、矢印方向に回転する像担持体としての感光体11、その感光体11を一様に帯電するための帯電部材12、感光体11上のトナー像を記録媒体Pに転写する転写ローラ14、感光体11に接触配置される現像ローラ13を有する。また、弾性ローラ23は、図2に示すように芯金21と、原料ゴム組成物を用いて作製された導電性弾性層22とからなることができる。
【0010】
以下に本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
<クロスヘッド押出成形装置>
図3に本発明の弾性ローラの製造方法に適用可能なクロスヘッド押出成形装置の一例を示す。この装置は、後述する押出機60、クロスヘッド40、芯金供給ユニット50、および芯金引取ユニット70を有する。以下にこれらを説明する。
【0012】
[押出機]
押出機60は、図4に示すように原料ゴム組成物1を投入する投入口61と原料ゴム組成物1を可塑化および混練しながら搬送するためのシリンダ62とスクリュ63、さらに可塑化および混練された原料ゴム組成物を排出するための排出口64を有している。排出口64には原料ゴム組成物1の混練促進と異物除去を目的としたメッシュおよびメッシュホルダの設置が許容される。押出機60のゴム排出口64はクロスヘッド40を構成する外側ダイ42の導入口45と連結される。
【0013】
[クロスヘッド]
本発明において、クロスヘッド40は芯金が鉛直方向に搬送されるように設置される。これは押出中に芯金21に接触し外力を及ぼす部材の影響や、芯金21の自重の影響を少なくして、芯金押出時の重力の影響による中心ずれを抑制し、中心ずれの少ない高精度なローラを得るためである。なお、クロスヘッド40の軸線47の鉛直方向に対する設置の精度に関しては、以下の通りである。即ち、軸線47は、重力の方向とできるだけ近い方が良いが、押出機やクロスヘッドの機械加工精度などを考慮して、重力方向とのずれが1度以下であることが好ましく、0.2度以内が特に好ましい。
【0014】
クロスヘッド40は、少なくとも外側ダイ42と内側ダイ41、ニップル43、ダイス44から構成され、外側ダイ42と内側ダイ41は環状流路46を構成する。内側ダイ41は環状流路46の中心軸と同じ方向に貫通孔を具備し、芯金供給ユニット50の芯金送りローラ53から供給された芯金21を装着することができる。環状流路46の先端にはダイス44が具備され、原料ゴム組成物1を円筒状に形成したものが芯金21に被覆されて弾性ローラ23となり、ダイス44から鉛直下方に排出される。
【0015】
[芯金供給ユニット]
クロスヘッド40の上部端には芯金供給ユニット50が設置され、クロスヘッド40の内側ダイ41の内部貫通孔へ複数の芯金を連続的に供給する。なお、芯金供給ユニット50は、芯金ストッカー52から芯金21を取り出し、芯金供給ユニット内の芯金芯金送りローラ53に供給する機構を具備している。芯金送りローラ53は、芯金を傷つけることがないように、ポリアミド、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ポリアセタール等の樹脂の他に、アルミ、真鍮、銅など、あるいはその合金を用いて形成されていても良い。また、芯金の長さに相当する周期で規則的に送り速度を変化させることで、弾性ローラの外径形状を任意に変化させて、例えばクラウン形状、あるいは逆クラウン形状とすることもできる。
【0016】
[芯金引取ユニット]
芯金引取ユニット70はダイス44から押出された弾性ローラ23の芯金下端面24を弾性ローラ23が押し出される速度に同調しながら支持する芯金支持機構100を備えることができる。さらに芯金引取ユニット70は、押出された弾性ローラ23を分割するための切断刃71や当該弾性ローラを取り出すためのオートハンド72、弾性ローラ23を置くパレット73などを具備することが許容される。
【0017】
[芯金支持機構]
図3に示す芯金支持機構100は、支持部材102と、反力負荷部材101とを有する。詳しくは、支持部材102は、クロスヘッドから押出された弾性ローラ23の芯金下端面24が支持部材102に接触してから、切断刃71によって切り離されるまで略一定の反力を弾性ローラ23に負荷するための反力負荷部材101に接続される。後述する実施例では反力負荷部材101としてエアシリンダを用いたが、他に油圧シリンダ、摩擦や電気、磁力によるブレーキなど略一定の反力を発生することのできる既知の構成を用いることが出来る。
【0018】
図5(a)に従来の支持部材102の模式図を示す。従来の支持部材は、芯金支持面103を有する部材104と支持部106とから構成され、その支持面103は、本発明とは異なりクロスヘッドから押出されてきた芯金の搬送方向に対して傾斜自在な構成とはされていなかった。なお、従来では、部材104や支持部106は金属やプラスチックなど芯金支持面103との接触で傾倒しない構成、または材料が用いられていた。
【0019】
次に、図6(a)から(c)に本発明に係る芯金支持部材の模式図を示す。本発明に用いる支持部材102は、弾性ローラの芯金下端面24に対して傾斜自在に接触する芯金支持面103と、その芯金支持面を傾斜自在に保持する傾斜部材105とを含むことができる。支持面103は、クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面24を支持し、さらにその芯金の搬送方向に対して傾斜自在に構成されている。また、芯金支持部材は、その芯金下端面が傾斜しているときに、芯金下端面24と支持面103とが面で接触した状態にて、その芯金を支持可能である。このため、図5(b)に示すように、端面が周面に対して直角に加工されていない芯金21を用いた場合であっても、従来のように芯金支持面103が下端面24を点で支持することはなくなり、芯金の位置がずれることなく鉛直方向に搬送することができる。
【0020】
なお、芯金支持面103と傾斜部材105とは、本発明に用いる支持部材の要件を満たせば、図6(b)に示すように傾斜部材105の表面が芯金支持面103であっても良い。また、図6(a)および(c)に示すように、支持部材102は、芯金支持面103を有する部材104と、傾斜部材105とからなっても良い。
【0021】
本発明に用いる芯金支持面103を有する部材104は、必要に応じて選択した材料を用いて形成することができるが、例えば、JIS G 3311に規定される工具鋼SK−5を加工して部材104として用いることができる。部材104は、芯金支持面103へ傾斜部材105の傾斜を円滑に伝達できる材料であれば公知の材料を用いることができ、金属をはじめ、プラスチックなど公知の材料を用いることができる。
【0022】
傾斜部材105は芯金下端面24と芯金支持面103との接触によって負荷される反力で容易に傾斜して、その芯金下端面24と芯金支持面103とが平行となる構造であれば既知の構成を用いることができる。具体的には、傾斜部材105として、ゴムやエラストマーからなる弾性体を用いたクッション式や圧縮バネを用いた圧縮バネ式を用いることができる。クッション式の場合、傾斜部材105の材料としては、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴムなどのゴムの他に、低密度ポリエチレン;高密度ポリエチレン;直鎖状低密度ポリエチレン;エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂などの如きポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエンースチレン樹脂、ポリスチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド6;ポリアミド66;MXD6などのポリアミド樹脂、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン−イソプレン共重合樹脂;スチレン−エチレン−ブテン共重合樹脂;スチレン−エチレン−プロピレン共重合樹脂の如きスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマーなどの樹脂を使用してもよい。また、2種以上を組み合わせて混合して用いることも可能である。圧縮バネ式の場合は、バネ材質は金属、樹脂など公知のバネに用いられる材質を使用することができる。
この他にも、図6(b)に示すように芯金下端面24と接触する芯金支持面103を表面に有する平面付き球体107と前記平面付き球体107を保持する錘穴状に設置される球体保持部108から構成される球体保持式の傾斜部材105を支持部材102として用いることができる。平面付き球体107は球体保持部108にて回転が自在に保持されており、芯金下端面の傾斜に合わせて芯金支持面103の傾斜が自在である。なお、平面付き球体107は、例えば、上記工具鋼SK−5を切削加工することにより形成することができる。また、球体支持部108は、例えば上記工具鋼SK−5により形成することができる。弾性ローラ23の導電性層22の外周面の変形を防止する目的から、傾斜部材として、芯金支持面を傾斜させるための力を小さくすることが容易である球体保持式を用いることが好ましい。球体保持式は、平面付き球体107と球体保持部108の境界面に潤滑材や空気、油、水などを充填させて摩擦を低減することができる。また、上記境界面を構成する平面付き球体107の球体部や球体保持部108に四フッ化エチレン処理、窒化処理など既知の摩擦抵抗低減や耐磨耗性向上のための表面処理をすることが許容される。
【0023】
また、傾斜部材として、クッション式に用いられる弾性体をスポンジ状弾性体とするスポンジ式なども挙げられる。図6(c)に示すように、スポンジ式は、ゴムや熱可塑性エラストマーなどから構成される多孔質体を傾斜部材105として用いるものであり、多孔質体の傾斜部材105の上に芯金支持面103を有する部材104を備える。多孔質体の傾斜部材105と、芯金支持面103を表面に有する部材104との接合は接着剤など公知の接合部材を用いることが可能である。さらに公知のゴムや樹脂成形に用いられる多層成形を用いて、芯金支持面103を有する部材104と傾斜部材105とを同時に成形することも可能である。スポンジ式のスポンジの発泡形態については何ら限定されることはなく、連泡、単泡、および当該連泡と当該単泡が組み合わさったもの等も許容され、発泡方式としては化学発泡剤、マイクロカプセル、水発泡など、既知の発泡形態を用いることが出来る。
【0024】
また、芯金支持面103と芯金端面24とが接触する時に、芯金支持面103と芯金端面24との間に滑りが生じることを容易に防止するために、芯金支持面103を、防滑処理を施した面とすることができる。具体的に防滑処理としては、ゴムなどの芯金端面との摩擦係数が大きな材料を防滑処理前の芯金支持面に接着する方法や、芯金支持面の表面粗さを機械加工にて大きくするなどの方法がある。さらに粘着テープなどに代表される粘着性を有する部材を防滑処理前の芯金支持面上に具備することも出来る。特に芯金下端面との接触による摩滅、磨耗を考慮して、防滑処理としてダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素等の硬質粒子を含む層を防滑処理前の芯金支持面上に構成して、表面粗さを大きくする方法が好ましい。ダイヤモンドや立方晶窒化ホウ素等の硬質粒子を含む層は、メタルボンド法や電着法によって防滑処理前の芯金支持面上に構成可能である。メタルボンド法および電着法は、一般工業用として用いられる研削砥石や回転切断刃の製造などに用いられる硬質粒子を被着体に固定する方法である。
【0025】
<弾性ローラの製造方法>
以下、図を参照しながら本発明に係る弾性ローラの製造方法について説明する。押出機の投入口61に投入された原料ゴム組成物1はシリンダ62にてスクリュ63によりせん断力を受けて、可塑化および混練されつつ、排出口64へ搬送される。続いてクロスヘッド40の導入口45へ搬送される。排出口64と導入口45の間には異物除去などを目的としてメッシュおよびメッシュホルダを装着することができる。原料ゴム組成物1は、クロスヘッド40にて流れ方向を変えて、外側ダイ42と内側ダイ41で構成される環状流路46にて円筒形状に形成されてゴム円筒体となる。ゴム円筒体は、芯金供給ユニット50から内側ダイ41の貫通孔に搬送された芯金21上に被覆されて、ダイス44にて所望の外径寸法に調整されて、弾性ローラ23として押出される。
【0026】
押出された弾性ローラ23は、静止していた支持機構100によって芯金下端面24を支持した状態で、支持機構100と速度を同調させながら芯金全体が押出される。このとき、芯金下端面24と芯金支持面103の平行が確保されていない場合でも、以下の通りになる。芯金下端面24が芯金支持面103に接触したときに、この接触によって生じる芯金下端面24と芯金支持面103の反力によって芯金支持面103は芯金下端面24に平行となるように傾斜して、芯金下端面24との接触面積が大きくなる。即ち、支持面103と芯金下端面24とが面接触の状態となる。このため芯金下降中に芯金下端面24と芯金支持面103の間にずれが生じることがない。このようにして、芯金下端面24と支持部材との支持状態に与える芯金下端面の傾きの影響を緩和して、弾性ローラ23の導電性層22の外周面に凹凸などの外径不良の無い弾性ローラを安定して製造することができる。
【0027】
さらに、芯金支持面103を、防滑処理を施した面とすることによって、芯金下端面24と芯金支持面103との摩擦係数は大きくなり、芯金下端面と芯金支持面の間のずれはいっそう生じ難くなるものである。
【0028】
次いでクロスヘッドより押し出された弾性ローラ23は、切断刃71によって芯金の最上端部分の原料ゴム組成物1の被膜が切断される。その切断と同時に、閉じられた切断刃71と支持機構100を芯金の押出し方向に芯金送り速度よりも早い速度で動かし、原料ゴム組成物1で円筒状に被覆された弾性ローラ23を一本ずつに分離する。支持機構100と切断刃71によって支持された弾性ローラ23は反転用のオートハンド72によって向きを変えてパレット73に置かれる。
【0029】
得られた弾性ローラを必要に応じて熱風炉などで加熱および加硫し、さらに外周面を研磨したり、抵抗調整や表面性の調整のために、さらに外周に層を設けたり、表面処理を施すなどして帯電ローラや搬送ローラとすることができる。
【0030】
<芯金>
本発明に用いる芯金は、電子写真装置等に用いる弾性ローラの分野で公知な芯金から適宜選択して用いることができる。また、芯金には、適宜接着剤等を塗布することもでき、接着剤としては、例えば、導電性があるホットメルトタイプのものを挙げることができる。
【0031】
<原料ゴム組成物>
芯金を被覆する原料ゴム組成物を構成するポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッソゴム等が挙げられ、これらのうちのいずれも使用することができる。
【0032】
このポリマー中に分散させる導電粉としては、例えば、カーボンブラック、導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、TiO2、SnO2、ZnO等の金属酸化物、SnO2とSb23の固溶体、ZnOとAl23の固溶体等の複酸化物、Cu、Ag等の金属粉、導電性の繊維、等が挙げられる。導電粉は、前記ポリマー原料100質量部に対して5質量部以上200質量部以下、原料ゴム組成物に添加することが好ましい。さらに、原料ゴム組成物には、加硫剤、無機充填剤、その他公知の加硫促進剤、プロセスオイル等が適宜添加される。加硫剤としては硫黄、金属酸化物、有機酸化物等が挙げられ、無機充填剤としてはカーボンブラック、タルク、クレー等が挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。
【0034】
まず、表1に示す材料をオープンロールにて混合し、各例に用いる原料ゴム組成物(処方1)を作製した。
【0035】
【表1】

【0036】
ついで、得られた原料ゴム組成物を芯金の周囲に成形するために、各例では、図4に模式的に示す押出装置に内径がφ(直径)10mmであるダイスをセットし、押出機とクロスヘッドを80℃に温調した。次にφ6mm、全長が252mmであり、あらかじめ両端部10mmを除いた領域に接着剤が塗布された芯金を用意した。接着剤は導電性があるホットメルトタイプのものを用いた。
【0037】
なお、芯金は、図7に示す方法で芯金21の一端を支持機構80により支持した時の他端の芯金端面の最大円周振れが5μm以下であるもの(芯金1群)、およびその最大円周振れが8μm以上12μm以下のもの(芯金2群)をそれぞれ各例で使用した。
図3に示す装置を用いて、これらの芯金を連続的に原料ゴム組成物と同時に押出して、芯金の周囲に円筒状の原料ゴム組成物を成形して各例に示す弾性ローラを得た。なお、各例に示す芯金支持面の表面粗さRaは、JIS B 0601に従って測定した。
【0038】
(実施例1)
実施例1では、図6(b)に示すように、傾斜部材105が球体保持式である支持部材を用いた。すなわち、直径φ10mmの平面を表面に有する直径φ15mmの平面付き球体107を球体保持部108で保持する傾斜部材を用いた。前記平面付き球体107はJIS G 3311に規定される工具鋼SK−5を切削加工したものを用いた。また、球体保持部108は、JIS G 4051に規定される機械構造用炭素鋼S45Cを用いた。この平面付き球体107の表面に、防滑処理として、粒度200番(粒径が0.1mm)のダイヤモンド粉を、ニッケルを用いて電着固定させ、芯金支持面103を形成した。芯金支持面の表面粗さをRa16μmとした。
【0039】
支持部材102は、ダイス44の下面から約100mm下方に待機させ、押出される芯金下端面と芯金支持面とを接触させて弾性ローラの押出成形をおこなった。
なお、芯金下端面と芯金支持面とのずれについては、以下のようにして測定した。図8に示すように、弾性ローラの芯金下端面24から2mm上方の弾性ローラ外周面上にCCDレーザ変位センサ(商品名:LK−010、キーエンス(Keyence)社製)のレーザ光を4方向から照射して後述するずれ(変位)を測定した。クロスヘッドから押し出された芯金の下端面が芯金支持面に接触してから、図9のように切断刃71により切断されるまでに、変位センサによって測定された変位が20μm以上変化した場合をずれ有りとして、1万本の弾性ローラを成形してずれの発生率(ズレ率%)を数えた。
【0040】
また、弾性ローラの外周面上において、高低差が40μm以上の凹または凸形状を有するものの発生率を数え、外観不良率(%)とした。前記凹凸形状は、弾性ローラを長さ方向に1mmピッチ、周方向に10°ピッチに分割して、レーザ外径測定機を用いて測定した。前記のレーザ外径測定機は商品名:LS−7000、キーエンス(Keyence)社製を用いた。結果を表3に示す。
【0041】
表3に示すように、実施例1により得られた弾性ローラは、芯金下端面と芯金支持面とのずれの発生が少なく、本発明により高精度の弾性ローラを安定して成形することができた。
【0042】
(実施例2)
実施例2では、直径φ8mmの平面を表面に有する直径φ10mmの球体107を備える球体保持式の傾斜部材105を用いて、その球体107の表面に粒度400番(粒径が0.05mm)の立方晶窒化ホウ素により防滑処理を施し、芯金支持面103を形成した。芯金支持面の表面粗さをRa26μmとした。この支持部材を用いた以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。なお、球体107および球体保持部108に用いた材料は実施例1と同じである。結果を表3に示す。
【0043】
(実施例3)
実施例3では、ダイヤモンド粉による防滑処理の代わりに、防滑処理として、両面テープ(商品名:ナイスタック ニチバン社製)を球体107の表面に貼付し、芯金支持面103を形成した以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。結果を表3に示す。芯金支持面103の表面粗さはRa5.4μmであった。
【0044】
(実施例4)
実施例4では、ダイヤモンド粉による防滑処理の代わりに、防滑処理として、厚さ1mmの株式会社十川ゴム社製のクロロプレンゴムシートを球体107表面に設置し、芯金支持面103を形成した以外は、実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。なお、クロロプレンゴムシートはホットメルト接着剤を用いて、球体表面に貼付した。芯金支持面の表面粗さはRa1.2μmであった。結果を表3に示す。
【0045】
(実施例5)
実施例5では、平面付き球体107表面に防滑処理を施さず、バフ研磨によって芯金支持面103の表面の算術平均粗さRaを0.2μmとした以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。算術平均粗さRaは、JIS B 0601に従って測定される表面粗さである。結果を表3に示す。
【0046】
(実施例6)
表2に示す材料をオープンロールで混錬して原料ゴム組成物(処方2)を作製した。
【0047】
【表2】

【0048】
実施例6では、アスカーC硬度が15である厚さ5mmのNBRスポンジを傾斜部材105として用いたスポンジ式の芯金支持部材102を用いて導電性ローラを作製した。なお、この支持部材102は以下に示す工程で製作した。まず、東邦工業ゴム株式会社製のNBRスポンジを直径φ10mm、高さ5mmの円柱状に切削し、傾斜部材105とした。次いで、前記円柱状NBRスポンジの一端に、部材104として、φ10mm、高さ1mmの円盤に加工した工具鋼SK−5をホットメルト系の接着剤で貼りあわせた。さらにその部材104の表面に、粒度200番(粒径が0.1mm)のダイヤモンド粉を、ニッケルを用いて電着固定させ防滑処理を施し、芯金支持面103を表面に有する支持部材102を形成した。芯金支持面の表面粗さはRa33μmとした。
【0049】
なお、アスカーC硬度は、基準規格アスカーC型SRIS(日本ゴム協会規格)0101に従って作製した試験片(実施例6では、NBRスポンジ)を用いて、アスカーゴム硬度計(高分子計器(株)製)により測定される硬度である。この支持部材および原料ゴム組成物(処方2)を用いた以外は、実施例1と同様にして導電性ローラを製造した。結果を表3に示す。
【0050】
(実施例7)
実施例6において傾斜部材105に用いたNBRスポンジを、アスカーC硬度が40のNBRスポンジに変更し、部材104表面に防滑処理を行わずに、芯金支持面103の表面粗さをRa0.2μmとした。それ以外は実施例6と同様にして弾性ローラを製作した。結果を表3に示す。
【0051】
(実施例8)
実施例8では、図6(a)に模式的に示すような、圧縮バネ式の芯金支持部材を使用した。すなわち、傾斜部材105として材質がバネ鋼SWP−A、バネ線径0.2mm、バネ条数0.1N/mm、コイル径4mm、バネの自由長が4mmである圧縮バネを用いた。前記圧縮バネの一端に、実施例7で用いた部材104を設置した。その部材表面に、実施例1と同様に防滑処理として、粒度200番(粒径が0.1mm)のダイヤモンド粉を、ニッケルを用いて電着固定させ、芯金支持面103を有する支持部材を作製した。芯金支持面の表面粗さはRa42μmであった。この支持部材を用いた以外は実施例7と同様にして弾性ローラを作製した。結果を表3に示す。
【0052】
(実施例9)
実施例9では、ダイヤモンド粉による防滑処理を行わず、芯金支持面103の表面粗さをRa0.2μmとした以外は、実施例8と同様にして弾性ローラを作製した。結果を表3に示す。
【0053】
(比較例1)
比較例1では、図5(a)に示すように傾斜部材の無い芯金支持部材を用いた以外は実施例1と同様にして弾性ローラを作製した。傾斜部材の無い芯金支持部材は、JIS G 4051に規定される機械構造用炭素鋼S45Cを旋盤で加工して、芯金支持面103、部材104、支持部106が一体である構造とした。なお、芯金支持部材の表面に、実施例1と同様にダイヤモンド粉による防滑処理を行い、芯金支持面103を形成した。結果を表3に示す。芯金支持面103の表面粗さはRa19μmであった。
【0054】
(比較例2)
比較例2では、ダイヤモンド粉による防滑処理を行わず、芯金支持面の表面粗さをRa12μmとした以外は比較例1と同様にして弾性ローラを作製した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【符号の説明】
【0056】
11・・・感光体
12・・・帯電部材
13・・・現像ローラ
14・・・転写ローラ
21・・・芯金
22・・・導電性弾性層
23・・・弾性ローラ
40・・・クロスヘッド
41・・・内側ダイ
42・・・外側ダイ
43・・・ニップル
44・・・ダイス
45・・・導入口
46・・・環状流路
50・・・芯金供給ユニット
52・・・芯金ストッカー
53・・・芯金送りローラ
60・・・押出機
61・・・供給口
62・・・シリンダ
63・・・スクリュ
64・・・排出口
70・・・芯金引取ユニット
71・・・切断刃
72・・・オートハンド
73・・・パレット
100・・・支持機構
101・・・反力負荷装置
102・・・支持部材
103・・・芯金支持面
105・・・傾斜部材
107・・・球体
108・・・球体保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機に連結されたクロスヘッドに連続的に複数の芯金を供給し、各芯金を鉛直下方に搬送しつつ、各芯金の周囲を原料ゴム組成物で被覆する工程を有する弾性ローラの製造方法であって、
該工程は、該クロスヘッドから押出されてきた芯金の下端面を芯金支持部材の支持面にて支持しつつ、その芯金を鉛直下方に搬送する工程を含み、
該芯金支持部材の支持面は、該芯金の搬送方向に対して傾斜自在に構成され、該芯金支持部材は、該クロスヘッドから押出されてきた芯金下端面が該芯金支持部材の支持面に対して傾斜しているときに、該芯金下端面と該芯金支持部材の支持面とが面で接触した状態にてその芯金を支持可能であることを特徴とする弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61729(P2012−61729A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207837(P2010−207837)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】