説明

弾性ローラの製造装置

【課題】振れ精度の高い弾性ローラを再現性よく製造することのできる弾性ローラの製造装置を提供すること。
【解決手段】発泡弾性層の外周面にスリーブを備えてなる弾性ローラの製造装置であって、軸線方向に前進すると共に、スリーブ4に対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層3を配置する支持部材20を備えて成り、前記支持部材20は、前記スリーブ4をその軸線方向に貫通するように設置され、前記発泡弾性層3を前記上流側に配置したときに、前記発泡弾性層3と前記スリーブ4との間に、前記スリーブ4に向かって縮径するテーパ部35を有することを特徴とする弾性ローラの製造装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性ローラの製造装置に関し、さらに詳しくは、振れ精度の高い弾性ローラを再現性よく製造することのできる弾性ローラの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。各種の画像形成装置は、記録体に転写された現像剤像を定着させるため、発泡弾性層の内部に加熱手段が内蔵された定着ローラ等を装備した定着装置等を備えている。この定着装置は、定着ローラ等が発泡弾性層の内部に加熱手段を内蔵しているから、通常、定着ローラ等を予熱する時間が比較的長くなり、その構成が複雑であって、内蔵された加熱手段のみを交換することが困難である等の問題が生じることがある。
【0003】
これら問題の少なくとも1つの問題を解決し得る定着装置として、定着ローラ等に外部から熱を供給する外部加熱手段を備えた定着装置が挙げられる。このような外部加熱手段として、例えば、ハロゲンヒーター等の輻射加熱手段、接触等による直接加熱手段、交流磁場形成による誘導加熱手段等が挙げられる。これらの外部加熱手段を備えた定着装置は、外部加熱手段からの熱によって定着ローラ等が効率的に加熱されるように、定着ローラ等は、被加熱部品として、例えば、発泡弾性層の外周面に金属製スリーブ等を備えている。
【0004】
このような定着ローラとして、例えば、特許文献1には、「内部に弾性体層を含み、その外部に厚さ10〜150μmの金属スリーブを設けた」加熱用回転体が記載されている(特許文献1の図3等参照。)。特許文献1の0066欄によれば、この加熱用回転体は、「鉄製の芯金11の外径を9mm、シリコンゴムを発泡させたスポンジ弾性層12の肉厚を8mmとし、その外周には金属スリーブ13として厚さ5〜200μmのSUS製スリーブを被せ」て、製造される。
【0005】
弾性層の外周面にスリーブ等を備えている定着ローラ等を製造する装置として、例えば、特許文献2の図5に具体的な製造装置50が記載されている。この製造装置50は、「加圧容器52内に、金属製薄肉スリーブ26を起立した状態で保持するスタンド56と、芯金16の外周にスポンジ層22が配設されたスポンジ体Xを、スタンド56に保持した金属製薄肉スリーブ26と同軸な状態で支持すると共に、この同軸状態を維持したままで、軸方向に沿ってこれを移動させることが出来るように構成された支持機構58と、この支持機構58に支持されたスポンジ体Xのスポンジ層22の外周面に、接着剤を一様に塗布するための接着剤塗布機構60が配設されている」(特許文献2の0063欄等参照。)。
【0006】
ところが、スリーブ等は薄肉であるが故に、製造装置内に起立状態に配置したときに、起立状態を維持できなくなり、スリーブ等の軸線が垂直方向からずれるという問題、スリーブ等がゆがんで蛇腹状に変形するという問題、スリーブ等がゆがみ、スリーブ等の軸線方向に垂直な断面の形状が例えば楕円形等に変形するという問題等が起こることがあった。そして、スリーブ等にこのような問題が起こると、発泡弾性層をスリーブ等に挿入することができないばかりか、発泡弾性層をスリーブ等に挿入できたとしてもローラの振れ精度が低下することがある。また、複数のローラを製造する場合には、振れ精度の低下に加えて、複数のローラの振れ精度を均一にすることができないことがある。
【0007】
特に、特許文献2の製造装置50を用いて、スポンジ体X等の発泡弾性層の外径を縮径した後に発泡弾性層を膨張させることによって、定着ローラを製造する場合には、発泡弾性層の半径方向への膨張速度等が一定でないと、前記問題によって生じる振れ精度の低下及び振れ精度の均一性低下が顕著になる。
【0008】
【特許文献1】特開平08−129313号公報
【特許文献2】特開2004−53924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、振れ精度の高い弾性ローラを再現性よく製造することのできる弾性ローラの製造装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、発泡弾性層の外周面にスリーブを備えてなる弾性ローラの製造装置であって、軸線方向に前進すると共に、スリーブに対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層を配置する支持部材を備えて成り、前記支持部材は、前記スリーブをその軸線方向に貫通するように設置され、前記発泡弾性層を前記上流側に配置したときに、前記発泡弾性層と前記スリーブとの間に、前記スリーブに向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有することを特徴とする弾性ローラの製造装置であり、
請求項2は、前記支持部材は、前記軸体の一方の端部が装着される第1の装着部材を端部に有する第1の支持軸と、前記軸体の他方の端部が装着され、前記テーパ部を有する第2の装着部材を端部に有すると共に、前記スリーブを貫通する第2の支持軸とを備え、前記第1の装着部材と第2の装着部材とが相対向するように配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る弾性ローラの製造装置は、この製造装置内に配置されたスリーブに向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有する支持部材を備えているから、たとえ、製造装置内に起立状態に配置したときに、スリーブ等の軸線が垂直方向からずれるという問題、スリーブ等がゆがんで蛇腹状に変形するという問題、及び、スリーブ等の軸線方向に垂直な断面の形状が変形するという問題等が起こったとしても、前記テーパ部がスリーブに生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正しつつ、発泡弾性層のスリーブへの挿入を案内する。その結果、スリーブ内に挿入された発泡弾性層とスリーブとは軸線が一致し、たとえ、発泡弾性層の半径方向への膨張速度等が一定とならなくても、膨張した発泡弾性層の軸線もまたスリーブの軸線と一致する。したがって、この発明によれば、振れ精度の高い弾性ローラを再現性よく製造することのできる弾性ローラの製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明に係る製造装置によって製造される弾性ローラの一実施例としての弾性ローラ1Aは、例えば、図1に示されるように、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面に設けられたスリーブ4とを備えてなる。
【0013】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、所謂「芯金」とも称される。
【0014】
発泡弾性層3は、後述するゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成されている。この発泡弾性層3は、その内部及び/又は外表面にセルを有する発泡弾性層とされる(図1において弾性層3の外周面に開口したセルは図示しない。)。発泡弾性層3がセルを有すると、発泡弾性層3の硬度が低下して、高品質の画像を形成することに貢献することができる。ここで、発泡弾性層3に有するセルは、ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域、及び、ゴム組成物に含有される中空充填材等に由来する中空領域をいう。発泡弾性層3に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。発泡弾性層3は、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、セルの大きさ、発泡率等が決定される。
【0015】
発泡弾性層3におけるセルの平均セル径は、例えば、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。セルの平均セル径が前記範囲であると、この発明に係る弾性ローラの製造装置において発泡弾性層3が縮径されても、その発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。発泡弾性層3におけるセルは、そのセル壁の平均幅が0.01〜0.5mmであるのが好ましく、0.05〜0.4mmであるのが特に好ましい。セル壁の平均幅が前記範囲であると、この発明に係る弾性ローラの製造装置において発泡弾性層3が縮径されても、その発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。また、発泡弾性層3における発泡率は150〜480%であるのが好ましく200〜450%であるのが特に好ましい。発泡率が前記範囲であると、この発明に係る弾性ローラの製造装置において発泡弾性層3が縮径されても、その発泡構造が損傷、亀裂及び破壊することを効果的に防止することができる。セルにおける、平均セル径、セル壁の平均幅及び発泡率は、発泡弾性層3を形成する後述するゴム組成物に含有される発泡剤又は中空充填剤の配合量、中空充填剤の大きさ、ゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。
【0016】
セルの平均セル径は、発泡弾性層3の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。セルにおけるセル壁の平均幅は、前記平均セル径と同様に、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在するセルとセルとの間隔、すなわち、セルとセルとの間にある壁の幅を測定し、測定された値を算術平均することによって、求めることができる。発泡弾性層3の発泡率は、発泡弾性層3の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。
【0017】
発泡弾性層3は、20〜60のアスカーC硬度を有するのが好ましい。アスカーC硬度が前記範囲であると、被当接体に対する所望の当接状態又は圧接状態を保持することができるから、高品質の画像を形成することに貢献することができる。例えば、弾性ローラ1を定着ローラとして画像形成装置に装着する場合には、加圧ローラに対して所望の圧接状態を保持して、加圧ローラと定着ローラとで形成されるニップ幅を大きくすることができるから、記録体に転写された現像剤像を所望のように定着させることができ、その結果、高品質の画像を形成することに貢献することができる。アスカーC硬度は、JIS K6253に準拠して、発泡弾性層3の複数箇所を測定し、測定値を算術平均した値とすることができる。発泡弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層3を形成するゴム組成物に含有されるゴム及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層3の成形条件等により、調整することができる。
【0018】
発泡弾性層3の厚さは特に限定されないが、通常、2〜20mmに調整されるのが好ましく、3〜12mmに調整されるのが特に好ましい。
【0019】
前記スリーブ4は、発泡弾性層3の外周面に設けられている。スリーブ4は、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料で形成され、一層構造とされても、二層以上が積層された積層構造とされてもよい。スリーブ4は、薄層に形成され、例えば、その全体の厚さは、20〜150μmであるのが好ましく、30〜100μmであるのが特に好ましい。このスリーブ4は、一層構造であっても二層以上の積層構造であってもよい。また、スリーブ4は、800〜1300MPa程度の引張強度を有しているのが、発泡弾性層3の内周面からの圧接により変形しにくくなる点で、好ましい。前記引張強度の測定方法は、JIS Z 2241に準拠する。
【0020】
この発明に係る製造装置によって製造される弾性ローラの別の一実施例としての弾性ローラ1Bは、例えば、図2に示されるように、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3と、発泡弾性層3の外周面に形成された接着剤層5を介して設けられたスリーブ4とを備えてなる。この弾性ローラ1Bにおける軸体2、発泡弾性層3及びスリーブ4それぞれは、弾性ローラ1Aにおける軸体2、発泡弾性層3及びスリーブ4と基本的に同様である。
【0021】
図2に示されるように、弾性ローラ1Bは、発泡弾性層3とスリーブ4との間に接着剤層5を有している。接着剤層5を形成する接着剤は、発泡弾性層3とスリーブ4とを接着することができる接着剤であれば特に限定されず、例えば、シリコーン系接着剤(商品名「KE−44」及び「KE−45」、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。この発明において、接着剤は、室温(25℃)で流動性、具体的には、25℃における粘度が15〜150Pa・sである流動性接着剤であるのが、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、混入すること等を防止することができ、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる点で、好ましい。流動性接着剤における流動性は、25℃における粘度が15〜150Pa・sであるのが好ましく、30〜120Pa・sであるのがより好ましく、50〜100Pa・sであるのが特に好ましい。流動性接着剤における粘度が前記範囲内にあると、接着剤の塗布層内に気泡等が発生し、また、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。なお、流動性接着剤における粘度は、JIS K 6249に準じて(BH型粘度計を使用)によって測定する。
【0022】
前記流動性接着剤は、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。より具体的には、シリコーン系接着剤として、付加型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE1880」(粘度(25℃)84Pa・s、信越化学工業株式会社製)、商品名「KE1830」(粘度(25℃)110Pa・s、信越化学工業株式会社製)、商品名「KE1833」(粘度(25℃)150Pa・s、信越化学工業株式会社製))、縮合型シリコーンRTV(例えば、商品名「KE441」(粘度(25℃)15Pa・s、信越化学工業株式会社製))等が挙げられる。アクリル系接着剤として、アクリル変性シリコーン樹脂(例えば、商品名「スーパーX 8008」(粘度(25℃)90Pa・s、セメダイン株式会社製)、商品名「スーパーX 8008 LLブラック」(粘度(25℃)14Pa・s、セメダイン株式会社製)、商品名「スーパーX 8008クリア」(粘度(25℃)65Pa・s、セメダイン株式会社製))等が挙げられる。なお、流動性接着剤は、一液性でも二液性でもよく、また、熱硬化性でも湿気硬化性でもよい。さらに、流動性接着剤は、例えば、トルエン、キシレン等の希釈剤を用いて、その粘度が前記範囲内になるように、調整されてもよい。
【0023】
また、弾性ローラ1は加熱下において使用されることがあるため、接着剤は耐熱性を有しているのが好ましく、具体的には、150〜250℃程度の耐熱性を有しているのが好ましい。耐熱性は、JIS K 6833に規定された軟化温度測定法によって測定される。
【0024】
接着剤に要求される他の特性として、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さ等が挙げられ、この発明においては、接着剤の硬化物における引張せん断接着強さは0.5〜4MPaであるのが好ましい。接着剤の硬化物における引張せん断接着強さが前記範囲にあると、スリーブ4と発泡弾性層3とが十分な接着力で強固に接着される。引張せん断接着強さは、接着剤を硬化してなる硬化体を試験体として、JIS K 6249に準じて、測定される。
【0025】
接着剤層5の厚さは特に限定されないが、通常、10〜300μmに調整されるのが好ましく、10〜100μmに調整されるのが特に好ましい。
【0026】
この発明に係る弾性ローラの製造装置を以下に説明する。この発明に係る弾性ローラの製造装置は、軸線方向に前進すると共に、スリーブ4に対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層3を配置する支持部材を備えて成り、この支持部材は、スリーブ4をその軸線方向に貫通するように設置され、発泡弾性層3を前記上流側に配置したときに、発泡弾性層3とスリーブ4との間に、スリーブ4に向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有することを特徴の1つとする。この発明に係る弾性ローラの製造装置は、この特徴を有していることによって、テーパ部がスリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正しつつ、発泡弾性層3のスリーブ4への挿入を案内するから、スリーブ4内に挿入された発泡弾性層3とスリーブ4とは軸線が一致し、膨張した発泡弾性層3の軸線もまたスリーブ4の軸線と一致する。その結果、前記本願発明の目的をよく達成することができる。
【0027】
この発明に係る弾性ローラの製造装置を、その一例(以下、この発明に係る製造装置と称することがある。)を挙げて、説明する。
【0028】
図3に示されるように、この発明に係る製造装置10は、発泡弾性層3及びスリーブ4を収納することのできる筒状の筐体11と、筐体11における一方の開口部近傍の内部に設置され、スリーブ4を載置する載置部材15と、筐体11の両端開口部を閉塞する閉塞端部12及び13と、軸線方向に前進すると共に、載置部材15上に載置されたスリーブ4(図示しない。)に対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層3を配置する支持部材20と、筐体11内を加圧又は減圧する圧力調整装置14とを備えている。
【0029】
図3に示されるように、前記筐体11は、発泡弾性層3及びスリーブ4を収納することができればよく、製造装置10においては、発泡弾性層3の軸線長さとスリーブ4の軸線長さの和よりも長い長さを有し、発泡弾性層3及びスリーブ4の外径よりも大きな内径を有する中空の筒体に形成されている。
【0030】
前記載置部材15は、スリーブ4を所定の位置に起立状態に支持することができればよく、製造装置10においては、筐体11の内周面から中心に向かって突出し、スリーブ4を支持する平滑な載置面16を有するリング状突出部とされている。この載置部材15の内径は、後述する第2の装着部材24の外径よりも大きく、かつ、スリーブの外径よりも小さくなっている。また、載置部材15は、筐体11における一方の開口部近傍に、すなわち、後述する閉塞端部13が筐体11に装着されたときに、閉塞部材13との間に、後述する装着部材24が配置されるのに十分な空間が画成される位置に形成されている。載置部材15は、スリーブ4の軸線が発泡弾性層3の軸線と一致する位置に、スリーブ4を、載置面16に載置し、好ましくは載置固定して、支持する。
【0031】
この製造装置10において、載置面16上に起立状態に載置されたスリーブ4(例えば、図5参照。)は、その軸線が垂直方向と一致し、スリーブ4が変形していなのが望ましいが、前記テーパ部が発泡弾性層3のスリーブ4への挿入を案内するから、スリーブ4の軸線が垂直方向からずれて支持部材20の軸線と一致していなくても、スリーブ4がゆがんで蛇腹状に変形しても、また、スリーブ4の断面形状が変形してもよい。
【0032】
前記閉塞端部12及び13は、後述する支持部材20を例えばその軸線方向に移動可能とする貫通孔を有し、筐体11の両端開口部を気密に閉塞することができればよく、装置10においては、封止部材17を前記貫通孔内に備えた筒状体に形成されている。この封止部材17は、支持部材20と閉塞端部12及び13とを気密に封止する。
【0033】
前記圧力調整装置14は、閉塞端部12及び13によって閉塞された筐体11内を加圧又は減圧することができる装置であればよく、例えば、コンプレッサー等の圧力調整装置、真空ポンプ等の減圧機等が挙げられる。圧力調整装置14によって筐体11内を加圧する場合には、その圧力は、例えば、0.15〜0.48MPaに調整され、一方、圧力調整装置14によって筐体11内を減圧する場合には、その圧力は、例えば、3〜100hPaに調整される。
【0034】
図5及び図6に示されるように、前記支持部材20は、軸線方向に前後進すると共に、載置面16上に載置されたスリーブ4に対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層3を配置するように、構成されている。換言すると、支持部材20は、筐体11内に収納された発泡弾性層3を、スリーブ4と軸線を共有するように、スリーブ4の軸線方向に直列に配置する。また、支持部材20は、その軸線方向に前後進可能であって、載置面16上に載置された(製造装置10内に配置された)スリーブ4をその軸線方向に貫通するように、構成されている。そして、この支持部材20は、発泡弾性層3を製造装置10内に前記のように配置したときに、発泡弾性層3とスリーブ4との間に、スリーブ4に向かって外径が次第に小さくなるテーパ部35を有している。
【0035】
この支持部材20は、より具体的には、図5及び図6に示されるように、互いに軸線を共有するように、閉塞端部12の貫通孔に挿入されて閉塞部材12をその軸線方向に貫通配置された第1の支持軸21と、閉塞端部13の貫通孔に挿入されて、閉塞部材13及びスリーブ4をそれらの軸線方向に貫通配置された第2の支持軸22とを備え、第1の支持軸21に装着された後述する第1の装着部材23と第2の支持軸22に装着された後述する第2の装着部材24とが相対向するように配置されている。
【0036】
第1の支持軸21は、製造装置10内に位置する自由端部に、発泡弾性層3が形成された軸体の一方の端部を装着する第1の装着部材23が固定されてなり、図示しない可動機構によって、第2の支持軸22と同期して軸線方向に前後進可能になっている。また、第2の支持軸22は、製造装置10内に位置する自由端部に、発泡弾性層3が形成された軸体2の他方の端部を装着する第2の装着部材24が固定されてなり、図示しない可動機構によって、第1の支持軸21と同期して軸線方向に前後進可能になっている。
【0037】
支持部材20は、第1の装着部材23と第2の装着部材24とが協働して、軸体2を第1の支持軸21と第2の支持軸22との間に固定し、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3を有するローラ原体7(図4参照。)を支持する。そして、ローラ原体7(発泡弾性層3)を支持した支持部材20において、第1の装着部材23、ローラ原体7(発泡弾性層3)及び第2の装着部材24は共通の軸線(図3において一点鎖線で示す。)を有し、この共通の軸線はさらに載置部材15に支持されるスリーブ4の軸線とも一致している。
【0038】
図3に示されるように、前記第1の装着部材23は、軸体2の一方の端部を固定することができればよく、軸体2の外径よりもわずかに小さい内径を有する軸体挿入穴30を有する円筒体32と、この円筒体32を第1の支持軸21の自由端部に固定する固定具34とを有している。軸体2の一方の端部は、前記円筒体32の軸体挿入穴30に挿入され、前記端部の外周面を周方向から中心方向に把持されて、第1の装着部材23に軸体2の一方の端部が装着される。円筒体32及び固定具34は筐体11内に収納され、支持部材20はその軸線方向に前後進するから、円筒体32の外径及び固定具34の最大外径は少なくとも筐体11の内径よりも小さく設定される。なお、軸体2における一方の端部の外周面を挟持して、第1の装着部材23に軸体の一方の端部が装着されてもよい。
【0039】
また、図3に示されるように、前記第2の装着部材24は、軸体2の他方の端部を固定することができればよく、軸体2の外径よりもわずかに小さい内径を有する軸体挿入穴31を有する円筒体33と、この円筒体33を第2の支持軸22の自由端部に固定する固定具35とを有している。軸体2の他方の端部は、前記円筒体33の軸体挿入穴31に挿入され、前記端部の外周面を周方向から中心方向に把持されて、第2の装着部材24に軸体2の他方の端部が装着される。円筒体33及び固定具35はスリーブ4内を通過するから、円筒体33の外径及び固定具35の最大外径はスリーブ4の内径以下に設定される。なお、軸体2における他方の端部の外周面を挟持して、第2の装着部材24に軸体2の一方の端部が装着されてもよい。
【0040】
図3に示されるように、前記固定具35は、逆円錐台形状をなし、その側面(外周面)が第2の装着部材24から突出する方向に外径が次第に小さくなるテーパ部となっている。すなわち、固定具35はその側面がテーパ部からなる逆円錐台部材である。
【0041】
したがって、図5に示されるように、前記支持部材20は、載置面16に載置されたスリーブ4に対して支持部材20における軸線方向の上流側に発泡弾性層3(ローラ原体7)を配置したときに、すなわち、発泡弾性層3(ローラ原体7)を製造装置10内に支持部材20によって配置したときに、発泡弾性層3と載置面16に載置されたスリーブ4との間に、スリーブ4に向かって外径が次第に小さくなるテーパ部をなす固定具35を有している。
【0042】
固定具35のテーパ部における、固定具35の中心軸と母線との成す角度は、特に限定されないが、スリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正しつつ、発泡弾性層3(ローラ原体7)のスリーブ4への挿入をより一層案内しやすくなる点で、10〜80°であるのが好ましく、30〜60°であるのが好ましい。
【0043】
テーパ部の最大外径は、固定具35が、スリーブ4内を通過することによって、スリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正しつつ、発泡弾性層3(ローラ原体7)のスリーブ4への挿入を案内するから、スリーブ4の内径以下に設定されるのが好ましい。この発明において、スリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正することに主眼をおくのであれば、テーパ部の最大外径はスリーブ4の内径と同じ径に調整されるのがよく、この場合には、少なくともテーパ部の最大外径部分がスリーブ4の内周面を摺接する。なお、この場合、テーパ部の最大外径部分及び/又はスリーブ4の内周面に、例えばフッ素樹脂等の摩擦低減剤を塗布しておくこともできる。一方、スリーブ4の内周面への傷付きを防止して、発泡弾性層3(ローラ原体7)のスリーブ4への挿入を案内することに主眼をおくのであれば、テーパ部の最大外径はスリーブ4の内径よりも小さく調整されるのがよく、この場合には、スリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正するときを除いて、テーパ部の最大外径部分がスリーブ4の内周面に摺接しない。
【0044】
テーパ部の最小外径は、特に限定されないが、小さすぎると、第2の支持軸22に第2の装着部材24を固定しにくく、また、テーパ部が有効に機能しないことがある。この発明において、テーパ部の最小外径は、第2の支持軸22の外径とほぼ同じ径に調整されている。
【0045】
テーパ部の軸線方向長さは、テーパ部の最大外径及び最小外径を考慮して、固定具35の中心軸と母線との成す角度が前記角度となるように、調整される。
【0046】
筐体11、閉塞端部12、13、載置部材15、支持部材20は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状及び寸法に形成される。封止部材17は、例えば、シリコーンゴム若しくはシリコーン変性ゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム(エチレンプロピレンジエンゴムを含む。)、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロールヒドリンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等で形成される。
【0047】
前記構成を有する製造装置10は、加圧環境下又は減圧環境下で発泡弾性層3を縮径して、縮径した発泡弾性層3をスリーブ4に挿入するのに使用されるが、一旦縮径した発泡弾性層3が速やかに膨張し、製造される弾性ローラの振れ精度の均一性が大きくばらつく加圧環境下で発泡弾性層3をスリーブ4に挿入するのに特に好適に用いられる。その理由は、製造装置10によれば、スリーブ4に軸線のずれ及び/又は形状の変形が生じても、また、発泡弾性層3の半径方向への膨張速度等が一定でなくても、スリーブ4に挿入された発泡弾性層3とスリーブ4との軸線を一致させることができることに、ある。
【0048】
この発明に係る製造装置10を用いて、図1に示される弾性ローラ1A及び1Bを製造する方法を説明する。なお、図3、図5〜7において、理解しやすいように、支持部材20、ローラ原体7及びスリーブ4のハッチングを省略してある。
【0049】
弾性ローラ1A及び1Bを製造するには、まず、図4に示されるように、軸体2の外周面に発泡弾性層3を備えたローラ原体7を準備する。
【0050】
軸体2は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮若しくはこれらの合金等の金属、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の樹脂、及び前記樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂等の材料を用いて、公知の方法により所望の形状に調製される。軸体2に導電性が要求される場合には、前記金属及び前記導電性樹脂の他に、前記樹脂等で形成した絶縁性芯体の表面に定法によりメッキを施すことにより、軸体2を形成することができる。前記材料の中でも、容易に導電性を付与することができる点で、金属であるのが好ましく、快削鋼、アルミニウム又はステンレス鋼であるのが特に好ましい。
【0051】
軸体2は、所望により、その外周面にプライマー層が塗布されてもよい。プライマー層を形成するプライマーは、所望により溶剤等に溶解され、定法、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、軸体2の外周面に塗布され、硬化される。プライマーとしては、特に制限はないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。所望により、前記樹脂を硬化及び/又は架橋する架橋剤を用いることができ、このような架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が挙げられる。プライマー層は、例えば、0.1〜10μmの厚さに形成される。
【0052】
次いで、この発明に係るローラの製造方法においては、このようにして形成された軸体2の外周面に配置された後述するゴム組成物を硬化して、発泡弾性層3を形成する。例えば、発泡弾性層3は、公知の成形方法によって、成形と加熱硬化とを同時に又は連続して行い、軸体2の外周面に形成される。ゴム組成物の成形方法は、軸体2の外周面にゴム組成物を配置することができる方法であればよく、例えば、押出成形による連続加硫、プレス、インジェクションによる型成形等、特に制限されるものではない。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、成形方法として押出成形等を選択することができる。発泡弾性層3を形成するゴム組成物は後述する。
【0053】
ゴム組成物の硬化条件は、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物が硬化し、発泡剤を含有する場合には、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な硬化条件であればよく、ゴム組成物の組成、発泡剤の種類等に応じて適宜調整される。例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、硬化条件は、通常、100〜400℃、特に200〜400℃の加熱温度、数分以上1時間以下、特に5分以上30分以下の加熱時間であるのが、前記範囲の平均セル径を有する独立セルを有し、前記範囲の発泡率を有する発泡弾性層3とすることができる点で、好ましい。
【0054】
この発明に係る製造方法において、このようにして硬化された発泡弾性層3は、必要に応じて、二次硬化されることもできる。二次硬化条件は、特に限定されないが、例えば、ゴム組成物が後述する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である場合には、二次硬化条件は、前記硬化させた状態のままで、180〜250℃、特に190〜230℃の加熱温度、及び、1〜24時間、特に3〜10時間の加熱時間であるのがよい。
【0055】
この発明に係る製造方法において、このようにして形成された発泡弾性層3は、必要に応じて、弾性層調整加工が施されることもできる。弾性層調整加工は、研磨加工装置、研削加工装置及び切削加工装置等の機械加工装置又は器具等を用いて、発泡弾性層3を所望の寸法に調整し、及び/又は、発泡弾性層3の表面状態を所望の状態等に調整する加工である。弾性層調整加工は、例えば、研磨加工、研削加工及び切削加工等が挙げられる。
【0056】
このようにして形成された発泡弾性層3は、後述するスリーブ4の内径よりも大きな外径を有しており、例えば、スリーブ4の内径に対して、100〜105%の外径を有しているのがよく、100〜102%の外径を有しているのが特によい。発泡弾性層3の外径が前記範囲に調整されていると、後述する圧力環境下において発泡弾性層3が速やかに縮径すると共に、この圧力環境を解除すると発泡弾性層3が速やかに復元する。
【0057】
このようにして、軸体2の外周面に発泡弾性層3が形成された、図4に示されるローラ原体7を製造することができる。
【0058】
一方、この発明に係る製造方法においては、スリーブ4を準備する。スリーブ4は前記金属材料で両端開口部を有する筒状体に形成される。スリーブ4は、例えば、20〜150μmの厚さに調整され、また、その内径は、前記発泡弾性層3の外径よりも小さく、例えば、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径に対して後述する範囲となるように、調整される。スリーブ4は、例えば、スピニング加工方法、しごき加工方法によって、筒状体に形成される。このスリーブ4は、少なくとも外周面が平滑に調整されているのが好ましい。
【0059】
この発明に係る製造方法においては、所望により、ローラ原体7における発泡弾性層3の外周面に接着剤を塗布する。この接着剤は、発泡弾性層3の外周面に、好ましくは発泡弾性層3の外周面に均一に、塗布される。なお、接着剤は、発泡弾性層3に代えて、又は、加えて、スリーブ部の内周面に塗布してもよい。発泡弾性層3の外周面等に接着剤を塗布する方法は、特に限定されず、スプレー法、浸漬法、リングコーター法、ロールコーター法等が挙げられる。接着剤を発泡弾性層3の外周面等に塗布する際に、接着剤を希釈剤等で適宜希釈することができる。流動性接着剤は、発泡弾性層3の外周面等に均一に容易に塗布されることができるうえ、接着剤が塗布された塗布層内に気泡等が発生し、又は、気泡等が混入すること等を効果的に防止することができる。その結果、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤の塗布量は、接着剤層5の厚さが前記範囲内となるように、調整されればよく、例えば、シリコーン系組成物の場合には、0.01〜0.1g/cm程度に調整される。
【0060】
次いで、製造装置10を用いて、所望により接着剤が塗布されたローラ原体7を、加圧環境下又は減圧環境下で、常温又は加熱下において、スリーブ4内に挿入する。
【0061】
ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するには、まず、図5に示されるように、筐体11、並びに、閉塞端部12及び13を組み立て、前記のようにして作製したスリーブ4を載置部材15における載置面16上に載置して、スリーブ4を所定の位置に配置する。次いで、所望により接着剤が外周面に塗布された発泡弾性層3を備えたローラ原体7における軸体2の一方の端部を30に挿入して、第1の装着部材23に固定し、また、軸体2の他方の端部を31に挿入して、第2の装着部材24に固定する。このようにして、支持軸21及び22でローラ原体7を挟持し、支持軸22を、筐体11、載置部材15、載置部材15の載置面16に載置されたスリーブ4及び閉塞端部13に貫通させて、ローラ原体7を、スリーブ4に対して支持部材20の軸線方向上流側(スリーブ4の上流側)に所定の間隔をあけて直列になるように配置し、閉塞端部12で筐体11を閉塞して、加圧装置10を組み立てる。このようにローラ原体7を配置すると、図5に示されるように、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との間に、スリーブ4に向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有する固定具35が位置する。
【0062】
次いで、圧力調整装置14を起動し、製造装置10内を加圧又は減圧する。製造装置10内を加圧する場合には、例えば、筐体11内を0.15〜0.48MPaに調整する。製造装置10内の圧力が前記圧力範囲内に到達した後、この圧力範囲をある程度の時間、好ましくは5分間以内にわたって保持し、特に好ましくは数秒以上3分以下にわたって保持する。そうすると、発泡弾性層3は、セル内の気体等が加圧されてセル自体が縮小すると共に発泡弾性層3も縮小するから、その外径は、次第に小さくなり、例えば図6に示されるようにスリーブ4の内径よりも小さくなる。発泡弾性層3を縮小する割合は、スリーブ4の内径よりも小さければ特に限定されない。
【0063】
製造装置10内を減圧する場合には、例えば、3〜100hPaに調整する。製造装置10内の圧力が前記圧力範囲内に到達した後、この圧力範囲をある程度の時間、好ましくは数秒以上2時間以下にわたって保持し、特に好ましくは数秒以上1時間にわたって保持する。そうすると、発泡弾性層3は、初期においてはセル内の圧力が減圧環境下よりも大きいものの、所定の減圧環境下にしばらく置かれると、セル内の気体等が徐々に発泡弾性層3から放出されるから、その外径は、一旦拡径した後、次第に小さくなり、例えば図6に示されるようにスリーブ4の内径よりも小さくなる。発泡弾性層3を縮小にする割合は、スリーブ4の内径よりも小さければ特に限定されない。
【0064】
このようにして、発泡弾性層3の外径がスリーブ4の内径よりも小さくなった状態で、支持部材20における第1の支持軸21及び第2の支持軸22を手動又は自動により、スリーブ4側(支持部材20の軸線方向の下流側、具体的には図6において下側)に、前進させ、図7に示されるように、支持部材20に支持されたローラ原体7をスリーブ4内に挿入する。このとき、支持部材20は、筐体11内を貫通すると共に、支持部材20における軸線方向の2箇所が封止部材17で固定されているから、支持部材20の軸線方向における前後進によって、支持部材20の軸線がぶれることなく、1つの直線(図6において一点鎖線で示されている。)を軸線として、前後進する。そして、支持部材20が前進すると、図6に示されるように、固定具35すなわちテーパ部が、まず、スリーブ4内に進入し、スリーブ4内を移動しつつ、スリーブ4に軸線のずれ及び/又は形状の変形が生じている場合には、このずれ及び形状の変形を修正する。このように、テーパ部は、スリーブ4内をその軸線方向に移動しつつ、テーパ部の背後に位置するローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4への挿入を案内する。すなわち、ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4への挿入に先立って、テーパ部がスリーブ4内に進入し、スリーブ4のずれ及び形状の変形を修正して、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線を一致させつつ、ローラ原体7(発泡弾性層3)をスリーブ4の内部に案内する。
【0065】
このようにして、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線が一致するように、ローラ原体7(発泡弾性層3)をスリーブ4内に容易に挿入することができる。ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4内への挿入が完了すると、支持部材20の装着部材24は、スリーブ4の内径よりも小さな外径を有し、載置部材15は筐体11の前記した位置に設置されているから、スリーブ4の内部及び載置部材15を経由し、載置部材15と閉塞端部13との間に画成される空間内に到達する(図7参照。)。
【0066】
ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4内への挿入は、加圧環境下であっても減圧環境下であっても、常温下又は加熱下において、実施する。なお、発泡弾性層3の外周面に接着剤が塗布されている場合には、当然に、流動性接着剤の硬化温度未満に加熱される。操作性等を考慮すると、常温下において、ローラ原体7をスリーブ4内に挿入するのがよい。
【0067】
次いで、発泡弾性層3が収縮したローラ原体7をスリーブ4内に挿入した状態を保持したまま、前記圧力環境下における加圧状態又は減圧状態を解除し、所望により、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を製造装置10から取り出し、大気圧下に静置する。そうすると、スリーブ4の内径よりも小さく縮径した発泡弾性層3は徐々に拡張又は拡径し、その外周面がスリーブ4の内周面に(接着剤層を介して)当接し、最終的には圧接する。なお、スリーブ4に挿入されたローラ原体7を静置する時間は、圧力環境下における圧力及び圧力環境下に置かれた時間等により、適宜選択されるが、通常、10秒以上1時間以下である。
【0068】
なお、発泡弾性層3の外周面及び/又はスリーブ4の内周面に接着剤を塗布した場合には、発泡弾性層3とスリーブ4との間に存在する接着剤を硬化させる。接着剤を硬化させる条件は、塗布した接着剤に応じて、選択される。このようにして接着剤を硬化すると、発泡弾性層3とスリーブ4とを強固に接着することができる。接着剤を硬化させる装置は、前記硬化条件を実現可能な装置であればよく、例えば、オーブン、送風乾燥機、赤外線加熱器等の各種加熱器及び各種乾燥機等が挙げられる。
【0069】
製造装置10を用いて、このようにして、発泡弾性層3とスリーブ4とを備えた弾性ローラ1A、及び、発泡弾性層3とスリーブ4と所望により接着剤層5とを備えた弾性ローラ1Bを製造することができる。
【0070】
弾性ローラ1A及び1Bは、製造装置10を用いて製造されるから、載置面16上に、すなわち、製造装置10内にスリーブ4を起立状態に配置したときに、スリーブ4等の軸線が垂直方向からずれても、スリーブ等がゆがんで蛇腹状に変形しても、また、スリーブ4の軸線方向に垂直な断面の形状が変形しても、テーパ部がスリーブ4に生じた軸線のずれ及び形状の変形を修正しつつ、ローラ原体7(発泡弾性層3)のスリーブ4への挿入を案内し、その結果、スリーブ4内に挿入されたローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線が一致する。そして、このように、ローラ原体7(発泡弾性層3)とスリーブ4との軸線が一致しているから、たとえ、発泡弾性層3におけるセル等のばらつきによって発泡弾性層3の半径方向への膨張速度等が一定でなくても、膨張した発泡弾性層3の軸線もまたスリーブ4の軸線と一致する。したがって、製造された弾性ローラ1A及び1Bは、振れ精度が高く、さらに、複数の弾性ローラ1A及び1Bを製造しても振れ精度のばらつきが小さく、製造装置10を用いると、振れ精度の高い弾性ローラを再現性よく製造することができる。例えば、この発明に係る製造装置10を用いて、弾性ローラを製造すると、発泡弾性層3の振れ精度は、通常、0.15mm以下の範囲内に調整される。
【0071】
弾性ローラの振れ精度は、発泡弾性層3の円周方向における厚さの均一性、すなわち、厚さの振れ(振れと称することがある。)を示す精度である。例えば、図8(a)に示されるように、ローラ1Cは、その発泡弾性層3Bが、軸線方向において、軸体2の軸線2Cとその軸線とがずれて軸体2の外周面に形成され、ローラ1CのA−A線における断面が図8(b)に示されている。図8を参照すると、発泡弾性層3Bの振れは、発泡弾性層3Bの最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)、換言すると、軸体2の軸線2Cから発泡弾性層3Bの外周面までの最長距離Lと最短距離Lとの差(L−L)として、算出される。
【0072】
すなわち、発泡弾性層3Bの振れは、少なくとも、発泡弾性層3Bにおける中央部と両端部近傍との3点における、発泡弾性層3Bの最大厚さ(tmax)と最小厚さ(tmin)との差(tmax−tmin)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(tmax−tmin)(mm)で算出される。又は、少なくとも、発泡弾性層3Bにおける中央部と両端部近傍との3点における、軸体2の軸線2Cから発泡弾性層3Bの外周面までの最長距離Lと最短距離Lとの差(L−L)を示した値であり、より具体的には、各測定点において、式(L−L)(mm)で算出される。ここで、発泡弾性層3Bの振れは、ローラ1Cを軸体2の軸線2Cを中心として回転させながら、レーザー測長機により、各測定点における、発泡弾性層3Bの厚さ、又は、軸体2の軸線2Cから発泡弾性層3Bの外周面までの距離を測定し、測定された最大厚さと最小厚さとから、又は、測定された最長距離と最短距離とから、前記式により算出することができる。
【0073】
発泡弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末、シロキサン結合が(CHSiO3/2で表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
【0074】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有し、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有してもよい。
【0075】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0076】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0077】
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセルを形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、発泡剤の種類によって相違するが、発泡弾性層3のアスカーC硬度が20〜60となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の配合量が、0.1質量部未満であると、形成される発泡弾性層3に十分なセルを形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、発泡弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0078】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環又は分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0079】
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0080】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0081】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0082】
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0083】
前記カーボンブラックは、通常、その製造方法によって、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等に類別され得るが、硫黄、アミン等の含有量が多いと、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物の付加反応を阻害することがあるので、硫黄、アミン等の含有量が少ないカーボンブラック、例えば、アセチレンブラックが好適に使用される。前記酸化鉄は、黒色ベンガラ(Fe)及び赤色ベンガラ(Fe)が好ましく挙げられる。前記酸化セリウム及び前記水酸化セリウムは、単独で使用されてもよいが、前記カーボンブラック及び/又は前記酸化鉄と共に使用されるのが、発泡弾性層3の硬度変化を抑えることができる点で、好ましい。
【0084】
前記耐熱性向上剤の総配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜35質量部であるのがよく、1〜10質量部であるのが特によい。耐熱性向上剤の総配合量が前記範囲であれば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量は、特に限定されない。例えば、カーボンブラックの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜15質量部であるのがよく、0.2〜15質量部であるのがさらによく、2〜10質量部であるのが特によい。ベンガラの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0〜30質量部であるのがよく、0.2〜30質量部であるのがさらによく、2〜20質量部であるのが特によい。酸化セリウム及び水酸化セリウムの配合量はそれぞれ、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜5質量部であるのがよく、0.2〜2質量部であるのが特によい。
【0085】
前記各種添加剤は、例えば、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0086】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0087】
ゴム組成物は、その比重は特に限定されないが、ゴム組成物の比重は発泡弾性層3の密度にもある程度影響を与えるから、画像形成装置に配設される各種ローラに応じて、所定の比重に調整される。ゴム組成物の比重は、通常、1.00〜2.00であるのが好ましく、1.05〜1.50であるのがさらに好ましい。
【0088】
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0089】
この発明に係る製造方法は、前記した製造方法に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、この発明に係る製造装置10は、1本のローラ原体7と1本のスリーブ4とを収納するように、構成されているが、この発明において用いられる製造装置は、複数本のローラ原体と複数本のスリーブとをそれぞれ収納して、スリーブに挿入されたローラ原体を、一度に又は連続して、複数形成することができるように、構成されていてもよい。
【0090】
また、この発明に係る製造装置10は、外径が次第に小さくなるテーパ部を有する固定具35を備えているが、この発明において、固定具におけるテーパ部の外表面は、平坦である必要はなく、例えば、凹凸面であってもよい。例えば、凹凸面として、テーパ部の外表面に半球状等の凸部を有する凹凸面、溝等の凹部を有する凹凸面、及び、前記凸部及び前記凹部を有する凹凸面等が挙げられる。なお、前記凸部及び前記凹部の形状、数、配置パターン等は特に限定されない。溝等の凹部を有する凹凸面の一例として、例えば、図10に示される凹凸面を有する固定具が挙げられる。この固定具36は、図10に示されるように、その外周面に、固定具36の軸線方向に延在し、所定の幅を有する溝37が、等間隔で4本形成されている。このように、固定具36の外周面に溝37が形成されていると、固定具37がスリーブ4内に進入する際に、スリーブ4内に存在する空気を、溝37を介して、固定具36の後方すなわちスリーブ4外に流出させることができる。その結果、固定具36のスリーブ4への進入時の空気抵抗を低減することができると共に、固定具36の進入によってスリーブ4の揺動を効果的に防止することができる。図10に示される固定具36は、それが装着されている円筒体38の外周面に、その軸線方向に前記溝37から連続して延在する溝39が形成されている。このような溝39が形成されていると、スリーブ4内の空気を、溝37及び溝38を介して、より一層速やかにスリーブ4外に流出させることができる。これらの溝37及び38の形状、数、幅、形成位置等は図10に示される固定具36及び円筒体38に形成された溝のそれに限定されないことはいうまでもない。
【0091】
また、弾性ローラ1は、スリーブ4が最外層とされているが、この発明においては、スリーブは最外層である必要はなく、スリーブは外部加熱手段によって加熱される位置に形成されればよい。また、弾性ローラは、用途に応じて、軸体内、弾性層内、又は軸体と弾性層との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。
【0092】
さらに、この発明においては、スリーブ4の外周面に、所望により、他の層、例えば、弾性層、離型層、コート層、表面層及び/又は保護層等が形成されてもよい。弾性層は弾性を確保するための層であり、各種のゴム等で形成されればよく、ゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。弾性層の厚さは20〜500μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましい。また、離型層は現像剤の離型性を確保するための層であり、各種の樹脂、カップリング剤等で形成されればよく、樹脂としては、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、カップリング剤としては、シランカップリング剤等が挙げられる。離型層の厚さは15〜200μmであるのが好ましく、20〜50μmであるのが特に好ましい。コート層、表面層及び保護層は、スリーブ4の外周面に定法に従って、通常、1〜100μmの厚さに、形成される。コート層、表面層及び保護層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1は被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なお、この発明において、スリーブ4は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体、又は、前記金属材料で形成された一層構造の筒状体の外周面に、シリコーンゴムで形成された弾性層とフッ素樹脂で形成された離型層とがこの順で積層された積層体であるのが好ましい。
【0093】
この弾性ローラ1は、例えば、図9に示される画像形成装置40、より具体的には、この画像形成装置40の定着装置60に内蔵される定着ローラ61として、配設される。
【0094】
図9に示されるように、画像形成装置40は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体41例えば感光体と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41を帯電させる帯電手段42例えば帯電ローラと、像担持体41の上方に設けられ、像担持体41に静電潜像を形成する露光手段43と、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に一定の層厚で現像剤52を供給し、静電潜像を現像する現像手段50と、像担持体41の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体41から記録体46に転写する転写手段44例えば転写ローラと、記録体46の搬送方向の下流に設けられ、記録体46に転写された現像剤52(静電潜像)を定着させる定着装置60と、記録体46に転写されず像担持体41に残留した現像剤52及び/又は像担持体41に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段45とを備えて成る。
【0095】
図9に示されるように、現像手段50は、像担持体41に対向する位置に開口部を有し、現像剤52を収納する現像剤収納部51と、現像剤収納部51内に設けられ、現像剤52を均一に攪拌する攪拌機53と、現像剤収納部51の開口部に、像担持体41に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体41に現像剤52を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体54例えば現像ローラと、現像剤担持体54の上方に設けられ、現像剤担持体54に当接して現像剤52の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤52を帯電させる現像剤規制部材55例えば弾性ブレードとを備えて成る。
【0096】
図9に示されるように、定着装置60は、記録体46を通過させる開口65を有する筐体64内に、定着ローラ61と、定着ローラ61と対向配置された加圧ローラ62と、定着ローラ61を外部から加熱する外部加熱手段63とを備え、定着ローラ61と加圧ローラ62とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る。加圧ローラ62はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、定着ローラ61に当接又は圧接している。この定着装置60は、外部加熱手段63として加熱用コイルが装備され、誘導加熱方法が採用されている。外部加熱手段63としての加熱用コイルは、定着ローラ61における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着ローラ61の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ61に略並行に配置されている。この加熱用コイルは、図示しないが、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。加熱用コイル63の導線に高周波の交流が通電されると、スリーブ4内に渦電流が発生し、そのジュール熱によって、スリーブ4が誘導加熱され、その結果、定着ローラ61が加熱される。
【0097】
この定着装置60において、外部加熱手段は、誘導加熱方法の他に、ハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法等を採用することができ、外部加熱手段が配置される位置も特に限定されない。なお、この定着装置60は、外部加熱手段に代えて、又は、外部加熱手段に加えて、内部加熱手段を採用することもできる。
【0098】
画像形成装置40は、次にように作用する。まず、図9の矢印に示されるように、像担持体41が時計方向に回転しつつ、クリーニング手段45によってその表面の現像剤52及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段42によって一様に帯電され、次いで、露光手段43によって画像が露光され、像担持体41の表面に静電潜像が形成される。
【0099】
一方、現像手段50において、現像剤担持体54が図9に示される矢印方向に回転することによって、現像剤52が現像剤担持体54に供給され、供給された現像剤52が現像剤担持体54と現像剤規制部材55との間を通過して、所望の層厚に規制されると共に所望のように帯電される。
【0100】
次いで、所望の層厚及び帯電量を有する現像剤52が現像剤担持体54を介して像担持体41に供給され、像担持体41に形成された静電潜像が現像剤52によって現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。次いで、像担持体41上に現像された現像剤像は、像担持体41と転写手段44との間に搬送される記録体46上に転写手段44によって転写される。現像剤像が転写された記録体46は、定着装置60に搬送され、加圧ローラ62と加熱用コイル63によって加熱された定着ローラ61との当接部又は圧接部を通過する際に、加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像(静電潜像)が永久画像として記録体46に定着される。このようにして、記録体46に画像を形成することができる。
【0101】
そして、この画像形成装置40は、定着ローラ61として、発泡弾性層3の外周面に平滑なスリーブ4を有する弾性ローラ1を備えているから、高品質の画像を長期間にわたって形成することができる。
【0102】
画像形成装置40は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、弾性ローラ1が配設される画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置40は、現像手段に単色の現像剤のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、弾性ローラ1が配設される画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置40は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】図1は、この発明に係る弾性ローラの製造装置を用いて製造される弾性ローラの一実施例を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る弾性ローラの製造装置を用いて製造される弾性ローラの別の一実施例を示す概略斜視図である。
【図3】図3は、この発明に係る弾性ローラの製造装置の一実施例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、ローラ原体の一実施例を示す概略斜視図である。
【図5】図5は、この発明に係る弾性ローラの製造装置にローラ原体及び金属製スリーブを収納した状態を説明する概略説明図である。
【図6】図6は、この発明に係る弾性ローラの製造装置において、ローラ原体に先立ってテーパ部を金属製スリーブに挿入する途中の状態を説明する概略説明図である。
【図7】図7は、この発明に係る弾性ローラの製造装置において、ローラ原体を金属製スリーブに挿入した状態を説明する概略説明図である。
【図8】図8は、発泡弾性層の振れ精度を説明する説明図であり、図8(a)は弾性ローラの正面図であり、図8(b)は図8(a)のA−A線における断面図である。
【図9】図9は、この発明に係る画像形成装置の一実施例を示す概略説明図である。
【図10】図10は、この発明に係る弾性ローラの製造装置における固定具の別の一実施例を説明する説明図であり、図10(a)はこの固定具の側面を示す概略側面図であり、図10(b)はこの固定具を第1の支持軸22側から見たときの固定具の正面を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0104】
1A、1B、1C 弾性ローラ
2 軸体
2C 軸体の中心軸
3、3B 発泡弾性層
3C 発泡弾性層の中心点
4 スリーブ
5 接着剤層
7 ローラ原体
10 製造装置
11 筐体
12、13 閉塞端部
14 圧力調整装置
15 載置部材
16 載置面
17 封止部材
20 支持部材
21、22 支持軸
23 第1の装着部材
24 第2の装着部材
30、31 軸体挿入穴
32、33、38 円筒体
34、35、36 固定具
37、39 溝
【0105】
40 画像形成装置
41 像担持体
42 帯電手段
43 露光手段
44 転写手段
45 クリーニング手段
46 記録体
50 現像手段
51 現像剤収納部
52 現像剤
53 攪拌機
54 現像剤担持体
55 現像剤規制部材
60 定着装置
61 定着ローラ
62 加圧ローラ
63 外部加熱手段
64 筐体
65 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡弾性層の外周面にスリーブを備えてなる弾性ローラの製造装置であって、
軸線方向に前進すると共に、スリーブに対して前記軸線方向の上流側に発泡弾性層を配置する支持部材を備えて成り、
前記支持部材は、前記スリーブをその軸線方向に貫通するように設置され、前記発泡弾性層を前記上流側に配置したときに、前記発泡弾性層と前記スリーブとの間に、前記スリーブに向かって外径が次第に小さくなるテーパ部を有することを特徴とする弾性ローラの製造装置。
【請求項2】
前記支持部材は、
前記軸体の一方の端部が装着される第1の装着部材を端部に有する第1の支持軸と、
前記軸体の他方の端部が装着され、前記テーパ部を有する第2の装着部材を端部に有すると共に、前記スリーブを貫通する第2の支持軸とを備え、
前記第1の装着部材と第2の装着部材とが相対向するように配置されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の弾性ローラの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−86204(P2009−86204A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−254663(P2007−254663)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【復代理人】
【識別番号】100118809
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 育男
【Fターム(参考)】