説明

弾性ローラ及びそれを用いた画像形成装置

【課題】 ウレタン樹脂を含む樹脂層を表層とする弾性ローラにおいて、付着性を低減し、被膜の強度を向上し優れた耐久性を持つ樹脂表層を採用する弾性ローラを提供することにある。また、その弾性ローラを用いた現像装置や画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 軸芯体の外周に2以上の層を積層して弾性ローラとする際に、表層をウレタン樹脂を含む樹脂層とし、かつ樹脂層中に、樹脂成分に対して糖アルコールまたは糖アルコール由来の成分を0.050〜5.0質量%含有させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラに関し、より具体的には、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の受信装置など、画像形成に電子写真方式を採用した装置(以降、電子写真装置と総称する)において主に使用される弾性ローラ、並びに、その弾性ローラを用いた現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタなど、その画像形成に電子写真方式を利用する電子写真装置では、その画像形成工程において、各種の目的にあった弾性ローラが利用されている。例えば、一成分現像方式の電子写真装置では、感光体表面に形成された静電潜像を現像剤により顕像化する工程、すなわち、現像工程では、その表面に現像剤が担持されている現像ローラを、潜像担持体としての感光体表面に圧接させて、現像剤を移動させる方法が利用されている。この工程で用いる現像ローラの弾性体層は、その弾性部材を感光体に対して所定の接触幅をもって圧接する必要があり、変形しやすく、同時に変形回復性(セット回復性)にも優れ、かつ現像剤がローラ表面に付着することにかかる表面特性(以下、付着性という)が低いものが望まれる。また、現像器において供給される現像剤を、現像ローラの表層に当接するブレードなどを用いて、弾性体層上に薄層化して担持させる上でも、現像ローラ表面の弾性体層は変形しやすく、変形回復性に優れること、またその現像剤の現像ローラ表面への付着が起き難いことが必要である。
【0003】
その他、画像形成工程において、直接あるいは間接的に感光体表面と当接または圧接する形態で使用される弾性ローラとしては、接触帯電型の帯電器において利用される帯電ローラがある。また、現像された感光体表面の現像剤からなる画像(トナー像)をコピー用紙などの転写紙上に転写する工程においても、感光体表面の帯電と異なる極性に帯電する転写ローラが利用される。これら帯電ローラや転写ローラなども、その弾性部材を感光体と所定の接触幅をもって圧接する必要があり、変形しやすく、また、変形回復性にも優れるもの、そして表面への現像剤の付着性の低いものが望まれる。
【0004】
上記のとおり電子写真装置に用いられる弾性ローラは、個々の用途に応じた機能、例えば、現像ローラにおいては現像剤の担持特性、また、帯電ローラや転写ローラでは、帯電性に関連する導電特性など、個々の用途により異なる性能に加え、弾性ローラとして共通する要求性能も多岐に渡る。
【0005】
この弾性ローラとして共通する要求性能の中でも、適正な当接状態を維持する上で重要となる、変形回復性(すなわち、セット性)に対して、従来より、様々な提案がなされている。例えば、弾性ローラの最も外側に位置する表層として被覆された樹脂層においてウレタン樹脂を用いることにより、比較的好ましい性能が得られることが知られている。
【0006】
本発明者らは、特開2002-257130公報において、弾性層の硬度、圧縮永久歪みと、その外周の樹脂層の永久伸びを、それぞれ好ましい範囲とし組み合わせることにより、変形回復性(セット性)に優れた2層構成の弾性ローラとなることを開示している。
【0007】
一方、変形回復性が得られ易い柔軟な材料を表層に用いた場合には、表層表面への現像剤などの付着性が高くなり、そしてその強度は低くなる傾向がある。このような表層を有する弾性ローラを現像ローラとして用いた場合、現像剤が表面に付着して感光体への良好な現像剤の供給操作に支障が生じたり、樹脂層表面のヒビや割れや削れが起きたりして、良質な画像が得られ難くなる。
【0008】
特開2000-330370公報には、導電性弾性層の表面にアルキッド変性シリコーン化合物とメラミン樹脂との混合物を硬化させてなる樹脂を含有する材料からなる被覆層を有するトナー担持体(現像ローラ)を用いることにより、被覆層に割れや削れが生じることがなく、各種画像不良の発生を防止することが開示されている。
【0009】
また、糖アルコールを用いた電子写真用ローラに関するものとして、特許第3143545号明細書があげられるが、本発明とは趣旨を異にするものである。この明細書に開示される帯電部材は、その樹脂層に、エチレン性不飽和基を有する単量体をカーボンおよびポリオールの存在下で重合させることにより得られる重合体混合物、とポリイソシアネートを反応させることにより得られる導電性ポリウレタン樹脂を含有することを特徴とする。そして、この構成により、高温高湿から低温低湿に至る環境下において安定した導電性を有し、感光体の放電絶縁破壊も生じることなく、感光体表面を非常に均一に帯電することができ、結果として極めて優れた画像を供給し得ることを開示している。その中で、ポリオールに用いられる材料として列記する中に多価アルコール、さらにはその多価アルコールの列記の中に糖アルコールがあげられているが、糖アルコールを用いることによる特定の効果に関する記載はない。
【特許文献1】特開2002-257130公報
【特許文献2】特開2000-330370公報
【特許文献3】特許第3143545号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、電子写真装置に使用される弾性ローラの要求性能は、電子写真装置の高速化、画質の高品位化に伴って、より高度なものとなってきており、さらなる向上が一層求められている。特に表層材料において、柔軟性やセット回復性と共に、現像剤に関する低付着性及び被膜強度の両方の特性の維持、あるいはこれらの特性の更なる向上がなお求められている。
【0011】
本発明はこのような電子写真装置に用いる弾性ローラにおける課題を解決することを目的とするものである。特に、本発明の目的は、ウレタン樹脂を含む樹脂層を表層とする弾性ローラにおいて、付着性を低減し、被膜の強度を向上し優れた耐久性を持つ樹脂表層を採用する弾性ローラを提供することにある。また、その弾性ローラを用いた現像装置や画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究・検討を進めた。ウレタン樹脂において、一般的に柔軟性のあるものは付着性が高く、逆に、付着性が低く良好なものは柔軟性に劣っている傾向があることが確認された。また柔軟性の高いウレタン樹脂にカーボンブラックやその他フィラーを添加すると、現像剤および該現像剤に含まれる外添成分などの付着にかかる表面特性、すなわち付着性は低くなるが、柔軟性やセット回復性が得られなくなってしまう。
【0013】
本発明者らは、上記の知見を基に、更なる研究を進め、軸心体上に設けたローラ層上に表層を設ける積層構成とする弾性ローラにおいて、外側に位置する層(表層)の材料として、そこに糖アルコールを適量含有するウレタン樹脂材料を用いることで、柔軟性に富み、付着性が低く、ヒビや割れの発生のない、耐久性に優れた弾性ローラとなすことが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の弾性ローラは、軸芯体と、該軸芯体の外周面に設けられた二つ以上の層と、を有する弾性ローラであって、最外層としての表層が、主成分としてウレタン樹脂を含む樹脂層からなり、かつ、該樹脂層の樹脂成分中に糖アルコールまたは該糖アルコールに由来する成分を0.050〜5.0質量%含有することを特徴とする弾性ローラである。この弾性ローラは、電子写真方式を用いた画像形成装置における現像ローラ、帯電ローラ及び転写ローラとして好適な特性を有する。
【0015】
本発明にかかる弾性ローラを用いた現像装置は、電子写真方式による静電潜像を形成するための潜像担持体と、現像剤を薄膜状に担持しつつ該潜像担持体の表面に対向して当接もしくは圧接した状態で、前記現像剤を該潜像担持体に形成された静電潜像に供給して該静電潜像を現像するための現像ローラと、を有する現像装置であって、前記現像ローラが上記構成の弾性ローラからなることを特徴とする現像装置である。
【0016】
更に、本発明の画像形成装置は、電子写真方式による静電潜像を形成し得る潜像担持体と、該潜像担持体を静電潜像形成のために帯電させるための帯電装置と、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置と、該静電潜像が形成された該潜像担持体の領域に現像剤を付着させて該静電潜像を顕像化させて画像を得るための現像装置と、該現像剤からなる画像を転写紙に転写するための転写装置と、を有する画像形成装置において、
以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの構成を有することを特徴とする画像形成装置。
(a)前記帯電装置が、前記潜像担持体の表面に当接または圧接した状態での電圧印加により該表面に接触帯電を行うための帯電ローラを有し、該帯電ローラが上記構成の弾性ローラである。
(b)前記現像装置が、前記静電潜像が形成された潜像担持体の表面に現像剤を薄膜状に担持しつつ対向して当接もしくは圧接した状態で該潜像担持体に形成された静電潜像に前記現像剤を供給して該静電潜像を現像するための現像ローラを有し、該現像ローラが上記構成の弾性ローラである。
(c)前記転写装置が、該潜像担持体に該転写紙を挟んで対向して設けられ、前記潜像担持体の帯電と異なる極性での帯電を行うための帯電ローラを有し、該帯電ローラが上記構成の弾性ローラである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の弾性ローラにおいては、ローラ表面を構成する表層に、主成分としてウレタン樹脂を用い、樹脂成分中に糖アルコールまたは糖アルコール由来の構成を0.050〜5.0質量%含有することにより、ローラ表面での付着性を低減かつ被膜の強度を向上し、優れた耐久性を持つ弾性ローラとしたものである。また、本発明の弾性ローラは、現像ローラのみでなく、電子写真装置において、潜像担持体としての感光体などと当接する形態で使用される、帯電ローラ、転写ローラ、さらには、加圧ローラに適用した際にも、適切なニップ幅、表面状態の持続性が安定して得られ、当初の良好な品質を長期にわたり保持することに優れた弾性ローラが簡便に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明にかかる弾性ローラは、ローラの軸芯となる軸芯体と、軸芯体の外周面に設けられた二つ以上の層と、を有し、最外層としての表層が、主成分としてウレタン樹脂を含む樹脂層からなり、かつ、該樹脂層の樹脂成分中に糖アルコールまたは該糖アルコールに由来する成分を含む。
【0019】
例えば、この構成上の特徴をもつ弾性ローラを、現像ローラに適用すると、最表層に柔軟なウレタン樹脂層を用いることで適切なニップ幅が得られ易いと同時に、糖アルコール成分の配合によってローラ表面の付着性が低減され、被膜強度も向上しているので、ローラ表面への現像剤成分の固着等が生じず、適正な量の現像剤をその表面に薄膜化して担持した状態で潜像担持体としての感光体と密に圧接することが可能である。その結果、感光体表面に適量の現像剤を均一に付与でき、より良好な画像形成を行うことができ、なおかつ、その被膜強度が高く、セット回復性も良好であり、優れた耐久性により、その良好な画像品質を長期にわたり保持することができる。
【0020】
また、上記の構成上の特徴をもつ弾性ローラを、帯電ローラに適用した際にも、ウレタン樹脂から得られる柔軟性とその低表面付着性から、感光体表面との接触において当初の密な状態を長期間維持できる。すなわち、帯電効率を高くする上で必要な適切なニップ幅、表面状態の持続性が安定して得られる結果、帯電効率の低下を抑制でき、当初の良好な画像品質を長期にわたり保持することに大きな貢献を果たす。また、転写ローラに適用した際にも、前記帯電ローラにおける効果と同様の効果により、当初の良好な画像品質を長期にわたり保持することに大きな貢献を果たす。
【0021】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
図1と図2に、本発明の弾性ローラに関する構造の一例を模式的に図示する。図1、2に例示の弾性ローラ1は、中心に軸芯体として、通常、金属などの導電性材料で形成される軸芯金11を有し、ローラ層として、軸芯金11の外周面上に弾性体層(基層)12が固定され、この弾性体層12の外周面に樹脂層(表層)13を積層した構造を有する。ここでは、上記のような軸芯体の外周面に二層で構成されてなる弾性ローラで説明する。
【0023】
軸芯体11としては、円柱状または中空円筒状の形状を有し、金属などの導電性材料で形成される軸芯体を用いることができる。なお、かかる弾性ローラが電気的に絶縁された状態で利用される場合(例えば、加圧ローラや搬送ローラ)には、使用に際して、弾性ローラに加わる外力に対して、その軸芯体の形状を堅固に保持できる限り、軸芯体は非導電性材料で形成されていてもよい。また、かかる弾性ローラが電気的なバイアスを印加して、あるいは、接地されて、使用される場合であっても、軸芯体全体を導電性材料で構成する代わりに、主体は、非導電性材料で形成し、その表面に所望の導電性を満足する導電性処理、例えば、良導性の被覆層による被覆を施した構造のものを用いることもできる。
【0024】
電子写真装置に利用される現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラは、電気的なバイアスを印加して、または、接地されて、使用されるのが一般的であるので、軸芯体を導電性の基体、所謂軸芯金11の形態とする。例えば、帯電ローラ用の弾性ローラでは、軸芯金11は、支持部材であることは勿論であるが、帯電部材の電極として機能するものであり、例えば、アルミニウム,銅合金,ステンレス鋼等の金属または合金、あるいは、クロム,ニッケル等で鍍金処理を施した鉄、合成樹脂など、少なくともその外周面は、その上に形成されるローラ層に所定の電圧を印加するに十分な導電性の材質で構成する。電子写真装置に利用される現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラにおいては、軸芯体である導電性基体の外径は、通常4〜10mmの範囲とされる。
【0025】
基層となる弾性体層12は柔軟性を有するものであり、原料主成分としてゴムを用いた成型体として形成したものを用いることができる。弾性体層12の原料主成分のゴムとしては、従来より弾性ローラに用いられている種々のゴムを用いることができる。具体的には、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリルニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム、ウレタンゴム等のゴム材料から選択して用いることができる。所望の弾性体硬度やローラにおける所望とする特性を与える限り、これらの材料は必要に応じて2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのゴム材料に種々の添加剤などを必要に応じて配合して弾性体層を成形することができる。添加剤としては、弾性ローラの個別的な用途に合わせて、弾性体層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤など、また、ゴム成型体とする際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分のゴム材料に適宜配合することができる。これらの添加量も、目的とする用途において要求される特性などに応じて選択することができる。
【0026】
弾性体層に導電性を付与する目的に添加する、導電剤としては、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、銅、錫、ステンレス鋼などの各種導電性金属、または合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタン、酸化錫―酸化アンチモン固溶体、酸化錫―酸化インジウム固溶体などの各種導電性金属酸化物、これらの導電性材料で被覆された絶縁性物質などの微粉末を用いることができる。これらの内、カーボンブラックは、比較的容易に入手でき、また、主成分のゴム材料の種類に依らず、良好な帯電性が得られるため、好適に利用できる。主成分のゴム材料中に、微粉末状の導電剤を分散させる手段としては、従来から利用される手段、例えば、ロールニーダー、バンバリーミキサー、ボールミル、サンドグラインダー、ペイントシェーカーなどを、主成分のゴム材料に応じて適宜利用すればよい。
【0027】
その他、弾性体層に導電性を付与する手段として、導電剤に代えて、あるいは、導電剤とともに、導電性高分子化合物を添加する手法も利用できる。例えば、導電性高分子化合物としては、ホストポリマーとして、ポリアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリピロール、ポリチオフェニン、ポリ(p−フェニレンオキシド)、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリ(p−フェレンビニレン)、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキサイド)、ポリ(ビスフェノールAカーボネート)、ポリビニルカルバゾール、ポリジアセチレン、ポリ(N−メチル−4−ビニルピリジン)、ポリアニリン、ポリキノリン、ポリ(フェニレンエーテルスルフォン)などを使用し、これらにドーパントして、AsF5、I2、Br2、SO3、Na、K、ClO4、FeCl3、F、Cl、Br、I、Kr等の各イオン、Li、TCNQ(7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)等をドープしたものが利用できる。
【0028】
ゴム成型体中に添加可能な非導電性充填剤としては、珪藻土、石英粉末、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミノケイ酸、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0029】
ゴム成型体を作製する際に利用される、架橋剤としては、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイドなどを挙げることができる。例えば、液状シリコーンゴムを用いる際には、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを架橋成分として、白金系触媒を用いて、ゴム成分相互の架橋が図られる。
【0030】
なお、弾性ローラを現像ローラとして用いる場合は、当接する際に均一なニップ幅を確保し、かつ、好適なセット回復性を満たすためには、弾性体層の厚さは、好ましくは、0.5mm以上、より好ましくは、1.0mm以上とすることが望ましい。なお、作製される弾性ローラの外径精度を損なわない限り、弾性体層の厚さに特に制限はないものの、一般に、弾性体層の厚さを過度に厚くすると、ゴム成型体の作製コストを適正な範囲に抑えることが難しく、これらの実用上の制約を考慮すると、弾性体層の厚さは、好ましくは6.0mm以下、より好ましくは5.0mm以下とすることが望ましい。従って、弾性体層の厚さは、0.5〜6.0mmの範囲に選択する構成とすることが望ましく、1.0〜5.0mmの範囲に選択する構成とすることがより望ましい。また、弾性体層の厚さは、その硬度に応じて適宜選択されるものである。
【0031】
弾性体層12の硬度(Asker-C)は、10〜70°の範囲に選択する。硬度(Asker-C)が、10°未満では、ゴム弾性が得られ難くなり、一方、70°を超える場合には、適切なニップ幅を得ることが難しくなってしまう傾向にある。より好ましくは、弾性体層を形成するゴム成型体の硬度(Asker-C)は、15〜55°の範囲に選択することが望ましい。
【0032】
表層となる樹脂層11は、ウレタン樹脂を含有する樹脂層であり、樹脂成分中に糖アルコール及び糖アルコール由来の成分の少なくとも1種を含む。樹脂成分中に含有される糖アルコール及び糖アルコール由来の成分(複数種を用いる場合はそれらの合計量)は、0.050〜5.0質量%の範囲にあるのが適当である。含有量が0.050質量%未満では、添加による効果を得るには十分でなく、表層表面の付着性低減や、表層被膜の強度向上が得られない。一方、含有量が5.0質量%を超えると、ベースとなるウレタン樹脂の柔軟性を損ない硬くなるため、ひび割れ等が発生して不具合が生じる。また、キシリトールを添加する場合には、0.40〜4.0質量%の範囲がより好ましい。ここで糖アルコールの質量百分率を求める際の、「樹脂成分」とは、ウレタン樹脂のポリオール、ジイソシアネート、他樹脂とのブレンドの場合は、その樹脂やそのモノマー成分、硬化剤成分、架橋剤成分などの樹脂そのものやそれを構成する成分で樹脂層の被膜形成成分として主体をなす成分(糖アルコールを含む)を基準とし、導電剤、非導電性充填剤などの添加剤は、含まないものとする。
【0033】
また、糖アルコール由来する成分とは、糖アルコールの炭素原子および酸素原子の構成が維持された状態を意味するものとする。例えば、糖アルコールの水酸基(−OH)有する炭素が、架橋材として用いられるイソシアネート化合物との間に、ウレタン結合を形成したの構成などを指す。具体的には、糖アルコールであるキシリトール(下記式(1)参照)に対し、キシリトール由来の構造(成分)は、下記式(2)に示したものなどがあげられる。
【0034】
【化1】

【0035】
【化2】

樹脂層中に含有される糖アルコールまたは糖アルコール由来の構成の質量%は、実際にローラを作成する際の配合比から計算により求めればよい。また、既に被膜された表層における質量%の求め方としては、その場合に応じ、一般的に知られる方法より適した方法を選択し分析すればよいが、熱可塑ポリウレタン(非架橋ウレタン)の場合は単に溶解させて分析する方法、ウレタン硬化物(架橋ウレタン)の場合には化学分解によりウレタン結合を分解し分析する方法を用いることが出来る。熱可塑ポリウレタンの場合、重DMSO、重DMFに溶解もしくは膨潤させ、13C NMR,1H NMRにて分析するのが適している。ウレタン硬化物の場合、すなわち、化学分解によりウレタン結合を分解し分析する方法としては、例えば、水酸化ナトリウムによる分解、ピリジンを用いた分解等があげられれる。
【0036】
以下に、水酸化ナトリウムによる分解方法の手順を以下に示す。試料1g程度を細かく切り、20質量%水酸化ナトリウム20mlとともに加圧分解容器に入れ、180℃で12時間分解する。冷却後ジエチルエーテルで抽出し、エーテル層をさらに2N塩酸で洗う。エーテル層にはポリエーテルポリオールや、糖アルコール、塩酸水溶液中にイソシアネート由来のジアミン、アルカリ分解液中には鎖延長剤(ジイソシアネート他)が含まれており、13C NMR,1H NMR,IRなどにより成分の同定を行う。ポリエステルポリオールの場合には、ジオール化合物とジカルボン酸に分解されるのでこれを同様に分析し成分の同定を行う。
【0037】
また、ピリジンによる分解方法に関しては、米森重明らの文献(分析化学、41、655、1992)に示されている方法を用いることが出来、ポリエステルポリオールの分子量測定や鎖延長剤との区別が出来る。上記の方法等を用いて、糖アルコールまたは糖アルコール由来の構成の質量%を求めることが出来る。
【0038】
糖アルコールとしては、1分子中に4個以上の水酸基を有するものが好ましく、アドニトール、アラビトール、キシリトール、D-マンニトール、イジトール、タリトール、ズルシトール、マルチトール、ラクチトール、ペンタエリスリトール、メチルグルコシドなどで、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。この中でも、単糖類の糖アルコールが用い易く、かつ効果が顕著で安定している。特に、キシリトール、D-マンニトールがより好ましい。単糖類を用いた場合には、分子量が低く樹脂溶液での運動性が高く、かつ立体障害が少ない等の理由により、効率的に高次架橋構造を得られ易いものと考えられる。また、同じ単糖類であるD-ソルビトールは保湿性に優れた性質を持っており、本発明においては扱い難く、効果も不十分であり、好ましく用いられない。ウレタン樹脂硬化の反応は水分の影響を受け易く、D-ソルビトールの含有水分量(または、その水分量のバラツキ)等が影響しているものと考えられる。
【0039】
この樹脂層(表層)13を形成する被膜の主成分は、ウレタン樹脂が用いられる。例えば、現像ローラの用途では、ウレタン樹脂を用いた場合、トナー帯電性、自己膜補強性、柔軟性を合わせ持つ被膜が得られやすい。
【0040】
利用可能なウレタン樹脂の樹脂膜体としては、例えば、ポリウレタンプレポリマーを架橋反応させる方法で作製したもの、あるいは、ポリオールに添加剤の導電性材料を予め配合し、この配合物中のポリオールを、ワン・ショット法にてポリイソシアネートと反応させ、ポリウレタン樹脂とする方法で作製されるものなどが挙げられる。
【0041】
このワン・ショット法にてポリウレタン樹脂を作製する際には、用いるポリオールとしては、一般の軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に用いられるポリオール、例えば、末端にポリヒドロキシル基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ならびに、両者の共重合物であるポリエーテルポリエステルポリオールが挙げられる。その他に、ポリブタジエンポリオールやポリイソプレンポリオール等のポリオレフィンポリオール、ポリオール中でエチレン性不飽和単量体を重合させて得られる所謂ポリマーポリオール等の一般的なポリオールを使用することもできる。
【0042】
一方、前記のポリオール化合物と反応させるイソシアネート化合物としては、一般的な軟質ポリウレタンフォームやウレタンエラストマー製造に使用されるポリイソシアネート、即ち、トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート及びこれらポリイソシアネートの混合物やその変性物、例えば、部分的にポリオール類と反応させて得られるプレポリマー等が用いられる。
【0043】
また、その他の成分、例えばブレンドする成分等について特に限定されるものではないが、例えば、現像ローラとして用いる場合に、現像剤としてのトナー粒子を担持する機能を考慮すると、自己膜補強性、トナー帯電性等の観点から、ウレタン樹脂に加えて、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂も好ましく用いられる。なお、ウレタン樹脂以外の樹脂の配合比は、ウレタン樹脂の性質を損なわない範囲で、樹脂成分中に、2〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0044】
更に、表層としての樹脂層13を成膜性よく形成するために、弾性ローラの個別的な用途に合わせて、樹脂層自体に要求される機能に必要な成分、例えば、導電剤、非導電性充填剤など、また、弾性層12の外周に成膜積層する際に利用される各種添加剤成分、例えば、架橋剤、触媒、分散促進剤など、各種の添加剤を主成分の樹脂材料に適宜配合することができる。なお、導電剤、非導電性充填剤などの添加剤は、先に弾性体層に含有可能な添加剤として例示したものなどから、主成分の樹脂材料に応じて、適宜選択することができる。また、その添加量は、形成される樹脂層の特性を本発明の効果を発揮する範囲内に維持する限り、添加目的に応じて、適宜選択することができる。
【0045】
樹脂層13の弾性率は、被膜性、耐久性が実用上得られれば、特に制限されることはない。樹脂層13は、弾性体層12の変形に対する高い追従性を示すことが望まれ、従って、樹脂層を形成する樹脂膜体の硬度および弾性率は低い方が好ましい。
【0046】
なお、樹脂層13の厚さは、十分な耐摩耗性を確保するために、3μm以上に選択することが好ましい。一方、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラなどでは、導電性を有する弾性ローラとされ、その際、均一な導電性を実現するために、樹脂層の厚さは、100μm以下に留めることが好ましい。また、樹脂層の厚さを、3μm未満とする場合には、弾性体層表面に所望の薄い膜厚では均一に塗布・形成することが難しく、一方、樹脂層の硬度は、弾性体層の硬度より高いため、100μmを超える膜厚とすると、弾性ローラ全体の変形性に対する影響が大きくなり好ましくない。また、樹脂層の厚さは、上記の範囲でその硬度等に応じて適宜選択されればよい。本発明の樹脂層の厚さは、ローラより切り出したサンプルにより、断面を光学顕微鏡等により観察することにより測定し求めたものである。
【0047】
樹脂層13の形成には、樹脂膜体の原料となる樹脂原料を液状として、弾性体層表面に塗布し、その後、樹脂膜体とする方法を利用することができる。この樹脂原料の塗布方法は、特に限定されないが、エアスプレー、ロールコート、カーテンコート、ディッピング等の方法により、樹脂原料を所望の厚さで、弾性体層表面に均一に塗布する。その後、樹脂膜体とするため、必要に応じ、加熱処理を行う場合がある。
【0048】
以上、弾性体層12及び樹脂層13を軸芯体11上にこの順に積層した2層構造の弾性ローラについて説明したが、本発明にかかる弾性ローラにおける軸芯体外周上の層構成は3層以上の多層構成を有するものであってもよい。例えば、図2に示す構成における弾性体層12と樹脂層13の間に、別の樹脂層を更に設けた弾性ローラや、弾性体層12自体が複数の層(例えば、3つの弾性層が順次積層された構成)で構成される弾性ローラがあげられる。どのような構成においても、最外層としての表層(樹脂層13)の機能が十分に得られる、つまり、本発明の効果が得られれば問題はない。
【0049】
以上に説明した様に、本発明の弾性ローラは、最も外側に位置する表層として被覆された樹脂層において、ウレタン樹脂の持つ柔軟性や変形追従性、セット性を維持したまま、糖アルコール添加により、被膜層の付着性を低減し、被膜の強度を向上し優れた耐久性を持つものとなる。この利点から、本発明の弾性ローラは、電子写真装置等における、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の弾性ローラとして好適に使用できる。特に、現像ローラに用いた場合には、柔軟なウレタン樹脂層を用いることで適切なニップ幅が得られ易いと同時に、表面への現像剤成分の固着等が生じず、適正な量の現像剤をその表面に薄膜化して担持した状態で感光体と密に圧接することが可能となり、感光体表面に適量の現像剤を均一に付与し、より良好な画像形成を行うことができ、なおかつ、その被膜強度が高く優れた耐久性により、その良好な画像品質を長期にわたる使用後も維持できる。更に、利用される電子写真装置自体、高速化され、プロセス速度、すなわち、感光体表面の速度が増す条件において、前記の利点は一層顕著なものとなる。
【0050】
図3は、本発明の弾性ローラを現像ローラとして用いた現像装置、および弾性ローラを現像ローラ、帯電ローラ、あるいは転写ローラの少なくとも1つ以上として用いた画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【0051】
この画像形成装置では、潜像担持体としての感光ドラム21が矢印A方向に回転し、感光ドラム21を帯電処理するための帯電装置22によってそこを通過した感光ドラム21の領域が一様に帯電され、更にこの帯電領域において、静電潜像を書き込む露光手段であるレーザー光23により、その表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、感光ドラム21に対して近接配置され、画像形成装置本体に対し着脱可能なプロセスカートリッジ24(図示せず)に保持される現像装置2によって現像剤たるトナーを付与されることにより現像され、トナー像として可視化(顕在化)される。
【0052】
現像には、露光部にトナー像を形成するいわゆる反転現像などの方式が利用できる。可視化された感光ドラム21上のトナー像(画像)は、転写ローラ29によって紙などの転写紙33に転写される。トナー像を転写された紙33は、定着装置32により定着処理され、装置外に排紙されプリント動作が終了する。転写ローラ33は、感光ドラム21のトナー像を保持する領域に、転写紙33をその裏面から押当てて、トナー像を転写紙の表面に転写させるもので、感光ドラムのトナー像を保持する領域と逆に帯電していることで、トナー像の転写が促進される。転写紙33の感光ドラム21の表面への押し当ては、感光ドラム21と転写ローラ29とが接触している部分に、これらの回転に伴って、転写紙33が自動的に挿入されることにより達成される。
【0053】
一方、転写されずに感光ドラム上21上に残存した転写残トナーはクリーニングブレード30により掻き取られ廃トナー容器31に収納され、クリーニングされた感光ドラム21に対して上記のプロセスを繰り返すことで、同一画像のコピーや、新たな画像の転写を行なうことができる。
【0054】
図示した例では、現像装置2は、一成分現像剤として非磁性トナー28を収容した現像装置34と、現像容器34内の長手方向に延在する開口部に位置し感光ドラム21と対向設置された現像剤担持体としての現像ローラ25とを備え、感光ドラム21上の静電潜像を現像して可視化するようになっている。
【0055】
尚、現像ローラ25は感光ドラム21と当接幅をもって接触している。現像装置2においては、弾性を有する補助ローラ26が、現像容器34内で、弾性ブレード27の現像ローラ25表面との当接部に対し現像ローラ25回転方向上流側に当接され、かつ、回転可能に支持されている。補助ローラ26の構造としては、発泡骨格状スポンジ構造や芯金上にレーヨン、ナイロン等の繊維を植毛したファーブラシ構造のものが、現像ローラ25へのトナー28供給および未現像トナーの剥ぎ取りの点から好ましい。本実施形態においては、芯金上にポリウレタンフォームを設けた直径16mmの補助ローラ26を用いた。
【0056】
この補助ローラ26の現像ローラ25に対する当接幅としては、1〜8mmが有効であり、また、現像ローラ25に対してその当接部において相対速度をもたせることが好ましく、本実施形態においては、当接幅を3mmに設定し、弾性ローラ26の周速として現像動作時に50mm/s(現像ローラ25との相対速度は130mm/s)となるように駆動手段(図示せず)により所定タイミングで回転駆動させている。
【0057】
本発明にかかる弾性ローラは、感光ドラム21の表面のクリーニングされた領域に当接または圧接してこの領域を帯電するための帯電ローラ22や、感光体ドラム21のトナー像を保持する領域に当接または圧接して配置される転写ローラ29としても好適に利用できる。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。これら実施例は、本発明における最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明は、実施例によって、何ら限定されるものではない。実施例に示す手法で作製される弾性ローラは、例えば、現像ローラ等の現像部材、帯電ローラや転写ローラ等の帯電部材、これら各種の個別的な用途において、電子写真装置等で使用される弾性ローラとして好適に使用できる。
[実施例1]弾性ローラ1
軸芯体としてニッケル鍍金を施したSUS製の芯金(φ6mm)の外周面に、さらに接着剤を塗布、焼き付けしたものを用いた。この軸芯体を金型に配置し、原料ゴムとして、液状のシリコーンゴム(末端ビニル基封鎖の直鎖状ポリジメチルシロキサンと、1つのビニル基を有する分岐ポリシロキサンセグメントと、二官能性のジメチルシロキサンを有する直鎖状オイルセグメントとからなるブロックポリマーとからなるポリシロキサン混合物に、架橋剤として1分子中にケイ素結合水素原子を2個以上有したオルガノシロキサンと白金系触媒を加え、混合した付加型シリコーンゴム組成物)100質量部、無機微粉体である耐熱性付与剤としてシリカ粉体4質量部、石英粉末60質量部、導電性付与剤としてカーボンブラック10質量部を混合し、液状ゴムコンパウンドを調製しこれを金型内に形成されたキャビティに注入した。続いて、金型を150℃で20分間加熱してシリコーンゴムを加硫硬化し、冷却した後に脱型することで、厚み4mmの弾性体層を軸芯体の外周に設けたローラを作製した。
【0059】
次に、ポリオール(ニッポラン5025;商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)の固形分100質量部に対し、硬化剤としてイソシアネート(コロネートL;商品名、日本ポリウレタン工業株式会社製)の固形分15質量部、糖アルコールとしてキシリトール(キシリット;商品名、東和化成工業株式会社製)0.10質量部、導電剤としカーボンブラックを適量添加し、メチルエチルケトンを主溶剤として用い、十分に撹拌して、均一な固形分11%の有機溶剤混合溶液となるよう調整した。この塗料溶液中に、上記ローラを浸漬してコーティングした後、引上げて乾燥させ、142℃にて30分間加熱処理することで、約20μmの表面層を弾性体層の外周に設けた弾性ローラ1を作製した。このようにして作製した弾性ローラ1の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、0.087質量%であった。
【0060】
[実施例2]弾性ローラ2
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、0.50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ2を作製した。作製した弾性ローラ2の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、0.43質量%であった。
【0061】
[実施例3]弾性ローラ3
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、3.0質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ3を作製した。作製した弾性ローラ3の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、2.5質量%であった。
【0062】
[実施例4]弾性ローラ4
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、4.7質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ4を作製した。作製した弾性ローラ4の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、3.9質量%であった。
[実施例5]弾性ローラ5
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、5.8質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ5を作製した。作製した弾性ローラ5の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、4.8質量%であった。
【0063】
[実施例6]弾性ローラ6
糖アルコール成分として、キシリトールに代えて、D−マンニトール(マリンクリスタル、東和化成工業株式会社製;商品名)1.2質量部を添加した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ6を作製した。作製した弾性ローラ6の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、1.0質量%であった。
【0064】
[実施例7]弾性ローラ7
糖アルコール成分として、キシリトールに代えて、D−マンニトール(マリンクリスタル、東和化成工業株式会社製;商品名)3.0質量部を添加した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ7を作製した。作製した弾性ローラ7の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、2.5質量%であった。
【0065】
[実施例8]弾性ローラ8
糖アルコール成分として、キシリトールに代えて、マルチトール(レシス、東和化成工業株式会社製;商品名)3.0質量部を添加した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ8を作製した。作製した弾性ローラ8の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、2.5質量%であった。
【0066】
[比較例1]弾性ローラ9
糖アルコール成分を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして弾性ローラ9を作製した。作製した弾性ローラ9の表層の樹脂成分中に、糖アルコール成分は含まれていない。
【0067】
[比較例2]弾性ローラ10
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、0.04質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ10を作製した。作製した弾性ローラ10の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、0.035質量%であった。
【0068】
[比較例3]弾性ローラ11
糖アルコール成分であるキシリトール(キシリット、東和化成工業株式会社製;商品名)の添加量を、10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして弾性ローラ11を作製した。作製した弾性ローラ11の表層の樹脂成分中の糖アルコール成分は、8.0質量%であった。
【0069】
[特性の評価]
以上の様にして得られた弾性ローラを現像ローラとして実機に組み込み、各種の評価を行った。なお、すべての現像ローラの弾性体層および樹脂層には、適宜カーボンブラックを添加し、ローラの電気抵抗が106以下になるように調整した。
・付着性の評価
付着性の評価は、100枚プリント後の現像ローラを取り出し、そのローラ表面をエアスプレーにて空気を吹き付け、表面に付着している現像剤を飛散させ、さらにその表面をメチルアルコールを含んだ布で清拭し評価した。エアスプレーによる吹き付けでローラ表面がきれいに露出し付着物のないものを◎、現像剤に含まれる外添剤等の付着が少し見られるものを○、エアスプレーによる吹き付けでは付着物を除けないが、メチルアルコールを含んだ布で清拭するとローラ表面がきれいに露出するものを△、エアスプレーによる吹き付け、メチルアルコールを含んだ布で清拭のいずれでも付着物の残るものを×とした。
・画像レベル評価
画像レベルおよび耐久性の評価は、初期および6000枚プリント前後における画像上の問題の有無およびその変化、6000枚プリント後のローラ表面状態を観察して判断した。初期、6000枚プリント前後の画像自体の評価は、良好なものを◎、問題がないものを〇、やや濃淡が確認されるものを△、ボタ落ち等の著しい画像不良が確認されるものを×とした。耐久性の評価は、初期および6000枚プリント前後における画像を比較し、経時での変化がなく、いずれも良好もしくは問題のないものを◎、やや低下するが問題のないものを○、経時での変化はないが、画像そのものに問題あるものを△、経時により画像に問題が発生したものを×とした。
・総合評価
以上、総合評価としては、付着性、耐久性に問題がなく、かつ画像レベルが良好なものを◎、付着性、耐久性、画像レベルいずれにも問題がないものを〇、付着性、耐久性のいずれかに問題の生じたものを×とした。
【0070】
上記の基準に基づき評価した結果を、表1に示した。
【0071】
【表1】

表1に示すとおり、実施例1〜8では、付着性、耐久性いずれの性能にも問題はなかった。その中でも実施例2、3、4、6、7は、特に良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の弾性ローラの全体構成の一例を模式的に示す図ある。
【図2】本発明の弾性ローラにおける、ローラ層の二層構造を模式的に示す断面図ある。
【0073】
図1の断面図である。
【図3】本発明の現像装置を用いた画像形成装置の説明図である。
【符号の説明】
【0074】
1…弾性ローラ
2…現像装置
3…画像形成装置
11…軸芯体
12…弾性体層(基層)
13…樹脂層(表層)
21…感光ドラム
22…帯電装置
23…レーザー光
25…現像ローラ
26…補助ローラ
27…弾性ブレード
28…トナー
29…転写ローラ
30…クリーニングブレード
31…廃トナー容器
32…定着装置
33…紙
34…現像容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体と、該軸芯体の外周面に設けられた二つ以上の層と、を有する弾性ローラであって、
最外層としての表層が、主成分としてウレタン樹脂を含む樹脂層からなり、かつ、該樹脂層の樹脂成分中に糖アルコールまたは該糖アルコールに由来する成分を0.050〜5.0質量%含有すること
を特徴とする弾性ローラ。
【請求項2】
前記糖アルコールは、キシリトール及びD-マンニトールの少なくとも1種である請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記樹脂層の層厚は、3〜100μmの範囲に選択されている請求項1または2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
電子写真方式により静電潜像が形成された潜像担持体に現像剤を薄膜状に担持しつつ対向して当接もしくは圧接した状態で前記現像剤を該潜像担持体に形成された静電潜像に供給して該静電潜像を現像するための現像ローラ用である請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【請求項5】
電子写真方式による静電潜像を形成するための潜像担持体と、現像剤を薄膜状に担持しつつ該潜像担持体の表面に対向して当接もしくは圧接した状態で、前記現像剤を該潜像担持体に形成された静電潜像に供給して該静電潜像を現像するための現像ローラと、を有する現像装置であって、
前記現像ローラが請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラからなる
ことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
電子写真方式による潜像担持体での静電潜像の形成に先立ち、該潜像担持体の表面に当接または圧接した状態での電圧印加により該表面に接触帯電を行うための帯電ローラ用である請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【請求項7】
電子写真方式により潜像担持体に形成された静電潜像を現像剤の該潜像担持体への付着により顕像化させて得られた現像剤からなる画像を転写紙に転写させる際に、該潜像担持体に該転写紙を挟んで対向して設けられ、前記潜像担持体の帯電と異なる極性で帯電することで、該転写紙へ前記画像を転写させるための転写ローラ用である請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラ。
【請求項8】
電子写真方式による静電潜像を形成し得る潜像担持体と、該潜像担持体を静電潜像形成のために帯電させるための帯電装置と、該潜像担持体の帯電領域に静電潜像を形成するための静電潜像形成装置と、該静電潜像が形成された該潜像担持体の領域に現像剤を付着させて該静電潜像を顕像化させて画像を得るための現像装置と、該現像剤からなる画像を転写紙に転写するための転写装置と、を有する画像形成装置において、
以下の(a)〜(c)の少なくとも1つの構成を有することを特徴とする画像形成装置。
(a)前記帯電装置が、前記潜像担持体の表面に当接または圧接した状態での電圧印加により該表面に接触帯電を行うための帯電ローラを有し、該帯電ローラが請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラである。
(b)前記現像装置が、前記静電潜像が形成された潜像担持体の表面に現像剤を薄膜状に担持しつつ対向して当接もしくは圧接した状態で該潜像担持体に形成された静電潜像に前記現像剤を供給して該静電潜像を現像するための現像ローラを有し、該現像ローラが請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラである。
(c)前記転写装置が、該潜像担持体に該転写紙を挟んで対向して設けられ、前記潜像担持体の帯電と異なる極性での帯電を行うための帯電ローラを有し、該帯電ローラが請求項1〜3のいずれかに記載の弾性ローラである。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−3629(P2006−3629A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179906(P2004−179906)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】