説明

弾性不織布及びこれを用いた繊維製品

【課題】優れた弾性、優れた柔軟性や適度な応力、優れた風合いを有し、かつ比較的安価で繊維製品用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品を提供する。
【解決手段】不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブにより測定されるヒステリシス比が2〜8の範囲にある弾性不織布およびこれを用いた繊維製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性不織布及びこれを用いた繊維製品に関する。更に詳しくは優れた弾性、優れたアンチブロッキング性、適度な応力、優れた風合いを有し、かつ比較的安価で繊維製品としての用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、身体へのフィット性を向上させる目的で、弾性不織布が好んで用いられるようになってきた。中でも、弾性不織布の持つ適度なフィット感、弾性、伸縮性は、使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープ等に好適である。不織布にこの様な性能を持たせるために、熱可塑性エラストマーを原材料として用いるケースが多いが、伸長強度が高く、例えば絆創膏などに使用するとき、突っ張り感があり、使用時の柔軟性に欠けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、優れた弾性、優れた柔軟性や適度な応力、優れた風合いを有し、かつ比較的安価で繊維製品用途に好適な弾性不織布及びこれを用いた繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、鋭意研究の結果、不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブにより測定されるヒステリシス比が2〜8の範囲にある弾性不織布及びこれを用いた繊維製品によって前記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0005】
本発明は、以下によって構成される。
(1)不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブにより測定されるヒステリシス比が2〜8の範囲にある弾性不織布。
(2)少なくとも一種のエラストマー樹脂を含むことを特徴とする前記(1)項記載の弾性不織布。
(3)不織布を構成する繊維が長繊維である事を特徴とする前記(1)項または前記(2)項に記載の弾性不織布。
(4)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層弾性不織布。
(5)前記(1)〜(3)のいずれか1項記載の弾性不織布または(4)項記載の積層弾性不織布を用いた繊維製品。
【発明の効果】
【0006】
本発明の弾性不織布や積層弾性不織布は、良好な弾性を有し、特に適度なフィット感、弾性、伸縮性が求められる使い捨ておむつ、衣類、キャップ、包帯、テープを始め各種繊維製品に好適に使用可能である。また、エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂の選択によって、良好な弾性とアンチブロッキング性及び適度な伸長時強度を有しながら、風合に優れ、更に燃焼時の有害ガス発生がなく、かつリサイクル可能な弾性不織布や積層弾性不織布を得ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の弾性不織布は、該不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブにより測定されるヒステリシス比が2〜8の範囲にあるものである。
ヒステリシス比が最も優れるものである場合は1を示す。逆にヒステリシス比が大きくなると弾性不織布として劣る性能である。しかし、このヒステリシス比が特定の範囲にある場合に特異的な柔軟性と良好な風合い、更には弾性に優れた弾性不織布が得られる事を発明した。
【0008】
ヒステリシス比とは、例えば次の測定方法により測定されたデータを基に計算する。幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、機械方向を長さ方向にして作成する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で100%(ここでは100mm伸ばすことになる)まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。この時の荷重/伸長カーブを図1に示す。これに基づき下記の計算式によって求められる。
式1・・・・ヒステリシス比=伸長曲線下の面積(S1+S2)/弛緩曲線下の面積(S2)
【0009】
ヒステリシス比は、2より極端に小さくなると弾性の性能は良好となるが、逆に締め付け力が強くなり好ましく無くなる。また、ヒステリシス比が8より極端に大きくなると柔軟性と締め付け力が小さくなるが、弾性の性能が極端に不足し、満足する不織布を得る事ができない。
【0010】
本発明の弾性不織布は、弾性の性能を示す伸長回復率である50%伸長時の回復率として70%以上が好ましく、更に80%以上、90%以上では優れた弾性性能である。
【0011】
本発明に用いられる樹脂としては、発明の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物が好ましい。主成分とは最も多い成分を言う。
エラストマー樹脂とは、常温(20〜30℃)では加硫ゴムと同様な弾性体の性質を持ち(分子中のソフトセグメントによる)、高温では通常の熱可塑性樹脂と同様に既存の繊維成形機をそのまま使って成形することができる(分子中のハードセグメントによる)高分子材料である。具体的には、該樹脂によって成形されたフィルムが常温(20〜30℃)において25%以上伸長可能で、25%伸長時の伸長回復率が85%以上である樹脂を意味する。
このようなエラストマー樹脂としては、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーを挙げることができる。中でも、成形性、耐薬品性、再生可能性、環境保全性(燃焼時の有害物質無)等の観点から、ポリスチレンエラストマーやポリオレフィンエラストマーが好ましい。
【0012】
前記ポリスチレンエラストマーは、芳香族ビニル化合物と、他のコモノマーとを共重合体させることによって得ることができる。他のコモノマーには、芳香族ビニル化合物と共重合が可能なモノマーを使用でき、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンや、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸とメタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール等のアルコールとからなるエステル化合物等を挙げることができる。
【0013】
中でも、前記ポリスチレンエラストマーとしては、主として芳香族ビニル化合物から構成される重合体ブロック(a)を少なくとも1個、主として共役ジエン化合物から構成される重合体ブロック(b)を少なくとも1個有し、かつ共役ジエン部分に由来する二重結合が水素により80%以上飽和されたスチレンブロック共重合体、または芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合体が好ましい。尚、主としてとは、重合体ブロックを構成する化合物が、重合体ブロックの少なくとも50重量%を占めることを示す。
【0014】
該スチレンブロック共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレン等が例示され、特にスチレンが好ましい。これらビニル芳香族化合物は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。また、該スチレンブロック共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が例示され、特にブタジエン及びイソプレンが好ましい。これらは、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いても良い。また、該スチレンブロック共重合体は、化合物の安定性、紡糸性等の点から共役ジエン部分に由来する二重結合の80%以上が水素添加されていることが好ましい。
このようなスチレンブロック共重合体として、具体的には、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体(SEBC)等のブロック共重合体が挙げられる。商品名の具体例として、KRATON G(商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製)、SEPTON(商品名、クラレ(株)製)、タフテック(商品名、旭化成(株)製)、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0015】
前記ポリスチレンエラストマーのランダム共重合体は、該ランダム共重合体を構成する共役ジエン部分に由来する二重結合が水素により80%以上飽和された水添スチレン−ジエン共重合体であることが望ましい。
該水添スチレン−ジエン共重合体を構成する共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,2−ジメチルブタジエン、3−エチルブタジエンが挙げられる。好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンであり、更に好ましくは1,3−ブタジエンである。また、該水添スチレン−ジエン共重合体を構成する芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。好ましくはスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレンであり、更に好ましくはスチレンである。
該水添スチレン−ジエン共重合体は、少なくとも1種の共役ジエン化合物と3〜50重量%の芳香族ビニル化合物との共重合体であって、分子量分布(Mw/Mn=重量平均分子量/数平均分子量)が10以下であり、かつ該水添スチレン−ジエン共重合体を構成するジエン部分のビニル結合含有率が10〜90重量%である共重合体のオレフィン性不飽和結合の少なくとも80%が水素添加された共重合体が好ましい。
商品名の具体例としては、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。
【0016】
前記ポリオレフィンエラストマーとしては、オレフィンモノマーから構成され、モノマーがランダムに配列したランダム共重合体や、ハードセグメントとソフトセグメントとからなるブロック共重合体が例示される。
【0017】
前記ポリオレフィンエラストマーのブロック共重合体としては、具体的には主に水添ジエン共重合体から構成されるものが挙げられる。水添ジエン共重合体としては、1,4−結合を多く含む共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(c)と、1,2−結合及び3,4−結合を多く含む共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロック(d)とからなり、ジエン共重合体中の共役ジエン部分に由来する二重結合が飽和された水添ジエン共重合体が好ましい。尚、ここでいう1,4−結合を多く含む共役ジエン化合物とは、1,2−結合含量と3,4−結合含量と比較して、1,4結合含量が最も多いことを示す。また、1,2−結合及び3,4−結合を多く含む共役ジエン化合物とは、1,4−結合含量と比較して、1,2−結合含量及び3,4−結合含量が最も多いことを示す。尚、共役ジエン化合物を主体とするとは、各重合体ブロック中で共役ジエン化合物の含量が最も多いことを示す。
【0018】
水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(c)中の1,4−結合含量は、70重量%以上であることが好ましく、80重量%以上であることがより好ましい。また、水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(c)の含量は、1〜99重量%が好ましく、5〜65重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。また、水添ジエン共重合体を構成する重合体ブロック(d)中の1,2−結合含量及び3,4−結合含量は、25重量%を超えることが好ましく、30重量%以上がより好ましい。また、前記水添ジエン共重合体中の重合体ブロック(d)の含量は、99〜1重量%が好ましく、95〜35重量%がより好ましく、50〜95重量%が最も好ましい。
【0019】
水添ジエン共重合体の共役ジエン化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレン等が例示されるが、工業的に利用でき、また物性の優れた水添ジエン共重合体を得るためには、共役ジエン化合物として、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンを用いることが好ましい。また、水添ジエン共重合体が、重合体ブロック(c)として、1,2−結合含量が25重量%以下であるポリブタジエンと、共役ジエン化合物を主体とする重合体であって、水添ジエン共重合体を構成する共役ジエン部分の1,2−結合含量及び3,4−結合含量が50重量%以上である重合体ブロック(d)とからなるブロック共重合体であり、例えば、(c)−(d)ブロック共重合体、(c)−(d)−(c)ブロック共重合体、または前記ブロック共重合体単位がカップリング剤残基を介して延長または分岐されたブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体に水素添加を行い、共役ジエン部分に由来する二重結合が70%以上飽和された、数平均分子量が40000〜700000である水添ジエン共重合体である。中でも、CEBCと呼ばれるオレフィン結晶−エチレンブチレン−オレフィン結晶ブロック共重合体を用いて製造した繊維は、弾性に優れるため特に好ましい。CEBCとしては、具体的には、JSR DYNARON(商品名、JSR(株)製)等が挙げられる。また、該CEBCはフェノキシイミン錯体触媒によって得られたものでも構わない。
【0020】
本発明では、水添ジエン共重合体の重合体ブロック(d)が、共役ジエン化合物を70重量%以上含有する芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物との共重合体であって、共役ジエン化合物部分のビニル結合含量が25〜70重量%であり、ブロック構造が(c)−(d−c)n、または(c−d)m(ただし、nは1以上、mは2以上の整数である)で表される直鎖または分岐状のブロック共重合体である水添ジエン共重合体も好ましく利用できる。尚、前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等が挙げられ、特に、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
【0021】
前記ポリオレフィンエラストマーのランダム共重合体とは、2重結合を持つ炭化水素で、C2n(nは2以上の整数)で示されるエチレン、プロピレン、ブテン等のモノマーと、これら以外の少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体であり、特にモノマーがランダムに配列したランダム共重合体である。
本発明においては、密度が0.850〜0.920g/cmの範囲にあるランダム共重合体が好ましい。密度は、弾性に影響を及ぼし、密度が0.920g/cmを大きく超えると、得られる不織布の弾性は極端に低下する傾向にある。
【0022】
該ランダム共重合体は、繊維加工した後の風合と弾性の点から、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体またはプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。更に、エチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとからなる共重合体が好ましく、例えばプロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等との共重合体が挙げられる。前記α−オレフィンの中では、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、1種単独または2種以上を組合せて用いることができる。これらを組合わせたエチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体が好ましい。また本発明に用いられるエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体またはプロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとの共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、曳糸性の点から1.5〜4であることが好ましい。具体的には、エンゲージ(商品名、デュポンダウエラストマージャパン(株)製)、タフマー(商品名、三井化学(株)製)が例示される。また本発明で用いられるポリオレフィン共重合体はメタロセン触媒によって製造された共重合体であっても良い。尚、α−オレフィンに架橋用ジエンモノマーを加えた三元共重合体も含まれ、具体的には、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴムが例示される。
【0023】
前記ポリオレフィンエラストマーとしては、この他に、エラストメリックポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好適に使用することができる。
エラストメリックポリプロピレンは、重合体鎖が結晶性のアイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンと、非晶性のアタクチックポリプロピレンとから構成されるステレオブロック構造をとり、アイソタクチックポリプロピレンまたはシンジオタクチックポリプロピレンをハードセグメントとし、アタクチックポリプロピレンをソフトセグメントとして共重合した構造物である。尚、本発明では、例えば米国特許第4335225号明細書、同第4522982号明細書、同第5188768号明細書に記載されているエラストメリックポリプロピレンが使用できる。これらは単独重合体及び共重合体の両方を意味する。共重合体はプロピレン単位に加えて、分子中にプロピレン単位以外の他のオレフィン単位、例えばエチレン、ブチレン、ペンテンまたはヘキセン単位を含有しても良い。これらは鎖構造中に実質的に立体規則性ブロック配列を有し、例えば、重合体鎖中に選択的に配列されたアイソタクチックポリプロピレン及びアタクチックポリプロピレン序列のブロックよりなる。
【0024】
プロピレン−エチレンブロック共重合体とは、ポリプロピレンとポリ(エチレン−co−プロピレン)とがブレンドの状態で存在しているのではなく、国際公開第00/23489号パンフレットに示されるような、ポリプロピレンセグメントとポリ(エチレン−co−プロピレン)とが化学的に結合した真のブロック共重合体である。具体的には、チタン及びハロゲンまたはチタン、マグネシウム及びハロゲンからなる固体触媒成分とトリエチルアルミニウム等の有機金属化合物からなるオレフィン重合触媒の存在下に、必要に応じて電子供与性化合物を添加して、重合反応器、好ましくは特開平9−87343号公報に例示してあるような管型重合反応器を使用して、好ましくは液相法により短時間で重合領域(i)にて所定量のポリプロピレンセグメントを合成した後、直ちに、短時間で後流にある重合領域(ii)にて所定量のポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメントを合成することにより、ポリプロピレンセグメントとポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメントが化学的に結合(共有結合)したポリプロピレン−b−ポリ(エチレン−co−プロピレン)を含むプロピレン−エチレンブロック共重合体が製造できる。このようにして得られたプロピレン−エチレンブロック共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10万以上であり、ポリ(エチレン−co−プロピレン)セグメント含有量が5〜100重量%未満であり、かつ全エチレン含有量が2〜95重量%である。
【0025】
前記ポリエステルエラストマーとしては、熱可塑性ポリエステルをハードセグメントとし、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールをソフトセグメントとして共重合してなるポリエーテルエステルブロック共重合体が挙げられる。具体的には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸や、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸や、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれた少なくとも1種のジカルボン酸と、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオールや、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環族ジオール、及びこれらのエステル形成性誘導体等から選ばれた少なくとも1種のジオール成分、及び平均分子量が約400〜5000程度のポリエチレングリコール、ポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等から選ばれた少なくとも1種のポリ(アルキレンオキシド)グリコールから構成される三元共重合体である。
【0026】
前記ポリアミドエラストマーとしては、ナイロンをハードセグメントとし、ポリエステルまたはポリオールをソフトセグメントとして共重合した構造物が挙げられる。具体的にはナイロン12−ポリテトラメチレングリコールブロック共重合体が例示される。
【0027】
前記ポリウレタンエラストマーとしては、通常の溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)の存在または不存在下に、数平均分子量1000 〜6000 の末端に水酸基を有するポリエーテル及び/またはポリエステルと、有機ジイソシアネートを主成分とするポリイソシアネートとを反応させた両末端がイソシアネート基であるプレポリマーに、ジアミンを主成分とするポリアミンにより鎖延長したポリウレタンエラストマーが代表例として例示される。
【0028】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、前述したエラストマー樹脂に対して、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、ゴム等の柔軟性付与剤、その他の各種改良剤等も必要に応じて配合しても良い。
【0029】
本発明の弾性不織布は、主に溶融紡糸によって得られる繊維で構成されていればいずれでも構わない。例えば、溶融紡糸によって紡糸して一旦トウとした後に延伸加工と捲縮加工、さらに任意の繊維長に切断し、ステープルファイバーとする。そして、このステープルファイバーをカード機によってウェッブとし、熱風循環機を通し、スルーエアー不織布とする方法や、熱圧着ロールによりエンボス加工したポイントボンド不織布とする方法であってもよい。また、前記で得られたウェッブを水柱交絡法やニードルパンチ法により不織布化させてもよい。特に、紡糸工程と不織布化工程を1工程で行う、直接不織布化法が望ましいが、これに限るものではない。ここで述べる直接不織布化法とは、熱可塑性樹脂を高温高圧空気と共に噴射し開繊配列して不織布を製造する方法(例えばメルトブロー法)、熱可塑性樹脂を紡糸し、延伸、開繊、捕集及び絡合を行って不織布を形成する方法(例えばスパンボンド法)、熱可塑性樹脂の長繊維束を延伸し、捲縮付与後に開繊及び拡幅を行って不織布を製造する方法(例えばトウ開繊法)等を挙げることができる。
【0030】
中でも、生産性、製造コスト、生産の容易性、風合の点からメルトブロー法とスパンボンド法とが好ましい。メルトブロー法によって製造される不織布は、該不織布を構成する繊維の平均径が小さいため、良好な風合を有する。一方、スパンボンド法によって製造される不織布は、該不織布を構成する繊維が延伸された連続の長繊維であるため、不織布強力が強い。尚、これらによって得られる不織布には、必要に応じて界面活性剤等を用いて表面処理を施すことができる。
【0031】
本発明の弾性不織布を構成する繊維は、どのような形態をとっていても構わない。一般的な単一成分からなる単一糸(あらかじめ樹脂を混合した物も含む)、芯/鞘構造を代表とする複合糸、あるいは異成分単一糸の混合、または単一糸と複合糸の混合であっても構わない。複合糸は、前記のごとく芯/鞘構造、偏心芯/鞘構造、海島構造などが挙げられる。また、これらを何らかの外力を加えて分割した分割繊維であっても構わない。さらに、あらかじめ簡易的で安全な溶媒によって可溶できる成分を繊維中に含有させ、繊維化あるいは不織布化した後に溶出させる方法でも構わない。
【0032】
特に、好ましい形態として複合糸が挙げられる。弾性に優れる不織布は、弾性に優れるエラストマー成分を用いることが望ましいが、一般的にエラストマー成分自身が粘着性をもっている。この粘着性は、不織布加工工程や製品加工工程および製品使用時に摩擦抵抗やヌメリ感により悪影響を及ぼす事がある。そのため、この粘着性を緩和させるためにエラストマー成分と比較して粘着性の少ない成分を含む複合繊維が好ましい。粘着性を緩和させるためには、エラストマー成分が繊維表面にできるだけ少ない事が好ましい。従って、エラストマー成分が被覆される形態であることが好ましい。
【0033】
このような粘着性の少ない成分としては、非エラストマー成分が好ましく、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンを挙げることができる。中でも、ポリオレフィンは、得られる弾性不織布に、良好な風合と優れた滑り性を与えることができる上、コストと成形性の点から好ましい。ポリプロピレン及びポリエチレンが更に好ましい。
【0034】
本発明の弾性不織布を構成する複合繊維は、非エラストマー樹脂/エラストマー樹脂の容積比率(%)が50/50〜5/95、好ましくは30/70〜5/95の範囲であることが望ましい。非エラストマー樹脂の容積比率がこの範囲より多いと複合繊維の弾性が不十分であり、少ないとアンチブロッキング性が不十分である。非エラストマー樹脂の容積比率が50容積%を遥かに超えると弾性が低下し、エラストマー樹脂が95容積%を遥かに超えると粘着性が強くなり、アンチブロッキング性と風合が悪くなる。容積比率が上記の範囲であれば弾性不織布の生産安定性もよい。
【0035】
本発明の弾性不織布を構成する複合繊維の構成成分は、少なくともエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂の2成分以上であれば良く、3成分、4成分、またはそれ以上でも構わないが、紡糸用ノズル構造の容易性、製造コストまた生産性の点から2成分で十分である。
本発明の弾性不織布を構成する複合繊維は、繊維の延伸により螺旋構造と表面凹凸構造を形成しやすいため、サイドバイサイド構造または偏心鞘芯構造を有することが好ましい。
【0036】
本発明の弾性長繊維不織布を構成する複合長繊維の断面形状は丸断面、または紡糸性を損なわない範囲で異型断面、中空断面であっても良い。
【0037】
また、本発明において用いられる複合繊維の繊度は5dtex以下、好ましくは0.006〜2.5dtexである。繊度が5dtexを超えると、柔軟性が低下するため、弾性不織布の適度な応力、優れた風合いが損なわれる恐れがある。
【0038】
本発明においては、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、非エラストマー成分に対して、各種安定剤、紫外線吸収剤、増粘分岐剤、艶消剤、着色剤、ゴム等の柔軟性付与剤、その他の各種改良剤等も必要に応じて配合しても良い。
【0039】
本発明の複合繊維から成る弾性不織布は、繊維の延伸により形成される繊維上に螺旋構造と表面凹凸構造とを有するのが好ましい。
螺旋構造を有する複合繊維からなる弾性不織布は、螺旋構造を有しない複合繊維からなる弾性不織布に比べ不織布の密度が低くなり嵩高性が良好となり、風合も良好となる。また、嵩高になることにより保温性も良好となる。また、螺旋構造を有する弾性不織布は、螺旋構造を有しない弾性不織布に比べ繊維結合点間距離での実質的な繊維長が長くなるため、弾性不織布の初期段階の伸長時(120%伸長程度まで)において、螺旋構造によりソフトな弾性を発現し、より良好な締め付け力を発揮できる。また、螺旋構造を有する弾性不織布は、不織布表面接触面積の減少により後述するアンチブロッキング性も良好となる。
【0040】
本発明の弾性長繊維不織布を構成する複合繊維の外周には、非エラストマー樹脂からなる表面凹凸構造が形成されるのが好ましい。繊維の表面凹凸構造は、不織布の密度を低下させ、不織布をより嵩高にする。また、表面凹凸構造により繊維間の空気保持率が多くなり、不織布の保温性が良好になる。更に、表面凹凸構造によって、より柔軟な風合が得られる。また、表面凹凸構造部分では非エラストマー樹脂が薄く伸ばされてエラストマー樹脂の伸びを阻害しないため、エラストマー樹脂が伸びやすく不織布の弾性がより良好となる。また、外周に表面凹凸構造を有する複合長繊維からなる不織布は、繊維表面接触面積の減少により後述するアンチブロッキング性も良好となる。
【0041】
本発明の弾性不織布は、それを構成する複合長繊維の螺旋構造と表面凹凸構造の相乗効果により、更に風合、弾性、及びアンチブロッキング性が良好となる。螺旋構造に加えて表面凹凸構造が形成されることにより、繊維表面におけるミクロレベルの風合い、弾性、アンチブロッキング性が良好となる。
本発明の弾性不織布を構成するに複合繊維おける螺旋構造と表面凹凸構造を有する繊維の含有率(本数の割合)は、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましい。
【0042】
複合繊維と並び好ましい形態としては、エラストマー成分を主成分とする繊維とエラストマー成分と比較して粘着性の少ない成分を主成分とする繊維を混合した混繊不織布がある。本発明を構成する非エラストマー繊維は、前述した非エラストマー樹脂を主成分とする樹脂組成物を繊維となるように紡糸したものである。
【0043】
その様な繊維を製造する方法としては、特に限定はなく、ステープルファイバーやチョップ等の短繊維を得る方法、並びにメルトブロー法、スパンボンド法及びトウ開繊法等の長繊維を得る方法を例示できるが、風合いの点からはメルトブロー法、強度の点からはスパンボンド法が望ましい。
【0044】
本発明の弾性不織布は、エラストマー繊維と非エラストマー繊維とを、エラストマー繊維/非エラストマー繊維=50/50〜95/5の重量比で含有する不織布である。該重量比は、50/50〜90/10が好ましく、60/40〜90/10が更に好ましい。エラストマー繊維の重量比が上記範囲より少ないと、得られる不織布の弾性が不十分となり、上記範囲より多いと、得られる不織布のアンチブロッキング性が低下し粘着しやすくなる。
【0045】
本発明の弾性不織布においては、非エラストマー繊維は、弾性不織布にアンチブロッキング性と適度な応力、優れた風合いを付与するためにエラストマー繊維に混合される。エラストマー繊維に非エラストマー繊維を混合させる方法には特に限定はなく、従来公知公用の方法を使用することができる。例えばエラストマー繊維をメルトブロー法で製造する工程で、捕集コンベアーネット上にエラストマー繊維を吹き付ける時に非エラストマーの短繊維,長繊維,分割繊維等を供給し混合する方法が例示される。また、短繊維や長繊維のウェブを形成する際に、メルトブロー法で製造されたエラストマー繊維を吹き付けてもよい。
【0046】
本発明の弾性不織布を構成する非エラストマー繊維がメルトブロー法による長繊維の場合は、例えば日本国特許第3360377号明細書に記載された1つの紡糸口金に異種の樹脂が流れ出す紡糸孔が交互に一列で並んだ構造の紡糸口金を使用することができる。得られるウェブではエラストマー長繊維と非エラストマー長繊維がより均一に混合される。また、エラストマー樹脂用の紡糸口金と非エラストマー樹脂用の紡糸口金を併用し、それぞれの紡糸口金で得られるエラストマー長繊維ウェブと非エラストマー長繊維ウェブとを積層してもよい。更に、この積層物にニードルパンチ等の処理をして、繊維の混合状態を改良することもできる。より均一な混合状態のウエブを得るには、日本国特許第3360377号号明細書に記載された紡糸口金を用いる方法が好ましい。
エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂とに割り当てられる紡糸孔の数を変更したり、各樹脂の押し出し量を変更することにより、弾性不織布中の各繊維の含有量を変更することができる。また、それぞれの樹脂の紡糸孔当たり異なる押出量で紡糸したり孔径の異なる口金を用いて紡糸する事により、繊度の異なる混合物が得られる。
【0047】
本発明の弾性不織布を構成する非エラストマー繊維がスパンボンド法による長繊維の場合は、例えば図-1に記載された1つの紡糸口金に異種の樹脂が流れ出す紡糸孔が千鳥配列に並んだ構造の紡糸口金を使用することができる。得られるウェブではエラストマー長繊維と非エラストマー長繊維がより均一に混合される。また、エラストマー樹脂用の紡糸口金と非エラストマー樹脂用の紡糸口金を併用し、それぞれの紡糸口金で得られるエラストマー長繊維ウェブと非エラストマー長繊維ウェブとを積層してもよい。更に、この積層物にニードルパンチ等の処理をして、繊維の混合状態を改良することもできる。
エラストマー樹脂と非エラストマー樹脂とに割り当てられる紡糸孔の数を変更したり、各樹脂の押し出し量を変更することにより、弾性不織布中の各繊維の含有量を変更することができる。また、それぞれの樹脂の紡糸孔当たり異なる押出量で紡糸したり孔径の異なる口金を用いて紡糸する事により、繊度の異なる混合物が得られる。
【0048】
本発明の弾性不織布を構成する繊維の成分は、少なくともエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂の2成分以上であれば良く、種類の異なるエラストマー樹脂からなる長繊維及び/または種類の異なる非エラストマー繊維からなる繊維を加えた3成分、4成分、またはそれ以上でも構わないが製造コストまた生産性の点から2成分が有利である。
【0049】
本発明の弾性不織布を構成する長繊維または短繊維の断面形状は、丸断面または紡糸性を損なわない範囲で異型断面または中空断面であっても良い。長繊維または短繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、エラストマー長繊維の平均繊維経(Bd)が小さいと風合は良好となるが、満足する弾性と強度が得られにくい。一方エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)が大きいと満足する弾性と強度は得られるが風合が悪くなるため、エラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)は5〜40μmが好ましい範囲である。更に風合の面から好ましくは、5〜30μmである。
本発明での非エラストマー繊維の主な役割の一つは、アンチブロッキング性の向上である。非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)が小さいほど不織布中での非エラストマー繊維表面積率が多くなりエラストマー長繊維への被覆効果が増しアンチブロッキング性に効率良く働く。非エラストマー繊維の不織布全体に対する重量比が小さいほど通常はアンチブロッキング性は悪くなるが、非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)を小さくする事で重量比が少ないにも係わらず満足するアンチブロッキング性が可能となる。従って、非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)は生産性も考慮すると1〜20μmが好ましい範囲である。更に風合の面から好ましくは1〜10μmである。かつ両繊維の関係は、Ad≦Bdであることが好ましい。更にAdとBdの関係は、Bd/Ad≧2が好ましく、最も好ましくはBd/Ad≧5である。
【0050】
AdとBdがAd≦Bdの関係にあると、不織布の弾性、不織布強度及びアンチブロッキング性が共に満足される。特に夏場等の高温多湿時には、エラストマー長繊維はブロッキングしやすいが、Ad≦Bdの関係にあると、弾性不織布内に存在するエラストマー長繊維の接触がより点接触に近くなるためブロッキングが抑制される。また、ブロッキングを抑制するため、弾性不織布の少なくとも片面に本来の弾性機能を阻害することのない範囲で、非エラストマー繊維の細繊度薄層ウェッブを積層しても良い。
【0051】
本発明は、弾性は良好であるが粘着性の強いエラストマー長繊維と、粘着性の弱い非エラストマー繊維を混合する事に特徴がある。従って、エラストマー長繊維の重量比(エラストマー長繊維/非エラストマー繊維)が増大する(非エラストマー繊維の重量比が減少する)と弾性が増大し、非エラストマー繊維の重量比が増大する(エラストマー長繊維の重量比が減少する)とアンチブロッキング性が良好となる。
アンチブロッキング性は、重ね合わせた2枚の弾性不織布を剥がす時の強度(以下、剥離強度という)が小さい程優れる。通常、弾性不織布はロールに捲かれた状態で保管されており、必要時に該弾性不織布を該ロールから繰出して、製品へと加工されるが、その際、該弾性不織布の有する剥離強度が小さいと、該弾性不織布が塑性変形を起こすことのない範囲の張力で該弾性不織布を繰出すことができるため、操作性や得られる製品の品質を良好に保つことができる。
逆に剥離強度が大きいと、該弾性不織布を該ロールから繰出す際に、接触している該弾性不織布同士を引き離すのに強い力が必要となり、弾性不織布に破断が生じる。たとえ破断しなかったとしても、弾性不織布は伸長してしまいその後の加工ができなくなる。
【0052】
本発明の弾性不織布の目付は、特に限定されないが、5〜300g/m、好ましくは10〜200g/m、更に好ましくは20〜150g/mである。また目的に応じて熱処理加工しても構わない。一般に、熱処理は使用されるエラストマー樹脂の軟化点と非エラストマー樹脂の軟化点の間の温度で行われる。熱処理の方法としては、加熱エンボスロールによる熱圧着法、加熱空気によるエアスルー法、赤外線ランプによる方法等の公知の方法が使用できる。また、ソニックボンド加工、ウォータージェット加工、ニードルパンチ加工、レジンボンド加工のいずれか一つ以上の加工を行っても構わない。
【0053】
本発明の弾性不織布は、不織布とした後に、不織布自体を延伸する処理を行うことも出来る。延伸処理を行った弾性不織布は、非エラストマー繊維は延伸により伸長するが、エラストマー長繊維は弾性により元の状態に復元できるため、非エラストマー繊維が弾性を阻害することなく、かつ嵩高で柔軟で、更に風合の優れた弾性不織布が得られ、特に好ましい態様である。
【0054】
具体的には、得られた弾性不織布に、20〜30℃で機械方向(MD)及び/または交差機械方向(CD)に1.2倍から破断しない程度の延伸、好ましくは1.5〜3.5倍の延伸、より好ましくは2.0〜3.2倍の延伸を施し緩和させた後、巻取機によって巻き取ることによって特に延伸処理を施した方向に弾性が優れた弾性不織布を得ることができる。
【0055】
また、前記不織布延伸工程における延伸方向は、機械方向,機械垂直方向,斜め方向等方向は特に限定はされないが、延伸方向の選択によって弾性優勢方向を決めることができる。
本発明の弾性不織布は、特定のヒステリシス比を有する点から、使用前あるいは使用時に伸長操作を行うような使用方法において、特にその効果が有利に発揮される。
【0056】
本発明においては、得られた弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層して積層弾性不織布として用いることができる。積層に使用される材料は、弾性不織布の伸長を阻害しないように得られた複合化弾性不織布が20%以上伸長可能となる物が好ましい。例えば、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂を用いて、メルトブロー法により不織布化、ネット化、フィルム化したもの等が挙げられる。また、ポリスチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマー樹脂を用い繊維化した後に編み物及び織物としたものも挙げられる。また、エラストマー素材ではなく捲縮等により構造的弾性をもたせたウェブ、不織布,織物,編み物も挙げられる。更に、カ−ド法またはエアーレイド法によって得られたウェブをウォータージェット法、ポイントボンド法、スルーエアー法で積層させたものも挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の弾性不織布または積層弾性不織布を用いた繊維製品としては、例えば使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材等の他に、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における測定結果は下記の方法に従った。
【0059】
(i)ヒステリシス比
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、機械方向を長さ方向にして作成する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で100%(ここでは100mmとなる)まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で100%まで伸長させた。この時の荷重/伸長カーブを図1に示す。図1の計算式によって求められる。
【0060】
(ii)50%伸長時の伸長回復率
幅25mm長さ200mmの不織布試験片を、機械方向を長さ方向にして作成する。引張試験機オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、チャック間を100mmに設定し試験片を固定した。引張速度300mm/分で50%まで伸長させた後、同じ速度で戻し、弾性不織布に掛かる負荷を0とした。その直後、再び同じ速度で50%まで伸長させ、負荷が再び始まる時の伸びた長さをLmmとした。伸長回復率は下記式に従って求めた。
50%伸長時の伸長回復率(%)={(100※1−L)/100※1}×100
※1:試験片の最初の長さ(mm)
【0061】
(iii)風合
縦100mm横100mmの不織布を用意する。10人のパネラーに不織布を触ってもらい風合を判断する。10人のパネラーが10段階評価を行い、全員の合計点数で評価した。従って総合点数は、最低0点から最高100点となり、60点以上を風合良好と判断した。また、好ましくは総合点数70点以上である。
【0062】
(iv)剥離強度
縦100mm横100mmの不織布試験片を2枚用意する。前記試験片を重ね合わせた上に縦100mm横100mmのアルミ板を載せ、更にその上に重りを載せ合計5kgとなる様に重りを調整し、50℃のオーブン中に24時間放置する。放置後25℃/RH65%の室内にて取り出した試験片を幅25mmに切り、長尺方向の一端から50mmの長さ迄不織布同士を手で剥がす。オートグラフAG−G(商品名、(株)島津製作所製)を用い、剥がした不織布の端をチャック間50mmに設定した上下のチャックにそれぞれ固定した。引張速度100mm/分で不織布同士が完全に剥がれてしまうまで引張り、強度の平均値を剥離強度(N/25mm)の数値とした(N=5)。剥離強度が小さいほどアンチブロッキング性が良好である。
【0063】
(vi)エラストマー長繊維と非エラストマー繊維からなる混繊不織布の平均繊維径
弾性不織布の任意5ヶ所から縦10mm横10mmの不織布片(合計5枚)を切り取り、走査型電子顕微鏡(日本電子工業(株)製)にて表面を観察した。1枚の不織布片から20本の繊維径を測定しこれを5枚の不織布片にて測定し、合計100本の繊維径の平均値を算出し平均繊維径(D)とした。その後エラストマー繊維だけが溶出する下記溶媒の何れかを用い、ソックスレー抽出装置によってエラストマー成分のみを除いた後の不織布を上記同様の方法で非エラストマー繊維の平均繊維径(Ad)を測定した。
予め、エラストマー長繊維/非エラストマー繊維の重量比を求め、その後、構成する樹脂の密度をJIS L 1015(密度勾配管法)にて求めた。これらからエラストマー長繊維/非エラストマー繊維の重量比を体積率へと変換する。その後、下記式に従ってエラストマー長繊維の平均繊維径(Bd)を算出した。
エラストマー長繊維密度:Bρ
非エラストマー繊維密度:Aρ
エラストマー繊維/非エラストマー長繊維の重量比:Bw/Aw
エラストマー長繊維体積率Bv:
Bv=(Bw/Bρ)/((Bw/Bρ)+(Aw/Aρ))
非エラストマー繊維体積率Av:
Av=(Aw/Aρ)/((Bw/Bρ)+(Aw/Aρ))
エラストマー長繊維の繊維径Bd:
Bd=(D−Ad×Av)/Bv
(抽出溶媒)
ポリウレタンエラストマー:濃塩酸
ポリスチレンエラストマー:トルエン
ポリオレフィンエラストマー:トルエン
ポリアミドエラストマー:アニリン
ポリエステルエラストマー:濃硫酸
【0064】
本発明において使用した材料の略号と内容は以下の通りである。
エラストマー樹脂
B−1:スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、KRATO
N G 1657((商品名)、クレイトンポリマージャパン(株)製 )。
【0065】
非エラストマー樹脂
A−1:ポリプロピレン SA2E((商品名)、日本ポリプロ(株)製)。
【0066】
実施例1
エラストマー樹脂としてB−1、非エラストマー樹脂としてA−1を弾性不織布の原料樹脂として用いた。スクリュー(30mm径)、加熱体、及びギアポンプを有する2機の押出機、混繊用紡糸口金(孔径0.3mm、異成分繊維が交互に一列に並んだ、孔数501ホール、有効幅500mm)、圧縮空気発生装置及び空気加熱機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、及び巻取機からなる装置を用いてメルトブロー不織布の製造を行った。それぞれの押出機にエラストマー樹脂と非エラストマー樹脂をそれぞれ投入し、加熱体によりエラストマー樹脂を230℃、非エラストマー樹脂を270℃で加熱溶融させ、ギアポンプを、エラストマー樹脂/非エラストマー樹脂の重量比が80/20となるように設定し、A−1を0.051g/分、B−1を0.204g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維を400℃に加熱した98kPa(ゲ−ジ圧)の圧縮空気によって、走行速度1.2m/分で走行しているポリエステル製ネットの捕集コンベアー上に吹き付けた。捕集コンベアーは、紡糸口金から25cmの距離に設置した。吹き付けた空気は捕集コンベアーの裏側に設けた吸引装置で除去した。捕集コンベアーにて搬送された不織布を巻取機にてロール状に巻取り、目付100g/mの弾性不織布を得た。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、ヒステリシス比が6.1、良好な弾性とアンチブロッキング性を示し、適度な応力と風合に優れていた。
【0067】
実施例2
実施例1の不織布を用い23℃にて2倍の延伸処理を行った不織布を製造した。得られた弾性不織布の物性の測定結果を表1に示す。得られた弾性不織布は、ヒステリシス比が2.5、良好な弾性とアンチブロッキング性を示し、適度な応力と風合に優れていた。
【0068】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】ヒステリシス比を計算するために必要な不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブ曲線の例を示す。
【図2】本発明の混合長繊維不織布をスパンボンド法にて製造する場合の紡糸口金の紡糸孔配列の一例を示す。○はエラストマー樹脂の紡糸孔、●は非エラストマー樹脂の紡糸孔を表す。
【図3】実施例1の100%伸長時の荷重/伸長カーブを示す。
【図4】実施例2の100%伸長時の荷重/伸長カーブを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布を100%伸長させた時の荷重/伸長カーブにより測定されるヒステリシス比が2〜8の範囲にある弾性不織布。
【請求項2】
少なくとも一種のエラストマー樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の弾性不織布。
【請求項3】
不織布を構成する繊維が長繊維である事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性不織布。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の弾性不織布に、前記弾性不織布以外の不織布、フィルム、ウェブ、織物、編み物、繊維束から選ばれる少なくとも1種を積層してなる積層弾性不織布。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の弾性不織布または請求項4記載の積層弾性不織布を用いた繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−277778(P2007−277778A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108746(P2006−108746)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(399120660)チッソポリプロ繊維株式会社 (41)
【Fターム(参考)】