説明

弾性体ローラの硬度測定方法

【課題】実際の弾性体ローラの使用に即し、より精度の高い弾性体ローラの硬度測定方法を提供する。
【解決手段】
芯金の外周に弾性体層を設けた弾性体ローラの硬度測定方法において、
回転可能な円筒部材の軸と該弾性体ローラの軸とを平行とする工程、
該2つの軸の平行を維持しながら、該円筒部材によって該弾性体層が変形するように該円筒部材を該弾性体層に侵入させる工程、
該円筒部材と該弾性体ローラの軸間隔を一定として該弾性体ローラを回転させながら、回転する該弾性体ローラに対して従動的に該円筒部材を回転させる工程、
該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する工程、
とを有することを特徴とする弾性体ローラの硬度測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体ローラの硬度測定方法に関する。特に複写装置、画像記録装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる弾性体層を有する弾性体ローラの硬度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体層を有する弾性体ローラは、電子写真用ローラとして用いられる場合のように他の部材に当接させて使用することが多い。例えば、トナー供給ローラは現像装置においてトナー担持体に一定軸間隔で当接させて使用する。この場合、トナー供給ローラは、トナー担持体にトナーを供給する機能と、トナー担持体から現像残りのトナーを剥ぎ取る機能との2つの機能を担うことを要求される。
【0003】
弾性体層を有する弾性体ローラの硬さは、画像への影響が大きく、例えば高硬度を有するトナー供給ローラは現像ローラと当接した際、トナーに与えるダメージなどが大きく、画像にカブリが生じるなどといった不具合がある(例えば特許文献1参照)。また、弾性体ローラの周方向に硬度のムラがある場合には、画像に濃淡が生じる。
【0004】
従来、弾性体層を有する弾性体ローラの硬度の測定方法としては、高硬度から中硬度のものはアスカーAやCなどを用いている。また、ウレタンフォームの弾性体層を有するトナー供給ローラのような低硬度の弾性体ローラは、アスカーFや一定変形時の硬度を測定するなどといった独自の測定方法で測定されている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
また、弾性体ローラの多くは他部材と定圧侵入又は一定量侵入で使用されるだけでなく、弾性ローラと他の部材との軸間隔を一定間隔として回転させながら使用することが多い。これまで、弾性体ローラの周方向の硬度測定は、回転させずに周4点を、板状冶具を弾性体層へ一定量侵入させて単位侵入量あたりの荷重を測定し、硬度としていた(例えば特許文献1参照)。しかし、実際の弾性体ローラの使用方法として、例えばトナー供給ローラはトナー担持体と一定の軸間隔で侵入させ、かつ回転している。そのため実際には外径振れに伴う侵入量変化及び硬度変化があるにも関らず、従来の硬度測定方法ではこれらは加味されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3881719号公報
【特許文献2】特開2001−290363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実際の弾性体ローラの使用に即し、より精度の高い弾性体ローラの硬度測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る弾性体ローラの硬度測定方法は、
芯金の外周に弾性体層を設けた弾性体ローラの硬度測定方法において、
回転可能な円筒部材の軸と該弾性体ローラの軸とを平行とする工程、
該2つの軸の平行を維持しながら、該円筒部材によって該弾性体層が変形するように該円筒部材を該弾性体層に侵入させる工程、
該円筒部材と該弾性体ローラの軸間隔を一定として該弾性体ローラを回転させながら、回転する該弾性体ローラに対して従動的に該円筒部材を回転させる工程、
該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する工程、
とを有することを特徴とする。
【0009】
また、該弾性体層が発泡弾性体層であることを特徴とする。
【0010】
また、該円筒部材を該弾性体層に対して侵入させる工程において、
硬度測定前の該弾性体ローラの平均半径を100%としたとき、該円筒部材の侵入後の該弾性体ローラの半径方向距離が該弾性体ローラの平均半径の65%以上、95%以下になるように、該円筒部材と該弾性体ローラの2つの軸間隔を設定することを特徴とする。
【0011】
また、該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する手段が、該円筒部材を該弾性体ローラに侵入させた時の押圧を、ロードセルを介して連続的に電気信号に変換し測定する手段であり、
少なくとも該弾性体ローラの外周の8点以上の箇所について荷重測定することを特徴とする。
【0012】
また、該弾性体ローラの軸方向3箇所以上について硬度測定を行うことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る弾性体ローラの評価方法は、前記硬度測定方法を用いて、画像形成装置に用いる弾性体ローラの評価を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、弾性体ローラの外径振れを加味しない一定侵入量で硬度を測定する従来の方法よりも、実際の弾性体ローラの使用に即し、より精度の高い硬度測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の硬度測定方法の一例を示す概略図である。
【図2】円筒部材の弾性体層への侵入を示す断面図である。
【図3】従来の硬度測定方法を示す弾性体ローラ長手方向から見た概略図である。
【図4】従来の硬度測定方法を示す弾性体ローラ軸方向から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、芯金の外周に弾性体層を設けた弾性体ローラの硬度測定方法において、
回転可能な円筒部材の軸と該弾性体ローラの軸とを平行とする工程、
該2つの軸の平行を維持しながら、該円筒部材によって該弾性体層が変形するように該円筒部材を該弾性体層に侵入させる工程、
該円筒部材と該弾性体ローラの軸間隔を一定として該弾性体ローラを回転させながら、回転する該弾性体ローラに対して従動的に該円筒部材を回転させる工程、
該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する工程、
とを有することを特徴とする弾性体ローラの硬度測定方法である。
【0017】
本発明者らは、従来測定が困難であった、弾性体ローラの外径振れに伴う侵入量変化及び硬度変化を加味した、弾性体ローラの弾性特性評価に有効な前記弾性体ローラの硬度測定方法を見出した。本発明における弾性体ローラの硬度測定方法は、従来の弾性体ローラの外径振れを加味しない一定侵入量での硬度測定方法よりも、該弾性体ローラをトナー供給ローラ等の画像形成装置の部材として用いた場合における実際の使用に即している。これにより、本発明の方法で得られる測定値は該画像形性装置による画像評価結果と良好な相関性があることを見出した。以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
(本発明に係る硬度測定方法について)
まず初めに、本発明における弾性体ローラの硬度測定方法について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明における弾性体ローラの硬度測定方法の一例を示した概略図である。弾性体ローラ1は、芯金2と、芯金2の外周に設けられた弾性体層3とを有する。弾性体ローラ1は、硬度測定器6のローラ回転機構(不図示)に取り付けられる。弾性体ローラ1の弾性体層3に円筒部材4を侵入させ、弾性体ローラ1を回転させることで従動的に円筒部材4を回転させる。この回転時における円筒部材4にかかる荷重をロードセル5で電気的に変換して硬度を測定する。なお、ここでは円筒部材4、冶具8、ロードセル5から構成されるユニットを硬度測定器6と表す。
【0020】
本発明に係る硬度測定方法においては、測定対象物である一つの弾性体ローラ1について、一箇所における硬度を測定してもよいし、図1に示したように、弾性体ローラの軸方向の複数箇所における硬度を同時に測定してもよい。複数箇所における硬度を同時に測定する場合には、複数のロードセル5を連結した機構(不図示)で、複数の円筒部材4を弾性体ローラ1に侵入させて硬度を測定すればよい。より高い精度を求める場合は、少なくとも、弾性体ローラの軸方向3箇所以上の測定点で硬度測定することが好ましい。
【0021】
図2は図1の弾性体ローラ1及び円筒部材4の軸に対して垂直な面における断面図を表す。本発明における弾性体ローラ1の硬度測定方法として、まず図2に示すように、円筒部材4を、その軸が弾性体ローラ1の軸と平行になるように配置し、円筒部材4の軸と弾性体ローラ1の軸との間隔を狭める。円筒部材4を弾性体層3が変形するように侵入させ、円筒部材4の軸と弾性体ローラ1の軸との軸間隔Aが所定間隔になるように固定する。軸間隔Aを所定間隔にする方法は特に限定されない。例えば、両軸を挟み、両軸間距離を螺子回転でスライド調節可能にする機構等、枚挙に暇がない。
【0022】
また、硬度測定前の弾性体ローラ1の平均半径R1(不図示)を100%としたとき、円筒部材4侵入後の弾性体ローラ1の半径方向距離R2(図2参照)が弾性体ローラ1の平均半径R1の65%以上、95%以下になるように、円筒部材4を弾性体ローラ1に侵入させ、設定するのが好ましい。以下、前記硬度測定前の弾性体ローラ1の平均半径R1に対する、円筒部材4侵入後の弾性体ローラ1の半径方向距離R2の割合を、侵入率(%)と示す。侵入率が95%を超えると、弾性体ローラ1の外径振れや表面の形状、例えば凹凸などの影響が大きく、弾性体層3の硬度の評価として十分に効果を発揮できない場合がある。一方、65%未満である場合、弾性体層3の変形が大きく、本硬度測定により弾性体ローラ1にダメージを与えてしまう場合がある。また、弾性体ローラ1の芯金2のたわみの影響が大きくなる場合がある。さらに、弾性体層3の硬さや反発弾性の影響が大きく弾性体ローラ1の硬度の数値が小さく現れる場合がある。より好ましくは、75%以上、90%以下である。さらに好ましくは、実際に弾性体ローラを使用する際に侵入・当接される部材と同じ侵入率である。
【0023】
円筒部材4は、その軸の両端部に連結された冶具8を介して硬度検知器であるロードセル5に連結されている。冶具8は、通常一般鉄鋼材料、ステンレス鉄鋼材料等の金属を用いて作製される。その一端部は、円筒部材4の円滑なツレ回りを確保することができるような構成で円筒部材4の軸両端部と連結している。他端部は、ロードセル5と連結している。冶具8は、円筒部材4にかかる荷重に関する情報を過不足なくロードセル5に伝達することができる構造を有していればその構成は特に限定されない。冶具8によって伝達された円筒部材4にかかる荷重に関する情報は、ロードセル5により検知され、連続的に電気信号に変換されて、ケーブル7により記録装置(不図示)に伝達され、記録される。
【0024】
測定時における弾性体ローラ1の回転速度は、測定対象物である弾性体ローラ1の使用目的に応じて要求される特性に対応した適切な回転速度を選択すればよく、好ましくは弾性体ローラ1の回転速度は、5rpm以上、60rpm以下である。60rpmを超えると、回転に伴うノイズも硬度として検知されやすくなる場合がある。一方、5rpm未満では測定時間が長くなる。
【0025】
荷重測定は、弾性体ローラ1の回転速度に合わせて、必要点数を必要な箇所で測定すればよい。しかし、少なくとも弾性体ローラ1の外周の周方向8点以上の箇所であることが好ましい。8点未満ではデータ量が少なすぎて弾性体ローラ1の外周における硬度のムラ(以下、周硬度ムラとする)が精度よく測定できない場合がある。より好ましくは50点以上である。また、弾性体ローラ1の回転初期は回転速度が安定していないため、少なくとも2周目以降のデータを使用するのが好ましい。なお、周方向8点以上の箇所とは、弾性体ローラ1周の任意の位置でかまわないが、好ましくは弾性体ローラ1周をほぼ均等な角度で測定した箇所である。
【0026】
ロードセル5からの電気信号を記録する前記記録装置は、所定の測定時間にわたって、硬度を記録することのできるものであれば、特に限定されず、公知の記録装置の中から、本発明に適したものを選択して用いればよい。例えば、共和社製「PCD−300A」(商品名)などが挙げられる。
【0027】
測定された荷重データは連続的に、アナログデータとして収録してもかまわなく、ロードセル5により検知され、電気信号に変換された荷重データを非連続的なデジタルデータとして該記録装置に収録してもよい。さらにそのデジタルデータの収録は周期的または非周期的に該記録装置に収録してもよい。
【0028】
該荷重は、必要に応じて変換してかまわない。例えば、該荷重を円筒形部材4と弾性体層3の接触面積で除して、単位接触面積あたりに変換したり、該荷重を円筒形部材4と弾性体層3への侵入体積で除して、単位侵入体積あたりに変換してもかまわない。
【0029】
(本発明に係る弾性体ローラ回転機構について)
前記弾性体ローラ回転機構(不図示)は、弾性体ローラ1を、その中心軸の回りを所定の一定回転速度で回転させることのできるものであれば、特に限定されず、公知のローラ回転機構から、本発明に適したものを選択して用いればよい。例えば、一般的には、モーター回転が適用できる。
【0030】
(本発明に係る円筒部材について)
円筒部材4は、アルミニウム合金材料、一般鉄鋼材料、ステンレス鉄鋼材料等の金属から作製された円筒形の部材である。円筒部材4にはベアリングなどが内蔵されており、円筒部材4を弾性体ローラ1に一定量侵入させて弾性体ローラ1を回転させたときに、円筒部材4は、滑ることなくその軸を中心にして容易にツレ回りすることができるように構成されている。弾性体ローラ1をトナー供給ローラ等に用いる場合には、円筒部材4の外径は通常カートリッジに組み込まれる時に圧着する部材と同じ径を選択するが、特に限定されない。組み込み予定の画像形成装置における仕様により決められことが多く、本発明における周硬度ムラの測定においては、例えば、外径16mm、長さ50mmとすることができる。円筒部材4の外径は任意の外径で構わず、実際に弾性体ローラ1に侵入・当接される部材とほぼ等しいことが好ましい。通常10mm〜20mmであり、好ましくは12mm〜18mmである。円筒部材4の軸方向の長さは、測定点数や測定エリアに応じて選択すればよく、通常10〜320mmであり、好ましくは20〜100mmである。
【0031】
(本発明に係る弾性体ローラについて)
本発明に係る弾性体ローラ1の弾性体層3を形成する弾性体材料としては、例えば、ポリウレタン、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴムなどのゴム原料、または、これらゴム原料の製造原料である単量体等(これら単量体等をもゴム原料と表すことがある)を用いて得られる弾性体の中から、目的の特性を有するものとすることのできるものを選択して用いればよい。前記ゴム原料単独で、又はこれらのゴム原料の二種以上を組み合せたゴム原料を用いて得られる弾性体であってもよい。
【0032】
弾性体層3としては、好ましくは発泡弾性体層である。発泡弾性体層を有する発泡弾性体ローラは、他部材と圧着して用いる場合が多く、他部材への当接・侵入圧が画像への影響を与える。また、一般に発泡弾性体層の方が発泡状態による周ばらつきが発生しやすく、周での硬度ムラが大きいため、本硬度測定方法を好適に用いることができる。
【0033】
発泡弾性体層の材料の中では、低硬度な弾性体層を形成するポリウレタンフォームが好ましい。ポリウレタンフォームを形成するためのウレタン原料(ゴム原料)としては、特に制限は無く、従来から公知のウレタン原料のなかから、適宜選択して使用することができる。
【0034】
(本発明に係る弾性体ローラの製造方法について)
本発明に係る弾性体ローラの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法の中から適した方法を選択して製造すればよい。具体的には、例えば鉄やステンレス鋼等の金属材料等からなる、通常直径が4〜10mm、長さが200〜400mmの芯金2を発泡弾性体で被覆して弾性体層3を形成することにより製造することができる。弾性体ローラ1の外径は、特に限定されず、その目的によりさまざまの外径を有するものとすることができるが、一般的には10〜20mmの外径とすることができる。
【0035】
本発明における弾性体ローラの硬度測定方法において、測定対象物である弾性体ローラ1の前処理条件および測定雰囲気は、硬度測定の目的に応じて、適宜定めればよい。例えば、低温・低湿下や高温・高湿下などである。通常、測定対象物である弾性体ローラ1を一定時間、例えば1時間以上前に測定環境下で馴染ませておく処理を行った後、測定を行う。
【0036】
本発明に係る弾性体ローラの評価方法は、前記硬度測定方法を用いて弾性体ローラを評価するものであり、該弾性体ローラをトナー供給ローラ等の画像形成装置の部材として用いた場合、ムラのない良好な画像が得られるか否かの判断を行うのに好適である。通常、弾性体ローラに周硬度ムラが存在する場合、弾性体ローラに侵入・当接する部材に均一に弾性体ローラが接触しないため、得られる画像にムラが生じる。本発明に係る方法は、弾性体ローラの実際の使用と同様に、軸間隔を一定として弾性体ローラを回転させながら、弾性体ローラの外径ブレを加味して硬度を測定するため、より精度よく、実際の使用に即した周硬度ムラの測定を行うことができる。したがって、得られる周硬度ムラの測定値と、画像評価結果との間に良好な相関性があり、弾性体ローラを画像形成装置に組み込むことなく、該弾性体ローラが画像形成装置の部材として適切か否かの判断を該測定値から簡易的に行うことができる。なお、本発明に係る硬度測定方法は、画像形成装置の部材に用いる弾性体ローラの測定に限られず、一般的な弾性体ローラの硬度を測定する際にも用いることができることは言うまでもない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
表1に示す組成のポリオール成分(ポリオール、整泡剤、触媒、発泡剤)及びポリイソシアネート成分を液温25℃に調整した。そして、両成分を所定量配合し、撹拌機で5秒間撹拌した。これを予めSUS304製の直径5mm、長さ270mmの芯金2を内部の所定位置に取り付けた40℃に温調した弾性体ローラ用成形金型のキャビティ内に注入して、100℃の電気炉中で20分硬化した。その後、金型から取り出して外径が16mmの弾性体ローラ1を作製した。また、これらの弾性体ローラ1について、周硬度ムラの測定を行い、画像評価を行った。
【0039】
ローラNo.1では該金型に配した芯金2が垂直になるように該金型を立てて硬化させた。ローラNo.2、3では該金型に配した芯金2が電気炉床面と平行になるように該金型を横に倒しておいて硬化させた。これにより、ローラNo.1、2、3をそれぞれ得た。また、ローラNo.4では外径振れが0.2mmになるように芯金位置を調整し、成形・硬化して得た。得られた弾性体ローラ1は25℃、50%RHの雰囲気下に1時間静置して前処理を行った。
【0040】
【表1】

【0041】
1)商品名、三洋化成(株)製ポリエーテルポリオール、OH価=23
2)商品名、東レ・ダウコーニング(株)製シリコーン系整泡剤
3)4)商品名、東ソー(株)製第3級アミン触媒
5)商品名、三井化学ポリウレタン(株)製イソシアネート、NCO%=48
6)商品名、三井化学ポリウレタン(株)製イソシアネート、NCO%=31。
【0042】
[実施例1]
本発明の測定方法では、前記前処理後の弾性体ローラを硬度測定器6の弾性体ローラ回転機構に取り付けた。本実施例では、硬度測定器6が3個連結されており、弾性体ローラ1に対する円筒部材4の侵入率が85%となるように調節した。回転可能な円筒部材4は外径16mm、軸方向長さ50mmであり、弾性体ローラ1を15rpmで回転させながら、弾性体ローラ1の軸方向の3個所において同時に弾性体層3の硬度を測定し、30Hzで測定データを収録した。
【0043】
弾性体層3にて被覆された部分の中央部の50mm幅および弾性体層3被覆両端部から各々10mm〜60mmに位置する50mm幅(画像左部、画像右部と表すことがある)の3個所を硬度の測定個所とした。上記弾性体ローラの硬度測定データから、弾性体ローラ1の1周分の硬度の最大値をM1、該1周分の硬度の最小値をM2、該1周分の硬度の平均値をAとし、下記式(1)に基づき、各々の個所における周硬度ムラBを求めた。結果を表2に示す。
B=100×(M1−M2)/A・・・(1)。
【0044】
[比較例1]
比較例1では、従来の硬度測定方法として、前記前処理後、図3、図4に示すような幅10mm、長さ50mm、高さ10mmの板状冶具9を取り付けた硬度測定器を用いて測定した。板状冶具9にて弾性層3に10mm/minの速度で押圧した時、1mm変形するのに必要な荷重(g)を測定し、それを従来の硬度とした。その従来の硬度を周4点・軸方向3点測定し、該周4点での硬度の最大値m1、該周4点での最小値m2、該周4点の平均aとし、下記式(2)に基づき、各々の個所における従来の周硬度ムラbを求めた。結果を表3に示す。
b=100×(m1−m2)/a・・・(2)。
【0045】
[画像評価方法]
レーザービームプリンター用カードリッジ(マゼンタ色)のトナー供給ローラを前記ローラ1〜4に組み替えて画像評価を行った。使用したレーザービームプリンターは、ヒューレットパッカード社製「HP Color LaserJet 3600」(商品名)で、温度15℃、湿度10%の環境下で行った。
【0046】
画像評価における濃度の一様性の評価は以下の基準で行った。
○:均一な画像が得られる
△:トナー供給ローラの周期でやや濃淡が現れる
×:トナー供給ローラの周期で濃淡が現れる。
【0047】
【表2】

【0048】
表2の結果から明らかなように、実施例1に係る本発明での測定方法にて得られた周硬度ムラBが9%以下のローラNo.1では画像が均一で画像評価○であった。ローラNo.2の13%以下では特に画像左側でトナー供給ローラの周期でやや濃淡が現れ画像評価△であった。ローラNo.3、4の16%以上ではトナー供給ローラの周期で濃淡が現れ評価が×であった。このように、画像評価と周硬度ムラBとは良好な一致性を示した。即ち、本実施例における測定では、周硬度ムラBが10%未満の場合には画像評価における濃度の一様性は良好な結果となった。
【0049】
【表3】

【0050】
一方、表3の結果から明らかなように、比較例1に係る従来の測定方法での周硬度ムラbが全て3%以下のローラNo.1では画像評価○であったが、同様に全て4%以下で、周硬度ムラbが小さいローラNo.4では画像評価×であった。即ち、画像評価と周硬度ムラbとが一致しなかった。また、ローラ2、3では周硬度ムラbが共に全て8%以下であったが、画像評価が△と×に分かれ、同様に画像評価と周硬度ムラbとが一致しなかった。
【0051】
通常、周硬度ムラの存在により画像の濃淡が発生するため、周硬度ムラが小さければ画像の濃度一様性は良いはずであるが、従来の周硬度ムラbと画像評価との間には十分な一致性がなかった。従来の測定方法では全体として画像評価と周硬度ムラbとの一致性は低いため、一致性が良いものもあるが全体としての一致性は×とした。
【0052】
[実施例2〜5]
画像評価で濃度一様性が×レベルであったローラNo.4、○レベルのローラNo.1を前記前処理後、実施例1と同様の硬度測定器6の弾性体ローラ回転機構に取り付けた。弾性体ローラ1に対する円筒部材4の侵入率を表4に示す値に変更した以外は実施例1と同様に周硬度ムラBを測定し、画像評価を行った。
【0053】
【表4】

【0054】
実施例2〜5では画像評価結果と周硬度ムラBとが良好な一致性を示した。特に、実施例3、4は画像評価○と×レベルの周硬度ムラBの差が大きかった。
【符号の説明】
【0055】
1 弾性体ローラ
2 芯金
3 弾性体層
4 回転可能な円筒部材(円筒部材)
5 ロードセル
6 硬度測定器
7 ケーブル
8 冶具
9 板状冶具
A 円筒部材の軸と弾性体ローラの軸との軸間隔
R2 円筒部材を弾性体層に侵入させた際の2つの軸間における弾性体ローラの半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周に弾性体層を設けた弾性体ローラの硬度測定方法において、
回転可能な円筒部材の軸と該弾性体ローラの軸とを平行とする工程、
該2つの軸の平行を維持しながら、該円筒部材によって該弾性体層が変形するように該円筒部材を該弾性体層に侵入させる工程、
該円筒部材と該弾性体ローラの軸間隔を一定として該弾性体ローラを回転させながら、回転する該弾性体ローラに対して従動的に該円筒部材を回転させる工程、
該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する工程、
とを有することを特徴とする弾性体ローラの硬度測定方法。
【請求項2】
該弾性体層が発泡弾性体層であることを特徴とする請求項1に記載の弾性体ローラの硬度測定方法。
【請求項3】
該円筒部材を該弾性体層に対して侵入させる工程において、
硬度測定前の該弾性体ローラの平均半径を100%としたとき、該円筒部材の侵入後の該弾性体ローラの半径方向距離が該弾性体ローラの平均半径の65%以上、95%以下になるように、該円筒部材と該弾性体ローラの2つの軸間隔を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性体ローラの硬度測定方法。
【請求項4】
該円筒部材にかかる荷重を電気的に変換して硬度測定する手段が、該円筒部材を該弾性体ローラに侵入させた時の押圧を、ロードセルを介して連続的に電気信号に変換し測定する手段であり、
少なくとも該弾性体ローラの外周の周方向8点以上の箇所について荷重測定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の弾性体ローラの硬度測定方法。
【請求項5】
該弾性体ローラの軸方向3箇所以上について硬度測定を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の弾性体ローラの硬度測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の硬度測定方法を用いて、画像形成装置に用いる弾性体ローラの評価を行うことを特徴とする弾性体ローラの評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−243278(P2010−243278A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90861(P2009−90861)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】