説明

弾性体ローラの製造方法

【課題】弾性体ローラを、より短時間で製造でき、かつ、金型の滞留数を削減できる、生産性に優れた弾性体ローラの製造方法を提供する。
【解決手段】軸1と、その外周に担持された弾性層2とを備える弾性体ローラ10の製造方法である。筒状金型内に配置された軸1の周囲に発泡体原料を注入し、加熱硬化させて弾性層2を形成する。発泡体原料の注入前の、筒状金型の温度を25℃以下とするとともに、発泡体原料の注入後、筒状金型を、電磁誘導により加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体ローラの製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置において使用される弾性体ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、現像、帯電、転写(トナー供給、クリーニング)等の電子写真プロセスにおいて、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ等の各種ローラ部材が用いられている。
【0003】
従来、これら現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ(トナー供給、クリーニング)等として用いられるローラ部材としては、一般に、金属製のシャフト等の軸の外周に、ゴムや高分子エラストマー、高分子フォーム等からなる弾性層を形成した構造を基本構造とする弾性体ローラが使用されている。このうちウレタンフォームからなる弾性層を形成する方法として、不活性ガスを混入しながらウレタン原料を機械的に攪拌することにより発泡させるメカニカルフロス法が公知である。
【0004】
このメカニカルフロス法を用いる場合には、作製する弾性体ローラにおいて、表面スキン層のピンホールが少なく、シャフト側から表面に向かう密度勾配がV字形に推移する弾性層を形成するために、従来、以下のような方法が用いられている。
【0005】
すなわち、まず、円筒状の金型に金属製のシャフトを挿入し、上型と下型とにより金属製シャフトを固定して、この金型を15〜25℃程度に温調しておく。次いで、上型のゲート口から、メカニカルフロス法により液状樹脂またはゴム材料中にガスを混合させてなる液状フォームを注入して、金型内に充填する。その後、加熱オーブン内で液状フォームの反応を進行させて硬化させ、硬化が完了した後、冷風等で金型を冷却してから脱型して、シャフトの周囲に弾性層が担持されてなる弾性体ローラを得るのである。このような方法を用いるのは、金型を高温に余熱すると表面にピンホールが生じやすく、また、ローラ表面にスキン層を形成するためには原料注入時に金型を低温にしておく必要があるためである。
【0006】
ローラの製造方法に係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、芯材の外周にロール材を熱溶着で一体化するようにしたローラの製造方法において、上記芯材を導体より構成し、この芯材を電磁誘導により加熱することで、芯材にロール材を加熱溶着して一体化するローラの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−208043号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように、15℃〜25℃程度に温調した金型内に液状フォームを充填した場合には、その後、反応を進行させるための加熱をオーブンにより行うと、所定温度に到達させるまでに非常に時間がかかるという問題があった。弾性体ローラを短いタクトタイムで連続的に生産する場合、加熱時間が長いと大きなオーブン設備およびスペースが必要となり、さらに、オーブン内に金型が多数滞留するために、金型を多数確保しなければならないという問題も生ずる。これらの点から、ローラの製造コストが大幅に上昇してしまうこととなっていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、弾性体ローラを、より短時間で製造でき、かつ、金型の滞留数を削減できる、生産性に優れた弾性体ローラの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、金型の加熱方法として電磁誘導加熱を用いることで、従来のオーブン加熱の場合に比し加熱時間を短縮して、弾性体ローラの製造を効率良く行うことが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の弾性体ローラの製造方法は、軸と、該軸の外周に担持された弾性層とを備える弾性体ローラの製造方法であって、筒状金型内に配置された前記軸の周囲に発泡体原料を注入し、加熱硬化させて前記弾性層を形成する弾性体ローラの製造方法において、
前記発泡体原料の注入前の、前記筒状金型の温度を25℃以下とするとともに、前記発泡体原料の注入後、前記筒状金型を、電磁誘導により加熱することを特徴とするものである。
【0011】
本発明においては、前記筒状金型の電磁誘導による加熱後に、該加熱された筒状金型を、オーブンにより加熱することが好ましい。また、前記加熱により前記軸の外周に前記弾性層を担持させて弾性体ローラを形成した後、該弾性体ローラを前記筒状金型から脱型して、脱型された弾性体ローラをさらにオーブンにより加熱することもできる。本発明は、前記発泡体原料としてウレタンフォーム原料を用いる場合に好適に適用可能であり、特には、前記発泡体原料をメカニカルフロス法により調製する際に特に有用である。
【0012】
また、本発明において、前記発泡体原料の注入前の、前記筒状金型の温度は、好適には15〜25℃とする。さらに、前記電磁誘導による加熱は、前記筒状金型温度が80℃以上となるまで行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、弾性体ローラをより短時間で製造でき、かつ、金型の滞留数を削減できる、生産性に優れた弾性体ローラの製造方法を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1に、本発明に係る弾性体ローラの概略斜視図を示す。図示するように、本発明の弾性体ローラの製造方法は、軸1と、その外周に担持された弾性層2とを備える弾性体ローラ10の製造方法であって、筒状金型内に配置された軸1の周囲に発泡体原料を注入し、加熱硬化させて弾性層2を形成するものであり、発泡体原料の注入前の、筒状金型の温度を25℃以下とするとともに、発泡体原料の注入後、筒状金型を、電磁誘導により加熱する点に特徴を有する。
【0015】
前述したように、表面にスキン層を有する弾性体ローラを製造する際には、金型温度をある程度低温にした状態で金型内に発泡体原料を注入することが必要である。したがって、本発明においては、発泡体原料の注入前の筒状金型の温度を25℃以下、好適には15〜25℃とする。金型温度が25℃を超えるとスキン層が形成されない場合がある。また、金型温度15〜25℃が、弾性層表面にスキン層を形成するために最適な温度である。したがって本発明においては、金型の予熱を行うことは必ずしも必要ではない。
【0016】
本発明においては、かかる低温からの筒状金型の昇温を、発泡体原料注入後、従来のオーブン加熱ではなく、電磁誘導加熱により行う。これにより、金型を所望の温度まで、従来に比し極めて短時間で昇温できるため、加熱時間を最大で従来の1/3程度まで短縮することができ、生産性を大幅に向上することができるとともに、電磁誘導により連続的に加熱を行うことが可能となるため、オーブンによるバッチ式とは異なり、金型の滞留数を削減できるメリットも得られる。この電磁誘導加熱の条件としては、加熱時間は例えば3〜10秒であり、出力は、金型の熱容量により適宜決定することができる。
【0017】
本発明においては、上記電磁誘導加熱のみにより発泡体原料の加熱硬化を完了させてもよいが、電磁誘導加熱後に、さらに、オーブンによる加熱を行うことが好ましい。一定の温度を維持するためには、オーブンによる加熱が適しているためである。
【0018】
また、付加的なオーブンによる加熱は、電磁誘導加熱後、筒状金型を冷却し、弾性体ローラを脱型してから行うこともできる。すなわちこの場合、電磁誘導加熱により、弾性層を脱型できる程度まで硬化させて(一次キュア)、脱型後に、オーブン加熱により弾性層を最終段階まで硬化させるものとする(二次キュア)。さらに、本発明においては、電磁誘導加熱とオーブン加熱との併用により弾性層を脱型できる程度まで硬化させて(一次キュア)、脱型後に、再度オーブン加熱を行うことで弾性層を最終段階まで硬化させるものとしてもよい(二次キュア)。なお、ここで、一次キュアとは、弾性層が形状保持可能な程度まで硬化させることを意味し、具体的には例えば、最終硬度の8割に達するまで硬化した状態である。また、二次キュアとは、最終製品として必要な加硫度まで硬化させることを意味する。
【0019】
発泡体原料の種類にもよるが、本発明において、電磁誘導による加熱は、筒状金型温度が80℃以上となるまで行うことが好ましい。弾性層を最終段階まで硬化させるためには、例えば、110℃までの加熱が必要であるが、少なくとも筒状金型温度が80℃以上となるまで電磁誘導加熱を行うことで、本発明による加熱時間短縮のメリットを有意に得ることができる。
【0020】
なお、本発明においては、筒状金型の加熱と同時に、軸1の加熱も行うことが好ましい。弾性体ローラの軸1としては、通常、良好な導電性を有するものが用いられるため、電磁誘導により筒状金型を加熱する際に、同時に加熱することが可能である。
【0021】
本発明における電磁誘導による金型等の加熱は、一般的な電磁誘導加熱装置を用いて行うことができ、例えば、金型等をコンベア式に搬送しながら電磁誘導加熱装置を通過させ、装置内で所定時間滞留させることで、連続的に電磁誘導による加熱を行い、弾性体ローラを製造することが可能となる。ここで、筒状金型および軸1は、導体であれば電磁誘導により加熱することが可能であり、本発明に適用しうるが、電磁誘導により効果的に加熱するためには、鉄、SUS等の金属材料からなるものを用いることが好ましい。
【0022】
本発明においては、筒状金型を用いて軸の周囲に発泡体原料からなる弾性層を成型、担持させるにあたり、発泡体原料注入後に、筒状金型を低温から昇温させる際の加熱に電磁誘導加熱を適用する点のみが重要であり、それ以外の製造工程の詳細については常法に従い適宜行うことができ、特に制限されない。
【0023】
本発明において、弾性体ローラの弾性層2は発泡体原料により形成されるが、好適には、かかる発泡体原料としてウレタンフォーム原料を用いて、弾性層2をウレタンフォームにより形成する。
【0024】
ウレタンフォーム原料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はない。ポリオール成分としては、例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0025】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0026】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、400〜3000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、1500〜6000の範囲のものがより好ましい。更に、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0027】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400〜4000の範囲、特には、650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0028】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、重量比で95:5〜20:80の範囲、特には90:10〜50:50の範囲となるよう用いることが好適である。
【0029】
また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0030】
また、ウレタンフォームを構成するイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートまたはその誘導体、脂肪族イソシアネートまたはその誘導体、脂環族イソシアネートまたはその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネートまたはその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネート(TDI)またはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはその誘導体が好適に用いられる。
【0031】
トリレンジイソシアネートまたはその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンまたはその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0032】
また、イソシアネートをポリオールによりあらかじめプレポリマー化してもよく、その方法としては、ポリオールとイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30重量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15重量%である。イソシアネートの含有率が4重量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30重量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このポリイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。イソシアネートをあらかじめポリオールによりプレポリマー化したイソシアネート成分を用いる場合のポリオール成分としては、上記ポリオール成分に加えて、エチレングリコールやブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンやソルビトール等のポリオール類やそれらの誘導体を用いることもできる。
【0033】
ウレタンフォーム原料中には、これらポリオール成分およびイソシアネート成分に加え、所望に応じて導電剤、発泡剤(水、低沸点物、ガス体等)、架橋剤、界面活性剤、触媒、整泡剤等を添加することができ、これにより所望に応じた弾性層とすることができる。
【0034】
導電剤としてはイオン導電剤と電子導電剤があり、イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。その配合量には特に制限はなく、所望に応じ適宜選定可能であるが、通常は、ポリオールとイソシアネートとの総量100重量部に対し、0.1〜40重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合である。
【0035】
ウレタンフォームの硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明においては、ウレタンフォーム配合中にシリコーン整泡剤や各種界面活性剤を配合することが、フォーム材のセルを安定させるために好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリオール成分とイソシアネート成分との総量100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、0.5〜5重量部とすることが更に好ましい。
【0037】
本発明におけるウレタンフォーム原料の発泡方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができるが、特には、不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させるメカニカルフロス法を用いることが好ましい。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のウレタンフォーム原料と反応しない気体が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
筒状金型と、その長手両端部を閉塞するとともに軸の両端を保持する上型および下型とを用いて、軸と、その外周に担持された弾性層とを備える弾性体ローラの製造を行った。
【0039】
まず、円筒状金型(SUS製、内径φ12mm×長さ290mm(弾性層形成部長さ:230mm))に軸1としての鉄製シャフト(直径φ6mm、長さ250mm)を挿入し、上型と下型とで軸1を固定した。
【0040】
NCO含有率6%のウレタン変性イソシアネートにカーボンブラック(電気化学工業(株)製,デンカブラック)を配合してイソシアネート成分とし、ポリエーテルポリオール(三洋化成(株)製,サンニックスHL332)、ポリエステルポリオール((株)クラレ製,クラレポリオールF510)、ポリジメチルシロキサンポリオキシエチレン共重合体(東レダウコーニングシリコーン(株)製,SF2937F)およびジブチル錫ジラウレートを配合してポリオール成分とした。これらイソシアネート成分とポリオール成分とを混合し、メカニカルフロス法により乾燥空気を混合分散させて、液状のウレタンフォーム原料を調製し、これを、25℃に温調された上記筒状金型内に、上型のゲート口から注入した。
【0041】
その後、ウレタンフォーム原料が充填された筒状金型につき、下記の表1中に示す条件に従い電磁誘導加熱および/またはオーブン加熱を実施して、各実施例および比較例の弾性体ローラ10を得た。なお、表中の金型温度は、いずれも放射温度計により測定した値である。
【0042】
得られた各供試ローラにつき、外観性および弾性層表面に形成されたピンホールの数(表面穴数)を評価した。外観性の評価については、硬化不良ありの場合を×、なしの場合を○とした。また、ピンホール数については、400倍の顕微鏡による観察で、20μm以上のピンホールの数を計測した。これらの結果を、熱硬化に要した所要時間および熱硬化時の金型滞留数(製造ラインのウレタン硬化工程に必要な金型数)とともに、下記の表1中に示す。なお、ピンホール数は8個/mm以下程度であれば、問題なく良好である。
【0043】
【表1】

【0044】
上記表1中に示すように、ウレタンフォーム原料注入後の金型加熱を電磁誘導加熱により行った実施例においては、短い熱硬化時間で、外観性が良好でピンホール数も少ない弾性体ローラが得られることが確認できた。また、オーブン加熱のみを用いた比較例に比し、金型滞留数を削減できることも確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る弾性体ローラを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
1 軸
2 弾性層
10 弾性体ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の外周に担持された弾性層とを備える弾性体ローラの製造方法であって、筒状金型内に配置された前記軸の周囲に発泡体原料を注入し、加熱硬化させて前記弾性層を形成する弾性体ローラの製造方法において、
前記発泡体原料の注入前の、前記筒状金型の温度を25℃以下とするとともに、前記発泡体原料の注入後、前記筒状金型を、電磁誘導により加熱することを特徴とする弾性体ローラの製造方法。
【請求項2】
前記筒状金型の電磁誘導による加熱後に、該加熱された筒状金型を、オーブンにより加熱する請求項1記載の弾性体ローラの製造方法。
【請求項3】
前記加熱により前記軸の外周に前記弾性層を担持させて弾性体ローラを形成した後、該弾性体ローラを前記筒状金型から脱型して、脱型された弾性体ローラをさらにオーブンにより加熱する請求項1または2記載の弾性体ローラの製造方法。
【請求項4】
前記発泡体原料としてウレタンフォーム原料を用いる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の弾性体ローラの製造方法。
【請求項5】
前記発泡体原料をメカニカルフロス法により調製する請求項4記載の弾性体ローラの製造方法。
【請求項6】
前記発泡体原料の注入前の、前記筒状金型の温度を15〜25℃とする請求項1〜5のうちいずれか一項記載の弾性体ローラの製造方法。
【請求項7】
前記電磁誘導による加熱を、前記筒状金型温度が80℃以上となるまで行う請求項1〜6のうちいずれか一項記載の弾性体ローラの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−45770(P2009−45770A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211875(P2007−211875)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】