説明

弾性変形部を備える接触子の製造方法

【課題】 特に、無電解メッキ法を用いて、従来に比べて半田転写の改善や接触抵抗の安定性等を図ることが可能な表面層を弾性変形部に形成することが可能な接触子の製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 弾性変形部を備える接触子の製造方法において、固定部21と、前記固定部21から延出形成された前記弾性変形部22とを有する芯部23を形成する工程、前記芯部23の表面に、無電解メッキ法にて、白金族金属層28をメッキ形成する工程、前記白金族金属層28の表面に、無電解メッキ法にて、Au層29をメッキ形成する工程、加熱処理を施して、最表面層に、白金族元素とAuとの合金層を形成する工程、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICパッケージなどの電子部品の電極と当接する、弾性変形部を備えた接触子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の特許文献1には、弾性変形部(弾性腕)を備える接触子を、複数備えた接続装置が開示されている。ICパッケージなどの電子部品の底面には複数の球状の電極が設けられており、それぞれの電極が前記弾性変形部に弾圧されて、電極と接触子とが一対一の関係で個別に接続される。
【0003】
特許文献1には、芯部の表面に、白金族金属層から成る被覆層が形成された形態が開示されている。さらに、前記被覆層の表面にAu層が形成された形態も開示されている。
【特許文献1】特開2008−78032号公報
【特許文献2】特開平11−260981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最表面にAu層が露出している形態では、電子部品の電極が半田で形成されているとき、接触子を前記電極に繰り返し接触させると、電極と接触子との間で金属間化合物が生成され、接触子側へ半田転写が生じるという問題があった。このため接触信頼性に欠け、接続装置の短命化が問題となった。
【0005】
また、最表面に白金族金属層が露出する形態では、表面に酸化層を作る等して接触抵抗が安定しない。さらに、触媒作用により、使用環境によっては有機物汚染等が生じ、潤滑油を併用できない等、使用環境が限定されてしまう問題があった。また、最表面層にPd等の白金族元素を用いた場合、接触子を支持固定する固定面と接触子間を適切に半田接合できないといった問題があった。
【0006】
上記した特許文献2に記載の発明には、リードフレームの製造方法が開示されている。特許文献2には、リードフレームの表面にAu−Pd合金めっきを形成し、さらに、Au−Pd合金めっきに封孔処理を施すことが開示されている。
【0007】
しかしながら特許文献2に記載の発明は、そもそも、IC等の電子部品の電極と繰り返し当接する弾性変形部を備えた接触子でなく、上記した半田転写の従来課題は存在しない。
【0008】
また、上記した弾性変形部を備える各接触子は、夫々、電気的に接続しておらず、個々分離している。よってこれら接触子に被覆層をメッキ形成する場合、電解メッキ法が使用できず、無電解メッキ法を用いて行う。
【0009】
しかしながら特許文献2に記載されたAu−Pdめっきは無電解メッキ法にて形成できないから、特許文献2に記載された形態を直接、採用することは出来ない。
【0010】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、無電解メッキ法を用いて、従来に比べて半田転写の改善や接触抵抗の安定性等を図ることが可能な表面層を弾性変形部に形成することが可能な接触子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、弾性変形部を備える接触子の製造方法において、
固定部と、前記固定部から延出形成された前記弾性変形部とを有する芯部を形成する工程、
少なくとも前記弾性変形部を構成する前記芯部の表面に、無電解メッキ法にて、白金族金属層をメッキ形成する工程、
前記白金族金属層の表面に、無電解メッキ法にて、Au層をメッキ形成する工程、
加熱処理を施して、最表面層に、白金族元素とAuとの合金層を形成する工程、
を有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明では、無電解メッキ法を用いて、適切且つ容易に、弾性変形部の芯部の表面に白金族元素とAuとの合金層を形成できる。よって、従来に比べて、半田転写を抑制でき、接触抵抗の安定性等を図ることが可能な弾性変形部を備える接触子を形成することが可能である。
【0013】
本発明では、前記固定部にも、無電解メッキ法による前記白金族金属層及び前記Au層のメッキ形成、及び加熱処理を施して、前記合金層を形成することが好ましい。これにより、固定部を基板のランド部上に半田接合するとき、半田の吸い上がりを抑制しつつ良好な半田接合性を確保できる。
【0014】
また本発明では、個々に分離された複数の前記芯部を形成し、支持シートに支持された全ての前記芯部に対して、前記無電解メッキ工程及び加熱処理工程を施して、前記合金層を備える複数の前記接触子を形成することが好ましい。このように、個々に分離された複数の芯部に対してメッキを施すには無電解メッキ法を用いることが必要であるが、本発明によれば、個々、分離された複数の接触子に対して白金族元素とAuとの合金層を適切且つ容易に形成することが可能である。
【0015】
また本発明では、前記加熱処理工程を、前記弾性変形部を立体成形した状態で行うことが好ましい。これにより、白金族元素とAuとの合金層の形成とともに、適切に弾性力を発揮できる立体形状の弾性変形部を形成出来る。
【0016】
また本発明では、前記Au層を、前記白金族金属層よりも薄く形成するか、あるいは同等の膜厚で形成することが好ましい。これにより、白金族元素とAuとの合金層を適切に形成できる。また、白金族元素がリッチな合金層に形成でき、半田転写をより効果的に改善できる。また、Au層を、白金族金属層よりも薄く形成すれば特に、加熱処理後、芯部と前記合金層との間に白金族金属層を残しやすくなるが、これにより、弾性変形部の機械的強度を上げることが出来る。
【0017】
また本発明では、前記芯部を、銅又は銅合金で形成された導電部の表面に、無電解メッキ法にて、Ni−X(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be,Bのいずれか一種以上)からなる弾性部をメッキした積層構造で形成することが出来る。
【0018】
あるいは、本発明では、前記芯部を、Ni−X(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be,Bのいずれか一種以上)にて電鋳形成することが出来る。
【0019】
本発明では、前記加熱温度を、150℃〜300℃の範囲内で調整することが好ましい。特に上記したNi−Xから成る弾性部に対して、あまりに高温の加熱処理を施すと結晶化が進み、ばね特性が低下する。また加熱温度が低すぎると、白金族元素とAuとの合金層を適切に形成できない。よって、加熱温度を150℃〜300℃の範囲内で調整することとした。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、無電解メッキ法を用いて、適切且つ容易に、弾性変形部の芯部の表面に白金族元素とAuとの合金層を形成できる。よって、従来に比べて、半田転写を抑制でき、接触抵抗の安定性等を図ることが可能な弾性変形部を備える接触子を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本実施形態における多数の接続子を備えた接触子シートの製造方法を示す工程図(断面図)、図2(a)は、多数の接触子シートを配列したワークシートの平面図、図2(b)は、図2(a)の丸Aで囲んだ一つの接触子シートの拡大平面図、図2(c)は、図2(b)の丸Bで囲んだ一つの接触子の拡大平面図、図3は、図2(c)のC−C線に沿って切断し矢印方向から見た弾性変形部の拡大断面図(加熱処理前の状態を示す)、図4(a)は、加熱処理前における弾性変形部の部分拡大断面図、図4(b)は、加熱処理後における弾性変形部の部分拡大断面図、である。
【0022】
図1(a)に示す工程では、図2(c)に示す接触子20の形状の芯部23を図2(b)に示すように多数個、配列して形成し、個々、分離して形成された前記芯部23を樹脂シート(支持シート)24で固定支持した状態を示している。
【0023】
芯部23を図3のように、例えば、導電部31と、弾性部32との積層構造で形成する。
【0024】
前記導電部31は、銅(Cu)または銅を含む合金の単層である。銅合金は、高い電気導電度と高い機械的強度を有するCu,Si,Niを有するコルソン合金が好ましく使用される。コルソン合金は、例えばCu−Ni−Si−Mgで、Cuが96.2質量%、Niが3.0質量%、Siが0.65質量%、Mgが0.15質量%のものが使用される。
【0025】
銅板あるいは銅合金板をエッチング加工して図2(c)に示す平面形状から成る多数の導電部31を形成する。このとき、各導電部31は分離された状態にあるため、個々の導電部31を樹脂シート24に固定支持して接触子シート25を得る。なお、図2(c)に示すように、接触子20(導電部31)は、固定部21と、前記固定部21から延出して形成された弾性変形部22とを有する形状である。そして、樹脂シート24には穴24aが形成されており、前記穴24aの位置に弾性変形部22を対向させて、個々の導電部31を樹脂シート24に固定する(図1(a)参照)。固定の方法は例えば接着剤を用いて行う。図2(c)の接触子20の平面形状は一例である。図2(c)では弾性変形部22がスパイラル状に形成されているが、この形状に限定されるものでない。
【0026】
そして、図2(a)に示すように多数の接触子シート25を支持板26に支持した状態のワークシート27を得る。
【0027】
図2(a)に示すワークシート27を第1メッキ浴に入れて、このとき、無電解メッキ法にて、各導電部31の周囲を覆うようにNi−X(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be、Bのいずれか1種以上)から成る弾性部32をメッキ形成する(図3参照)。前記弾性部32のメッキ工程では、各導電部31が分離した状態であるため、電解メッキ法は使用できず、無電解メッキ法にて、弾性部32の形成を行う。
【0028】
続いて図1(b)に示す工程では、ワークシート27を第1メッキ浴から取り出した後、第2メッキ浴に入れて、このとき、無電解メッキ法にて、導電部31と弾性部32からなる接触子形状の各芯部23の周囲を覆うように白金族金属層28をメッキ形成する(図3も参照)。ここでは白金族金属層28をPd層で形成することが好適である。
【0029】
続いて、図1(c)に示す工程では、ワークシート27を第2メッキ浴から取り出した後、第3メッキ浴に入れて、このとき、無電解メッキ法にて、各白金族金属層28の周囲を覆うようにAu層29をメッキ形成する(図3も参照)。このとき、Au層29の膜厚を白金族金属層28の膜厚より薄く形成することが好ましい。
【0030】
図1(d)に示す工程では、ワークシート27を第3メッキ浴から取り出し、続いて、各接触子20の各弾性変形部22を、治具30を用いて突き上げた状態に維持しながら加熱処理を施す。加熱処理後、前記治具30を取り除く。この加熱処理で内部の残留応力が除去され、接触子20は立体形状で弾性力を発揮できるようになる。
【0031】
また、この加熱処理により、白金族金属層28を構成する白金族元素とAu層29のAuとが元素拡散して、図4(b)に示すように、白金族元素とAuとの合金層33が形成される。図4(a)は、加熱処理前の状態を示す断面図であり、白金族金属層28の膜厚はH1、Au層29の膜厚はH2である。図4(b)に示すように加熱処理を施すと、Au層29の膜厚H2よりもやや厚い膜厚H3の合金層33が最表面層に形成され、また、合金層33と芯部23との間に図4(a)の加熱処理前に比べて膜厚H4が薄い白金族金属層28が残される。
【0032】
本実施形態では、加熱温度を150℃〜300℃の範囲内で調整することが好適である。加熱温度が150℃を下回ると、白金族金属層28とAu層29との元素拡散が十分に起こらず合金層33を適切に形成できない。また、加熱温度が300℃を超えると、Ni−Xで形成された弾性部32が結晶化する。Ni−Xで形成された弾性部32はアモルファス状態を保っていることが高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができ、ばね特性を向上できる。ここで「アモルファス状態」とは、全体がアモルファスである状態、支配的なアモルファスと、アモルファス中に結晶(結晶粒は3nm〜15nmであることが好ましい)が散在した状態、支配的なアルファスと、アモルファス中に、直径が1nm以下の超微細析出物(エンプリオ)が散在した状態、支配的なアモルファスと、アモルファス中に前記結晶及び前記超微細析出物が混在した状態のいずれかを指す。また「支配的なアモルファス」とは、膜中に60体積%以上含有することを指し、好ましくは80体積%以上、さらに好ましくは90体積%以上の含有率を指す。
【0033】
以上により本実施形態では、加熱温度を150℃〜300℃の範囲内とした。また加熱時間は1分から1時間の範囲内が好ましい。一例を示すと、加熱温度を250℃、加熱時間を10分とすることで、弾性変形部22を適切に立体成形できるとともに、白金族元素とAu29との合金層33を適切に形成することが出来る。
【0034】
上記の各工程を経て形成された接触子シート25は、図6に示す接続装置1内に設置される。図6に示す接続装置1は、基台10を有している。基台10の平面形状は例えば四角形状であり、基台10の4辺のそれぞれにはほぼ垂直に立ち上がる側壁部10aが形成されている。4辺の側壁部10aで囲まれた領域は凹部であり、その底部10bの上面が固定面12である。そして固定面12の上に、前記接触子シート25が設置される。
【0035】
図7に示すように、接触子シート25に配列された多数の接触子20は、その固定部21が、固定面12上に形成されたランド部13上に半田層14を介して接合されている。半田層14は、鉛を含まない半田で形成されており、例えばスズ・ビスマス合金や、スズ・銀合金である。
【0036】
図6に示すように、接続装置1には、電子部品40が設置される。電子部品40は、ICパッケージなどであり、ICベアチップなどの各種電子素子が本体部41内に密閉されている。本体部41の底面41aには、複数の突出電極42が設けられており、それぞれの突出電極42が本体部41内の回路に導通している。この実施の形態の電子部品40は、突出電極42が球形状である。また、突出電極42は裁頭円錐形状などであってもよい。
【0037】
突出電極42は、スズを含む導電性の合金で形成されている。すなわち、鉛を含まない半田で形成されており、例えばスズ・ビスマス合金や、スズ・銀合金である。
【0038】
本実施形態の接続装置1は、例えば、電子部品40の検査用であり、図6に示すように、被検査物である電子部品40が、基台10の凹部内に装着される。このとき、電子部品40は、本体部41の底面41aに設けられた個々の突出電極42が接触子20の上に設置されるように位置決めされる。基台10の上には図示しない押圧用の蓋体が設けられており、この蓋体を基台10上に被せると、この蓋体により電子部品40が矢印F方向へ押圧される。この押圧力により、それぞれの突出電極42が弾性変形部22に押し付けられ、立体形状の弾性変形部22が押しつぶされて、突出電極42と弾性変形部22とが個別に導通させられる。
【0039】
接続装置1がいわゆるバーン・イン検査に使用される場合には、所定の温度に設定された状態で、外部の検査用の回路から接触子20を経て突出電極42に電流が与えられて、電子部品40の本体部41内の回路が断線しているか否かの検査が行われる。あるいは、接触子20から突出電極42に所定の信号が与えられて、本体部41内の回路の動作試験が行われる。
【0040】
検査が完了した電子部品40は、接続装置1から取り出され、次に検査すべき電子部品40が接続装置1内に設置されて、同様にして検査が行われる。この検査が繰り返される。そのため、接触子20の弾性変形部22には、新たな電子部品40の突出電極42が次々に接触することになる。
【0041】
本実施形態の接触子20は図1に示す工程を経て形成されたものであり、製造工程後における弾性変形部22の最表面層には、図4(b)に示す白金族元素とAuとの合金層33が形成されている。白金族金属層28はPdであることが好ましく、よって合金層33はAu−Pdであることが好適である。
【0042】
本実施形態では、無電解メッキ法を用いて、前記合金層33を、適切且つ容易に形成できる。本実施形態では、図1(a)及び図2(b)に示すように各接触子20は個々、分離された状態である。よって、以後のメッキ工程は無電解メッキ法を用いなければならない。そこで本実施形態では、図1(b)に示す工程で、まず、無電解メッキ法を用いて白金族金属層28を芯部23の周囲にメッキ形成し、さらに、図1(c)に示す工程で、無電解メッキ法を用いてAu層29を白金族金属層28の周囲にメッキ形成し、最後に、図1(d)に示す工程で、加熱処理を施した。加熱処理により、白金族金属層28を構成する白金族元素とAu層29を構成するAuとが元素拡散を起こし、図4(b)に示すように、弾性変形部22の最表面層に、白金族元素とAuとの合金層33を形成することができる。
【0043】
このように、電解メッキ法でなく、無電解メッキ法を用いても、上記工程を経ることで、白金族元素とAuとの合金層33を形成できる。そして前記合金層33が弾性変形部22の最表面層に形成されることで、図6、図7に示すように、弾性変形部22が電子部品40の突出電極42と繰り返し接触し、このとき前記突出電極42が半田材で形成されていても、Au層29が最表面に露出する従来の形態に比べて半田転写を効果的に抑制できる。また、合金層33には、白金族元素のみならずAuも含まれることで、白金族金属層28が最表面に露出する従来の形態に比べて接触抵抗を低く且つ安定化できる。また、弾性変形部22の最表面での触媒作用は抑制され、酸化力が大きい原子状酸素の発生等を効果的に抑制できる。これにより、接触子20の長寿命化を図ることが出来る。
【0044】
本実施形態では、接触子20は弾性変形部22と固定部21とが一体に形成され、前記固定部21から弾性変形部22が延出した形態である(図2(c)参照)。よって図1(a)では、弾性変形部22と固定部21の一体形状に芯部23を形成し、図1(b)の無電解メッキ法による白金族金属層28の形成、図1(c)の無電解メッキ法によるAu層29の形成、図1(d)の加熱処理工程により、固定部21の最表面層にも白金族元素とAuとの合金層33を形成することが出来る。
【0045】
これにより、図7に示すように、固定部21を基台10の固定面12に半田層14を介して接合するとき、最表面がAu層である場合に比べて、半田の吸い上がりを抑制でき、しかも最表面が白金族金属層である場合に比べて、良好な半田接合を確保することが出来る。
【0046】
また本実施形態では、図1(d)の加熱処理工程を、弾性変形部22を突き上げた状態で行って、前記弾性変形部22を立体成形している。これにより、白金族元素とAuとの合金層33の形成とともに、弾性変形部22の立体成形を同時に行なうことが出来る。このとき、加熱温度は150℃〜300℃の範囲内で調整することが好ましい。なお、弾性変形部22を立体成形せず平面形態とする場合には、図1(c)の形態に対して、加熱処理を施せばよい。
【0047】
また本実施形態では、図3(a)に示すようにAu層29の膜厚H2を白金族金属層28の膜厚H1よりも薄く形成している。Au層29の膜厚H2を、0.01〜0.6μm程度で形成し、白金族金属層28の膜厚H1を、0.1〜1μm程度で形成することが好ましい。Au層29は、フラッシュAuメッキ程度の薄い膜厚で足りる。また、芯部23の膜厚及び幅寸法を共に10μm以上で100μm以下とする。
【0048】
Au層29の膜厚を白金族金属層28の膜厚より厚くすると加熱処理を施しても最表面にAu層29が残りやすく、半田転写を効果的に抑制できないため好ましくない。
【0049】
これに対して、Au層29の膜厚H2を白金族金属層28の膜厚H1よりも薄く形成することで、白金族元素とAuとの合金層33を最表面に適切に形成できる。また、白金族元素がリッチな合金層33に形成でき、合金層33中に占める白金族元素の含有量を50体積%より大きく99体積%以下に調整できる。これにより半田転写をより効果的に改善できる。
【0050】
また図4(a)のように、Au層29を白金族金属層28より薄く形成することで、図4(b)に示すように、加熱処理後、芯部23と合金層33の間に白金族金属層28が残りやすくなるが、このように一部の白金族金属層28を残すことで弾性変形部22の機械的強度を向上させることができる。
【0051】
なお、白金族金属層28の膜厚H1とAu層29の膜厚H2とが同等であってもよく、加熱処理後、芯部23表面に直接、合金層33が形成された形態、すなわち図4(b)と異なって加熱処理により白金族金属層28が残らない形態にしてもよい。
【0052】
図3に示す芯部23の形態は一例であって他の形態であってもよい。ただし、図3のように、芯部23を、導電部31の周囲の全周が弾性部32で覆われた形態とすることが好ましい。このとき、弾性部32を、導電性であり且つ高い機械的強度と高い曲げ弾性係数を発揮する金属材料として、Ni−X合金(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be,Bのいずれか一種以上)で形成することが好適である。このとき、弾性部32を、Ni−P合金で形成することが好適である。Ni−P合金では、リン(P)の濃度を10at%以上で30at%以下(より好ましくは17〜25at%)とすることにより、弾性部32をアモルファス状態に適切に保つことができ、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。あるいは、弾性部32をNi−W合金で形成してもよい。この場合もタングステン(W)の濃度を10at%以上で30at%以下とすることにより、弾性部32をアモルファス状態に適切に保つことができ、高い弾性係数と高い引っ張り強度を得ることができる。
【0053】
図3において、弾性部32の断面積は、芯部23の断面積の20%以上で80%以下であることが好ましい。この範囲であると、芯部23が導電性とばね性の双方の機能を発揮できる。
【0054】
あるいは図5(加熱処理後の状態を示している)に示すように、芯部23をNi−Xにて電鋳形成した単層構造としてもよい。これにより接触子20全体の更なる小型化と弾性変形部22のばね性とを適切に保つことが出来る。
【0055】
なお上記のように電鋳で芯部23を形成し、このとき、弾性変形部22を立体成形する場合には、表面に立体形状(例えば円錐状)に突出した突出部を備える基板を用い、前記突出部の表面に弾性変形部22を電鋳形成すれば、前記弾性変形部22を立体成形できる。そして、このように弾性変形部22を立体成形した状態で、図1(d)で説明した加熱処理を施す。
【0056】
なお、接触子20の配列ピッチは、例えば2mm以下であり、あるいは1mm以下である。接触子20の外形寸法の最大値も2mm以下であり、あるいは1mm以下である(図2(b)(c)参照)。
【0057】
このように接触子20の大きさは非常に小さく、また、各接触子20は電気的に接続しておらず、個々分離した状態である。よって、各接触子に均一且つ安定してメッキを施すことは比較的大きなリード部の表面にメッキを施す場合等と異なって非常に難しい。本実施形態では、無電解メッキ法を用いて、白金族金属層28及びAu層29のメッキ形成を行い、続いて加熱処理にて、白金族元素とAuとを元素拡散させて、合金層33を形成するので、各接触子20に対して均一且つ安定して合金層33の形成を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施形態における多数の接続子を備えた接触子シートの製造方法を示す工程図(断面図)、
【図2】図2(a)は、多数の接触子シートを配列したワークシートの平面図、図2(b)は、図2(a)の丸Aで囲んだ一つの接触子シートの拡大平面図、図2(c)は、図2(b)の丸Bで囲んだ一つの接触子の拡大平面図、
【図3】図2(c)のC−C線に沿って切断し矢印方向から見た弾性変形部の拡大断面図(加熱処理前の状態を示す)、
【図4】図4(a)は、加熱処理前における弾性変形部の部分拡大断面図、図4(b)は、加熱処理後における弾性変形部の部分拡大断面図、
【図5】他の実施形態の弾性変形部の拡大断面図(加熱処理後の状態を示す)、
【図6】本実施形態である接続装置の部分断面図、
【図7】図6に示す接続装置の接触子付近を示す拡大断面図(接触子は側面図で示す)、
【符号の説明】
【0059】
1 接続装置
10 基台
12 固定面
14 半田層
20 接触子
21 固定部
22 弾性変形部
23 芯部
24 樹脂シート
25 接触子シート
27 ワークシート
28 白金族金属層
29 Au層
30 治具
31 導電部
32 弾性部
33 合金層
40 電子部品
42 突出電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形部を備える接触子の製造方法において、
固定部と、前記固定部から延出形成された前記弾性変形部とを有する芯部を形成する工程、
少なくとも前記弾性変形部を構成する前記芯部の表面に、無電解メッキ法にて、白金族金属層をメッキ形成する工程、
前記白金族金属層の表面に、無電解メッキ法にて、Au層をメッキ形成する工程、
加熱処理を施して、最表面層に、白金族元素とAuとの合金層を形成する工程、
を有することを特徴とする接触子の製造方法。
【請求項2】
前記固定部にも、無電解メッキ法による前記白金族金属層及び前記Au層のメッキ形成、及び加熱処理を施して、前記合金層を形成する請求項1記載の接触子の製造方法。
【請求項3】
個々に分離された複数の前記芯部を形成し、支持シートに支持された全ての前記芯部に対して、前記無電解メッキ工程及び加熱処理工程を施して、前記合金層を備える複数の前記接触子を形成する請求項1又は2に記載の接触子の製造方法。
【請求項4】
前記加熱処理工程を、前記弾性変形部を立体成形した状態で行う請求項1ないし3のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項5】
前記Au層を、前記白金族金属層よりも薄く形成するか、あるいは同等の膜厚で形成する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項6】
前記芯部を、銅又は銅合金で形成された導電部の表面に、無電解メッキ法にて、Ni−X(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be,Bのいずれか一種以上)からなる弾性部をメッキした積層構造で形成する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項7】
前記芯部を、Ni−X(ただしXは、P、W、Mn、Ti、Be,Bのいずれか一種以上)にて電鋳形成する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。
【請求項8】
前記加熱温度を、150℃〜300℃の範囲内で調整する請求項1ないし7のいずれか1項に記載の接触子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153236(P2010−153236A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330901(P2008−330901)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】