説明

弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置

【課題】故障が少なく、製造効率の高い、一定の品質の製品ベールを供給できるプレス装置を提供する。
【解決手段】弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置1において、このプレス装置1は、嵩高材料片を供給する供給ホッパー7と、供給ホッパー7から供給される嵩高材料片を受け入れるプリプレス室10と、プリプレス室10内の嵩高材料片を圧縮する油圧式のプリプレス装置13と、プリプレス室10から嵩高材料片を受け入れる本プレス室28と、プリプレス室10内で圧縮された嵩高材料片を本プレス室28へ移送する移送装置21と、本プレス室28内の嵩高材料片を圧縮する油圧式の本プレス装置17とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲わら、麦わら、牧草等の弾性復元力の大きな嵩高材料片を圧密化するためのプレス装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水田や畑等(以下、水田等)で生産される稲わら、麦わら、牧草等(以下、稲わら等)は、例えば牛等の家畜の飼料用等に利用される。稲わら等を利用するためには、水田等の生産地域から、家畜が飼育されている等の利用地域まで稲わら等を運搬する必要がある。例えば、稲わら等の生産地域は九州北部であり、利用地域は九州南部であるなど、遠距離を運搬する必要があることも多い。
稲わら等は嵩高の材料であるので、効率よく極力低コストで運搬するために、圧縮して車両等に積載して運搬している。例えば、水田等で生産される稲わら等を、水田等においてロールベーラーによってロールベールにすること等が行われている。それでも、通常のロールベールの圧縮密度では、例えば10トン車に4トン程度しか積載できず、輸送効率が良くはない。
【0003】
そこで、水田等で生産されたロールベールを圧縮梱包施設に搬入し、さらに圧密化されたベールを製造するということが行われている。圧縮梱包施設においては、ロールベールを一度解体し、ロールカッターで稲わらを10〜20cmにカットし、さらに2次カッターで2〜10cmに細断したカット稲わらを、圧縮、梱包し、製品ベールを製造している。このように、稲わらの容積をさらに低減することにより、例えば10トン車に10トンの稲わらを積載できるようになり、輸送効率が向上し、流通コストが低減される。
【0004】
また、上記のように、圧縮梱包施設において、ロールベールを解体・細断・圧縮することによって、ロールベール内に混入する異物(農機具の部品、空き缶等)を除去できる可能性が高まっている。したがって、圧縮梱包施設において製造される製品ベールは、ロールベールよりも品質が良くなる。
また、通常のロールベールの場合、飼育場で稲わらを細断して家畜に給餌する必要があるため、飼育場に専用のカッターを備える必要がある。しかし、圧縮梱包施設において製造された製品ベールは細断されていているため、飼育場での作業が軽減されるとともに、カッターの投資が不要になる。
【0005】
従来は、細断されたカット稲わらをプレスするためにクランク式プレス機31が使用されている(図10参照)。クランク式プレス機31には、クランク機構が使用されている。モータ41により動輪43、45を駆動し、クランクシャフト37を介してピストン39を往復運動させるようになっている。細断されたカット稲わらは、供給口33から縦型スクリューコンベヤ35へ供給される。
クランクプレス方式は、約2秒に1回ピストン39を往復させ、ピストン39が後退した時に空いたプレス室内の空間に、縦型スクリューコンベヤ35でカット稲わらを上部から投入し、その後ピストン39でプレスを繰り返す方式である。従来のクランク式プレス機31は、供給されるカット稲わらを連続的にピストン39で打ち付け、排出口47から出てきたベールが所定の長さ(例えば、約80cm)になった時に分割して、1個分の製品ベールのサイズに形成している。
【0006】
先行技術文献としては、特許文献1に、飼料作物などを圧縮梱包するシステムが開示されている。このシステムにおいて飼料作物を圧縮成形する装置には、従来用いられているロールベーラー等が使用されている。また、引用文献2には、ロールベーラーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−258246号公報
【特許文献2】特開2002−360055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
カット稲わらをプレスする場合、稲わらの品質(水分の高低、泥の混入状況)によって固まり易さが変わる。例えば、水分が多い場合や泥の混入が多い場合は、カット稲わらはプレスによって固結し易い。その結果、クランク式プレス機31においては稲わらがプレス室から出にくくなる。その状態でピストン39を繰り返し打つことによってベールが非常に硬くなる場合がある。このような場合に、プレス室内の圧力がクランクシャフト37とピストン39等を連結する軸受メタルや動輪43、45のギヤに逆作用し、クランク式プレス機31本体が損耗・破損するという故障が度々発生している。
【0009】
また、クランク式プレス機31へカット稲わらを投入する縦型スクリューコンベヤ35は、運転時は常時稼動しているが、比重が軽く流動性の悪いカット稲わらは流量が安定しないため、安定的な投入が困難である。そのため、一時的に投入量が多くなった場合に、スクリュー内部での詰りや固結が発生し、これに伴いスクリューの羽根・軸・ベアリング等の破損が度々発生している。
【0010】
その結果、クランク式プレス機は頻繁に故障し、約0.9t/hの製造能力があるものの、故障による停止時間を考慮すると、実際には約0.5t/hの製造しかできていない。
【0011】
また、従来のクランク式プレス機は、供給されるカット稲わらを連続的にピストンで打ち付け、出てきたベールが所定の長さ(例えば、約80cm)になった時に分割して、1個分の製品ベールのサイズに形成している。取り扱い性を考慮して、製品ベール1個あたりの重量を20kg程度とすることを目標としているが、ベールの長さを基準に分割するため、ベールの密度が違うとベールの重量に差が出てしまう。稲わらの水分が高い(25%前後)場合や泥の混入が多い場合、ベールが硬く高密度・高重量になり、製品ベール1個あたりの重量が30kg以上となる場合もある。逆に、稲わらの水分が低い場合、ベールが柔らかく低密度・低重量になり、製品ベール1個あたりの重量が15kg以下となる場合も有る。このように、製品ベール1個あたりの重量が一定でないという問題もある。
【0012】
そこで、本発明は、故障が少なく、製造効率の高い、一定の品質の製品ベールを供給できるプレス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置において、プレス装置は、嵩高材料片を供給する供給ホッパーと、供給ホッパーから供給される嵩高材料片を受け入れるプリプレス室と、プリプレス室内の嵩高材料片を圧縮する油圧式のプリプレス装置と、プリプレス室から嵩高材料片を受け入れる本プレス室と、プリプレス室内で圧縮された嵩高材料片を本プレス室へ移送する移送装置と、本プレス室内の嵩高材料片を圧縮する油圧式の本プレス装置とを含むプレス装置を提供する。
ここで、本発明は、稲わら、麦わら、牧草等の弾性復元力の大きな任意の嵩高材料に適用することが可能である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、プリプレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第1油圧シリンダを含み、本プレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第2油圧シリンダを含み、第1油圧シリンダは、第2油圧シリンダよりも荷重が小さく、ストロークが長く、移動速度が速いことが好ましい。
【0015】
本発明の別の実施形態では、移送装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第3油圧シリンダを含む油圧式の移送装置であり、移送装置は嵩高材料片をプリプレス室から本プレス室へ移送するとともに圧縮することができる。
【0016】
本発明の別の実施形態では、プレス装置は、さらにロッド側先端に押圧部を備えた第4油圧シリンダを含み、第3油圧シリンダを伸長し、第4油圧シリンダを後退させることによって、本プレス室内で圧縮された嵩高材料片を排出するようになっている。
【0017】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーとプリプレス装置が連結されており、供給ホッパーとプリプレス装置がプリプレス室に対して移動できるようになっており、供給ホッパーとプリプレス装置のいずれかが、プリプレス室に対して作動する位置に位置付けられるようになっている。
【0018】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーの排出口にはダンパーが備えられており、ダンパーを開放することによって供給ホッパー内の嵩高材料片がプリプレス室内へ一度に供給される。
【0019】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーの本体は直方体状であることが好ましい。
【0020】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーには、嵩高材料片の重量を計測する重量計が備えられていることが好ましい。
【0021】
本発明の第2の観点では、弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置の作動方法において、この方法は、供給ホッパーに収容された嵩高材料片をプリプレス室へ供給するステップと、プリプレス室内の嵩高材料片を油圧式のプリプレス装置によって圧縮するステップと、プリプレス室内で圧縮された嵩高材料片を移送装置によって本プレス室へ移送するステップと、本プレス室内の嵩高材料片を油圧式の本プレス装置によって圧縮するステップとを含む、プレス装置の作動方法を提供する。
【0022】
本発明の別の実施形態では、プリプレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第1油圧シリンダを含み、本プレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第2油圧シリンダを含み、第1油圧シリンダを、第2油圧シリンダよりも荷重が小さく、ストロークが長く、移動速度が速く作動させることができる。
【0023】
本発明の別の実施形態では、移送装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第3油圧シリンダを含む油圧式の移送装置であり、移送するステップは、嵩高材料片をプリプレス室から本プレス室へ移送するとともに圧縮することができる。
【0024】
本発明の別の実施形態では、プレス装置は、さらにロッド側先端に押圧部を備えた第4油圧シリンダを含み、作動方法は、さらに本プレス室内で圧縮された嵩高材料片を排出するステップを含み、排出するステップは、第3油圧シリンダを伸長し、第4油圧シリンダを後退させることによって、嵩高材料片を排出することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーの排出口にはダンパーが備えられており、供給するステップは、ダンパーを開放することによって供給ホッパー内の嵩高材料片をプリプレス室内へ一度に供給することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、プリプレス装置によって圧縮するステップから本プレス装置によって圧縮するステップが終了するまでの間に、次の圧密化のための嵩高材料片を供給ホッパーに収容することができる。
【0027】
本発明の別の実施形態では、供給ホッパーには、所定重量の嵩高材料片を収容することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の上記構成とすることにより、プレス機の故障が減少し、製造効率が向上し、一定の品質の製品ベールを供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図2】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図3】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図4】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図5】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図6】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図7】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図8】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図9】本発明の油圧式プレス機の加工工程を示す図である。
【図10】従来のクランク式プレス機の概略図である。
【実施例】
【0030】
図1から図9は、本発明の油圧式プレス機の製品ベール加工工程を示している。
まず、図1を参照して、本発明の実施例による油圧式プレス機1の構成を説明する。油圧式プレス機1よりも加工工程の上流側には、細断されたカット稲わら2を貯留する一時貯留ホッパー3が設けられている。一時貯留ホッパー3から供給されたカット稲わらは、ベルトコンベヤ5によって、油圧式プレス機1の供給ホッパー7へ移送されるようになっている。
【0031】
油圧式プレス装置1は、カット稲わらを供給する供給ホッパー7と、供給ホッパー7から供給されるカット稲わらを受け入れるプリプレス室10と、プリプレス室10内のカット稲わらを圧縮する油圧式のプリプレス装置13と、プリプレス室10からカット稲わらを受け入れる本プレス室28と、プリプレス室10内で圧縮されたカット稲わらを本プレス室28へ移送する移送装置21と、本プレス室内のカット稲わらを圧縮する油圧式の本プレス装置17とを含む。
【0032】
プリプレス装置13は、ロッド側先端に押圧部15を備えた第1油圧シリンダ14を含む。本プレス装置17は、ロッド側先端に押圧部19を備えた第2油圧シリンダ18を含む。第1油圧シリンダは、第2油圧シリンダよりも荷重が小さく、ストロークが長く、移動速度が速い。
【0033】
移送装置21は、ロッド側先端に押圧部23を備えた第3油圧シリンダ22を含む。移送装置21は、カット稲わらをプリプレス室10から本プレス室28へ移送するとともに圧縮する。
【0034】
油圧式プレス装置1は、さらにロッド側先端に押圧部27を備えた第4油圧シリンダ26を含む。第3油圧シリンダ22を伸長し、第4油圧シリンダ26を後退させることによって、本プレス室28内で圧縮されたカット稲わらを排出するようになっている。
【0035】
供給ホッパー7とプリプレス装置13が連結されている。また、供給ホッパー7とプリプレス装置13がプリプレス室10に対して移動できるようになっている。そして、供給ホッパー7とプリプレス装置13のいずれかが、プリプレス室10に対して作動する位置に位置付けられるようになっている。
【0036】
供給ホッパー7の排出口にはダンパー11が備えられている。ダンパー11を開放することによって供給ホッパー7内のカット稲わらがプリプレス室10内へ一度に供給される。
供給ホッパー7の本体は直方体状である。直方体状以外でも、下向きに広がる円錐台形等の形状なども適用可能である。ダンパーが開放されたときに、カット稲わらが確実に下方に落下するならば、任意の形状が適用可能である。
供給ホッパー7には、カット稲わらの重量を計測する重量計が備えられている。他の場所でカット稲わらの重量を計測して、供給ホッパー7にカット稲わらを供給することも可能である。この場合、供給ホッパー7には重量計を備えなくてもよい。
【0037】
図1は、加工工程の開始状態を示している。供給ホッパー7には、製品ベール1個分のカット稲わらが収容されている。供給ホッパー7はプリプレス室10の上方に位置付けられている。図面には、正面図と部分側面図が共に示されている。供給ホッパー7、プリプレス装置13、及びプリプレス室10との位置関係は、図面左上の部分側面図からも理解できる。
図1の状態を、時間0の状態とする。以後、参考までに経過時間を例示しながら各工程について説明する。
【0038】
ロールカッターで細断されたカット稲わらは、一時貯留ホッパー3に貯留されている。カット稲わらは、一時貯留ホッパー3から供給ホッパー7へベルトコンベヤ5によって移送される。供給ホッパー7には重量計が設置されており、稲わらが一定量(例えば20kg)に達するとベルトコンベヤ5が自動停止するようになっている。
【0039】
供給ホッパー7は、ベルトコンベヤ5からのカット稲わらを受け入れる受入位置からプリプレス室10の上方の排出位置までエアーシリンダで移動できるようになっている。
【0040】
図2は、供給ホッパー7のダンパー11が開放された状態を示している。ダンパー11の開放は約3秒間行われる。ダンパー11が開放されることによって、供給ホッパー7内のカット稲わらがプリプレス室10内へ落下する。プリプレス室10は、プリプレス室枠9によって画定されている。
【0041】
従来のスクリューコンベヤによる連続投入方式と異なり、本発明では、供給ホッパー7に貯留されたベール1個分のカット稲わらを、一度にプリプレス室10内に投入する方式としている。これにより、投入時のスクリューコンベヤ内でのカット稲わらの詰まりやスクリューコンベヤの羽根・軸・ベアリング等の破損等の故障発生の問題を解決している。
【0042】
また、稲わらは比重が軽く、通常のホッパーのように下部を絞った形状にするとカット稲わらがホッパー内でブリッジ状になって落下しない。そのため、ベール1個分のカット稲わらをプリプレス室10内に一度に落下投入することが困難となる。したがって、供給ホッパー7を直方体状にすることによって、ダンパー11が開放されたときにカット稲わらをプリプレス室10内に一度に落下させることを可能としている。
【0043】
続いて、図3に示す通り、供給ホッパー7のダンパー11が閉鎖される。ダンパー11の閉鎖は約1秒間行われる(累積経過時間4秒)。
【0044】
続いて、図4に示す通り、供給ホッパー7が元の受入位置へエアーシリンダにより移動し、プリプレス装置13がプリプレス室10上方に位置付けられる。この工程に要する時間は約3秒である(累積経過時間7秒)。
【0045】
続いて、図5に示す通り、プリプレス室10内のカット稲わらをプリプレス装置13で圧縮する。この工程に要する時間は約4秒である(累積経過時間11秒)。そして、受入位置へ移動した供給ホッパー7には次のベールを製造するためのカット稲わらが投入され始める。
【0046】
続いて、図6に示す通り、移送装置21により、カット稲わらをプリプレス室10内から本プレス室28へ移送し、カット稲わらを水平方向に圧縮する。この工程に要する時間は約4秒である(累積経過時間15秒)。第3油圧シリンダ22のロッド側先端押圧部23、及び第4油圧シリンダ26のロッド側先端押圧部27は、本プレス室28の本プレス室枠の一部を形成している。本実施例では、この工程において第3油圧シリンダ22の押圧部23側のピストンロッド1段目が伸長する。
【0047】
続いて、図7に示す通り、本プレス室28のカット稲わらを本プレス装置17で圧縮する。この工程に要する時間は約17秒である(累積経過時間32秒)。この工程中に、プリプレス装置13の第1油圧シリンダ14は後退する。
【0048】
続いて、図8に示す通り、第4油圧シリンダ26が後退し、同時に第3油圧シリンダ22がさらに伸長することによりカット稲わらを払い出し位置まで移動する。この工程において第3油圧シリンダ22の押圧部23側のピストンロッド2段目が伸長する。この工程に要する時間は約7秒である(累積経過時間39秒)。この工程中に、次のベール1個分のカット稲わらを収容した供給ホッパー7がプリプレス室10上方へ移動する。
【0049】
続いて、図9に示す通り、カット稲わらは次の梱包装置(図示せず)へ移送される。そして、第4油圧シリンダ26が元の位置へ戻り、第3油圧シリンダ22も最初の位置へ戻る。この工程に要する時間は約6秒である(累積経過時間45秒)。
【0050】
続いて、再び図2に示す通り、供給ホッパー7のダンパー11が開放され、再び図3から図9の工程が繰り返され、次のベールが製造される。
【0051】
圧縮されたカット稲わらは、復元しつつコンベヤ等で次の梱包装置へ移送される。その後、ポリシート等で包装され、PPバンド等で結束されて製品ベールが完成する。
圧縮したカット稲わらは、復元力により徐々に膨らむ。プレス圧力が弱かったり、プレス時間が短かったり、わらの細断長が長かったりすると、復元が大きくなる。また、プレス後の時間経過とともに、復元が徐々に大きくなる。本発明の油圧式プレス機は、所定のサイズの稲わらベールに加工できるように、復元を予め考慮してプレス圧力とプレス時間を設定している。
【0052】
本発明では、油圧プレス方式を採用している。それは、油圧が大きなプレス圧力を発生できるからである。さらに、油圧プレス方式はプレス圧力が一定であるため、高い圧力のわらの水分が高いまたは泥の混入が多いことによる固結を極力回避し、それに起因する装置の故障を防ぐ効果もある。
【0053】
本発明の一実施例では、下記の通りプレス圧力を設定している。
プリプレス装置(第1油圧シリンダ): 約30t
移送装置(横プリプレス装置)(第3油圧シリンダ): 約38.5t
本プレス装置(第2油圧シリンダ): 約245t
以上の通り、縦方向と横方向のプリプレス装置は、弱い荷重で速く動き、本プレス装置は、強い荷重でゆっくり動くように設定している。
【0054】
また、本発明の一実施例では、実際の試験において、およそ以下の時間が計測された。
プリプレス装置: 移動時間 約3.8秒
移送装置: 移動時間 約4.2秒
本プレス装置: 移動時間 約6.4秒 + 加圧保持時間 7.7秒
本プレス装置においては、加圧端で保持する時間を設けている。この保持時間がないと、カット稲わらの復元が強くなり、ベールを所定形状にすることが難しくなる。プリプレス装置や移送装置に加圧保持時間を設けることも可能である。また、加圧保持時間の長さは適宜調整可能である。
【0055】
本発明が、プリプレスと本プレスの複数段階の圧縮にしているのは、主に2点の理由がある。
まず、第一に、最大の圧力をかける本プレス装置の第1油圧シリンダの移動する距離および時間を短縮するためである。稲わらの比重は約30kg/mと非常に軽く、ベール1個分(約20kg)を一度にプレスしようとすると、原料稲わらの容積が大きいため油圧シリンダのピストンロッドが長距離を移動しなければならず時間がかかる。そこで、それ程圧力が必要ない初期のプレスは本プレスとは別に実施し、最大の圧力が必要な段階に対してのみ本プレスを実施している。これにより工程全体の時間を短縮すると同時に、本プレスの時間を十分に確保している。その結果、製造効率が向上している。
第二に、本プレスとプリプレスを分離することで、他の動作を並行してできるようにするためである。上記説明の通り、本プレス等の工程中に、次の原料稲わらのプリプレス室への投入準備が並行して行われている。その結果、製造効率が向上している。
【0056】
さらに、稲わらは復元力が強いため、油圧プレスで相当の圧力を加えないと、膨張してしまいベール化できず、均一な密度の製品ベールを製造することもできない。複数段階の圧縮とすることにより、本プレス時の加圧保持時間を十分に確保できるため、ベールが十分に圧縮され、製品ベールの密度が均一化され、品質向上の効果もある。
【0057】
実際の試験によって、本発明の油圧式プレス機が、従来のクランク式プレス機に頻発していた故障停止もなく良好に運転され、約1.5t/hの製造能力を有することが確認された。従来のクランク式プレス機は、故障による停止時間を考慮して実質0.5t/hの製造能力しかなかったことと比較して、極めて製造効率が向上したことが確認された。
【符号の説明】
【0058】
1 油圧式プレス機
2 カット稲わら
3 一時貯留ホッパー
5 ベルトコンベヤ
7 供給ホッパー
9 プリプレス枠
10 プリプレス室
11 ダンパー
13 プリプレス装置
14 第1油圧シリンダ
15 押圧部
17 本プレス装置
18 第2油圧シリンダ
19 押圧部
21 移送装置
22 第3油圧シリンダ
23 押圧部
26 第4油圧シリンダ
27 押圧部
28 本プレス室
31 クランク式プレス機
33 供給口
35 縦型スクリューコンベヤ
37 クランクシャフト
39 ピストン
41 モータ
43、45 動輪
47 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置において、前記プレス装置は、
前記嵩高材料片を供給する供給ホッパーと、
前記供給ホッパーから供給される前記嵩高材料片を受け入れるプリプレス室と、
前記プリプレス室内の前記嵩高材料片を圧縮する油圧式のプリプレス装置と、
前記プリプレス室から前記嵩高材料片を受け入れる本プレス室と、
前記プリプレス室内で圧縮された前記嵩高材料片を前記本プレス室へ移送する移送装置と、
前記本プレス室内の前記嵩高材料片を圧縮する油圧式の本プレス装置とを含むプレス装置。
【請求項2】
前記プリプレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第1油圧シリンダを含み、
前記本プレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第2油圧シリンダを含み、
前記第1油圧シリンダは、前記第2油圧シリンダよりも荷重が小さく、ストロークが長く、移動速度が速い、請求項1に記載されたプレス装置。
【請求項3】
前記移送装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第3油圧シリンダを含む油圧式の移送装置であり、前記移送装置は前記嵩高材料片を前記プリプレス室から前記本プレス室へ移送するとともに圧縮する、請求項1または請求項2に記載されたプレス装置。
【請求項4】
前記プレス装置は、さらにロッド側先端に押圧部を備えた第4油圧シリンダを含み、前記第3油圧シリンダを伸長し、前記第4油圧シリンダを後退させることによって、前記本プレス室内で圧縮された前記嵩高材料片を排出するようになっている、請求項3に記載されたプレス装置。
【請求項5】
前記供給ホッパーと前記プリプレス装置が連結されており、前記供給ホッパーと前記プリプレス装置が前記プリプレス室に対して移動できるようになっており、前記供給ホッパーと前記プリプレス装置のいずれかが、前記プリプレス室に対して作動する位置に位置付けられるようになっている、請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載されたプレス装置。
【請求項6】
前記供給ホッパーの排出口にはダンパーが備えられており、前記ダンパーを開放することによって前記供給ホッパー内の前記嵩高材料片が前記プリプレス室内へ一度に供給される、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載されたプレス装置。
【請求項7】
前記供給ホッパーの本体は直方体状である、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載されたプレス装置。
【請求項8】
前記供給ホッパーには、前記嵩高材料片の重量を計測する重量計が備えられている、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載されたプレス装置。
【請求項9】
弾性復元力の大きな嵩高材料片の圧密化のためのプレス装置の作動方法において、前記方法は、
供給ホッパーに収容された前記嵩高材料片をプリプレス室へ供給するステップと、
前記プリプレス室内の前記嵩高材料片を油圧式のプリプレス装置によって圧縮するステップと、
前記プリプレス室内で圧縮された前記嵩高材料片を移送装置によって本プレス室へ移送するステップと、
前記本プレス室内の前記嵩高材料片を油圧式の本プレス装置によって圧縮するステップ
とを含む、プレス装置の作動方法。
【請求項10】
前記プリプレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第1油圧シリンダを含み、
前記本プレス装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第2油圧シリンダを含み、
前記第1油圧シリンダを、前記第2油圧シリンダよりも荷重が小さく、ストロークが長く、移動速度が速く作動させる、請求項9に記載された、プレス装置の作動方法。
【請求項11】
前記移送装置は、ロッド側先端に押圧部を備えた第3油圧シリンダを含む油圧式の移送装置であり、前記移送するステップは、前記嵩高材料片を前記プリプレス室から前記本プレス室へ移送するとともに圧縮する、請求項9または請求項10に記載された、プレス装置の作動方法。
【請求項12】
前記プレス装置は、さらにロッド側先端に押圧部を備えた第4油圧シリンダを含み、前記作動方法は、さらに前記本プレス室内で圧縮された前記嵩高材料片を排出するステップを含み、前記排出するステップは、前記第3油圧シリンダを伸長し、前記第4油圧シリンダを後退させることによって、前記嵩高材料片を排出する、請求項11に記載された、プレス装置の作動方法。
【請求項13】
前記供給ホッパーの排出口にはダンパーが備えられており、前記供給するステップは、前記ダンパーを開放することによって前記供給ホッパー内の前記嵩高材料片を前記プリプレス室内へ一度に供給する、請求項9から請求項12までのいずれか一項に記載された、プレス装置の作動方法。
【請求項14】
前記プリプレス装置によって圧縮するステップから前記本プレス装置によって圧縮するステップが終了するまでの間に、次の圧密化のための嵩高材料片を前記供給ホッパーに収容する、請求項9から請求項13までのいずれか一項に記載された、プレス装置の作動方法。
【請求項15】
前記供給ホッパーには、所定重量の前記嵩高材料片を収容する、請求項9から請求項14までのいずれか一項に記載された、プレス装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254473(P2012−254473A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129735(P2011−129735)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)