説明

弾性波デバイスおよびその製造方法

【課題】不要波応答を抑圧しつつ、IDT電極の膜厚を厚くする。
【解決手段】弾性波デバイス1は、圧電性基板2と、圧電性基板2上に並んで配置される複数の電極指を含むIDT電極3と、複数の電極指間に形成される第1の誘電体膜4と、IDT電極3と第1の誘電体膜4を覆う第2の誘電体膜7と、複数の電極指間であって第1の誘電体膜4上に形成される、第1の誘電体4より高音速の媒質である高音速層5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、TVや携帯電話、PHS等におけるフィルタ素子や発振子に用いることができる弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波を応用したデバイスの1つとして弾性表面波素子(SAWデバイス:Surface Acoustic Wave Device)が以前より良く知られている。このSAWデバイスは例えば45MHz〜2GHzの周波数帯における無線信号を処理する装置における各種回路、例えば送信バンドパスフィルタ、受信バンドパスフィルタ、局発フィルタ、アンテナ共用器、IFフィルタ、FM変調器等に用いられる。
【0003】
近年、携帯電話などの高性能化に伴い、例えばバンドパスフィルタに用いられるSAWデバイスに対して、通過帯域内での低ロス化、通過帯域外での高抑圧化、温度安定性の向上など、諸特性の改善やデバイスサイズの小型化が求められている。中でも、温度安定性の向上については、デバイスサイズの小型化、デバイスへの入力パワーの増大などを原因とするデバイスのパワー密度の増大を背景として、喫緊の課題である。この温度安定性に関して、近年従来のSAWデバイスとは異なる構造のデバイスによる改善が提案されている。圧電性基板上にIDT電極を形成し、さらにIDT電極を覆うように厚い誘電体層を形成したラブ波デバイス、境界波デバイスなどがその例である(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-112748号公報
【特許文献2】国際公開第98/52279号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、ラブ波デバイスのように、圧電性基板上のIDT電極を覆うよう誘電体層を備える弾性波デバイスにおいては、不要応答としてレイリー波と高次不要応答が励振されることが多い。レイリー波は、スプリアス応答などとなって損失を増加させるなどの影響をもたらす。一方、高次不要応答は、ラブ波の周波数よりかなり高周波な周波数帯で励振される。こちらは、フィルタの抑圧を悪化させる原因となる場合がある。レイリー波応答の大きさは、弾性波デバイスの電極種、膜厚、誘電体層厚によって変化する。図1は、ラブ波デバイスの1ポート共振器の通過特性の一例を示す図である。ラブ波の反共振周波数より低周波側にレイリー波応答が出現している。図2は、ラブ波デバイスの構成例を示す断面図である。図2に示すラブ波デバイスは、圧電性基板102と、圧電性基板102上に設けられるIDT電極103(Cu)とIDT電極103の間の電極間誘電体層104と備える。さらに、IDT電極103と電極間誘電体層104を覆うように拡散防止層106および誘電体層107が設けられる。図3は、図2に示すラブ波デバイスにおけるレイリー波応答を有限要素法で計算した結果を示すグラフである。図3のグラフは、横軸に電極材として用いているCuの膜厚を、縦軸にレイリー波応答の大きさをとっている。このときの基板材料は、YカットX伝播のLiNbO3である。グラフはCu膜厚(IDT電極103の膜厚)が約150 nmの時に、レイリー波応答の大きさが0となることを示している。すなわち、グラフは、Cu膜厚が150 nmより厚くなっても、薄くなっても、急激にレイリー波応答の大きさが大きくなってしまうことを示している。
【0006】
一般に携帯電話などに用いられる弾性波デバイスに対しては、低消費電力化、つまりデバイスの低ロス化が強く求められている。低ロス化の手段の一つとして、IDT電極を厚くすることが挙げられる。IDT電極を厚くすることによって、電極の断面積が大きくなり、電極抵抗を低減することができる。しかし、前述のレイリー波応答の大きさの挙動からわかるように、図2に示した構造のラブ波デバイスにおいては、Cu膜厚は150 nmに固定されてしまう。つまり、IDT電極103の膜厚を厚くすることによって、低ロス化を図るという手段を用いることが困難である。なお、使用する基板やIDT電極の材料等によって、レイリー波応答を抑圧できる最適なIDT電極の膜厚は異なるが、他の材料を用いた場合も、レイリー波応答は、図3と同様の極値を持つグラフを描き得る。また、レイリー波応答特性によって、IDT電極の膜厚が制限されることは、ラブ波デバイス以外の弾性波デバイスでも同様である。また、IDT電極の膜厚を制限する不要応答は、レイリー波応答に限られない。
【0007】
そこで、本発明は、不要波応答を抑圧しつつ、IDT電極の膜厚を厚くすることが可能な弾性波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願開示の弾性波デバイスは、圧電性基板と、前記圧電性基板上に並んで配置される複数の電極指を含むIDT電極と、前記複数の電極指間に形成される第1の誘電体膜と、前記IDT電極と前記第1の誘電体膜を覆う第2の誘電体膜と、前記複数の電極指間であって前記第1の誘電体膜上に形成される、前記第1の誘電体より高音速の媒質である高音速層とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本願開示によれば、不要波応答を抑圧しつつ、IDT電極の膜厚を厚くすることが可能な弾性波デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ラブ波デバイスの1ポート共振器の通過特性の一例を示す図である。
【図2】ラブ波デバイスの構成例を示す断面図である。
【図3】図2に示すラブ波デバイスにおけるレイリー波応答を有限要素法で計算した結果を示すグラフである。
【図4A】本実施形態における弾性波デバイスの構成例を示す断面図である。
【図4B】図4Bは、本実施形態における弾性波デバイスの上面透視図である。
【図5】本実施形態における弾性波デバイスのレイリー波応答の大きさを有限要素法で計算した結果を示すグラフである。
【図6】図2に示す構成のラブ波デバイスを1ポート共振器として動作させたときの共振器の通過特性に示すグラフである。
【図7】本実施形態の弾性波デバイスの作製方法例を示す図である。
【図8】図2に示す弾性波デバイスの作製方法例を示す図である。
【図9】通信機器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
[弾性波デバイスの構成例]
図4Aは、本実施形態における弾性波デバイスの構成例を示す断面図である。図4Bは、本実施形態における弾性波デバイスの上面透視図である。図4Aは、図4BのA-A線断面の一部を示している。図4Aおよび図4Bに示す弾性波デバイス1では、圧電性基板2の上に、並んで配置される複数の電極指を含むIDT電極3と、複数の電極指間に形成される第1の誘電体膜4が設けられる。複数の電極指間であって第1の誘電体膜4上には、高音速層5が形成される。すなわち、第1の誘電体膜4の上部部分上に高音速層5が形成されている。高音速層5は、第1の誘電体4より高音速の媒質である。IDT電極3と第1の誘電体膜4を覆うように第2の誘電体膜7が設けられる。この第2の誘電体7と、IDT電極3および高音速層5の間には、拡散防止層6(付加層の一例)が設けられている。拡散防止層6は、第2の誘電体7より高音速の媒体としている。
【0013】
図4Aに示す構成のように、IDT電極3の複数の電極指間において、第1の誘電体膜4の上に高音速層5が設けられることにより、例えばレイリー波のような不要波の応答特性が変化することが発明者らによって見出された。すなわち、第1の誘電体膜4より音速が高い媒質である高音速層5の挿入により、不要波応答を抑圧するのに最も適したIDT電極3の膜厚の値がシフトすることが見出された。すなわち、IDT電極3の電極指に挟まれた空間において、第1の誘電体膜4の上に、第1の誘電体より音速が高い媒質を設けることにより、IDT電極3付近の音速のバランスを取ることができる。その結果、弾性波デバイス1では、不要波応答を抑圧しつつ、IDT電極3の膜厚を厚くすることが可能になる。ひいては、低ロス化を実現することができる。
【0014】
上記構成において、第1の誘電体膜4の厚みと高音速層5の厚みの合計は、IDT電極3の厚みと同じであることが好ましい。これにより、高音速層5の上面およびIDT電極3の上面が同一面になるように形成される。そのため、IDT電極3の上に形成される層の平坦化が容易になる。なお、ここで、厚みが同じであるとは、厳密に厚みが同じである必要はなく、例えば、製造上の誤差は許容される。
【0015】
また、図4Aに示すように、第2の誘電体7より高音速の材質を主成分とする拡散防止層6を設けることにより、不要波応答を抑圧しつつも、IDT電極3、第1の誘電体膜4あるいは高音速層5を保護することができる。なお、拡散防止層6は、省略することもできる。
【0016】
高音速層5の材質は、例えば、SiC、AlN、アルミナあるいはダイヤモンドを含むものとすることができる。拡散防止層6の材質も、例えば、SiC、AlN、アルミナあるいはダイヤモンドを含むものとすることができる。なお、高音速層5における弾性波の音速が、第1の誘電体膜4における弾性波の音速より高い構成であれば、高音速層5の材料は特定のものに限定されない。同様に、拡散防止層6の材質も特定のものに限定されない。また、高音速層5の音速、第1の誘電体膜4の音速および拡散防止層6の音速は、材料のみによって決まるとは限らず、構造や温度などの影響を受ける場合もある。本実施形態では、一例として、第1の誘電体膜4の上でIDT電極の電極指にはさまれた位置に、高音速の材料を配置することによって、高音速層5を形成している。
【0017】
IDT電極3は、例えば、Cuを主成分とし、第1の誘電体膜4および第2の誘電体膜7は、例えば、SiO2を主成分とすることができる。また、圧電性基板2は、例えば、LiNbO3基板を用いることができる。
【0018】
図4Bに示すように、弾性波デバイス1において、IDT電極3は、入力IN側電極に接続される複数電極指(ストリップ)と、出力OUT側電極に接続される電極指(ストリップ)とが交互に等間隔で並んで配置される。電極指の延びる方向に垂直な方向において、IDT電極3の両側に、反射器8が配置される。弾性波が、反射器8間を、電極指に垂直な方向に伝播することで、弾性波デバイス1は、共振器として動作する。なお、IDT(Inter Digital Transducer)は、櫛形電極または櫛葉型電極とも称されることがある。
【0019】
図4Aおよび図4Bに示す弾性波デバイスは、例えば、弾性表面波の一種であるラブ波を利用するデバイスとして用いることができる。なお、上記弾性波デバイスは、1ポート型弾性波共振器の例であるため、1つのIDT電極3が反射器に挟まれて配置されていたが、弾性波デバイスの用途に応じて、複数のIDT電極が形成されてもよい。また、反射器8を設けなくてもよい。電極指の配置も図4Bに示す例に限れず、例えば、隣り合う電極指の交差幅にアポタイズ重み付けがなされた構成であってもよい。また、本発明にかかる弾性波デバイスは、ラブ波を利用するデバイスに限られず、弾性境界波を利用するデバイスとして利用することも可能である。
【0020】
図5は、図4Aおよび図4Bに示す本実施形態における弾性波デバイスのレイリー波応答の大きさを有限要素法で計算した結果を示すグラフである。この計算は、高音速層5として、SiCを20 nmの膜厚で形成した場合を想定した計算である。また、この計算は、圧電性基板2は、回転Y板のLiNbO3基板とし、圧電性基板2上にCuのIDT電極3が形成された場合を想定している。
【0021】
図5のグラフでは、本実施形態における弾性波デバイスのレイリー波応答のプロットが三角で示されている。比較例として、図2に示すラブ波デバイスのレイリー波応答のプロットが、ひし形で示されている。図5のグラフにおいては、本実施形態の弾性波デバイスのレイリー波応答の大きさを表すプロットが、比較例に比べて全体的に右にシフトしている。その結果、本実施形態の構造では、Cu膜厚が約200 nmの場合にレイリー波応答の大きさが0となっていることが分かる。つまり、高音速層5を導入することによって、IDT電極3の厚みを約50nm厚くできることになる。その結果、IDT電極3での電極抵抗の低減をでき、ひいては、弾性波デバイスとしてのロスの低減を実現することができる。また、IDT電極3での電流密度を低減することができるため、高電力の印加に対して強いデバイスを実現することができる。さらに、弾性波デバイス全体の厚みを薄くすることができる。
【0022】
本願の発明者らの検討において、レイリー波応答の大きさは、IDT電極付近の音速に影響されていることが分かりつつある。この知見に基づけば、レイリー波応答を抑圧しつつ、櫛型電極厚を厚くする手段として、図2に示す構成において、拡散防止層106に高音速材料を用いて、その拡散防止層106を厚くすることによって、IDT電極付近の音速のバランスを取る方法も考えられる。図6は、図2に示す構成のラブ波デバイスを1ポート共振器として動作させたときの共振器の通過特性に示すグラフである。図6のグラフでは、高次不要応答が急激に大きくなってしまう。このため、本実施形態の構成の方が、図2の構成に比べて、不要応答抑制の観点から望ましいと言える。
【0023】
[弾性波デバイスの製造方法]
図7は、本実施形態の弾性波デバイスの作製方法例を示す図である。まず、図7(a)に示すように、圧電性基板2の上面全面に第1の誘電体膜4を形成する。圧電性基板2の基板材料は、例えば、YカットX伝播のLiNbO3を用いることができる。なお、基板材料としては、他の結晶方位のLiNbO3を用いてもよく、あるいは、他の圧電単結晶を用いてもよい。第1の誘電体膜4には、例えば、透明のSiO2を用いることができる。
【0024】
図7(b)において、第1の誘電体膜4の上面全面に高音速層5が形成される。高音速層5として、例えば、SiC層が形成される。第1の誘電体膜4および高音速層5の形成には、印刷、蒸着、またはスパッタリングなどの方法を用いることができる。
【0025】
図7(c)に示すように、フォトリソグラフィ技術を用いて、高音速層5上にレジストパターン11を形成する。レジストパターン11は、IDT電極3を形成するためのパターンであり、例えば、圧電性基板2の上面においてIDT電極3を形成する領域を除いた残りの領域にレジストパターンが形成される。
【0026】
図7(d)に示すように、レジストパターン11形成後に、高音速層5がエッチングされる。これにより、レジストパターン11の下に位置する領域以外の高音速層5が除去される。さらに、図7(e)に示すように、第1の誘電体膜4も、エッチングにより、レジストパターン11の下に位置する領域以外が除去される。
【0027】
図7(f)では、IDT電極3を形成する電極膜が成膜される。電極膜は、例えば、スパッタリングまたは蒸着等により成膜することができる。電極膜は、第1の誘電体膜4が除去された領域、すなわちIDT電極3が形成される領域と、レジストパターン11上とに付与される。ここで、電極膜の膜厚は、第1の誘電体膜4の厚みと高音速層5の厚みの合計とほぼ同じになるよう、成膜されることが好ましい。
【0028】
次に、図7(g)に示すように、リフトオフにより、レジストパターン11は除去される。残ったIDT電極3と高音速層5の表面がフラットになるように表面処理されてもよい。このようにして、IDT電極3は、リフトオフ法によって形成される。また、IDT電極3の電極指間に、上面が高音速層5で被覆された第1の誘電体膜4が位置する構造が得られる。
【0029】
そして、IDT電極3と高音速層5を覆うように、例えば、SiCの拡散防止膜6、およびSiO2の第2の誘電体膜7が形成される。これにより、図4Aおよび図4Bに示した構成の弾性波デバイスが得られる。
【0030】
上記のように、弾性波デバイスの第1の誘電体膜4に透明のSiO2を用いた場合、図7(a)に示すように圧電性基板2上に第1の誘電体膜4を形成した状態では、フォトリソグラフィによって微細なレジストパターンを形成することができない。そのため、図2に示すように、高音速層5を形成しない構成の弾性波デバイスを作成する場合には、第1の誘電体膜4の上にSiや金属などの遮光膜を形成してから、その上にレジストパターンを形成することが必要になる。
【0031】
図8は、図2に示す弾性波デバイスの作製方法例を示す図である。図8(a)に示すように、圧電性基板102上に第1の誘電体層104が形成されると、その誘電体膜3の上面全面に、Si等の遮光膜112が形成される(図8(b))。遮光膜112の上にレジストパターン111が形成され(図8(c))、遮光膜112エッチング(図8(d))および第1の誘電体層104エッチング(図8(e))がなされる。IDT電極103の電極膜が、第1の誘電体層104がエッチング除去された領域とレジストパターン111上とに成膜される(8(f))。そして、リフトオフにより、レジストパターン111とその上に載っていた電極膜が除去される(図8(g))。ここで、遮光膜112を除去する工程(図8(h))が必要となる。遮光膜112を除去した後に、第2の誘電体層107が形成される(図8(i))。
【0032】
このように、図8に示す例では、レジストパターン形成するために設けられた遮光膜112は実デバイスでは不要となるため、第2の誘電体層107を形成する前に除去する必要がある。これに対して、本実施形態の弾性波デバイスでは、図7に示すように、第1の誘電体膜4の上に形成される高音速層5として例えば、SiCのような遮光性の材料を用いることにより、遮光膜を特に形成しなくても、リソグラフィで微細なレジストパターンの形成が可能となる。また、高音速層5は、弾性波デバイスでそのまま利用されるため、その後の除去工程も不要である。そのため、工程の簡略化も可能となり、弾性波デバイスの低コスト化が可能となる。
【0033】
[通信機器]
上記の弾性波デバイスを含むフィルタ、モジュールまたは通信機器も本発明の実施形態の一つである。
【0034】
図9は、通信機器の構成例を示す図である。図9に示す通信機器50においては、モジュール基板51上に、通信モジュール60、RFIC53およびベースバンドIC54が設けられている。通信モジュール60には、例えば、上記実施形態で示した弾性波デバイスを用いることができる。
【0035】
通信モジュール60の送信端子TxはRFIC53に接続され、受信端子RxもRFIC53に接続されている。RFIC53はベースバンドIC54に接続されている。RFIC53は、半導体チップおよびその他の部品により形成することができる。RFIC53には、受信端子から入力された受信信号を処理するための受信回路および、送信信号を処理するための送信回路を含む回路が集積されている。
【0036】
また、ベースバンドIC54も半導体チップおよびその他の部品により実現することができる。ベースバンドIC54には、RFIC53に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC53に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0037】
図示しないが、ベースバンドIC54には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC54で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器50のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器50が備える入力機器もベースバンドIC54に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC54が送信信号に変換することができる構成になっている。なお、通信機器50の構成は、図9に示す例に限られない。
【符号の説明】
【0038】
1 弾性波デバイス
2 基板
3 IDT電極
4 第1の誘電体膜
5 高音速層
6 拡散防止膜(付加膜)
7 第2の誘電体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電性基板と、
前記圧電性基板上に並んで配置される複数の電極指を含むIDT電極と、
前記複数の電極指間に形成される第1の誘電体膜と、
前記IDT電極と前記第1の誘電体膜を覆う第2の誘電体膜と、
前記複数の電極指間であって前記第1の誘電体膜上に形成される、前記第1の誘電体より高音速の媒質である高音速層とを備えた、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記第1の誘電体膜の厚みと前記高音速層の厚みの合計が、前記IDT電極の厚みと同じである、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記IDT電極および前記高音速層と、前記第2の誘電体との間に、前記第2の誘電体より高音速の媒質である付加層をさらに備える、請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記高音速層の材質は、SiC、AlN、アルミナあるいはダイヤモンドを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波素子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波デバイスを備えた、通信機器。
【請求項6】
圧電性基板上に、第1の誘電体膜を形成する工程と、
前記第1の誘電体膜を覆うように、前記第1の誘電体膜より高音速の媒質である高音速層を形成する工程と、
前記高音速層の上に、IDT電極を形成するためのレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターン形成後に、前記高音速層および前記第1の誘電体膜をエッチングする工程と、
前記エッチング後にIDT電極材料を成膜し、前記レジストパターンを除去する工程と、
前記IDT電極および前記高音速層を覆うように、第2の誘電体膜を形成する工程とを含む、弾性波デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記第1の誘電体膜は、透明な材質で形成され、
前記高音速層は、遮光性を有する材質で形成される、請求項6に記載の弾性波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−182117(P2011−182117A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43035(P2010−43035)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】