説明

弾性波デバイス

【課題】 弾性波フィルタを含むチップが積層体に搭載され、樹脂により封止された弾性波デバイスにおいて、放熱性の改善を図ること。
【解決手段】 複数の層40a〜40cの主面が提供する配線形成のための複数の面101〜104を有する積層体と、積層体の表面である101面に実装されたチップ30と、チップ30を封止する樹脂部60と、102面に形成され、弾性波フィルタを構成する共振器の少なくとも1つと電気的に接続されたインダクタの配線パターンL2と、102面に配線パターンL2の少なくとも一部(領域70)に沿って形成されたグランドパターンGNDと、101面及び102面と異なる104面に形成され、配線パターンL2及びグランドパターンGNDと電気的に接続された外部端子42と、を備えることを特徴とする弾性波デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話をはじめとする無線機器等のフィルタとして、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)やバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)等の弾性波を利用する弾性波フィルタを備えた弾性波デバイスが知られている。弾性波フィルタを含むチップは、例えば複数の層を有する積層体に、バンプ等を用いてフリップチップにより実装され、周囲を樹脂により封止されることでパッケージングされる。弾性波フィルタの各端子は、積層体内部に形成された配線パターンにより、チップが実装される面と反対側の面に設けられた外部端子と電気的に接続されている。弾性波デバイスにおいて発生した熱は、例えばチップが搭載される積層体に形成された放熱用の金属パターン等を介して放出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−196407
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
弾性波フィルタを含むチップが積層体に搭載され、樹脂により封止された弾性波デバイスでは、密着性向上の観点から、積層体と樹脂との接触部分に金属パターンを形成しないことが望ましい。このため、積層体表面において放熱用の金属パターンを形成可能なスペースは限定されている。一方で、積層体に形成されるインダクタ等の配線パターンは、細く長いほど熱抵抗が大きくなり、放熱性が悪化してしまう。このため、チップからの放熱を効果的に行うことができず、弾性波デバイスが高温となり、耐電力性が悪化してしまう場合がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、弾性波フィルタを含むチップが積層体に搭載され、樹脂により封止された弾性波デバイスにおいて、放熱性の改善を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数の層が積層されてなり、前記複数の層のそれぞれの主面が提供する配線形成のための複数の面を有する積層体と、弾性波フィルタを含み、前記積層体の表面である第1面に実装されたチップと、前記第1面に形成され、前記チップを封止する樹脂部と、前記第1面と異なる第2面に形成され、前記弾性波フィルタを構成する共振器の少なくとも1つと電気的に接続された配線パターンと、前記第2面に前記配線パターンの少なくとも一部に沿って、前記配線パターンと離間して形成されたグランドパターンと、前記第1面及び前記第2面と異なる第3面に形成され、前記配線パターン及び前記グランドパターンと電気的に接続された外部端子と、を備え、前記第2面に形成された前記配線パターンのうち、前記グランドパターンに最も近づいた領域は、前記グランドパターンと実質的に平行に形成され、前記配線パターン及び前記グランドパターンは、前記複数の面のうち前記第2面よりも前記第3面側に位置する面上において、互いに電気的に接続されていることを特徴とする弾性波デバイスである。
【0007】
上記構成において、前記配線パターンが前記グランドパターンに最も近づいた領域における前記配線パターン及び前記グランドパターンの間隔は、前記第2面における配線パターン同士の最小間隔に等しい構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記弾性波フィルタは、複数の直列共振器及び複数の並列共振器がラダー状に接続されたラダーフィルタであり、前記配線パターンは、前記複数の並列共振器の少なくとも1つと電気的に接続されている構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記弾性波フィルタは、送信フィルタ及び受信フィルタが共通のアンテナ端子に接続された分波器における前記送信フィルタである構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記グランドパターンのうち前記配線パターンに沿って形成された領域は、前記第2面における前記配線パターンの外側に位置する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記グランドパターンのうち前記配線パターンに沿って形成された領域は、前記第2面における前記配線パターンの外側及び内側に位置する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記配線パターンのうち前記グランドパターンに沿って形成された領域は、前記第1面と前記第2面との間に形成されたビアと接続されている構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記弾性波フィルタを構成する前記共振器は、弾性表面波共振器である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記弾性波フィルタを構成する前記共振器は、圧電薄膜共振器である構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記チップは、前記第1面にフリップチップにより搭載されている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弾性波フィルタを含むチップが積層体に搭載され、樹脂により封止された弾性波デバイスにおいて、放熱性の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスの構成を示す回路図である。
【図3】図3は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスの構成を示す断面模式図である。
【図4】図4は、比較例に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その1)である。
【図5】図5は、比較例に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その2)である。
【図6】図6は、実施例1に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その1)である。
【図7】図7は、実施例1に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その2)である。
【図8】図8は、実施例2に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その1)である。
【図9】図9は、実施例2に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図(その1)である。
【図10】図10は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスのCMI特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
最初に、比較例に係る弾性波デバイスについて説明する。
【0019】
図1は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスの構成を示すブロック図である。当該弾性波デバイスは、共通のアンテナ端子Antに接続された分波器(デュプレクサ)であり、アンテナ端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ10が、アンテナ端子Antと受信端子(Rx1、Rx2)との間に受信フィルタ20がそれぞれ接続されている。上記の例では、送信側の端子は1入力、受信側の端子は2出力となっているが、デュプレクサの具体的形態はこれに限定されるものではない。
【0020】
図2は、図1のデュプレクサにおける送信フィルタ部分の構成を示す回路図である。受信フィルタ部分の構成は省略されている。送信フィルタ10は、送信端子Txとアンテナ端子Antとの間に直列に接続された直列共振器S1〜S4と、それぞれの直列共振器の間に接続された並列共振器P1〜P3とを備える。並列共振器P1〜P3のうち、並列共振器P1の一端(直列共振器と接続された端子の反対側の端子)は、インダクタL1を介して接地されている。並列共振器P2及びP3の一端は共通化され、L1とは別のインダクタL2を介して接地されている。
【0021】
図3は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスの構成を示す断面模式図である。図示するように、図1の送信フィルタ10及び受信フィルタ20を含むチップ30が、複数の層(40a〜40c)を有する積層体40の表面に、バンプ50を介してフリップチップにより実装されている。チップ30の周囲は、樹脂部60により封止されており、チップ30は積層体40及び樹脂部60によりパッケージングされている。チップ30には例えばタンタル酸リチウム(LT)基板を、積層体40には例えばセラミック基板等の絶縁性基板を用いることができる。また、バンプ50には例えばAuまたは半田等の金属バンプを、樹脂部60には例えばエポキシ系樹脂をそれぞれ用いることができる。
【0022】
積層体40の裏面(チップ30が実装された側と反対側の面)には、外部端子42が形成されている。また、積層体40の内部には、各層の表面に形成された配線パターン44と、上下の配線パターン同士を接続するビア46(本明細書において、ビアとは、ビアホールの内側に上下接続用の金属電極が形成された構造を指すものとする)が形成されている。また、積層体40の表面(チップ30の実装面)の配線パターン44には、バンプ50が接続されている。これにより、チップ30内に形成された送信フィルタ10及び受信フィルタ20の各端子は、パッケージの外部端子42と電気的に接続されている。外部端子42、配線パターン44、及びビア46には、例えばCuまたはAuを材料として用いることができる。
【0023】
ここで、積層体40は、複数の層40a〜40cのそれぞれの主面が提供する、配線形成のための複数の面を有する。これらの複数の面のうち、チップ30が実装される層40aのダイアタッチ面を101面と称し、以下同様に、層40a及び層40bの間を102面、層40b及び層40cの間を103面、層40cの外部に露出した主面を104面と称するものとする。104面は積層体40の裏面であり、外部端子42が形成された面である。なお、本実施例における積層体40は、上記のように3つの層と4つの面を有する構成となっているが、積層体の層数はこれに限定されるものではない。
【0024】
図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(c)は、比較例に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図である。図4(a)、図4(c)、図5(a)、及び図5(c)は、それぞれ101面、102面、103面、104面に対応する平面図であり、
図4(b)、図4(d)、及び図5(b)は、上記の面間に形成されたビア46の位置を示す図である。上記の図4(a)〜(d)及び図5(a)〜(c)はいずれも、積層体40をチップ30の側から透過して見た図である(以降の図においても同様)。
【0025】
図4及び図5中の符号は、それぞれ図1及び図2で示したフィルタの回路図と対応しており、Txは送信端子Txへ、Rx1及びRx2は受信端子(Rx1、Rx2)へ、Antはアンテナ端子Antへと繋がる配線パターンである。また、L1はインダクタL1、L2はインダクタL2の配線パターンであり、GNDは接地電位に接続されるグランドパターンである。また、図4(a)において、塗りつぶしの円(符号52)で囲まれた領域は、バンプ50の形成位置を示し、白抜きの円(符号54)で囲まれた領域は、下の102面へと接続されるビアの形成位置を示す。以降の図においても、塗りつぶしの円は上方の面へと繋がるビアまたはバンプの形成位置を、白抜きの円は下方の面へと繋がるビアの形成位置をそれぞれ示すものとする。
【0026】
図4(a)に示すように、ダイアタッチ面である101面の送信フィルタ10側には、インダクタL1及びL2の配線パターンが形成されている。一般的に、インダクタのインダクタンス値は、配線パターンが細く長いほど大きくなる。当該弾性波デバイスでは、インダクタL2のインダクタンスはL1に比べて大きく、L2の配線パターンは101面上を引き回される形で、L1に比べて長く形成されている。
【0027】
図4(c)に示すように、102面上にはビア46のそれぞれに対応する位置に、円状の配線パターンが形成されている。図5(a)に示すように、103面上には、送信フィルタ10側から受信フィルタ20側に至る広範囲にグランドパターンGNDが形成されており、インダクタL1及びL2の配線パターンは、103面上において当該グランドパターンGNDと接続されている。図5(c)に示すように、積層体40の裏面の104面には、送信フィルタ10及び受信フィルタ20の各端子(Ant、Tx、Rx1、Rx2)並びにグランド端子GNDに対応する電極パッド(外部端子42)が形成されている。
【0028】
ここで、配線パターンの熱抵抗Rは、配線パターンの長さをL、断面積をS、熱伝導率をσとすると、R=L/(σ・S)[℃/W]で表される。このため、配線パターンの長さLが大きくなるほど、熱伝導が悪化して配線パターンが高温となり、耐電力性が低下してしまう結果となる。
【0029】
比較例に係る弾性波デバイスでは、インダクタL1及びL2の配線パターンが、ダイアタッチ面である101面に形成されている。101面では、積層体40と樹脂部60との密着性向上の観点から、樹脂部60との接触部分に配線パターンを形成しないことが望ましい。このため、101面上において配線パターンを形成可能なスペースは限定され、放熱用の配線パターンを形成する余裕がないため、インダクタンスの大きいインダクタL2の配線パターンが高温になりやすい。
【0030】
比較例に係る弾性波デバイスにおいて、熱解析シミュレーションを行った結果について以下に説明する。シミュレーションの前提条件として、チップ30の各バンプを1.0W/mの発熱体とし、積層体40の裏面(104面)の各端子の温度及び周囲の気温を25℃で固定した。バンプ50にはAuバンプを用い、直径(φ)は90μmとした。積層体40にはBTレジンを用い、厚さは各層40μmとした。配線パターン44にはCuを用い、厚さは16μmとした。積層体40中の配線パターン44のレイアウトには、図4及び図5に示したものを用い、インダクタL2部分の長さは1.4mmとした。その結果、長く引き回された101面のインダクタL2の端部(符号72で示す領域)が、配線パターンの中で最も高温(+110℃)となった。
【0031】
以上のように、比較例に係る弾性波デバイスでは、配線パターンが長くなるインダクタ部分が高温となり、耐電力性が悪化してしまうという課題がある。このような現象は、弾性波フィルタを含むチップがフリップチップにより積層体に搭載され、樹脂により封止されることで、放熱用の配線パターンを形成する余裕が少ない弾性波デバイスにおいて特に顕著である。以下に説明する実施例では、上記のような弾性波デバイスにおける放熱性の改善を図るための構成について説明する。
【実施例1】
【0032】
実施例1に係る弾性波デバイスの回路構成は図1及び図2と同様であり、実装の基本形態についても図3と同様であるため、それぞれ詳細な説明を省略する。実施例1に係る弾性波デバイスは、積層体40における配線パターン44のレイアウトが比較例と異なる。以下、この点について詳細に説明する。
【0033】
図6(a)〜(d)及び図7(a)〜(c)は、実施例1に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図である。比較例と同様に、図6(a)は101面、図6(c)は102面、図7(a)は103面、図7(c)は104面のそれぞれに対応する平面図であり、その他の図は層間におけるビア46の形成位置を示す平面図である。各配線パターンに付された符号の意味は、比較例と同様である。
【0034】
図6(a)に示すように、ダイアタッチ面である101面の送信フィルタ10側には、送信端子Tx、アンテナ端子Ant、並びにインダクタL1及びL2の配線パターンが形成されている。インダクタL2は、比較例(図4(a))のように長く引き回されてはおらず、送信フィルタ10側における配線パターンの形成された領域は、比較例に比べて小さくなっている。
【0035】
図6(c)に示すように、101面の直下にある102面では、インダクタL2の配線パターンが長く引き回されている。これにより、比較例と同様に、インダクタL2のインダクタンス値を大きくすることができる。一方で、インダクタL1のインダクタンス値は、比較例と同様にL2に比べて小さく、L1の配線パターンも短く形成されるに留まっている。
【0036】
また、102面の外周部には、上記の配線パターン(Tx、Rx1、Rx2、Ant、L1、L2)を囲むように、グランドパターンGNDが形成されている。グランドパターンGNDの一部は、符号70で示す領域において、インダクタL2の配線パターンに沿って形成されている。そして、インダクタL2の配線パターンのうち、グランドパターンGNDに最も近づいた領域70は、当該グランドパターンGNDと実質的に平行に形成されている。ここで、「実質的に平行」とは、インダクタL2からの熱を効率的にグランドパターンGNDに逃がすことが可能な程度の傾きを指し、例えば完全に平行な状態から±30°程度の傾きを許容することができる(以下の説明においても同じ)。さらに、当該領域70におけるグランドパターンGNDとインダクタL2の配線パターンとの間隔は、102面における配線パターンの最小間隔(最小ルール)となっている。これにより、グランドパターンGNDは、インダクタL2で発生した熱を逃がすための配線パターンとして機能する。
【0037】
図7(a)に示すように、103面上には送信フィルタ10側から受信フィルタ20側に至る広範囲にグランドパターンGNDが形成されており、インダクタL1及びL2の配線パターンは、103面上において当該グランドパターンGNDと接続されている。また、102面上のグランドパターンGNDも、ビア46を介して103面上のグランドパターンGNDと接続されている。また、図7(c)に示すように、積層体40の裏面の104面には、送信フィルタ10及び受信フィルタ20の各端子(Ant、Tx、Rx1、Rx2)並びにグランド端子GNDに対応する電極パッドが形成されている。
【0038】
実施例1に係る弾性波デバイスにおいて、熱解析シミュレーションを行った結果について以下に説明する。積層体40中の配線パターン44のレイアウトは、図6及び図7に示したものを用いた。その他のシミュレーション条件は、比較例と同様とした。その結果、インダクタL2の端部(図6(c)の符号72で示す領域)が、配線パターンの中で最も高温(+95℃)となった。当該最高温度は、比較例と比べて小さい値となっている。
【0039】
実施例1に係る弾性波デバイスによれば、インダクタンス値の大きいインダクタL2を形成する配線パターンが、ダイアタッチ面である101面(第1面)とは異なる102面(第2面)に形成されている。そして、インダクタL2の一部に沿ってグランドパターンGNDが形成され、インダクタL2のうちグランドパターンGNDに最も近づいた領域70は、当該グランドパターンGNDと実質的に平行に形成されている。以上の構成により、インダクタL2で発生した熱を、グランドパターンGNDを介して外に逃すことができるため、ダイアタッチ面(第1面)に放熱用の配線パターンを形成する余裕が少ない場合であっても、弾性波デバイスの放熱性を改善することができる。また、領域70におけるインダクタL2及びグランドパターンGNDの間隔を、102面における配線パターン同士の最小間隔とすることで、弾性波デバイスの放熱性を更に改善することができる。
【0040】
実施例1では、インダクタL2がグランドパターンGNDに最も接近する領域70における「実質的に平行」の意義を、±30°程度の傾きを許容するものとして説明した。しかし、効率的に熱を逃がすという観点からは、インダクタL2とグランドパターンGNDとが接近する領域を増やすために、領域70における上記傾きをなるべく小さくすることが好ましい。従って、「実質的に平行」の文言が意味する傾きは、例えば±20°以内、±10°以内、±5°以内とすることができ、傾きの値が小さい方がより好ましい。また、領域70におけるインダクタL2及びグランドパターンGNDは、完全に平行(傾きが0°)であることが更に好ましい。
【0041】
また、実施例1では、インダクタL2が形成された102面とは異なる面である104面(第3面)に、外部端子42が形成されている。そして、上記のインダクタL2及びグランドパターンGNDは、インダクタL2が形成された102面ではなく、101面、102面、及び104面とは異なる103面(第4面)において、互いに接続されている。このように、実施例1では、ダイアタッチ面(101面)、インダクタL2及び放熱用のグランドパターンGNDが形成される面(102面)、並びにインダクタL2とグランドパターンGNDとが接続される面(103面)がそれぞれ異なっている。これにより、大きいインダクタンスを有する配線パターンの形成と、当該配線パターンからの放熱性の改善とを両立させることができる。
【実施例2】
【0042】
実施例2は、実施例1とは異なるレイアウトの配線パターンを用いた例である。実施例2に係る弾性波デバイスの回路構成は図1及び図2と同様であり、実装の基本形態についても図3と同様であるため、それぞれ詳細な説明を省略する。
【0043】
図8(a)〜(d)及び図9(a)〜(c)は、実施例2に係る弾性波デバイスの構成を示す平面図である。実施例1と同様に、図8(a)は101面、図8(c)は102面、図8(a)は103面、図8(c)は104面のそれぞれに対応する平面図であり、その他の図は層間のビア46の形成位置を示す平面図である。各配線パターンに付された符号の意味は、実施例1と同様である。
【0044】
図8(c)に示すように、実施例2では、101面の直下にある102面において、周辺部だけではなく中央部を含む広範囲にグランドパターンGNDが形成されている。これにより、インダクタL2は符号70で示す領域に加え、符号72及び74で示す領域においても、グランドパターンGNDに沿って形成されている。そして、インダクタL2の配線パターンのうち、グランドパターンGNDに最も近づいた領域(70、72、74)は、当該グランドパターンGNDと実質的に平行に形成されている。なお、領域74では、インダクタL2の配線パターンの端部の形状(円)に沿って、グランドパターンGNDの一部が円弧状に凹んで形成されることで、インダクタL2及びグランドパターンGNDが互いに平行となっている。さらに、それぞれの領域(70、72、74)におけるグランドパターンGNDとインダクタL2の配線パターンとの間隔は、102面における配線パターンの最小間隔となっている。
【0045】
102面に形成されたインダクタL2及びグランドパターンGNDは、直下の103面において互いに接続されている。102面以外の面における配線パターンのレイアウトは、実施例1と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0046】
実施例2に係る弾性波デバイスにおいて、熱解析シミュレーションを行った結果について以下に説明する。積層体40中の配線パターン44のレイアウトは、図8及び図9に示したものを用いた。その他のシミュレーション条件は、比較例及び実施例1と同様とした。その結果、長く引き回された101面のインダクタL2の端部(図8(c)の符号72で示す領域)が、配線パターンの中で最も高温(+83℃)となった。当該最高温度は、比較例及び実施例1と比べて小さい値となっている。
【0047】
実施例2に係る弾性波デバイスによれば、インダクタL2が形成された102面(第2面)において、放熱用のグランドパターンGNDが外周部だけでなく中央部にも形成されている。その結果、グランドパターンGNDのうちインダクタL2に沿って形成された領域は、インダクタL2の配線パターンの外側と内側の両方に位置している。これにより、放熱用のグランドパターンGNDがインダクタL2に近接する領域が増加し、実施例1に比べて放熱性が更に改善されている。
【0048】
また、実施例2では、インダクタL2のうちグランドパターンGNDに沿って形成された領域74に、102面と101面(ダイアタッチ面)とを接続するビアが形成されている。当該領域74は、熱の供給源であるバンプ50に最も近く、発熱量が大きい箇所である。従って、放熱用のグランドパターンGNDを当該領域74に沿って形成することで、放熱性を更に改善することができる。
【0049】
また、実施例1及び2に係る弾性波デバイスによれば、送信端子及び受信端子間(Tx−Rx1及びTx−Rx2)における信号の同相成分のアイソレーション(CMI:Common Mode Isolation)を、比較例に比べて改善することができる。
【0050】
図10は、比較例及び実施例1〜2に係る弾性波デバイスのCMI特性を示すグラフである。グラフの横軸は周波数[MHz]を、縦軸はCMI[dB]をそれぞれ示す。実施例1及び実施例2に係る弾性波デバイスのCMI特性は同等であり、グラフ中において実線で示されている。比較例に係る弾性波デバイスのCMI特性は点線で示されている。図示するように、実施例1及び2では、比較例に比べてCMI特性が約1dB改善されている。これは、積層体40中のグランドパターンGNDの量が比較例に比べて増加したことで、シールド効果により端子間の信号漏れが抑制されたためと考えられる。
【0051】
実施例1〜2では、弾性波フィルタとして送信フィルタを例に説明したが、弾性波フィルタは送信フィルタ以外(例えば、受信フィルタ)のフィルタであってもよい。ただし、送信フィルタでは、比較的大きい電力が印加されることにより配線パターンの発熱が生じやすいため、実施例1〜2で説明した構成を採用するのに好適である。また、実施例1〜2では、弾性波フィルタとして図2に示すラダーフィルタを例に説明したが、ラダーフィルタの具体的構成はこれに限定されるものではない。例えば、並列共振器P1〜P3のそれぞれを別個のインダクタを介して接地する構成としてもよいし、並列共振器P1〜P3の一端を全て共通化した上でインダクタを介して接地する構成としてもよい。また、弾性波フィルタは共振器を含むフィルタであれば、これ以外の形態であってもよい。共振器としては、例えば弾性表面波を利用したSAW共振器や、バルク波を利用したFBAR共振器を用いることができる。
【0052】
また、実施例1〜2では、発熱量の大きい配線パターンとしてインダクタL2を例に説明したが、当該配線パターンはフィルタを構成する共振器の少なくとも1つと電気的に接続された配線パターンであれば、インダクタ以外であってもよい。また、実施例1〜2では、インダクタL2とグランドパターンGNDとが、102面(インダクタL2が形成された第2面)と104面(外部端子42が形成された第3面)の間の103面(上記第1面〜第3面とは異なる第4面)で接続されている。しかし、インダクタL2とグランドパターンGNDとは、少なくとも上記第2面より第3面側の面において互いに電気的に接続されていればよく、例えば外部端子42と同じ104面(第3面)上で互いに接続される構成であってもよい。
【0053】
また、実施例1〜2では、チップ30が積層体40にフリップチップで実装された例について説明したが、チップ30はこれ以外の方法で積層体40に実装されていてもよい。ただし、フリップチップによる実装は、チップ30からの熱の放出経路がバンプ50を介した経路に限定されているため、実施例1〜2で説明した構成を採用するのに好適である。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 送信フィルタ
20 受信フィルタ
30 チップ
40 積層体
42 外部端子
44 配線パターン
46 ビア
50 バンプ
60 樹脂部
Ant アンテナ端子
Tx 送信端子
Rx1,Rx2 受信端子
L1、L2 インダクタ
GND グランドパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の層が積層されてなり、前記複数の層のそれぞれの主面が提供する配線形成のための複数の面を有する積層体と、
弾性波フィルタを含み、前記積層体の表面である第1面に実装されたチップと、
前記第1面に形成され、前記チップを封止する樹脂部と、
前記第1面と異なる第2面に形成され、前記弾性波フィルタを構成する共振器の少なくとも1つと電気的に接続された配線パターンと、
前記第2面に前記配線パターンの少なくとも一部に沿って、前記配線パターンと離間して形成されたグランドパターンと、
前記第1面及び前記第2面と異なる第3面に形成され、前記配線パターン及び前記グランドパターンと電気的に接続された外部端子と、を備え、
前記第2面に形成された前記配線パターンのうち、前記グランドパターンに最も近づいた領域は、前記グランドパターンと実質的に平行に形成され、
前記配線パターン及び前記グランドパターンは、前記複数の面のうち前記第2面よりも前記第3面側に位置する面上において、互いに電気的に接続されていることを特徴とする弾性波デバイス。
【請求項2】
前記配線パターンが前記グランドパターンに最も近づいた領域における前記配線パターン及び前記グランドパターンの間隔は、前記第2面における配線パターン同士の最小間隔に等しいことを特徴とする請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記弾性波フィルタは、複数の直列共振器及び複数の並列共振器がラダー状に接続されたラダーフィルタであり、前記配線パターンは、前記複数の並列共振器の少なくとも1つと電気的に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
前記弾性波フィルタは、送信フィルタ及び受信フィルタが共通のアンテナ端子に接続された分波器における前記送信フィルタであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項5】
前記グランドパターンのうち前記配線パターンに沿って形成された領域は、前記第2面における前記配線パターンの外側に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項6】
前記グランドパターンのうち前記配線パターンに沿って形成された領域は、前記第2面における前記配線パターンの外側及び内側に位置することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項7】
前記配線パターンのうち前記グランドパターンに沿って形成された領域は、前記第1面と前記第2面との間に形成されたビアと接続されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項8】
前記弾性波フィルタを構成する前記共振器は、弾性表面波共振器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項9】
前記弾性波フィルタを構成する前記共振器は、圧電薄膜共振器であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。
【請求項10】
前記チップは、前記第1面にフリップチップにより搭載されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の弾性波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−98804(P2013−98804A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240670(P2011−240670)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】