説明

弾性波フィルタ及び分波器

【課題】部品点数の低減及び小型化を図り得るだけでなく、設計の自由度を高め得る弾性波フィルタを提供する。
【解決手段】圧電基板10上に弾性表面波共振子からなる直列腕共振子4と、弾性境界波共振子からなる並列腕共振子7とを有し、直列腕共振子4及び並列腕共振子7がフィルタ回路を構成するように接続されている弾性波フィルタ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の弾性波素子を用いて構成された弾性波フィルタに関し、より詳細には、同一圧電基板上に異なる種類の弾性波素子が構成されてフィルタ回路が実現されている弾性波フィルタ及び該弾性波フィルタを備えた分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機では、受信用帯域通過フィルタと送信用帯域通過フィルタとを備えた分波器が用いられている。このような複数の帯域通過フィルタを備えた分波器の一例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1では、2つのラダー型フィルタを有する分波器が開示されている。特許文献1の段落〔0117〕では、分波器を構成している各ラダー型フィルタとして、ラダー型フィルタを構成する共振子が圧電薄膜共振子、弾性表面波共振子または弾性境界波共振子のいずれかである弾性波フィルタを用い得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−74698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成では、1つの基板上において、複数の共振子が構成され、それによってラダー型フィルタが形成されていたが、この場合、1つの基板上に形成されている共振子は、同種の共振子であった。すなわち、1つのシリコン基板上に複数の圧電薄膜共振子を構成したり、あるいは1つの圧電基板上に複数の弾性表面波共振子を構成したりすることにより、ラダー型弾性波フィルタが構成されていた。そのため、設計の自由度がさほど高くないという問題があった。
【0005】
1つの圧電基板上に複数の弾性表面波共振子を構成した場合、圧電基板の材料やカット角により電気機械結合係数がほぼ決定されることになる。そのため、設計の自由度が高くなかった。同様に、1つのシリコン基板に複数の圧電薄膜共振子を構成した場合においても、圧電薄膜の材料や膜質により電気機械結合係数がほぼ決定されるため、やはり設計の自由度は高くなかった。
【0006】
弾性波フィルタが用いられる携帯通信機では、例えば、UMTS(Universal Mobile Telecommunication System)として、移動体通信システムの標準規格が複数決められている。これらの様々な標準規格に対応するには、設計の自由度が高い弾性波フィルタが強く求められている。
【0007】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、1つの圧電基板を用いて構成されており、部品点数の低減及び小型化を図り得るだけでなく、設計の自由度を十分に高くすることが可能とされている弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある広い局面によれば、圧電基板と、前記圧電基板上に構成されている弾性表面波素子と、前記弾性表面波素子と同一圧電基板上に構成されている弾性境界波素子とを備え、フィルタ回路を構成するように前記弾性表面波素子と前記弾性境界波素子とが電気的に接続されている、弾性波フィルタが提供される。
【0009】
本発明の他の広い局面によれば、直列腕と並列腕とを有するラダー型回路構成の弾性波フィルタであって、圧電基板と、前記圧電基板上に構成されている弾性表面波共振子と、前記弾性表面波共振子と同一圧電基板上に構成されている弾性境界波共振子とを備え、前記並列腕及び直列腕にそれぞれ配置されている並列腕共振子及び直列腕共振子のうち少なくとも1つの共振子が、前記弾性表面波共振子からなり、残りの共振子が前記弾性境界波共振子からなる、弾性波フィルタが提供される。
【0010】
本発明に係る弾性波フィルタのある特定の局面では、前記直列腕共振子が前記弾性表面波共振子であり、かつ前記並列腕共振子が前記弾性境界波共振子である。並列腕共振子が弾性境界波共振子からなるため、圧電基板における伝搬方位を変更することにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を高めて通過帯域を広げることができる。
【0011】
本発明に係る弾性波フィルタの他の特定の局面では、前記直列腕共振子が前記弾性境界波共振子であり、かつ前記並列腕共振子が前記弾性表面波共振子である。この場合には、直列腕共振子である弾性境界波共振子の伝搬方位を変更することにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を大きくすることができる。そのため、直列腕共振子における周波数差Δfを大きくすることができ、それによって、フィルタの通過帯域の広帯域化、特に通過帯域の高域側において帯域幅を広げることが可能となる。
【0012】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに他の特定の局面では、直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、直列腕共振子及び並列腕共振子が前記弾性境界波共振子を用いて構成されているラダー型弾性境界波フィルタ部とを有し、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に前記ラダー型弾性境界波フィルタ部が電気的に接続されている。このように、1つの圧電基板上において、複数の弾性表面波共振子からなるラダー型弾性表面波フィルタ部と、複数の弾性境界波共振子からなるラダー型弾性境界波フィルタ部とを構成し、両者を電気的に接続することにより弾性波フィルタが構成されてもよい。この場合においては、圧電基板の伝搬方位を変更することによりラダー型弾性境界波フィルタ部において通過帯域の広帯域化を図ることができる。
【0013】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに別の特定の局面では、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の直列腕共振子である前記弾性境界波共振子の共振周波数と、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の並列腕共振子である前記弾性境界波共振子の反共振周波数とが、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域内に、それぞれ位置されている。
【0014】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに別の特定の局面では、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の直列腕共振子である前記弾性境界波共振子の反共振周波数が主に前記ラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域よりも高域側の帯域外に位置されており、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の並列腕共振子である前記弾性境界波共振子の共振周波数が主に前記ラダー型弾性境界波フィルタ部により形成される通過帯域よりも低域側の帯域外に位置されている。この場合には、圧電基板の伝搬方位を変更することにより、上記ラダー型弾性境界波フィルタ部の帯域幅を広げることができ、それによって通過帯域をより一層広くすることができる。
【0015】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに他の特定の局面では、直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に直列に接続されている弾性境界波共振子とを有する。
【0016】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに別の特定の局面では、直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に並列に接続されている弾性境界波共振子とを有する。
【0017】
本発明に係る弾性波フィルタのさらに他の広い局面では、圧電基板と、前記圧電基板上に構成されている縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と同一圧電基板上に構成されており、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と電気的に接続されている、少なくとも1つの弾性境界波共振子とを備える弾性波フィルタが提供される。このように、本発明に係る弾性波フィルタでは、ラダー型フィルタだけでなく、縦結合共振子型の弾性表面波フィルタ部をさらに備えていてもよく、それによって、帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0018】
本発明に係る弾性波フィルタの他の広い局面では、圧電基板と、前記圧電基板上に構成されている縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と、前記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と同一圧電基板上に構成されており、前記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と電気的に接続されている、少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える弾性波フィルタが提供される。
【0019】
このように、本発明に係る弾性波フィルタでは、ラダー型フィルタだけでなく、縦結合共振子型の弾性境界波フィルタ部をさらに備えていてもよく、それによって、帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0020】
本発明に係る分波器は、第1の通過帯域を有する帯域フィルタと、第1の通過帯域とは異なる通過帯域を有する第2の帯域フィルタとを有する分波器であって、第1,第2の帯域フィルタの少なくとも一方が、本発明に従って構成された弾性波フィルタからなる。
【0021】
従って、第1,第2の帯域フィルタの少なくとも一方において、上記弾性波フィルタを構成している圧電基板の伝搬方位が変更等により通過帯域幅を容易に広げることができ、分波器の設計の自由度を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る弾性波フィルタでは、同一圧電基板上に、弾性表面波素子及び弾性境界波素子が構成されており、かつ該弾性表面波素子及び弾性境界波素子が電気的に接続されてフィルタ回路が構成されているので、フィルタの設計の自由度を高めることができる。すなわち、弾性表面波素子のみを用いた場合、電気機械結合係数が圧電基板によりほぼ決定されるのに対し、弾性境界波素子を用いた場合、弾性境界波の伝搬方位ψを変更することによっても電気機械結合係数を調整することができる。従って、様々な周波数特性の弾性波フィルタを容易に提供することができる。
【0023】
本発明に係る弾性波フィルタにおいて、上記弾性表面波素子及び弾性境界波素子が、直列腕共振子または並列腕共振子を構成しているラダー型回路構成の弾性波フィルタの場合には、同様に、圧電基板により弾性表面波共振子の電気機械結合係数がほぼ決定されるが、弾性境界波素子において伝搬方位ψを変更することにより、電気機械結合係数を調整することができる。従って、ラダー型回路構成を有する弾性波フィルタの設計の自由度を大幅に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタの回路図である。
【図2】第1の実施形態に係る弾性波フィルタを構成する弾性表面波共振子の電極構造を示す模式的平面図である。
【図3】(a)は第1の実施形態に係る弾性波フィルタの模式的部分切欠平面図であり、(b)は(a)中のA−A線に沿う断面図である。
【図4】本発明で用いられる弾性境界波共振子の他の例を説明するための模式的正面断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る弾性波フィルタの回路図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る弾性波フィルタの回路図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る弾性波フィルタの回路図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る弾性波フィルタの電極構造を説明するための模式的平面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る弾性波フィルタの電極構造を説明するための模式的平面図である。
【図10】本発明の第7の実施形態としての分波器を説明するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0026】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性波フィルタ1の回路図である。弾性波フィルタ1は、入力端子2と出力端子3とを結ぶ直列腕と、直列腕とグラウンド電位とを結ぶ複数の並列腕とを有するラダー型フィルタである。
【0027】
直列腕においては、第1〜第3の直列腕共振子4〜6が互いに直列に接続されて配置されている。本実施形態では、第1〜第3の直列腕共振子4〜6は、いずれも弾性表面波共振子からなる。また、直列腕とグラウンド電位を結ぶ1つの並列腕には、第1の並列腕共振子7が配置されている。もう1つの並列腕には、第2の並列腕共振子8が配置されている。本実施形態では、第1,第2の並列腕共振子7,8は、弾性境界波共振子からなる。
【0028】
すなわち、弾性波フィルタ1は、複数の弾性表面波共振子からなる弾性表面波素子と複数の弾性境界波共振子からなる弾性境界波素子とをラダー型回路を有するように接続した構成を有する。言い換えれば、異なる種類の弾性波素子を用いて弾性波フィルタ1が形成されている。
【0029】
また、本実施形態の弾性波フィルタ1では、同一圧電基板上に、第1〜第3の直列腕共振子4〜6及び第1,第2の並列腕共振子7,8が構成されている。なお、図1及び以下の弾性波フィルタのラダー型回路構成を示す図では、弾性表面波共振子及び弾性境界波共振子の区別を明瞭とするために、弾性表面波共振子についてはブロック中にSの文字を付し、弾性境界波共振子についてはブロック中にBの文字を付すこととする。
【0030】
図2は、第1の直列腕共振子4の電極構造を示す模式的平面図である。弾性表面波共振子である第1の直列腕共振子4では、圧電基板10上において、IDT電極4aと、IDT電極4aの弾性表面波伝搬方向両側に配置された反射器4b,4cが設けられている。すなわち、1ポート型弾性表面波共振子が構成されている。
【0031】
なお、第2,第3の直列腕共振子5,6も同様の電極構造を有する弾性表面波共振子からなる。また、第1,第2の並列腕共振子7,8を構成している弾性境界波共振子も、同様に、IDT電極と、IDT電極の両側に反射器が配置された1ポート型の弾性波共振子の電極構造を有する。
【0032】
もっとも、本発明において、上記弾性表面波共振子や弾性境界波共振子の電極構造は、図2に示す構造のものに限定されるものではない。複数種の弾性波素子を組み合わせてフィルタ回路を構成し得る限り、様々な共振特性を有する電極構造を用いて各弾性波共振子を構成することができる。
【0033】
図3(a)及び(b)は、本実施形態に係る弾性波フィルタ1の模式的平面図及び正面断面図である。弾性波フィルタ1は、圧電基板10を有する。圧電基板10上において、入力端子2、出力端子3及びグラウンド端子9が形成されている。入力端子2、出力端子3及びグラウンド端子9は、図示の位置に形成された電極パッドからなる。
【0034】
そして、同一圧電基板10上において、図1に示した第1〜第3の直列腕共振子4〜6及び第1,第2の並列腕共振子7,8が構成されているが、図3(a)では、その一部が図示されている。すなわち、入力端子2に接続されている第1の直列腕共振子4と、第1の並列腕共振子7とが形成されている部分が代表的な部分として図示されている。
【0035】
図3(b)に示すように、弾性表面波共振子からなる第1の直列腕共振子4では、IDT電極4aが臨む中空部分を構成するように、下方に開いたパッケージ材11が設けられている。パッケージ材11は、IDT電極4a及び前述した反射器4b,4cを取り囲むように、圧電基板10の上面に固定されている。パッケージ材11は、樹脂、セラミックスまたは金属などにより形成することができる。
【0036】
上記パッケージ材11は、接着剤等の適宜の接合材により圧電基板10の上面に接合されている。第2,第3の直列腕共振子5,6も第1の直列腕共振子と同様の構造を有している。パッケージ材11は、第1〜第3の直列腕共振子4〜6の全てのIDT電極、反射器を取り囲むように形成されていてもよい。
【0037】
他方、第1の並列腕共振子7を構成している弾性境界波共振子は、圧電基板10と、圧電基板10上に積層された第1,第2の誘電体層12,13とを有する三媒質構造の弾性境界波素子である。すなわち、圧電基板10と第1の誘電体層12との界面に、IDT電極7a及び反射器7b,7cを構成する電極構造が形成されている。第1の誘電体層12は、SiOなどの適宜の誘電体からなる。第2の誘電体層13は、第1の誘電体層12よりも音速が速い適宜の誘電体、例えばSiNなどからなる。
【0038】
図3(a)では、上記第1の直列腕共振子4及び第1の並列腕共振子7が形成されている部分のみを示したが、第2,第3の直列腕共振子5,6及び第2の並列腕共振子8も、同じ圧電基板10上において同様に構成されている。すなわち、本実施形態の弾性波フィルタ1の特徴は、同一圧電基板10上に複数の弾性表面波共振子からなる第1〜第3の直列腕共振子4〜6と、複数の弾性境界波共振子からなる第1,第2の並列腕共振子7,8とがラダー型回路構成を有するように配線15により電気的に接続されていることにある。すなわち、複数の弾性表面波共振子からなる弾性表面波素子と、複数の弾性境界波共振子からなる弾性境界波素子とが、電気的に接続されてフィルタ回路が構成されている。
【0039】
圧電基板10は、適宜の圧電体からなる。このような圧電体としては、LiTaO、LiNbOまたは水晶などの圧電単結晶、あるいはPZTやLiなどの圧電セラミックスを用いることができる。
【0040】
また、上記IDT電極4a及び反射器4b,4cなどや配線を構成する電極材料としても、適宜の導電性材料を用いることができる。このような導電性材料としては、Al、Ti、Pt、Fe、Ni、Cr、Cu、Ag、W、Ta、Auまたはこれらの合金を挙げることができる。また、電極構造は、複数の金属膜を積層した積層金属膜から構成されていてもよい。
【0041】
上記第1,第2の誘電体層12,13を構成する誘電体としては、特に限定されず、例えば、Si、ガラス、SiO、SiN、SiC、ZnO、Ta、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックス、AlN、AlN、Al、KNなど挙げることができる。
【0042】
なお、図3(b)では、弾性表面波共振子からなる第1の直列腕共振子4においては、IDT電極4aは中空部分に露出しているが、IDT電極4a及び反射器4b,4cを覆うように他の膜が積層されていてもよい。このような他の膜としては、SiOなどからなる温度特性改善膜や、適宜の絶縁性材料からなる薄い保護膜などを挙げることができる。この場合、他の膜は、弾性境界波を利用する場合の第1,第2の誘電体層12,13とは異なり、弾性表面波を用いた共振特性を利用し得るように、第1,第2の誘電体層12,13に比べかなり薄く形成される。
【0043】
なお、本実施形態では、上記のように、弾性境界波共振子として、第1,第2の誘電体層12,13が圧電基板10上に積層されて三媒質構造の弾性境界波素子を用いて構成されていたが、図4に示すような二媒質構造の弾性境界波素子を用いてもよい。図4に示す弾性境界波共振子21では、圧電基板10上に、1つの誘電体層22が積層されており、両者の界面にIDT電極7a及び反射器7b,7cが形成されている。
【0044】
本実施形態の弾性波フィルタ1の特徴は、上記のように同一圧電基板10上に、弾性表面波共振子からなる第1〜第3の直列腕共振子4〜6と、弾性境界波共振子からなる第1,第2の並列腕共振子7,8が構成されていることにある。そのため、1つのチップ部品として弾性波フィルタ1を提供することができる。加えて、並列腕共振子が弾性境界波共振子からなるため、弾性波フィルタの設計の自由度を大幅に高めることができる。これは、以下の理由による。
【0045】
ラダー型フィルタの通過帯域の帯域幅とフィルタ特性の急峻性とは、直列腕共振子及び並列腕共振子におけるそれぞれの共振周波数と反共振周波数との周波数差Δfにより決まる。周波数差Δfが大きくなるほど、通過帯域を広げることができ、Δfが小さくなるほど、フィルタ特性の急峻性を向上させることができる。他方、弾性表面波共振子や弾性境界波共振子などの弾性波共振子では、電気機械結合係数が大きいと、周波数差Δfは大きくなり、電気機械結合係数が小さくなると、Δfが小さくなる。
【0046】
他方、弾性境界波共振子では、例えば、WO2004/070946A1号公報に記載されているように、弾性境界波の伝搬方位(ψ)を変更することにより、電気機械結合係数を変えることができる。ここで、「弾性境界波の伝搬方位」とは、圧電基板の結晶方位に対する、圧電基板表面における弾性境界波の伝搬方向とのなす角度をいう。従って、本実施形態では、第1,第2の並列腕共振子7,8である弾性境界波共振子において弾性境界波の伝搬方位を小さくすることにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を大きくすることができ、周波数差Δfを大きくすることができる。その結果、通過帯域の広帯域化を図ることができる。
【0047】
また、弾性境界波の伝搬方位を大きくすることにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を小さくすることができ、Δfを小さくすることができる。その結果、フィルタ特性の急峻性を向上させることができる。
【0048】
すなわち、従来の弾性波フィルタでは、同一圧電基板上に同じ種類の弾性波素子、例えば複数の弾性表面波共振子を構成したり、あるいは複数の弾性境界波共振子を構成したりしていたため、設計の自由度が低かった。これに対して、本実施形態では、異なる種類の弾性波素子、すなわち弾性表面波素子と弾性境界波素子とを同一圧電基板上に構成しているため、設計の自由度を高めることができる。さらに、弾性境界波素子では、弾性境界波の伝搬方位の変更によっても電気機械結合係数を変更し得るので、弾性境界波共振子の周波数差Δfを変更することができ、かつ設計の自由度をより一層高めることが可能となる。
【0049】
また、一般に、弾性境界波素子は、弾性表面波素子に比べて、TCF(周波数温度特性)の絶対値が小さく、良好である。そのため、第1,第2の並列腕共振子7,8が弾性境界波共振子である本実施形態の弾性波フィルタ1では、通過帯域低域側におけるTCFを改善することができる。
【0050】
〔第2の実施形態〕
図5は、本発明の第2の実施形態に係る弾性波フィルタ31の回路構成を示す図である。弾性波フィルタ31は、入力端子32と、出力端子33との間に延びる直列腕と、直列腕とグラウンド電位に接続されている複数の並列腕とを有する、ラダー型フィルタである。
【0051】
第1の実施形態と同様に、直列腕に第1〜第3の直列腕共振子34〜36が配置されている。また、第1の並列腕に第1の並列腕共振子37が、第2の並列腕に第2の並列腕共振子38が配置されている。
【0052】
第1〜第3の直列腕共振子34〜36及び第1,第2の並列腕共振子37,38は、1つの圧電基板上に構成されている。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、第1〜第3の直列腕共振子34〜36が弾性境界波共振子からなり、第1、第2の並列腕共振子37,38が弾性表面波共振子からなることにある。
【0053】
弾性境界波共振子及び弾性表面波共振子自体の構造は、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態の説明を援用することとする。
【0054】
第2の実施形態では、第1〜第3の直列腕共振子34〜36が弾性境界波共振子からなるため、設計の自由度を高めることができる。すなわち、ラダー型弾性波フィルタ31において、第1〜第3の直列腕共振子34〜36を構成している弾性境界波共振子における弾性境界波の伝搬方位を変えることにより、第1〜第3の直列腕共振子34〜36において、電気機械結合係数を変えることができる。そのため、第1〜第3の直列腕共振子34〜36の周波数差Δfを変えることができる。
【0055】
従って、本実施形態では、第1〜第3の直列腕共振子34〜36を構成している弾性境界波共振子において、弾性境界波の伝搬方位を大きくすることにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を小さくすることができ、周波数差Δfを小さくすることができる。その結果、フィルタ特性の急峻性を向上させることができる。
【0056】
また、弾性境界波の伝搬方向を小さくすることにより、弾性境界波共振子の電気機械結合係数を大きくすることができ、Δfを大きくすることができる。その結果、通過帯域の広帯域化を図ることができる。
【0057】
また、一般に、弾性境界波素子は、弾性表面波素子に比べて周波数温度特性TCFの絶対値が小さく、良好である。そのため、第2の実施形態では、第1〜第3の直列腕共振子34〜36を構成している弾性境界波共振子の周波数温度特性TCFが良好であるため、通過帯域高域側におけるTCFを改善することができる。第2の実施形態においても、複数の弾性境界波共振子からなる弾性境界波素子及び複数の弾性表面波共振子からなる弾性表面波素子の双方が同一圧電基板上に形成されているので、ラダー型弾性波フィルタの小型化及び部品点数の低減を図ることもできる。
【0058】
〔第3の実施形態〕
図6は、本発明の第3の実施形態の弾性波フィルタ41の回路図である。本実施形態の弾性波フィルタ41は、基本的には第1,第2の実施形態と同様に、3個の直列腕共振子と2個の並列腕共振子とを有するラダー型フィルタであり、同一圧電基板上にこれらの共振子が構成されている。
【0059】
第1,第2の実施形態と異なるところは、入力端子42と出力端子43とを結ぶ直列腕に配置された第1〜第3の直列腕共振子44〜46において、入力端子42側に位置している第1,第2の直列腕共振子44,45が弾性表面波共振子からなり、出力端子43側に位置している第3の直列腕共振子46が弾性境界波共振子からなり、第1の並列腕共振子47が弾性表面波共振子からなり、第2の並列腕共振子48が弾性境界波共振子からなる点にある。
【0060】
言い換えれば、第3の実施形態の弾性波フィルタ41は、入力端子42側に配置されたラダー型弾性表面波フィルタ部49Aと、出力端子43側に配置されたラダー型弾性境界波フィルタ部49Bとを接続した構成を有する。ラダー型弾性表面波フィルタ部49Aは複数の弾性表面波共振子からなる弾性表面波素子であり、ラダー型弾性境界波フィルタ部49Bは複数の弾性境界波共振子からなる弾性境界波素子である。
【0061】
ここでは、主にラダー型弾性表面波フィルタ部49Aにより通過帯域が形成され、かつ主にラダー型弾性境界波フィルタ部49Bにおける第3の直列腕共振子46により通過帯域高域側の減衰極が形成され、主に第2の並列腕共振子48により通過帯域低域側の減衰極が形成される。そのため、フィルタ特性の急峻性を高めることが可能とされている。
【0062】
ここで、ラダー型弾性境界波フィルタ部49Bにおける第3の直列腕共振子46の共振周波数、第2の並列腕共振子48の反共振周波数は、主にラダー型弾性表面波フィルタ部49Aにより形成される通過帯域内にそれぞれ位置されている。
【0063】
ラダー型フィルタでは、通過帯域高域側における減衰特性は、直列腕共振子の周波数差Δfにより決まり、通過帯域低域側における減衰特性は、並列腕共振子の周波数差Δfにより決まる。よって、直列腕共振子の周波数差Δfが小さいほど、通過帯域高域側の減衰特性が急峻となり、並列腕共振子の周波数差Δfが小さいほど、通過帯域低域側の減衰特性は急峻となる。
【0064】
また、ラダー型フィルタを構成する共振子のΔfが小さくなるほど、通過帯域の帯域幅は狭くなる。
【0065】
本実施形態では、主にラダー型弾性表面波フィルタ部49Aにより通過帯域が形成されている。弾性境界波フィルタ部49Bにおいては、弾性境界波の伝搬方位を変えることにより、電気機械結合係数を変えることができる。従って、弾性境界波の伝搬方位を大きくして電気機械結合係数、ひいては周波数差Δfを小さくすることにより、主に第3の直列腕共振子46により通過帯域高域側の減衰極を形成し、通過帯域高域側におけるフィルタ特性の急峻性を高めることができる。また、主に第2の並列腕共振子48のΔfを小さくすることにより、通過帯域低域側の減衰極を形成し、通過帯域低域側におけるフィルタ特性の急峻性を高めることができる。
【0066】
従って、所定の帯域幅の通過帯域を確保し、かつ急峻な減衰特性を有するラダー型弾性波フィルタを提供することができる。
【0067】
また、弾性境界波素子は弾性表面波素子に比べてTCFの絶対値が小さいため、通過帯域高域側及び低域側のTCFを改善することもできる。
【0068】
なお、本実施形態では、ラダー型弾性表面波フィルタ部49Aの後段にラダー型弾性境界波フィルタ部49Bが接続されていたが、本発明においては、ラダー型弾性表面波フィルタ部及び/またはラダー型弾性境界波フィルタ部に様々な弾性波共振子または弾性波フィルタ部を接続することができる。
【0069】
例えば、ラダー型弾性表面波フィルタ部と、該ラダー型弾性表面波フィルタ部に直列に接続されたΔfが小さい弾性境界波共振子とによりラダー型弾性波フィルタを構成してもよい。このような構成により、所定の帯域幅の通過帯域を確保し、かつ通過帯域高域側におけるフィルタ特性の急峻性を高めることができる。
【0070】
また、ラダー型弾性表面波フィルタ部と、該ラダー型弾性表面波フィルタ部に並列に接続されたΔfが小さい弾性境界波共振子によりラダー型弾性波フィルタを構成してもよい。この場合には、所定の帯域幅の通過帯域を有し、かつ通過帯域低域側におけるフィルタ特性の急峻性を高めることができる。
【0071】
〔第4の実施形態〕
図7に示すように、第4の実施形態の弾性波フィルタ51もまた、第1〜第3の直列腕共振子54〜56及び第1,第2の並列腕共振子57,58を有する。
【0072】
また、同一圧電基板上にこれらの共振子が構成されている。従って、基本的構造において、第4の実施形態の弾性波フィルタ51は、第1〜第3の実施形態と同様である。
【0073】
第4の実施形態の弾性波フィルタ51は、第3の実施形態と同様に、入力端子52側に、弾性表面波共振子からなる第1,第2の直列腕共振子54,55及び第1の並列腕共振子57からなるラダー型弾性表面波フィルタ部59Aが構成されており、出力端子53側に、それぞれ弾性境界波共振子からなる第2の並列腕共振子58及び第3の直列腕共振子56からなるラダー型弾性境界波フィルタ部59Bが接続されている。
【0074】
また、本実施形態では、第3の実施形態と同様に、ラダー型弾性表面波フィルタ部59Aにより通過帯域が形成される。第4の実施形態の弾性波フィルタ51の特徴は、ラダー型弾性境界波フィルタ部59Bにおける第3の直列腕共振子56の反共振周波数が通過帯域高域側の帯域外に位置されており、第2の並列腕共振子58の共振周波数が通過帯域低域側の帯域外に位置されていることにある。これによって、帯域外減衰量の拡大が図られる。
【0075】
すなわち、ラダー型弾性境界波フィルタ部59Bの第3の直列腕共振子56及び第2の並列腕共振子58である各弾性境界波共振子の弾性境界波の伝搬方位を小さくすることにより、電気機械結合係数、ひいてはΔfを大きくする。それによって、Δfの大きい第3の直列腕共振子56の共振周波数をラダー型弾性表面波フィルタ部59Aにより形成される通過帯域内に、反共振周波数を通過帯域高域側の帯域外に、第2の並列腕共振子58の共振周波数を通過帯域低域側の帯域外に、反共振周波数をラダー型弾性表面波フィルタ部59Aにより形成される通過帯域内にそれぞれ位置させている。従って、弾性境界波共振子からなる第3の直列腕共振子56の反共振周波数により通過帯域高域側における帯域外減衰量を大きくすることができる。さらに、弾性境界波共振子からなる第2の並列腕共振子58の共振周波数により、通過帯域低域側における帯域外減衰量を大きくすることができる。従って、所定の帯域幅の通過帯域を有し、かつ帯域外減衰量の大きなラダー型弾性波フィルタ51を提供することができる。
【0076】
本実施形態においても、弾性境界波共振子からなる第3の直列腕共振子56及び第2の並列腕共振子58において、弾性境界波の伝搬方位を変えることにより電気機械結合係数を変更することができるので、周波数差Δfを調整して第3の直列腕共振子56の反共振周波数や第2の並列腕共振子58の共振周波数を容易に調整することができる。従って、設計の自由度を大幅に高めることができる。また、第3の実施形態の変形例の場合と同様に、ラダー型弾性表面波フィルタ部と、該ラダー型弾性表面波フィルタ部に直列に接続されたΔfの大きい弾性境界波共振子とによりラダー型弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、Δfの大きい弾性境界波共振子の共振周波数をラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域内に、反共振周波数を通過帯域高域側の帯域外にそれぞれ位置させることにより、所定の帯域幅を確保し、かつ通過帯域高域側の帯域外減衰量を拡大することができる。
【0077】
また、ラダー型弾性表面波フィルタ部と、該ラダー型弾性表面波フィルタ部に並列に接続されたΔfの大きい弾性境界波共振子とによりラダー型弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、Δfの大きい弾性境界波共振子の共振周波数を通過帯域低域側の帯域外に、反共振周波数をラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域内にそれぞれ位置させることにより、所定の帯域幅を確保しつつ、通過帯域低域側における帯域外減衰量の拡大を図ることができる。
【0078】
〔第5の実施形態〕
図8は、第5の実施形態に係る弾性波フィルタ61の模式的平面図である。弾性波フィルタ61は、入力端子62と出力端子63とを有する。圧電基板70上に図示の電極構造が形成されている。すなわち、入力端子62に、3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ64,65を2段縦続接続してなる縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部66が接続されている。縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部66の後段には、直列腕共振子67と並列腕共振子68とを有するラダー型弾性境界波フィルタ部69が接続されている。直列腕共振子67及び並列腕共振子68は、それぞれ、IDT電極とIDT電極の両側に反射器が配置された1ポート型の弾性境界波共振子である。図8では、電極構造のみを模式的に示す。
【0079】
他方、前述した3IDT型の縦結合共振子型弾性表面波フィルタ64,65は、それぞれ、弾性表面波伝搬方向に沿って順に配置された第1〜第3のIDT電極と、IDT電極が設けられている領域の弾性表面波伝搬方向両側に配置された反射器とを有する。
【0080】
本実施形態のように、本発明においては、弾性境界波フィルタ部に、縦結合共振子型の弾性表面波フィルタ部が接続されていてもよい。
【0081】
本実施形態においても、ラダー型弾性境界波フィルタ部69だけでなく、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部66もまた、同一圧電基板70上に電極構造を形成することにより構成されている。従って、第1〜第4の実施形態と同様に、部品点数の低減及び小型化を進めることができる。
【0082】
本実施形態では、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部66により通過帯域が形成されている。また、ラダー型弾性境界波フィルタ部69における直列腕共振子67の反共振周波数が通過帯域高域側の帯域外に位置されており、並列腕共振子68の共振周波数が通過帯域低域側の帯域外に位置されている。それによって、帯域外減衰量の拡大が図られる。
【0083】
また、弾性境界波素子では、弾性境界波の伝搬方位を変えることにより電気機械結合係数を変えることができるので、ラダー型弾性境界波フィルタ部69の直列腕共振子67及び並列腕共振子68の弾性境界波の伝搬方位を変えることにより、それぞれの周波数差Δfを調整することができる。従って、直列腕共振子67の共振周波数を縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部66により形成される通過帯域内に、反共振周波数を通過帯域高域側の帯域外の任意の周波数にそれぞれ位置させ、並列腕共振子68の共振周波数を通過帯域低域側の帯域外の任意の周波数に、反共振周波数を通過帯域内にそれぞれ位置させている。それによって、直列腕共振子67の反共振周波数により通過帯域高域側の帯域外減衰量を大きくすることができる。また、並列腕共振子68の共振周波数により、通過帯域低域側の帯域外減衰量を大きくすることができる。
【0084】
従って、所定の帯域幅の通過帯域を確保しつつ、帯域外減衰量の拡大を図ることができる。また、弾性境界波共振子の反共振周波数及び共振周波数を任意の周波数に位置させることが容易であるため、設計の自由度を高めることができる。
【0085】
なお、本実施形態の変形例として、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と、該縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部に直列に接続された弾性境界波共振子とにより、弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、直列腕共振子である弾性境界波共振子の共振周波数を縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域内に、反共振周波数を通過帯域高域側の帯域外にそれぞれ位置させる。それによって、所定の帯域幅を確保しつつ、通過帯域高域側の減衰量の拡大を図ることができる。
【0086】
また、縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と、該縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部に並列に接続された弾性境界波共振子とにより、弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、並列腕共振子である弾性境界波共振子の共振周波数を通過帯域低域側の帯域外に、反共振周波数を通過帯域内にそれぞれ位置させる。それによって、所定の帯域幅を確保しつつ、通過帯域低域側の帯域外減衰量の拡大を図ることができる。
【0087】
〔第6の実施形態〕
図9は、第6の実施形態に係る弾性波フィルタ81の模式的平面図である。弾性波フィルタ81は、入力端子82と出力端子83とを有する。圧電基板90上に図示の電極構造が形成されている。
【0088】
すなわち、入力端子82に、3IDT型の縦結合共振子型弾性境界波フィルタ84,85を2段縦続接続してなる縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部86が接続されている。縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部86の後段には、直列腕共振子87と並列腕共振子88とを有するラダー型弾性表面波フィルタ部89が接続されている。直列腕共振子87及び並列腕共振子88は、それぞれ、IDT電極とIDT電極の両側に反射器が配置された1ポート型の弾性表面波共振子である。図9では、電極構造のみを模式的に示す。
【0089】
他方、前述した3IDT型の縦結合共振子型弾性境界波フィルタ84,85は、それぞれ、弾性境界波伝搬方向に沿って順に配置された第1〜第3のIDT電極と、IDT電極が設けられている領域の弾性境界波伝搬方向両側に配置された反射器とを有する。
【0090】
本実施形態のように、本発明においては、弾性表面波フィルタ部に、縦結合共振子型の弾性境界波フィルタ部が接続されていてもよい。
【0091】
本実施形態においても、ラダー型弾性表面波フィルタ部89だけでなく、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部86もまた、同一圧電基板90上に電極構造を形成することにより構成されている。従って、第1〜第5の実施形態と同様に、部品点数の低減及び小型化を進めることができる。
【0092】
本実施形態では、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部86により通過帯域が形成されている。また、ラダー型弾性表面波フィルタ部89における直列腕共振子87の反共振周波数が通過帯域高域側の帯域外に位置されており、並列腕共振子88の共振周波数が通過帯域低域側の帯域外に位置されている。それによって、帯域外減衰量の拡大が図られる。
【0093】
また、弾性境界波素子では、弾性境界波の伝搬方位を変えることにより電気機械結合係数を変えることができるので、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部86の縦結合共振子型弾性境界波フィルタ84,85において弾性境界波の伝搬方位を変えることにより、所定の帯域幅の通過帯域を確保しつつ、帯域外減衰量の拡大を図ることができる。また、弾性境界波フィルタの周波数特性を容易に調整し得るため、設計の自由度を高めることができる。
【0094】
なお、本実施形態の変形例として、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と、該縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部に直列に接続された弾性表面波共振子とにより、弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、直列腕共振子である弾性表面波共振子の共振周波数を縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部により形成される通過帯域内に、反共振周波数を通過帯域高域側の帯域外にそれぞれ位置させることにより、所定の帯域幅を確保しつつ、通過帯域高域側の減衰量の拡大を図ることができる。
【0095】
また、縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と、該縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部に並列に接続された弾性表面波共振子とにより、弾性波フィルタを構成してもよい。この場合、並列腕共振子である弾性表面波共振子の共振周波数を通過帯域低域側の帯域外に、反共振周波数を通過帯域内にそれぞれ位置させることにより、所定の帯域幅を確保しつつ、通過帯域低域側の帯域外減衰量の拡大を図ることができる。
【0096】
〔第7の実施形態〕
図10は、本発明の第7の実施形態としての分波器91を示す回路図である。分波器91は、アンテナ端子92と、送信端子93と、受信端子94とを有する。アンテナ端子92に、インピーダンス整合回路95が接続されている。インピーダンス整合回路95のアンテナ端子に接続されている側との反対の端部は2つのポートを有し、一方のポートが送信端子93に送信フィルタ96を介して接続されており、他方のポートが受信端子94に受信フィルタ97を介して接続されている。このような分波器の回路構成自体は従来より周知である。本分波器91の特徴は、上記送信フィルタ96及び受信フィルタ97の少なくとも一方が、上述した第1〜第6の実施形態のいずれかの弾性波フィルタにより構成されていることである。それによって、部品点数の低減及び小型化を図り得るだけでなく、送信フィルタ96や受信フィルタ97の設計の自由度、ひいては分波器91の設計の自由度を高めることが可能となる。
【0097】
なお、本発明に係る分波器は、上記送信フィルタ96及び受信フィルタ97を含むものに限定されず、2以上の帯域通過フィルタを含む分波器に広く本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1…弾性波フィルタ
2…入力端子
3…出力端子
4〜6…第1〜第3の直列腕共振子
4a…IDT電極
4b,4c…反射器
7,8…第1,第2の並列腕共振子
7a…IDT電極
7b,7c…反射器
9…グラウンド端子
10…圧電基板
11…パッケージ材
12,13…第1,第2の誘電体層
15…配線
21…弾性境界波共振子
22…誘電体層
31…弾性波フィルタ
32…入力端子
33…出力端子
34〜36…第1〜第3の直列腕共振子
37,38…第1,第2の並列腕共振子
41…弾性波フィルタ
42…入力端子
43…出力端子
44〜46…第1〜第3の直列腕共振子
47,48…第1,第2の並列腕共振子
49A…ラダー型弾性表面波フィルタ部
49B…ラダー型弾性境界波フィルタ部
51…弾性波フィルタ
52…入力端子
53…出力端子
54〜56…第1〜第3の直列腕共振子
57,58…第1,第2の並列腕共振子
59A…ラダー型弾性表面波フィルタ部
59B…ラダー型弾性境界波フィルタ部
61…弾性波フィルタ
62…入力端子
63…出力端子
64,65…縦結合共振子型弾性表面波フィルタ
66…縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部
67…直列腕共振子
68…並列腕共振子
69…ラダー型弾性境界波フィルタ部
70…圧電基板
81…弾性波フィルタ
82…入力端子
83…出力端子
84,85…縦結合共振子型弾性境界波フィルタ
86…縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部
87…直列腕共振子
88…並列腕共振子
89…ラダー型弾性表面波フィルタ部
90…圧電基板
91…分波器
92…アンテナ端子
93…送信端子
94…受信端子
95…インピーダンス整合回路
96…送信フィルタ
97…受信フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に構成されている弾性表面波素子と、
前記弾性表面波素子と同一圧電基板上に構成されている弾性境界波素子とを備え、フィルタ回路を構成するように前記弾性表面波素子と前記弾性境界波素子とが電気的に接続されている、弾性波フィルタ。
【請求項2】
直列腕と並列腕とを有するラダー型回路構成の弾性波フィルタであって、
圧電基板と、
前記圧電基板上に構成されている弾性表面波共振子と、
前記弾性表面波共振子と同一圧電基板上に構成されている弾性境界波共振子とを備え、
前記並列腕及び直列腕にそれぞれ配置されている並列腕共振子及び直列腕共振子のうち少なくとも1つの共振子が、前記弾性表面波共振子からなり、残りの共振子が前記弾性境界波共振子からなる、弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記直列腕共振子が前記弾性表面波共振子であり、かつ前記並列腕共振子が前記弾性境界波共振子である、請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記直列腕共振子が前記弾性境界波共振子であり、かつ前記並列腕共振子が前記弾性表面波共振子である、請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、直列腕共振子及び並列腕共振子が前記弾性境界波共振子を用いて構成されているラダー型弾性境界波フィルタ部とを有し、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に前記ラダー型弾性境界波フィルタ部が電気的に接続されている、請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項6】
前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の直列腕共振子である前記弾性境界波共振子の共振周波数と、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の並列腕共振子である前記弾性境界波共振子の反共振周波数とが、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域内に、それぞれ位置されている請求項5に記載の弾性波フィルタ。
【請求項7】
前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の直列腕共振子である前記弾性境界波共振子の反共振周波数が主に前記ラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域よりも高域側の帯域外に位置されており、前記ラダー型弾性境界波フィルタ部の並列腕共振子である前記弾性境界波共振子の共振周波数が主に前記ラダー型弾性表面波フィルタ部により形成される通過帯域よりも低域側の帯域外に位置されている、請求項6に記載の弾性波フィルタ。
【請求項8】
直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に直列に接続されている弾性境界波共振子とを有する、請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項9】
直列腕共振子及び並列腕共振子がそれぞれ前記弾性表面波共振子を用いて構成されているラダー型弾性表面波フィルタ部と、前記ラダー型弾性表面波フィルタ部に並列に接続されている弾性境界波共振子とを有する、請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項10】
圧電基板と、
前記圧電基板上に構成されている縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と、
前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と同一圧電基板上に構成されており、前記縦結合共振子型弾性表面波フィルタ部と電気的に接続されている、少なくとも1つの弾性境界波共振子とを備える、弾性波フィルタ。
【請求項11】
圧電基板と、
前記圧電基板上に構成されている縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と、
前記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と同一圧電基板上に構成されており、前記縦結合共振子型弾性境界波フィルタ部と電気的に接続されている、少なくとも1つの弾性表面波共振子とを備える、弾性波フィルタ。
【請求項12】
第1の通過帯域を有する帯域フィルタと、第1の通過帯域とは異なる通過帯域を有する第2の帯域フィルタとを有する分波器であって、第1,第2の帯域フィルタの少なくとも一方が、請求項1〜11のいずれか1項に記載の弾性波フィルタからなる、分波器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−252254(P2010−252254A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102051(P2009−102051)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】