説明

弾性波フィルタ装置

【課題】良好なバランス性を有するバランス型の弾性波フィルタ装置を提供する。
【解決手段】弾性波フィルタ装置1では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20の最も第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30側に位置しているIDT電極23と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の最も第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20側に位置しているIDT電極31とが同位相の信号を出力するように構成されている。IDT電極23と、第1の平衡信号端子11aとを接続している第1の配線16の第1の平衡信号端子11a側の部分と、IDT電極31と、第1の平衡信号端子11aとを接続している第2の配線17の第1の平衡信号端子11a側の部分とが共通化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波フィルタ装置に関する。特には、本発明は、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型の弾性波フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話などの種々の電子機器において、平衡−不平衡変換機能を有するバランス型の弾性波フィルタ装置が広く用いられている。バランス型の弾性波フィルタ装置の一種として、例えば下記の特許文献1には、2つの縦結合共振子型弾性波フィルタ部を並列に接続したバランス型弾性波フィルタ装置が記載されている。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された弾性表面波装置の概略構成図である。図6に示すように、弾性表面波装置100は、入力端子101と、第1及び第2の出力端子102a、102bとの間に並列に接続されている第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部103,104を備えている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部103,104のそれぞれは、所謂3IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部である。縦結合共振子型弾性波フィルタ部103,104のそれぞれの弾性表面波伝搬方向における中央に位置しているIDT電極の一方のくし歯状電極が入力端子101に接続されている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部103,104のそれぞれの弾性表面波伝搬方向における両側に位置しているIDT電極の一方のくし歯状電極が出力端子102a、102bに接続されている。縦結合共振子型弾性波フィルタ部103の弾性表面波伝搬方向における両側に位置しているIDT電極の一方のくし歯状電極と出力端子102aとを接続している2つの配線103a、103bと、縦結合共振子型弾性波フィルタ部104の弾性表面波伝搬方向における両側に位置しているIDT電極の一方のくし歯状電極と出力端子102bとを接続している2つの配線104a、104bとは、位相が180°異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−78387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、不平衡入力端子と、2つの平衡出力端子との間に2つの縦結合共振子型弾性波フィルタ部が並列に接続されている場合は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と平衡出力端子との間を接続している配線が4本必要となる。このため、例えば、バランス型ではなく、入力端子及び出力端子のそれぞれが不平衡信号端子である弾性波フィルタ装置とは異なり、多くの配線が必要となる。
【0006】
なお、図6は、模式的に記載された図であり、図6では、4本の配線103a、103b、104a、104bは、比較的間隔をおいて描画されている。しかしながら、弾性波フィルタ装置を小型化したいという要請などから、実際は、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と平衡出力端子との間を接続している4本の配線は、図6に描画されているよりも、近接して配置されている。従って、2つの縦結合共振子型弾性波フィルタ部が並列に接続されている弾性波フィルタ装置においては、位相が180°異なる配線103b及び104a間に寄生容量が発生し、帯域幅が狭くなってしまい、結果として、良好なバランス性が得られない場合があるという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、良好なバランス性を有するバランス型の弾性波フィルタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る弾性波フィルタ装置は、不平衡信号端子と、第1及び第2の平衡信号端子と、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを備えている。本発明に係る弾性波フィルタ装置は、平衡−不平衡変換機能を有する。第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、不平衡信号端子と、第1及び第2の平衡信号端子との間に接続されている。第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、弾性波伝搬方向に沿って配列された複数のIDT電極を有する。第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極とが同位相の信号を出力するように構成されている。本発明に係る弾性波フィルタ装置は、第1の配線と、第2の配線とをさらに備えている。第1の配線は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、第1の平衡信号端子とを接続している。第2の配線は、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、第1の平衡信号端子とを接続している。第1の配線の第1の平衡信号端子側の部分と、第2の配線の第1の平衡信号端子側の部分とは、共通化されている。
【0009】
本発明に係る弾性波フィルタ装置のある特定の局面では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、弾性波伝搬方向に沿って配列された3つのIDT電極を有する。
【0010】
本発明に係る弾性波フィルタ装置の他の特定の局面では、弾性波フィルタ装置は、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部をさらに備えている。第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、第1及び第2の平衡信号端子との間に縦続接続されている。第1及び第2の配線は、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部を介して第1及び第2の平衡信号端子に接続されている。このように、複数の縦結合共振子型弾性波フィルタ部を縦続接続することにより、阻止帯域における減衰量を大きくしたり、アイソレーション特性を向上したりすることができる。また、縦続接続している第1の配線の位相と第2の配線の位相が180°異なっているため、バランス性をより向上できる。
【0011】
本発明に係る弾性波フィルタ装置の別の特定の局面では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、複数のIDT電極が設けられている領域の弾性波伝搬方向の両側に設けられている一対の反射器を備えている。
【0012】
本発明に係る弾性波フィルタ装置のさらに他の特定の局面では、弾性波フィルタ装置は、第3の配線と、第4の配線とをさらに備えている。第3の配線は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と第2の平衡信号端子とを接続している。第4の配線は、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と第2の平衡信号端子とを接続している。第1及び第2の配線は、共通化されている部分において、第3及び第4の配線と交差している。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、第1の平衡信号端子とを接続している第1の配線の第1の平衡信号端子側の部分と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、第1の平衡信号端子とを接続している第2の配線の第1の平衡信号端子側の部分とが共通化されている。このため、寄生容量の発生を抑制することができる。従って、帯域幅の減少を防ぐことができる。その結果、良好なバランス性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。
【図2】第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の一部分の模式的断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。
【図4】第3の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。
【図5】変形例に係る弾性波フィルタ装置の一部分の模式的断面図である。
【図6】特許文献1に記載された弾性表面波装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図1及び図3,4に示す弾性波フィルタ装置1〜3を例に挙げて説明する。但し、弾性波フィルタ装置1〜3は、単なる例示である。本発明に係る弾性波フィルタ装置は、弾性波フィルタ装置1〜3に何ら限定されない。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。図2は、第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の一部分の模式的断面図である。
【0017】
図1及び図2に示す本実施形態の弾性波フィルタ装置1は、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタ装置である。弾性波フィルタ装置1は、平衡−不平衡変換機能を有している。
【0018】
図1に示すように、弾性波フィルタ装置1は、不平衡信号端子10と、第1及び第2の平衡信号端子11a、11bとを備えている。
【0019】
不平衡信号端子10と、第1及び第2の平衡信号端子11a、11bとの間には、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30が並列に接続されている。第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30のそれぞれは、平衡−不平衡変換機能を有している。第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30のそれぞれは、弾性波伝搬方向xに沿って配列された複数のIDT電極21〜23,31〜33を備えている。
【0020】
具体的には、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20は、弾性波伝搬方向xに沿ってこの順番で配列された第1〜第3のIDT電極21〜23を備えている。第1〜第3のIDT電極21〜23のそれぞれは、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極21a、21b、22a、22b、23a、23bを備えている。第1〜第3のIDT電極21〜23が設けられている領域の弾性波伝搬方向xの両側には、第1及び第2のグレーティング反射器24,25が配置されている。
【0021】
第1〜第3のIDT電極21〜23は、第1のIDT電極21の出力側のくし歯状電極21bと、第3のIDT電極23の出力側のくし歯状電極23bとの位相が180°異なるように構成されている。
【0022】
第1〜第3のIDT電極21〜23のうち、弾性波伝搬方向xの中央に位置している第2のIDT電極22の一方側のくし歯状電極22aは、不平衡信号端子10に接続されており、他方のくし歯状電極22bは、グラウンド電位に接続されている。
【0023】
第1〜第3のIDT電極21〜23のうち、弾性波伝搬方向xの両側に位置している第1及び第3のIDT電極21,23のそれぞれの一方側のくし歯状電極21a、23aは、グラウンド電位に接続されている。第1のIDT電極21のくし歯状電極21bは、第2の平衡信号端子11bに接続されている。第3のIDT電極23のくし歯状電極23bは、第1の平衡信号端子11aに接続されている。
【0024】
第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30は、弾性波伝搬方向xに沿ってこの順番で配列された第1〜第3のIDT電極31〜33を備えている。第1〜第3のIDT電極31〜33のそれぞれは、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極31a、31b、32a、32b、33a、33bを備えている。第1〜第3のIDT電極31〜33が設けられている領域の弾性波伝搬方向xの両側には、第1及び第2のグレーティング反射器34,35が配置されている。
【0025】
第1〜第3のIDT電極31〜33は、第1のIDT電極31の出力側のくし歯状電極31bと、第3のIDT電極33の出力側のくし歯状電極33bとの位相が180°異なるように構成されている。
【0026】
また、本実施形態では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30は、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20の最も第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30側に位置している第3のIDT電極23と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30の最も第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20側に位置している第1のIDT電極31とが同位相の信号を出力するように構成されている。すなわち、本実施形態では、第3のIDT電極23のくし歯状電極23bと、第1のIDT電極31のくし歯状電極31bとが同位相とされている。
【0027】
第1〜第3のIDT電極31〜33のうち、弾性波伝搬方向xの中央に位置している第2のIDT電極32の一方側のくし歯状電極32aは、不平衡信号端子10に接続されており、他方のくし歯状電極32bは、グラウンド電位に接続されている。
【0028】
第1〜第3のIDT電極31〜33のうち、弾性波伝搬方向xの両側に位置している第1及び第3のIDT電極31,33のそれぞれの一方側のくし歯状電極31a、33aは、グラウンド電位に接続されている。第1のIDT電極31のくし歯状電極31bは、第1の平衡信号端子11aに接続されている。第3のIDT電極33のくし歯状電極33bは、第2の平衡信号端子11bに接続されている。
【0029】
上記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30は、図2に示すように、圧電基板12と、第1の誘電体層13と、第2の誘電体層14と、電極構造15とを備えている。第1の誘電体層13は、圧電基板12の上に形成されている。第2の誘電体層14は、圧電基板12と第1の誘電体層13との間に配置されている。電極構造15は、圧電基板12と第2の誘電体層14との間に形成されている。本実施形態では、この電極構造15により、上述のIDT電極21〜23,31〜33や、グレーティング反射器24,25,34,35、各種配線などが構成されている。
【0030】
圧電基板12は、例えば、LiNbOやLiTaOなどの適宜の圧電体により形成することができる。
【0031】
第1及び第2の誘電体層13,14は、第2の誘電体層14の音速が、第1の誘電体層13の音速よりも遅くなる限りにおいて、特に限定されない。第1の誘電体層13は、例えば、SiN等の窒化ケイ素などにより形成することができる。一方、第2の誘電体層14は、例えば、SiOなどの酸化ケイ素により形成することができる。
【0032】
電極構造15は、適宜の導電材料により形成することができる。具体的には、電極構造15は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ti,Ni,Cr,Pd,Ni,Wなどの金属や、これらの金属のうちの一種以上を含む合金により形成することができる。また、電極構造15は、複数の導電膜からなる積層体により構成されていてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20における第3のIDT電極23と、第1の平衡信号端子11aとを接続している第1の配線16の第1の平衡信号端子11a側の部分と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部30における第1のIDT電極31と、第1の平衡信号端子11aとを接続している第2の配線17の第1の平衡信号端子11a側の部分とが共通化されている。すなわち、第3のIDT電極23と第1の平衡信号端子11aとを接続している第1の配線16の第1の平衡信号端子11a側の部分と、第1のIDT電極31と第1の平衡信号端子11aとを接続している第2の配線17の第1の平衡信号端子11a側の部分とが一本の配線により構成されている。このため、縦結合共振子型弾性波フィルタ部と平衡出力端子との間を接続している配線が複数本である、例えば特許文献1に開示されているような構成に比べて、寄生容量の発生を抑制することができる。配線間に寄生容量が発生すると、並列に容量が接続されることになる。容量が並列に接続されると帯域幅が狭くなるので、本実施形態のように、寄生容量の発生を抑制することができれば、帯域幅の減少を防ぐことができる。その結果、良好なバランス性を実現することができる。
【0034】
なお、本実施形態では、第1及び第2の配線16,17は、共通化されている部分において、第1のIDT電極21と第2の平衡信号端子11bとを接続している第3の配線18、及び第3のIDT電極33と第2の平衡信号端子11bとを接続している第4の配線19と交差している。第1及び第2の配線16,17と、第3及び第4の配線18,19の立体交差している部分には、第1及び第2の配線16,17と、第3及び第4の配線18,19とを電気的に絶縁する絶縁層が形成されている。通常、この絶縁層の比誘電率は、圧電基板の比誘電率よりも小さい。このため、上記立体交差部においては、第1及び第2の平衡信号端子のそれぞれに接続されている配線を別個に設けた場合に発生する配線間の寄生容量ほど大きな寄生容量は発生しない。従って、配線が立体交差している場合であっても、良好なバランス性を実現することができる。また、配線を立体交差させることにより、弾性波フィルタ装置1を小型化することができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、第3の配線18の第2の平衡信号端子11b側部分と、第4の配線19の第2の平衡信号端子11b側部分とも共通化されている。
【0036】
以下、本発明を実施した好ましい形態の別の例及び変形例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0037】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。
【0038】
本実施形態に係る弾性波フィルタ装置2は、上記第1の実施形態に係る弾性波フィルタ装置1と同様に、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタ装置である。
【0039】
図3に示すように、本実施形態の弾性波フィルタ装置2では、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70が、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30と、第1及び第2の平衡信号端子11a、11bとの間に縦続接続されている。第1及び第2の配線16,17は、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70を介して、第1及び第2の平衡信号端子11a、11bに接続されている。
【0040】
具体的には、第3の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60は、弾性波伝搬方向xに沿ってこの順番で配列されている第1〜第3のIDT電極61〜63を備えている。第1〜第3のIDT電極61〜63が設けられている領域の弾性波伝搬方向xの両側には、第1及び第2のグレーティング反射器64,65が配置されている。
【0041】
第1〜第3のIDT電極61〜63のそれぞれは、互いに間挿し合う一対のくし歯状電極61a、61b、62a、62b、63a、63bを有する。第3のIDT63の一方側のくし歯状電極63aは、第1及び第2の配線16,17を介して、IDT電極23,31に接続されており、他方側のくし歯状電極63bは、グラウンド電位に接続されている。第1のIDT電極61の一方側のくし歯状電極61aは、第3の配線18を介して第1のIDT電極21に接続されており、他方側のくし歯状電極61bは、グラウンド電位に接続されている。第2のIDT電極62の一方側のくし歯状電極62aは、第5の配線41を介して第1の平衡信号端子11aに接続されており、他方側のくし歯状電極62bは、第7の配線43を介して第2の平衡信号端子11bに接続されている。
【0042】
第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部70は、弾性波伝搬方向xに沿ってこの順番で配列されている第1〜第3のIDT電極71〜73を備えている。第1〜第3のIDT電極71〜73が設けられている領域の弾性波伝搬方向xの両側には、第1及び第2のグレーティング反射器74,75が配置されている。
【0043】
第1〜第3のIDT電極71〜73のそれぞれは、互いに間挿し合う一対のくし歯状電極71a、71b、72a、72b、73a、73bを有する。第1のIDT電極71の一方側のくし歯状電極71aは、第1及び第2の配線16,17を介して、IDT電極23,31に接続されており、他方側のくし歯状電極71bは、グラウンド電位に接続されている。第3のIDT電極73の一方側のくし歯状電極73aは、第4の配線19を介して第3のIDT電極33に接続されており、他方側のくし歯状電極73bは、グラウンド電位に接続されている。第2のIDT電極72の一方側のくし歯状電極72aは、第6の配線42を介して第1の平衡信号端子11aに接続されており、他方側のくし歯状電極72bは、第8の配線44を介して第2の平衡信号端子11bに接続されている。
【0044】
本実施形態においては、第5及び第6の配線41,42の第1の平衡信号端子11a側の部分が共通化されている。また、第7及び第8の配線43,44の第2の平衡信号端子11b側の部分が共通化されている。
【0045】
また、本実施形態では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30と、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70とが縦続接続されている。このため、阻止帯域における減衰量をより大きくできる。また、アイソレーション特性をより向上することができる。また、本実施形態では、縦続接続されている段間の配線である第1の配線16、第2の配線17が共通化されているため、バランス性が改善されている。
【0046】
(第3の実施形態)
図4は第3の実施形態に係る弾性波フィルタ装置の模式的平面図である。
【0047】
本実施形態に係る弾性波フィルタ装置3は、上記第2の実施形態に係る弾性波フィルタ装置2と同様に、弾性境界波を利用した弾性境界波フィルタ装置である。弾性波フィルタ装置3は、第1及び第2の平衡信号端子11a、11bと、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70との接続態様を除いては、上記弾性波フィルタ装置2と実質的に同様の構成を有する。
【0048】
具体的には、図4に示すように、弾性波フィルタ装置3では、IDT電極62の一方のくし歯状電極62aがグラウンド電位に接続されており、他方のくし歯状電極62bが第2の平衡信号端子11bに接続されている。IDT電極72の一方のくし歯状電極72aがグラウンド電位に接続されている、他方のくし歯状電極72bが第1の平衡信号端子11aに接続されている。このようにすることにより、配線の立体交差をなくすことができるため、より良好なバランス性を実現することができる。
【0049】
また、弾性波フィルタ装置3においても、上記第2の実施形態の弾性波フィルタ装置2と同様に、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30と、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70とが縦続接続されている。このため、阻止帯域における減衰量をより大きくできる。また、アイソレーション特性をより向上することができる。また、本実施形態では、縦続接続されている段間の配線である第1の配線16、第2の配線17が共通化されているため、寄生容量の発生を抑制することができる。従って、バランス性が改善されている。
【0050】
(変形例)
上記第1及び第2の実施形態では、本発明を実施した弾性波フィルタ装置の例として、弾性境界波を利用した所謂3媒質型の弾性境界波フィルタ装置を挙げた。但し、本発明に係る弾性波フィルタ装置は、3媒質型の弾性境界波フィルタ装置に限定されない。本発明に係る弾性波フィルタ装置は、例えば、第2の誘電体層を有さない所謂2媒質型の弾性境界波フィルタ装置であってもよい。また、本発明に係る弾性波フィルタ装置は、弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタ装置であってもよい。その場合は、図5に示すように、電極構造15が形成されている圧電基板12の表面上には、酸化ケイ素などからなる誘電体層が形成されないか、または、弾性波が境界に閉じこもらない程度の薄さの誘電体層が形成される。
【0051】
上記第1及び第2の実施形態では、第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部20,30や、第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部60,70が、3つのIDT電極を有する所謂3IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部である例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。本発明においては、第1〜第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、例えば、IDT電極を5つまたは7つ有する、所謂5IDT型または7IDT型の縦結合共振子型弾性波フィルタ部であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,2,3…弾性波フィルタ装置
10…不平衡信号端子
11a…第1の平衡信号端子
11b…第2の平衡信号端子
12…圧電基板
13…第1の誘電体層
14…第2の誘電体層
15…電極構造
16…第1の配線
17…第2の配線
18…第3の配線
19…第4の配線
20…第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部
30…第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部
60…第3の縦結合共振子型弾性波フィルタ部
70…第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部
21〜23、31〜33、61〜63、71〜73…IDT電極
21a、21b、22a、22b、23a、23b、31a、31b、32a、32b、33a、33b、61a、61b、62a、62b、63a、63b、71a、71b、72a、72b、73a、73b…くし歯状電極
24,25,34,35,64,65,74,75…グレーティング反射器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不平衡信号端子と、
第1及び第2の平衡信号端子と、
それぞれ、前記不平衡信号端子と、前記第1及び第2の平衡信号端子との間に接続されており、弾性波伝搬方向に沿って配列された複数のIDT電極を有する第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部とを備える平衡−不平衡変換機能を有する弾性波フィルタ装置であって、
前記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部は、前記第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も前記第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、前記第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も前記第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極とが同位相の信号を出力するように構成されており、
前記第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も前記第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、前記第1の平衡信号端子とを接続している第1の配線と、
前記第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部の最も前記第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部側に位置しているIDT電極と、前記第1の平衡信号端子とを接続している第2の配線とをさらに備え、
前記第1の配線の前記第1の平衡信号端子側の部分と、前記第2の配線の前記第1の平衡信号端子側の部分とが共通化されている、弾性波フィルタ装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、弾性波伝搬方向に沿って配列された3つのIDT電極を有する、請求項1に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と、前記第1及び第2の平衡信号端子との間に縦続接続されている第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部をさらに備え、
前記第1及び第2の配線は、前記第3及び第4の縦結合共振子型弾性波フィルタ部を介して前記第1及び第2の平衡信号端子に接続されている、請求項1または2に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部のそれぞれは、前記複数のIDT電極が設けられている領域の弾性波伝搬方向の両側に設けられている一対の反射器を備えている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ装置。
【請求項5】
前記第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と前記第2の平衡信号端子とを接続している第3の配線と、
前記第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ部と前記第2の平衡信号端子とを接続している第4の配線とをさらに備え、
前記第1及び第2の配線は、前記共通化されている部分において、前記第3及び第4の配線と交差している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性波フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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