説明

弾性波フィルタ

【課題】圧電基板上に入力側IDT電極及び出力側IDT電極を各々テーパー型に配置した弾性波フィルタにおいて、ある帯域の周波数特性を他の帯域から独立して調整すること。
【解決手段】周期単位λが一方側のバスバー14a側から他方側のバスバー14b側に向かうにつれて広がるように形成されたテーパー型の入力側IDT電極12及び出力側IDT電極13を各々備えたフィルタ部31、32(フィルタ部31:λ1〜λ2(λ1<λ2)、フィルタ部32:λ3〜λ4(λ3<λ4))について、これらフィルタ部31、32を弾性波の伝搬方向に対して互いに直交する方向に配置すると共に、第1のフィルタ部31の周期単位λ2と第2のフィルタ部32の周期単位λ3とを同じ長さに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極指群の配置領域をテーパー型に形成した弾性波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性波例えば弾性表面波を用いたフィルタ(バンドパスフィルタ)として、例えば互いに平行になるように配置された一対のバスバーと、これらバスバーの一方側から他方側に向かって互いに交互に櫛歯状に伸びるように配置された複数の電極指と、を備えたIDT(Inter Digital Transducer)電極を入力側電極及び出力側電極として圧電基板上に形成した構成が知られている。このフィルタでは、通過周波数帯域に対応する波長の弾性波が伝搬するように、電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法からなる周期単位λが調整される。そして、このようなフィルタでは、通過周波数帯域の広帯域化が求められると共に、通過周波数帯域内の平坦性や、当該通過周波数帯域の低域(低周波数)側及び高域(高周波数)側における急峻な減衰特性、更には高い選択性(通過周波数帯域よりも低域側及び高域側において大きな減衰量となること)が要求されている。また、フィルタの挿入損失を小さく抑えるために、例えば電極指に隣接して反射電極が配置される。
【0003】
前記フィルタの通過周波数帯域を広帯域化する手法としては、一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって前記周期単位λが徐々に広がるように、即ち電極指群の配置領域がテーパー型(傾斜型、スラント型)となるように既述のIDT電極を各々形成する方法が知られている。そして、各IDT電極の対数(互いに交差するように配置された電極指の組数)を調整したり、あるいは電極指や反射器を間引いて重み付けを行ったりすることにより、減衰特性などの周波数特性が調整される。
【0004】
この時、ある一部の帯域の周波数特性を他の帯域から独立して個別に調整するように求められる場合がある。具体的には、フィルタの選択性を高めるために、例えば通過周波数帯域の低域側においては当該低域側の減衰特性が良好となるようにIDT電極の重み付けを行い、一方通過周波数帯域の高域側においては、当該高域側の減衰特性が良好となるように前記低域側とは別に独立してIDT電極の重み付けを行うことが望まれる。しかし、既述のように一方側のバスバーと他方側のバスバーとの間において電極指や反射器が各々直線状に配置されており、低域側のトラックから高域側のトラックに亘って電極指の対数及び反射器の数量が揃っているため、低域側や高域側の重み付けを個別に行うことは困難である。
【0005】
特許文献1には、4つのブロック12a〜12dに分割した入力側IDT12や、入力側IDT12、出力側IDT13の双方を分割して良い旨記載されているが、具体的なフィルタの構成及び各IDT12、13の間の関係については記載されていない。また、特許文献2には、デュアルトラック型のトランスバーサルフィルタ型フィルタが記載されているが、既述のテーパー型フィルタについては記載されていない。更に、特許文献3には、既述の課題については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−60412(段落0033、図1等)
【特許文献2】特開2005−102119(図1)
【特許文献3】特開昭62−120115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧電基板上に入力側IDT電極及び出力側IDT電極を各々テーパー型に配置した弾性波フィルタにおいて、ある帯域の周波数特性を他の帯域から独立して調整できる弾性波フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性波フィルタは、
電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法からなる周期単位が一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって広がるように形成されたテーパー型IDT電極を入力側電極及び出力側電極として弾性波の伝搬方向に沿って夫々配置した第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の前記入力側電極のいずれかのバスバー及び前記第2のフィルタ部の前記入力側電極のいずれかのバスバーに共通に接続された入力ポートと、
前記第1のフィルタ部の前記出力側電極のいずれかのバスバー及び前記第2のフィルタ部の前記出力側電極のいずれかのバスバーに共通に接続された出力ポートと、を備え、
前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバー側の周期単位と、前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバー側の周期単位とは同じ長さに設定され、
入力側電極及び出力側電極における各々の一方側のバスバーと他方側のバスバーとの間の領域を伝搬領域と呼ぶと、前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の伝搬領域と前記第2のフィルタ部の伝搬領域とが弾性波の伝搬方向において一列に並ばないように、前記第2のフィルタ部から見た時に、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に離間した位置、または弾性波の伝搬方向に沿って離間すると共に前記直交する方向に離れた位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記フィルタは、以下のように構成しても良い。
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、弾性波の伝搬方向に対して互いに直交する方向に配置されている構成。前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバーに前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバーが対向するように、これら第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部が各々配置され、
前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバーと、前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバーとは浮き電極として共通化されている構成。
【0010】
前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の通過周波数帯域外において低周波数側よりも高周波数側の減衰量が大きくなるように前記電極指の配列パターンが設定され、
前記第2のフィルタ部は、当該第2のフィルタ部の通過周波数帯域外において高周波数側よりも低周波数域側の減衰量が大きくなるように前記電極指の配列パターンが設定されている構成。
前記第1のフィルタ部及び前記第2のフィルタ部は、前記電極指の長さ方向に沿って前記一方側のバスバー及び前記他方側のバスバーのいずれか一方から伸びる反射電極を各々備え、
前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の通過周波数帯域外において低周波数側よりも高周波数側の減衰量が大きくなるように前記反射電極の配列パターンが設定され、
前記第2のフィルタ部は、当該第2のフィルタ部の通過周波数帯域外において高周波数側よりも低周波数側の減衰量が大きくなるように前記反射電極の配列パターンが設定されている構成。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって周期単位が広がるように形成されたテーパー型のIDT電極を入力側電極及び出力側電極として各々配置した第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部について、第1のフィルタ部における前記他方側のバスバー側の周期単位と、前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバー側の周期単位とを同じ長さに設定している。そして、これら第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部に共通の入力ポート及び出力ポートを設けている。そのため、これら2つのフィルタ部のうち一のフィルタ部において、他のフィルタ部とは別に独立してIDT電極の重み付けや電極指の対数の調整を行うことができるので、一のフィルタ部に対応する帯域の周波数特性を他のフィルタ部に対応する帯域の特性から独立して調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の弾性波フィルタの一例を示す平面図である。
【図2】前記フィルタの一部を拡大した平面図である。
【図3】前記フィルタの概略を示す模式図である。
【図4】前記フィルタの概略を示す模式図である。
【図5】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図6】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図7】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図8】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図9】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図10】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図11】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図12】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図13】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図14】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【図15】前記フィルタの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の弾性波フィルタの実施の形態の一例について、図1〜図4を参照して説明する。この弾性波フィルタは、弾性波の伝搬方向に沿って互いに離間するように配置されたテーパー型の入力側IDT電極12及び出力側IDT電極13を備えており、例えば水晶などの圧電基板11上に配置されている。これらIDT電極12、13は、図1に示すように、各々のIDT電極12、13の概略中央部を弾性波の伝搬方向に沿って伸びる浮き電極10によって、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に複数の領域この例では2つの領域に各々区画されている。そして、前記領域に「1」の符号を付すと、各々のIDT電極12、13では、以下に詳述するように、2つの領域1、1の周波数特性が各々個別に調整されると共に、各々の領域1、1が信号ポート20(入力ポート21または出力ポート22)と接地ポート23との間において互いに並列に接続されている。IDT電極12、13間には、例えば角型の金属膜であるシールド電極5が配置され、弾性波の伝搬方向におけるこれらIDT電極12、13よりも圧電基板11の短辺3、3側の領域には、弾性波を吸収するための例えば樹脂などからなるダンパー6、6が各々配置されている。
【0014】
IDT電極12、13には一対のバスバー14、14が各々設けられており、これらバスバー14、14は、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に互いに離間するように、圧電基板11の長辺4、4側の領域に各々配置されている。そして、これらバスバー14、14の一方側と他方側との間において交互に櫛歯状に交差するように、電極指15及び反射電極16が各々配置されている。これら電極指15及び反射電極16は、図2に示すように、バスバー14、14間においてテーパー形状となるように、即ち電極指15及び反射電極16の各々の幅寸法及びこれら電極指15及び反射電極16間の離間寸法からなる周期単位λがバスバー14、14の一方側から他方側に向かって広がるように配置されている。これら電極指15及び反射電極16において周期単位λの狭い領域側(高周波数側)の一方側のバスバー14に「14a」、周期単位λの広い領域側(低周波数側)の他方側のバスバー14に「14b」の符号を各々付すと、この例ではバスバー14a、14bは圧電基板11の手前側及び奥側に各々配置されている。バスバー14aに近接する領域における周期単位λ及びバスバー14bに近接する領域における周期単位λは、夫々λ1及びλ4(λ1<λ4)となっている。尚、図1では、電極指15及び反射電極16の寸法について模式的に描画している。
【0015】
ここで、各々のIDT電極12、13において、バスバー14a、14b間の領域には、弾性波の伝搬方向に伸びるように形成された既述の浮き電極10、10が各々配置されている。これらIDT電極12、13の各々の浮き電極10、10は、弾性波の伝搬方向において一列となるように配置されている。即ち、各IDT電極12、13において、例えばバスバー14aと浮き電極10との間の離間寸法同士が揃うように、各浮き電極10、10が配置されている。図1では各IDT電極12、13の概略中央部に配置されるように浮き電極10、10を描画しているが、浮き電極10、10は、以下の式(1)となるように配置されている。

・・・(1)
即ち、各波長xで与えられる開口長wを
w=axとすると、
λ1〜λ4の全開口長は、以下の式(2)のようになる。


・・・(2)
従って、開口長方向において浮き電極10がバスバー14a、14b間の中間位置となるためには、以下の式(3)が満たされるようにすれば良い。

・・・(3)
これを解くと、既述の式(1)となる。
【0016】
既述の電極指15及び反射電極16は、バスバー14aと浮き電極10との間において互いに交差するように配置され、またバスバー14bと浮き電極10との間において互いに交差するように配置されている。
【0017】
この浮き電極10におけるバスバー14a側の周期単位λ及びバスバー14b側の周期単位λを夫々「λ2」及び「λ3」とすると、図2に示すように、λ2とλ3は互いに等しい寸法となっている。従って、浮き電極10を境界として、手前側(バスバー14a側)の領域では、λ1〜λ2までの低波長(高周波数)の弾性波が伝搬する伝搬領域が配置され、奥側(バスバー14b側)の領域では、λ3〜λ4までの長波長(低周波数)の弾性波が伝搬する伝搬領域が配置されている。尚、図2は、入力側IDT電極12における左側の端部を拡大して示している。
【0018】
入力側IDT電極12では、バスバー14a、14bが共通の入力ポート21に各々接続され、浮き電極10は接地ポート23を介して接地されている。また、出力側IDT電極13では、バスバー14a、14bが共通の出力ポート22に各々接続され、浮き電極10は接地ポート23を介して接地されている。従って、本発明のフィルタは、図3に模式的に示すように、λ1〜λ2までの波長が伝搬する第1のフィルタ部31と、λ3〜λ4までの波長が伝搬する第2のフィルタ部32と、を弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に配置すると共に、互いに対向するバスバー14、14同士を共通化して浮き電極10を形成していると言える。そして、λ1〜λ4までの波長(f1〜f4までの周波数)の弾性波が伝搬するフィルタとなるように、これら2つのフィルタ部31、32を信号ポート20と接地ポート23との間において並列に接続した構成を採っている。従って、このフィルタにおいて入力ポート21から電気信号を入力すると、各フィルタ部31、32の入力側IDT電極12において弾性波が発生すると共に、各フィルタ部31、32の出力側IDT電極13において再度電気信号に変換され、周期単位λ1〜λ4に対応する周波数の信号が出力ポート22から取り出されることになる。尚、以後の説明において、第1のフィルタ部31における入力側IDT電極12の領域1及び出力側IDT電極13の領域1について、各々「入力側IDT電極12」及び「出力側IDT電極13」の用語を用いることとする。第2のフィルタ部32についても同様とする。
【0019】
ここで、図1に示すように、2つのフィルタ部31、32のうち高周波数側の第1のフィルタ部31では、当該第1のフィルタ部31の通過周波数帯域よりも高周波数側(λ1よりも高波長側)において減衰量が大きくなるように、既述の電極指15及び反射電極16の数量及び配置パターン(間引き量)を設定して重み付けしている。また、2つのフィルタ部31、32のうち低周波数側の第2のフィルタ部32では、当該第2のフィルタ部32の通過周波数帯域よりも低周波数側(λ4よりも低波長側)において減衰量が大きくなるように、電極指15及び反射電極16の数量及び配置パターンを設定して重み付けしている。そのため、第1のフィルタ部31では、当該第1のフィルタ部31の通過周波数帯域よりも低周波数側において、また第2のフィルタ部32では、当該第2のフィルタ部32の通過周波数帯域よりも高周波数側において、以上のように重み付けしない場合よりも減衰特性の各々劣化する場合がある。
【0020】
しかし、第1のフィルタ部31の通過周波数帯域よりも低周波数側には第2のフィルタ部32の通過周波数帯域が位置し、従って第2のフィルタ部32の通過周波数帯域よりも高周波数側には第1のフィルタ部31の通過周波数帯域が位置している。そのため、これら2つのフィルタ部31、32を並列に接続すると、図4に模式的に示すように、一のフィルタ部31(32)において前記特性の劣化する可能性のある帯域が他のフィルタ部32(31)の通過周波数帯域と重なることになる。従って、本発明のフィルタは、浮き電極10を配置せずに周期単位λ1〜λ4の弾性波が伝搬するように構成した従来のフィルタ(図4では破線で示す)と比べて、通過周波数帯域よりも低周波数側及び高周波数側において良好な(大きな)減衰量が得られる。尚、図3においては、電極指15、反射電極16及びバスバー14の記載を省略しており、図4は周波数特性を模式的に描画している。また、図3の下側のグラム及び図4の各グラフは、横軸に周波数、縦軸に減衰量を示している。
【0021】
上述の実施の形態によれば、周期単位λが一方側のバスバー14a側から他方側のバスバー14b側に向かうにつれて広がるように形成されたテーパー型の入力側IDT電極12及び出力側IDT電極13を各々備えたフィルタ部31、32について、弾性波の伝搬方向に対して互いに直交する方向に配置すると共に、第1のフィルタ部31の周期単位λ2と第2のフィルタ部32の周期単位λ3とを同じ長さに設定している。そのため、各々のIDT電極12、13の重み付けや電極指15の対数(互いに交差する電極指15、15の数量)の調整をこれらフィルタ部31、32毎に個別に独立して行うことができるので、2つのフィルタ部31、32の内の一方の周波数特性を他方の周波数特性から独立して調整できる。従って、高周波数側の第1のフィルタ部31については当該高周波数側の周波数特性(減衰量)が良好となるように電極指15の対数の設定や重み付けを行い、一方低周波数側の第2のフィルタ部32については当該低周波数側の周波数特性が良好となるように電極指15の対数の設定や重み付けを行うことができる。そのため、例えば選択性の良好な(通過周波数帯域よりも低域側及び高域側において良好な減衰量が得られる)フィルタを得ることができる。
【0022】
図1ではバスバー14a、14bを信号ポート20に接続し、浮き電極10を接地ポート23に接続したが、本発明では2つのフィルタ部31、32が信号ポート20と接地ポート23との間において互いに並列に接続されていれば良く、以下に図1以外の具体的な本発明のフィルタの構成例を挙げる。図5は、各IDT電極12、13を図1と同じように配置すると共に、バスバー14a、14bを接地ポート23に各々接続し、浮き電極10を信号ポート20に接続した例を示している。この場合において、入力側IDT電極12については既述の図1と同じ構成となるように、即ちバスバー14a、14bを入力ポート21に接続し、浮き電極10を接地しても良い。
【0023】
図6は、第1のフィルタ部31については図1と同じレイアウトで配置し、一方第2のフィルタ部32については、バスバー14b側から浮き電極10側に向かって周期単位λが大きくなるように配置した例を示している。従って、第2のフィルタ部32では、バスバー14b側に周期単位λ3が設定され、浮き電極10側に周期単位λ4が設定されている。また、図6では、バスバー14a、14bを共通の信号ポート20に接続し、浮き電極10を接地ポート23に接続している。
【0024】
また、図7は、各フィルタ部31、32を図6と同様に配置すると共に、これらフィルタ部31、32において浮き電極10を共通化せずに、いわば各々のフィルタ部31、32にバスバー14a、14bを夫々個別に設けた例を示している。従って、各フィルタ部31、32において、各領域1がバスバー14a、14b間に配置され、第1のフィルタ部31の奥側のバスバー14bと、第2のフィルタ部32の手前側のバスバー14aとが圧電基板11の概略中央部において弾性波の伝搬方向に沿って隙間領域40を介して互いに対向している。また、各々のフィルタ部31、32の手前側のバスバー14a、14aが共通の信号ポート20に各々接続され、奥側のバスバー14b、14bが接地ポート23に各々接続されている。以上の図5〜図7の構成においても、既述の図1と同様の効果が得られる。
【0025】
ここで、各フィルタ部31、32の重み付けを個別に行っても良い旨は既に述べたが、このような重み付け方法の他の具体例について説明しておく。先ず、図8に、例えば入力側IDT電極12について、複数のフィルタ部31、32に区画せずに一方側のバスバー14aから他方側のバスバー14bに向かって電極指15及び反射電極16を配置した従来の構成例を示しておく。
【0026】
そして、例えば入力側IDT電極12について、既述のように、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に2つのフィルタ部31、32に区画すると共に、これら2つのフィルタ部31、32毎に励振間引き(電極指15の対数)を個別に行った例を図9に示す。図9に示すように、この例では浮き電極10からバスバー14a、14bに向かって伸びる電極指15を弾性波の伝搬方向に沿って互いに隣接するように複数本設けることによって、電極指15の対数を間引きしており、第1のフィルタ部31では前記対数は4箇所に設けられ、第2のフィルタ部32では3箇所に設けられている。尚、図9において、互いに交差するように配置された電極指15、15の領域について○印を付している。
【0027】
また、図10は、例えば入力側IDT電極12について、2つのフィルタ部31、32を配置すると共に、各々のフィルタ部31、32において反射電極16の配置位置及び数量を変えた(反射電極16の間引き量を変えた)例を示している。図10において、第1のフィルタ部31では反射電極16は2箇所に形成され、第2のフィルタ部32では反射電極16は4箇所に形成されている。
【0028】
以上の図9及び図10のように各フィルタ部31、32において個別に重み付けを行うにあたり、既述の図1では第1のフィルタ部31では当該第1のフィルタ部31の帯域よりも高周波数側の減衰量が良好となるように設定し、一方第2のフィルタ部32では当該第2のフィルタ部32の帯域よりも低周波数側の減衰量が良好となるように設定したが、これらフィルタ部31、32について、高域側及び低域側における減衰曲線の傾度が急峻となるように各々重み付けしても良い。また、これらフィルタ部31、32のいずれかあるいは両方について、減衰量や減衰傾度が良好となるように重み付けすることに変えて、あるいは当該重み付けと共に、通過周波数帯域における平坦性が良好となるように重み付けしても良い。
【0029】
更に、以上の各例において、IDT電極12、13の各々を複数のフィルタ部31、32に区画するにあたり、各々のIDT電極12、13の概略中央部に浮き電極10、10を配置したが、要求される周波数特性に応じて、当該中央部よりも高域側あるいは低域側に浮き電極10をずらして配置しても良い。具体的には、浮き電極10、10は、λ2(λ3)=(λ1+(λ4−λ1)×0.1)〜(λ1+(λ4−λ1)×0.9)となるように配置しても良い。このような場合においても、各フィルタ部31、32においてIDT電極12、13を各々区画する浮き電極10、10は、弾性波の伝搬方向に沿って一列に配置される。
【0030】
ここで、圧電基板11は、IDT電極12、13及びダンパー6、6を通り抜けて当該圧電基板11の短辺3、3側に弾性波が伝搬してきた時に、当該弾性波がIDT電極12、13側へ戻ることを抑えるために、例えば図11にフィルタを模式的に示すように、短辺3、3が長辺4、4に対して傾斜するように、いわば菱形となるように形成されている場合がある。この場合において、各フィルタ部31、32を弾性波の伝搬方向に対して互いに直交する方向に配置すると、圧電基板11の短辺3側のダンパー6の形成領域は、例えば図11の左側において手前側では奥側よりも狭くなるので、ダンパー6、6の収まりが悪く(ダンパー6、6を配置しにくく)なってしまう。そこで、図11に示すように、2つのフィルタ部31、32について、例えば短辺3に沿うように配置すると、ダンパー6、6の塗布領域(形成領域)をバランス良く確保できる。具体的には、図11中左側では手前側の第1のフィルタ部31を奥側の第2のフィルタ部32よりも短辺3から離れた位置に配置すると共に、図11中右側では手前側の第1のフィルタ部31を奥側の第2のフィルタ部32よりも短辺3側に寄った位置に配置している。従って、第1のフィルタ部31の各々のIDT電極12、13は、第2のフィルタ部32の各々のIDT電極12、13から見た時に、弾性波の伝搬方向に離間すると共に、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に離れた位置に形成されている。この例では、フィルタ部31、32のIDT電極12、13の各々は、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向から見た時に、領域1、1の一部同士が互いに重なり合っている。
【0031】
図11では、2つのフィルタ部31、32において浮き電極10を共通化していない例を示したが、既述のようにこれらフィルタ部31、32間に共通の浮き電極10を配置しても良い。尚、図11において、電極指15や反射電極16、については記載を省略している。以降の図12〜図14についても同様である。
【0032】
また、図12は、図11の例よりも、弾性波の伝搬方向においてフィルタ部31、32同士を互いに離間させた構成を示している。そして、図13は、図12の例よりも各フィルタ部31、32同士を弾性波の伝搬方向において更に互いに離間させると共に、第1のフィルタ部31と第2のフィルタ部32とにおいて、入力側IDT電極12と出力側IDT電極13とを入れ替えた例を示している。具体的には、第1のフィルタ部31については既述の図1と同様に配置されており、この第1のフィルタ部31の入力側IDT電極12の奥側に、第2のフィルタ部32の出力側IDT電極13が配置されている。また、第1のフィルタ部31の出力側IDT電極13の奥側に、第2のフィルタ部32の入力側IDT電極12が配置されている。
【0033】
更に、図14は、既述の図12のように各フィルタ部31、32を配置すると共に、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向において、各フィルタ部31、32を圧電基板11の中央寄りの位置に配置した例を示している。図14では、弾性波の伝搬方向から見た時に、第1のフィルタ部31の奥側の領域1と第2のフィルタ部32の手前側の領域1とは一部が互いに重なり合っている。
【0034】
即ち、以上の図11〜図14の各例では、フィルタ部31、32は、弾性波の伝搬方向に沿って一列に並ばないように配置されていると言える。この時、図11〜図14において、既述のように、各フィルタ部31、32は信号ポート20と接地ポート23との間において互いに並列に接続されている。
【0035】
また、以上の各例では、IDT電極12、13について2つのフィルタ部31、32に区画する例を示したが、3つ以上に区画しても良い。図15は、IDT電極12、13について、手前側から奥側に向かって3つのフィルタ部31、32、33に各々区画した例を示している。図15では、各フィルタ部31、32、33の周期単位λは、夫々λ1〜λ2、λ3〜λ4及びλ5〜λ6(λ1<λ2=λ3<λ4=λ5<λ6)となっている。また、図15では各フィルタ部31〜33は信号ポート20と接地ポート23との間に互いに並列に接続されており、具体的にはフィルタ部31、32間の浮き電極10及びバスバー14bが共通の信号ポート20に各々接続され、バスバー14a及びフィルタ部32、33間の浮き電極10が接地ポート23に各々接続されている。
【0036】
このように3つのフィルタ部31〜33を配置する場合には、高域(高周波数)側のフィルタ部31については、当該フィルタ部31の帯域よりも高域側の減衰量が良好となるように重み付けされ、低域(低周波数)側のフィルタ部33については、当該フィルタ部33の帯域よりも低域側の減衰量が良好となるように重み付けされる。そして、中央のフィルタ部32については、例えば当該フィルタ部32の帯域において平坦性が良好になるように重み付けされる。このように3つ以上のフィルタ部31〜33を配置する場合であっても、既述の図11〜図14のように各々のフィルタ部31〜33を配置しても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 浮き電極
11 圧電基板
12 入力側IDT電極
13 出力側IDT電極
20 信号ポート
21 入力ポート
22 出力ポート
23 接地ポート
31 第1のフィルタ部
32 第2のフィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法からなる周期単位が一方側のバスバーから他方側のバスバーに向かって広がるように形成されたテーパー型IDT電極を入力側電極及び出力側電極として弾性波の伝搬方向に沿って夫々配置した第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部と、
前記第1のフィルタ部の前記入力側電極のいずれかのバスバー及び前記第2のフィルタ部の前記入力側電極のいずれかのバスバーに共通に接続された入力ポートと、
前記第1のフィルタ部の前記出力側電極のいずれかのバスバー及び前記第2のフィルタ部の前記出力側電極のいずれかのバスバーに共通に接続された出力ポートと、を備え、
前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバー側の周期単位と、前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバー側の周期単位とは同じ長さに設定され、
入力側電極及び出力側電極における各々の一方側のバスバーと他方側のバスバーとの間の領域を伝搬領域と呼ぶと、前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の伝搬領域と前記第2のフィルタ部の伝搬領域とが弾性波の伝搬方向において一列に並ばないように、前記第2のフィルタ部から見た時に、弾性波の伝搬方向に対して直交する方向に離間した位置、または弾性波の伝搬方向に沿って離間すると共に前記直交する方向に離れた位置に形成されていることを特徴とする弾性波フィルタ。
【請求項2】
前記第1のフィルタ部と前記第2のフィルタ部とは、弾性波の伝搬方向に対して互いに直交する方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性波フィルタ。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバーに前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバーが対向するように、これら第1のフィルタ部及び第2のフィルタ部が各々配置され、
前記第1のフィルタ部における前記他方側のバスバーと、前記第2のフィルタ部における前記一方側のバスバーとは浮き電極として共通化されていることを特徴とする請求項2に記載の弾性波フィルタ。
【請求項4】
前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の通過周波数帯域外において低周波数側よりも高周波数側の減衰量が大きくなるように前記電極指の配列パターンが設定され、
前記第2のフィルタ部は、当該第2のフィルタ部の通過周波数帯域外において高周波数側よりも低周波数域側の減衰量が大きくなるように前記電極指の配列パターンが設定されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。
【請求項5】
前記第1のフィルタ部及び前記第2のフィルタ部は、前記電極指の長さ方向に沿って前記一方側のバスバー及び前記他方側のバスバーのいずれか一方から伸びる反射電極を各々備え、
前記第1のフィルタ部は、当該第1のフィルタ部の通過周波数帯域外において低周波数側よりも高周波数側の減衰量が大きくなるように前記反射電極の配列パターンが設定され、
前記第2のフィルタ部は、当該第2のフィルタ部の通過周波数帯域外において高周波数側よりも低周波数側の減衰量が大きくなるように前記反射電極の配列パターンが設定されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載の弾性波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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