説明

弾性波分波器及び電子装置

【課題】設計変更が容易な弾性波分波器を提供する。
【解決手段】弾性波分波器1は、チップ部品20と、プリント配線基板40とを備えている。チップ部品20は、弾性波フィルタチップ21と、セラミック基板22とを有する。弾性波フィルタチップ21には、送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14の少なくとも一部が設けられている。チップ部品20には、アンテナ端子10と、送信側信号端子11と、受信側信号端子12とが設けられている。プリント配線基板40は、第1及び第2の主面41a、41bを有する一つの樹脂層41と、第1の主面41aの上に設けられた第1の電極層42と、第2の主面41bの上に設けられた第2の電極層43と、第1の電極層42と第2の電極層43とを接続する接続電極とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波分波器及びそれを備える電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナから送受信される送信信号及び受信信号などのような複数の信号を分波する分波器として、弾性表面波や、弾性境界波、バルク弾性波などの弾性波を利用した弾性波分波器が広く利用されるようになってきている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、そのような弾性波分波器の一例が記載されている。特許文献1に記載の弾性波分波器は、アンテナ端子に接続された送信フィルタチップと受信フィルタチップとを有する。送信フィルタチップと受信フィルタチップとは、複数のセラミック層を有するセラミック基板の上に実装されている。また、セラミック基板の上には、チップコイルインダクタも実装されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−115748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の弾性波分波器では、弾性波分波器が実装されるマザーボードの実装用電極の位置や大きさが異なると、セラミック基板の仕様を変更する必要がある。しかしながら、セラミック基板の仕様を変更すると、作製されるセラミック基板の性状が変化してしまうため、セラミック基板の作製条件や、弾性波分波器の実装条件等をすべて見直す必要が生じる。従って、設計変更が煩雑であるという問題がある。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みて成されたものであり、その目的は、設計変更が容易な弾性波分波器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る弾性波分波器は、アンテナ端子と、送信側信号端子と、受信側信号端子と、送信フィルタ部と、受信フィルタ部とを備えている。送信フィルタ部は、アンテナ端子と送信側信号端子との間に接続されている。受信フィルタ部は、アンテナ端子と受信側信号端子との間に接続されている。本発明に係る弾性波分波器は、チップ部品と、プリント配線基板とを備えている。チップ部品は、弾性波フィルタチップと、セラミック基板とを有する。弾性波フィルタチップには、送信フィルタ部及び受信フィルタ部の少なくとも一部が設けられている。セラミック基板には、弾性波フィルタチップが実装されている。チップ部品には、アンテナ端子と、送信側信号端子と、受信側信号端子とが設けられている。プリント配線基板は、第1及び第2の主面を有する。第1の主面上にチップ部品が実装されている。プリント配線基板は、第1及び第2の主面を有する一つの樹脂層と、第1の主面の上に設けられた第1の電極層と、第2の主面の上に設けられた第2の電極層と、第1の電極層と第2の電極層とを接続する接続電極とからなる。
【0008】
本発明に係る弾性波分波器のある特定の局面では、弾性波分波器は、送信フィルタ部及び受信フィルタ部の少なくとも一方とアンテナ端子との間の接続点とグラウンド電位との間に接続されているインダクタが設けられたインダクタチップをさらに備えている。インダクタチップは、プリント配線基板上に実装されていない。
【0009】
本発明に係る弾性波分波器の他の特定の局面では、送信フィルタ部及び受信フィルタ部の少なくとも一方はインダクタを有し、当該インダクタは、セラミック基板内に設けられている。
【0010】
本発明に係る弾性波分波器の別の特定の局面では、第2の電極層は、アンテナ端子に接続されているアンテナ端子電極と、送信側信号端子に接続されている送信側端子電極と、受信側信号端子に接続されている受信側端子電極とを含む。チップ部品におけるアンテナ端子、送信側信号端子及び受信側信号端子の相対的位置関係と、第2の主面におけるアンテナ端子電極、送信側端子電極及び受信側端子電極の相対的位置関係とが異なる。
【0011】
本発明に係る電子装置は、上記本発明に係る弾性波分波器と、弾性波分波器が実装されているマザーボードとを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設計変更が容易な弾性波分波器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における弾性波分波器の略図的回路図である。
【図2】第1の実施形態における電子装置の略図的側面図である。
【図3】第1の実施形態における第1のセラミック層の表面の略図的平面図である。
【図4】第1の実施形態における第2のセラミック層の表面の略図的透視平面図である。
【図5】第1の実施形態における第2のセラミック層の裏面の略図的透視平面図である。
【図6】第1の実施形態における弾性波分波器の略図的平面図である。
【図7】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。
【図8】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。
【図9】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図10】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。
【図11】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。
【図12】第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図13】比較例1におけるチップ部品の略図的側面図である。
【図14】比較例1における第1のセラミック層の表面の略図的平面図である。
【図15】比較例1における第2のセラミック層の表面の略図的透視平面図である。
【図16】比較例1における第2のセラミック層の裏面の略図的透視平面図である。
【図17】実施例1及び比較例1のそれぞれにおける送信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図18】実施例1及び比較例1のそれぞれにおける受信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図19】実施例1及び比較例1のそれぞれにおける送信側信号端子と受信側信号端子との間のアイソレーション特性を表すグラフである。
【図20】比較例2におけるチップ部品の略図的側面図である。
【図21】比較例2における弾性波分波器の略図的平面図である。
【図22】比較例2における樹脂層47aの略図的平面図である。
【図23】比較例2における電極層48aの略図的透視平面図である。
【図24】比較例2におけるレジストコート層44の略図的平面図である。
【図25】比較例2における電極層48bの略図的透視平面図である。
【図26】比較例2における電極層48cの略図的透視平面図である。
【図27】比較例2における樹脂層47cの裏面の略図的透視平面図である。
【図28】比較例2における電極層48dの略図的透視平面図である。
【図29】比較例2におけるレジストコート層45の略図的透視平面図である。
【図30】実施例1及び比較例2のそれぞれにおける送信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図31】実施例1及び比較例2のそれぞれにおける受信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図32】実施例1及び比較例2のそれぞれにおける送信側信号端子と受信側信号端子との間のアイソレーション特性を表すグラフである。
【図33】第2の実施形態におけるチップ部品の略図的側面図である。
【図34】第2の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。
【図35】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。
【図36】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。
【図37】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図38】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。
【図39】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。
【図40】第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図41】実施例1及び実施例2のそれぞれにおける送信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図42】実施例1及び実施例2のそれぞれにおける受信フィルタ部の通過特性を表すグラフである。
【図43】実施例1及び実施例2のそれぞれにおける送信側信号端子と受信側信号端子との間のアイソレーション特性を表すグラフである。
【図44】第3の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。
【図45】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。
【図46】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。
【図47】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図48】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。
【図49】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。
【図50】第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図51】第4の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。
【図52】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。
【図53】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。
【図54】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【図55】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。
【図56】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。
【図57】第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、以下の実施形態は、単なる一例である。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における弾性波分波器の略図的回路図である。まず、図1を参照しながら本実施形態における弾性波分波器1の回路構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、弾性波分波器1は、アンテナに接続されるアンテナ端子10と、送信側信号端子11と、受信側信号端子12とを備えている。アンテナ端子10と送信側信号端子11との間には送信フィルタ部13が接続されている。一方、アンテナ端子10と受信側信号端子12との間には受信フィルタ部14が接続されている。送信フィルタ部13と受信フィルタ部14との間の接続点と、アンテナ端子10との間の接続点と、グラウンド電位との間には、インダクタL1が接続されている。
【0017】
送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14のそれぞれは、弾性表面波、弾性境界波、バルク弾性波などの弾性波を利用した弾性波フィルタ部である。具体的には、送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14のそれぞれは、ラダー型弾性波フィルタ部により構成されている。
【0018】
より具体的には、送信フィルタ部13は、アンテナ端子10と送信側信号端子11とを接続している直列腕13aと、直列腕13aとグラウンド電位とに接続されている複数の並列腕13b〜13eとを備えている。直列腕13aには、複数の直列腕共振子S1〜S5が設けられている。直列腕13aにおいて、直列腕共振子S1〜S5は、直列に接続されている。一方、並列腕13b〜13eのそれぞれには、並列腕共振子P1〜P4が設けられている。並列腕13bと並列腕13cとの接続点とグラウンド電位との間には、インダクタL2が接続されている。並列腕13dとグラウンド電位との間には、インダクタL3が接続されている。並列腕13eとグラウンド電位との間には、インダクタL4が接続されている。直列腕13aと送信側信号端子11との間には、インダクタL6が接続されている。
【0019】
なお、本実施形態においては、インダクタL1を構成しているインダクタチップ30は、図2に示すように、プリント配線基板40上に実装されておらず、マザーボード3上に実装されている。
【0020】
受信フィルタ部14は、アンテナ端子10と受信側信号端子12とを接続している直列腕14aと、直列腕14aとグラウンド電位とに接続されている複数の並列腕14b〜14fとを備えている。直列腕14aには、複数の直列腕共振子S11〜S15が設けられている。直列腕14aにおいて、直列腕共振子S11〜S15は、直列に接続されている。一方、並列腕14b〜14fのそれぞれには、並列腕共振子P11〜P15が設けられている。並列腕14dとグラウンド電位との間には、インダクタL5が接続されている。
【0021】
図2は、第1の実施形態における電子装置の略図的断面図である。図3は、第1の実施形態における第1のセラミック層の表面の略図的平面図である。図4は、第1の実施形態における第2のセラミック層の表面の略図的透視平面図である。図5は、第1の実施形態における第2のセラミック層の裏面の略図的透視平面図である。図6は、第1の実施形態における弾性波分波器の略図的平面図である。図7は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。図8は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。図9は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。図10は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。図11は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。図12は、第1の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。次に、図2〜図12を参照しながら上記弾性波分波器1を備える電子装置2の具体的構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、電子装置2は、上記弾性波分波器1と、その弾性波分波器1が実装されたマザーボード3とを有する。弾性波分波器1は、チップ部品20と、チップ部品20が実装されたプリント配線基板40とを備えている。
【0023】
チップ部品20は、弾性波フィルタチップ21を有する。弾性波フィルタチップ21には、送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14の少なくとも一部が設けられている。具体的には、弾性波フィルタチップ21には、送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14のうち、インダクタL2〜L6を除く部分が設けられている。弾性波フィルタチップ21は、圧電基板と、圧電基板の上に形成されており、共振子を構成するIDT電極を含む電極とにより構成されている。
【0024】
弾性波フィルタチップ21は、セラミック基板22の上にフリップチップ実装されている。そして、弾性波フィルタチップ21は、樹脂25によって封止されている。本実施形態においては、セラミック基板22は、複数のセラミック層の積層体を有する。より具体的には、セラミック基板22は、第1及び第2のセラミック層22a、22bの積層体を有する。第1のセラミック層22aの表面の上には、電極層23aが設けられている。第1のセラミック層22aと第2のセラミック層22bとの間には、電極層23bが設けられている。第2のセラミック層22bの裏面の上には、電極層23cが設けられている。電極層23aと電極層23bとは、第1のセラミック層22aに形成されたビアホール電極24aにより接続されている。電極層23bと電極層23cとは、第2のセラミック層22bに形成されたビアホール電極24bにより接続されている。
【0025】
本実施形態では、電極層23a、23bによって、送信フィルタ部13及び受信フィルタ部14に設けられたインダクタL2〜L6が構成されている。具体的には、インダクタL2は、第1の電極層23aに含まれる電極23a1と、第2の電極層23bに含まれる電極23b1とにより構成されている。インダクタL3は、第1の電極層23aに含まれる電極23a2と、第2の電極層23bに含まれる電極23b2により構成されている。インダクタL4は、第1の電極層23aに含まれる電極23a3と、第2の電極層23bに含まれる電極23b3により構成されている。インダクタL5は、第1の電極層23aに含まれる電極23a4と、第2の電極層23bに含まれる電極23b4により構成されている。インダクタL6は、第1の電極層23aに含まれる電極23a5と、第2の電極層23bに含まれる電極23b5により構成されている。
【0026】
図5に示すように、電極層23cは、アンテナ端子10と、送信側信号端子11と、受信側信号端子12と、複数のグラウンド端子17により構成されている。
【0027】
次に、図6〜図12を参照しながら、本実施形態におけるプリント配線基板40の構成について説明する。プリント配線基板40は、ひとつの樹脂層41を備えている。この樹脂層41の内部には、樹脂層41の第1及び第2の主面41a、41bと平行な電極層は設けられていない。
【0028】
樹脂層41の第1の主面41aの上には、第1の電極層42が設けられている。第1の主面41aの上には、レジストコート層44が形成されている。このレジストコート層44により、第1の電極層42の一部が覆われている。一方、樹脂層41の第2の主面41bの上には、第2の電極層43が設けられている。第2の主面41bの上には、レジストコート層45が形成されている。このレジストコート層45により、第2の電極層43の一部が覆われている。なお、図2においては、レジストコート層44,45の描画を省略している。
【0029】
第1の電極層42は、アンテナ端子10に接続されているアンテナ側電極42aと、送信側信号端子11に接続されている送信側電極42bと、受信側信号端子12に接続されている受信側電極42cと、複数のグラウンド端子17に接続されているグラウンド電極42dとを有する。
【0030】
第2の電極層43は、アンテナ端子電極43aと、送信側端子電極43bと、受信側端子電極43cと、グラウンド端子電極43dとを有する。アンテナ端子電極43aは、樹脂層41に形成されたビアホール電極46aにより、アンテナ側電極42aに接続されている。送信側端子電極43bは、樹脂層41に形成されたビアホール電極46bにより、送信側電極42bに接続されている。受信側端子電極43cは、樹脂層41に形成されたビアホール電極46cにより、受信側電極42cに接続されている。グラウンド端子電極43dは、樹脂層41に形成された複数のビアホール電極46dにより、グラウンド電極42dに接続されている。すなわち、ビアホール電極46a〜46dは、第1の電極層42と第2の電極層43とを接続している接続電極を構成している。
【0031】
本実施形態では、アンテナ端子電極43aと、送信側端子電極43bと、受信側端子電極43cと、グラウンド端子電極43dとの相対的位置関係は、アンテナ側電極42aと、送信側電極42bと、受信側電極42cと、グラウンド電極42dとの相対的位置関係と対応している。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では、プリント配線基板40が設けられている。このため、マザーボード3の実装用電極の位置や大きさが変化しても、セラミック基板22の仕様を変更する必要は必ずしもなく、プリント配線基板40の変更により、容易に設計変更を行うことができる。
【0033】
このような設計変更の容易性の観点からは、プリント配線基板を複数の樹脂層を有するものとしてもよい。このようにすることによって、例えば、プリント配線基板内の配線によりインダクタを構成することも可能となる。しかしながら、プリント配線基板が複数の樹脂層を有する場合は、プリント配線基板の厚みが厚くなる。従って、弾性波分波器の高さが高くなる。
【0034】
それに対して本実施形態では、プリント配線基板40は、ひとつの樹脂層41を備えている。従って、プリント配線基板の厚みが厚くならない。すなわち、本実施形態によれば、設計変更の容易性と、低背化との両立を図ることができる。
【0035】
以下、この効果について、具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、実施例及び比較例の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0036】
(実施例1)
上記第1の実施形態に係る弾性波分波器1と実質的に同様の構成を有する弾性波分波器を下記の設計パラメータで作製し、送信フィルタ部の通過特性と、受信フィルタ部の通過特性と、送信側信号端子と受信側信号端子との間のアイソレーション特性とを測定した。結果を図17〜図19に示す。
【0037】
弾性波フィルタチップ:UMTS−Band1(Tx:1920〜1980MHz、Rx:2110〜2170MHz)用のデュプレクサフィルタチップ
インダクタL1のインダクタンス値:約2.7nH
インダクタL2のインダクタンス値:約1.0nH
インダクタL3のインダクタンス値:約1.5nH
インダクタL4のインダクタンス値:約3.0nH
インダクタL5のインダクタンス値:約1.0nH
インダクタL6のインダクタンス値:約2.0nH
【0038】
(比較例1)
図13は、比較例1におけるチップ部品の略図的側面図である。図14は、比較例1における第1のセラミック層の表面の平面図である。図15は、比較例1における第2のセラミック層の表面の透視平面図である。図16は、比較例1における第2のセラミック層の裏面の透視平面図である。
【0039】
本比較例1では、プリント配線基板を設けず、かつセラミック基板を図13〜図16に示す構成とし、かつ、セラミック基板の大きさを実施例1のプリント配線基板の大きさに変更したこと以外は、上記実施例1と実質的に同様の構成を有する弾性波分波器を作製し、送信フィルタ部の通過特性と、受信フィルタ部の通過特性と、送信側信号端子から受信側信号端子へのアイソレーション特性とを測定した。結果を図17〜図19に示す。
【0040】
図17〜図19に示す結果から、Tx通過帯域(1920〜1980MHz)における挿入損失と、Rx通過帯域(2110〜2170MHz)における挿入損失と、Tx周波数帯及びRx通過帯域のそれぞれにおけるアイソレーションとは、それぞれ、実施例1と比較例1とで同等であることが分かる。これらの結果から、ひとつの樹脂層を有するプリント配線基板を設けることにより、フィルタ特性は実質的に劣化しないことが分かる。
【0041】
(比較例2)
図20は、比較例2におけるチップ部品の略図的側面図である。図21は、比較例2における弾性波分波器の略図的平面図である。図22は、比較例2における樹脂層47aの略図的平面図である。図23は、比較例2における電極層48aの略図的透視平面図である。図24は、比較例2におけるレジストコート層44の略図的平面図である。図25は、比較例2における電極層48bの略図的透視平面図である。図26は、比較例2における電極層48cの略図的透視平面図である。図27は、比較例2における樹脂層47cの裏面の略図的透視平面図である。図28は、比較例2における電極層48dの略図的透視平面図である。図29は、比較例2におけるレジストコート層45の略図的透視平面図である。
【0042】
本比較例2では、プリント配線基板40を、図20〜図29に示す、3つの樹脂層47a〜47cと、電極層48a〜48dとを有するものとしたこと以外は、上記実施例1と実質的に同様の構成を有する弾性波分波器を作製し、送信フィルタ部の通過特性と、受信フィルタ部の通過特性と、送信側信号端子から受信側信号端子へのアイソレーション特性とを測定した。結果を、実施例1の結果と合わせて図30〜図32に示す。
【0043】
具体的には、図22に示す電極層48aは、実施例1の電極層42と実質的に同様である。電極48a1が電極42aに対応する。電極48a2が電極42bに対応する。電極48a3が電極42cに対応する。電極48a4が電極42dに対応する。また、電極層48dは、実施例1の電極層43dと実質的に同様である。電極48d1が電極43aに対応する。電極48d2が電極43bに対応する。電極48d3が電極43cに対応する。電極48d4が電極43dに対応する。
【0044】
本実施形態では、実施例1のインダクタチップ30が設けられていない代わりに、電極層48bの電極48b1と、電極層48cの電極48c1とでインダクタL1が構成されている。
【0045】
図30〜図32に示す結果から、送信フィルタ部の通過特性と受信フィルタ部の通過特性とに関しては、実施例1と比較例2とで同等であることが分かる。一方、アイソレーション特性は、実施例1の方が比較例2よりも優れている。具体的には、Tx周波数帯(1920〜1980MHz)のアイソレーションが、比較例2では48.2dBであったのに対して、実施例1では、50.3dBであった。また、Rx周波数帯(2110〜2170MHz)のアイソレーションが、比較例2では48.2dBであったのに対して、実施例1では、49.0dBであった。このような結果が得られたのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、比較例2では、プリント配線基板40内の電極48b1,48c1によりインダクタL1が構成されている。このコイルパターンとなる電極48b1,48c1において発生する電磁気の影響により、アイソレーション特性が劣化しているものと考えられる。それに対して、実施例1では、インダクタL1を構成するインダクタチップ30がプリント配線基板40に実装されておらず、マザーボード3に実装されている。このため、インダクタチップ30において発生する電磁界の影響によるアイソレーション特性の劣化が生じにくいため、優れたアイソレーション特性が得られたものと考えられる。
【0046】
また、比較例2では、インダクタL1を構成する電極をプリント配線基板40内に設けるべく、プリント配線基板40を多層にしたため、実施例1よりも比較例2の方が厚みが大きくなるというデメリットも発生した。
【0047】
(第2の実施形態)
図33は、第2の実施形態におけるチップ部品の略図的側面図である。図34は、第2の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。図35は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。図36は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。図37は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。図38は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。図39は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。図40は、第2の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【0048】
上記第1の実施形態では、インダクタチップ30をプリント配線基板40の上に実装せずにマザーボード3の上に実装した例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。例えば、図33に示すように、インダクタチップ30は、プリント配線基板40上に実装されていてもよい。
【0049】
(実施例2)
上記第2の実施形態に係る弾性波分波器と実質的に同様の構成を有する弾性波分波器を作製し、送信フィルタ部の通過特性と、受信フィルタ部の通過特性と、送信側信号端子から受信側信号端子へのアイソレーション特性とを測定した。結果を、実施例1の結果と共に図41〜図43に示す。
【0050】
図41〜図43に示す結果から、送信フィルタ部の通過特性と受信フィルタ部の通過特性とに関しては、実施例1と実施例2とで同等であることが分かる。一方、アイソレーション特性は、実施例1の方が実施例2よりも優れている。具体的には、Tx周波数帯(1920〜1980MHz)のアイソレーションが、実施例2では47.0dBであったのに対して、実施例1では、50.3dBであった。また、Rx周波数帯(2110〜2170MHz)のアイソレーションが、比較例2では47.1dBであったのに対して、実施例1では、49.0dBであった。この結果から、インダクタL1を構成しているインダクタチップ30をプリント配線基板40上に実装せず、マザーボード3上に実装することにより、インダクタチップ30において発生する電磁界の影響によるアイソレーション特性の劣化をより効果的に抑制できることが分かる。
【0051】
(第3及び第4の実施形態)
図44は、第3の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。図45は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。図46は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。図47は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。図48は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。図49は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。図50は、第3の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【0052】
図51は、第4の実施形態におけるチップ部品の略図的平面図である。図52は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面の略図的平面図である。図53は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられた第1の電極層の略図的透視平面図である。図54は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第1の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。図55は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面の略図的透視平面図である。図56は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられた第2の電極層の略図的透視平面図である。図57は、第4の実施形態におけるプリント配線基板の第2の主面上に設けられたレジストコート層の略図的平面図である。
【0053】
上記第1の実施形態では、アンテナ端子10、送信側信号端子11及び受信側信号端子12の相対的位置関係と、アンテナ端子電極43a、送信側端子電極43b及び受信側端子電極43cの相対的位置関係とが実質的に同様である例について説明した。但し、本発明は、この構成に限定されない。
【0054】
例えば、第3の実施形態では、アンテナ端子10に対する送信側信号端子11及び受信側信号端子12の距離と、アンテナ端子電極43aに対する送信側端子電極43b及び受信側端子電極43cの距離とが互いに異ならされている。
【0055】
第4の実施形態では、アンテナ端子10に対する送信側信号端子11と受信側信号端子12との相対的位置関係と、アンテナ端子電極43aに対する送信側端子電極43bと受信側端子電極43cとの相対的位置関係とが逆となっている。すなわち、図53に示すように、送信側信号端子11に接続されている送信側電極42bは、受信側電極42cに向かって延長され、ビアホール電極46bを介して受信側電極42cの下方に位置する送信側端子電極43bに接続されている。また、受信側信号端子12に接続されている受信側電極42cは、送信側電極42bに向かって延長され、ビアホール電極46cを介して送信側電極42bの下方に位置する受信側端子電極43cに接続されている。さらに、送信側電極42bと受信側電極42cとの間には、グラウンド電極42dが設けられている。このグラウンド電極42dがシールド電極として機能するため、送信側電極42bと受信側電極42cとの間のアイソレーション特性を悪化させることがない。
【0056】
このように、プリント配線基板40を設けることにより、アンテナ端子10、送信側信号端子11及び受信側信号端子12の相対的位置関係と、アンテナ端子電極43a、送信側端子電極43b及び受信側端子電極43cの相対的位置関係との関係を自由に調整することができる。
【符号の説明】
【0057】
1…弾性波分波器
2…電子装置
3…マザーボード
10…アンテナ端子
11…送信側信号端子
12…受信側信号端子
13…送信フィルタ部
13a…直列腕
13b〜13e…並列腕
14…受信フィルタ部
14a…直列腕
14b〜14f…並列腕
17…グラウンド端子
20…チップ部品
21…弾性波フィルタチップ
22…セラミック基板
22a…第1のセラミック層
22b…第2のセラミック層
23a〜23c…電極層
24a、24b…ビアホール電極
30…インダクタチップ
40…プリント配線基板
41…樹脂層
41a…第1の主面
41b…第2の主面
42…第1の電極層
42a…アンテナ側電極
42b…送信側電極
42c…受信側電極
42d…グラウンド電極
43…第2の電極層
43a…アンテナ端子電極
43b…送信側端子電極
43c…受信側端子電極
43d…グラウンド端子電極
44,45…レジストコート層
46a〜46d…ビアホール電極
L1〜L6…インダクタ
P1〜P4、P11〜P15…並列腕共振子
S1〜S5、S11〜S15…直列腕共振子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ端子と、
送信側信号端子と、
受信側信号端子と、
前記アンテナ端子と前記送信側信号端子との間に接続されている送信フィルタ部と、
前記アンテナ端子と前記受信側信号端子との間に接続されている受信フィルタ部と、
を備える弾性波分波器であって、
前記送信フィルタ部及び前記受信フィルタ部の少なくとも一部とが設けられている弾性波フィルタチップと、前記弾性波フィルタチップが実装されているセラミック基板とを有し、前記アンテナ端子と、前記送信側信号端子と、前記受信側信号端子とが設けられたチップ部品と、
第1及び第2の主面を有し、前記第1の主面上に前記チップ部品が実装されているプリント配線基板と、
を備え、
前記プリント配線基板は、前記第1及び第2の主面を有する一つの樹脂層と、前記第1の主面の上に設けられた第1の電極層と、前記第2の主面の上に設けられた第2の電極層と、前記第1の電極層と前記第2の電極層とを接続する接続電極とからなる、弾性波分波器。
【請求項2】
前記弾性波分波器は、前記送信フィルタ部及び前記受信フィルタ部の少なくとも一方と前記アンテナ端子との間の接続点とグラウンド電位との間に接続されているインダクタが設けられたインダクタチップをさらに備え、
前記インダクタチップは、前記プリント配線基板上に実装されていない、請求項1に記載の弾性波分波器。
【請求項3】
前記送信フィルタ部及び前記受信フィルタ部の少なくとも一方はインダクタを有し、当該インダクタは、前記セラミック基板内に設けられている、請求項1または2に記載の弾性波分波器。
【請求項4】
第2の電極層は、前記アンテナ端子に接続されているアンテナ端子電極と、前記送信側信号端子に接続されている送信側端子電極と、前記受信側信号端子に接続されている受信側端子電極とを含み、
前記チップ部品における前記アンテナ端子、前記送信側信号端子及び前記受信側信号端子の相対的位置関係と、前記第2の主面における前記アンテナ端子電極、前記送信側端子電極及び前記受信側端子電極の相対的位置関係とが異なる、請求項1または2に記載の弾性波分波器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の弾性波分波器と、
前記弾性波分波器が実装されているマザーボードとを備える、電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【公開番号】特開2012−175159(P2012−175159A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32095(P2011−32095)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】