説明

弾性波装置及びその製造方法

【課題】電極形成に際してマスクとなるレジストパターンを高精度に形成することを可能とする電極構造を有する弾性波装置を提供する。
【解決手段】圧電基板2上にバスバー3a,3bを有するIDT電極である第1の電極3と、第1の電極3に弾性波伝搬方向において並設された第2の電極6とを有し、第1の電極3のバスバー3a,3bと、第2の電極6のバスバー6a,6bとがギャップを介して隣り合っている部分のうち少なくとも一つの部分において、ギャップ内またはギャップよりも弾性波伝搬方向と直交する方向において外側に、相手側のバスバー側に向かって突出する突出部11が設けられている、弾性波装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波装置や弾性境界波装置のような弾性波装置及びその製造方法に関し、より詳細には、弾性波伝搬方向においてIDT電極と、他のIDT電極または反射器のバスバー同士が隣接している、弾性波装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、帯域フィルターや共振子として、弾性波装置が広く用いられている。図11は、特許文献1に記載の弾性表面波装置1001を示す。弾性表面波装置1001では、ケース基板1002と、キャップ1003とで囲まれた空間内に弾性表面波素子1004が収納されている。弾性表面波素子1004は、圧電基板1005を有する。圧電基板1005の片面に、IDT電極1006及び電極パット1007などが形成されている。
【0003】
上記弾性表面波素子1004の製造に際しては、圧電基板1005の片面にレジスト層を積層する。このレジスト層をドライエッチングによりパターニングし、レジストパターンを形成する。パターニングに際しては、IDT電極1006を含む電極形成部分が開口部となるようにレジスト層をエッチングする。しかる後、金属膜を付与し、レジストパターンを除去する。このようにして、IDT電極1006を含む電極構造を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−91870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波化に伴い、弾性波装置のIDT電極や反射器などの電極構造では微細化が進んでいる。他方、上記製造方法において、ドライエッチングによりレジストパターンを形成したあとに、電極形成部分にレジスト残渣が生じがちであった。レジスト残渣が存在すると、IDT電極1006を含む電極構造を高精度に形成することが困難となる。そのため、従来、上記レジスト残渣を洗浄により除去していた。
【0006】
しかしながら、洗浄によりレジストパターンを構成しているレジスト材料が電極形成部分に流れ込んだり、また、レジストパターン形状が変化して設計中心からずれてしまうという問題があった。従って、電極構造を高精度に形成することが困難であった。
【0007】
本発明の目的は、電極形成に際してマスクとなるレジストパターンを高精度に形成することを可能とするように電極構造が構成されており、従って、電極構造を高精度に形成することを可能とする弾性波装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る弾性波装置は、圧電基板と、前記圧電基板上に形成されており、一対のバスバーと、各バスバーに接続された複数本の電極指とを有するIDT電極である第1の電極と、前記圧電基板上において、弾性波伝搬方向において前記第1の電極に並設されており、かつ一対のバスバーを有する第2の電極と、前記第1,第2の電極のいずれかに連ねられた配線電極とを備える。本発明においては、第1の電極のバスバーと、第2の電極のバスバーとが弾性波伝搬方向においてギャップを介して隣り合っている複数の部分うちの少なくとも一つの部分において、ギャップ内またはギャップよりも弾性波伝搬方向と直交する方向において外側に相手方のバスバー側に向かって突出している突出部が少なくとも一方のバスバーまたは該バスバーに連ねられている配線電極に設けられている。
【0009】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、バスバー同士が隣り合っているギャップの弾性波伝搬方向と直交する方向の一方側の端部から他方側の端部までの道のりが、前記バスバーの弾性波伝搬方向と直交する方向の寸法をバスバーの幅としたときに、隣り合っているバスバーの幅のうち小さい方の幅よりも長くなるように、隣り合っているバスバーの少なくとも一方にギャップに向かって突出するように前記突出部が設けられている。
【0010】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、前記隣り合っているバスバーの一方に突出部が設けられており、隣り合っているバスバーの他方に該突出部が入り込んでおり、前記ギャップに向かって開いた凹部が形成されている。この場合には、隣り合っているバスバーの幅のうち小さい方の幅よりも上記道のりを確実に長くすることができる。そのため、レジストパターン形成材の洗浄に際してのレジスト材のIDT電極の電極指等への流れ出しをより効果的に抑制することができる。
【0011】
本発明に係る弾性波装置の他の特定の局面では、上記突出部が複数設けられている。その場合には、上記道のりをより一層長くすることができる。
【0012】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記バスバー同士が隣り合っている全ての部分において、前記ギャップの道のりが、隣り合っているバスバーの幅のうち小さい方の幅よりも長くされている。この場合には、バスバー同士が隣り合っている全ての部分において、レジスト材料の流れ出しを抑制することができる。
【0013】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記突出部の平面形状が、前記ギャップに向かって延びる長手方向を有する矩形である。この場合には、突出部を正確な形状に容易に形成することができる。加えて、突出部の先端のコーナー部分が丸みを帯びていないため、レジストパターンの流れ出しをより効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明に係る弾性波装置のさらに別の特定の局面では、前記突出部の長さが、前記バスバーの小さい方の幅よりも長い。この場合には、上記道のりをより一層長くすることができる。
【0015】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、前記圧電基板が、前記圧電基板上に設けられた凹部を有し、前記第1,第2の電極が、前記凹部に充填された金属からなる。この場合には、レジストパターンの凹部内への流れ込みが生じ易い構造であっても、凹部へのレジストパターンの流れ込みを効果的に抑制することができる。従って、圧電基板の凹部に金属が充填されて形成される電極構造の精度を効果的に高めることができる。
【0016】
本発明に係る弾性波装置の製造方法は、本発明の弾性波装置を提供するものである。本発明の製造方法は、圧電基板を用意する工程と、圧電基板上に一対のバスバーと、各バスバーに接続された複数本の電極指とを有する第1の電極と、弾性波伝搬方向において前記第1の電極に並設されており、かつ一対のバスバーを有する第2の電極とを形成する工程とを備える。本発明においては、上記第1,第2の電極を形成する工程が、圧電基板上に前記第1,第2の電極が形成されない領域にレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターン形成後に金属膜を圧電基板上に形成する工程と、前記レジストパターンをレジストパターン上に付与されている前記金属膜とともに除去し、前記第1,第2の電極を形成する工程とを有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る弾性波装置では、上記突出部が少なくとも一方のバスバーに設けられているため、レジストパターンの洗浄に際してのレジストパターンの第1の電極及び第2の電極側への流れ込みを効果的に抑制することができる。従って、電極構造の微細化を図った場合においても、弾性波装置の電極精度を効果的に高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【図2】(a)は、図1の要部を拡大して示す模式的平面図であり、(b)は、(a)に示した部分の電極形成前のレジストパターンの状態を示す模式的平面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の第1の実施形態の弾性波装置の製造方法を説明するための各模式的正面断面図である。
【図4】比較例の弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【図5】比較例の弾性波装置の問題点を説明するための模式的平面図である。
【図6】第2の比較例における問題点を説明するための電極構造を示す模式的平面図である。
【図7】図6に示したD部の拡大模式的平面図である。
【図8】図6に示したバスバーの幅Wが小さい場合のレジストパターンの流れ込み状態を説明するための模式的平面図である。
【図9】図6に示したバスバーの幅Wが大きい場合のレジストパターンの流れ込み状態を説明するための模式的平面図である。
【図10】(a)〜(c)は、第1の実施形態の変形例に係る弾性波装置の各突出部の形状を説明するための略図的平面図である。
【図11】従来の弾性波装置の一例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる弾性波装置の電極構造を示す模式的平面図である。弾性波装置1は、圧電基板2を有する。圧電基板2上に図1に示す電極構造が形成されている。なお、弾性波装置1は、圧電基板2上に図示の電極構造を形成した弾性表面波装置であってもよく、さらに誘電体層を積層してなる弾性境界波装置であってもよい。
【0021】
圧電基板2は、LiNbOまたはLiTaOなどの圧電単結晶からなる。もっとも、圧電基板2は、圧電セラミックスにより形成されていてもよい。
【0022】
圧電基板2上に、IDT電極3〜5及び反射器6,7が形成されている。IDT電極3は、第1のバスバー3aと、第2のバスバー3bとを有する。第1のバスバー3aと第2のバスバー3bとは、弾性波伝搬方向と直交する方向において対向している。第1のバスバー3aに複数本の電極指が接続されている。第2のバスバー3bにも複数本の電極指が接続されている。第1のバスバー3aに接続された複数本の電極指と、第2のバスバー3bに接続された複数本の電極指が互いに間挿し合っている。
【0023】
第1,第2のバスバー3a,3bは、配線電極8a,8bにそれぞれ電気的に接続されている。IDT電極4,5も、IDT電極3と同様の構造を有する。もっとも、IDT電極4では、第1のバスバー4aに、配線電極9aが連ねられている。ここで、バスバー4aの弾性波伝搬方向に沿う寸法と、配線電極9aの弾性波伝搬方向に沿う寸法とが同一とされている。従って、第1のバスバー4aと配線電極9aの境界が分かりにくいが、この境界を破線A1で示す。
【0024】
第2のバスバー4bも同様に配線電極9bに連ねられている。第2のバスバー4bと配線電極9bの境界も破線A2で示すこととする。
【0025】
IDT電極5は、第1のバスバー5aと、第2のバスバー5bとを有する。第1,第2のバスバー5a,5bには、それぞれ、配線電極10a,10bが接続されている。
【0026】
反射器6は、複数本の電極指の両端を、第1,第2のバスバー6a,6bで短絡した構造を有する。第2のバスバー6bは、前述した第2のバスバー3bと連ねられている。両者の境界を破線A3で示す。第2のバスバー6bは、配線電極8bに連ねられている。両者の境界を破線A4で示す。
【0027】
同様に、反射器7は、第1のバスバー7a及び第2のバスバー7bを有する。第2のバスバー7bは、第2のバスバー5bに連ねられている。両者の境界を破線A5で示す。同様に、第2のバスバー7bは、配線電極10bに連ねられている。両者の境界を破線A6で示す。
【0028】
本実施形態の弾性波装置1では、圧電基板2の上面に複数本の溝を形成し、該溝に金属材料を充填することにより、IDT電極3〜5及び反射器6,7の電極指部分が形成されている。
【0029】
弾性波装置1は、3個のIDT電極3〜5を有する3IDT電極型の縦結合共振子型弾性波フィルタである。
【0030】
本実施形態の弾性波装置1の特徴は、バスバー間のギャップにおいて、突出部11が設けられていることにある。これを、IDT電極3の第1のバスバー3aと、反射器6のバスバー6aとが隣り合っている部分を代表して説明する。図1の一点鎖線Bで示す部分を図2に拡大して示す。
【0031】
図2(a)に示すように、IDT電極3の第1のバスバー3aと、反射器6の第1のバスバー6aとが弾性波伝搬方向においてギャップGを隔てて隣り合っている。ここでは、IDT電極3が本発明における第1の電極に相当する。反射器6が第2の電極に相当する。ギャップGにおいて、バスバー3aに突出部11が設けられている。突出部11はギャップGに向かって、すなわち相手方のバスバー6aに向かって突出している。突出部11は、ギャップGの矢印で示す道のりLを長くするために設けられている。すなわち、突出部11が設けられているため、ギャップGの道のりLは、バスバー6a,3aの幅Wよりも長くされている。
【0032】
また、本実施形態では、第2の電極としての反射器6側のバスバー6aに、ギャップGに臨む凹部12が形成されている。凹部12内に突出部11が入り込むように凹部12が形成されている。それによって、道のりLをより一層大きくすることが可能とされている。もっとも、凹部12は必ずしも設けられずともよい。
【0033】
本実施形態では、第1のバスバー3aと第1のバスバー6aの幅Wは等しくされている。本発明においては、突出部11は、隣り合っているバスバーのうち幅Wが小さい方の幅WよりもギャップGの道のりLが長くなるように設けられている。そのため、後述する製造方法から明らかなように、ドライエッチング後の洗浄工程後のレジストパターンの形状を高精度に維持することができる。それによって、電極構造の微細化を進めた場合であっても、IDT電極3及び反射器6の電極精度を効果的に高めることができる。
【0034】
なお、図1の一点鎖線Bで囲まれた部分を代表して説明したが、他のバスバー同士が弾性波伝搬方向において隣り合っているギャップ部分においても同様に突出部11が設けられている。
【0035】
次に、図3を参照しつつ、本実施形態の弾性波装置1の製造方法を説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、圧電基板2上にレジスト層21を全面に形成する。レジスト層21としては、適宜のレジスト材料により形成することができる。
【0037】
次に、フォトリフグラフィ法を用いて、レジスト層21をパターニングし、図3(b)に示すように、レジストパターン21Aを形成する。レジストパターン21Aは、上記電極構造が設けられている領域以外を被覆するように形成されている。レジストパターン21Aの開口部に、後述する電極材料が付与されて電極構造が形成される。すなわち、レジストパターン21Aは電極形成用のマスクとして機能する。従って、レジストパターン21Aは、形成される電極構造と反転した正確な形状に維持される必要がある。
【0038】
次に、図3(c)に示すように、反応性イオンミリング等により電極指形成部分に複数本の溝2aを凹部として形成する。しかる後、リンスで洗浄する。この洗浄は、エッチング等により生じたレジスト残渣や溝2aを形成した際に生じた圧電基板2の材料屑等を除去するために行う。
【0039】
ところで、このリンスによる洗浄に際し、レジストパターン21Aの一部が流れ出し、レジストパターン21Aの形状が崩れるおそれがある。
【0040】
この問題を、図4及び図5の比較例を対照して説明する。図4は、比較例の弾性波装置の電極構造を示す。この比較例の弾性波装置1011では、ギャップGにおいて、前述した突出部11及び凹部12が設けられていないことを除いては、上記実施形態と同様とされている。従って、同一部分については同一の参照番号を付することとする。
【0041】
比較例の弾性波装置1011を上記実施形態の弾性波装置1と同様にして製造した場合、洗浄に際しレジスト材の一部が流れ出す。図5は、このレジスト材の流れ出し状態を示す模式的平面図である。図5において、圧電基板2の上面において斜線のハッチングを付して示している領域がレジストパターン21Aである。従って、斜線のハッチングを付したレジストパターン21A以外は、上記電極構造形成部分であり、電極材料を付与する前の状態が示されている。理解を容易とするために、IDT電極3〜5及び反射器6,7が形成されている部分は、Xを矩形の枠で囲んだ領域で示すこととする。
【0042】
比較例の弾性波装置1011の製造に際し上記洗浄を行うと、リンスの影響により、形成されているレジストパターン21Aの一部が流れ出すことがある。特に、矢印C1で示すように、IDT電極3と反射器6とが形成される領域間のギャップに沿ってレジスト材料が流れ込むおそれがある。特に、電極指形成部分が溝とされているため、矢印C1で示すように電極指構成部分の溝に、レジスト材料が流れ込むおそれがあった。同様に、矢印C2で示すように、IDT電極3,4の隣り合っているギャップにおいても、バスバー同士が隣接しているギャップを経由して、IDT電極電極指形成部分に至るようにレジスト材料が流れ出すことがあった。
【0043】
このようなレジスト材料の流れ込みが生じると、IDT電極同士が隣接している部分やIDT電極や反射器とが隣接している部分近傍の電極指を高精度に形成することができない。レジスト材の流れ出している部分が、バスバー上やバスバー同士が隣接しているギャップ内に留まっている場合には、最終的に得られた弾性波装置の特性にさほど影響を与えない。
【0044】
しかしながら、図5に示したように、IDT電極3〜5や反射器6,7の電極指構成部分にレジスト材が流れ込むと、電極指を高精度に形成することができなくなる。そのため、得られた弾性波装置の特性が著しく劣化することとなる。
【0045】
これに対して、第1の実施形態では、前述したように、図1及び図2に示した突出部11及び凹部12が形成されている。そのため、ギャップGの道のりLが長くされている。より具体的には、隣り合っているバスバーの幅Wのうち小さい方の幅Wよりも道のりLが長くなるように突出部11が形成されている。従って、上記溝2aを形成した後にリンスにより洗浄したとしても、レジスト材が電極指形成部分に流れ込んだり崩れたりし難い。これを図2(a)に加えて、図2(b)を参照してより具体的に説明する。
【0046】
図2(b)は、図2(a)に示した部分を示し、但し、電極形成前のレジストパターンの状態を示す模式的平面図である。図2(b)に示すように、レジストパターン21Aは、バスバー6a,バスバー3a及び配線電極8aが形成される領域外を被覆するように設けられている。加えて、図2(b)では略図的に示しているが、IDT電極3及び反射器6の電極指構成部分、すなわち直線で示す電極指構成部分の周囲にもレジストパターン21Aが至っている。いま、バスバー6a形成領域の外側のレジストパターン部分21A1がリンスにより流れ出そうとした場合、バスバー6a及びバスバー3a形成部分にレジスト材が至っても問題はない。しかしながら、この流れ出したレジスト材がバスバー6a,3aの形成領域を越えて特に電極指構成部分に流れ込むと電極指を高精度に形成することができない。しかしながら、上記ギャップGにおいて、レジスト材料が長い道のりで付着しているため、レジストパターン部分21A1の型崩れによる影響は、ギャップGの部分で止められることとなる。そのため、電極指の形成精度を高めることができる。
【0047】
次に、図3(d)に示すように、金属膜22を全面に蒸着法等により形成する。
【0048】
しかる後、レジストパターン21Aを除去することにより、電極22Aを形成する。この電極22Aが、前述したIDT電極3〜5の電極指構成部分に相当する。また、図3(e)では、電極指形成部分のみを図示しているが、残りの電極部分も同様にして同時に形成される。
【0049】
本発明は、前述したように、レジストパターンのIDT電極や反射器の電極指構成部分への流れ込みを抑制することに特徴を有する。もっとも、このような現象は、IDT電極の交叉幅の大きさによっても変化する。前述した図5では、IDT電極3〜5が形成されている部分を略図的に示し、レジストパターン21Aの流れ込み部分を矢印C1,C2で示した。
【0050】
ここで、交叉幅が大きくなると、矢印C1,C2で示すレジストパターン21Aの形が崩れた部分が大きく表れがちである。従って、交叉幅が大きい場合には、前述した第1の実施形態における突出部11及び凹部12を設けることによる効果が大きい。
【0051】
次に、バスバーの幅Wの大きさによる上記レジストパターン21Aの形の崩れの影響の差を説明する。図6に第2の比較例として、一ポート型弾性波共振子の電極構造を示す。図6に示す弾性波共振子1021では、IDT電極1022の両側に反射器1023,1024が形成されている。IDT電極1022は、第1,第2のバスバー1022a,1022bを有する。反射器1023,1024は、第1,第2のバスバー1023a,1024a,1023b,1024bを有する。バスバー同士が隣接する部分を代表して、一点鎖線Dで示す部分について説明する。一点鎖線Dで囲まれている部分では、バスバー1022bと、バスバー1024bとがギャップGを隔てて隣り合っている。バスバー1022bには、配線電極1022cが接続されている。
【0052】
ここで、図6に示されるように、バスバー1022bの幅はバスバー1024bの幅よりも大きい。従って、上記実施形態に従うと、バスバー1024bの幅Wよりも、ギャップGの道のりを大きくするように前述した突出部11及び凹部12を設ければ、上記実施形態と同様にして、洗浄時のレジストパターンの崩れを防止することができる。
【0053】
もっとも、このようなレジストパターンの形状の崩れは、バスバーの幅によっても変化する。図8、図9は、バスバー1024bの幅が小さい場合と大きい場合のレジストパターン21Aの洗浄後の形状の変化を示す模式的平面図である。ここでは、60分洗浄したあとの状態を示す。図8及び図9より明らかなように、バスバー幅を大きくすることにより、レジストパターン21Aの流れ出し部分を電極指構成部分にまで到達させ得ないこと、すなわち、IDT電極の電極指へのレジストパターン21AをIDT電極の電極指への影響をより確実に抑制し得ることがわかる。
【0054】
従って、バスバー同士が隣り合っている部分においては、バスバーの幅を大きくすることが望ましい。
【0055】
図10(a)〜(c)は、上記実施形態の弾性波装置1の変形例を示す各模式的平面図である。図10(a)〜(c)は、図2に相当する図である。すなわち、図10(a)に示す変形例では、複数の突出部11が設けられている。
【0056】
このように、本発明における突出部は、弾性波伝搬方向と直交する方向において複数設けられていてもよい。
【0057】
また図10(a)に示す構造では、突出部11は、バスバー3aよりも弾性波伝搬方向と直交する方向外側の配線電極8aの端縁に設けられている。このように、突出部11は、ギャップGよりも弾性表面波伝搬領域に対して外側の領域に設けられていてもよい。図10(b)においても同様に、1つの突出部11がギャップGよりも外側に設けられている。
【0058】
さらに、図10(c)に示すように、突出部11は、矩形の平面形状に限らず、外周縁が曲線状であってもよい。すなわち、突出部の平面形状は特に限定されるものではない。
【0059】
また、本発明は、上記のように、バスバー同士が隣接する部分及びその近傍の電極形状に特徴を有するものである。従って、弾性波装置は弾性表面波装置に限らず弾性境界波装置であってもよい。さらに、弾性表面波装置は弾性境界波装置の電極構造についても特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0060】
1…弾性波装置
2…圧電基板
2a…溝
3〜5…IDT電極
3a…第1のバスバー
3b…第2のバスバー
4a…第1のバスバー
4b…第2のバスバー
5a…第1のバスバー
5b…第2のバスバー
6,7…反射器
6a…第1のバスバー
6b…第2のバスバー
7a…第1のバスバー
7b…第2のバスバー
8a,8b,9a,9b,10a,10b…配線電極
11…突出部
12…凹部
21…レジスト層
21A…レジストパターン
21A1…レジストパターン部分
22…金属膜
22A…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成されており、一対のバスバーと、各バスバーに接続された複数本の電極指とを有するIDT電極である第1の電極と、
前記圧電基板上において、弾性波伝搬方向において前記第1の電極に並設されており、かつ一対のバスバーを有する第2の電極と、
前記第1,第2の電極のいずれかに連ねられた配線電極とを備え、
前記第1の電極のバスバーと、前記第2の電極のバスバーとが弾性波伝搬方向においてギャップを介して隣り合っている複数の部分のうち少なくとも一つの部分において、ギャップ内またはギャップよりも弾性波伝搬方向と直交する方向において外側に相手方のバスバー側に向かって突出している突出部が少なくとも一方のバスバーまたは該バスバーに連ねられている配線電極に設けられている、弾性波装置。
【請求項2】
バスバー同士が隣り合っているギャップの弾性波伝搬方向と直交する方向の一方側の端部から他方側の端部までの道のりが、前記バスバーの弾性波伝搬方向と直交する方向の寸法をバスバーの幅としたときに、隣り合っているバスバーの幅のうち小さい方の幅よりも長くなるように、隣り合っているバスバーの少なくとも一方にギャップに向かって突出するように前記突出部が設けられている、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記隣り合っているバスバーの一方に突出部が設けられており、隣り合っているバスバーの他方に該突出部が入り込んでおり、前記ギャップに向かって開いた凹部が形成されている、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記突出部が複数設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記バスバー同士が隣り合っている全ての部分において、前記ギャップの道のりが、隣り合っているバスバーの幅のうち小さい方の幅よりも長くされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記突出部の平面形状が、前記ギャップに向かって延びる長手方向を有する矩形である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記突出部の長さが、前記バスバーの小さい方の幅よりも長い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記圧電基板が、前記圧電基板上に設けられた凹部を有し、前記第1,第2の電極が、前記凹部に充填された金属からなる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性波装置の製造方法であって、
圧電基板を用意する工程と、前記圧電基板上に一対のバスバーと、各バスバーに接続された複数本の電極指とを有する第1の電極と、弾性波伝搬方向において前記第1の電極に並設されており、かつ一対のバスバーを有する第2の電極とを形成する工程とを備え、
前記第1,第2の電極を形成するに際し、圧電基板上に前記第1,第2の電極が形成されない領域にレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターン形成後に金属膜を前記圧電基板上に形成する工程と、
前記レジストパターンを前記レジストパターン上に付与されている前記金属膜とともに除去し、前記第1,第2の電極を形成する工程とを有する、弾性波装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−34055(P2013−34055A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168226(P2011−168226)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】