説明

弾性波装置

【課題】周波数温度特性を改善することができ、かつ高次モードスプリアスを充分に抑圧することが可能とされている、弾性波装置を得る。
【解決手段】LiNbOからなる圧電体2と、圧電体2上に積層されたSiO層6と、圧電体2とSiO層6との界面に設けられたIDT電極3とを備え、LiNbOのオイラー角(φ,θ,ψ)のφ及びθが、それぞれφ=0°及び80°≦θ≦130でありSH波を主成分とする弾性波を用いる弾性波装置において、ψが、5°≦ψ≦30°の範囲内にされている弾性波装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共振子や帯域フィルタなどに用いられる弾性波装置に関し、より詳細には、圧電体としてLiNbOを用い、圧電体上にSiO層などの誘電体が積層されている構造を有する弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性境界波装置や弾性表面波装置などの弾性波装置が、通信機器の帯域フィルタなどに用いられている。
【0003】
この種の弾性境界波装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。図24及び図25は、特許文献1に記載の弾性境界波装置を説明するための平面図及びその要部を示す模式的部分切欠拡大断面図である。
【0004】
弾性境界波装置1001は、LiNbO基板1002を有する。LiNbO基板1002上に、IDT電極1003が形成されている。IDT電極1003を覆うように、多結晶酸化ケイ素膜1004が積層されている。多結晶酸化ケイ素膜1004上に、多結晶ケイ素膜1005が積層されている。
【0005】
IDT電極1003で励振された弾性境界波が、LiNbO基板1002と多結晶ケイ素膜1005との間に積層された多結晶酸化ケイ素膜1004中にエネルギーを集中させて伝搬する。従って、多結晶ケイ素膜/多結晶酸化ケイ素膜/LiNbOがこの順序で積層されている、いわゆる三媒質構造の弾性境界波装置が形成されている。
【0006】
特許文献1は、多結晶酸化ケイ素膜上に多結晶ケイ素膜1005が積層されているので、IDT電極1003で励振されている弾性波を確実に多結晶酸化ケイ素膜に閉じ込めることができることを記載している。
【0007】
他方、下記の特許文献2は、LiNbO基板上に、IDT電極が形成されており、IDT電極を覆うようにSiO膜が積層された弾性表面波装置を記載している。この弾性表面波装置では、SiO膜の形成により、周波数温度係数TCFの絶対値が小さくされている。また、表面波の波長をλとした場合、SiO膜の膜厚を0.24λから0.35λと厚くすると、高次モードによるスプリアスが大きく現れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO98/52279
【特許文献2】WO2007/145057
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の弾性境界波装置では、LiNbO基板1002と多結晶ケイ素膜1005との間に積層された、多結晶酸化ケイ素膜1004中にエネルギーを集中させて弾性境界波が伝搬するが、高次モードによるスプリアスが現れるという問題があった。この高次モードスプリアスの大きさは、多結晶酸化ケイ素膜の膜厚を薄くすると、小さくなることがわかってきている。しかしながら、多結晶酸化ケイ素膜の膜厚を小さくすると、弾性境界波装置1001では、周波数温度係数TCFの絶対値が大きくなるという問題があった。すなわち、高次モードスプリアスの抑圧と、周波数温度特性の改善とはトレードオフの関係にあった。
【0010】
特許文献1に記載の弾性境界装置では、多結晶酸化ケイ素膜の横波音速は、多結晶ケイ素膜及びLiNbO基板の横波音速より遅い。低速の多結晶酸化ケイ素膜を高音速の多結晶ケイ素膜及びLiNbO基板が挟んでいる構造であるので、IDT電極で励振される弾性境界波を確実に多結晶酸化ケイ素膜に閉じ込めることができる。この構造を弾性境界波の基本モードと高次モードが伝搬する。
【0011】
基本モードとは、多結晶酸化ケイ素膜の外側に向かう方向が、変位が小さくなる方向であり、多結晶酸化ケイ素膜中に腹が1箇所存在するモードであり、いわゆる0次モードである。高次モードとは、多結晶酸化ケイ素膜の外側に向かう方向が、変位が減衰する方向であり、多結晶酸化ケイ素膜中に節が1箇所あり、節の上下それぞれ変位の向きが異なる2箇所の腹が存在するモードであり、いわゆる1次モードである。
【0012】
多結晶酸化ケイ素膜中に複数の節を有している高次モードも存在し得る。しかし、上記高次モード以外の高次モードの応答は小さいため問題とはならない。
【0013】
また、特許文献2では、上記の通り、SiO膜の膜厚を0.24λから0.35λと厚くすると、高次モードによるスプリアスが大きく現れることが記載されている。
【0014】
従って、特許文献2に記載のような弾性表面波装置においても、周波数温度特性を改善するために、SiO膜を厚くすると、高次モードスプリアスが大きくなり、周波数温度特性の改善と、高次モードスプリアスの抑圧とはトレードオフの関係にあった。
【0015】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、LiNbO上にSiO層が積層されている構造を有する弾性波装置であって、SiO層の形成により周波数温度特性を改善することができ、かつ高次モードスプリアスを充分に抑圧することが可能とされている、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、LiNbOからなる圧電体と、前記圧電体上に積層された誘電体層と、前記圧電体と前記誘電体との界面に設けられたIDT電極とを備え、前記LiNbO基板のオイラー角の(φ,θ,ψ)において、φ及びθが、それぞれφ=0°及び80°≦θ≦130でありSH波を主成分とする弾性波を用いる弾性波装置において、ψが、5°≦ψ≦30°の範囲内にされている弾性波装置が提供される。
【0017】
本発明に係る弾性波装置のある特定の局面では、前記誘電体層がSiO層であり、前記SiO層に積層されており、SiO層よりも音速が高い第2の誘電体層をさらに備え、弾性波としてSH型弾性境界波を用いた弾性境界波装置が提供される。この場合には、SH型弾性境界波を用いた弾性境界波装置において、周波数温度特性の改善と、高次モードスプリアスの抑圧とを果たすことが可能となる。
【0018】
弾性境界波装置の場合、好ましくは、LiNbOのオイラー角のθは、105°≦θ≦120°の範囲にあり、その場合には、SH型弾性境界波の応答の近傍に現れる不要モード応答を抑制することができる。すなわち、不要モードであるストンリー波の電気機械結合係数が小さくされている。
【0019】
本発明の弾性波装置が弾性境界波装置である場合、上記第2の誘電体層を構成する材料としては、好ましくは、ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素及びダイヤモンドライクカーボンからなる群から選択された少なくとも1種であって、遅い横波音速が5000m/秒以上の誘電体材料が用いられる。この場合には、これらの誘電体材料の横波音速が、SiOの横波音速よりも速いため、かつ、LiNbO基板の横波音速がSiOの横波音速より速いためSH型弾性境界波を確実にSiO層側に閉じ込めることができる。
【0020】
また、本発明に係る型弾性波装置の他の特定の局面では、前記誘電体層がSiO層であり、前記弾性波としてSH型弾性表面波が利用される弾性表面波装置が提供される。この場合には、弾性表面波装置において、周波数温度特性を改善しかつ高次モードスプリアスを抑圧することが可能となる。
【0021】
本発明の弾性波装置が弾性表面波装置である場合、LiNbOのオイラー角のθは、好ましくは80°〜90°の範囲とされ、その場合、SH型表面波の応答の近傍に現れる不要モードの応答を抑制することができる。すなわち、不要モードであるレイリー波の電気機械結合係数を小さくすることができる。
【0022】
弾性表面波装置の場合、SiO層に積層された第2の誘電体層がさらに備えられてもよく、その場合には、該誘電体層の積層により、下方のSiO層及びIDT電極を保護することができる。
【0023】
本発明に係る弾性波装置のさらに他の特定の局面では、上記IDT電極が、Au、Ag、Cu、Pt、Ta、W、Ni、Fe、Cr、Mo、Ti及びこれらの金属の1種を主成分とする合金からなる群から選択された1種の金属からなる電極膜もしくは、前記電極膜を構成する金属とは異なる金属からなる第2の電極膜と前記電極膜とが積層された積層構造を主体とする。この場合には、IDT電極の反射係数を大きくすることができる。好ましくは、上記積層構造が、それぞれが、PtもしくはAlまたはこれらの金属を主成分とする合金からなる、複数の電極膜を含む。この場合には、高信頼性かつ低抵抗のIDT電極とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に関する弾性波装置では、LiNbOからなる圧電体が負の周波数温度係数を有するが、SiO層が正の周波数温度係数を有するため、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくすることができる。しかもSiO膜の膜厚を周波数温度係数TCFの絶対値を小さくするように選択した場合であっても、LiNbO基板のオイラー角ψが上記特定の範囲内であるため、高次モードスプリアスを確実に抑圧することができる。
【0025】
従って、周波数温度特性の改善と、高次モードスプリアスの抑圧とを両立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る弾性境界波装置の要部を示す部分切欠拡大正面断面図及び電極構造を示す模式的平面図である。
【図2】(a)は、オイラー角(0°,115°,ψ)、但しψが0°、5°または10°であるLiNbOを用いた弾性境界波装置のインピーダンス特性を示し、(b)は、その位相特性を示す図である。
【図3】(a)は、オイラー角(0°,115°,ψ)、但しψが15°、20°または25°であるLiNbOを用いた弾性境界波装置のインピーダンス特性を示し、(b)は、その位相特性を示す図である。
【図4】(a)は、オイラー角(0°,115°,ψ)、但しψが30°であるLiNbOを用いた弾性境界波装置のインピーダンス特性を示し、(b)は、その位相特性を示す図である。
【図5】オイラー角(0°,115°,0°)のLiNbOを用いた弾性境界波装置における高次モードの位相が最大となる音速と、高次モードスプリアスの応答の強度との関係を示す図である。
【図6】オイラー角(0°,115°,5°)のLiNbOを用いた弾性境界波装置における高次モードの位相が最大となる音速と、高次モードスプリアスの応答の強度との関係を示す図である。
【図7】オイラー角(0°,115°,10°)のLiNbOを用いた弾性境界波装置における高次モードの位相が最大となる音速と、高次モードスプリアスの応答の強度との関係を示す図である。
【図8】オイラー角(0°,115°,15°)のLiNbOを用いた弾性境界波装置における高次モードの位相が最大となる音速と、高次モードスプリアスの応答の強度との関係を示す図である。
【図9】オイラー角(0°,115°,20°)のLiNbOを用いた弾性境界波装置における高次モードの位相が最大となる音速と、高次モードスプリアスの応答の強度との関係を示す図である。
【図10】オイラー角が(0°,80°,ψ)であるLiNbOにおける速い横波音速と遅い横波音速のψとの関係を示す図である。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ、オイラー角が(0°,90°,ψ)及び(0°,100°,ψ)であるLiNbOにおける速い横波音速と遅い横波音速のψとの関係を示す図である。
【図12】(a)及び(b)は、それぞれ、オイラー角が(0°,110°,ψ)及び(0°,115°,ψ)であるLiNbOにおける速い横波音速と遅い横波音速のψとの関係を示す図である。
【図13】オイラー角が(0°,120°,ψ)であるLiNbOにおける速い横波音速と遅い横波音速のψとの関係を示す図である。
【図14】オイラー角が(0°,130°,ψ)であるLiNbOにおける速い横波音速と遅い横波音速のψとの関係を示す図である。
【図15】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角のψと、周波数温度係数TCFとの関係を示す図である。
【図16】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,90°,0°)の場合のインピーダンス特性を示す図である。
【図17】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,90°,0°)の場合の位相特性を示す図である。
【図18】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,100°,0°)の場合のインピーダンス特性を示す図である。
【図19】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,100°,0°)の場合の位相特性を示す図である。
【図20】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,127°,0°)の場合のインピーダンス特性を示す図である。
【図21】弾性境界波装置において、LiNbOのオイラー角が(0°,127°,0°)の場合の位相特性を示す図である。
【図22】本発明の他の実施形態としての弾性表面波装置を説明するための模式的正面断面図である。
【図23】(a)及び(b)は、本発明の第2の実施形態としての弾性表面波装置におけるオイラー角(0°,86°,ψ)において、ψを変化させた場合のインピーダンスと伝搬角ψとの関係及び位相特性と伝搬角ψとの関係をそれぞれ示す図である。
【図24】従来の弾性境界波装置の模式的平面図である。
【図25】従来の弾性境界波装置の要部を拡大して示す部分切欠正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0028】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る弾性境界波装置の部分切欠拡大正面断面図であり、図1(b)は、該弾性境界波装置の電極構造を示す模式的平面図である。
【0029】
図1(a)に示すように、弾性境界波装置1は、LiNbOからなる圧電体2を有する。圧電体2上に、SiO層6が積層されている。
【0030】
圧電体2とSiO層6との界面に、IDT電極3が形成されている。図1(a)では、IDT電極3の1本の電極指部分が拡大して断面図で示されている。実際には、図1(b)に示されているように、圧電体2上には、IDT電極3と、IDT電極3の弾性境界波伝搬方向両側に配置された反射器4,5とが配置されている。IDT電極3は、交叉幅重み付けが施されたIDT電極であり、互いに間挿し合う複数本の電極指を有する。図1(a)では、1本の電極指3aが拡大して示されている。
【0031】
図1(b)に示すように、上記重み付けは、IDT電極3の端部における交叉幅Wに比べ、IDT電極3の弾性境界波伝搬方向中央における交叉幅Wが大きくなるように施されている。すなわち、交叉幅Wが最大交叉幅であり、IDT電極3の端部に向うにつれ、交叉幅が順次小さくなるように、交叉幅重み付けが施されている。反射器4,5は、グレーティング反射器である。
【0032】
上記IDT電極3及び反射器4,5により、1ポート型弾性境界波共振子の電極構造が形成されている。
【0033】
上記IDT電極3及び反射器4,5は適宜の金属材料からなる。本実施形態では、図1(a)に拡大して示されているように、IDT電極3の電極指3aは、圧電体2側から順に、Ti膜11a、Pt膜11b、Ti膜11c、Al膜11d、Ti膜11e,Pt膜11f及びTi膜11gをこの順序で積層することにより得られた積層金属膜からなる。
【0034】
上記積層金属膜において、Pt膜11b、Al膜11d及びPt膜11fが、Ti膜11a,11c,11e,11gに比べて相対的に厚くされている。これらのPt膜11b、Al膜11d及びPt膜11fが、主たる電極膜である。Ti膜11aは、IDT電極3の圧電基板への密着性を高める密着層として機能する。Ti膜11c,11eは、両側の電極膜間における拡散を抑制するバリア層として形成されている。すなわち、Pt膜11b,11fと、Al膜11dとの間の原子の拡散を抑制するために、Ti膜11c,11eが形成されている。さらに、Ti膜11gは、SiO層とPt膜とを密着させる密着層として形成されている。IDT電極3は、全体がこのような積層金属膜により形成されており、反射器4,5も同じ積層金属膜により形成される。
【0035】
もっとも、本発明において、IDT電極は、積層金属膜で形成される必要は必ずしもない。また、IDT電極3を形成する金属材料についても特に限定されるものでもないが、好ましくは、Au、Ag、Cu、Pt、Ta、W、Ni、Fe、Cr、Mo、Tiまたはこれらの金属の1種を主成分とする合金からなる金属材料が主体となる電極膜材料として用いられる。この場合IDT電極3がこのような電極膜のみから形成されていてもよく、図1(a)に示したTi膜11a,11c,11e,11gなどのように、密着層、バリア層または保護層として、主体となる電極膜であるAl膜やPt膜など以外の電極膜が積層されていてもよい。
【0036】
上記金属材料を用いることにより、IDT電極の反射係数を高めたり、導電性を高めたりすることができ、それによって弾性境界波装置の特性をより一層改善することができる。
【0037】
より好ましくは、上記主たる電極膜として、Pt及びAlが本実施形態で用いられ、その場合には、反射係数と導電性とをより効果的に高めることができる。
【0038】
本実施形態の弾性境界波装置1では、上記IDT電極3を覆うように、圧電体2の上面にSiO層6が積層されており、さらにSiO層6の上に第2の誘電体層7が積層されている。本実施形態では、第2の誘電体層7はSiN膜からなる。
【0039】
上記SiO層6及びSiN膜からなる第2の誘電体層7は、蒸着、スパッタリング等の適宜の薄膜形成方法により形成することができる。第2の誘電体層7は、特開平10−84247号公報に示されているように、基板貼り合わせ工法により形成してもよい。
【0040】
SiO層6の厚みについては、特に限定されるものではないが、境界波の波長をλとすると0.2λ〜0.7λ程度とされる。SiO層6は、SiNやLiNbOよりも横波音速が遅いため、IDT電極3で励振された弾性境界波が、SiNとLiNbOとの間、すなわち上記SiO層6中にエネルギーに集中させて伝搬する。このような伝搬を可能とするために、SiOの厚みは、上記のような0.2λ〜0.7λ程度とされる。もっとも、この厚みは、限定的なものではない。
【0041】
SiN膜7の厚みは、弾性境界波が十分に閉じ込められる厚みに設定する。すなわち、SiN膜7の厚み方向に向かって、弾性境界波の変位が小さくなり、SiN膜7の表面における弾性境界波の変位が略ゼロとなる厚みに設定する。変位が略ゼロとみなせる厚みは、例えば1λ以上である。
【0042】
また、前述したIDT電極3を含む電極構造についても、公知のフォトリソグラフィー法を用いて形成することができる。
【0043】
本実施形態の弾性境界波装置1では、上記LiNbOからなる圧電体2と、SiO層6との界面に設けられたIDT電極3により励振された弾性境界波が、SiO層6中にエネルギーを集中させて伝搬する。ここで、誘電体層7は、SiN膜からなり、その横波音速がSiO層6の横波音速よりも速くされている。従って、弾性境界波が、SiN膜からなる誘電体層7側には漏洩し難いので、確実に上記SiO層6中にエネルギーを集中させて弾性境界波を伝搬させることが可能とされている。
【0044】
さらに、弾性境界波装置1では、LiNbOの周波数温度係数TCFは負の値であるが、SiO層の周波数温度係数TCFは正の値であるため、全体として周波数温度係数の絶対値を小さくすることができる。よって、温度変化による周波数変動を小さくすることが可能とされている。
【0045】
加えて、LiNbO基板のオイラー角(φ,θ,ψ)のφ及びθが、それぞれφ=0°及び80°≦θ≦130でありSH波を主成分とする弾性波を用いる弾性波装置において、ψが、5°≦ψ≦30°の範囲内にあるため、後述する実験例から明らかなように、高次モードスプリアスを効果的に抑圧することができる。これを、図2〜図15を参照してより具体的に説明する。
【0046】
図1(a)及び(b)に示した弾性境界波装置1、すなわち1ポート型弾性境界波共振子を種々の伝搬角(ψ)のLiNbOを用いて作製し、インピーダンス特性及び位相特性を測定した。
【0047】
作製した弾性境界波共振子の仕様は、以下の通りである。
【0048】
LiNbO基板のオイラー角:(0°,115°,ψ)。伝搬角ψを0°、5°、10°、15°、20°、25°及び30°とした。
【0049】
IDT電極の電極指のピッチで定まる波長λ=1.9μm
IDT電極の膜厚:Pt膜11b,11fの膜厚=31nm、Al膜11dの膜厚=300nm、Ti膜11a,11c,11e,11gの膜厚=10nm
IDT電極におけるデューティ=0.5
電極指の対数=60対
対向し合うバスバーの間隔=30λ
IDT電極のアポダイズ比(最小交叉幅W/最大交叉幅W)=0.40
SiO層の膜厚=712nm
SiNからなる誘電体層7の膜厚=2000nm
反射器の電極指の本数=各51本
【0050】
各図において、横軸は、周波数と波長の積で表される音速である。AはSH型境界波の基本モードによる応答で、Bは高次モードによる応答である。
【0051】
図2(a)及び(b)は、伝搬角ψが、0°,5°または10°の場合の各弾性境界波装置のインピーダンス特性及び位相特性をそれぞれ示す。図2において、実線がψ=0°の場合の結果を、破線がψ=5°の場合の結果を、一点鎖線がψ=10°の場合の結果を示す。
【0052】
同様に、図3(a)及び(b)は、伝搬角ψが15°、20°及び25°の場合の各弾性境界波装置のインピーダンス特性及び位相特性をそれぞれ示す。実線がψ=15°、破線がψ=20°、一点鎖線がψ=25°の場合の結果を示す。
【0053】
また、図4(a)及び(b)は、伝搬角ψが30°の弾性境界波装置のインピーダンス特性及び位相特性をそれぞれ示す。
【0054】
図2(a),(b)〜図4(a),(b)から明らかなように、オイラー角(0°,115°,ψ)のLiNbOを用いた場合、伝搬角ψが0°から30°と大きくなるにつれて、例えば図2(a)及び(b)で示す矢印Bで示す高次モードの応答が小さくなっていくことがわかる。なお、矢印Aは、基本モードの応答を示す。矢印Bは高次モードの応答を示す。
【0055】
従って、オイラー角(0°,115°,ψ)のLiNbO基板を用いた場合、伝搬角ψを0°より大きくし、より好ましくは、5°〜30°の範囲とすることにより、伝搬角ψ=0°すなわちX伝搬の場合に比べて、高次モードスプリアスを抑圧し得ることがわかる。また、図2(a),(b)〜図4(a),(b)の結果を考慮し、位相特性において、高次モードの位相特性が最大となる音速と、そのときの位相値とを求めた。高次モードの位相特性が最大となる音速を、適宜、高次モードの音速と略すこととする。また、このときの位相値を高次モードレスポンスの強度とする。
【0056】
高次モードの音速と高次モードレスポンスの強度をプロットした結果を、図5〜図9に示す。
【0057】
図5〜図9に示す結果を得るにあたっては、同一の圧電ウェハー内で、波長や線幅が異なるIDT電極を有する多数の種類の1ポート型弾性境界波共振子を作製した。これらの1ポート型弾性境界波共振子の特性を測定した。図5〜図9における×印は、同じオイラー角で加工条件が異なる弾性境界波共振子の高次モードの位相が最大となる高次モードの音速と、高次モードの応答の強度が最大である場合の位相値との関係をプロットしたものであり、IDTの波長λを1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.0μm及び2.1μmと変化させたフォトマスクを用い、1枚のウェハー上に形成された多数の弾性境界波共振子の特性を示すものである。
【0058】
図5〜9から明らかなように、どの伝搬角ψにおいても、高次モードの音速がある値以上になると、高次モードの応答の強度が急激に小さくなることがわかる。すなわち、高次モードの応答の強度が小さくなる高次モードの音速のしきい値が存在する。ψの値毎の高次モード音速のしきい値を比較すると、ψが5°以上の範囲では、ψが0°における高次モード音速のしきい値より小さくなることがわかる。
【0059】
これは、三媒質構造の上記弾性境界波装置1では、相対的に低音速の媒質であるSiO層6が、相対的に高音速の媒質であるLiNbOからなる圧電体2と、SiN膜からなる第2の誘電体層7との間で挟まれているので、導波路効果により、弾性境界波が閉じ込められていることによると考えられる。すなわち、上記三媒質構造において、SH型弾性境界波の基本モードの音速が、LiNbOやSiNの横波音速よりも高くなった場合には、SH型弾性境界波の基本モードが漏洩モードとなり、減衰が大きくなる。これに対して、高次モードの位相が最大となる音速がある一定値以上になると、高次モードレスポンスの強度が小さくなるのは、高次モードの音速が、LiNbOの速い横波音速を超えたことにより、高次モードがLiNbO側へ漏洩しているためと考えられる。
【0060】
従って、LiNbOの速い横波音速を低くすることができれば、高次モードレスポンスを小さくすることができると考えられる。本実施形態では、上記伝搬角ψが5°以上とされているため、LiNbOの速い横波音速が充分に低くなり、それによって高次モードスプリアスが抑圧されていると考えられる。
【0061】
上記抑制は、図10〜図14によっても裏付けられる。
【0062】
図10〜図14は、オイラー角(0°,θ,ψ)のLiNbOにおける伝搬角ψと、速い横波音速及び遅い横波音速との関係を示す図である。なお、実線が速い横波音速、一点鎖線が遅い横波音速を示す。
【0063】
図10は、それぞれオイラー角(0°,80°,ψ)の場合の結果を、図11(a)及び(b)は、それぞれ、オイラー角が(0°,90°,ψ)及び(0°,100°,ψ)の場合の結果を、図12(a)及び(b)は、それぞれ、オイラー角が(0°,110°,ψ)及び(0°,115°,ψ)、図13はオイラー角が(0°,120°,ψ)の場合の結果を、図14は、オイラー角が(0°,130°,ψ)の場合の結果を示す。
【0064】
図10〜図14から明らかなように、オイラー角のθが80°〜130°のいずれかの場合においても、ψが0°より大きくなり、30°に向うにつれて、速い横波音速が低くなっていくことがわかる。従って、上述したように、伝搬角ψを大きくすることにより、高次モードレスポンスの強度を小さくし得ることがわかる。
【0065】
また、図10〜図14から明らかなように、オイラー角(0°,θ,ψ)において、オイラー角のθが80°から130°のどの値であっても、同様に、速い横波音速が伝搬角ψの増加に伴って低下するため、上記実施形態と同様に、高次モードスプリアスを抑圧し得ることがわかる。
【0066】
上記の通り、オイラー角(0°,115°,ψ)の場合の上記実施形態における速い横波音速の伝搬角ψに対する依存性と、図5〜図9における高次モードの位相最大となる音速と、高次モードレスポンスの強度との関係を考慮する。この場合、それぞれの伝搬角ψにおけるLiNbOの速い横波音速と高次モードの位相最大となる音速の閾値が対応しており、ψを大きくして速い横波音速を小さくすることにより、高次モードを抑圧し得ることがわかる。
【0067】
また、図10〜図14より、上記LiNbOの速い横波音速は、ψが5°より小さい範囲では、ψが0°の場合とほとんど変わらない。これに対して、ψが5°以上であると速い横波音速が大きく低下していく。従って、ψは5°以上とされている。
【0068】
また、ψが大きくなりすぎると、基本モードの電気機械結合係数kが低下するため、ψは、基本モードの電気機械結合係数の低下を避けるためには、大きくないことが好ましい。もっとも、ψの上限値については、用途によっても変わり、電気機械結合係数kが小さいことが求められる、例えば狭帯域フィルタに用いる場合には、上限値はかなり大きくすることができる。
【0069】
本実施形態の弾性境界波装置が使用される主な用途であるRFフィルタでは、適度な電気機械結合係数kの大きさが求められるため、伝搬角ψは30°より小さいことが望ましい。従って、本発明では、ψは、5°以上、30°以下とされている。
【0070】
なお、図10〜図14の結果から明らかなように、オイラー角のθが変化しても、伝搬角ψが大きくなるにつれてLiNbOの速い横波音速が、遅くなる点において共通している。従って、θは115°に限らず、80°≦θ≦130°の範囲であればよく、また、この範囲であれば、SH型弾性境界波の電気機械結合係数も高くされている。より好ましくは、θは、105°≦θ≦120°の範囲とすれば、不要モードを抑制することができる。
【0071】
なお、本実施形態では、第2の誘電体層7は、SiO膜よりも横波音速が高いSiN膜により形成されていたが、横波音速が5000m/秒以上の適宜の誘電体により第2の誘電体層7を形成することが好ましい。この場合には、これらの誘電体材料の横波音速が、SiOの横波音速よりも速いため、SH型弾性境界波を確実にSiO層側に閉じ込めることができる。
【0072】
このような誘電体材料としては、窒化ケイ素(SiN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、ケイ素(Si)、酸窒化ケイ素(SiON)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などからなる群から選択された1種の誘電体材料を好適に用いることができる。それによって、弾性境界波を誘電体層よりも内側に確実に閉じ込めることができる。
【0073】
また、第2の誘電体層7に代えて、これらの群から選択された1種の誘電体層と、さらに上記群から選択された他の誘電体材料からなる1以上の誘電体層とを積層した積層誘電体層を用いてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、IDT電極において、電極膜間の密着性を高めたり、金属の相互拡散を防止するためのバリア層としてTi膜11a,11c,11e,11gが形成されていたが、Ti以外に、NiCrからなる密着層やその他の金属により密着層やバリア層を形成してもよい。
【0075】
もっとも、好ましくは、本実施形態のように、Ptからなる電極膜とAlからなる電極膜との間に、あるいはPt膜やAl膜とLiNbOとの間、Pt膜やAl膜とSiO層との間に、Ti膜が積層される。それによって、信頼性を高めることができ、さらに、低抵抗であるため、損失の低減を図ることができる。
【0076】
本実施形態の弾性境界波装置において、上記LiNbOの伝搬角ψを変化させた場合、周波数温度特性は劣化しないことを図15を参照して説明する。
【0077】
周知のように、SiO膜は、LiNbOと組み合わせて用いられた場合、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくするように作用し、それによって温度による周波数特性の変化を抑制する。
【0078】
図15は、本実施形態の弾性境界波装置1と、比較のために用意した伝搬角ψ=0°の弾性境界波装置の周波数温度係数TCFを示す図である。図15から明らかなように、伝搬角ψ=0°の場合に比べ、上記実施形態に従ってψが5°、10°、15°、20°及び30°とされた場合においても、周波数温度係数TCFはほとんど変化していない。従って、周波数温度特性の劣化を招くことなく、言い換えればSiO層の形成による周波数温度特性の向上効果を得つつ、本発明に従って高次モードスプリアスを抑圧し得ることがわかる。
【0079】
なお、図16〜図21は、オイラー角が(0°,90°,0°)、(0°,100°,0°)、(0°,127°,0°)の各場合の比較例として用意した弾性境界波装置のインピーダンス特性及び位相特性をそれぞれ示す。
【0080】
図16及び図17が、θ=90°の場合の結果を、図18及び図19が、θ=100°の結果を、図20及び図21が、オイラー角のθ=127°の場合の結果をそれぞれ示す。
【0081】
SH型弾性境界波装置の基本モードによる応答をA、高次モードによる応答をBで示す。
【0082】
図16〜図21から明らかなように、オイラー角のθが90°、100°または127°の場合のいずれにおいても、基本モードのインピーダンス比、すなわち反共振周波数におけるインピーダンスの共振周波数におけるインピーダンスに対する比は60dB以上であり、上記実施形態すなわちθ=115°の場合のインピーダンス比と同等である。従って、オイラー角のθが、90°〜127°の範囲であれば、上記実施形態と同様に、基本モードの応答は充分な大きさとなることがわかる。さらに高次モードによるスプリアスの応答が大きいことが問題であることがわかる。よって、本発明においては、好ましくは、オイラー角のθは90°〜127°の範囲内であれば、オイラー角のψを5°以上、30°以下とすることにより、高次モードスプリアスを抑圧し、充分な大きさの基本モードによる応答を得ることができることがわかる。
【0083】
(弾性表面波装置の実施形態)
図1(a),(b)に示す実施形態では、SiO層中にエネルギーを集中させて伝搬する弾性境界波が利用されていたが、本発明の弾性波装置は、弾性表面波を利用した弾性表面波装置であってもよい。
【0084】
図22は、本発明の第2の実施形態としての弾性表面波装置を模式的に示す正面断面図である。なお、本実施形態の弾性表面波装置21では、圧電体22上に、IDT電極23が形成されている。IDT電極23を覆うように、SiO層26が形成されている。ここで、IDT電極23の電極構造は、図1(b)に示したIDT電極3と同様とされている。また、IDT電極23の弾性表面波伝搬方向両側に、反射器24,25が配置されている。従って、1ポート型の弾性表面波装置が構成されている。
【0085】
本実施形態では、上記IDT電極23及び反射器24,25を覆うように、温度特性改善膜として、SiO層26が形成されている。SiO層26は、周波数温度係数TCFの絶対値を小さくするために設けられているものであり、弾性境界波を閉じ込める必要はないため、その膜厚は、弾性表面波の波長をλとしたとき0.16λ〜0.30λ程度とされている。
【0086】
本実施形態においても、IDT電極23を構成する金属材料については、本実施形態では、上から順に、Ti膜、Cu膜及びNiCr膜をこの順序で積層した積層金属膜を用いたが、前述した実施形態と同様に、適宜の金属材料によりIDT電極23を形成することができる。
【0087】
本実施形態においても、LiNbO基板からなる圧電体22のオイラー角(φ,θ,ψ)の伝搬角であるψが5°〜30°の範囲とされており、それによって高次モードスプリアスを抑圧することができる。これを、図23(a),(b)に示す。
【0088】
本実験例では、LiNbO基板として、オイラー角が(0°,86°,ψ)のLiNbOを用い、IDT電極としてTi/Cu/NiCrの膜厚が10/90/17(単位はnm)の積層金属膜を用いた。IDT電極23のアポダイズ比については上記実施形態の弾性境界波装置1と同様とした。なお、波長λは、1.6μmとした。
【0089】
SiO層26の膜厚は450nmすなわち、0.28λとした。反射器24,25は、上記実施形態と同様にグレーティング反射器により形成した。
【0090】
図23(a)及び(b)は、それぞれ、上記のようにして作製された複数種の弾性表面波装置のインピーダンス特性及び位相特性を示す。実線がψ=0°の場合の結果を、破線がψ=10°の場合の結果を、一点鎖線がψ=20°の場合の結果を示す。
【0091】
図23(a)及び(b)から明らかなように、矢印Dで示す高次モードの応答が、伝搬角ψが0°の場合に比べ、10°及び20°になると著しく小さくなっていることがわかる。これに対して、矢印Cで示す基本モードの応答はさほど劣化していないことがわかる。
【0092】
従って、図23から、弾性表面波装置においても、同様に伝搬角ψを大きくすることにより、高次モードスプリアスを抑圧し得ることがわかる。
【0093】
本願発明者の実験によれば、ψが5°以上、30°以下であれば、同様に、高次モードスプリアスを効果的に抑圧し得ることが確かめられている。従って、弾性表面波装置の場合にも、ψは、5°以上、30°以下とされる。
【0094】
また、弾性表面波の場合には、オイラー角のθが、80°〜130°の範囲で変化しても、弾性境界波装置の場合と同様に、高次モードスプリアスを抑圧し得る効果はさほど変わらなかった。他方、弾性表面波装置では、オイラー角(0°,θ,ψ)の場合、θは80°〜90°の範囲内であれば、SH型表面波の応答の近傍に現れる不要モードの応答を抑制することができる。
【0095】
なお、本明細書において、基板の切断面と境界波の伝搬方向を表現するオイラー角(φ,θ,ψ)は、文献「弾性波素子技術ハンドブック」(日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会、第1版第1刷、平成13年11月30日発行、549頁)記載の右手系オイラー角を用いた。
【0096】
すなわち、LiNbOの結晶軸X、Y,Zに対し、Z軸を軸としてX軸を反時計廻りにφ回転しXa軸を得る。
【0097】
次に、Xa軸を軸としてZ軸を反時計廻りにθ回転しZ´軸を得る。
【0098】
Xa軸を含み、Z´軸を法線とする面を基板の切断面とした。
【0099】
そして、Z´軸を軸としてXa軸を反時計廻りにψ回転した軸X´方向を弾性波の伝搬方向とした。
【0100】
また、オイラー角の初期値として与えるLiNbOの結晶軸X,Y,Zは、Z軸をc軸と平行とし、X軸を等価な3方向のa軸のうち任意の1つと平行とし、Y軸はX軸とZ軸を含む面の法線方向とする。
【0101】
なお、本明細書におけるオイラー角(θ,φ,ψ)は、結晶学的に等価なオイラー角を含むものとする。LiNbOは三方晶系の3m点群に属する結晶であるため、以下の式が成り立つ。
【0102】
F(φ,θ,ψ)=F(60°+φ,−θ,ψ)
=F(60°−φ,−θ,180°−ψ)
=F(φ,180°+θ,180°−ψ)
=F(φ,θ,180°+ψ)
【符号の説明】
【0103】
1…弾性境界波装置
2…圧電体
3…IDT電極
3a…電極指
4,5…反射器
6…SiO
7…第2の誘電体層
11a,11c,11e,11g…Ti膜
11b…Pt膜
11d…Al膜
11f…Pt膜
21…弾性表面波装置
22…圧電体
23…IDT電極
24,25…反射器
26…SiO

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LiNbOからなる圧電体と、
前記圧電体上に積層された誘電体層と、
前記圧電体と前記誘電体との界面に設けられたIDT電極とを備え、
前記LiNbO基板のオイラー角の(φ,θ,ψ)において、φ及びθが、それぞれφ=0°及び80°≦θ≦130でありSH波を主成分とする弾性波を用いる弾性波装置において、ψが、5°≦ψ≦30°の範囲内にされている弾性波装置。
【請求項2】
前記誘電体層がSiO層であり、前記SiO層に積層されており、SiO層よりも音速が高い第2の誘電体層をさらに備え、弾性波としてSH型弾性境界波が用いられる弾性境界波装置である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記LiNbOのオイラー角のθが105°≦θ≦120°の範囲にある、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記第2の誘電体層が、ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素及びダイヤモンドライクカーボンからなる群から選択された少なくとも1種であって、遅い横波音速が5000m/秒以上の誘電体材料からなる、請求項2または3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記誘電体層がSiO層であり、前記弾性波としてSH型弾性表面波が利用される弾性表面波装置である、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記LiNbOのオイラー角のθが80°≦θ≦90°の範囲にある、請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記SiO層に積層された第2の誘電体層をさらに備える、請求項5または6に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記IDT電極が、Au、Ag、Cu、Pt、Ta、W、Ni、Fe、Cr、Mo、Ti及びこれらの金属の1種を主成分とする合金からなる群から選択された1種の金属からなる電極膜もしくは、前記電極膜を構成する金属とは異なる金属からなる第2の電極膜と前記電極膜とが積層された積層構造を主体とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記積層構造が、それぞれがPtもしくはAlまたはこれらの金属を主成分とする合金からなる、複数の電極膜を含む、請求項8に記載の弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−193429(P2010−193429A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275300(P2009−275300)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】