弾性波装置
【課題】板波を利用した弾性波装置であって、優れたデバイス特性を有する弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極12とを備えている。支持体には、空洞部10aが設けられている。圧電基板は、支持体の上に空洞部10aと重なるように設けられている。IDT電極12は、圧電基板の上に空洞部10aと重なるように設けられている。弾性波装置では、IDT電極12により板波が励振される。空洞部10aの端縁部は、IDT電極12により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【解決手段】弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極12とを備えている。支持体には、空洞部10aが設けられている。圧電基板は、支持体の上に空洞部10aと重なるように設けられている。IDT電極12は、圧電基板の上に空洞部10aと重なるように設けられている。弾性波装置では、IDT電極12により板波が励振される。空洞部10aの端縁部は、IDT電極12により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。特に、本発明は、空洞部が形成された支持体と、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられているIDT電極とを備える弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機などのRF回路等に使用されるフィルタ装置や共振子として、弾性表面波装置や弾性境界波装置が用いられている。
【0003】
しかしながら、弾性表面波装置や弾性境界波装置では、共振周波数やフィルタ装置の通過帯域、阻止帯域などの周波数特性を十分に高周波化することは困難である。これに鑑み、例えば下記の特許文献1などにおいて、周波数特性を高周波化し得る弾性波装置として、ラム波を利用した弾性波装置が提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1には、図19及び図20に示すような弾性波装置100が記載されている。弾性波装置100は、基板101を備えている。基板101には、空洞部101aが設けられている。基板101の上には、積層共振体102が設けられている。この積層共振体102は、空洞部101aを覆うように配されている。積層共振体102は、下部電極層103と、下部圧電層104と、IDT電極105と、上部圧電層106と、上部電極層107とを有する。
【0005】
図20に示すように、積層共振体102のIDT電極105が設けられている部分は、空洞部101aの上に位置している。空洞部101aは、矩形状であり、空洞部101aの短辺の延びる方向と、IDT電極105の電極指の延びる方向yとは平行である。このため、空洞部101aの長辺の延びる方向は、IDT電極105によって励振される弾性波(ラム波)の伝搬方向xと平行である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−312164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
弾性波装置100では、不要波に起因するデバイス特性の劣化を十分に抑制することが困難であるため、十分に優れたデバイス特性を得ることが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、板波を利用した弾性波装置であって、優れたデバイス特性を有する弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極とを備えている。支持体には、空洞部が形成されている。圧電基板は、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている。IDT電極は、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられている。本発明に係る第1の弾性波装置では、IDT電極により板波が励振される。空洞部の端縁部は、IDT電極により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0010】
本発明に係る第1の弾性波装置のある特定の局面では、空洞部の端縁部は、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。
【0011】
本発明に係る第1の弾性波装置の他の特定の局面では、空洞部の板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向における幅の最大値がIDT電極の電極指ピッチにより定められる波長の50倍以下である。
【0012】
本発明に係る第1の弾性波装置の別の特定の局面では、IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。空洞部の辺縁の少なくとも一部がバスバーと重なるように設けられている。
【0013】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらに他の特定の局面では、空洞部は、複数の電極指が設けられた領域の少なくとも一部が空洞部の辺縁部と重なるように設けられている。
【0014】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらに別の特定の局面では、空洞部の端縁部は、複数の凹凸を有する。
【0015】
本発明に係る第1の弾性波装置のまた他の特定の局面では、IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。バスバーは、板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する。
【0016】
本発明に係る第1の弾性波装置のまた別の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0017】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらにまた他の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。
【0018】
本発明に係る第2の弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極とを備えている。支持体には、空洞部が形成されている。圧電基板は、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている。IDT電極は、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられている。本発明に係る第2の弾性波装置では、IDT電極により板波が励振される。IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。バスバーは、板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する。
【0019】
本発明に係る第2の弾性波装置のある特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0020】
本発明に係る第2の弾性波装置の別の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、板波を利用した弾性波装置であって、優れたデバイス特性を有する弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る弾性波装置の部分切欠略図的斜視図である。
【図2】図1の線II−IIにおける略図的断面図である。
【図3】S0モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図4】S1モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図5】A0モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図6】A1モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図7】SH0モードのSH波を説明するための模式的平面図である。
【図8】SH1モードのSH波を説明するための模式的平面図である。
【図9】第1の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図10】第2の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図11】第3の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図12】第4の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図13】第5の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図14】第6の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図15】第7の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図16】第1の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図17】第2の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図18】第3の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図19】特許文献1に記載された弾性波装置の模式的断面図である。
【図20】特許文献1に記載された弾性波装置の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0024】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る弾性波装置の部分切欠略図的斜視図である。図2は、図1の線II−IIにおける略図的断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、弾性波装置1は、支持体10を備えている。支持体10の構成材料は、特に限定されない。好ましく用いられる支持体10の構成材料の具体例としては、例えば、LiNbO3、LiTaO3、水晶、シリコン、ガラス、サファイア、アルミナ、セラミック等が挙げられる。
【0027】
支持体10には、支持体10の主面10bに開口する空洞部10aが設けられている。支持体10の主面10bの上には、圧電基板11が設けられている。この圧電基板11は、z方向(積層方向)において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0028】
空洞部10aの板波伝搬方向xに対して垂直な交差幅方向yにおける幅の最大値は、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である。
【0029】
圧電基板11は、適宜の圧電体により構成することができる。圧電基板11は、例えば、LiNbO3、LiTaO3、ZnO、AlN、水晶等により構成することができる。
【0030】
圧電基板11の厚みtは、後に詳述する板波が好適に励振される程度である限りにおいて特に限定されない。例えば、オイラー角(0°,33°,0°)のLiTaO3膜を用いて後述するA1モードのラム波を励振する場合において、音速8400m/秒以上、電気機械結合係数k2を5.8%以上に設定するには、圧電基板11の厚みtは、IDT電極12により定められる波長の0.30倍以下であることが好ましい。
【0031】
圧電基板11の上には、正規型のIDT電極12と、一対の反射器13,14が設けられている。一対の反射器13,14は、IDT電極12の板波伝搬方向xの両側に配置されている。本実施形態では、IDT電極12及び反射器13,14は、z方向において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0032】
IDT電極12及び反射器13,14は、適宜の導電材料により構成することができる。IDT電極12及び反射器13,14は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により構成することができる。また、IDT電極12及び反射器13,14は、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成することもできる。
【0033】
IDT電極12は、一対のくし歯状電極12a、12bを有する。一対のくし歯状電極12a、12bは、互いに間挿し合っている。くし歯状電極12a、12bのそれぞれは、バスバー12a1,12b1と、複数の電極指12a2,12b2とを有する。複数の電極指12a2のそれぞれは、バスバー12a1から、y方向に沿ってバスバー12b1側に向かって延びている。複数の電極指12a2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。一方、複数の電極指12b2のそれぞれは、バスバー12b1から、y方向に沿ってバスバー12a1側に向かって延びている。複数の電極指12b2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。
【0034】
本実施形態の弾性波装置1では、IDT電極12によって、板波が励振される。
【0035】
ここで、「板波」とは、2つの自由境界面に挟まれた媒質中を伝搬する弾性波である。
【0036】
板波には、ラム波とSH波とが含まれる。ラム波は、板波伝搬方向xの成分(P成分)と、圧電基板11の厚み方向の成分(SV成分)とを主とする弾性波である。一方、SH波は、板波伝搬方向に垂直で伝搬面に水平な方向yの成分(SH成分)を主とする弾性波である。
【0037】
ラム波には、対称モード(Sモード)のラム波と、非対称モード(Aモード)のラム波とが含まれる。Sモードのラム波には、厚み方向の節の数が0である図3に示すS0モードのラム波と、厚み方向の節の数が1である図4に示すS1モードのラム波とが含まれる。Aモードのラム波には、厚み方向の節の数が0である図5に示すA0モードのラム波と、厚み方向の節の数が1である図6に示すA1モードのラム波とが含まれる。さらに節の数が多い高次のラム波も含まれる。
【0038】
SH波には、厚み方向の節の数が0である図7に示すSH0モードのSH波と、厚み方向の節の数が1である図8に示すSH1モードのSH波とが含まれる。
【0039】
さらに、LiTaO3やLiNbO3などの圧電体は、結晶方位により弾性定数や圧電定数が異なるため弾性的に異方性を示し、異方性のある結晶を伝搬する板波は、P成分、SV成分、SH成分が結合しながら伝搬する。P成分とSV成分の振動変位が大きく、SH成分の振動変位が小さい板波もラム波に含み、P成分とSV成分の振動変位が小さく、SH成分の振動変位が大きい板波もSH波に含む。
【0040】
IDT電極12により励振された板波は、板波伝搬方向xに沿って伝搬する。
【0041】
IDT電極12の電極指12a2,12b2に電位を印加すると、圧電基板11に機械的歪みが生じて電極指12a2,12b2の各所で板波が励振される。これらの板波は、点波源で励起された要素波と考えられる。ホイヘンスの原理によれば、板波の要素波は、円弧上に放射され、周囲の要素波と重ね合わさり、交差幅方向yと平行な波面を形成する。
【0042】
IDT電極12の電極指12a2,12b2の長さは有限であるため、電極指12a2,12b2の端部より外側に板波の一部が漏洩する。漏洩した板波は、音響インピーダンスが不整合となる箇所で少なくとも一部が反射する。音響インピーダンスが不整合となる箇所としては、例えば、バスバーの端やメンブレンを構成する空洞の端縁部が挙げられる。特に、板波の場合は、空洞部10aの外側には板波は存在できないので、空洞部10aの端縁部で大きな反射を生じる。
【0043】
例えば、図19及び図20に示す従来の弾性波装置100では、空洞部101aが矩形であり、空洞部101aの長辺側の端縁部101a1,101a2が板波伝搬方向xと平行である。IDT電極105で励振され漏洩した板波は、端縁部101a1,101a2で入射角と同じ反射角で反射するため、平行な反射面で反射した場合、IDT電極105から漏洩したときと同じ角度で再入射したのちにIDT電極105で受信される。すなわち、空洞部101aの端縁部101a1,101a2において反射した板波の位相がメインモードと整合する。よって、反射波により弾性波装置100の周波数特性が劣化する。
【0044】
さらに、端縁部101a1と端縁部101a2とは平行であるため、端縁部101a1と端縁部101a2との間で板波が繰り返し反射され共振し、端縁部101a1と端縁部101a2との間に定在波が生じる。この定在波がメインモードに干渉し、弾性波装置100の周波数特性が大きく劣化する。弾性波装置100の動作周波数によりIDT電極105から漏洩する板波の波長が変動するため、定在波の波長も変わり、メインモードで重ねあわされることによりメインモード付近で多数のスプリアス応答やリップル応答を生じる。
【0045】
これに対し、本実施形態では、図9に示すように、空洞部10aの端縁部は、IDT電極12により励振される板波の伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。このため、空洞部10aの端縁部における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。よって、空洞部10aの端縁部において板波が反射したとしても、弾性波装置1の周波数特性は劣化し難い。すなわち、優れたデバイス特性を有する弾性波装置1を実現することができる。
【0046】
なお、空洞部をIDT電極に対して十分に大きくすれば、反射波の位相が整合した場合であっても、相対的に駆動域の面積が小さくなるため、IDT電極からの漏洩波を励振源とする定在波の振幅は小さくなり、反射波による周波数特性の劣化を抑制することができる。しかしながら、空洞部を大きくするためには支持体を大きくする必要があったり、各構成部材間の間隔を大きくする必要があったりするため、弾性波装置が大型化してしまう。
【0047】
それに対して本実施形態のように、空洞部10aの端縁部の形状を所定の形状にすることによって、反射波に起因する周波数特性の劣化を抑制する場合は、必ずしも空洞部10aを大きくする必要がない。従って、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置1を実現することができる。
【0048】
特に、空洞部10aの交差幅方向yにおける幅の最大値が、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である場合に、反射波に起因する周波数特性の劣化が生じやすい。このため、本実施形態の技術は、空洞部10aの交差幅方向yにおける幅の最大値が、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である、小型の弾性波装置に特に有用である。
【0049】
また、本実施形態では、IDT電極12を正規型のIDT電極により構成できるため、例えばアポダイズ重み付けを施したIDT電極を用いる場合と比較して、Q値の劣化を抑制することができる。
【0050】
具体的には、本実施形態では、空洞部10aの端縁部は、交差幅方向yに沿って延びる一対の端縁部10a1,10a2と、板波伝搬方向xと交差幅方向yとのそれぞれに対して傾斜した方向に延びる端縁部10a3〜10a6とを有する。ここで、端縁部10a3と端縁部10a5とは、板波伝搬方向xにおいて同じ位置に設けられている。そして、端縁部10a3と端縁部10a5とは、非平行である。すなわち、端縁部10a3と端縁部10a5とは、対向していない。また、端縁部10a4と端縁部10a6とは、板波伝搬方向xにおいて同じ位置に設けられている。そして、端縁部10a4と端縁部10a6とは、非平行である。すなわち、端縁部10a4と端縁部10a6とは、対向していない。また、端縁部10a3と端縁部10a6とは、平行であるが、板波伝搬方向xにおける位置が異なるため対向していない。同様に、端縁部10a4と端縁部10a5とは、平行であるが、板波伝搬方向xにおける位置が異なるため対向していない。よって、本実施形態では、空洞部10aの交差幅方向yに沿った幅が、板波伝搬方向xにおいて一定ではない。
【0051】
このように本実施形態では、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において、対向する一対の直線部を有さない。このため、空洞部10aの端縁部10a3〜10a6で反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、弾性波装置1の周波数特性の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0053】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。なお、図10及び下記の図11〜図15において、電極指12a2,12b2は描画を省略している。
【0054】
第2及の実施形態に係る弾性波装置は、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0055】
図10に示すように、第2の実施形態では、空洞部10aが、長手方向が板波伝搬方向xに沿った楕円形状に形成されている。このため、本実施形態においても、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を含まない。また、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。よって、上記第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置を実現することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0057】
第3の実施形態に係る弾性波装置は、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0058】
図11に示すように、第3の実施形態では、空洞部10aが、長手方向が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる矩形状に形成されている。このため、本実施形態においても、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を含まない。また、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。よって、上記第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置を実現することができる。
【0059】
(第4及び第5の実施形態)
図12は、第4の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。図13は、第5の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0060】
第4の実施形態に係る弾性波装置と第5の実施形態に係る弾性波装置とのそれぞれは、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0061】
第4及び第5の実施形態では、第1の実施形態よりも、IDT電極12に対する空洞部10aの大きさが小さい。具体的には、第4の実施形態では、空洞部10aは、バスバー12a1,12b1の少なくとも一部が空洞部10aの縁端部10a3、10a4、10a5,10a6と重なるように設けられている。このため、バスバー12a1,12b1の交差幅方向y外側の端縁部における板波の反射を抑制することができる。従って、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0062】
第5の実施形態では、空洞部10aは、複数の電極指12a2,12b2が設けられた領域が空洞部10aの縁端部10a3、10a4、10a5,10a6の少なくとも一部と重なるように設けられている。このため、バスバー12a1,12b1の交差幅方向yの外側の端縁部における板波の反射と共に、バスバー12a1,12b1の交差幅方向yの内側の電極指領域内における板波の反射も抑制することができる。従って、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。
【0063】
また、第4及び第5の実施形態では、空洞部10aをより小さくできるため、弾性波装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0064】
(第6の実施形態)
図14は、第6の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0065】
第6の実施形態は、IDT電極12及び反射器13,14の形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0066】
本実施形態では、IDT電極12には、アポダイズ重み付けが施されている。このため、IDT電極12のバスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる部分を有する。具体的には、バスバー12a1,12b1の全体が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びている。バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。よって、バスバー12a1,12b1における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。従って、バスバー12a1,12b1において板波が反射したとしても、弾性波装置の周波数特性は劣化し難い。すなわち、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態では、バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。このため、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。バスバー12a1,12b1において反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、優れたデバイス特性を実現することができる。
【0068】
(第7の実施形態)
図15は、第7の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。なお、第7の実施形態においては、図1及び図2を第1の実施形態と共通に参照する。
【0069】
本実施形態の弾性波装置は、支持体10を備えている。支持体10の構成材料は、特に限定されない。好ましく用いられる支持体10の構成材料の具体例としては、例えば、LiNbO3、LiTaO3、水晶、シリコン、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0070】
支持体10には、支持体10の主面10bに開口する空洞部10aが設けられている。支持体10の主面10bの上には、圧電基板11が設けられている。この圧電基板11は、z方向(積層方向)において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0071】
空洞部10aの形状は特に限定されない。本実施形態では、空洞部10aは、長手方向が板波伝搬方向xに沿った矩形状とである。
【0072】
空洞部10aの板波伝搬方向xに対して垂直な交差幅方向yにおける幅の最大値は、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である。
【0073】
圧電基板11は、適宜の圧電体により構成することができる。圧電基板11は、例えば、LiNbO3、LiTaO3、ZnO、AlN、水晶等により構成することができる。
【0074】
圧電基板11の厚みは、後に詳述する板波が好適に励振される程度である限りにおいて特に限定されない。例えば、オイラー角(0°,33°,0°)のLiTaO3膜を用いて後述するA1モードのラム波を励振する場合において、音速8400m/秒以上、電気機械結合係数k2を5.8%以上に設定するには、圧電基板11の厚みtは、IDT電極12により定められる波長の0.30倍以下であることが好ましい。
【0075】
圧電基板11の上には、アポダイズ重み付けを施したIDT電極12と、一対の反射器13,14が設けられている。本実施形態では、IDT電極12及び反射器13,14は、z方向において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0076】
IDT電極12及び反射器13,14は、適宜の導電材料により構成することができる。IDT電極12及び反射器13,14は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により構成することができる。また、IDT電極12及び反射器13,14は、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成することもできる。
【0077】
IDT電極12は、一対のくし歯状電極12a、12bを有する。一対のくし歯状電極12a、12bは、互いに間挿し合っている。くし歯状電極12a、12bのそれぞれは、バスバー12a1,12b1と、複数の電極指12a2,12b2とを有する。複数の電極指12a2のそれぞれは、バスバー12a1から、y方向に沿ってバスバー12b1側に向かって延びている。複数の電極指12a2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。一方、複数の電極指12b2のそれぞれは、バスバー12b1から、y方向に沿ってバスバー12a1側に向かって延びている。複数の電極指12b2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。
【0078】
本実施形態の弾性波装置では、IDT電極12によって、板波が励振される。IDT電極12により励振された板波は、板波伝搬方向xに沿って伝搬する。
【0079】
IDT電極12の電極指12a2,12b2に電位を印加すると、圧電基板11に機械的歪みが生じて電極指12a2,12b2の各所で板波が励振される。これらの板波は、点波源で励起された要素波と考えられる。ホイヘンスの原理によれば、板波の要素波は、円弧上に放射され、周囲の要素波と重ね合わさり、交差幅方向yと平行な波面を形成する。
【0080】
IDT電極12の電極指12a2,12b2の長さは有限であるため、電極指12a2,12b2の端部より外側に板波の一部が漏洩する。漏洩した板波は、音響インピーダンスが不整合となる箇所で少なくとも一部が反射する。音響インピーダンスが不整合となる箇所としては、例えば、バスバーの端やメンブレンを構成する空洞の端縁部が挙げられる。
【0081】
例えば、図19及び図20に示す従来の弾性波装置100では、IDT電極105のバスバー105a、105bが板波伝搬方向xと平行である。このため、バスバー105a、105bにおいて反射した板波の位相がメインモードと整合する。よって、反射波により弾性波装置100の周波数特性が劣化する。
【0082】
さらに、バスバー105aとバスバー105bとは平行であるため、バスバー105aとバスバー105bとの間で板波が繰り返し反射され共振するため、反射波により弾性波装置100の周波数特性が大きく劣化する。
【0083】
これに対し、本実施形態では、図15に示すように、IDT電極12には、アポダイズ重み付けが施されている。このため、IDT電極12のバスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる部分を有する。具体的には、バスバー12a1,12b1の全体が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びている。バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。よって、バスバー12a1,12b1における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。従って、バスバー12a1,12b1において板波が反射したとしても、弾性波装置の周波数特性は劣化し難い。すなわち、優れたデバイス特性を実現することができる。
【0084】
また、本実施形態では、バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。このため、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。バスバー12a1,12b1において反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。
【0085】
(第1〜第3の変形例)
図16は、第1の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。図17は、第2の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。図18は、第3の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。具体的には、図16〜図18は、図9のA部分に対応する部分の模式的断面図である。第1〜第3の変形例は、上記第1〜第7の実施形態のいずれにも適用可能なものである。
【0086】
図16〜図18に示すように、第1〜第3の変形例では、空洞部10aの端縁部は、複数の凹凸を有する。このため、板波は、空洞部10aの端縁部において乱反射される。よって、反射波は、定在波とならず、より共振しにくくなる。従って、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0087】
なお、端縁部の凹凸は、図16や図17に示すように周期的な構造であってもよいし、図18に示すように非周期的な構造であってもよい。具体的には、図16に示す第1の変形例では、端縁部がのこぎり歯状とされている。図17に示す第2の変形例では、端縁部に、半円状の凸部が複数形成されている。
【0088】
また、本発明で図示した図9から図15の構造は、IDT電極の中心に対して点対称や線対称とならないようにすることで、端縁部からの反射波の位相をずらして定在波の応答を小さくすることができ、スプリアスを抑制しやすくなる。従って、IDT電極は、点対称や線対称でないことが望ましい。
【0089】
また、空洞部は、支持基板を掘削することにより形成した窪みの上に圧電体を配して形成してもよいし、圧電体を掘削することにより形成した窪みの下に支持基板を配して形成してもよいし、基板上にSiO2やSiNなどからなる薄膜で枠を形成した支持基板を形成し、枠上に圧電体を配して形成してもよいし、圧電体上にSiO2やSiNなどからなる薄膜で枠を形成した圧電基板を形成し、枠下に支持基板を配して形成してもよい。
【0090】
特に、薄膜で枠を形成する方法は、フォトリソグラフィ技術を用いて簡易に行えるため、図9〜15に示すような矩形以外の複雑な形状や、図16〜図18に示すような形状を容易に、且つ、高精度に加工できるので望ましい。
【符号の説明】
【0091】
1…弾性波装置
10…支持体
10a…空洞部
10a1〜10a6…端縁部
10b…主面
11…圧電基板
12…IDT電極
12a、12b…くし歯状電極
12a1,12b1…バスバー
12a2,12b2…電極指
13,14…反射器
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。特に、本発明は、空洞部が形成された支持体と、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられているIDT電極とを備える弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば携帯電話機などのRF回路等に使用されるフィルタ装置や共振子として、弾性表面波装置や弾性境界波装置が用いられている。
【0003】
しかしながら、弾性表面波装置や弾性境界波装置では、共振周波数やフィルタ装置の通過帯域、阻止帯域などの周波数特性を十分に高周波化することは困難である。これに鑑み、例えば下記の特許文献1などにおいて、周波数特性を高周波化し得る弾性波装置として、ラム波を利用した弾性波装置が提案されている。
【0004】
具体的には、特許文献1には、図19及び図20に示すような弾性波装置100が記載されている。弾性波装置100は、基板101を備えている。基板101には、空洞部101aが設けられている。基板101の上には、積層共振体102が設けられている。この積層共振体102は、空洞部101aを覆うように配されている。積層共振体102は、下部電極層103と、下部圧電層104と、IDT電極105と、上部圧電層106と、上部電極層107とを有する。
【0005】
図20に示すように、積層共振体102のIDT電極105が設けられている部分は、空洞部101aの上に位置している。空洞部101aは、矩形状であり、空洞部101aの短辺の延びる方向と、IDT電極105の電極指の延びる方向yとは平行である。このため、空洞部101aの長辺の延びる方向は、IDT電極105によって励振される弾性波(ラム波)の伝搬方向xと平行である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−312164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
弾性波装置100では、不要波に起因するデバイス特性の劣化を十分に抑制することが困難であるため、十分に優れたデバイス特性を得ることが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、板波を利用した弾性波装置であって、優れたデバイス特性を有する弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極とを備えている。支持体には、空洞部が形成されている。圧電基板は、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている。IDT電極は、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられている。本発明に係る第1の弾性波装置では、IDT電極により板波が励振される。空洞部の端縁部は、IDT電極により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0010】
本発明に係る第1の弾性波装置のある特定の局面では、空洞部の端縁部は、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。
【0011】
本発明に係る第1の弾性波装置の他の特定の局面では、空洞部の板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向における幅の最大値がIDT電極の電極指ピッチにより定められる波長の50倍以下である。
【0012】
本発明に係る第1の弾性波装置の別の特定の局面では、IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。空洞部の辺縁の少なくとも一部がバスバーと重なるように設けられている。
【0013】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらに他の特定の局面では、空洞部は、複数の電極指が設けられた領域の少なくとも一部が空洞部の辺縁部と重なるように設けられている。
【0014】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらに別の特定の局面では、空洞部の端縁部は、複数の凹凸を有する。
【0015】
本発明に係る第1の弾性波装置のまた他の特定の局面では、IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。バスバーは、板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する。
【0016】
本発明に係る第1の弾性波装置のまた別の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0017】
本発明に係る第1の弾性波装置のさらにまた他の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。
【0018】
本発明に係る第2の弾性波装置は、支持体と、圧電基板と、IDT電極とを備えている。支持体には、空洞部が形成されている。圧電基板は、支持体の上に空洞部と重なるように設けられている。IDT電極は、圧電基板の上に空洞部と重なるように設けられている。本発明に係る第2の弾性波装置では、IDT電極により板波が励振される。IDT電極は、バスバーと、バスバーから板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備えている。バスバーは、板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する。
【0019】
本発明に係る第2の弾性波装置のある特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない。
【0020】
本発明に係る第2の弾性波装置の別の特定の局面では、バスバーは、板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、板波を利用した弾性波装置であって、優れたデバイス特性を有する弾性波装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態に係る弾性波装置の部分切欠略図的斜視図である。
【図2】図1の線II−IIにおける略図的断面図である。
【図3】S0モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図4】S1モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図5】A0モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図6】A1モードのラム波を説明するための模式的平面図である。
【図7】SH0モードのSH波を説明するための模式的平面図である。
【図8】SH1モードのSH波を説明するための模式的平面図である。
【図9】第1の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図10】第2の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図11】第3の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図12】第4の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図13】第5の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図14】第6の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図15】第7の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【図16】第1の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図17】第2の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図18】第3の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。
【図19】特許文献1に記載された弾性波装置の模式的断面図である。
【図20】特許文献1に記載された弾性波装置の模式的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0024】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る弾性波装置の部分切欠略図的斜視図である。図2は、図1の線II−IIにおける略図的断面図である。
【0026】
図1及び図2に示すように、弾性波装置1は、支持体10を備えている。支持体10の構成材料は、特に限定されない。好ましく用いられる支持体10の構成材料の具体例としては、例えば、LiNbO3、LiTaO3、水晶、シリコン、ガラス、サファイア、アルミナ、セラミック等が挙げられる。
【0027】
支持体10には、支持体10の主面10bに開口する空洞部10aが設けられている。支持体10の主面10bの上には、圧電基板11が設けられている。この圧電基板11は、z方向(積層方向)において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0028】
空洞部10aの板波伝搬方向xに対して垂直な交差幅方向yにおける幅の最大値は、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である。
【0029】
圧電基板11は、適宜の圧電体により構成することができる。圧電基板11は、例えば、LiNbO3、LiTaO3、ZnO、AlN、水晶等により構成することができる。
【0030】
圧電基板11の厚みtは、後に詳述する板波が好適に励振される程度である限りにおいて特に限定されない。例えば、オイラー角(0°,33°,0°)のLiTaO3膜を用いて後述するA1モードのラム波を励振する場合において、音速8400m/秒以上、電気機械結合係数k2を5.8%以上に設定するには、圧電基板11の厚みtは、IDT電極12により定められる波長の0.30倍以下であることが好ましい。
【0031】
圧電基板11の上には、正規型のIDT電極12と、一対の反射器13,14が設けられている。一対の反射器13,14は、IDT電極12の板波伝搬方向xの両側に配置されている。本実施形態では、IDT電極12及び反射器13,14は、z方向において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0032】
IDT電極12及び反射器13,14は、適宜の導電材料により構成することができる。IDT電極12及び反射器13,14は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により構成することができる。また、IDT電極12及び反射器13,14は、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成することもできる。
【0033】
IDT電極12は、一対のくし歯状電極12a、12bを有する。一対のくし歯状電極12a、12bは、互いに間挿し合っている。くし歯状電極12a、12bのそれぞれは、バスバー12a1,12b1と、複数の電極指12a2,12b2とを有する。複数の電極指12a2のそれぞれは、バスバー12a1から、y方向に沿ってバスバー12b1側に向かって延びている。複数の電極指12a2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。一方、複数の電極指12b2のそれぞれは、バスバー12b1から、y方向に沿ってバスバー12a1側に向かって延びている。複数の電極指12b2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。
【0034】
本実施形態の弾性波装置1では、IDT電極12によって、板波が励振される。
【0035】
ここで、「板波」とは、2つの自由境界面に挟まれた媒質中を伝搬する弾性波である。
【0036】
板波には、ラム波とSH波とが含まれる。ラム波は、板波伝搬方向xの成分(P成分)と、圧電基板11の厚み方向の成分(SV成分)とを主とする弾性波である。一方、SH波は、板波伝搬方向に垂直で伝搬面に水平な方向yの成分(SH成分)を主とする弾性波である。
【0037】
ラム波には、対称モード(Sモード)のラム波と、非対称モード(Aモード)のラム波とが含まれる。Sモードのラム波には、厚み方向の節の数が0である図3に示すS0モードのラム波と、厚み方向の節の数が1である図4に示すS1モードのラム波とが含まれる。Aモードのラム波には、厚み方向の節の数が0である図5に示すA0モードのラム波と、厚み方向の節の数が1である図6に示すA1モードのラム波とが含まれる。さらに節の数が多い高次のラム波も含まれる。
【0038】
SH波には、厚み方向の節の数が0である図7に示すSH0モードのSH波と、厚み方向の節の数が1である図8に示すSH1モードのSH波とが含まれる。
【0039】
さらに、LiTaO3やLiNbO3などの圧電体は、結晶方位により弾性定数や圧電定数が異なるため弾性的に異方性を示し、異方性のある結晶を伝搬する板波は、P成分、SV成分、SH成分が結合しながら伝搬する。P成分とSV成分の振動変位が大きく、SH成分の振動変位が小さい板波もラム波に含み、P成分とSV成分の振動変位が小さく、SH成分の振動変位が大きい板波もSH波に含む。
【0040】
IDT電極12により励振された板波は、板波伝搬方向xに沿って伝搬する。
【0041】
IDT電極12の電極指12a2,12b2に電位を印加すると、圧電基板11に機械的歪みが生じて電極指12a2,12b2の各所で板波が励振される。これらの板波は、点波源で励起された要素波と考えられる。ホイヘンスの原理によれば、板波の要素波は、円弧上に放射され、周囲の要素波と重ね合わさり、交差幅方向yと平行な波面を形成する。
【0042】
IDT電極12の電極指12a2,12b2の長さは有限であるため、電極指12a2,12b2の端部より外側に板波の一部が漏洩する。漏洩した板波は、音響インピーダンスが不整合となる箇所で少なくとも一部が反射する。音響インピーダンスが不整合となる箇所としては、例えば、バスバーの端やメンブレンを構成する空洞の端縁部が挙げられる。特に、板波の場合は、空洞部10aの外側には板波は存在できないので、空洞部10aの端縁部で大きな反射を生じる。
【0043】
例えば、図19及び図20に示す従来の弾性波装置100では、空洞部101aが矩形であり、空洞部101aの長辺側の端縁部101a1,101a2が板波伝搬方向xと平行である。IDT電極105で励振され漏洩した板波は、端縁部101a1,101a2で入射角と同じ反射角で反射するため、平行な反射面で反射した場合、IDT電極105から漏洩したときと同じ角度で再入射したのちにIDT電極105で受信される。すなわち、空洞部101aの端縁部101a1,101a2において反射した板波の位相がメインモードと整合する。よって、反射波により弾性波装置100の周波数特性が劣化する。
【0044】
さらに、端縁部101a1と端縁部101a2とは平行であるため、端縁部101a1と端縁部101a2との間で板波が繰り返し反射され共振し、端縁部101a1と端縁部101a2との間に定在波が生じる。この定在波がメインモードに干渉し、弾性波装置100の周波数特性が大きく劣化する。弾性波装置100の動作周波数によりIDT電極105から漏洩する板波の波長が変動するため、定在波の波長も変わり、メインモードで重ねあわされることによりメインモード付近で多数のスプリアス応答やリップル応答を生じる。
【0045】
これに対し、本実施形態では、図9に示すように、空洞部10aの端縁部は、IDT電極12により励振される板波の伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。このため、空洞部10aの端縁部における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。よって、空洞部10aの端縁部において板波が反射したとしても、弾性波装置1の周波数特性は劣化し難い。すなわち、優れたデバイス特性を有する弾性波装置1を実現することができる。
【0046】
なお、空洞部をIDT電極に対して十分に大きくすれば、反射波の位相が整合した場合であっても、相対的に駆動域の面積が小さくなるため、IDT電極からの漏洩波を励振源とする定在波の振幅は小さくなり、反射波による周波数特性の劣化を抑制することができる。しかしながら、空洞部を大きくするためには支持体を大きくする必要があったり、各構成部材間の間隔を大きくする必要があったりするため、弾性波装置が大型化してしまう。
【0047】
それに対して本実施形態のように、空洞部10aの端縁部の形状を所定の形状にすることによって、反射波に起因する周波数特性の劣化を抑制する場合は、必ずしも空洞部10aを大きくする必要がない。従って、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置1を実現することができる。
【0048】
特に、空洞部10aの交差幅方向yにおける幅の最大値が、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である場合に、反射波に起因する周波数特性の劣化が生じやすい。このため、本実施形態の技術は、空洞部10aの交差幅方向yにおける幅の最大値が、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である、小型の弾性波装置に特に有用である。
【0049】
また、本実施形態では、IDT電極12を正規型のIDT電極により構成できるため、例えばアポダイズ重み付けを施したIDT電極を用いる場合と比較して、Q値の劣化を抑制することができる。
【0050】
具体的には、本実施形態では、空洞部10aの端縁部は、交差幅方向yに沿って延びる一対の端縁部10a1,10a2と、板波伝搬方向xと交差幅方向yとのそれぞれに対して傾斜した方向に延びる端縁部10a3〜10a6とを有する。ここで、端縁部10a3と端縁部10a5とは、板波伝搬方向xにおいて同じ位置に設けられている。そして、端縁部10a3と端縁部10a5とは、非平行である。すなわち、端縁部10a3と端縁部10a5とは、対向していない。また、端縁部10a4と端縁部10a6とは、板波伝搬方向xにおいて同じ位置に設けられている。そして、端縁部10a4と端縁部10a6とは、非平行である。すなわち、端縁部10a4と端縁部10a6とは、対向していない。また、端縁部10a3と端縁部10a6とは、平行であるが、板波伝搬方向xにおける位置が異なるため対向していない。同様に、端縁部10a4と端縁部10a5とは、平行であるが、板波伝搬方向xにおける位置が異なるため対向していない。よって、本実施形態では、空洞部10aの交差幅方向yに沿った幅が、板波伝搬方向xにおいて一定ではない。
【0051】
このように本実施形態では、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において、対向する一対の直線部を有さない。このため、空洞部10aの端縁部10a3〜10a6で反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、弾性波装置1の周波数特性の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0053】
(第2の実施形態)
図10は、第2の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。なお、図10及び下記の図11〜図15において、電極指12a2,12b2は描画を省略している。
【0054】
第2及の実施形態に係る弾性波装置は、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0055】
図10に示すように、第2の実施形態では、空洞部10aが、長手方向が板波伝搬方向xに沿った楕円形状に形成されている。このため、本実施形態においても、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を含まない。また、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。よって、上記第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置を実現することができる。
【0056】
(第3の実施形態)
図11は、第3の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0057】
第3の実施形態に係る弾性波装置は、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0058】
図11に示すように、第3の実施形態では、空洞部10aが、長手方向が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる矩形状に形成されている。このため、本実施形態においても、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を含まない。また、空洞部10aの端縁部は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を含まない。よって、上記第1の実施形態と同様に、本実施形態においても、優れたデバイス特性を有し、且つ小型である弾性波装置を実現することができる。
【0059】
(第4及び第5の実施形態)
図12は、第4の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。図13は、第5の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0060】
第4の実施形態に係る弾性波装置と第5の実施形態に係る弾性波装置とのそれぞれは、空洞部10aの形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0061】
第4及び第5の実施形態では、第1の実施形態よりも、IDT電極12に対する空洞部10aの大きさが小さい。具体的には、第4の実施形態では、空洞部10aは、バスバー12a1,12b1の少なくとも一部が空洞部10aの縁端部10a3、10a4、10a5,10a6と重なるように設けられている。このため、バスバー12a1,12b1の交差幅方向y外側の端縁部における板波の反射を抑制することができる。従って、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0062】
第5の実施形態では、空洞部10aは、複数の電極指12a2,12b2が設けられた領域が空洞部10aの縁端部10a3、10a4、10a5,10a6の少なくとも一部と重なるように設けられている。このため、バスバー12a1,12b1の交差幅方向yの外側の端縁部における板波の反射と共に、バスバー12a1,12b1の交差幅方向yの内側の電極指領域内における板波の反射も抑制することができる。従って、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。
【0063】
また、第4及び第5の実施形態では、空洞部10aをより小さくできるため、弾性波装置のさらなる小型化を図ることができる。
【0064】
(第6の実施形態)
図14は、第6の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。
【0065】
第6の実施形態は、IDT電極12及び反射器13,14の形状が異なる点を除いて、上記第1の実施形態と実質的に同様の構成を有する。
【0066】
本実施形態では、IDT電極12には、アポダイズ重み付けが施されている。このため、IDT電極12のバスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる部分を有する。具体的には、バスバー12a1,12b1の全体が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びている。バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。よって、バスバー12a1,12b1における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。従って、バスバー12a1,12b1において板波が反射したとしても、弾性波装置の周波数特性は劣化し難い。すなわち、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0067】
また、本実施形態では、バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。このため、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。バスバー12a1,12b1において反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、優れたデバイス特性を実現することができる。
【0068】
(第7の実施形態)
図15は、第7の実施形態における空洞部とIDT電極との模式的平面図である。なお、第7の実施形態においては、図1及び図2を第1の実施形態と共通に参照する。
【0069】
本実施形態の弾性波装置は、支持体10を備えている。支持体10の構成材料は、特に限定されない。好ましく用いられる支持体10の構成材料の具体例としては、例えば、LiNbO3、LiTaO3、水晶、シリコン、ガラス、セラミック等が挙げられる。
【0070】
支持体10には、支持体10の主面10bに開口する空洞部10aが設けられている。支持体10の主面10bの上には、圧電基板11が設けられている。この圧電基板11は、z方向(積層方向)において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0071】
空洞部10aの形状は特に限定されない。本実施形態では、空洞部10aは、長手方向が板波伝搬方向xに沿った矩形状とである。
【0072】
空洞部10aの板波伝搬方向xに対して垂直な交差幅方向yにおける幅の最大値は、IDT電極12により定められる波長の50倍以下である。
【0073】
圧電基板11は、適宜の圧電体により構成することができる。圧電基板11は、例えば、LiNbO3、LiTaO3、ZnO、AlN、水晶等により構成することができる。
【0074】
圧電基板11の厚みは、後に詳述する板波が好適に励振される程度である限りにおいて特に限定されない。例えば、オイラー角(0°,33°,0°)のLiTaO3膜を用いて後述するA1モードのラム波を励振する場合において、音速8400m/秒以上、電気機械結合係数k2を5.8%以上に設定するには、圧電基板11の厚みtは、IDT電極12により定められる波長の0.30倍以下であることが好ましい。
【0075】
圧電基板11の上には、アポダイズ重み付けを施したIDT電極12と、一対の反射器13,14が設けられている。本実施形態では、IDT電極12及び反射器13,14は、z方向において、空洞部10aと重なるように設けられている。
【0076】
IDT電極12及び反射器13,14は、適宜の導電材料により構成することができる。IDT電極12及び反射器13,14は、例えば、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた金属、もしくは、Al,Pt,Au,Ag,Cu,Ni,Ti,Cr及びPdからなる群から選ばれた一種以上の金属を含む合金により構成することができる。また、IDT電極12及び反射器13,14は、上記金属や合金からなる複数の導電膜の積層体により構成することもできる。
【0077】
IDT電極12は、一対のくし歯状電極12a、12bを有する。一対のくし歯状電極12a、12bは、互いに間挿し合っている。くし歯状電極12a、12bのそれぞれは、バスバー12a1,12b1と、複数の電極指12a2,12b2とを有する。複数の電極指12a2のそれぞれは、バスバー12a1から、y方向に沿ってバスバー12b1側に向かって延びている。複数の電極指12a2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。一方、複数の電極指12b2のそれぞれは、バスバー12b1から、y方向に沿ってバスバー12a1側に向かって延びている。複数の電極指12b2は、x方向に沿って相互に間隔をおいて配列されている。
【0078】
本実施形態の弾性波装置では、IDT電極12によって、板波が励振される。IDT電極12により励振された板波は、板波伝搬方向xに沿って伝搬する。
【0079】
IDT電極12の電極指12a2,12b2に電位を印加すると、圧電基板11に機械的歪みが生じて電極指12a2,12b2の各所で板波が励振される。これらの板波は、点波源で励起された要素波と考えられる。ホイヘンスの原理によれば、板波の要素波は、円弧上に放射され、周囲の要素波と重ね合わさり、交差幅方向yと平行な波面を形成する。
【0080】
IDT電極12の電極指12a2,12b2の長さは有限であるため、電極指12a2,12b2の端部より外側に板波の一部が漏洩する。漏洩した板波は、音響インピーダンスが不整合となる箇所で少なくとも一部が反射する。音響インピーダンスが不整合となる箇所としては、例えば、バスバーの端やメンブレンを構成する空洞の端縁部が挙げられる。
【0081】
例えば、図19及び図20に示す従来の弾性波装置100では、IDT電極105のバスバー105a、105bが板波伝搬方向xと平行である。このため、バスバー105a、105bにおいて反射した板波の位相がメインモードと整合する。よって、反射波により弾性波装置100の周波数特性が劣化する。
【0082】
さらに、バスバー105aとバスバー105bとは平行であるため、バスバー105aとバスバー105bとの間で板波が繰り返し反射され共振するため、反射波により弾性波装置100の周波数特性が大きく劣化する。
【0083】
これに対し、本実施形態では、図15に示すように、IDT電極12には、アポダイズ重み付けが施されている。このため、IDT電極12のバスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びる部分を有する。具体的には、バスバー12a1,12b1の全体が板波伝搬方向xと傾斜した方向に延びている。バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向xと平行に延びる直線部を有さない。よって、バスバー12a1,12b1における反射波の位相が、メインモードの位相と整合しにくい。従って、バスバー12a1,12b1において板波が反射したとしても、弾性波装置の周波数特性は劣化し難い。すなわち、優れたデバイス特性を実現することができる。
【0084】
また、本実施形態では、バスバー12a1,12b1は、板波伝搬方向x以外の方向において対向する一対の直線部を有さない。このため、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。バスバー12a1,12b1において反射された板波は、振幅の強い共振を起こしにくい。従って、さらに優れたデバイス特性を実現することができる。
【0085】
(第1〜第3の変形例)
図16は、第1の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。図17は、第2の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。図18は、第3の変形例における空洞部の一部分を表す模式的断面図である。具体的には、図16〜図18は、図9のA部分に対応する部分の模式的断面図である。第1〜第3の変形例は、上記第1〜第7の実施形態のいずれにも適用可能なものである。
【0086】
図16〜図18に示すように、第1〜第3の変形例では、空洞部10aの端縁部は、複数の凹凸を有する。このため、板波は、空洞部10aの端縁部において乱反射される。よって、反射波は、定在波とならず、より共振しにくくなる。従って、より優れたデバイス特性を実現することができる。
【0087】
なお、端縁部の凹凸は、図16や図17に示すように周期的な構造であってもよいし、図18に示すように非周期的な構造であってもよい。具体的には、図16に示す第1の変形例では、端縁部がのこぎり歯状とされている。図17に示す第2の変形例では、端縁部に、半円状の凸部が複数形成されている。
【0088】
また、本発明で図示した図9から図15の構造は、IDT電極の中心に対して点対称や線対称とならないようにすることで、端縁部からの反射波の位相をずらして定在波の応答を小さくすることができ、スプリアスを抑制しやすくなる。従って、IDT電極は、点対称や線対称でないことが望ましい。
【0089】
また、空洞部は、支持基板を掘削することにより形成した窪みの上に圧電体を配して形成してもよいし、圧電体を掘削することにより形成した窪みの下に支持基板を配して形成してもよいし、基板上にSiO2やSiNなどからなる薄膜で枠を形成した支持基板を形成し、枠上に圧電体を配して形成してもよいし、圧電体上にSiO2やSiNなどからなる薄膜で枠を形成した圧電基板を形成し、枠下に支持基板を配して形成してもよい。
【0090】
特に、薄膜で枠を形成する方法は、フォトリソグラフィ技術を用いて簡易に行えるため、図9〜15に示すような矩形以外の複雑な形状や、図16〜図18に示すような形状を容易に、且つ、高精度に加工できるので望ましい。
【符号の説明】
【0091】
1…弾性波装置
10…支持体
10a…空洞部
10a1〜10a6…端縁部
10b…主面
11…圧電基板
12…IDT電極
12a、12b…くし歯状電極
12a1,12b1…バスバー
12a2,12b2…電極指
13,14…反射器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部が形成された支持体と、
前記支持体の上に前記空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、
前記圧電基板の上に前記空洞部と重なるように設けられているIDT電極と、
を備え、
前記IDT電極により板波が励振される弾性波装置であって、
前記空洞部の端縁部は、前記IDT電極により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、弾性波装置。
【請求項2】
前記空洞部の端縁部は、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を含まない、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記空洞部の前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向における幅の最大値が前記IDT電極の電極指ピッチにより定められる波長の50倍以下である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記空洞部の辺縁の少なくとも一部が前記バスバーと重なるように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記空洞部は、前記複数の電極指が設けられた領域の少なくとも一部が前記空洞部の辺縁部と重なるように設けられている、請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記空洞部の端縁部は、複数の凹凸を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、請求項7に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない、請求項7または8に記載の弾性波装置。
【請求項10】
空洞部が形成された支持体と、
前記支持体の上に前記空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、
前記圧電基板の上に前記空洞部と重なるように設けられているIDT電極と、
を備え、
前記IDT電極により板波が励振される弾性波装置であって、
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する、弾性波装置。
【請求項11】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、請求項10に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない、請求項10または11に記載の弾性波装置。
【請求項1】
空洞部が形成された支持体と、
前記支持体の上に前記空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、
前記圧電基板の上に前記空洞部と重なるように設けられているIDT電極と、
を備え、
前記IDT電極により板波が励振される弾性波装置であって、
前記空洞部の端縁部は、前記IDT電極により励振される板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、弾性波装置。
【請求項2】
前記空洞部の端縁部は、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を含まない、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記空洞部の前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向における幅の最大値が前記IDT電極の電極指ピッチにより定められる波長の50倍以下である、請求項1または2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記空洞部の辺縁の少なくとも一部が前記バスバーと重なるように設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記空洞部は、前記複数の電極指が設けられた領域の少なくとも一部が前記空洞部の辺縁部と重なるように設けられている、請求項4に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記空洞部の端縁部は、複数の凹凸を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、請求項7に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない、請求項7または8に記載の弾性波装置。
【請求項10】
空洞部が形成された支持体と、
前記支持体の上に前記空洞部と重なるように設けられている圧電基板と、
前記圧電基板の上に前記空洞部と重なるように設けられているIDT電極と、
を備え、
前記IDT電極により板波が励振される弾性波装置であって、
前記IDT電極は、バスバーと、前記バスバーから前記板波の伝搬方向と垂直な交差幅方向に沿って延びる複数の電極指とを有し、互いに間挿し合っている一対のくし歯状電極を備え、
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と傾斜した方向に延びる部分を有する、弾性波装置。
【請求項11】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向と平行に延びる直線部を含まない、請求項10に記載の弾性波装置。
【請求項12】
前記バスバーは、前記板波の伝搬方向以外の方向において対向する一対の直線部を有さない、請求項10または11に記載の弾性波装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−257019(P2012−257019A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128093(P2011−128093)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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