説明

弾性波装置

【課題】挿入損失が少なく、効率の高い弾性波装置を提供する。
【解決手段】弾性波の逆速度面が凹となる圧電基板12と、この圧電基板の表面に設けられた一対の櫛形電極15を有する弾性波共振器13とを備え、前記一対の櫛形電極は、対向する一対の共通電極16と、前記それぞれの共通電極から他方の共通電極側に交互に延出された複数の電極指17とを有し、前記電極指が交差する領域を交差領域とし、前記電極指の先端と対向する櫛形電極との間のギャップ19を結ぶ領域をギャップ領域としたとき、前記交差領域における圧電基板の表面の高さよりも圧電基板の表面の高さが低くなるように前記ギャップ領域に段差25を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信機器等の高周波フィルタとして使用される弾性波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3(a)は、従来の弾性波装置の電極パターン図、図3(b)は図3(a)におけるC−C’線の断面図である。
【0003】
図3(a)、図3(b)において、弾性波装置1は、圧電基板2の上において、一対の反射電極3の間に、共通電極4に接続された複数の電極指5から成る櫛形電極6を互いに交差させて、弾性波共振器を構成したものである。
【0004】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−68959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、通信機器の小型化や周波数帯域の高密度化が進むにつれて、これらの通信機器が確実に動作するためには、より挿入損失が少なく高効率の弾性波装置が必要とされてきている。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、挿入損失が少なく、効率の高い弾性波装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、弾性波の逆速度面が凹となる圧電基板と、この圧電基板の表面に設けられた一対の櫛形電極を有する弾性波共振器とを備え、前記一対の櫛形電極は、対向する一対の共通電極と、前記それぞれの共通電極から他方の共通電極側に交互に延出された複数の電極指とを有し、前記電極指が交差する領域を交差領域とし、前記電極指の先端と対向する櫛形電極との間のギャップを結ぶ領域をギャップ領域としたとき、前記交差領域における圧電基板の表面の高さよりも圧電基板の表面の高さが低くなるように前記ギャップ領域に段差を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成を有することにより、本発明の弾性波装置は、弾性波の共振エネルギーを弾性波導波路の中に閉じ込めるにあたって、弾性波の進行方向に垂直な両サイドにおける弾性波エネルギーの散逸を低減させることができ、弾性波装置の挿入損失を低減することができるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態における弾性波装置を示す平面図と断面図
【図2】同弾性波装置の要部拡大図
【図3】従来の弾性波装置を示す平面図と断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態における弾性表面波装置について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1(a)は本発明の一実施の形態における弾性波装置の平面図、図1(b)は図1(a)におけるA−A’線の断面図、図1(c)は図1(a)におけるB−B’線の断面図、図2は図1(a)の要部拡大図である。
【0013】
図1(a)〜(c)および図2において、弾性波装置11は、回転YカットX伝播のタンタル酸リチウム単結晶からなる圧電基板12の表面に弾性波共振器13を設けたものである。
【0014】
この弾性波共振器13は、圧電基板12の弾性波の伝播方向に沿って、一対の反射電極14と、この反射電極14の間に一対の櫛形電極15を設けたものである。
【0015】
この一対の櫛形電極15は、対向する一対の共通電極16と、それぞれの共通電極16から他方の共通電極16側に交互に延出された複数の電極指17を有し、この電極指17を互いに交差させたものである。一方の共通電極16から延伸した電極指17の延伸方向には、他方の共通電極16から延出したダミー電極指18を設け、電極指17の先端とダミー電極指18の先端はギャップ19を隔てて向かい合わせている。櫛形電極15の両端は、入出力端子20に接続している。
【0016】
この弾性波共振器13において、電極指17を互いに交差させた領域が交差領域21であり、ダミー電極指18を設けた領域がダミー領域22であり、ギャップ19を結ぶ領域がギャップ領域23である。
【0017】
そして、本発明は、ギャップ領域23からダミー領域22にかけて、電極指17およびダミー電極指18が形成されていない圧電基板12の表面に凹部24を設け、凹部24における圧電基板12の表面の高さを交差領域21における圧電基板12の表面の高さよりも低くし、ギャップ領域23における圧電基板12の表面に段差25を形成したものである。
【0018】
このように、電極指17とダミー電極指18の間のギャップ19を結ぶギャップ領域23に、電極指17の先端から先方の圧電基板12の表面の高さが低くなるように段差25を設けたことにより、交差領域21の端辺において弾性波を反射させる効果を付与することができ、これによって、弾性波導波路の両側辺における弾性エネルギーの散逸による損失を低減することができ、挿入損失が少なく、効率の高い弾性波装置11を実現することができるものである。
【0019】
なお、本実施の形態においては、弾性波共振器13はダミー電極指18を有していたが、ダミー電極指18を有さない弾性波共振器13においても同様の効果を有するものである。すなわち、ダミー電極指18を有さない弾性波共振器13において、交差する電極指17の先端とこれに対向する共通電極16との間のギャップ19を結ぶギャップ領域23に、電極指17の先端から先方の圧電基板12の表面の高さが低くなるように段差25を設けることによって、交差領域21の端辺において弾性波を反射させる効果を付与することができ、これによって、弾性波導波路の両側辺における弾性エネルギーの散逸による損失を低減することができ、同様に、挿入損失が少なく、効率の高い弾性波装置11を実現することができるものである。
【0020】
さらに、圧電基板12として、回転YカットX伝播のタンタル酸リチウム単結晶のように、弾性波の逆速度面が凹となるものを用い、ダミー領域22における圧電基板12の表面の高さを、交差領域21における圧電基板12の表面の高さよりも低くすることによって、弾性波共振器13の両側辺での弾性エネルギーの閉じ込め効果を強化することができる。これによって、弾性エネルギーの散逸による弾性波共振器13の損失を低減することができ、挿入損失が少なく、効率の高い弾性波装置11を実現することができるものである。
【0021】
なお、本実施の形態においては、弾性波共振器13は、一端子対の弾性波共振器であったが、一対の櫛形電極15を複数個備えた多重モード弾性波共振器であっても、同様の効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る弾性表面波装置は、主として移動体通信機器に用いられる高周波フィルタにおいて有用となる。
【符号の説明】
【0023】
11 弾性波装置
12 圧電基板
13 弾性波共振器
15 櫛形電極
16 共通電極
17 電極指
18 ダミー電極指
19 ギャップ
21 交差領域
22 ダミー領域
23 ギャップ領域
24 凹部
25 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波の逆速度面が凹となる圧電基板と、この圧電基板の表面に設けられた一対の櫛形電極を有する弾性波共振器とを備え、前記一対の櫛形電極は、対向する一対の共通電極と、前記それぞれの共通電極から他方の共通電極側に交互に延出された複数の電極指とを有し、前記電極指が交差する領域を交差領域とし、前記電極指の先端と対向する櫛形電極との間のギャップを結ぶ領域をギャップ領域としたとき、前記交差領域における圧電基板の表面の高さよりも圧電基板の表面の高さが低くなるように前記ギャップ領域に段差を設けた弾性波装置。
【請求項2】
前記一対の櫛形電極は、前記電極指の延伸方向に他方の共通電極から延出したダミー電極指を有し、前記ダミー電極指を設けたダミー領域における圧電基板の表面の高さを、前記交差領域における圧電基板の表面の高さよりも低くした請求項1記載の弾性波装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−106171(P2013−106171A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248334(P2011−248334)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】