説明

弾性編地

【課題】 肌触りが良好で吸放湿性に優れ、軽量で且つセルロース繊維ストレッチ素材の洗濯による風合変化や伸長回復率の低下が軽減された弾性編地の提供。
【解決手段】 沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維とが交編されていることを特徴とする弾性編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維を含有する弾性編地に関する。特に、インナーウエアー用途、スポーツウエアー用途、アウターウエアー用途等に好適な、肌触りが良好で吸放湿性に優れ、軽量感があって、洗濯後も運動追随性を維持し、風合変化が少ない編地に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、綿を代表とするセルロース系繊維のその優れた吸汗性、吸湿性が好まれ、インナーウエアー用途、スポーツウエアー用途、アウターウエアー用途などに使用されている。
近年、身体にフィットして動きやすい編地が一般的となるに伴い、セルロース繊維を使用した編地においても弾性繊維を混用するようになってきた。しかしながら、セルロース繊維は熱セット性が無いため、軽量化するために編地密度を粗くすると弾性繊維の収縮力により編目が浮き、肌触りや表面品位を損なうという問題があった。さらにセルロース繊維は洗濯を繰り返すと膠着をおこして硬くなるという性質があるため、着用を繰り返している間に、糸がやせ細り、薄地化したり、風合が硬くなりやすいという問題があるため、弾性繊維と混用した場合に洗濯により、伸張回復性が低下し、着用による形態変化を起こしやすいという問題があった。
【0003】
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維を含有する編地として、特許文献1に弾性糸を芯に該セルロースフィラメント繊維を鞘にしたカバリング糸を用いた経編地が、目ズレの無い品位良好な肌着用の生地として記載されている。しかしながら、このようなカバー糸はSまたはZの撚りが入っているため、斜行を抑えるためSおよびZの両方を編みこむ必要があり、編目の撚れによるざらつきが生じ、風合および肌触りが良好とはいえない。また、セルロース繊維は熱セット性がないため、カバリング糸の伸張セットによる表面の平滑化は期待できず、肌触りの点で満足するものは得られていない。
【特許文献1】特開2004−131890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決し、肌触りが良好で吸湿性が良く、軽量で且つセルロース繊維ストレッチ素材の洗濯による風合変化や伸長回復率の低下を軽減し、着用による形態変化を抑制した生地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維とを交編することにより前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維とが交編されていることを特徴とする弾性編地。
(2)該セルロース系繊維の洗濯後の糸径保持率が75%以上である上記(1)記載の弾性編地。
【発明の効果】
【0006】
本発明の弾性編地は、従来のセルロース系繊維を用いた弾性編地に比べ、肌触りが良好で吸湿性が良く、軽量で且つ洗濯後の伸張回復率の低下が少なく、風合変化、形態変化の小さいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、特にその好ましい形態を中心に、以下具体的に説明する。
本発明の弾性編地は、セルロース系繊維と弾性繊維とが交編されたものである。
本発明は、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上好ましくは7%以上、特に好ましくは10%以上、50%以下のセルロース系繊維を用いることに最大の特徴があり、SBが4%以上であると編地となした時に充分な嵩高性と軽量感が得られる。尚、SBが大きすぎると、嵩高性は大きいものの、凹凸感のある編地となり外観が損なわれる傾向がある。伸縮伸長率はJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定した。
【0008】
本発明においてさらに好ましい要件としては、沸水処理前後の伸縮伸長率の比(SB/S0)が0.5以上特に好ましくは0.7以上、10以下であると、編地となした時に極めて大きな嵩高性と軽量感が得られる。SB/S0が0.5未満では、精練や染色に基づく熱水処理で嵩高性が損なわれることがあり、10を超えると、嵩高性は大きいものの、凹凸感のある編織物となり外観が損なわれる傾向がある。SB/S0とは、沸水処理して乾燥した後の伸縮伸長率(SB)と、沸水処理前の伸縮伸長率(S0)との比である。
【0009】
さらに本発明においては、X線回析による算出法(後記する)にて、セルロースIV型結晶成分が好ましくは20%以上、より好ましくは20〜60%混在するのが好ましい。この範囲であると、セルロースIV型の特徴である湿潤処理による形態保持性が充分に発揮される。
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維としては、綿、麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン、キュプラアンモニウムレーヨン、ポリノジックレーヨン、精製セルロース繊維(テンセル、リヨセル)などの人造セルロース繊維があり、これらの一種又は二種以上を混用したものをいう。
【0010】
繊維の形態は、長繊維でも短繊維でもよく、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
さらに糸条の形態としては、リング紡績糸、オープンエンド紡績糸、エアジェット精紡糸等の紡績糸、マルチフィラメント原糸、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等がある。
【0011】
尚、本発明の目的を損なわない範囲内で通常50質量%以下の範囲内で、上記した「沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維」以外の他の天然及び又は合成繊維を混用してもよく、例えば、沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%未満のセルロース系繊維に加えて羊毛、絹等の天然繊維、アセテート(ジ、トリ)、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66等ポリアミド系繊維、アクリル系繊維、ポリウレタン等の弾性繊維、さらにはこれらの共重合タイプや、同種又は異種ポリマー使いの複合繊維(サイドバイサイド型、偏芯鞘芯型等)等の合成繊維等がある。そしてこれらの一種又は二種以上を、混紡(混綿、フリース混紡、スライバー混紡、コアヤーン、サイロスパン、サイロフィル、ホロースピンドル等)、混繊(沸水収縮率3〜10%程度の低収縮糸、沸水収縮率15〜30%程度の高収縮糸さらには異収縮混繊糸との混繊を含む)、交撚、諸撚糸、意匠撚糸、カバリング(シングル、ダブル)、複合仮撚(同時仮撚、先撚仮撚(先撚同方向仮撚や先撚異方向仮撚)、位相差仮撚、仮撚加工後に後混繊)、2フィード(同時フィードやフィード差をつけた)空気噴射加工等の手段で混用してもよい。
【0012】
このような沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維は、例えば、特開2002−54044号公報、特開2002−327343号公報、特開2004−131890号公報に開示されている方法によって製造することが出来る。
好ましい製法例としては、本発明のセルロース系繊維を高圧水蒸気処理後に高圧熱水処理する方法がある。この方法はセルロース系繊維が仮撚加工糸、1000T/m以上の有撚糸に適用するとより効果的であり、具体的な条件としては、絶対圧力0.41〜1.23MPa、温度160〜210℃、処理時間300〜1800秒が好ましい。高圧水蒸気処理は、従来公知の高圧釜装置を備えている装置で、チーズ状あるいはビーム状で処理できれば良く、例えば特開平9−31830号公報に記載されている高圧釜等である。
【0013】
高圧熱水処理の場合、従来公知の高圧釜装置を備えていて、チーズ染色あるいはビーム染色などができる装置で有れば良い。熱水処理においては、縦型処理機が好ましく、予め、処理糸を装着し、その中に水を投入したのち、染色ビームの内側から、外側に向かって液循環させながら、所定の処理を行うものである。
高圧水蒸気処理、高圧熱水処理する時の糸形態は、巻密度0.30〜0.45g/cmにしたチーズ形態で処理することが好ましい。
【0014】
又、他の好ましい製法例としては、セルロース系繊維のフィラメント糸を仮撚加工するに際し、仮撚加工前の供給糸に水分を付与し、加撚時にヒーター温度180℃以上の高温で処理をすることにより製造される。付与する水分は、水のみ、または、水に浸透剤等の界面活性剤、あるいは目的に応じて各種の機能を付与するための加工剤を添加しても良い。界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル系活性剤等の非イオン系活性剤やジアルキルサクシネート、ジオクチルスルホサクシネートなどのアニオン系活性剤等を使用する。使用量としては、好ましくは0.1〜20g/リットル、より好ましくは0.5〜10g/リットルである。また、水と共にグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピリングリコール等のポリアルキレングリコールなどを付与することにより、仮撚加工糸の強度低下を防止することができる。付与する水分は、常温でも温湯でも良いが、15〜25℃が好ましい。水分の付与は、仮撚加工する前、即ち、クリール仕掛けをする前に別工程で付与しても良く、又、仮撚加工工程での第1ヒーター前でも良い。また、セルロース系繊維のフィラメント原糸製造工程における乾燥工程に仮撚機構を組み入れ、一次乾燥時に仮撚工程を組み入れて製造しても良い。水分を付与する方法は、供給糸を水中に走行させる浸漬法、水をノズルから噴出させて付与するノズル法、水で濡れたローラー表面に糸を接触させる単純ローラー法、また、ローラーの前で糸を水に浸漬させるデイップローラー法、走行中の糸に水をシャワーする噴霧法等、何れの方法でも良い。付与する水分量は、第1ヒーターに入る前の供給糸の絶乾水分率を20〜130%にするのが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。尚、絶乾水分率は(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(商標、FD−240)を用いて測定した。
【0015】
仮撚加工温度は、例えば、加工速度60〜100m/分、接触式ヒーターゾーンの通過時間が0.69〜1.15秒の場合、第1ヒーター温度は180〜260℃が好ましく、更に好ましくは220〜260℃である。
尚、第1ヒーター通過直後の糸の絶乾水分率は0〜15%、特に5〜12%が更に好ましい。又、第2ヒーターを使用した2ヒーター仮撚加工糸にしても良い。
仮撚加工は、ピン、ニップベルト、ディスク等によって撚をかける仮撚方式により加工することが好ましく、なかでも均一な捲縮を得るためにはピン仮撚方式が好ましい。他の好ましい仮撚加工条件は、
仮撚数=(24000/D1/2+590)×(0.6〜1.1)
式中、Dは供給糸の繊度(dtex)を表す。
第1フィード率は−3〜10%、テイクアップ(TU)フィード率は1〜8%、加撚張力は0.05〜0.29cN/dtex、解撚張力は、(加撚張力)×(3.0〜8.0)倍である。
【0016】
仮撚加工に供給するセルロース系繊維のフィラメント糸は、無撚糸でも甘撚糸でもインターレース交絡した糸でも良く、また、ポリエステル系繊維に代表される合成繊維とのインターレース交絡等による複合糸でも良い。
本発明に用いられる弾性繊維としては、ポリウレタン系弾性糸、ポリエーテルエステル系弾性糸などのゴム弾性を有するものが挙げられる。弾性糸に用いるポリマーの種類や紡糸方法には特に制限はないが、400〜1000%の伸度を有するものが好ましい。特にポリアルキレンエーテルジオール成分に3−メチルペンタンジオール成分やネオペンチルグリコール成分のような側鎖を持つ成分を含有した弾性糸などのように300%モジュラスが0.002N/dtex以下であるソフトパワータイプの弾性糸を用いるとよりセルロース繊維の捲縮性と嵩高性が生かされ、軽量性の優れた編地が得られるためより好ましい。弾性糸の繊度は使用する編機やゲージ、編組織により適宜選定されるが、通常は20〜780dTexの範囲とされる。また、弾性糸はベアまたは合成繊維等熱可塑性繊維を被覆した被覆糸のいずれであっても良い。
【0017】
本発明の弾性編地の編組織は特に限定はなく、経編地、丸編地、横編地、編機上で衣服の形状に編成してなる成形編地であっても良い。
編地の構成糸に対する弾性糸の混率は5質量%〜40質量%が好ましく、より好ましくは5質量%〜30質量%である。
編成条件は、通常の編成に用いる条件で編成できるが、本発明のセルロース系繊維は嵩高性が有りカバーファクターが大きいので、通常の編成条件よりはループ長またはランナー長を大きめにして編成すれば、よく伸びて形態安定性の良いしかも軽量でソフト感及び膨らみ感のある編地を得る事ができる。製編された生機編地の熱処理、精練や染色等の加工は通常の編地の加工法に準じて行えば良い。
【0018】
綿との混用の様に漂白を必要とする場合には亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素漂白を用いる事ができる。過酸化水素漂白を用いる場合にはラジカル補足剤のような脆化防止剤を併用することが好ましい。
染色段階で必要に応じて抗菌加工、消臭加工、紫外線吸収加工などの機能加工、さらに後加工として樹脂加工、起毛加工、カレンダー加工等を付与することができる。
【0019】
本発明の編地は、洗濯乾燥後の糸径の保持率が75%以上であることが好ましい。糸径保持率は100%に近ければ近いほどよいが75%以上であれば、糸の膠着による風合変化や伸張回復率の低下が実着用で着用感をそこなうものではない。糸径保持率を75%以上得るためにはセルロースIV型結晶成分が20%以上であることが好ましい。
セルロースIV構造の割合が高くなるほど、糸径保持率は向上する。
また従来、紡績糸を含む編地は、表面に毛玉(ピリング)や毛羽が発生しやすい傾向があるが、本発明の編地は、短繊維の毛羽立ちを抑え、毛玉の発生確率を低下させる効果もある。
【実施例】
【0020】
本発明を実施例に基づいて説明する。
なお、物性評価は、下記の方法で行った。
(1)伸縮伸長率
沸水処理前の伸縮伸長率(S0)は、試料を20℃、65%RHの恒温恒湿の室内に約1週間放置した後、検尺機にて2cN/糸以下の張力で解舒して綛を作り、1昼夜リラックスさせた状態で調湿し、JIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)は、沸水処理前と同様に検尺機にて作った綛を1昼夜リラックスさせた後、綛の状態でガーゼに包み、JIS−L−1013フィラメント収縮率(B法)に準じて、沸騰水中に30分間浸漬させた後、綛を取り出して手で挟んで軽く水を切り、ガーゼを外した後、吊り干しの状態で20℃、65%RHの標準状態の室内にて乾燥及び調湿した後にJIS−L−1090伸縮性試験法(A法)に準じて測定を行い、5回の平均値で算出した。
【0021】
(2)セルロースIV型結晶成分の混在比率
X線回析装置(理学電機、商標、Rigaku−RINT2000広角ゴニオメーター)を使用して、X線源CuK−ALPHAI/40kv/200mA、発散スリット1deg、散乱スリット1deg、受光スリット0.15mm、スキャンスピード2°/min、スキャンステップ0.02°、走査軸2θ/θ、走査範囲5°〜45°の条件にて強度分布を作成し、分布図よりセルロースIV型結晶成分の混在比率を算出した。
セルロースIV型の混在比率(%)={(16°ピークの面積)/〔(16°ピークの面積)+(12°ピークの面積)〕}×100
【0022】
(3)絶乾水分率
(株)ケット科学研究所製の赤外線水分計(商標、FD−240)を用いて測定した。絶乾水分率は、設定温度90℃で、水分率変化が1分間当たり0.1%以内となる時間を恒量時とし、この時の質量を絶乾質量値とし、下記の式にて求めた。
絶乾水分率(%)={(湿潤質量−絶乾質量)/絶乾質量}×100
【0023】
(4)洗濯方法(1回分)
編地2のコース方向に60cm、ウエル方向に70cmの大きさに切り取り、ウエル方向の端面を縫い合わして筒状にし、コース方向の端面にオーバーロックミシンをかけたものを肌着想定サンプルとする。このサンプル編地を、洗剤アタック(商標、花王社製)を0.7g/L用い、30Lに対して生地総量1Kgを投入し、JIS−L−0217 付表1記載の103法で洗濯した。
【0024】
(5)洗濯後糸径保持率
上記(4)記載の方法で洗濯乾燥を5回繰り返した後の生地を150倍の倍率で写真撮影し、図1に示すように編地中のループの特定箇所を画像解析によりその糸径を測定した。
測定は連続するウエル方向のループ10個の平均値を1ユニットとし、異なる場所で10ユニット測定してその平均値を糸径とした。
糸径変化率(%)= 洗濯後の糸径/洗濯前の糸径×100
【0025】
(6)平均伸張回復率
上記(4)記載の方法で洗濯乾燥を5回繰り返した後の生地を140mm×165mm(引張側×拘束側)に裁断し、1軸固定2軸伸張試験機(STRIP BIAXIAL TENSILE TESTER 商標、KES−G2−SB1 カトーテック社製)に取り付ける。引張速度300mm/分で3.5N/cmまで定荷重伸張回復を行い、伸張回復率を測定し、経緯の平均値を平均伸張回復率とした。
【0026】
(7)仕上げ生地風合及び洗濯後風合い変化
20℃×65%RHの環境下で一昼夜調湿しておいた洗濯前後の生地を手に持ち、10名による官能検査で次のように3段階評価を行った。
仕上げ生地風合
判定表示 ○ : なめらかで肌触りが良い
△ : なめらかで肌触りに違和感がない。
× : ざらつきを感じる。
洗濯前後の風合変化
判定表示 ○ : 洗濯前後でほとんど変化が無い。
△ : 洗濯前後でやや洗濯後の生地が硬くなっている。
× : 硬くなっている。
【0027】
<沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上のセルロース系繊維の製法>
(製造例1)
110dtex/60fキュプラアンモニウムレーヨン糸(旭化成せんい社製:商標ベンベルグ:引張強さ23.2cN/tex、引張り伸度8.9%、沸水収縮率4.3%)を用い、ピン仮撚機を用いて、仮撚温度200℃、フィード率1%、仮撚数1500T/mで仮撚加工を行った。続いて、該仮撚糸を染色ボビンに巻き密度0.30g/cmで巻き上げ、スペーサーで固定し、縦型高圧釜にセットした。
続いて、減圧にした後、圧力0.97Mpaで180℃で5分間高圧スチーム処理した。次に水を投入し、加圧により脱泡した後、染色ボビンの内側から外側に向けて、液循環させながら、圧力0.97Mpaで180℃で10分間高圧熱水処理し、加圧脱水後、80℃で60分間乾燥した。得られた仮撚加工糸は、SB=11.5%、(SB/S0)=1.10、セルロースIV型の混在比率24%であった。
【0028】
(製造例2)
84dtex/45fキュプラアンモニウムレーヨンフィラメント(旭化成せんい社製;:商標ベンベルグ:引張強さ23.0cN/tex、引張り伸度9.1%、沸水収縮率4.5%)を用い、仮撚加工機(石川製作所製:商標、IVF−338、加撚機構はピン方式、接触式ヒーター、ヒーター長115cm)の条件を、加工速度100m/分、加熱時間0.69秒、スピンドル回転数230000rpm,仮撚数2300T/m(Z撚)、第1フィード率0%、TUフィード率4%に設定した。
クリールから供給された糸に2.9cN/糸の張力を掛け、第1ヒーター前にて水中を走行させる浸漬法で水分を付与した後、鋭角のセラミック板に接触させ、更に、エアーサクションを用いて付着水を除去して絶乾水分率を40%とした後、第1ヒーター温度250℃で仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=21.0%、(SB/S0)=2.53、セルロースIV型の混在比率58.8%であった。
【0029】
(製造例3;比較)
製造例1において、高圧熱水処理しない以外は製造例1同様に処理した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.9%、(SB/S0)=0.42、セルロースIV型の混在比率0%であった。
(製造例4;比較)
製造例2において、水分を付与しない以外は製造例2同様に仮撚加工した。
得られた仮撚加工糸は、SB=2.5%、(SB/S0)=0.48、セルロースIV型の混在比率0%であった。
【0030】
[実施例1]
製造例1で得られた加工糸とポリウレタン弾性糸旭化成せんい社製 商標、ロイカ SC 22dtex) を大隈モラート 商標、24G 30インチを用いてベア天竺を編成した。加工糸のループ長2.85mm/目、Df2.7で編成した。この編地を水に浸漬し、マングル圧1.5Kg/mで脱水し、180℃×60秒プレセットを行った。その後、スコアロール FC−250(商標、花王社製)2g/Lを用いて80℃で20分精練し、下記の条件で染色した。
Sumifix Supra Brill.Yellow 3GF 0.10%owf 住友化学社製
Sumifix Supra Brill.Red 3BF 0.03%owf 〃
Sumifix Supra Blue BRF 0.02%owf 〃
硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸ナトリウム 15g/L
60℃×60分
染色終了のち、脱水して風乾し、アミノ編成シリコン系柔軟剤
ニッカシリコンAMZ−3(商標、日華化学社製) 2%sol.
に浸漬し、ピックアップ約100%付着させた後、180℃×60秒でファイナルセットを行った。得られた編地の性量および物性は表1に示した。
【0031】
[実施例2]
製造例2で得られた加工糸をフロントに、ポリウレタン弾性糸(旭化成せんい社製 商標、ロイカ SC 44dTexをバックに配置し、ハーフトリコット編地を編成した。
編機はカールマイヤー社製 トリコット編機を使用し、ランナー長はフロント160cm/480コース バック80cm/480コースに設定した。なお、弾性糸は100%伸張で整経したものを使用した。
編成した編地は、実施例1と同様の方法で染色仕上げを行った。得られた編地の性量および物性は表1に示した。
【0032】
[比較例1]
製造例3で得られた加工糸を用いて実施例1と同様の条件でベア天竺を編成および染色し、得られた編地の性量および物性は表1に示した。
【0033】
[比較例2]
製造例4で得られた加工糸を用いて実施例2と同様の条件でハーフトリコット編地を編成および染色仕上げし、得られた編地の性量および物性は表1に示した。
【0034】
[比較例3]
片岡機械製カバリング機でスピンドル回転9000rpm、カバー数SZそれぞれ300T/mの条件で、実施例1で得られた加工糸を鞘糸に、弾性繊維(旭化成せんい社製 商標、ロイカSC 22dtex)を芯糸に延伸倍率3倍にてカバリング糸を作成した。
得られたカバリング糸SZを一本交互に配置し、弾性繊維をベアでプレーティング編成する以外は実施例1と同様の条件で大隈モラートにて天竺編地を編成した。得られた編地は実施例1と同様に染色仕上げし、性量および物性を表1に示した。SZトルクによる編目の撚れにより、ざらつき感のある肌触りの劣る編地であった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の弾性編地は、軽量で且つセルロース繊維ストレッチ素材の洗濯による風合変化や伸長回復率の低下を軽減し、着用による形態変化を抑制したセルロースストレッチ編地であり、インナーウエアー、アウターウエアー、スポーツウエアー等に好適な弾性編地である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】糸径測定箇所の例を示す説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸水処理後の伸縮伸長率(SB)が4%以上であるセルロース系繊維と弾性繊維とが交編されていることを特徴とする弾性編地。
【請求項2】
該セルロース系繊維の洗濯後の糸径保持率が75%以上である請求項1記載の弾性編地。

【図1】
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