説明

弾性編地

【課題】弾性糸を含有する編地において、伸長時瞬間的に温度が上昇し、編地の伸縮を繰り返しても永続的に伸長時発熱する弾性編地を提供すること。
【解決手段】非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上であることを特徴とする弾性編地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性糸を含有する布帛において、伸長時瞬間的に温度が上昇する弾性編地を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、保温衣料等、着用時に温度が上昇する衣服として、セルロース等の吸湿発熱繊維を混合した布帛により衣服を製造し、着用時の人体からの不感蒸泄や発汗により発熱させる布帛、及び、衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)が、これらの吸湿発熱繊維は、繊維の吸湿量が飽和に達すればそれ以上発熱することは無く、発熱時間が短いばかりでなく、吸湿量が飽和に達した後は、繊維中の水分により冷感を感じることさえあった。
さらに、吸湿発熱以外の発熱布帛、発熱衣服として、面状発熱や、発熱繊維など、ヒーターを衣服に組み込むことなどが知られているが、いずれも、電気により発熱するもので、衣服とした際は重くなり、電極も必要で動きにくい衣服となる。
【0003】
この様に、現在、着用時温度が上昇する衣服で、動きやすくて軽い衣服としては、吸湿発熱以外は見あたらないが、吸湿発熱する布帛は吸湿という制約があるため吸湿発熱に限界があり、衣服として着用していて永続的に発熱し、しかも、軽くて動きやすい衣服は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−227043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、弾性糸を含有する編地において、伸長時瞬間的に温度が上昇し、編地の伸縮を繰り返しても永続的に伸長時発熱する弾性編地を提供することであり、この弾性編地を、インナー、スポーツウェアなどの衣服に縫製することにより、保温性と伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止や、筋肉、脂肪燃焼効果も期待できる製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討の結果、非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上であることを特徴とする弾性編地により上記目的が達成出来ることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
(1)非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上であることを特徴とする弾性編地。
(2)弾性糸が40g/m2以上含有されることを特徴とする上記(1)記載の弾性編地。
(3)編地中に含まれる少なくとも1種の弾性糸が挿入編成されている事を特徴とする上記(1)または(2)記載の弾性編地。
(4)編地の経方向に150〜700dtの弾性糸が挿入編成されており、弾性糸の編地中での蛇行が1.0mm以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の弾性編地。
(5)経方向応力が100〜200cN、かつ、経方向伸度が50〜200%である事を特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の弾性編地。
【発明の効果】
【0008】
本発明の弾性編地が配された衣服を着用すれば、膝や腕の曲げ伸ばしにより編地が1℃以上発熱して暖かく、保温性と共に伸長部位の筋肉を暖めることによる怪我の防止や、筋肉、脂肪燃焼効果も期待できる衣服製品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の弾性編地の弾性糸の蛇行状態と蛇行測定法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の弾性編地は、非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、編地100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上であることを特徴とする。
本発明における瞬間発熱温度とは、伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない条件下で、弾性編地を100%伸長し、次いで緩和してもとの長さに戻す工程を1回とする繰り返し伸縮を、100回行った後、100回目の100%伸長時の編地温度をサーモグラフィで測定し、試験開始前の編地温度との差から算出された値である。
【0011】
100回目の100%伸長時の編地温度が試験開始前編地温度より高くなれば、瞬間発熱していることを示し、本発明の弾性編地はこの方法により測定した瞬間発熱温度が、1℃以上あることが必要である。1℃未満の瞬間発熱温度では、ほとんど発熱を感じられず、発明の目的が達成できない。従い、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上、好ましくは1.5℃以上が必要である。瞬間発熱温度が高いほど好適であり、人体に悪影響を与えない範囲であれば上限は特に限定されないが、瞬間発熱温度を高くするために弾性繊維含有量が多くなりすぎると編地がハイパワーとなって衣料として動き難くなるため、15℃以下であることが好ましい。なお、発熱温度の測定については、実施例にて具体的に示す。
【0012】
本発明の弾性編地で、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上とするには、弾性編地中に弾性糸を40g/m2以上含有されていることが好ましい。弾性糸を多く含有するほど発熱温度が高くなり、より好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは55g/m2以上含有していることが好ましい。弾性糸の含有量が多くなり過ぎると編地重量が増し、また、編地がハイパワーとなって衣料として動き難くなるため、200g/m2以下が好ましい。
【0013】
本発明による弾性編地は、先に記した弾性糸の含有量のみにより発明の効果が発揮できるものでなく、少なくとも1種の弾性糸が挿入編成されている事により、本発明の目的が好適に達成できる。本発明でいう挿入編成とは、経編機による挿入編成、および、丸編機によるタックやウエルト組織であり、いずれも弾性糸はニットループを形成せずに編成する。なお、経編機による挿入編成の場合は、編地のウェール間を左右に振って挿入編成して行くが、全コース挿入編成が好ましく、挿入編成が連続3コース以上あれば良い。例えば、挿入編成を3コース行い、次いで1コースのみニットする方法も可能である。また、丸編機の場合は、タック、あるいは、ウエルトの組み合わせで編成し、ニット以外の挿入編成が連続3ウェール以上あれば良く、例えば、タックとウエルトの繰り返しや、連続3ウェールウエルト編成し、1ウェールニットの繰り返し編成も可能である。
【0014】
さらには、挿入される弾性糸として、150〜700dt(デシテックス、以下同じ記号を使用する)の弾性糸が少なくとも一部に含まれていることが好ましく、より好ましくは、200〜600dt、さらに好ましくは、300〜500dtの弾性糸が含まれる。挿入編成される弾性糸が太くなる程、伸長時の発熱効果が発揮でき、150dtより細いと発熱効果が小さく、700dtより太いと伸縮力が大きくなりすぎ、着用して突っ張り感が強く動き難く不快な衣服となる。繊度の異なる複数の弾性糸が挿入される場合、繊度が大きい方の弾性糸の繊度が上記範囲であることが好ましく、繊度が小さい弾性糸は150dt未満であってもよい。
本発明の弾性編地は、挿入する弾性糸が太くなるほど経編機での使用が好ましく、150dtより太い弾性糸を使用する場合は、ラッセル経編機の使用が好ましい。
【0015】
なお、弾性糸の繊度については、編地中における弾性糸の長さと重量から測定できる。具体的には、編地中から弾性糸を抜き出すか、編地の非弾性糸を溶解して弾性糸のみとして弾性糸を解き、長さと重量を測定すればよい。ただし、上述の方法で弾性糸の長さと重量を測定することが困難であれば、編地中の弾性糸の直径を電子顕微鏡等により任意に10箇所測定し、その平均値より特定する方法により行ってもよい。なお、この方法による編地の観察は編地を伸長しないで測定し、非弾性糸で弾性糸が覆われている場合には、観察可能なように非弾性糸を部分的に裁断除去して弾性糸の直径を測定する。また、編成前の弾性糸の繊度と、仕上げ後の弾性糸の繊度は異なリ、通常は仕上げ後の繊度が小さくなるが、本発明では、仕上げ後の繊度が150dt以上であることが好ましい。
【0016】
また、挿入編成された方の弾性糸が、1.0mm以下の蛇行、好ましくは0.8mm以下の蛇行であれば、発明の効果が最も発揮できる。
弾性糸を挿入した通常のラッセル編地では、弾性糸のずれによる編地の「笑い」を抑制するために、熱セット時に幅出し量を大きくすることが多いため、弾性糸の蛇行は、1.5mm以上の編地が多いが、これでは発熱量が小さい。本発明の編地では発熱量を大きくするために、なるべく弾性糸の蛇行を小さくする必要がある。挿入した弾性糸の蛇行を1.0mm以下とするには、弾性糸の編成時の振り幅を1〜2ウェールとし、染色加工時のプレセット温度を下げる、編地の幅出しを小さくする等の調整により製造できる。なお、弾性糸の蛇行が小さいと「笑い」が生じ易くなるため、非弾性糸の送り量を調節して、弾性糸を締め付ける様にすれば、「笑い」が防止可能となる。なお、弾性糸の蛇行の測定については、実施例にて具体的に示す。
複数の弾性糸が挿入されている場合には、全てが同じ繊度の弾性糸の場合はいずれかの弾性糸、また、繊度が異なる弾性糸が挿入編成されている場合は、繊度が大きい弾性糸の蛇行を1.0mm以下とすることが好ましい。このとき、他方の弾性糸は1.3mm以上、好ましくは1.5mm以上蛇行されていれば、発熱量を確保した上で、経方向、緯方向にも伸縮性が良好な弾性編地となり、より好ましい。
【0017】
本発明の弾性編地の発熱効果についてさらに検討した結果、弾性編地を衣服に縫製し着用した際、突っ張り感がなく快適な着用感と、発明の効果を発揮するためには、経方向応力が100〜200cN(センチニュートン 以下同じ記号を使用する)であることが好ましく、より好ましくは120〜190cNである。さらに、経方向伸度も重要で、経方向応力の規定範囲内で、経方向伸度が50〜200%であることが好ましく、より好ましくは、50〜180%、さらに好ましくは50〜170%である。この範囲であれば、快適な着用感と良好な発熱性が発揮できる。経方向応力が200cNより大きい場合、または、経方向伸度が50%未満では着用時の突っ張り感が強く、着用していて疲れる衣服となり、経方向応力が100cN未満の場合、または、経方向伸度が200%より大きい場合は、発熱効果が小さく本発明の目的が達成できない編地となる。さらに、弾性経編地の伸長回復率も重要で、伸長回復率は、経方向、緯方向ともに、90%以上とすることが好ましい。伸長回復率が90%未満の場合は、繰り返し伸縮時の発熱量の低下を招き好ましくない。なお、経方向応力、経方向伸度、伸長回復率の測定法は、実施例にて具体的に示す。
【0018】
本発明の弾性編地は、特に限定はされないが、経方向と緯方向の伸度比が1.1〜2.5である事が望ましく、この伸度比の弾性編地で衣服縫製した場合、適度な締め付け感と、身体の曲げ伸ばしも楽に行える。伸度比が、1.1未満では、身体の曲げ伸ばし時、突っ張り感があり、着心地の良くない衣服となり、伸度比が2.5より大きい場合も、身体の曲げ伸ばし時にシワが発生したり、編地に弛みが生じる事があり好ましくない。従い、編地の経方向と横方向の伸度比が1.1〜2.5であることが好ましく、より好ましくは1.2〜2.3、さらに好ましくは、1.3〜2.2である。なお、本発明でいう伸度比は、本発明で測定する伸度を、経方向、緯方向とも測定し、次により求める。
伸度比=(経方向伸度)/(緯方向伸度)
本発明の弾性編地の衣服縫製例として、伸度が大きい方向に編地の高伸度方向となる様縫製すればよく、例えば、足首までのレギンス調のボトムを縫製するに際し、編地経方向に足を入れる方向で縫製すれば発明の効果が発揮しやすくなる。
【0019】
これらの伸度を有する編地の製造方法については任意な方法が行え、弾性糸を編地全面でニット編成する方法、経編では複数種の弾性糸による挿入編成、あるいは、挿入編性とニットを組み合わせる方法、丸編では、タックとウエルト、及びニットの任意な組み合わせ、さらには、弾性糸を含有する編地の染色加工に際し、ヒートセット時に追い込みセットや、幅入れセットにより製造することが可能である。
【0020】
本発明の弾性編地に用いる弾性糸とは、ポリウレタン系、ポリエーテルエステル系の弾性糸で、例えばポリウレタン系弾性糸では、乾式紡糸又は溶融紡糸したものが使用でき、ポリマーや紡糸方法には特に限定されない。弾性糸の破断伸度は400%〜1000%程度のもので、かつ、伸縮性に優れ、染色加工時のプレセット工程の通常処理温度180℃近辺で伸縮性を損なわないことが好ましい。また、弾性糸に、特殊ポリマーや粉体添加により、高セット性、抗菌性、吸湿、吸水性等の機能性を付与した弾性糸も使用可能である。弾性糸の繊度については、30〜1000dt程度の繊維の使用が可能で、編地製造が容易な、40〜700dt程度の弾性繊維の使用が好ましい。
【0021】
さらに本発明の弾性編地は、弾性糸に無機物質を含有する事が可能で、含有する無機物質の性能を加味した編地とすることが出来、例えば、酸化チタンを含有させると、弾性編地の発熱を酸化チタンに蓄え、遠赤外線効果による保温性が付与できる。無機物質の含有法については、弾性糸の紡糸原液に無機物質を含有させて紡糸する方法が最も簡単に含有させることが可能である。本発明でいう無機物質とは、酸化チタン等のセラミックス、カーボン、カーボンブラック等、無機物、及び、無機化合物であり、弾性糸の紡糸の障害とならない様、微粉末状が好ましい。これら無機物質を弾性糸に1〜10重量%含有していることが好ましく、無機物質を含有することにより、弾性編地の発熱時、保温効果をより効果的に発揮する事が可能となる。なお、無機物質は少ないと保温効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れする事があるため、1〜10重量%の含有が好ましく、より好ましくは、2〜5重量%の含有である。
【0022】
本発明に用いる非弾性糸とは、ポリエステル、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン等の合成繊維、さらに、キュプラやレーヨン、綿、竹繊維等のセルロース系繊維、羊毛等の獣毛繊維等、あらゆる繊維の使用が可能である。また、これらのブライト糸、セミダル糸、フルダル糸等任意に使用でき、繊維の断面形状も丸型、楕円型、W型、繭型、中空糸等任意な断面形状の繊維の使用が可能であり、また、繊維の形態についても特に限定されず、原糸、仮撚等の捲縮加工糸が使用でき、さらに、長繊維、紡績糸、2種以上の繊維を撚糸、カバーリング、エアー混繊等により混合した複合糸としての使用も可能である。さらには、繊維での混合でなく、編機上で2種以上の繊維の混合も無論可能で、経編機では、2種以上の繊維をそれぞれに対応する筬を準備して編成すればよい。
繊維の太さについては、20〜160dt程度の繊維の使用が可能で、編地の破裂強度や厚み感から、20〜110dt程度の繊維の使用が好ましい。なお、綿や羊毛使用時はそれぞれ換算式により使用繊維の太さを求めれば良い。
【0023】
本発明に用いる非弾性糸は、特にポリエステル系繊維やポリアミド系繊維、セルロース系繊維等にも、無機物質を0.3〜5重量%含有していることが好ましく、無機物質を含有することにより、弾性編地の発熱時、保温効果をより効果的に発揮する事が可能となる。なお、無機物質は、少ないと保温効果が小さく、多すぎると紡糸時や伸長時に糸切れする事があるため、0.5〜5重量%の含有が好ましく、より好ましくは、0.4〜3重量%の含有である。
【0024】
本発明の弾性編地では、非弾性糸にセルロース等、吸湿発熱する素材を使用すれば、着用時吸湿により発熱し、運動することによっても発熱する事になり、本発明の効果をより発揮することが可能である。さらに、紡績糸や起毛により発熱した熱を逃がし難くなり、保温効果を高めることも可能である。
【0025】
本発明による弾性編地は、経編機、丸編機、肌着サイズの小寸丸編機、横編機により製造でき、ジャカード編成可能な編機の使用も可能である。経編機による編地の製造法の例として、ラッセル編機を使用し、バック筬に太い弾性糸を振り幅の小さい挿入組織とし、ミドル筬に細い弾性糸を振り幅の大きい挿入組織とし、フロント筬に非弾性糸によるニット編成を行い、製造できた編地は、ほぼ直線に挿入された太い弾性糸と緯方向を連結する細い弾性糸とが存在する、経方向、緯方向ともに伸縮性が良好な弾性編地とする方法があり、シングル経編機、ダブル経編機ともに製造可能である。また、丸編機および横編機では、非弾性糸と細い弾性糸とのプレーティング編中に、太い弾性糸をタック組織により挿入編成し、弾性編地とする方法が行え、シングル丸編機、ダブル丸編機とも同様な方法で行える。これらの編機のゲージについては、任意なゲージの編機が使用可能であるが、横編機では14〜16ゲージ、経編機および丸編機では、22〜36ゲージ程度の編機の使用が好ましく、ゲージが粗いと編地の審美性が良くなく、逆にゲージがハイゲージになるほど伸縮性が不良となり、本発明の効果が発揮し難くなる。
【0026】
本発明の弾性編地は、弾性糸を使用して製造するが、弾性糸に換え、弾性テープ状や、フィルム状であっても構わない。テープ状やフィルム状の場合は、コーティングやラミネートにより、編地と一体化させる方法が行える。
本発明の弾性編地の染色仕上げ方法は、通常の染色仕上げ工程が使用でき、使用する繊維素材に応じた染色条件とし、使用する染色機も液流染色機、ウインス染色機、パドル染色機など任意で、吸水性や柔軟性を向上させる加工剤の使用も行える。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を詳述する。無論、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例における評価は以下の方法により行なった。
(1)瞬間発熱温度
瞬間発熱温度の測定は、デマッチャー試験機を使用し、伸長および緩和(戻し)を繰り返した後、サーモグラフィで発熱量を測定した。
繰り返し伸縮機:デマッチャー試験機((株)大栄科学精器製作所製)
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)、幅6cm
測定環境:温度20℃、湿度65%RHの恒温恒湿条件。伸縮以外に外部からのエネルギー供給を受けない状態で測定する。
伸長量:長さ方向に100%
繰り返し伸縮サイクル:1回/秒
発熱温度測定:繰り返し伸長100回目の100%伸長時の試料表面温度をサーモグラフィで測定。サーモグラフィの放射率は、0.9に設定。
発熱温度評価:測定する試料の表面最高温度を読み取り、伸縮前に比べ何度上昇したかを発熱温度とする。
【0028】
(2)弾性糸含有量
編地中の弾性糸含有量(g/m2)を、次の方法により求め、小数点一桁を四捨五入する。
編地中の非弾性糸を溶解等により除去し、弾性糸のみの重量を測定して換算する。非弾性糸を除去することが困難であれば、重量測定後の編地から、弾性糸を溶解等により除去し、非弾性糸のみの重量を測定して、重量減少した分を弾性糸重量とする。
【0029】
(3)応力
経方向応力を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)、幅2.5cm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機
初荷重:0.1N
引張り、戻し速度:300mm/分
引張り長:編地を80%まで伸長。
測定:上記条件で伸長、戻しを3回繰り返し、3回目の80%伸長時応力を求める。
【0030】
(4)伸度
伸度を次の方法によりにより測定する。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)、幅2.5cm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機
初荷重:0.1N
引張り、戻し速度:300mm/分
測定:上記条件で荷重10N時の伸度を求める。
【0031】
(5)伸長回復率
伸長回復率を次の方法により測定する。
試料の大きさ:長さ10cm(把持部除く)、幅2.5cm
引張り試験機:テンシロン引張り試験機
初荷重:0.1N
引張り速度:300mm/分
引張り長:8cm(80%伸長)
引張り回数:3回伸縮を繰り返す。
測定:上記条件で編地の繰り返し伸縮3回目に、80%まで伸長し、同速度で伸長解舒まで戻した際の、応力が0になる長さ(b)を測定して、次式により伸長回復率を求める。
伸長回復率(%)=100−((b)/80)×100
【0032】
(6)挿入した弾性糸の蛇行
編地中に挿入された弾性糸の蛇行を、下記の方法により測定する。
編地の非弾性糸を溶解等により除去し、弾性糸のみ取り出すか、弾性糸を編地中から抜き出して顕微鏡で観察し、蛇行している弾性糸の側面の凹部と凸部の高低差を測定し、なるべく大きい高低差の部分10箇所の平均値の小数点二桁目を切り上げて求める。なお、弾性糸は左右に蛇行している事が多く、この場合、左右どちら側で測定してもよいが、大きい凹凸の高低差部分を測定する。また、弾性糸に非弾性糸の食い込んだ跡の凹部も、凹部として測定する。より具体的に、図1を用いて説明すると、蛇行して凸部2と凹部3を有している弾性糸1を写真撮影し、凹部の最も谷になっている部分を結んだ接線4を引き、凸部の最も頂になっている部分を結んだ接線5との間隔6を測定し、これを弾性糸の蛇行とする。
【0033】
[実施例1]
28ゲージ(インチ)のラッセル経編機を使用し、バック筬に弾性糸310dt(商品名ロイカCR:旭化成せんい(株)製、以下弾性糸は全て同じ商品名)、ミドル筬に弾性糸78dt、フロント筬にナイロン原糸44dt/34fを準備し、次の組織で編成した。
フロント筬 46/42/24/20/24/42
ミドル筬 00/22/00/66/44/66
バック筬 00/22/00/22/00/22
【0034】
編成できた編地を連続精練機でリラックス、精練を行い、次いで185℃で1分間プレセットを行い、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、160℃で1分の条件で仕上げセットを行い弾性編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の弾性編地は、伸長時瞬間発熱温度が3℃以上となり、目標とする編地となった。
【0035】
[実施例2〜7、比較例1〜2]
実施例1に於いて、挿入する太い弾性糸、および、細い弾性糸の繊度を変更し、また、編成時のランナー、細い弾性糸の振り幅、さらには、染色加工時に編地の追い込み量、編地の幅出しセット条件等の染色加工条件を変更して各種の編地を製造した。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示す。
【0036】
[実施例8]
28ゲージのトリコット経編機を使用し、バック筬に弾性糸44dt、ミドル筬に弾性糸78dt、フロント筬にナイロン原糸33dt/24fを準備し、次の組織で編成した。
フロント筬 10/23
ミドル筬 12/10
バック筬 10/12
編成できた編地を連続精練機でリラックス、精練を行い、次いで185℃で1分間プレセットを行い、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、160℃で1分の条件で仕上げセットを行い弾性編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の弾性編地は、伸長時瞬間発熱温度が1℃以上となり、目標とする編地となった。
【0037】
[実施例9]
実施例8に於いて、ミドル筬の振りを00/11に変更して編成した。
編成できた編地を連続精練機でリラックス、精練を行い、次いで185℃で1分間プレセットを行い、液流染色機でナイロンの染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、160℃で1分の条件で仕上げセットを行い弾性編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の弾性編地は、伸長時瞬間発熱温度が1℃以上となり、目標とする編地となった。
【0038】
[実施例10]
24ゲージのシングル丸編機を使用し、ポリエステル加工糸56dt/36fと弾性糸44dtとを、プレーティングにより天竺組織を2コース編成し、弾性糸78dtをニットとタックの繰り返しで挿入編成を1コース行い、この天竺と挿入編成の繰り返しで弾性編地とした。
編成できた編地を連続精練機でリラックス、精練を行い、次いで185℃で1分間プレセットを行い、液流染色機でポリエステル加工糸の染色を行った。染色後に柔軟仕上げ剤をパディングして、160℃で1分の条件で仕上げセットを行い弾性編地とした。
得られた編地の性能を評価し、結果を表1に示すが、本発明の弾性編地は、伸長時瞬間発熱温度が1℃以上となり、目標とする編地となった。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の弾性編地は、伸長時に瞬間発熱する編地であり、インナー、スポーツウェアなどの衣服に縫製すれば、保温性と伸長部位の筋肉や関節を暖めることによる怪我の防止や、筋肉、脂肪燃焼効果も期待できる製品が得られる。
【符号の説明】
【0041】
1 弾性糸
2 蛇行している弾性糸の、凸部の頂になっている部分
3 蛇行している弾性糸の、凹部の谷になっている部分
4 凹部の谷の部分の接線
5 凸部の頂の部分の接線
6 凸部頂部分の接線と、凹部谷部分の接線との間隔=蛇行量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非弾性糸と弾性糸とからなる編地であって、100%伸長時の瞬間発熱温度が1℃以上であることを特徴とする弾性編地。
【請求項2】
弾性糸が40g/m2以上含有されることを特徴とする請求項1記載の弾性編地。
【請求項3】
編地中に含まれる少なくとも1種の弾性糸が挿入編成されている事を特徴とする請求項1または2記載の弾性編地。
【請求項4】
編地の経方向に150〜700dtの弾性糸が挿入編成されており、弾性糸の編地中での蛇行が1.0mm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の弾性編地。
【請求項5】
経方向応力が100〜200cN、かつ、経方向伸度が50〜200%である事を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の弾性編地。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−195970(P2011−195970A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61410(P2010−61410)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】