説明

弾性繊維の形成を刺激するための、LOXL(リシルオキシダーゼ類似)アイソフォームの合成及び活性の刺激

【課題】本発明は特に、弾性繊維の形成を刺激する活性成分の同定方法に関する。
【解決手段】本発明の目的は主として、弾性繊維の形成を刺激できる組成物を提供するためのスクリーニング方法を提供することである。本発明は、リシルオキシダーゼのアイソフォームの、特にLOXL(リシルオキシダーゼ類似)アイソフォームの合成及び活性の刺激に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リシルオキシダーゼのアイソフォームの、特にLOXL(リシルオキシダーゼ類似)アイソフォームの活性の刺激に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚や粘膜の抵抗力や弾力性といった特性は、真皮の膠原繊維及びエラスチン繊維によって本質的に決まる。エラスチンは、フィブリリンやMAGP(ミクロフィブリル結合糖タンパク質(Microfibrillar Associated Glycoprotein))等の他の分子と結合することによって弾性繊維を構成するタンパク質である。
【0003】
「弾性繊維」は、ミクロフィブリル上に沈着したエラスチンから構成される。エラスチンは、可溶性のトロポエラスチンとして合成され、トロポエラスチンは、リシルオキシダーゼによって分子内及び分子間で架橋してミクロフィブリル上に沈着すると、その物理化学特性(不溶性、弾力性)を呈する。弾性繊維は、これを含む器官(管、肺柔組織、弾性軟骨、皮膚等)に収縮性を与える。弾性繊維は、ミクロフィブリル上に沈着したエラスチンから主に構成される。「エラスチン」の名称は、弾性繊維の無定形の部分を構成し、弾性繊維に弾力性を与えるタンパク質について用いられる。最近、弾性繊維を構成するこの成分が表皮中に存在することが分かった。
【0004】
「コラーゲン細繊維」は、コラーゲンの三本鎖から構成される。このコラーゲンの繊維もまたリシルオキシダーゼによって架橋している。
【0005】
皮膚や粘膜の加齢は、上記小繊維の網状組織の変性、特に劣化して正確に再生しない弾性繊維の変性と関係がある。同様に、瘢痕の弾性繊維の網状組織も正確な形ではない。LOX、LOXL、LOXL2、LOXL3及びLOXL4の5種のアイソフォームがリシルオキシダーゼ(LO)ファミリーにおいて知られている(非特許文献1)。LOXは膠原繊維の架橋に関与していることが分かっている(非特許文献2)。
【0006】
機能性弾性繊維(主に皮膚、管、網膜の黄斑及び椎間板に存在する)は、胎児成長期及び出生直後に形成される。上記弾性繊維は皮膚中で真皮の繊維芽細胞によって形成されるが、上記弾性繊維の形成に不可欠なある化合物が表皮細胞内にも発見されている。膠原繊維は一生を通して結合組織で合成される。
【0007】
弾性繊維の交換速度は成人では非常に遅いが、皮膚中の全エラスチン量は増加することがある(非特許文献3)。ミクロフィブリルは新生児においてエラスチンで完全に覆われているわけではなく、思春期頃には完全に覆われるようになる。40代で繊維において封入体が(特に女性で多く)形成され、その後、真皮と表皮の境界部(DEJ)において弾性繊維の断裂及び消失がみられる。このようなDEJにおける断裂及び/又は消失は、皮膚の弾力性がなくなって皺ができることから分かる。非機能性弾性繊維は光老化の過程で合成されるが、この増加に伴ってDEJにおける弾性繊維の消失が加速する(非特許文献4)。
【0008】
また、弾性繊維は、成人の瘢痕では新たに合成されることはほとんどないが、逆に、生成する弾性繊維が著しく断裂しているような高齢者(70歳以上)において新たに合成される場合がある。この場合、弾性繊維の最終的な組成における主要な構成成分(エラスチン、ミクロフィブリル)も存在しており、またリシルオキシダーゼの活性も全体的に維持されている(非特許文献5)。このことから、本発明者らは、機能性弾性繊維を形成できる1種以上の要素が成人では欠損しているが、胎児成長期から1歳の時点では存在していると考えた。
【0009】
従来の技術では、皮膚・化粧品学上の活性成分が機能性弾性繊維の新たな形成に与える影響を評価できる基準を定められていない。この状況では、調査すべき上記活性成分の与える影響を評価できるような所望の基準を定めることもまた難しい。実際の活性成分のスクリーニング方法は、エラスチンやフィブリリン等の弾性繊維の形成に関与する遺伝子の発現の評価に影響を与える。
【0010】
また、現在、動物実験は化粧品においてヨーロッパでは禁止されており、人体実験は倫理上異論が唱えられている。このため、本発明者らは、動物や人間を用いたスクリーニングを化粧品の用途に実施できない。
【0011】
Mimeskin(R)(Coletica社、リヨン、フランス)等の三次元モデルにおいて、角質細胞はトロポエラスチンの合成及びトロポエラスチンのミクロフィブリル上への沈着を誘導する(非特許文献6)。Mimeskin(R)モデルにおいて、細胞外マトリックスは、放射状のコラーゲンとミクロフィブリル上に沈着したエラスチンからなる弾性繊維とを有し、皮膚の超微細構造に似た超微細構造を呈した。このモデルは、リシルオキシダーゼ阻害剤等の特定分子の有効性を試験するためにも使用されている。このモデルを用いることにより、リシルオキシダーゼを阻害すると膠原繊維及びエラスチン繊維の断裂が誘導されるが、最終分化の標識(フィラグリン等)の発現量も減少することから、角質細胞の分化プログラムからの逸脱もまた誘導されることが証明された(特許文献1)。この特許文献においては、異種のLOアイソフォーム間の識別はされていない。
【0012】
しかしながら、上記の研究では、機能性弾性繊維の形成を刺激できる活性成分の同定方法を明らかにできなかった。
【0013】
そのため、機能性弾性繊維の形成を刺激できる活性成分は今までのところ明らかにされていない。
【0014】
また、これまでは、特に従来の方法は不明確であるため、リシルオキシダーゼアイソフォームLOXLの発現領域を精力的に追跡できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】Farjanelら,フランス特許0110443,CNRS,Use of inhibitors of lysyl oxidases for cell culture and tissue engineering (<Utilisation d’inhibiteurs des lysyl oxydases pour la culture cellulaire and le genie tissulaire>)
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Csiszar,Lysyl oxidases: A novel multifunctional amine oxidase family,Nucleic Acid Research and Molecular Biology,2001,vol 70,p2−28
【非特許文献2】Seveら,Expression analysis of recombinant lysyl oxidase(LOX) in myofibroblast−like cells,Connective Tissue Research,2002,43:613−619
【非特許文献3】Ashcroftら,Age−related changes in the temporal and spatial distributions of fibrillin and elastin mRNAs and proteins in acute cutaneous wounds of healthy humans,J.Pathol.,1997,183 :80−89
【非特許文献4】Watsonら,Fibrillin−rich microfibrils are reduced in photo−aged skin.Distribution at the dermal−epidermal junction,J.Invest.Dermatol.,1999,112:782−787
【非特許文献5】Pasquali−Ronchetti,Baccarani−Contri,Elastic fiber during development and aging,Microscopy Res.Tech.,1997,38:428−435
【非特許文献6】Duplan−Perratら,Keratinocytes influence the maturation and organization of the elastin network in a skin equivalent.J.Invest.Dermatol.114:365−70,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、主として、上記の技術的な問題、特に機能性弾性繊維の形成を刺激する活性成分の同定方法を提供するための技術的な問題を解決することである。「機能性弾性繊維」という語は、上述した従来の技術においては通常の意味で用いるが、特に本発明においては、三次元構造に由来する収縮性を持つ弾性繊維を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、特に機能性弾性繊維の形成を刺激するための、リシルオキシダーゼのL型のアイソフォームの使用、又は、リシルオキシダーゼのL型のアイソフォーム(LOXL)の酵素活性若しくは発現を刺激する活性成分の使用に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、LOXLの発現箇所を確認してこの発現を追跡する方法を提供することからなる技術的な問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】特異的抗体を作るために決定したLOの配列の解説。図1(A):hLOX(ヒトLOXタンパク質)及びhLOXL(ヒトLOXLタンパク質)の概略図。図1(B):LOX及びLOXLの抗原領域と、LOアイソフォーム上の相当する領域との類似率を示す。
【図2】抗LOX抗体及び抗LOXL抗体を用いて平滑筋細胞(SMC)について行った電気泳動の写真。
【図3】再生皮膚(RS)及び正常な人間の皮膚中におけるLOXL及びLOXの免疫組織学的検出。
【図4】再生皮膚(16、35及び45日後)及び人間の包皮皮膚の断面における、抗LOXL2517−581抗体(左欄)、及び、理論的にLOXL2、LOXL3及びLOXL4を認識する抗LOXL2664−720抗体(右欄)を用いて行った免疫検出。
【図5】角質細胞を添加して30日後の再生皮膚、及び、正常な人間の皮膚の真皮部分において透過型電子顕微鏡検査を用いて行ったLOXL、LOX及びエラスチンの免疫検出。
【図6】LOX及びLOXLの人間の皮膚中における免疫検出。
【図7】年齢の異なる人間から採取した腹の皮膚におけるLOX及びLOXLの免疫検出。
【図8】LOX及びLOXLの、治療後の経過期間の異なる瘢痕組織の皮膚中における免疫検出。
【図9】プロモーターPrhLOXLの配列とルシフェラーゼ/β−ガラクトシダーゼ活性との相関。
【図10】核配列PrLOXLにおける、核因子の制御を受けると推定される部位。
【図11】35日後の皮膚モデル断面において行ったin situハイブリダイゼーションによる、LOXLをコードする遺伝子の発現の検出。
【図12】LOX遺伝子、LOXL遺伝子、エラスチン遺伝子及びアクチン遺伝子の、幼児包皮及び成人皮膚における発現。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本記載中、本発明者らは、「LOXL」又は「hLOXL」の語が、ヒトリシルオキシダーゼタンパク質のL型のアイソフォームLOXLを意味するものとする。
【0022】
本記載中、本発明者らは、「LOX」又は「hLOX」の語が、ヒトリシルオキシダーゼタンパク質の第一のアイソフォーム(initial isoform)LOXを意味するものとする。
【0023】
本発明者らは、「リシルオキシダーゼアイソフォームLOXLの発現を刺激する」という語が、LOXLをコードする遺伝子の発現又はそのプロモーターを刺激すること、特にLOXLをコードするメッセンジャーRNAの合成を刺激すること、更には、このメッセンジャーRNA由来のLOXLの合成を刺激することを意味するものとする。
【0024】
本発明者らは、「エラスチンの発現を刺激する」という語が、エラスチンタンパク質をコードする遺伝子の発現又はそのプロモーターを刺激すること、特にエラスチンタンパク質をコードするメッセンジャーRNAの合成を刺激すること、更には、エラスチンタンパク質又はその前駆体トロポエラスチンタンパク質の上記メッセンジャーRNA由来の合成を刺激することを意味するものとする。
【0025】
このように、本発明において本発明者らは、上記のLOXLの発現又はLOXLの酵素活性のどちらかを主として刺激することを目的とする。
【0026】
この刺激は、機能性弾性繊維の形成を刺激できる程十分な効果がなくてはならない。
【0027】
LOXLの発現及び/又は活性を示す少なくとも1種の細胞を有するモデルにおけるLOXLの発現及び/又は活性を、活性成分と接触させた状態で、対照とするモデル(活性成分を接触させない)におけるLOXLの発現量及び/又は活性に対して約1.5倍活性化又は増加させることができる場合に、その活性成分は有効であると考える。
【0028】
本発明は、本発明の第一の態様から、配列番号1に記載のリシルオキシダーゼ類似アイソフォーム(LOXLとも称される)、又は、その相同体若しくは本質的な相同体、又は、LOXLの活性及び/又は発現を促進する成分の、弾性繊維の形成を刺激する組成物を製造するための使用に関する。
【0029】
「その相同体若しくは本質的な相同体」という語は、本明細書に記載のLOXLと同じ又は類似の活性を有する、リシルオキシダーゼアイソフォームLOXLの相同体を意味する。
【0030】
有利には、LOXLの発現は、LOXLをコードするヌクレオチド配列の発現か、又は、タンパク質LOXLの一部を構成するペプチド配列の発現のどちらかである。このペプチド配列は、配列番号1から選択されることが好ましい。
【0031】
有利には、上記組成物は、化粧組成物、栄養補助組成物、医療組成物又は医薬組成物である。
【0032】
有利には、上記組成物は、タンパク質エラスチンの発現を刺激する第二の物質を、特に弾性繊維の形成を刺激するために更に含む。上記第二の物質は、LOXLの活性及び/又は発現を促進する物質であることが好ましい。
【0033】
有利には、上記の活性成分は、ヒトLOXL遺伝子のプロモーター(Pr)のヌクレオチド配列(配列番号3)又はその相同体若しくは本質的な相同体のプロモーターのヌクレオチド配列の少なくとも一部に結合する領域、又は、ヒトLOXL遺伝子のプロモーター(Pr)のヌクレオチド配列(配列番号3)又はその相同体若しくは本質的な相同体のプロモーターのヌクレオチド配列の少なくとも一部に結合するタンパク質の発現を変化させる領域を含む。この配列はATGコドンの前のヌクレオチド−2630に由来するものであり、−2172から−1のヌクレオチドについては詳細に研究した。
【0034】
有利には、上記活性成分は、イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、桂皮、乳酸菌発酵物、エンバク、ジャガイモ、生糸、アサフェティーダガム(Asa foetida gum)、ヘキセン酸エチル及びその誘導体、酪酸メチル及びその誘導体、並びに、デカジエン酸エチル及びその誘導体からなる群より選択される。
【0035】
有利には、上記使用は、組織における弾性繊維の新たな形成を誘導するために、特にその結果として得られた組織の弾力性を刺激するために、かつ、皮膚の皺を減らすために行う。
【0036】
有利には、上記使用は、特に組織のたるみが加齢又は太陽暴露の過程で観察される場合、組織のたるみに抵抗するために、又は、細胞外マトリックスの密度を高めるために、又は、皮下組織を引き締めるために、又は、皮膚の皺を減らすために、又は、抗皺効果を発揮させるために、又は、特に栄養失調による瘢痕やケロイド傷の、瘢痕の組織の質及び瘢痕の外観を改善するために、又は、伸展線に抵抗するために行う。
【0037】
第二の態様によると、本発明は、上記活性成分を、必要に応じて化粧品に許容される賦形剤との混合物として含む化粧組成物に関する。
【0038】
第三の態様によると、本発明は、上記活性成分を、必要に応じて食品に許容される賦形剤との混合物として含む栄養補助組成物に関する。
【0039】
第四の態様によると、本発明は、上記活性成分を、必要に応じて薬学的に許容される賦形剤との混合物として含む医薬組成物に関する。
【0040】
上記化粧組成物又は医薬組成物について、賦形剤は、例えば、防腐剤、皮膚軟化剤、乳化剤、界面活性剤、保湿剤、濃化剤、調整剤、つや消し剤、安定剤、抗酸化剤、質感調整剤、増白剤、フィルム化剤(filmogenic agent)、可溶化剤、顔料、色素、香料及びソーラーフィルターからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む。上記賦形剤は、好ましくは、アミノ酸及びその誘導体、ポリグリセリン、セルロースのエステル、ポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、乳過酸化酵素、スクロース型安定剤、ビタミンE及びその誘導体、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不鹸化物、植物ステロール、植物エステル、シリコーン及びその誘導体、タンパク質加水分解物、ホホバ油及びその誘導体、脂溶性/水溶性エステル、ベタイン、アミン酸化物、植物抽出物、スクロースエステル、二酸化チタン、グリシン、並びに、パラベンからなる群より選択される。より好ましくは、ブチレングリコール、ステアレス−2、ステアレス−21、グリコール−15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナオイン(triisononaoine)、ヤシ油脂肪酸オクチル、 ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス−7、カルボマー、 プロピレングリコール、グリセリン、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸塩、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ミネラルワックス及び鉱物油、イソステアリン酸イソステアリル、プロピレングリコールジペラルゴン(propylene glycol dipelargonate)、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG−8ミツロウ、水添パーム核脂肪酸グリセリド、水添パーム油脂肪酸グリセリド、ラノリン油、 ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、スクロース、低密度ポリエチレン及び等張食塩水からなる群より選択される。
【0041】
有利には、上記組成物は、特にビン又はチューブに入れた形での、水性若しくは油性の溶液、水性クリーム、水性ゲル又は油性ゲル、特にボディソープ、シャンプー;乳液;エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション、特に水中油又は油中水又は多相又はシリコーン含有マイクロエマルション又はナノエマルション;ローション、特にガラスビン、プラスチックビン若しくは計量ビンに入れた形の、又は、エアゾール状のローション;アンプル;液体セッケン;皮膚科学的な棒(dermatological bar);軟膏;フォーム;無水製品、好ましくは液体、糊状又は固体の無水製品、例えばスティック状、特に口紅;からなる群より選択される形態で処方される。
【0042】
有利には、上記組成物は十分に液状であれば、特に皮下、目、肺、口又は鼻から投与できる。
【0043】
有利には、上記糊状又は固体の組成物(ペースト、粉末、タブレット、カプセル、顆粒、坐薬等)は、特に口、舌、鼻又は直腸から体内に導入できる。
【0044】
有利には、上記組成物の処方において可能であれば、上記組成物は皮膚又は粘膜を通して、特に皮膚又は粘膜に塗布することによって投与する。
【0045】
有利には、当業者は様々な処方及び投与経路の中から所望の効果に適したものを選択できる。
【0046】
第五の態様によると、本発明は、上記組成物の使用を含むことを特徴とする美容処置の方法に関する。
【0047】
有利には、上記美容処置は、特に組織のたるみが加齢又は太陽暴露の過程で観察される場合、組織のたるみへの抵抗、及び、細胞外マトリックスの高密度化、及び、皮下組織の引き締め、及び、皮膚の皺の低減、及び、抗皺効果、及び、特に栄養失調による瘢痕やケロイド傷の、瘢痕の組織の質及び瘢痕の外観の改善、及び、伸展線への抵抗からなる群より選択される。
【0048】
第六の態様によると、本発明は、LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の活性を促進して弾性繊維の形成を刺激する成分のスクリーニング方法であって、
−潜在的活性成分を、アイソフォームLOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体を発現できる細胞のうち少なくとも1種と接触させること、
−(a)特に上記潜在的活性成分がLOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の活性を刺激するかどうかを明らかにする目的で、LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の活性を調べること、又は
−(b)特に上記潜在的活性成分がLOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の発現を刺激するかどうかを明らかにする目的で、LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の発現を調べること
を含むことを特徴とするスクリーニング方法に関する。
【0049】
LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の発現の調査について、
有利には、上記潜在的活性成分が、
−タンパク質LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体をコードするヌクレオチド配列の少なくとも1種の発現、及び/又は、
−タンパク質LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体のペプチド断片を本質上構成するペプチド配列の発現
を刺激するかどうかを調べる。
【0050】
有利には、LOXLの発現の調査は、LOXLをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部の発現の定性及び/又は定量分析によって行う。
【0051】
有利には、上記ヌクレオチド配列は、LOXLをコードするmRNAと相補的なcDNAであり、このLOXLのcDNAは配列番号2に記載される。
【0052】
有利には、LOXLの発現の調査において、LOXLをコードする相補的DNAのヌクレオチド配列(配列番号2)の少なくとも一部とハイブリダイズするプライマーの使用を含む逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、LOXLをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部を増幅する。
【0053】
有利には、上記方法はまた、再生皮膚モデル又は生検に基づくモデルにおいて、
−特にLOXLをコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部を、例えばLOXLをコードする相補的DNAのヌクレオチド配列(配列番号2)の少なくとも一部とハイブリダイズするDNAプローブを少なくとも1種用いて、in situハイブリダイゼーションすることによって、又は、
−特にLOXLの特異的抗体を少なくとも1種用いた免疫検出によって
LOXLの発現の位置を確認する段階も含む。
【0054】
上記特異的抗体は実施例1に詳細に示す。
【0055】
有利には、上記スクリーニング方法は、LOXLの発現を、上記潜在的活性物質を含んでいない対照におけるLOXLの発現と比較することを含む。
【0056】
有利には、生細胞は、繊維芽細胞、特に正常な人間の皮膚に由来する繊維芽細胞、例えば包皮又は成人被験者の皮膚に由来する繊維芽細胞等を含む。
【0057】
有利には、上記生細胞は、例えば角質細胞のような、上皮細胞、特に正常な人間の皮膚に由来する上皮細胞、例えば包皮又は成人被験者の皮膚に由来する上皮細胞等を含む。
【0058】
有利には、上記生細胞は、顔、腹部又は胸部等の特定の部位に由来し、かつ、「老化」又は日光等に「暴露」されたとみなすことができる少なくとも1種の皮膚、又は、瘢痕若しくは伸展線のある部分由来の皮膚から採取する。
【0059】
有利には、上記スクリーニング方法は、再生皮膚モデル、好ましくは繊維芽細胞を含む真皮モデルの少なくとも1種、又は、生検に基づくモデルを使用する。
【0060】
有利には、上記スクリーニング方法は、再生皮膚モデル又は生検に基づくモデルを使用する。使用する再生皮膚モデルは、有利にはMimeskin(R)再生皮膚モデルであるが、結合性マトリックス、表皮、上皮、再生皮膚又は再生粘膜のモデルであってもよい。
【0061】
(1)<三次元結合性マトリックス(真皮又は絨毛膜)培養モデル>
は、再生真皮又は再生絨毛膜を形成するために、間質細胞を播種した担体を含む。この担体は好ましくは、
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロンTM膜若しくはテフロンTMスポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、AnoporeTM無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CMTM半透膜、ポリエステル半透膜又はポリグリコール酸の膜若しくは薄膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、例えば、真皮モデルであるSkin2TMmodel ZK1100、Dermagraft(R)及びTranscyte(R)(Advanced Tissue Sciences社)が挙げられる)
−細胞培養処理した樹脂(葉状真皮(a dermal leaf)の構造:Michel M.ら、In Vitro Cell.Dev Biol.−Animal(1999)35:318−326)
−ヒアルロン酸(Hyalograft(R) 3D−Fidia Advanced Biopolymers社)及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル又は膜(上記群において、例えば、真皮モデルであるVitrix(R)(オルガノジェネシス社)が挙げられる)
−1種以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサン(CNRSのEP0296078 A1、Coletica社のWO01/911821及びWO01/92322)を含むことが可能であるコラーゲンから作られる、浮上している又は浮上していない多孔性マトリックス
から選択される。
【0062】
(2)<三次元表皮又は上皮培養モデル>
は、再生上皮又は再生表皮を得るために、まず間質細胞、特に繊維芽細胞を、次に上皮細胞、特に角質細胞を播種した、又は、播種していない担体を含む。この担体は好ましくは、
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロンTM膜若しくはテフロンTMスポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記群において、再生表皮及び上皮のモデル(Skinethic(R))、並びに、EpiDerm(R)、EpiAirway(R)、EpiOccular(R)(Mattek Corporation社)といったモデルが挙げられる)
−ヒアルロン酸及び/又はコラーゲン及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とする薄膜又は膜(上記群において、特に、Episkin(R)(ロレアル社)及びLaserskin(R)(Fidia advanced Biopolymers社)といったモデルが挙げられる)
から選択される。
【0063】
(3)<三次元再生皮膚又は粘膜培養モデル>
は、再生粘膜を得るために上皮細胞を、又は、再生皮膚を得るために角質細胞を播種した(真皮の又は絨毛膜の)マトリックス担体を含む。この担体は好ましくは、
−合成半透膜、具体的にはニトロセルロース半透膜、ナイロン半透膜、テフロンTM膜若しくはテフロンTMスポンジ、ポリカーボネート若しくはポリエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)の半透膜、Anopore無機半透膜、酢酸セルロース若しくはセルロースエステル(HATF)の膜、Biopore−CM半透膜又はポリエステル半透膜からなる群より選択される不活性な担体(上記不活性な担体は間質細胞、特に繊維芽細胞を含む)
−間質細胞、特に繊維芽細胞を含む、コラーゲン及び/又はヒアルロン酸及び/又はフィブロネクチン及び/又は繊維素を基盤とするゲル
−1種以上のグリコサミノグリカン類及び/又は最終的にはキトサンを含むことが可能であるコラーゲンから作られる、浮上している又は浮上していない多孔性マトリックス(上記多孔性マトリックスは間質細胞、特に繊維芽細胞を統合したものである)
−人間又は動物の、上皮を剥がした真皮又は死んだ真皮
から選択される。
【0064】
上記群において、Apligraf(R)(オルガノジェネシス社)、ATS−2000(CellSystems(R) Biotechnologie Vertrieb社)、特にはSkin2TM(ZK1200−1300−2000、Advanced Tissue Science社)といったモデルを挙げることができる。
【0065】
また、組織治療に使用できて、本研究の対象ともなり得るモデルもある。上記モデルとしては、EpidexTM(Modex Therapeutiques社)、Epibase(R)(Laboratoire Genevrier)、EpicellTM(ジェンザイム社)、AutodermTM及びTransdermTM(イノジェネティックス社)を挙げることができる。
【0066】
有利には、上記スクリーニング方法は、再生皮膚モデル、好ましくは角質細胞を含む表皮モデルの少なくとも1種を使用する。
【0067】
有利には、上記方法は、タンパク質エラスチン及び/若しくはトロポエラスチンのうち少なくとも1種の配列、又は、タンパク質エラスチンをコードするヌクレオチド配列の発現を、特に上記活性成分が上記生細胞と接触しているとタンパク質エラスチンの発現が最終的に刺激されることを明らかにするために、調べる段階を含む。
【0068】
有利には、上記方法は、特に弾性繊維の新たな形成を追跡できるかどうかを調べる目的で、特に上皮組織及び/又は結合組織において、タンパク質LOXLの発現を免疫検出する段階を含む。上記組織は、再生皮膚モデル又は生検に基づくモデルのうちの少なくとも1種に由来するものである。
【0069】
有利には、上記活性成分は、イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、桂皮、乳酸菌発酵物、エンバク、ジャガイモ、生糸、アサフェティーダガム(Asa foetida gum)、ヘキセン酸エチル及びその誘導体、酪酸メチル及びその誘導体、並びに、デカジエン酸エチル及びその誘導体からなる群より選択される。
【0070】
第七の態様によると、本発明は、弾性繊維の新たな形成を追跡できるかどうかを調べる目的で、LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体の組織における発現の位置を特に結合組織において確認する方法に関し、上記組織は再生皮膚モデルの少なくとも1種又は生検に由来し、上記方法は、タンパク質LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体を免疫検出する段階、又は、LOXL、又は、その相同体若しくは本質的な相同体をコードするヌクレオチド配列の少なくとも一部をin situハイブリダイゼーションする段階を含む。
【0071】
本発明はまた、組織におけるLOXLの発現の位置を、弾性繊維の新たな形成を追跡できるかどうかを調べる目的で、特に上皮組織及び/又は結合組織において確認する方法にも関し、上記方法は、タンパク質LOXLを免疫検出する段階又はLOXLをコードする遺伝子をin situハイブリダイゼーションする段階を含む。
【0072】
本発明はまた、タンパク質LOXLの酵素活性又は発現を変化させて弾性繊維の形成を刺激する活性成分の使用にも関する。
【0073】
本発明はまた、タンパク質リシルオキシダーゼアイソフォームLOXLの酵素活性に関与する欠乏症の治療方法にも関し、上記方法は、患者に、タンパク質リシルオキシダーゼLOXL、又は、「その相同体若しくは本質的な相同体」、又は、タンパク質リシルオキシダーゼLOXLの酵素活性若しくは発現を刺激する化合物を含む組成物を治療効果のある量投与することを含む。
【0074】
有利には、上記治療方法によって、特に組織のたるみが加齢又は太陽暴露の過程で観察される場合、組織のたるみへの抵抗、及び、細胞外マトリックスの高密度化、及び、皮下組織の引き締め、及び、皮膚の皺の低減、及び、抗皺効果、及び、特に栄養失調による瘢痕やケロイド傷の、瘢痕の組織の質及び瘢痕の外観の改善、及び、伸展線への抵抗から選択される治療を行うことができる。
【0075】
本発明者らは、LOXLの活性が成人における弾性繊維の形成に主として欠けていたこと、そして、このリシルオキシダーゼアイソフォームの合成を再度活性化すると弾性繊維の形成に対する刺激効果が得られることを予想外にも明らかにした。
【0076】
本発明者らは実際に、リシルオキシダーゼ(LO)ファミリーのこのアイソフォームが、弾性繊維を生成する再生皮膚モデルにおける弾性繊維の形成に関与していることを明らかにした。年齢の異なる被験者の皮膚中に、皮膚の変化の過程でこのアイソフォームが存在するかどうかを調べたところ、本発明者らは、このアイソフォームと弾性繊維形成とが同時に存在するかどうかということに着目した。そして、成人における弾性繊維の形成時にこのLOアイソフォームの活性が欠損しており、機能性弾性繊維の形成を調節するためにはこのLOアイソフォームの合成を変化させる必要があることが分かる。
【0077】
このようにして本発明者らは、このLOアイソフォーム(LOXL)の発現における増加を視覚化する方法を見い出し、特に植物抽出物又は化学物質の中から、(特にLOXLをコードするmRNAの発現を刺激する)活性成分を探した。そして活性成分を選択し、これを、特に化粧組成物、皮膚医薬組成物及び医薬組成物中に、加齢による組織のたるみに抵抗し、かつ、瘢痕の組織の質並びに瘢痕及び伸展線の外観を改善するために配合した。
【0078】
本発明者らは、LOXLの成熟形(実施例1及び2参照)に対する特異的抗体を作り、上記のようにして、このリシルオキシダーゼアイソフォームが存在しないことと機能性弾性繊維の合成における問題とが、特に皮膚組織の加齢の過程で、その加齢が自然なものであるか太陽暴露に誘導されるものであるかに関わらず、相互に関係していることを明らかにした。
【0079】
アイソフォームLOXL2、LOXL3及びLOXL4は、真皮において全く又はほとんど発現しておらず、弾性繊維の形成に関与していない(実施例4参照)。アイソフォームLOXは真皮中に存在していてミクロフィブリルに結合でき、機能性膠原繊維の形成に関与しており、成人の皮膚中に存在する。これより、LOXが存在しないことと、加齢による弾性繊維の弾力性の消失との間に相互関係はない(実施例3参照)。
【0080】
従って、弾性繊維の形成におけるLOXLの作用を明らかにすることは、本発明を完成するために重要であった(実施例5参照)。
【0081】
LOXLと弾性繊維又はミクロフィブリルとが結合していることを、電子顕微鏡検査によって本発明を完成する過程で明らかに示した。ミクロフィブリルに結合したLOXLは、エラスチンが沈着する足場を構成する。
【0082】
LOXLはエラスチンを架橋して成熟させる酵素であり、機能性弾性繊維を形成できる。
【0083】
本発明において、本発明者らはLOXLの発現の位置を確認する方法を完成した。
【0084】
上記位置確認方法は特にLOXLの免疫検出を含む。この方法を用いてタンパク質エラスチンの発現を明らかにすることもできる。本発明者らの研究から、LOXLはミクロフィブリル上の高密度の沈着物には結合しているが、膠原繊維には結合していないことが分かった。エラスチンは、上記の高密度の沈着物及びミクロフィブリル中に認められた。この現象は、再生皮膚モデルにおいて、特に再生皮膚モデルにおいて角質細胞を添加して30日後に認められた(実施例5参照)。
【0085】
LOXLとミクロフィブリル及び弾性繊維とが結合していることは、包皮の皮膚中でも、特に免疫検出に続いて透過型電子顕微鏡検査を行って確認した。
【0086】
LOXLは、まだ高いエラスチン合成力を持つ幼い患者(数か月児)から採取した包皮皮膚の真皮中に発現している。しかしながら、LOXLは成人の首、胸、腹又は顔の皮膚の真皮中には発現していない。このような、首、胸、腹又は顔の皮膚の真皮中にLOXLが認められないという現象は、成人の場合には年齢を問わず確認された。人間の皮膚の表皮中にもLOXLが多く発現していることが(皮膚を約80歳以上の患者から採取した場合にはその発現が徐々に消失するが)観察された(実施例6参照)。
【0087】
瘢痕に関しては、LOXLは3か月及び5年経過後の瘢痕においても真皮中で観察されなかった。
【0088】
これに関して、瘢痕ができて3カ月経過後の瘢痕に存在していたエラスチンが、5年後にはこの瘢痕組織に存在していないことは留意すべきである。
【0089】
このようにして、本発明者らは、弾性繊維の形成におけるLOXLの作用を、特に再生皮膚モデル又は幼い患者の包皮の真皮を用いて明らかにした。
【0090】
本発明者らはまた、瘢痕の組織部分及び年齢の異なる人間の皮膚の真皮中に(すなわち加齢の過程において)LOXLが発現していないことも明らかにした。
【0091】
リシルオキシダーゼのアイソフォームのうち、LOXLは、弾性繊維を架橋できるアイソフォームの1種である。しかしながら、このアイソフォームLOXLのみが欠損しているため、成人において、弾性繊維を架橋して機能性繊維を形成することができない。
【0092】
本発明者らは、上記の予想外の発見により、機能性弾性繊維の形成を刺激する活性成分のスクリーニングを、化粧組成物又は医薬組成物をつくるために活性成分を特定する目的で行った。
【0093】
本発明はまた、LOXLをコードするヒト遺伝子のプロモーターの活性化にも関する(実施例7参照)。
【0094】
上記プロモーターの様々な活性を明らかにした。このプロモーターの配列を本明細書に添付しており、PrhLOXLについての下記の記載に具体的に示す。
【0095】
このプロモーターについて、ヌクレオチド−712/−391(hLOXL遺伝子の翻訳を+1から始めるとした場合の番号)の領域は、人間の包皮皮膚の繊維芽細胞において移行型トランスフェクションを行った後などに発現するレポーター遺伝子ルシフェラーゼに対しての上方制御活性を有する領域である。
【0096】
本発明者らは、核因子の制御を受けると推定される部位を特定できた。この因子は、サイトカイン、又は、特定遺伝子の転写に作用することが知られている他の因子と相互に関係があった。
【0097】
また、PrhLOXLの領域のいくつかが、活性化領域又は阻害領域であることが分かった。
【0098】
特に、−2172/−2002、−1438/−968及び−712/−391の領域が活性化領域で、−2002/−1438及び−968/−712の領域が阻害領域であることが確認された。−80/−1の領域は活性化領域ではなく、転写された領域の+1より下流に位置している。この番号において、転写された領域の+1は、翻訳開始位置から−342の位置に相当すると推定される。従って、上記領域のうちいくつかの部位は、hLOXL遺伝子を制御している可能性があることが分かった。これらの部位とは特に、レチノイン酸応答部位と推定される部位2種、TGF−β(トランスフォーミング増殖因子β)応答部位と推定される部位2種、EGF(上皮増殖因子)応答部位と推定される部位1種、エストロゲン応答部位と推定される部位3種及びグルココルチコイド応答部位(GRE)と推定される部位2種である。
【0099】
このことは、hLOXLの新規合成及び/又は活性を刺激して弾性繊維の形成を刺激する活性成分が、上記部位に結合しているタンパク質の発現を変化させる際に、特に上記の領域において、直接又は間接的にhLOXL遺伝子のプロモーターに作用することを意味する。これより、PrhLOXLのヌクレオチド配列の少なくとも一部、特には上述の推定部位、に結合できる領域、又は、その部位に結合できるタンパク質の発現を変化させることができる領域を含む物質が活性を有すると考えることができるだろう。
【0100】
本発明者らの研究全般によって、弾性繊維の形成を刺激する活性成分の同定方法を明らかにできた。
【0101】
本発明において、本発明者らは、in situハイブリダイゼーションを行い、特にLOXLをコードするメッセンジャーRNAの発現の位置を確認して証明できた。このin situハイブリダイゼーションは特に、ジゴキシゲニン標識二本鎖DNAプローブを用いて、角質細胞を添加して30日後の、パラフィンで包埋した再生皮膚モデルの断面において行う。同様のin situハイブリダイゼーションにより、トロポエラスチン及びコラーゲンα1(I)のメッセンジャーRNAの発現についても証明した(実施例8参照)。
【0102】
LOXLmRNAは、真皮深層及び表皮全体に発現している。トロポエラスチンmRNAは、真皮の繊維芽細胞の付近及び表皮中に発現している。コラーゲンIα1のmRNAは、真皮中には発現しているが、表皮中には発現していない。このことから、本発明において、LOXLmRNAの、特に再生皮膚モデルにおける、例えば機能性弾性繊維の形成を刺激する活性成分を塗布した後での発現位置が確認され、証明される。
【0103】
本発明において、hLOXL遺伝子は、再生皮膚モデルに、特に、再生皮膚モデルMimeskin(R)(Coletica社、リヨン、フランス)に角質細胞を添加することによって活性化された。LOXLmRNAの合成は、特にトロポエラスチンの合成に付随して、特に真皮と同等のものに角質細胞を添加して約6日後に誘導される。
【0104】
更に本発明によって、特にhLOXL遺伝子及びヒトエラスチン遺伝子の発現量の減少を、高齢者由来の繊維芽細胞において明らかにすることも可能になった。
【0105】
これに当たって、本発明者らは、包皮由来の繊維芽細胞(FF)(幼児由来)5株、及び、腹部の形成外科手術の際に採取した成人の繊維芽細胞(AF)6株(このうち3人の平均年齢は20歳で、残りの3人の平均年齢は60歳である)を用いた。また、タンパク質LOXをコードする遺伝子の発現についても調べた(実施例9参照)。
【0106】
目的の上記3種の遺伝子及びアクチンの発現を、リアルタイムRT−PCRによって調べた。本発明はこの種の調査に限定されない。この方法によれば、一定とされるアクチンの発現と比較して遺伝子の発現を正確に定量できる。これによって、この遺伝子の発現量の制御を定量できる。
【0107】
図12に示す結果はまず、LOXLmRNAの合成は、成人の繊維芽細胞において著しくかつ統計上有意に、包皮の繊維芽細胞と比較して70%近く減少しているが、エラスチンmRNAの合成は年齢によって有意な差がないことを示す。弾性組織が劣化して交換されないのであれば、この結果がエラスチン遺伝子の活性の阻害によるものとは思われないので、このデータはエラスチンに関する従来の報告と一致する。
【0108】
AFにおけるLOXmRNAの合成はFFに対して平均40%減少するが、この酵素は正常な人間の皮膚中に常に発現しているわけではないため、この変化がin vivoにおける現象を非常によく示しているとはいえない。
【0109】
弾性繊維の形成を更に刺激するために、エラスチンの発現を刺激することもまた有利である。
【0110】
本発明は、LOXLの発現を、特に繊維芽細胞において明らかにできる方法を提供する。
【0111】
本発明は、弾性繊維の形成を刺激する活性成分を同定するようなやり方で上記様々な方法を実施することを目的とする。
【0112】
通常、本発明の方法は、タンパク質LOXLの発現を探す方法であり、特にはLOXLをコードするメッセンジャーRNAの発現を探す方法である(実施例10参照)。
【0113】
本発明はまた、弾性繊維の形成を刺激する活性成分にも関する(実施例11及び12参照)。
【0114】
本発明はまた、酵素LOXL若しくはその誘導体又は上記活性成分の、化粧組成物又は医薬組成物を製造するための使用にも関する(実施例13〜18参照)。LOXLの刺激は、メッセンジャーRNAの、又は、タンパク質そのものの遺伝子レベルで行うことができる。こうして活性化することによって、特に酵素LOXLによるエラスチンの架橋によって、弾性繊維を形成できる。
【実施例】
【0115】
当業者には、本発明の他の目的、特徴及び利点は、以下の実施例を参照した説明から明らかであろう。
【0116】
実施例は本発明に不可欠であり、また、実施例を含む本明細書全体の中に記載される従来技術に照らして新規の特徴は全て、その機能、概略共に本発明に不可欠である。
【0117】
上記より、実施例は全て、一般的な範囲を示す。
【0118】
また、実施例において、特に指示のない限り、百分率は重量%で、温度は摂氏で、圧力は大気圧で表す。
【0119】
〔実施例1〕
本発明はまずLOX及びLOXLの特異的抗体を新規に作ったが、この抗体を用いることによってこれらの成熟形を検出できる。この抗体は、LOX及びLOXLの成熟領域に対して作った。抗原領域は、他のリシルオキシダーゼ(LO)アイソフォーム上の対応する領域との類似性が最低限になるように選択した。ペプチドLOXV228−S280の領域に対して得られた抗体を抗LOXmat抗体、同様にペプチドLOXLR231−G368の領域に対して得られた抗体を抗LOXLpro抗体と称した。
【0120】
図1:特異的抗体を作るために決定したLOの配列の解説:この図は、抗LOX抗体及び抗LOXL抗体を作るために抗原領域を選択する段階を表わす。
図1(A):hLOX(ヒトLOXタンパク質)及びhLOXL(ヒトLOXLタンパク質)の概略図。
【0121】
hLOX及びhLOXLの配列を中抜きの長方形で示し、C末端領域は点を付して類似性の高い領域を強調している。前領域の切断部位、及び、プロコラーゲンCプロテイナーゼ(PCP)による切断部位の位置を、hLOXのA22及びD169残基上にそれぞれ示す。LOXLについては、56kDaの前駆体のN末端成熟部位における前領域の切断部位(Q26残基の前)、及び、56kDaのLOXL前駆体のPCPによる切断部位の位置を、Q135残基の前及びD338残基の前にそれぞれ示す。対応するLOXLタンパク質Q26−S574、D135−S574及びD338−S574の分子量はそれぞれ約63kDa、54.6kDa及び26.7kDaと推定される。抗LOX抗体を作るために用いた組み換えペプチドの位置を、抗LOXpro抗体についてはペプチドG128−L212、抗LOXmat抗体についてはペプチドV228−S280、抗LOXcat抗体についてはペプチドD305−N373のように示す。抗LOXL抗体を作るために用いた組み換えペプチドの位置を、抗LOXLpro抗体についてはペプチドR231−G368、抗LOXLmat抗体についてはペプチドS355−D415のように示す。
【0122】
図1(B):この表は、LOX及びLOXLの抗原領域と、LOアイソフォーム上の相当する領域との類似率を示す。
図1(B)の表中で、hLOXLはヒトLOXLタンパク質、bLOXLはウシLOXLタンパク質、mLOXLはマウスLOXLタンパク質、hLOXLはヒトLOXタンパク質、bLOXはウシLOXタンパク質、hLOXL2はヒトLOXL2タンパク質、hLOXL3はヒトLOXL3タンパク質、hLOXL4はヒトLOXL4タンパク質を表わす。
長さ(aa)の欄には、対応する領域に含まれるアミノ酸の数を記載する。
【0123】
抗体を作るため、決定されているhLOXL又はhLOXの配列をグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)の遺伝子と共に発現プラスミドpGEX−4T−3(アマシャムバイオサイエンス社)のBamHI−XhoI部位に挿入して、キメラ遺伝子を構築した。
【0124】
センスプライマー5’−TTGGATCCAGCGTAGGCAGCGTGTAC−3’(配列番号16)、及び、アンチセンスプライマー5’−AAACTCGAGCATCGTAGTCGGTGGC−3’(配列番号17)を用いたPCRによって作成したHLOXL(cDNA hLOXL)のcDNA配列を導入することにより、融合遺伝子GST−LOXLS355−D415を構築した。
【0125】
センスプライマー5’−TCGGATCCGGCTACTCGACATCTAGAGCC−3’(配列番号18)、及び、アンチセンスプライマー5’−GTCCTCGAGACCGTACTGGAAGTAGCC−3’(配列番号19)をそれぞれ用いて増幅したhLOXcDNAを導入することにより、融合遺伝子GST−LOXG128−L212を構築した。
【0126】
センスプライマー5’−TTGGATCCGTGCAGAAGATGTCCATGTAC−3’(配列番号20)、及び、アンチセンスプライマー5’−TTTCTCGAGGCTGGGTAAGAAATCTGATG−3’(配列番号21)をそれぞれ用いて増幅したhLOX配列を導入することにより、融合遺伝子GST−LOXV228−S279を構築した。
【0127】
センスプライマー5’−CACTATGGATCCCTTGATGCCAACACCC−3’(配列番号22)、及び、アンチセンスプライマー5’−CACGACCTTTAGGATATCGTTTCCAGG−3’(配列番号23)をそれぞれ用いて増幅したhLOXcDNAを導入することにより、融合遺伝子GST−LOXD306−N373を構築した。
【0128】
これらのPCRによる増幅にはすべて、TaqポリメラーゼHigh Fidelity(ロシュ・ダイアグノスティックス社、メイマン(Meyman)、フランス)を使用した。
【0129】
融合タンパク質GST−LOX及びGST−LOXL、並びに、ウサギポリクローナル抗体を得て、上述の方法で融合遺伝子GST−LOXLS355−D415及びGST−LOXG128−L212の発現に由来する融合タンパク質を精製した(Decitreら、Lab Invest、78:143−151、1998年;Borelら、J.Biol.Chem,276:48944−49、2001年)。
【0130】
吸着実験を、免疫検出に先立ってHybond−ECLニトロセルロース膜(アマシャムバイオサイエンス社)上に吸着させておいた融合タンパク質と共に、抗体を20℃で3時間インキュベートして行った。
【0131】
上記の実験を行って、まず最初に、成熟タンパク質の免疫化学上及び生化学上の特性に基づいて、LOX及びLOXLの成熟形を明らかにすることができた(実施例2(図2)参照)。得られた抗体は、従来LOXLに対して用いられていた、LOXLの成熟形を認識できない抗体とは区別される(Decitreら、Lab Invest、78:143−151、1998年;Borelら、J.Biol.Chem、276:48944−49、2001年)。本発明では抗LOXLmat抗体及び抗LOXmat抗体を用いたが、これらにより、抗LOXLmat抗体には認識されるが、抗LOXmat抗体には認識されない、LOXLの成熟形に相当する31kDaのタンパク質を明らかにすることができた。これより、先行技術、特に、LOファミリーの遺伝子に由来する全てのタンパク質を記載しながらそれらの特徴については定義していないCsiszarらの特許に対して、本発明が事実上進展していることが分かる(WO01/83702A2:アミンオキシダーゼファミリーのうちリシルオキシダーゼファミリーに属する新規酵素に関連する出願)。
【0132】
〔実施例2〕
「新規抗体、抗LOX抗体及び抗LOXL抗体による、筋細胞のLOX及びLOXLの免疫検出」
図2:図2は、下記に示す方法で行った電気泳動の写真である。この電気泳動は、実施例1で明らかにした抗LOX抗体及び抗LOXL抗体を用いることによって、平滑筋細胞(SMC)のLOX及びLOXLの成熟タンパク質の特性を明らかにしている。
【0133】
ラット平滑筋細胞系(Jean−Marie Daniel Lamaziere(ボルドー)により開発)の細胞株(L)及び細胞培地(M)からタンパク質を抽出し、抗LOXLmat抗体、抗LOXmat抗体、抗LOXLpro抗体及び抗LOXpro抗体を用いてウェスタンブロッティングにより検出した。細胞は、37℃において5%CO雰囲気下、10%ウシ胎児血清、グルタミン2mM及びゲンタマイシン50μg/mlを含むDMEM培地(シグマ)中で培養した。
【0134】
細胞株タンパク質を、PBSバッファーで2回洗浄し、2時間かけて4℃においてゆっくりと撹拌しながら、溶解バッファー(16mMリン酸バッファー(pH8)、0.5%NP40、プロテアーゼ阻害剤(コンプリートミニ、ロシュ・ダイアグノスティックス社)、及び、尿素6M)中で抽出した。溶解物を、プロテアーゼ阻害剤(コンプリートミニ、ロシュ・ダイアグノスティックス社、メイラン(Meylan)、フランス)を含む16mMリン酸バッファー(pH8)の2倍量で希釈し、15000gで5分間遠心分離した。可溶性タンパク質を10%のトリクロロ酢酸(TCA)を加えて沈殿させ、電気泳動を行った。
【0135】
血清を添加せずに48時間培養した細胞の培地中のタンパク質を、10%TCA又は50%飽和硫酸アンモニウムを加えて回収し、沈殿させた。
【0136】
免疫検出を行うために、10%SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によってタンパク質を分離した。このタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレン(イモビロンPSQ、ミリポア社)上に転写し、上述のように免疫検出した(Borelら、2001年)。
【0137】
このように、上記で作った抗体を用いることによって、生体組織中におけるLOX及びLOXLの成熟形及び未成熟形を特徴付けてその位置を確認することができる。
【0138】
〔実施例3〕
「弾性繊維の形成におけるLOX及びLOXLの作用の実証」
本発明者らは、LOX及びLOXLタンパク質が再生皮膚モデルにおける真皮中の結合組織の形成に関与している可能性があることを、免疫組織化学的手法によって明らかにした(図3)。このことは、2種の酵素(LOX及びLOXL)の酵素前駆体領域及び成熟領域に対する抗LOX抗体及び抗LOXL抗体を用いることによって明瞭となった。
【0139】
図3:再生皮膚(RS)及び正常な人間の皮膚中におけるLOXL及びLOXの免疫組織学的検出の結果を示すものである。16日後(A)、35日後(C)及び45日後(E)の再生皮膚のLOXL(A、C、E、G)の免疫検出を、抗LOXLR231−G368抗体(A、C、E)、又は、免疫検出する前に対応するペプチドGST−LOXLR231−G368と吸着させた抗LOXLR231−G368抗体(G)を用いて行ったものを示す。16日後(B)、35日後(D)及び45日後(F)におけるLOX(B、D、F、H)の免疫検出を、抗LOXV228−S279抗体(B、D、F)、又は、免疫検出する前に対応するペプチドGST−LOXV228−S279と吸着させた抗LOXV228−S279抗体(H)を用いて行ったものを示す。人間の包皮皮膚中のLOXL(I)及びLOX(J)の免疫検出を、抗LOXLR231−G368抗体(I)及び抗LOXV228−S279抗体(J)を用いて行った。真皮と表皮の境界部を白抜きの矢印で、真皮の基質を矢印で、16日後の角質細胞の位置を矢印の先端で示す。
【0140】
再生皮膚(Mimeskin(R)、Coletica社、リヨン、フランス)を、ブアン固定液(LOX、LOXL、エラスチン)、又は、10%ホルマリン溶液(エラスチン用)中で調製し、その後パラフィンで包埋した。厚さ6μmの断面からパラフィンを除去し、グリシンの塩酸溶液(100mmol/L)中で漂白した。抗LOX抗体及び抗LOXL抗体は上記のものである。
【0141】
抗体は次のように希釈して使用した:500倍(抗LOXLR231−G368抗体)、100倍(抗LOXV228−S279抗体、抗LOXLS355−D416抗体)。免疫複合体を、ペルオキシダーゼ標識抗IgGウサギ(ヤギ)抗体(ダコ社、トラップ、フランス)により、基質としてジアミノベンジジン(ダコ社)を用いて検出した。
【0142】
上記より、LOXLは、再生皮膚モデル(特にMimeskin(R)等)における弾性繊維の形成に関与している可能性が高い。
【0143】
〔実施例4〕
「弾性繊維の形成におけるLOXL2、LOXL3及びLOXL4の作用の実証」
本発明はまた、新規の抗LOXL2抗体2種も作ったが、これらのうち1種は、理論上はLOXL3及びLOXL4も認識する。これを用いることによって、これらの酵素が、再生皮膚モデルにおける真皮中でエラスチンと共に発現するかどうかを明らかにすることができた。上記2種の抗LOXL2抗体を用いて免疫組織化学的に調べたところ、これらの抗原、並びに、抗原性の関連する2種のタンパク質LOXL3及びLOXL4が真皮中に全くあるいはほとんど発現せず、従って弾性繊維の形成に関与していないことが実際に分かった。
【0144】
図4:再生皮膚(16、35及び45日後)及び人間の包皮皮膚の断面における、抗LOXL2517−581抗体(左欄)、及び、理論的にLOXL2、LOXL3及びLOXL4を認識する抗LOXL2664−720抗体(右欄)を用いて行った免疫検出の結果を示す。
【0145】
抗LOXL2抗体を、融合ペプチドGST−LOXL2に対して上述のようにして得た(Decitreら、Lab.Invest.、78、143−151、1998年)。融合遺伝子GST−LOXL2517−581を、ヒトLOXL2遺伝子(hLOXL2)配列の1543〜1747をプラスミドに導入して、上述のように構築した。
【0146】
この断片は、PCRにより、センスプライマー5−GAGCTGGGATCCGCGCACTGCC−3’(配列番号32)、及び、アンチセンスプライマー5’−GGCTGAGTCGACGAGGCAGTTCTCC−3’(配列番号33)を用いて作成した。
【0147】
センスプライマー5’−CACAGGATCCGAAGGAGACATCCAGAAG−3’(配列番号34)、及び、アンチセンスプライマー5’−TTTCTGAGCTCCTGCATTTCATGATG−3’(配列番号35)を用いて、対応するhLOXL2配列を導入することにより、融合遺伝子GST−LOXL2664−720を構築した。
【0148】
上記タンパク質に対して作成した融合タンパク質及び抗ウサギ抗体を、上述のようにして作った。517−580ペプチドに対する抗体を、この領域がLOXL2に特有の領域であることから抗LOXL2抗体と称した。
【0149】
664−734ペプチドに対する抗体を、LOXL2のこの領域がLOXL3及びLOXL4と高い類似性を持つことから(それぞれ、約74.6%及び60.5%)、抗LOXL−R(「関連する」の意)抗体と称した。
【0150】
16日後(RS−D16)、35日後(RS−D35)及び45日後(RS−D45)の再生皮膚(Mimeskin(R)、Coletica社、リヨン、フランス)、及び、人間の包皮皮膚について、上述のように免疫組織化学的手法により、抗LOXL2−R抗体及び抗LOXL2抗体を用いて調べた。抗LOXL2抗体により、LOXL2が表皮中に発現していて真皮中には発現していないことが分かった。一方、LOXL2、LOXL3及びLOXL4に共通するC末端領域に対する抗体により、これらの酵素が表皮中に発現していることが確認でき、またこれらの酵素が、真皮中に少し発現しているが、弾性繊維を形成する部位に相当する部分には発現していないことが分かった。
【0151】
従って、LOXL2、LOXL3及びLOXL4は、弾性繊維の形成には関与していない。
【0152】
〔実施例5〕
「弾性繊維の形成におけるLOXLの作用の実証」
LOXL及びLOXと、弾性繊維又はミクロフィブリルとの結合が、透過型電子顕微鏡を用いて本発明により明らかに示された。
【0153】
ミクロフィブリルに結合したLOXL及びLOXは、エラスチンが沈着する足場を構成するが、LOXのみが膠原繊維の形成と関連している(図5参照)。
【0154】
図5:角質細胞を添加して30日後の再生皮膚、及び、正常な人間の皮膚の真皮部分において透過型電子顕微鏡検査を用いて行ったLOXL、LOX及びエラスチンの免疫検出の結果を示す。
【0155】
組織を4℃において3時間、PBSバッファー(0.1%グルタルアルデヒド含有)に溶解した4%パラホルムアルデヒドを用いて固定し、リン酸バッファー(0.4Mスクロース−カコジル酸、及び、0.2Mリシン含有)中で洗浄した後、エタノール溶液中で脱水し、LRホワイト(Euromedex社、フランス)で包埋した。検出は、トリス−塩酸バッファー(pH8.2)で50倍に希釈した一次抗体に1%ウシ血清アルブミン(BSA)を加えたものを用いて行った。40倍に希釈した金コロイド粒子(10〜20nm)標識抗IgGウサギ抗体(Biocell社、トゥブュ(Tebu)、フランス)を用いて、免疫複合体を検出した。試料を酢酸ウラニルとクエン酸鉛の3%水溶液で染色して、日本電子製1200EX透過型電子顕微鏡で調べた。この免疫検出は再生皮膚(A〜D)及び人間の包皮皮膚(F〜I)について行った。
【0156】
再生皮膚においては以下の抗体を用いて行った:抗LOXL抗体(A、B)、抗LOX抗体(C)、抗エラスチン抗体(Elm)(D)、市販の抗エラスチンヒト抗体(シグマ社、アメリカ)を50倍に希釈したもの、及び、ネガティブコントロールとして、真皮中の一次抗体を含まないもの(Control)(E)。人間の包皮皮膚においては二重標識を行った(F〜I)。
【0157】
「A〜D」:LOXL、LOX及びエラスチンの、45日後の再生皮膚の真皮部分における電子顕微鏡を用いた免疫検出。
「E」:45日後、すなわち角質細胞を添加して30日後の再生皮膚の真皮中における、抗エラスチン抗体及び抗コラーゲンI抗体を用いたポジティブコントロール。
「F及びI」:LOXL、LOX、エラスチン及びコラーゲンの、人間の包皮の真皮部分における電子顕微鏡を用いた二重免疫検出。
「G及びH」:抗LOXLウサギ抗体(抗IgGウサギ抗体は10nmの金粒子で標識)、及び、抗エラスチンマウス抗体(抗IgGマウス抗体は20nmの金粒子で標識)を用いた、人間の包皮の真皮部分における二重標識。
図中の記号:m;ミクロフィブリル、c;膠原繊維、e;無定形のエラスチン。
縮尺の棒:500nm。
【0158】
LOXL(A、B)は、高密度の沈着物と結合して、又は、ミクロフィブリル上に検出されたが、上記断面上に白色で現れている膠原繊維と結合しては検出されなかった。LOX(C)の標識については、金粒子が高密度の沈着物、ミクロフィブリル及びコラーゲンと結合してわずかに観察されたが、標識は薄かった。抗エラスチン抗体によって同様に、高密度の沈着物及びミクロフィブリルが検出された(D)。LOXL及びLOXと、ミクロフィブリル及び弾性繊維との結合を、人間の包皮皮膚中において、免疫検出した後で電子顕微鏡を用いて確認した(G、H)。再生皮膚モデルにおける観察と同様に、LOXLは膠原繊維とは結合しておらず、LOX(膠原繊維と共に多く存在し、ミクロフィブリル上にはほとんど存在しない)とは正反対である。抗原LOXLは、ミクロフィブリルと結合していて、人間の包皮皮膚の弾性繊維周辺で検出された。LOXLは、ミクロフィブリルの周りに広がる無定形のエラスチンとは結合していないが、ミクロフィブリルの周囲で主に観察され、膠原繊維とも結合していない。
【0159】
LOXLは、再生皮膚モデル及び人間の包皮皮膚中において弾性繊維と結合している。
【0160】
〔実施例6〕
「LOXLの発現と弾性繊維形成との関係の実証」
LOXL及びLOXは、まだ高いエラスチン合成力を持つ幼い患者(数か月児)から採取した包皮皮膚の真皮中に発現している。LOXLは成人の首、胸、腹又は顔の皮膚の真皮中には発現していないのに対して、LOXはいずれの年齢においても真皮中に発現している(図6)。
【0161】
図6:LOX及びLOXLの人間の皮膚中における免疫検出の結果を示す。
抗LOX抗体(A、C、E、G)及び抗LOXL抗体(B、D、F、H)を用いて、エドアール・エリオ病院(リヨン、フランス)の組織バンク提供の包皮(A、B)、首(C、D)、胸(E、F)及び腹(G、H)の皮膚の試料中におけるLOX及びLOXLの発現を検出した。これらの組織はブアン試薬で固定し、パラフィンで包埋して、上述した免疫検出と同様にして免疫検出を行った。
【0162】
首、胸、腹及び顔の皮膚真皮中にLOXLが検出されないことを、幼児及び成人において確認した(図7:腹)。
【0163】
図7:年齢の異なる人間から採取した腹の皮膚におけるLOX及びLOXLの免疫検出の結果を示す。
抗LOX抗体(A、C、E、G)及び抗LOXL抗体(B、D、F、H)を用いて、エドアール・エリオ病院の組織バンク提供の1.5歳(A、B)、35歳(C、D)、60歳(E、F)及び91歳(G、H)の人から採取した腹の皮膚の試料中におけるLOX及びLOXLの発現を検出した。これらの組織はブアン試薬で固定し、パラフィンで包埋して、上述した免疫検出と同様にして免疫検出を行った。
【0164】
この実験において、人間の皮膚表皮中にLOX及びLOXLが多く発現していること、これら2種の酵素の発現は非常に長く続くことが観察された(91歳)(図7)。
【0165】
瘢痕については、3か月経過後にも5年経過後にも、瘢痕組織においてLOXL及びLOXは観察されなかった。3か月経過後の瘢痕ではエラスチンが免疫検出され、5年経過後の瘢痕では検出されなかったことは留意すべきである(図8)。
【0166】
図8:LOX及びLOXLの、治療後の経過期間の異なる瘢痕組織の皮膚中における免疫検出の結果を示す。
抗LOX抗体(A、D、G)、抗エラスチン抗体(B、E、H)及び抗LOXL抗体(C、F、I)を用いて、17歳患者の首皮膚の瘢痕周辺(「正常な」部分、A〜C)、治療から3か月経過後(D〜F)及び5年経過後(G、H)の試料におけるLOX、エラスチン及びLOXLの発現を検出した。これらの組織はブアン試薬で固定し、パラフィンで包埋して、上述した免疫検出と同様にして免疫検出を行った。エラスチンの標識には、0.2%ヒアルロニダーゼ(シグマ社)を用いて遮蔽除去(demasking)することが必要である。
【0167】
上記実施例によって、本発明は以下のことを明らかにした:(i)再生皮膚モデル、及び、幼い患者の包皮真皮中において、LOXLが弾性繊維の形成に間違いなく関与していること、及び、(ii)年齢の異なる人間の皮膚真皮、及び、瘢痕において、LOXLが本当に発現していないこと。従って、LOXLは実際、機能性弾性繊維を架橋することができ、また、機能性繊維を形成するために弾性繊維の架橋が必要な場合において欠損している唯一のリシルオキシダーゼアイソフォームである。また、弾性繊維の形成に関与している可能性のあるLOXについては、成人の皮膚に欠損していない。
【0168】
〔実施例7〕
「LOXL遺伝子の転写前制御に関する研究」
さらに本発明は、ヒトLOXL遺伝子(hLOXL)がプロモーターレベルで活性化される可能性があることを明らかにした(図9)。配列番号3は、このプロモーターの配列の−2730から−1のヌクレオチドを記載している。hLOXLプロモーターの活性化領域がいくつか明らかになった。特に、ヌクレオチド−712/−391(LOXL遺伝子の翻訳を+1から始めるとした場合の番号)の領域は、人間の包皮皮膚の繊維芽細胞において移行型トランスフェクションを行った後に発現するレポーター遺伝子ルシフェラーゼに対しての上方制御活性を有する領域である。
【0169】
hLOXLの発現の変化を遺伝子レベル及び/又はタンパク質レベルで同時に追跡できることを本発明者らが以前明らかにしたので、LOXL遺伝子の転写前上方制御によって、この遺伝子の合成を活性化でき、従ってこの遺伝子に相当するhLOXLタンパク質の合成を活性化できることが示される。このことはまた、LOXについても明らかにされた(Decitreら、Lab.Invest.、78、143−151、1998年)。
【0170】
インターネット上のソフトウェアTransfac(R)を用いて核配列PrLOXLについて研究した結果、本発明者らは、核因子の制御を受けると推定される部位を特定できた。これらの因子は、サイトカイン、又は、これらの転写因子を経由して特定遺伝子の転写に作用することが知られている他のエフェクターと相互に関係があった。最も興味深い部位を図10中に示す。このスキームはこの研究をまとめたもので、レチノイン酸応答部位と推定される部位2種、TGF−β応答部位と推定される部位2種、EGF応答部位と推定される部位1種、エストロゲン応答部位と推定される部位3種及びグルココルチコイド応答部位と推定される部位2種を示す。制御領域については研究されていたため、本発明者らはLOXL遺伝子の転写を制御できる可能性のある部位をいくつか特定できた。これらは、レチノイン酸、TGF―β、EGF及びグルココルチコイドに応答する要素であると推定される。これらの要素がない場合にはプロモーターの活性がそれぞれ約50%及び60%減少することから、レチノイン酸及びエストロゲンの制御を受けると推定される部位に対応する領域は、転写を実際に活性化する効果があると思われる。TGF−βによる制御部位は、プロモーター活性を低下させると思われる。
【0171】
上記に記載したツールは、hLOXLのプロモーターに対して、特に認識部位と推定される部位に対してアゴニスト作用又はアンタゴニスト作用を有する活性成分のスクリーニングに用いることができる。
【0172】
それゆえ、hLOXLのプロモーターのヌクレオチド配列の少なくとも一部とハイブリダイズする領域か、又は、この特性を有するエフェクタータンパク質を誘導する領域を有する活性成分を探すのが有利である。
【0173】
「hLOXL遺伝子のプロモーターの機能分析」
ヒトLOXL遺伝子のプロモーター(PrhLOXL)を、データベースの配列により特定した。転写開始位置は知られていなかったので、本発明者らは翻訳される+1からその番号をつけた。しかしながら、この領域に相当するEST(発現配列タグ)cDNAを検索したが−342から上流の配列が得られなかったことから、hLOXL遺伝子の転写がこの領域(TATAボックスを含まない)から開始されると仮定できる。特異的プライマーは、この配列上の−2172〜+189の位置に示されている(エクソン1)。このプライマーを用いることにより、皮膚繊維芽細胞由来のヒトゲノムDNAからPrhLOXLを増幅及び単離できた。これをクローニングして配列を決定したところ、その配列が予想したものと一致することが分かった。その後、−2172〜−1に位置する(完全長であることが分かっている)プロモーターをpGL3−basic vector(プロメガ社、シャルボニエール、フランス)にサブクローニングし、真核細胞における研究に用いることができた。このプロモーターはレポーター遺伝子であるルシフェラーゼ遺伝子の上流に組み込んだ。これにより、トランスフェクションさせた細胞によるルシフェラーゼの生産はPrhLOXLに制御され、その活性に比例する。細胞には、結果の標準とするために、強度に再現性よくβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)を発現するプロモーターを同時にトランスフェクションした。同様の条件でルシフェラーゼ及びβ―Gal酵素活性を測定した。
【0174】
PrhLOXLを徐々に短くしていき(5’欠失)、取り出した領域の作用を調べた。人間の皮膚の繊維芽細胞におけるPrhLOXLの制御を調べるため、この細胞のトランスフェクションを行った。細胞系のトランスフェクションは容易だが、正常な繊維芽細胞のトランスフェクションは非常に難しい。そのため、約40%の培養繊維芽細胞をトランスフェクションできるSuperfect(R)(キアゲン社、クルタブーフ(Courtaboeuf)、フランス)を用いた。
【0175】
その構築物及び包皮繊維芽細胞における活性を図9に示す。本発明者らは、大きな転写活性化領域3つと阻害領域2つの位置を特定した。例えば、−712→−391領域は、これを取り除くとプロモーターの活性が顕著に減少するので、活性化効果が非常に高い(−391→−1の構築物)。この研究により、PrhLOXLの転写を刺激するために調べる領域を特定できた。
【0176】
特に図9は、プロモーターPrhLOXLの配列とルシフェラーゼ/β−ガラクトシダーゼ活性との相関を示す。この図から、人間の包皮皮膚の繊維芽細胞におけるプロモーターの活性化領域及び阻害領域の定義を容易に理解できる。
【0177】
PrhLOXLの5’末端を次々に短くしていくことにより、レポーター遺伝子ルシフェラーゼの上流に位置するプロモーターの配列が短くなっていく構築物が7種得られた:pLL−2172、pLL−2002、pLL−1438、pLL−712、pLL−391、pLL−81。これらの構築物を人間の包皮皮膚の繊維芽細胞にトランスフェクションし、ルシフェラーゼ活性を測定した。並行して、β―ガラクトシダーゼ遺伝子(プロモーターSV40の制御を受ける)を有するプラスミドを細胞にトランスフェクションし、トランスフェクション効果のコントロールとした。β―ガラクトシダーゼ活性(トランスフェクション効果を示す)に対するルシフェラーゼ活性(hLOXLプロモーターの配列の活性を示す)を最終的な値として示す。こうした活性の評価により、+(−2172→−2002;−1438→−968;−712→−391)で表わされる活性化領域3つ、及び、−(−2002→−1438;−968→−712)で表わされる阻害領域2つを含むプロモーターの制御領域をいくつか特定できた。−80→−1のプロモーターには活性がなく、転写された領域の+1より下流に位置している。転写された領域の+1は、翻訳開始位置から−342の位置に相当すると推定される。
【0178】
図10は、hLOXL遺伝子のプロモーターの概略図であり、特にhLOXL遺伝子の転写制御位置と推定される位置を示す。「+」で示す領域は、遺伝子の発現を活性化する領域に相当し、「−」で示す領域はこの発現を阻害する領域に相当する。
【0179】
〔実施例8〕
「再生皮膚モデルにおける角質細胞の導入によるLOXLの活性化の実証」
LOXLをコードする遺伝子の発現を、LOXLをコードするメッセンジャーRNAとジゴキシゲニン標識二本鎖DNAプローブとのin situハイブリダイゼーションをパラフィンで包埋した断面において行うことによって検出した。
35日後の皮膚モデル断面(Mimeskin(R))を示す図11において、
(A)LOXLの発現は、真皮深層及び表皮全体に渉って陽性である。
(B)LOXの発現は、真皮全体及び表皮基底層上部において陽性である。
(C)トロポエラスチン(TE)の発現は、真皮の繊維芽細胞及び表皮において見られる。
(D)遺伝子COL1A1(コラーゲンα1(I))の発現は、真皮で検出され、表皮では検出されていない。
(E)プローブのないコントロール。
DEJを白抜きの矢印で、多孔性の真皮基質を矢印で、陽性細胞を矢印の先端で示す。
【0180】
二本鎖DNAプローブはPCRによって作成した。以下のプライマーをそれぞれ使用した。
Iα1コラーゲンの遺伝子にはセンス5’−GTGGAGAGTACTGGATTG−3’(配列番号14)及びアンチセンス5’−TCGTGCAGCCATCGACAG−3’(配列番号15)を、トロポエラスチンにはセンス5’−GTATATACCCAGGTGGCGTG−3’(配列番号10)及びアンチセンス5’−CGAACTTTGCTGCTGCTTTAG−3’(配列番号11)を、hLOXにはセンス5’−GGTGGCCGACCCCTACTACATCC−3’(配列番号12)及びアンチセンス5’−GCAAATCGCCTCTGGTAGCCATAGTC−3’(配列番号13)を、hLOXLにはセンス5’−GACATAACCGACGTGCAGCC−3’(配列番号8)及びアンチセンス5’−ATCCACGTTCGCTCCCTGAG−3’(配列番号9)を用いた。
【0181】
Taqポリメラーゼ(プロメガ社、シャルボニエール、フランス)、及び、標識ヌクレオチドとしてDig−11−dUTP(ロシュ・ダイアグノスティックス社、メイラン(Meylan)、フランス)を用いてDNAを増幅した。次にアガロースゲル電気泳動を行い、QIAquick抽出キット(キアゲン社、クルタブーフ(Courtaboeuf)、フランス)を用いてDNAを精製した。その後、パラフィンで包埋した断面においてin situハイブリダイゼーションを行った。試料からパラフィンを除去し、2μg/mlのプロテイナーゼK(ロシュ社)で15分間20℃において処理した。内因性のペルオキシダーゼを、TSA増幅キット(NEN社、ボストン、アメリカ)の指示通りに阻害した。プレハイブリダイゼーションを、37℃において2時間、20mMリン酸バッファー(pH7.4)(50%脱イオン化ホルムアミド、2×SSC(クエン酸ナトリウム)、EDTA(5mM)、2.5×デンハート溶液、200μg/ml変性ニシンDNA、1mg/mlサケ精液DNA、及び、tRNA(10mg/ml)を含む)中で行った。ハイブリダイゼーションを、37℃において16時間、20mMリン酸バッファー(50%脱イオン化ホルムアミド、2×SSC、EDTA(5mM)、2.5×デンハート溶液、200μg/ml変性ニシン精液DNA、及び、10%硫酸デキストランを含む)中で行った。上記変性プローブは、沸騰湯浴中で5分間処理したものと処理しないものを用いた。ハイブリダイゼーション後、20℃(コラーゲンについては37℃)において、2×SSC/50%ホルムアミド、1×SSC/50%ホルムアミド、1×SSC、及び、0.5×SSC中で断面を洗浄した。乾燥させた後、ジゴキシゲニン標識ハイブリッドを西洋ワサビペルオキシダーゼ標識抗DIG抗体(ロシュ社)を用いて検出した。そしてこの複合体をTSA増幅キット(NEN社)を用いて最終的に検出した。陽性シグナルは、アルカリホスファターゼの活性に相当する。この活性は、TSAキットの増幅手順に基づいて室温において2時間経過後の活性とし、テトラゾリウム塩(ニトロブルーテトラゾリウム/ブロモクロロインドリルリン酸(NBT/BCIP)を基質として使用)の沈殿によって分かる。
【0182】
本発明において、mRNAの発現をin situハイブリダイゼーションによって追跡した結果、LOXL遺伝子とLOX遺伝子が、再生皮膚モデル(Mimeskin(R)、Coletica社、リヨン、フランス)中に角質細胞を添加することによって活性化される可能性があることが分かる。(図11)。
【0183】
LOXLの合成は、トロポエラスチンの合成に付随して(真皮と同等のものに角質細胞を添加して6日後)誘導されている。
【0184】
またLOX遺伝子も、角質細胞を添加した後、コラーゲンIα1遺伝子(Col1A1)と同時に活性化されている。
【0185】
〔実施例9〕
「成人の繊維芽細胞中におけるLOX遺伝子の発現量低下の実証」
本発明者らは、包皮由来の繊維芽細胞(FF)(幼児由来)5株、及び、腹部の形成外科手術の際に採取した成人の繊維芽細胞(AF)6株(このうち3人の平均年齢は20歳で、残りの3人の平均年齢は60歳である)を用いた。目的の上記3種の遺伝子及びアクチンの発現を、リアルタイムRT−PCR(定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応、図12)によって調べた。この方法によれば、(一定とされる)アクチンの発現と比較して遺伝子の発現を正確に定量できる。従って、この遺伝子の発現量の制御を定量できる。
【0186】
図12に示す結果はまず、LOXLmRNAの合成は、成人の繊維芽細胞、特に20歳代の成人の繊維芽細胞において著しくかつ統計上有意に、包皮の繊維芽細胞と比較して70%近く減少しているが、エラスチンmRNAの合成は年齢によって有意な差がないことを示す。弾性組織が劣化して交換されないのであれば、この結果がエラスチン遺伝子の活性の阻害によるものとは思われないので、このデータはエラスチンに関する従来の報告と一致する。
【0187】
AFにおけるLOXmRNAの合成はFFに対して平均40%減少するが、個体差があるため、この変化はあまり重要ではない。
【0188】
全RNAを「SV96 Total RNA Isolation System」キット(プロメガ社、シャルボニエール、フランス)を用いて精製した。精製したRNAをRNase−free water(プロメガ社、シャルボニエール、フランス)100μl中に溶解して測定後、プレートに分注した(96ウェル、各10μl(PCRによる全RNA:5ng/μl))。この実験に用いたプライマーは下記表Iの通りである。
【0189】
【表1】

【0190】
リアルタイムRT−PCRを、mRNAを含むウェルに対し「Quanti Tect SYBR Green RT−PCR」キット(キアゲン社、フランス)を用いて、増幅サイクルを行うOPTICON社製サーマルサイクラー内で行った。50℃において30分間逆転写(RT)反応を行った後、95℃において15分間保つことによって、逆転写酵素を阻害し、ポリメラーゼを活性化して、得られた相補的DNA(cDNA)を変性させた。その後、連鎖重合(PCR)を50サイクル行った(94℃で15秒間、60℃で30秒間、72℃で30秒間)。1サイクル終了毎に、増幅断片数に比例する蛍光量を読み取った。発現量は、アクチンに対する各遺伝子の発現量の比率で示した。
【0191】
前述の研究は弾性繊維の形成におけるLOXLの関与、及び、成人の皮膚におけるその消滅を明らかにするものであるが、本発明の以下の点は、年齢の異なる繊維芽細胞におけるLOXL遺伝子、LOX遺伝子及びエラスチン遺伝子の発現量に関連するものである。
【0192】
上記実施例は、LOXL遺伝子及びLOX遺伝子による生成物の合成が、遺伝子レベルで活性化される可能性があることを示すものである。LOXL及びトロポエラスチンのmRNAの合成は、再生皮膚においても同時に活性化されている。LOXL遺伝子及びトロポエラスチン遺伝子を活性化すると、弾性繊維を形成できる。活性成分をスクリーニングすることによって、エラスチン遺伝子及びLOXL遺伝子の発現を同時に再度誘導できる分子を同定し、弾性繊維の形成を刺激できる。
【0193】
結論として、本発明により、LOXLと弾性繊維とが直接関係していること、再生皮膚における弾性繊維の形成にLOXLが重要であること、及び、機能性弾性繊維が合成されない組織(成人組織、瘢痕)にLOXLが存在しないことが分かる。本発明は特に、再生皮膚、皮膚生検及び人間の皮膚中における機能性弾性繊維の発現を再度誘導することを目的とした、LOXLとエラスチンの合成を同時に誘導できる新規分子を検出するためのスクリーニング方法に関する。
【0194】
〔実施例10〕
「LOXL及び/又はエラスチンのメッセンジャーRNAの発現の(例えば、活性を試験する活性成分と接触させて、又は、接触させずに行う定性RT−PCRによる)分析」
活性成分を、1%(v/v)の濃度で、正常な人間の皮膚(幼児の包皮又は成人由来)の繊維芽細胞に対して試験した。培養は、例えば、24ウェル培養プレート中に単層で、既知組成無血清培地(Fibroblast Basal Medium)中で行った。細胞を、例えば1cm当たり40,000個播種した。コンフルエントになった時点で、細胞を活性成分と有利には24時間接触させた。有利には、並行して、無処理コントロール1種(培地のみ)及びポジティブコントロール3種(1ng/mlのTGF−β、50pg/mlのIL−1α、及び、2%(v/v)のPhytokine(R)(Coletica社、リヨン、フランス))についても、例えば同一の培養プレート中で試験した。
【0195】
あらかじめ1ng/mlのTGF−β、及び、50pg/mlのIL−1αについて試験し、エラスチンmRNA合成の刺激がこの濃度の2種のサイトカインに誘導されることを、mRNA解析、例えば定量RT−PCR(TGF−βについて10回、IL−1αについて6回)によって確認した。活性成分を細胞と接触させた後(例えばその24時間後)に培地を除去し、細胞を、例えばリン酸バッファー(pH7.4)中で洗浄して−80℃において凍結乾燥して保存した。全RNAを(例えばシリカカラムを有する96ウェル抽出キットを用いて)抽出し、96ウェル分光光度計で260nmにおいて測定した(純度の指標:280nmにおけるタンパク質の測定)。RNAを、例えば5ng/μlに希釈する。ワンステップ定性RT−PCRを、アクチン遺伝子、エラスチン遺伝子、LOX遺伝子及びLOXL遺伝子について、例えば初期RNA50ngを用いて96ウェルプレート中で行った。各遺伝子の特異的プライマーは、例えば0.5μMで用いた。
【0196】
−センスエラスチン遺伝子:1Ela 5’−GTA TAT ACC CAG GTG GCG TG−3’(配列番号24);
−アンチセンスエラスチン遺伝子:2Ela 5’−CGA ACT TTG CTG CTG CTT TAG−3’(配列番号25);
−センスLOXL遺伝子:30L1 5’−GAC TTC GGC AAC CTC AAG C−3’(配列番号26);
−アンチセンスLOXL遺伝子:31L1 5’−TGT TGC AGA AAC GTA GCG AC−3’(配列番号27);
−センスLOX遺伝子:Ox64 5’−ACG TAC GTG CAG AAG ATG TCC−3’(配列番号28);
−アンチセンスLOX遺伝子:Ox65 5’−GGC TGG GTA AGA AAT CTG ATG−3’(配列番号29);
−センスアクチン遺伝子:アクチン U 5’−GTGGGGCGCCCCAGGCACCA−3(配列番号30);
−アンチセンスアクチン遺伝子:D 5’−CTCCTTAATGTCACGCACGATTTC−3’(配列番号31)
【0197】
有利には、増幅パラメーターは下記の通りであった。48℃、30分間:94℃、2分間:(94℃、30秒間;60℃、30秒間;68℃、30秒間)をアクチンについて28サイクル、LOXLについて30サイクル、LOXについて32サイクル、及び、エラスチンについて34サイクル:68℃、10分間:14℃、無限。増幅後、産物を、例えば(アクチン増幅産物3μl+エラスチン遺伝子増幅産物5μl+LOX遺伝子増幅産物5μl+LOXL遺伝子増幅産物5μl)の割合で混合した。ローディングバッファー(2μl)を加え、全量(20μl)を、あらかじめ充填しておいたアガロースゲル(インビトロジェン社、フランス)(例えば2%)に載せた。本発明者らは、当業者に公知の方法で発現量を可視化した(例えば、泳動後の試料のバンドを暗室において紫外線下で視覚化し(15分間)、デジタル撮影した)。ゲルの写真を画像解析し、バンドの濃さを定量した(Phoretix1D、フランス)。エラスチン遺伝子、LOX遺伝子及びLOXL遺伝子の発現量を、ネガティブコントロール(無処理)における値に対する百分率で示した。
【0198】
<結果の解釈>
『「若い」細胞及び「成熟」細胞』
包皮の細胞は、エラスチンをコードするmRNAを成人における平均量と同じレベルの量発現しているが、LOXLをコードするmRNA及びLOXをコードするmRNAの発現量の場合には、包皮における発現量は非常に多いことが分かる。従って、老齢細胞におけるLOXLの発現の減少(その結果としてLOXの発現の減少)を逆に上昇させることができるため、このような活性を有する成分をスクリーニングした。
【0199】
『活性成分のスクリーニング』
各試験におけるcDNA量をアクチンのcDNA量と比較し、続いてネガティブコントロール(活性成分を含まない)と比較した。予備実験から、エラスチン(Eln)mRNAを約1.3倍増加させ、LOXLのmRNAを約2倍増加させるものが重要であると考えられた。試験した900種以上の分子又は活性抽出物のうち、13種の活性成分が試験した濃度において、かつ、規定した条件下でこの基準を満たしていた。これらの活性成分は、下記表IIの通りである。
【0200】
【表2】

【0201】
植物を2〜5%(w/w)の割合で、濃度100/0〜0/100の水/(アルコール、グリコール又はポリオール)混合物(エタノール、グリセリン、ブチレングリコール等のグリコール類、キシリトール等)に浸漬して植物抽出物を得た。得られた抽出物をろ過又は蒸留して可溶性画分を回収し、さらに無菌状態でろ過した。化学物質はシグマ社(セントルイス、アメリカ)提供のもので、アルコール又はグリコールで濃度1%に希釈又は分散させて用いた。
【0202】
<結論>
活性成分バンクの活性成分960種のうち13種が、試験条件下で、成熟年齢の成人(この場合のドナーは63歳)の腹部の繊維芽細胞において、LOXL、LOX及びエラスチンをコードする遺伝子のmRNAの合成量を著しく活性化できた。
【0203】
〔実施例11〕
「化粧品用又は皮膚医薬用活性成分の有効性に関する(例えばリアルタイムRT−PCRによる)研究」
スクリーニングの第一段階で選択した活性成分を、0.1%〜5%(v/v)の範囲で濃度を変えて、正常な人間(成人)の皮膚の繊維芽細胞に対して試験した。培養は、例えば、24ウェルプレート中に単層で、既知組成無血清培地(Fibroblast Basal Medium)中で行った。細胞を、例えば1cm当たり40,000個播種した。活性成分を細胞と接触させた後(24時間後)に培地を除去し、細胞を、例えばリン酸バッファー(pH7.4)中で洗浄して−80℃において凍結乾燥して保存した。試験後、エラスチン、LOXL及びアクチンのmRNA量をmRNA解析、例えばリアルタイムRT−PCRによって評価した。この評価を行うために、これら遺伝子に特有の断片を増幅できるプライマー対として上記のものを用いた(実施例10)。
【0204】
RNAは、(例えばシリカカラムを有する96ウェル抽出キットを用いて)抽出して96ウェル分光光度計で260nmにおいて測定した後、希釈した(例えば5ng/μl)。RT−PCR反応(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を、「Opticon」システム(MJ Research社)を用いた定量リアルタイムRT−PCRによって行った。有利には、ウェルに添加した反応混合液(50μl)は、各試料について下記の通りであった:
−濃度5ng/μlのRNA 10μl、
−様々に標識した所望の特異的プライマー、
−反応混合液(キアゲン社、2×「QuantiTect SYBR Green RT−PCR master mix」(MgCl5mM含有)25μl+「QuantiTect RTmix」0.5μl)、標識SYBR Green Iを伸長過程においてDNA2本鎖に挿入した。
【0205】
「有利には、RT−PCRは下記の条件で行った」
逆転写:50℃で30分間、その後、95℃で15分間。
PCR反応:(94℃、15秒間;60℃、30秒間;72℃、30秒間)を50サイクル。
コンタミネーションがないことの確認、及び、増幅産物の純度の確認は、例えば、増幅PCR産物の融解曲線によって行った。ダブルピーク又は異常な融解温度を示す産物は除去した。
【0206】
「分析及び計算方法」
増幅されたDNAの中に組み込まれた蛍光の量を、PCRサイクルを行う間連続的に測定した。これにより、PCRサイクル数に対する蛍光量の曲線が得られ、増幅されたDNAの相対量を調べることができた。
【0207】
細胞数を考慮するために、上記の結果を全て、ハウスキーピング遺伝子として用いた≪アクチン≫シグナルと比較した。実験から、C(T)の測定閾値(=サイクル閾値)はT=0.05〜0.01の間に固定され、任意の測定単位は、各遺伝子について以下の式により計算した。
Sgene≪x≫=10×(1/2)C(T)gene≪x≫
C(T)gene≪x≫は、gene≪x≫のサイクル閾値が0.01〜0.05となるために必要なサイクル数を表わす。
調べたい遺伝子についてのこの値を、以下の比率により≪アクチン≫シグナルと比較した。
R=Sgene≪x≫/Sアクチン
この比率を、処理した試料と未処理の試料とで比較した。≪x≫はLOXL遺伝子又はエラスチン遺伝子である。
【0208】
<結果>
選択した活性成分のうち2種についての結果を例として表IIIに示す。
【0209】
【表3】

【0210】
<結論>
選択した活性成分は、成熟年齢の成人(この場合のドナーは63歳)の腹部の繊維芽細胞において、LOXL、LOX及びエラスチンをコードする遺伝子のmRNAの合成量を活性化できた。この研究によって、選択した各活性成分の最適な使用濃度を決定することができた。
【0211】
実施例1〜11について:当業者は、本明細書に記載した組成物(処方)を変化させた組成物を作る際に、これらの実施例を見れば適切な方法が分かるであろう。
【0212】
〔実施例12〕
「水中油エマルション型の化粧品又は医薬品の処方における本発明の生成物の使用」
<処方12a>
A 水 qsp100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム、 2
イソプロピルヒドロキシセチルエーテル
B ステアリン酸グリコールSE 14
トリイソノナオイン 5
(triisononaoine)
ヤシ油脂肪酸オクチル 6
C pH5.5に調節した 2
ブチレングリコール、
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
D 本発明の生成物 0.01〜10%
【0213】
<処方12b>
A 水 qsp100
ブチレングリコール 2
グリセリン 3
ポリアクリルアミド、 2.8
イソパラフィン、ラウレス−7
B ブチレングリコール、 2
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン;

フェノキシエタノール、
メチルパラベン、
プロピルパラベン、
ブチルパラベン、
エチルパラベン 0.5
ブチレングリコール
D 本発明の生成物 0.01〜10%
【0214】
<処方12c>
A カルボマー 0.50
プロピレングリコール 3
グリセリン 5
水 qsp100
B ヤシ油脂肪酸オクチル 5
ビサボロール 0.30
ジメチコン 0.30
C 水酸化ナトリウム 1.60
D フェノキシエタノール、 0.50
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
E 香料 0.30
F 本発明の生成物 0.01〜10%
【0215】
〔実施例13〕
「油中水型の処方における本発明の生成物の使用」
A PEG30−ジポリヒドロキシステアリン酸 3
カプリン酸トリグリセリド 3
オクタン酸セテアリル 4
アジピン酸ジブチル 3
ブドウ種子油 1.5
ホホバ油 1.5
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、プロピルパラベン、
ブチルパラベン、エチルパラベン
B グリセリン 3
ブチレングリコール 3
硫酸マグネシウム 0.5
EDTA 0.05
水 qsp100
C シクロメチコン 1
ジメチコン 1
D 香料 0.3
E 本発明の生成物 0.01〜10%
【0216】
〔実施例14〕
「シャンプー又はボディソープ状の処方における本発明の生成物の使用」
A キサンタンガム 0.8
水 qsp100
B ブチレングリコール、 0.5
メチルパラベン、
エチルパラベン、プロピルパラベン
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
C クエン酸 0.8
D ラウレス硫酸ナトリウム 40.0
E 本発明の生成物 0.01〜10%
【0217】
〔実施例15〕
「口紅等の無水製品状の処方における本発明の生成物の使用」
A ミネラルワックス 17.0
イソステアリン酸イソステアリル 31.5
プロピレングリコールジペラルゴン 2.6
(propylene glycol dipelargonate)
イソステアリン酸プロピレングリコール 1.7
PEG−8ミツロウ 3.0
水添パーム核脂肪酸グリセリド、 3.4
水添パーム油脂肪酸グリセリド
ラノリン油 3.4
ゴマ油 1.7
乳酸セチル 1.7
鉱物油、ラノリンアルコール 3.0
B ヒマシ油 qsp100
二酸化チタン 3.9
CI 15850:1 0.616
CI 45410:1 0.256
CI 19140:1 0.048
CI 77491 2.048
C 本発明の生成物 0.01〜5%
【0218】
〔実施例16〕
「水性ゲル(アイライナー、痩身剤等)の処方における本発明の生成物の使用」
A 水 qsp100
カルボマー 0.5
ブチレングリコール 15
フェノキシエタノール、 0.5
メチルパラベン、
プロピルパラベン、ブチルパラベン、
エチルパラベン
B 本発明の生成物 0.01〜10%
【0219】
〔実施例17〕
「LOXLを含有する医薬品の処方の調製」
<処方17a>錠剤の調製
A 賦形剤 g単位、1錠あたり
乳糖 0.359
スクロース 0.240
B LOXL抽出物 0.001〜0.1
(LOXL抽出物は、例えば実施例2に記載したように抽出し、その後乾燥させることによって得られる。)
【0220】
<処方17b>軟膏の調製
A 賦形剤
低密度ポリエチレン 5.5
流動パラフィン qsp100
B LOXL抽出物 0.001〜0.1
(LOXL抽出物は、例えば実施例2に記載したように抽出し、その後必要に応じて乾燥させることによって得られる。)
【0221】
<処方17c>注射剤の処方の調製
A 賦形剤
等張食塩水 5ml
B LOXL抽出物 0.001〜0.1g
(LOXL抽出物は、例えば実施例2に記載したように抽出し、その後乾燥させることによって得られる。)
A相とB相は別々にアンプルで包み、使用前に混合する。
【0222】
〔実施例18〕
「本発明の生成物を含む製剤の化粧品としての許容性の評価」
実施例10及び11で得られた化合物を10%の割合で0.5%キサンタンガムに混合したものの毒性を、ウサギにおける眼刺激試験、ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験、及び、モルモットにおける感作性試験によって調べた。
【0223】
『ウサギの皮膚における一次刺激の評価』
上記製剤を、ウサギ3匹の皮膚に、≪皮膚に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関するOECD推奨の方法に従って、希釈せずに0.5mlずつ投与した。
【0224】
生成物を、1982年2月21日のフランス共和国の公式機関紙(“JORF”)で公表された、1982年2月1日の決議の中で定義された基準に従って分類した。
【0225】
上記試験結果から、実施例11で得られた物質を含有する製剤は、皮膚に対して刺激がないものとして分類されることが分かる。
【0226】
「ウサギにおける眼刺激試験」
上記製剤を純粋な状態で、≪眼に対する急性刺激/腐食性≫の研究に関して1987年2月24日にOECD指令書405番によって公式に推奨されている方法に従い、0.1mlを1回でウサギ3匹の眼中に滴下した。
この試験の結果から、これらの製剤は、純粋な状態で又は希釈せずに使用した場合、91/326のEECの意味において、眼に対して刺激がないものとして考えられる。
【0227】
「ラットに1回経口投与した際に異常毒性がないことの確認試験」
上記製剤を、1987年2月24日のOECD指令書401番から着想して化粧品に適用したプロトコールに従って、雄ラット5匹及び雌ラット5匹に、5g/体重1kgの量を1回で経口投与した。
LD0及びLD50は、5000mg/kg以上であることが分かっている。従って、試験した製剤は、経口摂取が危険な製剤には分類されない。
【0228】
『モルモットにおける潜在的皮膚感作性試験』
上記製剤に対して、OECD406番の指令書に従ったプロトコールであるMagnusson−Kligmann極大試験を行った。
これらの製剤は、皮膚との接触において感作性がないものとして分類される。
【配列表フリーテキスト】
【0229】
記載した配列の解説
配列番号1:ヒトタンパク質LOXLのペプチド配列である。
配列番号2:配列番号1に記載したヒトタンパク質LOXLをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号3:配列番号1に記載したタンパク質LOXLをコードするヒト遺伝子のプロモーターをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号4:ヒトタンパク質トロポエラスチンのペプチド配列である。
配列番号5:配列番号4に記載したヒトタンパク質トロポエラスチンをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。
配列番号6:ヒトタンパク質LOXのペプチド配列である。
配列番号7:配列番号6に記載したヒトタンパク質LOXをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。
【0230】
二本鎖DNAプローブに関しては
配列番号8:配列番号1に記載したヒトタンパク質LOXLをコードするDNAのセンスプライマーである。
配列番号9:配列番号1に記載したヒトタンパク質LOXLをコードするDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号10:配列番号4に記載したヒトタンパク質トロポエラスチンをコードするDNAのセンスプライマーである。
配列番号11:配列番号4に記載したヒトタンパク質トロポエラスチンをコードするDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号12:配列番号6に記載したヒトタンパク質LOXをコードするDNAのセンスプライマーである。
配列番号13:配列番号6に記載したヒトタンパク質LOXをコードするDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号14:ヒトタンパク質コラーゲンIα1LをコードするDNAのセンスプライマーである。
配列番号15:ヒトタンパク質コラーゲンIα1LをコードするDNAのアンチセンスプライマーである。
【0231】
融合遺伝子GSTに関しては
配列番号16:融合遺伝子GST S355−D415のDNAのセンスプライマーである。
配列番号17:融合遺伝子GST S355−D415のDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号18:融合遺伝子GST G128−L212のDNAのセンスプライマーである。
配列番号19:融合遺伝子GST G128−L212のDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号20:融合遺伝子GST V228−S279のDNAのセンスプライマーである。
配列番号21:融合遺伝子GST V228−S279のDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号22:融合遺伝子GST D306−N373のDNAのセンスプライマーである。
配列番号23:融合遺伝子GST D306−N373のDNAのアンチセンスプライマーである。
【0232】
PCRプライマーに関しては
配列番号24:配列番号4に記載したヒトタンパク質トロポエラスチンをコードするmRNAのRT−PCRセンスプライマーである。
配列番号25:配列番号4に記載したヒトタンパク質トロポエラスチンをコードするmRNAのRT−PCRアンチセンスプライマーである。
配列番号26:配列番号1に記載したヒトタンパク質LOXLをコードするmRNAのRT−PCRセンスプライマーである。
配列番号27:配列番号1に記載したヒトタンパク質LOXLをコードするmRNAの配列のアンチセンスプライマーである。
配列番号28:配列番号6に記載したヒトタンパク質LOXをコードするmRNAのRT−PCRセンスプライマーである。
配列番号29:配列番号6に記載したヒトタンパク質LOXをコードするmRNAのRT−PCRアンチセンスプライマーである。
配列番号30:ヒトタンパク質アクチンをコードするmRNAのRT−PCRセンスプライマーである。
配列番号31:ヒトタンパク質アクチンをコードするmRNAのRT−PCRアンチセンスプライマーである。
【0233】
融合遺伝子GSTに関しては
配列番号32:融合遺伝子GST 517−581のDNAのセンスプライマーである。
配列番号33:融合遺伝子GST 517−581のDNAのアンチセンスプライマーである。
配列番号34:融合遺伝子GST 664−720のDNAのセンスプライマーである。
配列番号35:融合遺伝子GST 664−720のDNAのアンチセンスプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト皮膚細胞のコスメティックケアのための物質であって、
前記コスメティックケアは、機能的弾性繊維の形成を刺激することからなり、
前記物質は、配列番号1に記載のリシルオキシダーゼ類似アイソフォーム(LOXLとも
称される)、又は、LOXLの活性又は発現を促進する成分から選択されることを特徴と
する、
イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、アサフェティーダガム(Asea foetida gum)、ヘキセン酸エチル、酪酸メチル、並びに、デカジエン酸エチルからなる群より選択される物質。
【請求項2】
LOXLの発現は、LOXLをコードするヌクレオチド配列の発現か、又は、タンパク質LOXLの一部を構成するペプチド配列の発現のどちらかであり、前記ペプチド配列は配列番号1から選択される
ことを特徴とする請求項1に記載の物質。
【請求項3】
前記物質は、化粧用物質である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の物質。
【請求項4】
前記物質は、タンパク質エラスチンの発現を刺激する、又は弾性繊維の形成を刺激するためのタンパク質エラスチンの発現を刺激する物質と組み合わされる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の物質。
【請求項5】
前記物質は、ヒトLOXL遺伝子のプロモーター(Pr)のヌクレオチド配列(配列番号3)の少なくとも一部に結合する領域、又は、ヒトLOXL遺伝子のプロモーター(Pr)のヌクレオチド配列(配列番号3)の少なくとも一部に結合するタンパク質の発現を変化させる領域を含む
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の物質。
【請求項6】
組織における弾性繊維の新たな形成を誘導するために、その結果として得られた組織の弾力性を刺激するために、かつ、皮膚の皺を減らすために行う
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の物質。
【請求項7】
組織のたるみに抵抗するために、又は、加齢又は太陽暴露の過程で観察される組織のたるみに抵抗するために、又は、細胞外マトリックスの密度を高めるために、又は、皮下組織を引き締めるために、又は、皮膚の皺を減らすために、又は、抗皺効果を発揮させるために、又は、栄養失調による瘢痕やケロイド傷の改善のために、又は、瘢痕の組織の質及び瘢痕の外観を改善するために、又は、伸展線に抵抗するために行う
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の物質。
【請求項8】
イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、アサフェティーダガム(Asea foetida gum)、ヘキセン酸エチル、酪酸メチル、並びに、デカジエン酸エチルからなる群から選択される活性成分を、必要に応じて化粧品に許容される賦形剤との混合物として含む
ことを特徴とする化粧組成物。
【請求項9】
イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、アサフェティーダガム(Asea foetida gum)、ヘキセン酸エチル、酪酸メチル、並びに、デカジエン酸エチルからなる群から選択される活性成分を、必要に応じて食品に許容される賦形剤との混合物として含む
ことを特徴とする栄養補助組成物。
【請求項10】
イノンド、スグリ、カルダモン、クロハツカダイコン、ナギイカダ(box holly)、アサフェティーダガム(Asea foetida gum)、ヘキセン酸エチル、酪酸メチル、並びに、デカジエン酸エチルからなる群から選択される活性成分を、必要に応じて薬学的に許容される賦形剤との混合物として含む
ことを特徴とする医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−59196(P2010−59196A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261162(P2009−261162)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【分割の表示】特願2004−176280(P2004−176280)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(500226948)ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス (21)
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean−de−Dieu 69007 LYON, FRANCE
【出願人】(500166437)サントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ シアーンティフィク (2)
【Fターム(参考)】