説明

弾性繊維用処理剤、弾性繊維用処理剤の製造方法および弾性繊維

【課題】 本発明の目的は、安定解舒性および平滑性に優れた弾性繊維用処理剤、弾性繊維用処理剤の製造方法、および該処理剤が付与されている弾性繊維を提供することである。
【解決手段】 本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油より選ばれる少なくとも1種を含有し、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種の成分(A)を処理剤全体に対して0.1〜30重量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定解舒性、平滑性に優れた油剤安定性を付与できる弾性繊維用処理剤、弾性繊維用処理剤の製造方法および弾性繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコーンレジン(MQレジン)を含有する、解舒性に優れる弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献2には、カルビノール変性シリコーン(ポリシロキサン)を含有する、精練性、解舒性に優れる弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献3には、ポリエーテル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーンを少なくとも1種含有した、制電性、解舒性に優れ、且つ弾性繊維の強伸度低下のない弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献4には、カルボキシアミド変性シリコーンを含有し、高級脂肪酸マグネシウム塩の凝集や沈降を抑えた弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献5には、シリコーン樹脂および/または有機リン酸エステル塩を含有する、解舒性、平滑性、および制電性に優れた弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献6には、平均粒径0.01〜5μmにあり、且つ針状である高級脂肪酸の金属塩を含有した、平滑性、解舒性に優れた弾性繊維用処理剤が記載されている。
特許文献7には、アミノ変性シリコーンとリン酸エステルの混合物を含有し、高級脂肪酸の金属塩を分散させた、解舒性、制電性、チーズ捲形状、平滑性、編織加工時の風綿防止性に優れる弾性繊維用処理剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−078460号公報
【特許文献2】特開平10−298872号公報
【特許文献3】特開平11−061651号公報
【特許文献4】特開平11−12950号公報
【特許文献5】特開2004−162187号公報
【特許文献6】特開2005−179874号公報
【特許文献7】特開2006−161253号公報
【0004】
弾性繊維は、他の弾性の低い繊維と比べ、糸同士の接着性が高く、また経時により更に接着してゆき、後加工での解舒時に解舒不良による糸切れが多発、また弾性繊維は非常に伸び易い糸であるため、ガイド等との摩擦が高いと、走行時の糸張力が高くなり、非常に伸ばされた状態で後加工され、それにより布品位を低下させる場合がある。このことから弾性繊維用油剤は、経時後も含め安定解舒性を付与するための離型性、および優れた平滑性の付与が不可欠となっており、各種添加剤を使用しているのが現状である。しかしながら添加剤には、解舒性には良好であるが、経時後の解舒性(安定解舒性)は良好でないものがあり、また解舒性には良好であるが、平滑性を悪化させるものがあり、また平滑性は良好であるが、解舒性を悪化させるものもあり、できる限り他の性能を阻害せずに必要な効果を効率よく付与する添加剤が好まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、安定解舒性および平滑性に優れた弾性繊維用処理剤、弾性繊維用処理剤の製造方法、および該処理剤が付与されている弾性繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油より選ばれる少なくとも1種を含有し、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種の成分(A)を処理剤全体に対して0.1〜30重量%含有する弾性繊維用処理剤であれば、安定解舒性および平滑性に優れていることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明の弾性繊維用処理剤において、前記不飽和エステルは、不飽和トリエステルおよび/または4つ以上の不飽和多価エステルであることが好ましい。また、前記不飽和エステルは、炭素数が12〜22の不飽和脂肪酸のエステルおよび/または炭素数が12〜22の不飽和脂肪族アルコールのエステルであることが好ましい。また、前記不飽和エステルは、不飽和グリセリントリエステル(以下、グリセリントリエステルはトリグリセリドということもある)、不飽和トリメチロールプロパントリエステルおよび不飽和トリメチロールエタントリエステルより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。また、処理剤のよう素価は、0.05〜300であることが好ましい。
【0008】
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法は、前記不飽和エステルを重合して前記成分(A)を生成する工程(1)と、得られた成分(A)と前記ベース成分とを混合する工程(2)とを含むものである。前記工程(1)によって得られた生成物を動粘度(30℃)が12.1mm/sである流動パラフィンで50重量%に希釈したときの動粘度(30℃)は、20〜300mm/sであることが好ましい。
本発明の弾性繊維は、弾性繊維本体に、上記の弾性繊維用処理剤が0.1〜15重量%付与されているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分に加え、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種の成分(A)を処理剤全体に対して0.1〜30重量%含有していることにより、優れた安定解舒性および平滑性を弾性繊維に与えることができる。
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法は、前記不飽和エステルを重合して前記成分(A)を生成する工程を含むことにより、優れた安定解舒性および平滑性を弾性繊維に付与できる処理剤を調製できる。
本発明の弾性繊維は、上記弾性繊維用処理剤が付与されているので、優れた安定解舒性および平滑性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】解舒速度比の測定方法を説明する模式図。
【図2】編成張力の測定方法を説明する模式図。
【図3】繊維間摩擦係数の測定方法を説明する模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油より選ばれる少なくとも1種を含有し、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種の成分(A)を処理剤全体に対して0.1〜30重量%含有するものである。以下、詳細に説明する。
【0012】
[成分(A)]
本発明の弾性繊維用処理剤に含まれる成分(A)は、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種からなる成分である。処理剤がこの成分(A)を必須に含むことにより、優れた安定解舒性および平滑性を弾性繊維に与えることができる。
成分(A)の配合割合は、弾性繊維用処理剤全体に対して0.1〜30重量%であり、0.5〜25重量%が好ましく、1〜20重量%が特に好ましい。成分(A)の配合割合が弾性繊維用処理剤全体の0.1重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、成分(A)の配合割合が弾性繊維用処理剤全体の30重量%超であると、多量の添加に見合う効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0013】
不飽和エステルとしては、分子内に炭素ニ重結合(以下、炭素二重結合は二重結合ということもある)を少なくとも1つ有するエステルであれば特に限定はなく、モノエステル、ジエステル、トリエステルまたは4以上の多価エステルを単独あるいは混合して使用してもよい。不飽和エステルとしては、不飽和脂肪酸のエステルおよび/または不飽和脂肪族アルコールのエステルが好ましく、具体的には、1)不飽和脂肪酸と1価または多価のアルコール(不飽和の脂肪族アルコールを含む)との不飽和エステルや、2)不飽和脂肪族アルコールと1価または多価のカルボン酸(不飽和脂肪酸を含む)との不飽和エステルが挙げられる。
【0014】
不飽和エステルは、不飽和トリエステルおよび/または4以上の不飽和多価エステルであることが好ましい。モノエステル、ジエステルと比べ、より優れた安定解舒性および平滑性の効果が得られる。
これらの中でも不飽和エステルとしては、不飽和トリエステルが好ましく、さらには不飽和グリセリントリエステル、不飽和トリメチロールプロパントリエステル、不飽和トリメチロールエタントリエステルより選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。不飽和グリセリントリエステルとしては、グリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルが好ましく、不飽和トリメチロールプロパントリエステルとしては、トリメチロールプロパンと不飽和脂肪酸とのエステルが好ましく、不飽和トリメチロールエタントリエステルとしては、トリメチロールエタンと不飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。これらの不飽和エステルを使用することにより、より優れた安定解舒性および平滑性を弾性繊維に与えることができる。
【0015】
不飽和エステルを構成する不飽和脂肪酸、不飽和脂肪族アルコールの炭素数は、12〜22が好ましく、14〜20がさらに好ましく、16〜20が特に好ましい。炭素数が12未満であると安定解舒性、優れた平滑性の効果が得られないことがある。一方、炭素数が22超であるとベース成分との溶解性が低くなる場合がある。
【0016】
不飽和エステルを構成する不飽和脂肪酸としては、直鎖でも分岐でもよく、脂肪酸中に二重結合を1つ含むモノエン脂肪酸、脂肪酸中に二重結合を2つ含むジエン脂肪酸、脂肪酸中に二重結合を3つ含むトリエン脂肪酸が使用できる。モノエン脂肪酸としては、クロトン酸、カプロレイン酸、ウンデシレン酸、ラウロレイン酸、リンデル酸、トウハク酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、セラコレイン酸、リシノール酸等が挙げられる。ジエン脂肪酸としては、ソルビン酸、リノール酸、リノエライジン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等が挙げられる。トリエン脂肪酸としては、リノレン酸、リノレンエライジン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、プソイドエレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸等が挙げられる。これらのなかでも、炭素数が12以上である、ラウロレイン酸、リンデル酸、トウハク酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、セラドレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノエライジン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、リノレンエライジン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、プソイドエレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸が好ましい。
【0017】
上記の不飽和脂肪酸とエステルを形成するアルコールとしては、特に限定なく、脂肪族アルコール(後述の不飽和脂肪族アルコールも含む)、芳香族アルコール、脂環族アルコールであってもよく、また1価アルコールや多価アルコールであってもよい。
例えば、脂肪族アルコールとしては、直鎖および/または分岐の飽和1価アルコールであるメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、イソペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−メチル−1−ペンチルアルコール、2,2−ジメチル1−ブチルアルコール、2−ヘキシルアルコール、n−ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−メチル−1−ヘプチルアルコール、2,3−ジメチル−2−ブチルアルコール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプチルアルコール、n−デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、イソセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、アラキニルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等;直鎖および/または分岐の不飽和1価アルコールであるオレイルアルコール、エチルプロピルアリルアルコール、2−ヘキセノール−1、5−ヘキセノール−1、2−ヘプテノール−1、6−ヘプテノール−1、2−オクテノール−1、8−ノネノール−1、2−ドデセノール−1、11−ドデセノール−1等が挙げられる。2価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタンジール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。3価以上のアルコールとしては、グリセリン、1、2、3−ブタントリオール、2、3、4−ペンタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、ソルビタン、ソルビトール、グリセリンの2〜6量体、トリメリトールプロパンの2〜4量体、スクロース等が挙げられる。芳香族アルコールとしては、1価アルコールであるベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、1−フェニルエタノール、2−フェニル−1−プロパノール等が挙げられる。脂環族アルコールとしては、1価アルコールであるメントール、シクロブタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ステロール、テルピネオール、ボルネオール等;3価またはそれ以上の多価アルコールであるイノシトール等が挙げられる。フェノール類としては、1価フェノールであるフェノール、クレゾール、ナフトール、オクチルフェノール、ノニルフェノール等が挙げられる。なお、上記「n−」は、炭素鎖が分枝していない、直鎖状であることを意味する。
【0018】
不飽和エステルを構成する不飽和脂肪族アルコールとしては、直鎖でも分岐でもよく、不飽和脂肪族アルコール中に二重結合を1つ含むモノエン脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコール中に二重結合を2つ含むジエン脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコール中に二重結合を3つ含むトリエン脂肪族アルコールが使用できる。
モノエン脂肪族アルコールとしては、2−ドデセン−1−オール、11−ドデセン−1−オール、12−トリデセン−1−オール、2−テトラデセン−1−オール、2−ペンタデセン−1−オール、2−ヘキサデセン−1−オール、15−ヘキサデセン−1−オール、2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタデセン−1−オール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リシノレイルアルコール等が挙げられる。ジエン脂肪族アルコールとしては、リノレイルアルコール等挙げられる。トリエン脂肪族アルコールとしては、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコール等が挙げられる。これらのなかでも、2−ヘキサデセン−1−オール、15−ヘキサデセン−1−オール、2−ヘプタデセン−1−オール、2−オクタデセン−1−オール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リシノレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エレオステアリルアルコールが好ましい。
【0019】
上記の不飽和脂肪族アルコールとエステルを形成するカルボン酸としては、特に限定はなく、脂肪族カルボン酸(前述の不飽和脂肪酸を含む)、芳香族カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸であってもよく、また1価や多価のカルボン酸であってもよい。
例えば、脂肪族カルボン酸としては、飽和脂肪族1価カルボン酸であるギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸等;不飽和脂肪族1価カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、チグリン酸、シトロネル酸、ウンデセン酸、オレイン酸、エルカ酸等が挙げられる。
芳香族カルボン酸としては、芳香族1価カルボン酸である安息香酸、ナフタレンカルボン酸等;3価またはそれ以上の多価芳香族カルボン酸であるトリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ1価カルボン酸であるグリコール酸、乳酸、オキシ酪酸、オキシカプロン酸、リシノール酸、オキシステアリン酸等;ヒドロキシ3価またはそれ以上のヒドロキシ多価カルボン酸であるクエン酸、イソクエン酸等;芳香族ヒドロキシ1価カルボン酸であるサリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸等が挙げられる。
【0020】
不飽和モノエステルとしては、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸エチル、エライジン酸エチル、エルカ酸エチル、オレイン酸プロピル、2−エチルヘキシル酸オレイル、ステアリン酸ヘキサデセノイル、デカン酸エレオステアリル、オレイン酸ラウリル、オレイン酸オレイル、オレイン酸イソステアリル、リノール酸オレイル、エライジン酸イソブチル、リシノール酸イソプロピル、オレイン酸グリセリド等が挙げられる。
不飽和ジエステルとしては、ジリノール酸プロピレングリコール、ジオレイン酸ネオペンチルグリコール、ジカプロレイン酸オクタンジオール、ジオレイン酸ペンタンジオール、ジリノレン酸グリセリド、ジエレオステアリン酸グリセリド、1−リノール酸−2−ステアリン酸グリセリド、マロン酸ジデセノール、コハク酸ジトリデセノール、マレイン酸ジオレイル、アジピン酸ジオレイル、セバシン酸ジオクタデセノール等が挙げられる。
不飽和トリエステルまたは4以上の多価エステルとしては、トリパルミトレイン酸グリセリド、トリオレイン酸グリセリド、トリリノール酸グリセリド、トリリノレン酸グリセリド、トリガドレイン酸グリセリド、トリエルカ酸グリセリド、トリリシノール酸グリセリド、1−オレイン酸−2−パルミチン酸−3−ステアリン酸トリグリセリド、1−カプロン酸−2、3−ジリノール酸トリグリセリド、トリ(オレイン酸:リノール酸:リノレン酸=2:1:0.5)グリセリド、トリミード酸グリセリド、トリオレイン酸トリメチロールエタン、1−ステアリドン酸−2、3オレイン酸トリメチロールエタン、トリオレイン酸トリメチロールプロパン、トリリノール酸トリメチロールプロパン、トリリノレン酸トリメチロールプロパン、トリエルカ酸トリメチロールプロパン、1−エルカ酸−2−オレイン酸−3−リノレン酸トリメチロールプロパン、トリ(エルカ酸:オレイン酸:リノール酸:トリリノレン酸:ガドレイン酸=5:2:2:1:1)トリメチロールプロパン、トリ(ラウリン酸:ミリスチン酸:オレイン酸:パルミチン酸:カプリル酸:カプリン酸=9:3:4:2:1:1)トリメチロールプロパン、トリエレオステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオレイン酸ペンタエリスリトール、テトラアラキドン酸ペンタエリスリトール、トリオレイン酸ソルビタン、ヘキサエルカ酸スクロース、ヘキサオレイン酸スクロース、ヘプタオレイン酸スクロース、クエン酸トリオレイル、クエン酸トリリノレイル、トリメリット酸トリオレイル、トリメリット酸トリリノレニル、ピロメリット酸テトラオレイル等が挙げられる。
また、不飽和グリセリントリエステルとして、天然油脂である、亜麻仁油、麻実油、エゴマ油、かや油、胡桃油、けし油、サフラワー油、大豆油、キリ油、向日葵油、胡麻油、コーン油、菜種油、ぬか油、綿実油、オリブ油、オリブ核油、カポック油、茶油、椿油、ひまし油、落花生油、パーム油、パーム核油、ボルネオ脂、椰子油、牛脂、豚脂、馬脂、魚油、鯨油等も挙げられる。これらは単独で、あるいは他の不飽和エステルと組み合わせて、あるいは精製して使用してもよい。
これらの中でも、不飽和グリセリントリエステル、不飽和トリメチロールプロパントリエステル、不飽和トリメチロールエタントリエステルが好ましい。
【0021】
本発明の成分(A)は、前述の不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種(以下、不飽和エステルの2〜5量体という場合がある)からなる成分であり、例えば、前述の不飽和エステルを重合して成分(A)を生成する工程(1)によって得られる。工程(1)によって得られた生成物には、不飽和エステルの2〜5量体以外に不飽和エステルの単量体や不飽和エステルの6量体以上のものが含まれていてもよいが、生成物全体に占める不飽和エステルの2〜5量体の割合は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。
【0022】
成分(A)を生成する方法(工程(1))としては、例えば、前述の不飽和エステルを加熱しながら空気を吹き込み、酸素と接触させることで、不飽和エステルの2〜5量体を生成する方法(工程)、または前述の不飽和エステルをヘリウム、アルゴン、窒素ガス等の不活性ガスの存在下または真空下で加熱することで、不飽和エステルの2〜5量体を生成する方法(工程)等が挙げられる。前記方法を吹き込み法、後記方法を不活性ガス法とする。なおシリコーン油、鉱物油、エステル油等で希釈したものから不飽和エステルの2〜5量体を生成してもよく、また不飽和エステルの2〜5量体の生成前後にエステル交換、エステルの加水分解、水素添加、マレイン化等の加工を行ってもよい。また、工程(1)によって得られた生成物には、一部の不飽和エステルの加水分解により、エステル分解物が存在してもよい。
【0023】
工程(1)によって得られた生成物を動粘度(30℃)が12.1mm/sである流動パラフィンで50重量%に希釈したときの動粘度(30℃)(以下、VDという)は、20〜300mm/sが好ましく、30〜250mm/sがさらに好ましく、40〜200mm/sが特に好ましい。VDが20mm/s未満であると、安定解舒性、優れた平滑性の効果が得られないことがある。一方、VDが300mm/s超であると、ベース成分との溶解性が乏しいことがある。なお、動粘度の測定方法は、JIS−K2283内、キャノン−フェンスケ粘度計の測定方法に準拠する(測定温度:30℃、単位:mm/s)。
【0024】
前記工程(1)によって得られた生成物のよう素価(以下、IVという)は、50〜300が好ましく、55〜250がさらに好ましく、60〜200が特に好ましい。IVが50未満であると、安定解舒性、優れた平滑性の効果が得られないことがある。一方、IVIが300超であると、添加による効果が安定的に得られないことがある。なお、よう素価の測定方法はJIS−K0070内、よう素価の測定方法に準拠する。
【0025】
また、より優れた安定解舒性や平滑性の効果を得るためには、前記工程(1)によって得られた生成物のよう素価の減少率(以下、RIVという)は、5〜60%が好ましく、10〜55%がさらに好ましく、15〜50%が特に好ましい。なお、RIVは、下記式(1)で示される数値をいう。
RIV(%)=[(不飽和エステルのよう素価−生成物のよう素価)/不飽和エステルのよう素価]×100・・・・(式1)
【0026】
[ベース成分]
本発明の弾性繊維用処理剤は、ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油より選ばれる少なくとも一種を含有する。弾性繊維用処理剤全体に占めるベース成分の割合は、30〜99.9重量%が好ましく、40〜99.9重量%がより好ましく、60〜99.9重量%がさらに好ましく、70〜99.9重量%が特に好ましい。30重量%未満になると、処理剤として適正な性能を発揮しないことがある。
【0027】
シリコーン油としては特に限定はないが、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン等が挙げられ、1種または2種以上を併用してもよい。いずれのシリコーン油も、25℃における粘度は2〜100mm/sが好ましく、5〜50mm/sがより好ましく、10〜30mm/sがさらに好ましい。
【0028】
鉱物油としては特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。鉱物油の30℃における粘度としては、30秒から200秒のものが挙げられる。鉱物油としては、臭気の発生が低いという理由からm流動パラフィンが好ましい。鉱物油の配合割合は、特に限定はないが、ベース成分全体に対して30重量%以上が好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。鉱物油が30重量%未満であると、成分(A)とベース成分との溶解性が極端に低下する場合がある。
【0029】
エステル油としては、前述の不飽和エステルを含めた、飽和および/または不飽和のモノエステル、ジエステル、トリエステルおよび4以上の多価エステル、あるいは天然油脂等を使用できる。
不飽和モノエステル、不飽和ジエステル、不飽和トリエステルまたは4以上の多価エステル、不飽和エステルを含む天然油脂としては、成分(A)のところで記載したものと同じものを使用できる。
飽和エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸イソオクチル、トリカプリン酸グリセリド、トリイソステアリン酸グリセリド、1−パルミチン酸−2、3−ステアリン酸トリグリセリド、1−ミリスチン酸−2−パルミチン酸−3−ステアリン酸トリグリセリド、トリカプリン酸トリメチロールエタン、トリプロピオン酸トリメチロールプロパン、トリカプリル酸トリメチロールプロパン、トリ2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリカプロン酸トリメチロールプロパン、トリラウリン酸トリメチロールプロパン、トリミリスチン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラパルミチン酸ペンタエリスリトール、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール、トリカプリン酸ソルビタン、トリパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ヘキサラウリル酸スクロース、ヘキサステアリン酸スクロース、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリブチル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、ピロメリット酸テトライソプロピル等が挙げられる。
【0030】
[その他成分]
本発明の弾性繊維用処理剤は、解舒性、平滑性、および制電性の効果を高めるために、高級脂肪酸の金属塩(金属石鹸)をさらに含有していてもよい。
本発明の弾性繊維用処理剤に含まれる高級脂肪酸の金属塩の配合割合は、特に限定はないが、弾性繊維用処理剤全体の0.01〜10重量%が好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましく、0.5〜3重量%が特に好ましい。高級脂肪酸の金属塩の配合割合が弾性繊維用処理剤全体の0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、高級脂肪酸の金属塩の配合割合が弾性繊維用処理剤全体の10重量%超であると、多量の添加に見合う効果が得られず、経済的に不利なことがある。
【0031】
高級脂肪酸の金属塩としては、従来弾性繊維に用いられている公知のものを用いることができ、たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。これらの高級脂肪酸の金属塩のうちでも、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等が好ましい。
【0032】
高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径について、特に限定はないが、0.01〜5μmが好ましく、0.02〜3μmがさらに好ましく、0.05〜2μmが特に好ましい。高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が0.01μm未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、高級脂肪酸の金属塩の平均粒子径が5μm超であると、繊維表面から脱落しやすく、紡糸後の工程でスカムの原因となる場合がある。なお、平均粒子径は、粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910)のバッチセルを使用して、屈折率を1.02に設定して、体積基準の平均粒子径を測定した。
【0033】
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、制電性や解舒性を向上させるために、変性シリコーンをさらに含有していてもよい。変性シリコーンとは、一般には、ジメチルシリコーン(ポリジメチルシロキサン)等のポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖、側鎖両末端の少なくとも1ヶ所において、反応性(官能)基または非反応性(官能)基が少なくとも1つ結合した構造を有するものをいう。
変性シリコーンとしては、たとえば、長鎖アルキル基(炭素数6以上のアルキル基や2−フェニルプロピル基等)を有する変性シリコーン等のアルキル変性シリコーン;エステル結合を有する変性シリコーンであるエステル変性シリコーン;アルコール性水酸基を有する変性シリコーンであるカルビノール変性シリコーン;酸無水物基またはカルボキシル基を有する変性シリコーンであるカルボキシ変性シリコーン;メルカプト基を有する変性シリコーンであるメルカプト変性シリコーン;グリシジル基または脂環式エポキシ基等のエポキシ基を有する変性シリコーン等のエポキシ変性シリコーン;アミノプロピル基やN−(2−アミノエチル)アミノプロピル基等のアミノ基を有する変性シリコーン等のアミノ変性シリコーン;ポリオキシアルキレン基(たとえば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレンオキシプロピレン基等)を有する変性シリコーン等のポリエーテル変性シリコーン等を挙げることができる。本発明の弾性繊維用処理剤がこれらの変性シリコーンの少なくとも1種をさらに含有すると好ましい。
【0034】
本発明の弾性繊維用処理剤に含まれる変性シリコーンの配合割合は、特に限定はないが、弾性繊維用処理剤全体の0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましくい。変性シリコーンの配合割合が弾性繊維用処理剤全体の0.01重量%未満であると、少なすぎて添加による効果が見られないことがある。一方、変性シリコーンの配合割合が弾性繊維用処理剤全体の10重量%超であると、処理剤の適正な性能とならないことがある。
【0035】
また、本発明の弾性繊維用処理剤は、制電性や解舒性を向上させるために、シリコーンレジンをさらに含有していてもよい。シリコーンレジンとは、3次元架橋構造を有するシリコーンを意味し、その他の変性シリコーン等をさらに含有してもよい。シリコーンレジンは、一般に、1官能性構成単位(M)、2官能性構成単位(D)、3官能性構成単位(T)および4官能性構成単位(Q)から選ばれた少なくとも1種の構成単位からなっている。
シリコーンレジンとしては、たとえば、MQシリコーンレジン、MQTシリコーンレジン、Tシリコーンレジン、DTシリコーンレジン等のシリコーンレジン等を挙げることができる。
【0036】
MQシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
MQTシリコーンレジンとしては、たとえば、1官能性構成単位であるRSiO1/2(但し、R、RおよびRはいずれも炭化水素基である。)と、4官能性構成単位であるSiO4/2と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)と含むシリコーンレジン等を挙げることができる。
Tシリコーンレジンとしては、たとえば、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)を含むシリコーンレジン(その末端は炭化水素基のほか、シラノール基やアルコキシ基となっていても良い。)等を挙げることができる。
DTシリコーンレジンとしては、たとえば、2官能性構成単位であるRSiO2/2(但し、R、およびRはいずれも炭化水素基である。)と、3官能性構成単位であるRSiO3/2(但し、Rは炭化水素基である。)等を挙げることができる。
【0037】
本発明の弾性繊維用処理剤に含まれるシリコーンレジンの配合割合は、特に限定はないが、弾性繊維用処理剤全体の0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜7重量%がさらに好ましく、0.1〜5重量%が特に好ましくい。シリコーンレジンの配合割合が弾性繊維用処理剤全体の0.01重量%未満であると、添加による効果が見られないことがある。一方、シリコーンレジンの配合割合が弾性繊維用処理剤全体の10重量%超であると、油剤性能の適正なバランスを維持できないことがある。
【0038】
本発明の弾性繊維用処理剤は、つなぎ剤、制電剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の通常弾性繊維の処理剤に用いられる成分をさらに含有することができる。
【0039】
[弾性繊維用処理剤]
本発明の弾性繊維用処理剤は、30℃における動粘度が通常3〜100mm/sが好ましく、5〜50mm/sがさらに好ましく、8〜20mm/sが特に好ましい。3mm/s未満では、弾性繊維用処理剤の揮発が問題となる場合があり、100mm/sを超えると平滑性に劣る場合がある。
【0040】
本発明の弾性繊維用処理剤のよう素価(IV)は、0.05〜300が好ましく、0.1〜250がさらに好ましく、1〜200が特に好ましい。IVが0.05未満であると、安定解舒性、優れた平滑性の効果が得られないことがある。一方、IVIが300超であると、添加による効果が安定的に得られないことがある。なお、よう素価の測定方法はJIS−K0070内、よう素価の測定方法に準拠する。
【0041】
成分(A)を含有する本発明の弾性繊維用処理剤は、処理剤を被塗布物に塗布して放置すると、平均粒径0.5〜50μmの粒子の析出が観察される。本願の弾性繊維用処理剤が、何故優れた安定解舒性および平滑性を弾性繊維に付与できるのか定かではないが、粒子が析出することから、高級脂肪酸の金属塩のような固体粒子の添加による効果に近い効果を発揮していると推測される。また、本発明の弾性繊維用処理剤は、高級脂肪酸の金属塩の欠点である吸湿増粘がなく、液体の状態で成分(A)を含有することができ、安定な処理剤である。さらに、高級脂肪酸の金属塩の固体粒子を粉砕、分散する工程も不要であり、コスト的にも有利である。
なお、粒子の確認方法としては、200mlビーカーに本発明の弾性繊維用処理剤を100g入れ、空気でバブリングさせながら7日放置したものを、光学顕微鏡を使用し倍率3000倍で粒子が析出していることを確認した。平均粒子径は、粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−910)のバッチセルを使用して、屈折率を1.06に設定して、体積基準の平均粒子径を測定した。
【0042】
[弾性繊維処理剤の製法方法]
本発明の弾性繊維用処理剤の製造方法は、前記不飽和エステルを重合して前記成分(A)を生成する工程(1)と、得られた成分(A)と前記ベース成分とを混合する工程(2)とを含むものである。工程(1)としては、前述の成分(A)のところで記載した通りである。工程(2)としては、工程(1)で得られた成分(A)を含む生成物とベース成分とを混合する工程であり、公知の方法を適用でき、各成分を任意の順番で添加混合することができる。
【0043】
[弾性繊維]
本発明の弾性繊維は、弾性繊維全体に上記弾性繊維用処理剤が0.1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%付与されている弾性繊維である。付与方法については、公知の方法を採用できる。
本発明の弾性繊維(弾性繊維本体)は、ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエステルエラストマー、ポリエチレンエラストマー、ポリアミドエラストマー等、を使用した弾性を有する繊維であり、その伸度は通常300%以上である。またソフトなストレッチ性のあるポリオレフィン系弾性繊維、およびポリトリメチレンテレフタレート繊維を含めてもよい。
【0044】
本発明の弾性繊維としては、例えば、PTMGやポリエステルジオールと有機ジイソシアネートを反応させ、次いで、1,4ブタンジオール、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ペンタンジアミンなどで鎖延長した、ポリウレタンあるいはポリウレタンウレアから構成されるものがある。たとえば、ポリウレタンウレア弾性繊維は、分子量1000〜3000のポリテトラメチレングリコール(PTMG)とジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを用意し、PTMG/MDI=1/2〜1/1.5(モル比)でジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド等の溶媒中で反応させ、エチレンジアミン、プロパンジアミン等のジアミンで鎖延長して得られるポリウレタンウレアポリマーの20〜40%溶液を乾式紡糸で、紡糸速度400〜1200m/minで紡糸することにより製造できる。弾性繊維本体の適応繊度は特に制限はない。
【0045】
本発明の弾性繊維の用途として、CSY、シングルカバリング、PLY、エアーカバリング等のカバリング糸等の加工糸や、丸編み、トリコット等により、布帛として使用することができる。また、これらの加工糸、布帛を使用してストッキング、靴下、下着、水着等の伸縮性が必要とされる製品や、ジーンズ、スーツ等のアウターウェア等に快適性のために伸縮性を付与させる目的でも使用される。さらに最近では、紙おむつにも適用される。
【実施例】
【0046】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)および部は、特に限定しない限り、「重量%」および「重量部」を示す。なお、実施例および比較例において、吹き込み法および不活性ガス法の製造方法、弾性繊維用処理剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
【0047】
(吹き込み法)
内容積が5Lのステンレス製重合釜に不飽和エステルを仕込み、攪拌下、120℃に加熱し、20分経過後、90℃で空気を吹き込み、6時間経過後、60℃に冷却する。
【0048】
(不活性ガス法)
内容積が5Lのステンレス製重合釜に不飽和エステルを仕込み、攪拌下、窒素を墳入しながら、270℃に加熱し、24時間後に60℃程度まで冷却する。
【0049】
(解舒速度比)
図1において、解舒速度比測定機の解舒側に処理剤を付与した繊維のチーズ(1)をセットし、巻き取り側紙管(2)をセットする。
巻取速度を一定速度にセットした後、ローラー(3)および(4)を同時に起動させる。この状態では糸(5)に張力はほとんどかからないため、糸はチーズ上で膠着して離れないため解舒点(6)は図1に示す状態にある。解舒速度を変えることによって、チーズからの糸(5)の解舒点(6)が変わるので、この点がチーズとローラーとの接点(7)と一致するように解舒速度を設定する。解舒速度比は下記式2によって求める。
この値が小さいほど、解舒性が良いことを示す。
解舒速度比(%)=((巻取速度−解舒速度)/解舒速度)×100 (式2)
【0050】
(経時後の解舒速度比)
解舒速度比を測定後、20℃×60%RHの条件化で一ヶ月放置後、再度、解舒速度比を測定、経時による解舒速度比の上昇を確認する。
【0051】
(編成張力)
図2において、チーズ(8)から縦取りした弾性糸(9)をコンペンセーター(10)を経てローラー(11)、編み針(12)を介して、Uゲージ(13)に付したローラー(14)を経て速度計(15)、巻き取りローラー(16)に連結する。速度計(15)での走行速度が定速(例えば、10m/分、100m/分)になるように巻き取りローラーの回転速度を調整して、巻き取りローラーに巻き取り、そのときの編成張力をUゲージ(13)で測定し、繊維/編み針間の摩擦(g)を計測する。走行糸より1cmのところで春日式電位差測定装置(17)で静電気発生量(kV)を測定する。
【0052】
(繊維間摩擦係数)
図3において処理剤が付与された弾性糸を50〜60cm程度取り、一方の端に荷重(18)を吊り下げ、ローラー(19)を介して、Uゲージ(20)にもう一方の端を掛けて低速(例えば3CM/分)で引っ張りそのときの2次張力をUゲージ(20)で測定し、式3により、繊維間摩擦係数を求める。
繊維間摩擦係数=1/θ・In(Uゲージ測定値/荷重) (式3)
(式3において、θ=2π、In=自然対数、荷重は22dtex当り1g)
【0053】
〔実施例1〕
数平均分子量1600のポリテトラメチレンエーテルグリコールと4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートをモル比率1:2で反応させ、次いで1,2−ジアミノプロパンのジメチルホルムアミド溶液を用いて鎖延長し、紡糸原液としてポリマー濃度33%のジメチルホルムアミド溶液を得た。なお、紡糸原液の濃度は1900mPaS(測定温度:30℃)であった。
次に、不飽和エステルとして表1に記載のひまし油を使用して、上記吹き込み法により、ひまし油の2〜5量体を含む表1に示す生成物a1(VD49mm/s、IV67.1、RIV22.2%、生成物a1全体に対する1〜5量体の重量比率:単量体46重量%、2量体21重量%、3量体12重量%、4量体11重量%、5量体11重量%、2〜5量体の合計54重量%)を調製した。
なお、前述に記載したように、VDとは得られた生成物を動粘度(30℃)が12.1mm/sである流動パラフィンで50重量%に希釈したときの動粘度(mm/s)をいい、IVとは生成物a1のよう素価をいい、RIVとは、前述の式(1)で示されるよう素価の減少率をいう。IVの測定方法は、前述の記載の通りである。
また、不飽和エステルの2〜5量体の評価方法は、分子量測定機(東ソー株式会社製HLC−8220GPC、およびカラムである昭和電工株式会社製Shodex KF−402HQ+KF−403HQ)にて測定した。測定試料は工程(1)で得られた生成物を溶媒THFで0.2重量%に希釈したものを使用した。
【0054】
次に、表2に記載の弾性繊維用処理剤Aの各成分を混合して、30〜40℃で60分間攪拌し、弾性繊維処理剤Aを得た。
得られた紡糸原液を4つの細孔を有する紡糸口金より195℃のN気流中に吐出して乾式紡糸した。弾性繊維用処理剤Aをそれぞれオイリングローラーで、紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に対して6重量%付与した。従って、付着後の弾性繊維全体に対して弾性繊維用処理剤が5.66重量%付与された。その後、弾性繊維用処理剤で処理した弾性繊維をそれぞれ毎分500mの速度でボビンに巻き取り、77dtexモノフィラメントチーズ(巻き量:400g)を得た。
得られたチーズをそれぞれ35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置して、上記評価に供し、結果を表2に示した。
【0055】
〔実施例2〜8〕
実施例1において、表1に示す不飽和エステルの2〜5量体を含む生成物a2〜a6を調製し、その生成物を用いて表2に示す弾性繊維用処理剤B〜Hを調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜8を評価した。その結果を表2に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
〔実施例9〕
数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール100重量部と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート25重量部を80℃で反応させ、N,N’−ジメチルアセトアミド250重量部を加え冷却しながら反応混合物を溶解させた。1,2−ジアミノプロパン5重量部をN,N’−ジメチルアセトアミド184重量部に溶解させたものを添加し、ジメチルシリコーン100mm/sを0.2重量%添加して、紡糸原液を得た。
次に、不飽和エステルとして表1に記載のトリ(オレイン酸:リノール酸:リノレン酸=2:1:0.5)グリセリドを使用して、上記不活性ガス法により、不飽和エステルの2〜5量体を含む表1に示す生成物a7(VD69mm/s、IV87.2、RIV25.7%、生成物a1全体に対する1〜5量体の重量比率:単量体55重量%、2量体17重量%、3量体10重量%、4量体9重量%、5量体9重量%、2〜5量体の合計45重量%)を調製した。
【0059】
次に、表3に記載の弾性繊維用処理剤Iの成分を混合して、30〜40℃で60分間攪拌し、弾性繊維処理剤Iを得た。
得られた紡糸原液を4つの細孔を有する紡糸口金より195℃のN気流中に吐出して乾式紡糸した。紡糸中の走行糸に、得られた弾性繊維用処理剤Iをそれぞれオイリングローラーで、紡糸中の走行糸(弾性繊維本体)に対して6重量%付与した。したがって、付着後の弾性繊維全体に対して弾性繊維用処理剤が5.66重量%付与された。その後、弾性繊維用処理剤で処理した弾性繊維をそれぞれ毎分400mの速度でボビンに巻き取り、44dtexマルチフィラメントのチーズ(巻き量:400g)を得た。
得られたチーズをそれぞれ35℃、50%RHの雰囲気中に48時間放置して、上記評価に供し、結果を表3に示した。
【0060】
〔実施例10〜16〕
実施例9において、表1に示す不飽和エステルの2〜5量体を含む生成物a7〜a14を調製し、その生成物を用いて表3に示す弾性繊維用処理剤I〜Pを調製した以外は、実施例9と同様にして、実施例10〜16を評価した。その結果を表3に示した。
【0061】
〔比較例1〜7〕
実施例9において、表4に示す弾性繊維用処理剤Q〜Wを調製した以外は、実施例9と同様にして、比較例1〜7を評価した。その結果を表4に示した。
【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【符号の説明】
【0064】
1 チーズ
2 巻き取り用紙管
3 ローラー
4 ローラー
5 走行糸条
6 解舒点
7 チーズとローラーの接点
8 チーズ
9 走行糸条
10 コンペンセーター
11 ローラー
12 編み針
13 Uゲージ
14 ローラー
15 速度計
16 巻き取りローラー
17 春日式電位差測定装置
18 荷重
19 ローラー
20 Uゲージ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース成分として、シリコーン油、鉱物油およびエステル油より選ばれる少なくとも1種を含有し、不飽和エステルの2量体、3量体、4量体および5量体より選ばれる少なくとも1種の成分(A)を処理剤全体に対して0.1〜30重量%含有する、弾性繊維用処理剤。
【請求項2】
前記不飽和エステルが、不飽和トリエステルおよび/または4以上の不飽和多価エステルである、請求項1に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項3】
前記不飽和エステルが、炭素数が12〜22の不飽和脂肪酸のエステルおよび/または炭素数が12〜22の不飽和脂肪族アルコールのエステルである、請求項1または2に記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項4】
前記不飽和エステルが、不飽和グリセリントリエステル、不飽和トリメチロールプロパントリエステルおよび不飽和トリメチロールエタントリエステルより選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項5】
前記処理剤のよう素価が0.05〜300である、請求項1〜4のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤の製造方法であって、前記不飽和エステルを重合して前記成分(A)を生成する工程(1)と、得られた成分(A)と前記ベース成分とを混合する工程(2)とを含む、弾性繊維用処理剤の製造方法。
【請求項7】
前記工程(1)によって得られた生成物を動粘度(30℃)が12.1mm/sである流動パラフィンで50重量%に希釈したときの動粘度(30℃)が、20〜300mm/sである、請求項6に記載の弾性繊維用処理剤の製造方法。
【請求項8】
弾性繊維本体に、請求項1〜5のいずれかに記載の弾性繊維用処理剤が0.1〜15重量%付与されている、弾性繊維。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−12358(P2011−12358A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157391(P2009−157391)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000188951)松本油脂製薬株式会社 (137)
【Fターム(参考)】