説明

弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法

【課題】弾性舗装材と隣接するアスファルト系の新設、または既設の舗装体の端部損傷を防止すると共に、弾性舗装材の剥離を防止する弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法を提供する。
【解決手段】車道用弾性舗装材を敷設する下地1と、アスファルト系の既設または新設の舗装体2の弾性舗装材3との境界部Gの端末部2aは、少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材4(連続空隙を有する舗装材にセメントミルクを注入した舗装:半たわみ性舗装とも言う)と弾性舗装材3とにより覆われ、かつ表面が舗装体2と弾性舗装材3とが面一となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法に係わり、更に詳しくは弾性舗装材と隣接するアスファルト系の新設、または既設の舗装体の端部損傷を防止すると共に、弾性舗装材の端部剥離を防止する弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車道用弾性舗装材を敷設した場合、主に弾性舗装材側から隣接するアスファルト系の既設の舗装体へ移行する境界部において、舗装体の端部が破壊し易く、また破壊した部分から雨水等が集中して流入し、弾性舗装材と下地界面において剥離が発生すると言う問題があった。また、従来の弾性舗装材の端部構造としては、静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装体と、この舗装体に隣接して敷設されたJIS K6254に規定された圧縮弾性率が1〜50MPaである弾性舗装材とで構成されているのが一般的である。
【0003】
上記の舗装体の端部が破壊し易い原因としては、図4に示すように弾性舗装材1Aでは車両及びタイヤTの重量Wにより沈み込んだ状態にあり、この状態で例えば、車両のタイヤTが弾性舗装材1Aからアスファルト系やコンクリート等の舗装体2Aへ移行する際、車両及びタイヤTの重量Wと、車両の推進力Fによる舗装体2Aとタイヤとの摩擦力μとの合力Fxにより舗装体2Aの上端コーナ部Xが破壊すると推測され、特に大型車両や大型タイヤ等においては舗装体2Aの上端コーナ部Xが破壊することが多いと考えられる。
【0004】
そこで、従来では既設のアスファルト舗装材またはコンクリート舗装材等で構成される舗装体と弾性舗装材との間にゴム状弾性材料から成る弾性ブロックを接着剤を介して固定したり(特許文献1参照)、弾性舗装とアスファルト舗装道路との間に繊維補強材を埋設して連結させた端部剥離防止構造(特許文献2参照)、更には耐久性の低下を起こさない構造として、弾性舗装材層と非透水構造との間に排水構造を設けた車道用弾性舗装路(特許文献3参照)等が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記のような従来の構造は、弾性舗装材側から隣接するアスファルト系の舗装体へ移行する境界部において舗装体の端部が略直角に形成されているため、舗装体2Aの上端コーナ部Xの破壊を十分に防止することが出来ず、また境界部における排水性が十分でないことから弾性舗装材と下地界面との剥離を有効に防止することができないと言う問題があった。
【特許文献1】特開2003−138504号公報
【特許文献2】特開2005−282068号公報
【特許文献3】特開2004−100209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、弾性舗装材と隣接するアスファルト系の新設、または既設の舗装体の端部損傷を防止すると共に、弾性舗装材の端部剥離を防止する弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の弾性舗装材の端部構造は、舗装体の端末部を、少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように構成したことを要旨とするものである。
【0008】
ここで、前記舗装体の端末部の形状として、舗装体の表面と、舗装体と舗装材との境界面で挟まれた角度を鈍角(例えば、135度前後)に形成し、また前記舗装体の端末部と舗装材との境界部に排水手段を設け、更に前記舗装体の端末部と舗装材との境界部に、弾性舗装材の剥離防止ブロックを配設することも可能である。
【0009】
また、この発明の弾性舗装材の端部処理工法は、舗装体の端末部を車両の進行方向と反対方向に向かって傾斜させて切削し、前記切削した舗装体の端末部を少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材により覆い、表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設することを要旨とするものである。
【0010】
ここで、前記舗装体の切削した端末部に舗装材を敷設し、該舗装材にセメントミルクを注入して固化した後、舗装体の端末部近傍の舗装材を研掃して凹部を形成し、舗装材の凹部に排水手段を配設した後、弾性舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設し、また前記排水手段の近傍に弾性舗装材の剥離防止ブロックを配設し、弾性舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設することも可能である。
【0011】
このように構成することで、アスファルト系の新設、または既設の舗装体の端部損傷を防止すると共に、弾性舗装の端部剥離を防止することが出来るものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の弾性舗装材の端部構造及び弾性舗装材の端部処理工法は、上記のように構成してあるため、弾性舗装材と隣接するアスファルト系の新設、または既設の舗装体の端部損傷を防止することが出来ると共に、舗装材と弾性舗装材との境界部に排水手段を設けたり、前記排水手段の近傍に、弾性舗装材の剥離防止ブロックを配設することで、雨水等が浸入しても排水効率が良いため弾性舗装材の端部剥離を防止することが出来ると共に、剥がれの拡大を防止でき、更に供用期間の延長を図ることが出来る上に、端部処理工法は現場施工が容易であるため、作業効率を高めることが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。
【0014】
図1は、この発明を実施した弾性舗装材の端部構造の一部拡大斜視図を示し、1は車道用弾性舗装材を敷設する下地、2はアスファルト系の既設または新設の舗装体を示し、前記舗装体2の弾性舗装材3との境界部Gの端末部2aは、舗装材4(連続空隙を有する舗装材にセメントミルクを注入した舗装:半たわみ性舗装、開粒度アスファルト舗装、排水性舗装、ポーラス舗装とも言う)と弾性舗装材3とにより覆われ、かつ表面が舗装体2と弾性舗装材3とが面一となるように構成されている。
【0015】
即ち、この発明の実施形態における前記舗装体2の静弾性係数が1000〜10000MPaであり、また前記弾性舗装材3のJIS K6254に規定された圧縮弾性率は1〜50MPaであり、更に前記舗装体2の端末部2aを、少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材4により覆い、かつ表面が舗装体2と弾性舗装材3とが面一となるように構成するものである。
【0016】
静弾性係数及び圧縮弾性率が上記の範囲であると、舗装体2の端部損傷を防止することが出来る。つまり、静弾性係数が上記の範囲外であると、舗装材4に隣接する舗装体2あるいは弾性舗装材3との間で剥離し易くなるのである。
【0017】
なお、静弾性係数の測定は、JIS A1149に規定されたコンクリートの静弾性係数試験方法に準じて行い、供試体は直径100mm,高さ200mmの円柱供試体で、10°Cで1日養生後、室温にて測定した。
【0018】
前記弾性舗装材3は、硬質骨材やゴムチップ等の軟質骨材等の骨材と樹脂バインダーとから構成され、前記舗装材4(半たわみ性舗装)を構成するセメントミルクは、セメント,フライアッシュ,けい砂,石粉,添加剤から成り、添加剤には、ゴム系,エマルジョン樹脂系,エマルジョンアスファルト乳化剤,高分子乳化剤等を用いることが出来る。セメントの種類は、普通タイプ,早強タイプ,超速硬タイプ等がある。また、セメントミルクの代替えとして、メチル・メタクリレート樹脂、またはエポキシ樹脂を使用することも可能である。
【0019】
前記舗装体2の弾性舗装材3と隣接する端末部2aは、舗装材4及び弾性舗装材3により覆われるように構成するため舗装体2の表面と、舗装体2と舗装材4との境界面で挟まれた角度を所定の角度αに形成し、この角度αとしては、例えば、135度前後の鈍角に形成してある。なお、舗装材4を敷設しない場合には、弾性舗装材3により端末部2aを覆うように構成するものである。
【0020】
前記舗装体2の弾性舗装材3との境界部Gに形成した凹部5には、雨水等を排水するための排水管等の排水手段6が配設してあり、更に排水手段6の凹部5に隣接する舗装材4上には、弾性舗装材3の剥離を防止する板状の剥離防止ブロック7がエポキシ樹脂等の接着剤を介して配設固定してある。
【0021】
なお、剥離防止ブロック7は舗装材4との接着性を良好にするために、弾性舗装材3の材質と同様な材料により予め製作しておくことが好ましい。
【0022】
次に、既設または新設の舗装体2に隣接して弾性舗装材3を敷設する弾性舗装材の端部処理工法を、図2(a)〜(h)及び図3を参照して説明する。
【0023】
先ず、図2(a),(b)に示すように、既設または新設の高さ200mm前後の舗装体2の端末部2aを車両の進行方向(矢印X方向)と反対方向に向かって所定の角度α(135度前後)で、かつ所定の高さh(例えば、80mm〜120mm)切削し、この切削した部分に、空隙率が5%以上、40%以下の排水性を有する前記舗装材4を高さh1(75mm〜90mm)に敷設する(図2(c)参照)。
【0024】
即ち、前記舗装体2の端末部2aを車両の進行方向と反対方向に向かって傾斜させて切削し、前記舗装体2の静弾性係数が1000〜10000MPaであり、前記弾性舗装材3のJIS K6254に規定の圧縮弾性率が1〜50MPaであり、更に切削した舗装体2の端末部2aを少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材4により覆い、表面が舗装体2と弾性舗装材3とが面一となるように敷設するのである。
【0025】
そして、この舗装材4に図2(d)に示すようにセメントミルク4xを注入し、セメントミルク4xが固化した後、舗装体2の端末部2a近傍の舗装材4を図2(e)の破線に示すようにV字状に研掃して凹部5を形成し、舗装材4の凹部5には、図2(f)に示すように雨水等を排水するための排水管等の排水手段6を配設する。 更に、排水手段6の凹部5が隣接する舗装材4上には、図2(g)に示すように弾性舗装材3の剥離を防止する板状の剥離防止ブロック7を配設し、そして、舗装材4上の排水手段6及び板状の剥離防止ブロック7を覆いながら厚さt(20〜30mm)程度で弾性舗装材3を敷設すると共に、図2(h)に示すように表面が舗装体4と弾性舗装材3とが面一となるように敷設するものである。
【0026】
以上のように、舗装体2の端末部2aを車両の進行方向と反対方向に向かって所定の角度αで傾斜させて切削し、この切削した端末部2aを弾性舗装材3により覆い、かつ表面が舗装体2と弾性舗装材3とが面一となるように敷設することにより、図3に示すように舗装体2の端末部2aと弾性舗装材3との境界部Gを車両が通過しても、車両の重量Wと、車両の推進力Fとタイヤの摩擦力μとの合力Fxにより舗装体2の端末部2aが破損することが少なくなり、この結果、境界部Gに雨水等の浸入も少なく、弾性舗装材3と下地界面との剥離を有効に防止することが出来、供用期間の延長を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明を実施した弾性舗装材の端部構造の一部拡大斜視図である。
【図2】この発明の弾性舗装材の端部処理工法の工程説明図である。
【図3】舗装体の端末部と弾性舗装材との境界部を車両が通過する際の説明図である。
【図4】従来の舗装体の端末部と弾性舗装材との境界部を車両が通過する際の説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 下地
2 舗装体
2a 舗装体の端末部
3 弾性舗装材
4 舗装材
5 凹部
6 排水手段
7 剥離防止ブロック
G 境界部
W 車両の重量
F 車両の推進力
μ タイヤの摩擦力
Fx 合力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装体と、この舗装体に隣接して敷設されたJIS K6254に規定された圧縮弾性率が1〜50MPaである弾性舗装材の端部構造において、
前記舗装体の端末部を、少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように構成して成る弾性舗装材の端部構造。
【請求項2】
前記舗装体の端末部の形状として、舗装体の表面と、舗装体と舗装材との境界面で挟まれた角度を鈍角に形成した請求項1に記載の弾性舗装材の端部構造。
【請求項3】
前記舗装体の端末部と舗装材との境界部に排水手段を設けた請求項1または2に記載の弾性舗装材の端部構造。
【請求項4】
前記舗装体の端末部と舗装材との境界部に、弾性舗装材の剥離防止ブロックを配設した請求項1,2または3に記載の弾性舗装材の端部構造。
【請求項5】
既設または新設の静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装体に隣接して、JIS K6254に規定の圧縮弾性率が1〜50MPaである弾性舗装材を敷設する弾性舗装材の端部処理工法において、
前記舗装体の端末部を車両の進行方向と反対方向に向かって傾斜させて切削し、前記切削した舗装体の端末部を少なくともセメント成分を含有する静弾性係数が1000〜10000MPaである舗装材により覆い、表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設する弾性舗装材の端部処理工法。
【請求項6】
前記舗装体の切削した端末部に舗装材を敷設し、該舗装材にセメントミルクを注入して固化した後、舗装体の端末部近傍の舗装材を研掃して凹部を形成し、舗装材の凹部に排水手段を配設した後、弾性舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設する請求項5に記載の弾性舗装材の端部処理工法。
【請求項7】
前記排水手段の近傍に弾性舗装材の剥離防止ブロックを配設し、弾性舗装材により覆い、かつ表面が舗装体と弾性舗装材とが面一となるように敷設する請求項6に記載の弾性舗装材の端部処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13893(P2010−13893A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176919(P2008−176919)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】