説明

弾性表面波デバイス、および圧電素子の固定方法

【課題】圧電素子の周波数を調整した後、減圧雰囲気から常圧(大気状態)に戻されることによる、圧電素子の周波数変化を抑制する。または、アニール処理により、発生してしまうアウトガスが圧電素子に付着することによる、圧電素子の周波数変化を抑制することが可能な周波数精度の優れた弾性圧電波デバイスを提供する。
【解決手段】SAW素子1は接続端子としての金属パッド23により、収納室20内の基板5上に固定されるので、気圧の変化による金属パッド23の膨張または収縮によるSAW共振子10の共振周波数の変化を抑制し、共振周波数の精度の優れたSAW共振子10を提供することができる。また、接続端子としての金属パッド23は、アニール処理などによりアウトガスが発生しないので、アウトガスの付着などによる共振周波数の変化を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子の固定方法、および弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、弾性表面波デバイスは、圧電素子が接着剤によりパッケージ内の基板上に固定されている。そして、パッケージ内に圧電素子が気密に封止されている。弾性表面波デバイスは、減圧雰囲気で圧電素子にプラズマ照射することにより、圧電素子の周波数を調整している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−354507号公報(7頁、図1〜図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤によりパッケージ内の基板上に固定された圧電素子の周波数を調整した後、圧電素子は減圧雰囲気から常圧(大気状態)に戻される、つまり気圧が変化してしまう。このため、接着剤が減圧雰囲気で膨張していた状態から収縮されてしまい、圧電素子に応力変化を与え、圧電素子の周波数が変化してしまう。また、気密に封止する前に、水分または有機物などの不純物を除去するために、パッケージおよび接着剤により固定された圧電素子に、アニール処理を施す。しかしながら、アウトガスが発生してしまい、そのアウトガスが圧電素子に付着することにより、圧電素子の周波数が変化してしまう。これらの周波数の変化により、弾性表面波デバイスの周波数精度を悪くしてしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる弾性表面波デバイスは、圧電基板の主面にIDT電極を備えた圧電素子と、前記圧電素子を固定する基板と、前記基板上に配置された接合金属とを備え、前記圧電素子は、前記主面に対向する前記圧電基板の裏面と、前記基板とが、前記接合金属により固定されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、SAW素子は接合金属により、基板上に固定されるので、気圧の変化による接合金属の膨張または収縮によるSAW共振子の共振周波数の変化を抑制し、共振周波数の精度の優れたSAW共振子を提供することができる。また、接合金属は、アニール処理などによりアウトガスが発生しないので、アウトガスの付着などによる共振周波数の変化を防止することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスにおいて、前記圧電素子は、前記主面から前記裏面にかけて前記圧電基板に形成された貫通電極を備え、前記基板上に接続端子を備え、前記貫通電極と前記接続端子とが前記接合金属により電気的に接続されていることが好ましい。
これによれば、上述と同様の効果を奏するとともに、SAW素子の電気的接続が可能となる。ボンディングワイヤーを用いずに、貫通電極により、SAW素子とパッケージとを電気的に接続させるので、パッケージ内にボンディングワイヤーを配線させる空間を、省くことができ、パッケージを小型化および薄型化することができる。これにより、小型化および薄型化された弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0009】
[適用例3]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスにおいて、前記接続端子は複数に区分されていることが好ましい。
これによれば、接続端子に接続される接合金属の数量により、寄生インピーダンスが調整された発振安定度の優れた弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0010】
[適用例4]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスにおいて、前記圧電基板の裏面と、前記基板とが、前記接続端子により固定されていることが好ましい。
これによれば、圧電基板の裏面と基板とが固定される接続端子に接続される接合金属の数量により、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保した弾性表面波デバイスを得ることができる。
【0011】
[適用例5]本適用例にかかる圧電素子の固定方法は、圧電基板の主面にIDT電極が形成された圧電素子を基板に固定する圧電素子の固定方法であって、前記主面に対向する前記圧電基板の裏面と、前記基板とを、接合金属により固定することを要旨とする。
【0012】
これによれば、SAW素子は接合金属により、基板上に固定されるので、気圧の変化による接合金属の膨張または収縮によるSAW共振子の共振周波数の変化を抑制し、共振周波数の精度の優れたSAW共振子を提供することができる。また、接合金属は、アニール処理などによりアウトガスが発生しないので、アウトガスの付着などによる共振周波数の変化を防止することが可能な圧電素子の固定方法を提供することができる。
【0013】
[適用例6]上記適用例にかかる圧電素子の固定方法において、前記圧電素子は、前記主面から前記裏面にかけて前記圧電基板に形成された貫通電極を備え、前記基板上に接続端子を備え、前記貫通電極と前記接続端子とを前記接合金属により電気的に接続をすることを要旨とする。
これによれば、上述と同様の効果を奏するとともに、SAW素子の電気的接続が可能となる圧電素子の固定方法を提供することができる。
【0014】
[適用例7]上記適用例にかかる圧電素子の固定方法において、前記接続端子は複数に区分されていることを要旨とする。
これによれば、接続端子に接続される接合金属の数量により、寄生インピーダンスを調整することが可能な圧電素子の固定方法を提供することができる。
【0015】
[適用例8]上記適用例にかかる圧電素子の固定方法において、前記圧電基板の裏面と、前記基板とを、前記接続端子により固定することを要旨とする。
これによれば、圧電基板の裏面と基板とが固定される接続端子に接続される接合金属の数量により、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保することが可能な圧電素子の固定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態のSAW共振子を示す概略構成図。
【図2】第1実施形態のSAW素子を示す概略構成図。
【図3】第1実施形態のSAW素子の固定方法を示す概略図。
【図4】第2実施形態のSAW素子の固定方法を示す概略図。
【図5】第3実施形態のSAW素子の固定方法を示す概略図。
【図6】第4実施形態のSAW素子を示す概略構成図。
【図7】第4実施形態のSAW共振子を示す概略構成図。
【図8】変形例1のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図9】変形例2のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図10】変形例3のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図11】変形例4のSAW共振子を示す概略構成図。
【図12】変形例4のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図13】変形例5のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図14】変形例6のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【図15】変形例7のSAW素子の概略構成および固定方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施形態では、圧電素子としてSAW(Surface Acoustic Wave)素子を用いたSAW共振子を一例に挙げて説明する。
【0018】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、図1から図3を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、SAW共振子10は、パッケージ2と、蓋体3と、SAW素子1とを備えている。
【0020】
パッケージ2は、基板5と、積層基板21と、封止接合部22と、金属パッド23と、内部接続端子24と、外部接続端子25とを備えている。
【0021】
基板5上に、枠状に形成された積層基板21が配置されている。これにより、収納室20を形成する。積層基板21は一層からなると図示したが、複数層からなるとしてもよい。積層基板21の上に、封止接合部22が配置されている。基板5および積層基板21は、酸化アルミニウムなどからなる絶縁性のセラミックスである。封止接合部22は、金(Au)または銀(Ag)などを含むロウ剤である。
【0022】
収納室20内の基板5上に、金属パッド23と2個の内部接続端子24とが形成されている。金属パッド23は、2個の内部接続端子24の間に配置されている。内部接続端子24が形成された基板5の面に対して、対向する面に外部接続端子25が形成されている。内部接続端子24と外部接続端子25とは、電気的に接続されている。金属パッド23、内部接続端子24、および外部接続端子25は、金(Au)などからなる。
【0023】
金属パッド23上にSAW素子1が配置され、SAW素子1は金属パッド23により収納室20内の基板5上に固定される。SAW素子1は、ボンディングワイヤー4により内部接続端子24と電気的に接続されている。ボンディングワイヤー4は、アルミニウム(Al)などからなる。
【0024】
蓋体3は、封止接合部22上に配置され、収納室20を覆っている。そして、蓋体3は抵抗溶接などの方法により封止接合部22に接合されることにより、収納室20はSAW素子1を配置した状態で気密に封止されている。蓋体3は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)などからなる金属または合金である。
【0025】
図2(a)は、SAW素子を示す概略平面図であり、同図(b)は、A−B断面図であり、同図(c)は、C−D断面図である。
図2に示すように、圧電素子としてのSAW素子1は、圧電基板15と、IDT(Interdigital Transducer)電極11と、接合金属としての金属層19とを備えている。
【0026】
圧電基板15は、圧電層16と、中間層17と、基盤層18とからなる3層構成である。圧電層16は、酸化亜鉛(ZnO)または窒化アルミニウム(AlN)からなる。中間層17は、ダイヤモンドからなる。基盤層18は、シリコン(Si)からなる。ここで、圧電層16の材料としては、酸化亜鉛(ZnO)または窒化アルミニウム(AlN)だけに限らず、水晶(SiO2)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、四ホウ酸リチウム(Li247)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などの圧電体、またはシリコン(Si)などであってもよい。そして、圧電基板15の構成は、3層構成だけに限らず、2層構成または1層構成などであってもよい。たとえば、2層構成の場合、サファイヤからなる基盤層18上に、圧電層16として窒化アルミニウム(AlN)または窒化アルミニウム(AlN)が形成された構成が一例として挙げられる。また、1層構成の場合は、圧電層16として水晶(SiO2)またはタンタル酸リチウム(LiTaO3)が形成された構成が一例として挙げられる。
【0027】
IDT電極11は、圧電基板15の主面15aである圧電層16上に形成されている。IDT電極11は、複数の電極指13a,13bがそれぞれバスバー12a,12bに連結された構造となっている。そして、一方の電極指13aと他方の電極指13bとが交互に配置され、且つ接触しないように形成されている。IDT電極11は、アルミニウム(Al)などの導電性金属材料からなる。
ここで、IDT電極11のバスバー12a,12bと、収納室20内の基板5上の内部接続端子24とを、ボンディングワイヤー4により電気的に接続させ、図1に示すようにSAW素子1は金属端子としての内部接続端子24に電気的に接続される。
【0028】
金属層19は、圧電基板15の主面15aに対向する裏面15bに形成されている。金属層19は、金(Au)などの導電性金属材料からなる。
【0029】
SAW素子1が、収納室20内の基板5上の接続端子としての金属パッド23上に配置され、接合金属としての金属層19により固定される方法について、図3を用いて説明する。
図3(a)に矢印(2点鎖線)で示すように、パッケージ2の金属パッド23表面に、たとえば紫外線照射またはプラズマ照射などすることにより、金属パッド23表面を活性化させる。その後、SAW素子1の金属層19を、金属パッド23上に配置し、図3(b)に示すように、SAW素子1は収納室20内の基板5上に、表面接合により固定される。また、SAW素子1の金属層19に、紫外線照射またはプラズマ照射などするとしてもよい。
【0030】
その後、蓋体3は、抵抗溶接などの方法により封止接合部22に接合されることにより、収納室20は、SAW素子1を配置した状態で、気密に封止される。このようにして、SAW共振子10を得る。
【0031】
本実施形態によれば、SAW素子1は接続端子としての金属パッド23により、収納室20内の基板5上に固定されるので、気圧の変化による金属パッド23の膨張または収縮によるSAW共振子10の共振周波数の変化を抑制し、共振周波数の精度の優れたSAW共振子10を提供することができる。また、接続端子としての金属パッド23は、アニール処理などによりアウトガスが発生しないので、アウトガスの付着などによる共振周波数の変化を防止することができる。
【0032】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、図4を参照して説明する。
第2実施形態のSAW共振子が、第1実施形態のSAW共振子と相違する点は、SAW素子の構成と固定方法とが異なる点である。第2実施形態のSAW共振子10は、SAW素子1に金属層を備えない。そして、接合金属として金属バンプ6を用いる構成である。
【0033】
図4(a)に示すように、基板5上の金属パッド23表面に金属バンプ6を配置し、その金属バンプ6上にSAW素子1を配置する。金属バンプ6は、たとえば球状であり、金(Au)などの導電性金属材料からなる。そして、図4(b)において、実線矢印で示すように、たとえばレーザーなどを照射することにより金属バンプ6を溶融させる。これにより、図4(c)に示すように、SAW素子1は接合金属としての金属バンプ6により収納室20内の基板5上に固定される。ここで、金属バンプ6の配置は、図4(a)に示す配置に限定されるものではなく、図4(b)においてレーザーの照射が可能な範囲であればよい。具体的には図4(a)に2本の二点鎖線で囲われた領域に金属バンプ6が配置されていればレーザーの照射が可能であり、適宜決定することができる。また、接合金属としての金属バンプ6の数量は適宜可能であり、一ヵ所で固定し、この固定によるSAW素子1への応力発生を抑制する構成としてもよい。
【0034】
その後、第1実施形態と同様にして、IDT電極11のバスバー12a,12bと、収納室20内の基板5上の内部接続端子24とを、ボンディングワイヤー4により電気的に接続させ、SAW素子1は内部接続端子24に電気的に接続される。そして、蓋体3は、抵抗溶接などの方法により封止接合部22に接合されることにより、収納室20は、SAW素子1を配置した状態で気密に封止される。このようにして、SAW共振子10を得る。本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、圧電基板15の裏面15bと基板5とが固定される接続端子としての金属パッド23に接続される接合金属としての金属バンプ6の数量により、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保したSAW共振子10を得ることができる。
【0035】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態について、図5を参照して説明する。
第3実施形態のSAW共振子10が、第2実施形態のSAW共振子10と相違する点は、パッケージ2の構成が異なる点である。第3実施形態のSAW共振子10は、パッケージ2の収納室20内の基板5上に金属パッドを備えない構成である。
【0036】
図5(a)に示すように、パッケージ2の基板5上に金属バンプ6を配置し、その金属バンプ6上にSAW素子1を配置する。第2実施形態と同様に、図5(b)に示すように、レーザーなどを照射することにより接合金属としての金属バンプ6を溶融させて、図5(c)に示すように、SAW素子1は接合金属としての金属バンプ6により収納室20内の基板5上に固定される。
ここで、金属バンプ6の配置は、図5(a)に示す配置に限定されるものではなく、図5(b)においてレーザーの照射が可能な範囲であればよい。具体的には図5(a)に2本の二点鎖線で囲われた領域に金属バンプ6が配置されていれば、レーザーの照射が可能であり、適宜決定することができる。また、接合金属としての金属バンプ6の数量は適宜可能であり、一ヵ所で固定し、この固定によるSAW素子1への応力発生を抑制する構成としてもよい。
【0037】
その後、第1実施形態と同様にして、IDT電極11のバスバー12a,12bと、収納室20内の基板5上の内部接続端子24とを、ボンディングワイヤー4により電気的に接続させ、SAW素子1は内部接続端子24に電気的に接続される。そして、蓋体3は、抵抗溶接などの方法により封止接合部22に接合されることにより、収納室20は、SAW素子1を配置した状態で気密に封止される。このようにして、SAW共振子10を得る。本実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0038】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態について、図6および図7を参照して説明する。
第4実施形態のSAW共振子10が、第1実施形態のSAW共振子10と相違する点は、SAW素子1aの構成と、パッケージ2の構成とが異なる点である。
【0039】
図6に示すように、第4実施形態のSAW共振子10は、SAW素子1aに貫通電極14a,14bを備えている。圧電基板15の主面15aから裏面15bにかけて貫通電極14a,14bを形成している。そして、貫通電極14aは、IDT電極11のバスバー12aと、金属層19aとに、電気的に接続されている。同様に、貫通電極14bは、IDT電極11のバスバー12bと、金属層19bとに、電気的に接続されている。金属層19a,19bは、互いに電気的に独立している。
【0040】
図7(a)および(b)に示すように、パッケージ2は、収納室20内の基板5上において、2個の内部接続端子24の間に凸部26が形成されている。そして、凸部26は、基板5および積層基板21などと同様に、酸化アルミニウムなどからなる絶縁性のセラミックスである。
【0041】
図7(c)に矢印(二点鎖線)で示すように、第1実施形態の図3と同様に、収納室20内の基板5上の2個の内部接続端子24表面に、たとえば紫外線照射またはプラズマ照射などする。これにより、接続端子としての内部接続端子24表面を活性化させる。その後、凸部26を用いて、SAW素子1aの接合金属としての金属層19a,19bと、内部接続端子24との位置合わせをしてSAW素子1aを配置する。そして、SAW素子1aは収納室20内の基板5上の内部接続端子24に、表面接合により固定される。これにより、IDT電極11は、貫通電極14a,14bを経由して内部接続端子24に電気的に接続される。
【0042】
その後、第1実施形態と同様にして、蓋体3は、抵抗溶接などの方法により封止接合部22に接合されることにより、収納室20は、SAW素子1aを配置した状態で気密に封止される。このようにして、SAW共振子10を得る。
【0043】
本実施形態によれば、第1〜第3実施形態と同様の効果を奏するとともに、接続端子としての内部接続端子24に接続される接合金属としての金属層19a,19bの数量により、寄生インピーダンスを調整された発振安定度の優れたSAW共振子10を提供することができる。
そして、ボンディングワイヤーを用いずに、貫通電極14a,14bおよび金属層19a,19bにより、SAW素子1aとパッケージ2の内部接続端子24とを電気的に接続させるので、収納室20内にボンディングワイヤーを配線させる空間を、第1〜第3実施形態の収納室内の容積に比べて省くことができ、パッケージ2を小型化および薄型化することができる。これにより、小型化および薄型化されたSAW共振子10を提供することができる。ボンディングワイヤーを用いないので、SAW共振子10の製造方法を簡略化できる。
【0044】
ここで、第4実施形態のSAW共振子10は、凸部26をSAW素子1aの接合金属としての金属層19a,19bと、接続端子としての内部接続端子24との位置合わせとして用いたが、これに限定されることなく位置合わせが可能な場合などにおいては、凸部26が形成されない構成であってもよい。
【0045】
以下、前述の実施形態におけるSAW素子およびパッケージの変形例、およびそれらとSAW素子の固定方法との組み合わせに関する変形例を記載する。そして、以下の変形例では、ボンディングワイヤーによる配線、および蓋体による接合および気密に封止されることに関しては、上述の実施形態と同様のため説明を省略する。
【0046】
(変形例1)
変形例1は、図8に示すように、図3に示したパッケージ2を用い、図6に示したSAW素子1aを用いたものである。
図8(a)に矢印(二点鎖線)で示すように、収納室20内の基板5上の2個の内部接続端子24表面に、第1実施形態(図3)および第4実施形態(図7参照)と同様に、たとえば紫外線照射またはプラズマ照射などする。これにより、内部接続端子24表面を活性化させる。その後、図8(b)に示すように、凸部26を用いて、SAW素子1aの接合金属としての金属層19a,19bと、接続端子としての内部接続端子24との位置合わせをしてSAW素子1aを配置する。そして、SAW素子1aは収納室20内の基板5上の内部接続端子24に、表面接合により固定される。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0047】
(変形例2)
変形例2は、図9に示すように、図7に示したパッケージ2を用い、図6に示したSAW素子1aに金属層19a,19bを備えていない。
SAW素子1aの基板5への固定方法および電気的な接続方法は、第2実施形態(図4参照)および第3実施形態(図5参照)と同様に、レーザーによるSAW素子1の固定方法および電気的な接続方法を用いる。これにより、第4実施形態と同様の効果を奏することができる。ここで、接合金属としての金属バンプ6の配置は、図9(a)に示す配置に限定されるものではなく、図9(b)においてレーザーの照射が可能な範囲であればよい。具体的には図9(a)に2本の二点鎖線で囲われた領域に金属バンプ6が配置されていれば、レーザーの照射が可能であり、適宜決定することができる。
【0048】
(変形例3)
変形例3は、図10に示すように、図3に示したパッケージ2に凸部26が形成され、図6に示したSAW素子1aに金属層19a,19bを備えていない。
SAW素子1aの基板5への固定方法および電気的な接続方法は、変形例2と同様である。これにより、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。ここで、金属バンプ6の配置は、図10(a)に示す配置に限定されるものではなく、図10(b)においてレーザーの照射が可能な範囲であればよい。具体的には図10(a)に2本の二点鎖線で囲われた領域に金属バンプ6が配置されていれば、レーザーの照射が可能であり、適宜決定することができる。
【0049】
(変形例4)
変形例4のSAW素子1bは、図11に示すように、図6に示したSAW素子1に、段差面15cを形成し、金属層が形成されていない。段差面15cは、圧電基板15の主面15aにおいて対向し、裏面15bとは異なる面上に形成されている。
図12に示すように、図7に示したパッケージ2に凸部26を備えていない。そして、SAW素子1bを基板5へ固定する方法および電気的に接続する方法は、第2実施形態(図4参照)および第3実施形態(図5参照)と同様に、レーザーによるSAW素子1の固定方法を用いる。これによれば、接合金属としての金属バンプ6が、裏面15bだけでなく、段差面15cおよび段差面15cと裏面15bとに接する面にも広がるので、固定面積を大きくすることができ、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保したSAW共振子10を得ることができる。
【0050】
(変形例5)
変形例5のSAW素子1bは、図13に示すように、図11に示したSAW素子1bを用いる。パッケージ2は第3実施形態(図5参照)と同様に、パッケージ2に金属パッドを備えていない。そして、SAW素子1bを基板5へ固定する方法は、第2実施形態(図4参照)および第3実施形態(図5参照)と同様に、レーザーによるSAW素子1の固定方法および電気的な接続方法を用いる。これにより、変形例4と同様に、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保したSAW共振子10を得ることができる。
【0051】
(変形例6)
変形例6のSAW素子1bは、図14に示すように、図11に示したSAW素子1bを用いる。変形例5(図13参照)のパッケージ2に、収納室20内の基板5上に凹部27を備えている。凹部27に金属バンプ6を配置する。その後、第2実施形態(図4参照)および第3実施形態(図5参照)と同様に、レーザーによるSAW素子1の固定方法を用いて、SAW素子1bを基板5へ固定する。これにより、変形例4および5と同様に、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保したSAW共振子10を得ることができる。
【0052】
(変形例7)
変形例7のSAW素子1bは、図15に示すように、図11に示したSAW素子1bを用いる。変形例6(図14参照)のパッケージ2において、収納室20内の基板5上に金属パッド23a、および凹部27に金属パッド23bを備えている。そして、SAW素子1bを基板5へ固定する方法は、第2実施形態(図4参照)および第3実施形態(図5参照)と同様に、レーザーによるSAW素子1の固定方法を用いる。これにより、変形例4〜6と同様に、接続強度および耐衝撃性の信頼性を確保したSAW共振子10を得ることができる。
【0053】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0054】
たとえば、接合金属としての金属層または金属バンプによりSAW素子を基板へ、固定する方法、または固定および電気的接続する方法のいずれか一つの方法で用いるとして上述したが、これに限るものではない。たとえば2ヵ所で固定のために接合金属としての金属層または金属バンプを用い、別の2ヵ所で固定および電気的接続のために接合金属としての金属層または金属バンプを用いるなどしてもよい。
【0055】
そして、金属層によりSAW素子が接合される収納室内の基板上に形成された内部接続端子および金属パッドは、1個または2個形成されている場合について説明したが、これに限るものではなく、複数(3個以上)形成されていてもよい。同様にして、金属層は、SAW素子の裏面の全面に1個形成された場合、およびSAW素子の裏面で2個に分割されて形成されている場合について説明したが、これに限るものではなく、金属層はSAW素子の裏面に複数(3個以上)形成されるとしてもよい。
【0056】
また、貫通電極が形成されたSAW素子(図6および図11参照)を用いて説明した実施形態および変形例のSAW共振子は、ボンディングワイヤーによりSAW素子の主面に形成されたIDT電極を、収納室内の基板上に形成された内部接続端子に電気的に接続させるとしてもよい。この場合、貫通電極は形成されていても、形成されていなくても、いずれでもよく、適宜決定することができる。
【0057】
そして、SAW素子とパッケージの基板との固定において、接合金属としての金属バンプを用いる場合、金属層が形成されていないSAW素子を用いたが、これに限るものではなく、金属層が形成されたSAW素子を用いてもよく、適宜決定することができる。
【0058】
SAWデバイスとしてSAW共振子を例に挙げて説明したがこれに限るものではなく、発振回路を備えたSAW発振器、またはモジュール化されたSAWモジュールであってもよい。そして、SAWモジュールは、圧電基板上にIDT電極を形成するだけでなく、反射電極を備えた構成であってもよい。また、IDT電極を2対以上備えた構成であってもよい。
【0059】
金属層、金属パッド、金属バンプ、または内部接続端子のいずれか1つを接合金属として用いるとして、前述の実施形態および変形例において説明したが、これに限るものではなく、たとえば接合金属として金属バンプおよび金属層、金属バンプおよび内部接続端子、または金属層および内部接続端子などの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,1a,1b…SAW素子、2…パッケージ、3…蓋体、4…ボンディングワイヤー、5…基板、6…金属バンプ、10…SAW共振子、11…IDT電極、12a,12b…バスバー、13a,13b…電極指、14a,14b…貫通電極、15…圧電基板、15a…圧電基板の主面、15b…圧電基板の裏面、15c…段差面、16…圧電層、17…中間層、18…基盤層、19,19a,19b…金属層、20…収納室、21…積層基板、22…封止接合部、23,23a,23b…金属パッド、24…内部接続端子、25…外部接続端子、26…凸部、27…凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の主面にIDT電極を備えた圧電素子と、
前記圧電素子を固定する基板と、
前記基板上に配置された接合金属とを備え、
前記圧電素子は、前記主面に対向する前記圧電基板の裏面と、前記基板とが、前記接合金属により固定されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスであって、
前記圧電素子は、前記主面から前記裏面にかけて前記圧電基板に形成された貫通電極を備え、
前記基板上に接続端子を備え、
前記貫通電極と前記接続端子とが前記接合金属により電気的に接続されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾性表面波デバイスであって、
前記接続端子は複数に区分されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項4】
請求項1または2に記載の弾性表面波デバイスであって、
前記圧電基板の裏面と、前記基板とが、前記接続端子により固定されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項5】
圧電基板の主面にIDT電極が形成された圧電素子を基板に固定する圧電素子の固定方法であって、
前記主面に対向する前記圧電基板の裏面と、前記基板とを、接合金属により固定することを特徴とする圧電素子の固定方法。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電素子の固定方法であって、
前記圧電素子は、前記主面から前記裏面にかけて前記圧電基板に形成された貫通電極を備え、前記基板上に接続端子を備え、前記貫通電極と前記接続端子とを前記接合金属により電気的に接続をすることを特徴とする圧電素子の固定方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の圧電素子の固定方法であって、
前記接続端子は複数に区分されていることを特徴とする圧電素子の固定方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の圧電素子の固定方法であって、
前記圧電基板の裏面と、前記基板とを、前記接続端子により固定することを特徴とする圧電素子の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−71693(P2011−71693A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220275(P2009−220275)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】