説明

弾性表面波デバイス、電子機器及びセンサー装置

【課題】動作温度範囲で優れた周波数温度特性と高いQ値とを同時に実現するSAWデバイスを提供する。
【解決手段】SAWデバイス11は、オイラー角(−1.5°≦φ≦1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)の水晶基板12の主面に、ストップバンド上端モードのSAWを励振するIDT13と、その両側に配置した一対の反射器14と、IDTの電極指15a,15b間に凹設した電極指間溝17と、反射器の導体ストリップ14a間に凹設した導体ストリップ間溝18とを有し、SAWの波長λと電極指間溝の深さGとが0.01λ≦Gを満足し、IDTのライン占有率ηと電極指間溝の深さGとが所定の関係式を満足し、IDTのライン占有率ηと反射器のライン占有率ηrとがη<ηrの関係にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(surface acoustic wave:SAW)を利用した共振子、発振器等の弾性表面波デバイス、SAWデバイスを備えた電子機器及びセンサー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイスは、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送の受信チューナー、同軸ケーブルまたは光ケーブル中を伝播する高周波信号や光信号の処理機器、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の電子機器や、圧力センサー、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置に広く利用されている。これらの機器・装置は、特に最近の情報通信の高速化によるリファレンスクロックの高周波化や装置筐体の小型化に伴い、装置内部での発熱の影響が大きくなっている。そのため、装置内部に搭載される電子デバイスは、動作温度範囲の拡大や高精度化が要求され、例えば屋外に設置される無線基地局のように低温から高温まで温度変化の激しい環境下で長期に亘って安定した動作が必要となっている。
【0003】
一般にSAW共振子等のSAWデバイスにおいて、周波数温度特性の変化には、SAWのストップバンドや使用する水晶基板のカット角、基板上に形成されるIDT(interdigital transducer:すだれ状トランスデューサ)の形態等が大きい影響を及ぼす。例えば、SAWの1波長当たり3本の電極指で構成される単位区間を圧電基板上に繰り返し配列したIDTを有し、SAWのストップバンドの上端モード、下端モードのそれぞれを励起させる反射反転型SAW変換器が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この反射反転型SAW変換器によりSAWフィルタを構成すれば、通過帯域近傍の高域側阻止域において高減衰量が実現できるとされている。
【0004】
また、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°、123°、0°)の所謂STカット水晶基板を用いた反射反転型SAW変換器が知られている(例えば、特許文献2を参照)。同特許文献には、ストップバンドの上端の共振を励振させることができ、ストップバンドの下端の共振を用いる場合よりも周波数温度特性が向上すると記載されている。更に、SAWにおけるストップバンドの上端モードの方が、ストップバンドの下端モードよりも周波数温度特性が良好であると報告されている(例えば、特許文献3〜6を参照)。
【0005】
特に特許文献3、4には、レイリー波を利用したSAW装置において良好な周波数温度特性を得るために、水晶基板のカット角を調整すると共に、IDT電極の基準化膜厚(H/λ)を0.1程度まで厚くすることが記載されている。特許文献3に記載のSAW共振子は、オイラー角(φ,θ,ψ)=(φ=0°、0°≦θ≦180°、0°<|ψ|<90°)の水晶基板上に、SAWの1波長当たり2本の電極指で構成される単位区間を繰り返し配列したシングル型IDT電極を有する。これにより、レイリー波をストップバンドの上限モードで励振させ、それを利用してSAW共振子の高周波化と良好な周波数温度特性を実現することができる。
【0006】
特許文献4には、前記シングル型IDT電極を有するSAW装置において、水晶基板をオイラー角(φ,θ,ψ)=(φ=0°、110°≦θ≦140°、38°≦|ψ|≦44°)に設定し、IDT電極の厚みH、IDT電極における電極指の幅d、IDT電極における電極指間のピッチP、及びSAWの波長λにより規定される基準化電極膜厚(H/λ)と基準化電極幅η(=d/P)との関係を、
H/λ≧0.1796η−0.4303η+0.2071η+0.0682
に設定することが開示されている。これによって、レイリー波をストップバンドの上限モードで強く励振させることができる。
【0007】
特許文献5には、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°,θ,9°<|ψ|<46°)、好ましくは(0°,95°<θ<155°,33°<|ψ|<46°)の水晶基板上にシングル型IDT電極を配置し、基準化電極膜厚(H/λ)を0.045≦H/λ≦0.085としたSAW素子が開示されている。これによって、レイリー波をストップバンドの上限モードで励振させ、良好な周波数温度特性を実現することができる。
【0008】
特許文献6には、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°123°,43.2°)の面内回転STカット水晶基板上に前記シングル型IDT電極を配置し、その基準化電極膜厚(H/λ)をH/λ=0.06、所謂6%λとすることによって、レイリー波をストップバンドの上限モードで励振させるSAW素子が開示されている。更にこのSAW素子は、IDT電極の電極指幅Ltと電極指ピッチPtとにより規定される標準化電極幅η(=Lt/Pt)を、0.5≦η≦0.7に設定することによって、常温(25℃)において最大830ppmの周波数偏差を実現することができる。
【0009】
他方、IDTを構成する電極指間及び反射器を構成する導体ストリップ間の水晶基板表面にグルーブ即ち溝を形成したSAW共振器が知られている(例えば、特許文献7及び非特許文献1を参照)。特許文献7には、STカットX伝搬水晶基板にIDT及び反射器をアルミ電極で構成し、かつ水晶基板表面のIDTを構成する電極指間及び反射器を構成する導体ストリップ間に対応する領域に溝を形成することにより、Q値が高く容量比が低くなり、共振抵抗の低いSAW共振器を実現できることが開示されている。更に同特許文献には、IDTの溝と反射器の溝とを同じ深さにした構造、及び反射器の溝をIDTの溝より深くした構造が記載されている。
【0010】
非特許文献1には、STカット水晶基板を用いたグループ型SAW共振器の特性が記載されている。その周波数温度特性は、SAW伝搬基板の電極で覆われていない水晶面に形成した溝の深さにより変化すること、及び、溝が深くなるに従って、上向き凸の2次曲線の頂点温度Tpが低くなっていくことが報告されている。
【0011】
このように水晶等の圧電基板に溝を形成して実効膜厚を調整することによって周波数を調整する方法は、当業者によく知られている(例えば、特許文献8乃至11を参照)。特許文献8記載のSAWデバイスは、IDTを形成した圧電基板の表面を、該圧電基板のエッチングレートがIDTのエッチングレートより大きくなる条件でエッチングし、その周波数を下降させるように微調整する。特許文献9乃至11においても、同様に圧電基板の表面をその上に形成したIDTをマスクとしてドライエッチングすることにより、SAWデバイスの周波数を低域側へシフトさせている。
【0012】
更に、トランスバーサル型SAWフィルタにおいて、IDT電極の電極指間の圧電基板表面をエッチング加工して溝を形成することにより見かけ上伝搬速度を小さくすることが知られている(例えば、特許文献12を参照)。これによって、SAWフィルタの基本設計を変更せずに、IDT電極の電極指ピッチを小さくでき、チップの小型化を実現することができる。
【0013】
また、SSBW(Surface Skimming Bulk Wave)と呼ばれるすべり波を励振するSAW共振器において、回転Yカット、カットアングル−43°乃至−52°、すべり波伝搬方向をZ’軸方向(オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°,38≦θ≦47,90°))の水晶基板に、基準化電極膜厚(H/λ)が2.0≦H/λ≦4.0%のIDT電極をアルミで形成することにより、三次曲線の周波数温度特性を実現し得ることが知られている(例えば、特許文献13を参照)。すべり波(SH波)はその振動エネルギーを電極直下に閉じ込めて圧電基板の表面直下を伝搬するので、SAWが基板表面に沿って伝搬するSTカット水晶SAWデバイスと比較して、反射器によるSAWの反射効率が悪く、小型化及び高いQ値を実現し難いという問題がある。
【0014】
この問題を解決するために、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°,−64°<θ<−49.3°,85°≦ψ≦95°)の回転Yカット水晶基板の表面にIDTとグレーティング反射器とを形成し、SH波を励振するSAWデバイスが提案されている(例えば、特許文献14を参照)。このSAWデバイスは、SAWの波長λで基準化される電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12に設定することによって、小型化、高いQ値及び優れた周波数安定性を実現している。
【0015】
更に、かかるSAWデバイスにおいて、電極膜厚が厚いことに起因して発生するストレスマイグレーションが原因となってQ値や周波数安定性が劣化するという問題を解決するために、IDTの電極指間の水晶基板に溝を形成することが提案されている(例えば、特許文献15を参照)。この溝の深さをHp、IDTの金属膜の膜厚をHmとしたとき、SAWの波長λで基準化した電極膜厚H/λを0.04<H/λ<0.12(ただし、H=Hp+Hm)の範囲と設定することにより、金属膜の見掛け上の膜厚を薄くできるので、通電時のストレスマイグレーションによる周波数変動を抑圧し、Q値が高く、周波数安定性の優れたSAWデバイスを実現できる。
【0016】
SAWデバイスの量産過程では、水晶基板の表面にエッチングでIDTの電極指を形成する際に、電極指の膜厚が厚いと、それに起因したサイドエッチングによりIDTのライン占有率(ラインスペース比)ηにばらつきを生じ易い。その結果、SAWデバイスの温度変化による周波数の変動量にばらつきが生じると、製品の信頼性、品質が損なわれる。この問題を解消するために、オイラー角(φ,θ,ψ)=(0°、95°≦θ≦155°、33°≦|ψ|≦46°)の面内回転STカット水晶基板を採用し、SAWのストップバンドの上限モードを励振させ、IDTの電極指間の水晶基板表面に電極指間溝を形成したSAWデバイスが知られている(例えば、特許文献16を参照)。
【0017】
また、SAWデバイスの周波数温度特性が動作温度範囲において二次曲線の場合、周波数変動幅の極小化や変曲点を実現することは困難である。そこで、三次曲線の周波数温度特性を得るために、LSTカットの水晶基板に空隙層と誘電体膜とを介してIDT電極を形成し、漏洩型SAWを励振させるようにしたSAW装置が提案されている(例えば、特許文献17を参照)。同特許文献には、レイリー波を用いたSAW装置において、三次曲線で示されるような周波数温度特性を実現するカット角の水晶基板は発見できなかったことが記載されている。
【0018】
更に、STカット水晶SAW共振子等において、その優れた周波数温度特性を劣化させることなくQ値を高くするために、水晶基板の表面にIDTと反射器とをSAWの位相速度の方向に対してパワーフロー角PFA±3°傾斜させた方向に沿って配置した傾斜型IDTが知られている(例えば、特許文献18,19を参照)。この傾斜型IDTからなるSAWデバイスは、SAWの位相の進行方向とその振動エネルギーの進行方向とをカバーするようにIDT及び反射器を配置することによって、SAWを反射器で効率良く反射できるので、エネルギーの閉じ込めを効率良く行い、Q値をより高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3266846号公報
【特許文献2】特開2002−100959号公報
【特許文献3】特開2006−148622号公報
【特許文献4】特開2007−208871号公報
【特許文献5】特開2007−267033号公報
【特許文献6】特開2007−300287号公報
【特許文献7】特公平2−7207号(特開昭57−5418号)公報
【特許文献8】特開平2−189011号公報
【特許文献9】特開平5−90865号公報
【特許文献10】特開平1−231412号公報
【特許文献11】特開昭61−92011号公報
【特許文献12】特開平10−270974号公報
【特許文献13】特公平1−34411号公報
【特許文献14】再公表WO2005/099089A1公報
【特許文献15】特開2006−203408号公報
【特許文献16】特開2009−225420号公報
【特許文献17】特許第3851336号公報
【特許文献18】特許第3216137号公報
【特許文献19】特開2005−204275号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】グルーブ形SAW共振器の製造条件と特性(電子通信学会技術研究報告MW82−59(1982))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、SAWデバイスの周波数温度特性には多くの要素が関係しており、その改善を図るために様々な工夫が行われている。特に、レイリー波を用いたSAWデバイスは、IDTを構成する電極指の膜厚を厚くすることが周波数温度特性の向上に寄与すると考えられている。単にIDTの電極膜厚を厚くするだけでは、通電時のストレスマイグレーションや、IDT形成時のサイドエッチングに起因したライン占有率の変動による周波数安定性の劣化等の問題が生じる。その対応策としては、水晶基板表面のIDTの電極指間に溝を形成することにより、電極膜厚を薄くしながらその実効膜厚を大きくして周波数の変動を抑制することが有効である。
【0022】
しかしながら、上述したSAWデバイスは、漏洩型SAWを励振させる特許文献13のSAW装置を除いて、いずれも動作温度範囲における周波数温度特性が二次曲線で示されるので、周波数変動幅を十分に小さくしたり変曲点を実現し得るまでは至っていない。そのため、最近のSAWデバイスに対する動作温度範囲の拡大や高精度化、温度変化の激しい環境下における長期の動作安定性等の要求に十分に対応することができない。
【0023】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、動作温度範囲において周波数変動量が極めて小さい優れた周波数温度特性を発揮し、温度が大きく変動するような環境下でも安定して動作する優れた耐環境特性を有し、高いQ値を実現し得る、共振子、発振器等のSAWデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願発明者は、上記目的を達成するために、面内回転STカット水晶基板を採用し、その表面にストップバンドの上端モードでSAWを励振するIDTを形成し、かつIDTを構成する電極指間の水晶基板表面を凹設して溝を形成したSAW共振子において、SAWの波長λ、溝の深さG、IDTの電極膜厚H、その電極指のライン占有率η等のパラメーターと周波数温度特性との関係を検証した。その結果、動作温度範囲において、周波数変動幅の極小化及び変曲点を実現し得る新規なSAW共振子を案出した。
【0025】
この新規な実施形態のSAW共振子(以下、本実施形態のSAW共振子という)は、その第1の態様において、オイラー角(−1.5°≦φ≦1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)の水晶基板上に設けられ、ストップバンド上端モードのSAWを励振するIDTと、該IDTを構成する電極指間に位置する水晶基板を窪ませた電極指間溝を有し、
SAWの波長をλ、電極指間溝の深さをGとした場合に、0.01λ≦Gの関係を満たし、
かつ、IDTのライン占有率をηとした場合に、電極指間溝の深さGとライン占有率ηとが
【数1】

…(1)、及び
【数2】

…(2)
の関係を満たすことを特徴とする。
【0026】
本実施形態のSAW共振子は、第2の態様において、前記第1の態様に加えて、電極指間溝の深さGが、0.01λ≦G≦0.0695λの関係を満たすことを特徴とする。電極指間溝の深さGをこの範囲に設定することによって、動作温度範囲内(例えば、−40℃〜+85℃)における周波数変動量を小さく抑制でき、かつ電極指間溝の深さに製造上のばらつきが生じても、個々のSAW共振子間における共振周波数のシフト量を補正可能な範囲に抑えることができる。
【0027】
更に本実施形態のSAW共振子は、第3の態様において、前記第1又は第2の態様に加えて、IDTの電極膜厚をHとした場合に、0<H≦0.035λの関係を満たすことを特徴とする。これにより、動作温度範囲内で良好な周波数温度特性が実現され、電極膜厚を大きくしたときに生じ得る耐環境特性の劣化が予め防止される。
【0028】
また、本実施形態のSAW共振子は、第4の態様において、前記第3の態様に加えて、ライン占有率ηが、
【数3】

…(3)
の関係を満たすことを特徴とする。これにより、周波数温度特性の二次温度係数を小さく抑制することができる。
【0029】
更にまた、本実施形態のSAW共振子は、第5の態様において、前記第3又は第4の態様に加えて、電極指間溝の深さGと電極膜厚Hとの和が、0.0407λ≦G+Hの関係を満たすことを特徴とする。これにより、電極指間に溝を設けずにストップバンドの下端モードの共振を用いた従来の場合よりも高いQ値が得られる。
【0030】
図1は、本実施形態のSAW共振子の典型例を示している。図1(A)に示すように、本実施形態のSAW共振子1は、矩形の水晶基板2と、該水晶基板の主面にそれぞれ形成されたIDT3と1対の反射器4,4とを有する。
【0031】
水晶基板2には、オイラー角(−1.5°≦φ≦−1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)で表される面内回転STカット水晶基板を使用する。ここで、オイラー角について説明する。オイラー角(0°,0°,0°)で表される基板は、Z軸に垂直な主面を有するZカット基板となる。ここで、オイラー角(φ,θ,ψ)のφはZカット基板の第1の回転に関するものであり、Z軸を回転軸とし、+X軸から+Y軸側へ回転する方向を正の回転角度とした第1回転角度である。オイラー角のθはZカット基板の第1の回転後に行う第2の回転に関するものであり、第1の回転後のX軸を回転軸とし、第1の回転後の+Y軸から+Z軸へ回転する方向を正の回転角度とした第2の回転角度である。圧電基板のカット面は、第1回転角度φと第2回転角度θとで決定される。オイラー角のψはZカット基板の第2の回転後に行う第3の回転に関するものであり、第2の回転後のZ軸を回転軸とし、第2の回転後の+X軸から第2の回転後の+Y軸側へ回転する方向を正の回転角度とした第3回転角度である。SAWの伝搬方向は、第2の回転後のX軸に対する第3回転角度ψで表される。
【0032】
面内回転STカット水晶基板は、図2に示すように、水晶の直交する3つの結晶軸、即ち電気軸、機械軸及び光学軸をそれぞれX軸、Y軸及びZ軸で表したとき、Y軸に垂直なXZ面5aを、X軸を回転軸として+Z軸から−Y軸方向に角度θ´(°)回転させた、座標軸(X,Y´,Z´)のY´軸に垂直なXZ´面を有するウエーハ5から切り出される。水晶基板2は、更にY´軸を回転軸として+X軸から+Z´軸方向を正として角度+ψ(又は−ψ)(°)回転させた新たな座標軸(X´,Y´,Z”)に沿ってウエーハ5から切り出して個片化される。このとき、水晶基板2はその長辺(又は短辺)をX´軸方向又はZ”軸方向のいずれに沿って配置してもよい。尚、角度θ´とオイラー角におけるθとは、θ´=θ−90°の関係にある。
【0033】
IDT3は、それぞれ複数の電極指6a、6bからなり、かつそれらの基端部をバスバー7a,7bで接続した1対の櫛歯状電極3a,3bを有する。各電極指6a、6bは、その延長方向が前記IDTにより励振されるSAWの伝搬方向X´と直交する向きに配置されている。一方の櫛歯状電極3aの電極指6aと他方の櫛歯状電極3bの電極指6bとは、交互にかつ所定の間隔を開けて一定のピッチで配列されている。図1(B)に示すように、電極指6a、6b間に露出する水晶基板2の表面には、該表面をエッチング等で削除することによって、それぞれ一定深さの電極指間溝8が凹設されている。
【0034】
1対の反射器4,4は、SAWの伝搬方向X´に沿ってIDT3の外側に該IDTを両側から挟むように配置されている。各反射器4は、それぞれSAWの伝搬方向X´に一定のピッチで配列された複数の導体ストリップ4a,4aを有する。前記各導体ストリップは、IDT3の前記各電極指と同様に、その延長方向がSAWの伝搬方向X´と直交する向きに配置されている。図1(B)に示すように、導体ストリップ4a,4a間に露出する水晶基板2の表面には、該表面をエッチング等で削除することによって、それぞれ一定深さの導体ストリップ間溝9が凹設されている。
【0035】
本実施形態において、電極指6a、6b及び導体ストリップ4a,4aは、例えばAlやAlを主体とする合金を用いた金属膜で同じ膜厚Hに形成され、総称して電極指ということができる。電極指間溝8と導体ストリップ間溝9とは、同じ深さGに形成される。IDT3の最も外側の電極指6a(又は6b)とそれに隣り合う反射器4,4の前記導体ストリップとの間も、同様に水晶基板表面を削除して、前記導体ストリップ間溝と同じ深さの溝が凹設されている。
【0036】
このように構成したSAW共振子1は、水晶基板2のX´軸方向及びY´軸方向の両方に振動変位成分を有するRayleigh型(レイリー型)のSAWを励起する。上述したオイラー角の水晶基板2は、SAWの伝播方向が水晶の結晶軸であるX軸からずれているので、ストップバンド上端モードのSAWを励起することが可能である。
【0037】
尚、上述した水晶基板2のオイラー角(φ,θ,ψ)は、次のようにして選択した。一般にSAW共振子の周波数温度特性は、次式で表される。
Δf=α×(T−T0)+β×(T−T0)
ここで、Δfは温度Tと頂点温度T0間の周波数変化量(ppm)、αは1次温度係数(ppm/℃)、βは2次温度係数(ppm/℃2)、Tは温度、T0は周波数が最大となる温度(頂点温度)である。2次温度係数βの絶対値を最小に、好ましくは0.01(ppm/℃)以下に、より好ましくは略零になるように設定して、周波数温度特性が三次曲線を示すようにすれば、広い動作温度範囲でも周波数変動量を小さくして高い周波数安定性が得られる。
【0038】
先ず、水晶基板2のオイラー角を(0°,123°,ψ)とし、β=±0.01(ppm/℃)となるライン占有率ηが得られるときのオイラー角ψと電極指間溝の深さGとの関係をシミュレーションした。ここで、オイラー角ψは、二次温度係数βの絶対値が0.01(ppm/℃)となるように適宜選択した。その結果、上記条件下で二次温度係数βを−0.01≦β≦+0.01にし得るオイラー角ψの範囲を43°<ψ<45°と定めることができた。
【0039】
次に、水晶基板2をカット角及びSAW伝搬方向をオイラー角表示で(0,θ,ψ)とし、電極指間溝の深さGを0.04λ、電極指の膜厚Hを0.02λ、ライン占有率ηを上記(3)式に従って0.6383として、オイラー角θに関する二次温度係数βの変化をシミュレーションした。ここで、オイラー角ψは上述した43°<ψ<45°の範囲内で、角度θの設定角度に基づいて二次温度係数βの絶対値を最小とするように適宜選択した。その結果、オイラー角θが117°≦θ≦142°の範囲内にあれば、電極指の膜厚H、電極指間溝の深さG、及びライン占有率ηを変化させても、二次温度係数βの絶対値が0.01(ppm/℃)の範囲内にあることを確認した。
【0040】
次に、水晶基板2をオイラー角表示で(φ,123°,43.77°)とし、電極指間溝の深さGを0.04λ、電極指の膜厚Hを0.02λ、ライン占有率ηを0.65として、オイラー角φに関する二次温度係数βの変化をシミュレーションした。その結果、オイラー角φが−1.5°≦φ≦+1.5°の範囲内にあれば、二次温度係数βの絶対値が0.01(ppm/℃)の範囲内にあることを確認した。
【0041】
更に、動作温度範囲(−40℃〜+85℃)における周波数変動量が最小となる非常に望ましいオイラー角θとψとの関係をシミュレーションにより求めた。この場合も、電極指間溝の深さG及び電極指の膜厚Hは、それぞれG=0.04λ、H=0.02λとした。その結果、オイラー角ψは、上述したオイラー角θの範囲でその増加と共に三次曲線を描くように増加した。この関係は、次式で近似することができる。
【数4】

これにより、オイラー角ψは、オイラー角θの下限値θ=117°においてψ=42.79°となり、上限値θ=142°においてψ=49.57°となる。従って、オイラー角ψは、117°≦θ≦142°の範囲で、42.79°≦ψ≦49.57°に設定することができる。
【0042】
このように水晶基板2のオイラー角を設定することによって、本実施形態のSAW共振子1は、2次温度係数βの絶対値が0.01(ppm/℃)以下の優れた周波数温度特性を実現することができる。
【0043】
本実施形態のSAW共振子1について、以下の条件で周波数温度特性をシミュレーションした。
−本実施形態のSAW共振子1の基本データ
H:0.02λ
G:変化
IDTライン占有率η:0.6
反射器ライン占有率ηr:0.8
オイラー角:(0°,123°,43.5°)
IDT対数:120
電極指交差幅:40λ(λ=10μm)
反射器本数(片側あたり):60
電極指の傾斜角度:なし
【0044】
このシミュレーション結果を図3に示す。同図から分かるように、周波数温度特性は動作温度範囲(−40〜+85℃)において略3次曲線を示しており、周波数変動幅を20ppm以内という極めて小さな変動量に抑圧することできた。
【0045】
図3の周波数温度特性を示すSAW共振子1について、周波数、等価回路定数、及び静特性をまとめると、以下の表1になる。
【表1】

ここで、Fは周波数、QはQ値、γは容量比、CIはCI(クリスタルインピーダンス:Crystal Impedance)値、Mは性能指数(フィギュアオブメリット:Figure of Merit)である。
【0046】
SAW共振子1は、IDT3のストップバンド上端の周波数ft2と、反射器4のストップバンド下端の周波数fr1及びストップバンド上端の周波数fr2とが、fr1<ft2<fr2の関係を満たすように設定するのが好ましい。図4は、周波数に関するIDT3及び反射器4のSAW反射特性を示している。同図のように、周波数ft2を周波数fr1と周波数fr2との間に設定すると、周波数ft2において反射器4の反射係数がIDT3の反射係数よりも大きくなる。その結果、IDT3から励振されたストップバンド上端モードのSAWは、反射器4からIDT3側により高い反射係数で反射されることになる。従って、SAWの振動エネルギーを効率良く閉じ込めることができ、低損失なSAW共振子1を実現できる。
【0047】
また、SAW共振子1のQ値について、電極指6a、6bの高さ即ち膜厚Hと電極指間溝8の深さGとにより形成される段差の大きさ(G+H)との関係をシミュレーションにより検証した。比較のため、電極指間に溝を設けずかつストップバンド上端モードの共振を用いる従来のSAW共振子について、以下の条件でQ値と電極指の高さ即ち膜厚との関係をシミュレーションした。
【0048】
−従来のSAW共振子の基本データ
H:変化
G:ゼロ(無し)
IDTライン占有率η:0.4
反射器ライン占有率ηr:0.3
オイラー角(0°,123°,43.5°)
IDT対数:120
電極指交差幅:40λ(λ=10μm)
反射器本数(片側あたり):60
電極指の傾斜角度:なし
【0049】
このシミュレーション結果を図5に示す。同図において、太線は本実施形態のSAW共振子1を、細線は従来のSAW共振子を示している。同図から分かるように、本実施形態のSAW共振子1は、段差(G+H)が0.0407λ(4.07%λ)以上の領域において、従来のSAW共振子よりも高いQ値を得ることができる。
【0050】
更に、本願発明者は、本実施形態のSAW共振子1について、Q値とIDT及び反射器のライン占有率η,ηrとの関係をシミュレーションにより検証した。尚、IDT3のライン占有率ηは、図1(C)、(D)に示すように、電極指幅Lを電極指ピッチλ/2(=L+S)で除した値である。また、反射器4のライン占有率ηrはIDT3のライン占有率ηと同じ値にした。
【0051】
尚、図1(D)は、IDT3の電極指6a、6b及び電極指間溝8をフォトリソグラフィ技法とエッチング技法とにより製造したときに形成されるであろう台形状の断面において、IDT3のライン占有率ηを特定する方法を説明するためのものである。この場合、ライン占有率ηは、電極指間溝8の底部から該電極指間溝の深さGと電極膜厚Hとの合計値(G+H)の1/2となる高さにおいて測定した電極指幅Lと電極指間溝幅Sとに基づいて算出する。
【0052】
このシミュレーションにおいて、水晶基板2のオイラー角を(0°,123°,ψ)とした。IDT3の電極指6a、6b及び反射器4の導体ストリップ4a,4aはアルミニウムを使用し、それらの膜厚HをSAWの波長λの2%、即ちH=0.02λ(2%λ)とした。電極間溝8及び導体ストリップ間溝9の深さGをSAWの波長λの4.5%、即ちG=0.045λ(4.5%λ)とした。従って、隣り合う電極指6a、6b及び導体ストリップ4a,4a間の段差、即ちSAWの波長λの6.5%(G+H=0.065λ(6.5%λ))が、前記電極指及び導体ストリップの実効膜厚となる。
【0053】
IDT3のライン占有率ηを0.625,0.80,0.725に設定し、それぞれについて周波数温度特性を計算した。図6(A)は、η=0.625の場合の周波数温度特性を示している。この場合、動作温度範囲(−40℃〜+85℃)において、三次曲線の極めて優れた周波数温度特性が得られ、周波数変動量が±8ppm程度に非常に小さく抑制されている。
【0054】
図6(B)は、η=0.80の場合の周波数温度特性を示している。図6(C)は、η=0.725の場合の周波数温度特性を示している。いずれの場合も、動作温度範囲(−40℃〜+85℃)において、周波数温度特性は二次曲線を示し、周波数変動量が約40ppm又は約35ppmと非常に大きく、図6(A)の場合より劣化していることが分かる。これは、図6(B)及び(C)のライン占有率η=0.80,0.725が、電極指間溝の深さG及びSAWの波長λとの関係において、上述した(1)式及び(2)式を満足していないことが原因と考えられる。
【0055】
そこで、本願発明者は、IDT(及び反射器)のライン占有率η(ηr)に関するQ値の変化をシミュレーションした。このシミュレーション結果を図7に示す。同図から分かるように、ライン占有率ηが大きくなるに連れて、Q値は大きくなる。しかしながら、上述したように優れた周波数温度特性を発揮するη=0.625の場合、Q値は2000で極めて小さく、発振器として安定した発振動作を行わせることは期待できない。他方、η=0.725の場合、Q値は最大値13500となり、発振器として安定した発振動作が可能であるが、上述したように良好な周波数温度特性が得られない。
【0056】
このよう本実施形態のSAW共振子は、優れた周波数温度特性と高いQ値とを同時に実現することができず、発振器として使用することが困難である。この新たな問題を解消するために、本願発明者は、IDT及び反射器のライン占有率と周波数温度特性及びQ値との関係について更に検討を進めた結果、優れた周波数温度特性と高いQ値とを同時に実現し得ることを見出し、本発明を想到したものである。
【0057】
本発明のSAWデバイスは、オイラー角(−1.5°≦φ≦1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)の水晶基板と、
該水晶基板の主面に設けられた複数の電極指からなり、ストップバンド上端モードの弾性表面波を励振するIDTと、
弾性表面波の伝播方向に沿ってIDTを挟むようにその両側に配置した、それぞれ複数の導体ストリップからなる一対の反射器と、
IDTの隣り合う電極指間の水晶基板の表面に凹設した電極指間溝と、
反射器の隣り合う導体ストリップ間の水晶基板の表面に凹設した導体ストリップ間溝とを有し、
弾性表面波の波長λと電極指間溝の深さGとが、0.01λ≦Gの関係を満足し、
IDTのライン占有率ηと電極指間溝の深さGとが、
【数5】

及び、
【数6】

の関係を満足し、
IDTのライン占有率ηと反射器のライン占有率ηrとが、η<ηrの関係を満足することを特徴とする。
【0058】
このようにIDT及び反射器のライン占有率を設定することによって、反射器に反射効率の高い導体ストリップが配置され、反射器間に挟まれたIDTにSAWの振動エネルギーを効率良く閉じ込めることができる。その結果、広い動作温度範囲において周波数変動量が極めて小さい優れた周波数温度特性と低インピーダンス化を確保維持しながら、高いQ値の発振安定性に優れたSAWデバイスを実現することができる。
【0059】
或る実施例では、反射器のライン占有率ηrが、0.70≦ηr≦0.95を満足することによって、後述するようにQ値が10000以上で良好なSAWデバイスを得ることができる。
【0060】
別の実施例では、IDTの電極指のピッチPtと反射器の導体ストリップのピッチPrとが0.995≦Pt/Pr≦1.010の関係を満足することによって、両ピッチが異なることに起因するバルク放射を最小限に抑制でき、高いQ値を得ることができる。
【0061】
この場合に更に、IDTの電極指のピッチPtと反射器の導体ストリップのピッチPrとが0.997≦Pt/Pr≦1.0075の関係を満足することによって、両ピッチの差をより小さくできるので、更に高いQ値が得られる。
【0062】
また、或る実施例では、IDTのライン占有率ηが、
【数7】

を満足することにより、周波数温度特性の二次温度係数をより小さく抑制できるので、周波数変動量をより小さくしかつより優れた三次曲線の周波数温度特性が得られる。
【0063】
また別の実施例では、電極指間溝の深さGと電極指の膜厚Hとの和が、0.0407λ≦G+Hを満足することにより、ストップバンド上端モードの共振を用いた場合に、IDTの電極指間に溝を設けずにストップバンド下端モードの共振を用いる従来のSAW共振子従来の場合よりも高いQ値が得られる。
【0064】
更にまた別の実施例では、電極指及び導体ストリップに直交する第1の方向と水晶基板の電機軸とのなす角度が水晶基板のオイラー角ψであり、IDT及び反射器の少なくとも一部が、第1の方向と角度δをもって交差する第2の方向に配置され、角度δが、水晶基板のパワーフロー角±1°の範囲内であることにより、更にQ値の向上を図ることができる。
【0065】
また、別の実施例では、IDTを駆動するための発振回路を更に有することにより、広い動作温度範囲で周波数変動量が極めて小さく、CI値が低く、かつ発振安定性に優れたSAW発振器を得ることができる。
【0066】
本発明の別の側面によれば、上述した本発明のSAWデバイスを備える電子機器及びセンサー装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】(A)図は本実施形態のSAW共振子の構成を示す平面図、(B)図はその部分拡大縦断面図、(C)図は(B)図の部分拡大図、(D)図はフォトリソグラフィ及びエッチング技術により形成される(C)図の溝部の断面形状を示す図。
【図2】図1のSAW共振子の水晶基板を模式的に示す説明図。
【図3】図1のSAW共振子の周波数温度特性を示す線図。
【図4】図1のSAW共振子のIDT及び反射器のSAW反射特性を示す線図。
【図5】図1のSAW共振子の電極指間の段差とQ値との関係を示す線図。
【図6】(A)〜(C)図は図1のSAW共振子のIDTのライン占有率η=0.625,0.80,0.725における周波数温度特性をそれぞれ示す線図。
【図7】図1のSAW共振子のIDTのライン占有率ηとQ値との関係を示す線図。
【図8】(A)図は本発明によるSAWデバイスの第1実施例を示す平面図、(B)図はそのVIII−VIII線における部分拡大縦断面図。
【図9】第1実施例のIDTのライン占有率ηと電気機械結合係数との関係を示す線図。
【図10】第1実施例のIDTのライン占有率ηと周波数ドリフト量との関係を示す線図。
【図11】第1実施例の反射器のライン占有率ηrとQ値との関係を示す線図。
【図12】第1実施例の周波数温度特性を示す線図。
【図13】第2実施例のSAWデバイスの電極指と導体ストリップとのピッチ比Pt/Prに関するQ値の変化を示す線図。
【図14】(A)、(B)図は傾斜型IDTを有する第3実施例のSAWデバイスをそれぞれ示す平面図。
【図15】(A)図は本発明によるSAW発振器を示す平面図、(B)図はそのXV−XV線における縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下に、添付図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。尚、添付図面において、同一又は類似の構成要素には同一又は類似の参照符号を付して示す。
【0069】
図8(A)(B)は、本発明によるSAW共振子の第1実施例を示している。本実施例のSAW共振子11は、矩形の水晶基板12と、該水晶基板の主面にそれぞれ形成されたIDT13と1対の反射器14,14とを有する。水晶基板12は、図1に関連して上述したSAW共振子1の水晶基板2と同じオイラー角(−1°≦φ≦1°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)の水晶基板を使用する。
【0070】
IDT13は、それぞれ複数の電極指15a、15bからなり、かつそれらの基端部をバスバー16a,16bで接続した1対の櫛歯状電極13a,13bを有する。各電極指15a、15bは、その延長方向が前記IDTにより励振されるSAWの伝搬方向と直交する向きに配置されている。一方の櫛歯状電極13aの電極指15aと他方の櫛歯状電極13bの電極指15bとは、交互にかつ所定の間隔を開けて一定のピッチで配列されている。電極指15a、15b間に露出する水晶基板12の表面には、該表面をエッチング等で削除することによって、それぞれ一定深さの電極指間溝17が凹設されている。
【0071】
1対の反射器14,14は、SAWの伝搬方向に沿ってIDT13の両側に該IDTを挟むように配置されている。各反射器14は、それぞれSAWの伝搬方向に一定のピッチで配列された複数の導体ストリップ(電極指)14a,14aを有する。前記各導体ストリップは、IDT13の前記各電極指と同様に、その延長方向がSAWの伝搬方向と直交する向きに配置されている。導体ストリップ14a,14a間に露出する水晶基板12の表面には、該表面をエッチング等で削除することによって、それぞれ一定深さの導体ストリップ間溝18が凹設されている。
【0072】
電極指15a、15b及び導体ストリップ14a,14aは、例えばAlやAlを主体とする合金を用いた金属膜で同じ膜厚Hに形成される。電極指間溝17と導体ストリップ間溝18とは、同じ深さGに形成される。各反射器14,14の最も内側の前記導体ストリップとそれに隣り合うIDT13の最も外側の電極指15a(又は15b)との間も、同様に水晶基板表面を削除して、前記導体ストリップ間溝と同じ深さの溝が凹設されている。
【0073】
このように構成することによって、SAW共振子11は、水晶基板12のX´軸方向及びY´軸方向の両方に振動変位成分を有するRayleigh型(レイリー型)のSAWを励起する。上述したオイラー角の水晶基板12を用いることによって、SAWの伝播方向が水晶の結晶軸であるX軸からずれているので、ストップバンド上端モードのSAWを励起することができる。
【0074】
図8(B)に示すように、IDT13のライン占有率ηは、電極指15a、15bの線幅をLt、電極指間溝17の幅をStとして、η=Lt/(Lt+St)で表される。反射器14のライン占有率ηrは、導体ストリップ14aの線幅をLr、導体ストリップ間溝18の幅をSrとして、ηr=Lr/(Lr+Sr)で表される。
【0075】
ここで、IDT13の電極指のピッチPt及び反射器14の導体ストリップのピッチPrについて説明する。交差する1対の櫛歯状電極13a,13bの各電極指ピッチPtと、電極指の線幅Lt及びb電極指間の幅(即ち、電極指間溝のSAW伝搬方向の幅)Stとの関係は、Lt+St=dtとしたとき、Pt=2×dt=2×(Lt+St)となる。即ち、SAW伝搬方向に見て、隣り合う電極指13aと電極指13bとの中心間距離(所謂、ラインアンドスペース)は、dt=Lt+Stとなる。従って、電極指ピッチPt=2×dt=λとなる。
【0076】
反射器14は、SAW伝搬方向に見て、隣り合う導体ストリップ14aの中心間距離が、dr=Lr+Srとなる。この中心間距離drは、反射器14を伝搬するSAWの波長λの1/2、即ちdr=λ/2にする。従って、導体ストリップ14aのピッチPrは、Pr=2×dr=2×(Lr+Sr)となる。
【0077】
IDT13のライン占有率ηと反射器14のライン占有率ηrとは、η<ηrの関係に設定される。これにより、SAW共振子11は、動作温度範囲において周波数変動量が極めて小さい優れた周波数温度特性と、高いQ値とを同時に実現することができる。
【0078】
(実施例1)
SAW共振子11の仕様を次のように設定した。
水晶基板寸法:5.0×1.5(mm)
オイラー角:(0°,123°,ψ)
IDT対数:180
反射器本数(片側あたり): 78
【0079】
IDT13は次のように設計した。
SAW波長λ:7.9(μm)、
電極材料:Al
電極指膜厚H:0.02λ(2%λ)=0.1580(μm)
電極指ピッチPt:λ/2=3.95(μm)、
電極指線幅Lt:0.625Pt=2.4688(μm)
(ライン占有率η:0.625)
【0080】
反射器14は次のように設計した。
電極材料:Al
導体ストリップ膜厚H:2%λ(0.02λ)=0.1580(μm)
導体ストリップピッチPr:λ/2=3.95(μm)、
導体ストリップ線幅:0.725Pr=2.8638(μm)
(ライン占有率ηr:0.725)
【0081】
電極指間溝17は次のように設計した。
深さ:0.045λ(4.5%λ)=0.3555(μm)
電極指実効膜厚:0.065λ(6.5%λ)=0.5135(μm)
【0082】
このように設計したSAW共振子11について、IDT13のライン占有率ηに関する電気機械結合係数K2(%)の変化をシミュレーションした。この結果を図9に示す。同図から、IDT13は、ライン占有率η=0.60〜0.66において、高い電気機械結合係数が得られることを確認できた。特にη=0.625において、電気機械結合係数が最大となるため、SAW共振子の低インピーダンス化即ち低CI化をも達成することができる。従って、これを発振器に用いた場合には、消費電力の低減に貢献する。
【0083】
また、IDT13のライン占有率ηに関する周波数変動量(ppm)をシミュレーションした。この結果を図10に示す。同図から、IDT13は、ライン占有率η=0.60〜0.66において、周波数変動量が25ppm以下の優れた周波数温度特性が得られることを確認できた。また同図は、IDT13のライン占有率ηが0.60〜0.66の範囲から外れると、周波数変動量が25ppmを超えてしまい、周波数温度特性が大きく劣化することを示している。
【0084】
次に、反射器14のライン占有率ηrに関するQ値の変化をシミュレーションした。この結果を図11に示す。同図から、反射器14は、ライン占有率ηrが0.70≦ηr≦0.95の範囲で、Q値が10000以上となることを確認できた。従って、このSAW共振子11を発振器に使用すれば、安定した発振動作が可能である。また同図は、反射器14のライン占有率ηrが0.70より小さくなると、Q値が10000以下に急峻に低下することを示している。
【0085】
更に、IDT13のライン占有率η=0.625かつ反射器14のライン占有率ηr=0.725のSAW共振子11について、動作温度範囲における周波数温度特性をシミュレーションにより検証した。この結果を図12に示す。同図から分かるように、本実施例では、−40℃〜+85℃の動作温度範囲で周波数変動幅が10ppm程度と極めて小さく、優れた周波数温度特性を有することが確認された。
【0086】
このように本実施例のSAW共振子11は、η=0.625、ηr=0.725において、共振周波数が400MHz、Q値が14000、CI値が14Ωであり、いずれも良好であった。従って、これを発振器として用いた場合、優れた発振安定性が得られることを確認できた。
【0087】
上述した実施例1の検証結果を綜合すると、本発明のSAW共振子11は、IDTのライン占有率には周波数温度特性及び電気機械結合係数に優れるη=0.60〜0.66を採用し、これに組み合わせて、反射器のライン占有率にはQ値に優れる0.70≦ηr≦0.95を採用することが好ましい。このように、反射器14に反射効率の高い電極即ち導体ストリップ14aを配置することによって、反射器間に挟まれたIDT13にSAWの振動エネルギーを効率良く閉じ込めることができる。これにより、優れた周波数温度特性及び低インピーダンス化を実現しながら、高いQ値の発振安定性に優れたSAW共振子を得ることができる。
【0088】
本発明によるSAW共振子11の第2実施例は、IDT13のライン占有率η及び反射器14のライン占有率ηrをそれぞれ上述した範囲に設定した第1実施例において、より高いQ値が得られるようにするものである。そのため、本実施例では、IDT13と反射器14との電極ピッチ比、即ちIDT13の電極指ピッチPtを反射器14の導体ストリップのピッチPrで除した値(Pt/Pr)をPt/Pr≒1.0に設定する。これにより、SAW共振子11のQ値を更に高く、より良好にすることができる。
【0089】
図1のSAW共振子11について、以下の条件で、Pt/Prに関するQ値の変化をシミュレーションにより検証した。
オイラー角:(0°,123°,43.80°)
IDT対数:180
反射器本数(片側あたり):78
電極指膜厚H:0.02λ(2%λ)
電極指間溝深さG:0.045λ(4.5%λ)
IDTライン占有率η:0.625
反射器ライン占有率ηr:0.725
【0090】
このシミュレーション結果を図13に示す。同図から分かるように、Pt/Pr=0.9950〜1.010の範囲で、Q>10000の高いQ値が得られ、Pt/Pr=0.9975〜1.0075の範囲で、Q>12000のより高いQ値が得られ、更にPt/Pr=0.999〜1.005の範囲では、Q≒14000のQ値最大値が得られる。
【0091】
上述したように、IDT対数を180、反射器本数を78とした場合、η=ηr=0.625では、Q値が4000程度しか得られないのに対し、η=ηr=0.725では、Q値が13500に改善される。他方、η=0.625かつηr=0.725では、Pt/Pr≒1.00とすることによって、13500の高いQ値が13500が得られた。これは、反射器のライン占有率ηrで決定される反射帯域が、IDTのライン占有率η=0.625で決定される共振周波数に略一致するとき、そのライン占有率ηr≒0.725であり、このとき、Pt/Pr≒1.0としてIDTの電極指ピッチと反射器の導体ストリップのピッチとを略同一にすると、両ピッチが異なることに起因するバルク放射を最小限に抑制できるので、高いQ値が得られたと考えられる。
【0092】
更に本願発明者は、電極指膜厚H、電極指間溝の深さG、及びオイラー角θをパラメーターとして、周波数変動量が少ない3次曲線の優れた周波数温度特性と高いQ値とを実現し得るIDTライン占有率η、反射器ライン占有率ηr、及びIDT/反射器ピッチ比Pt/Prと、その場合に得られるQ値とを算出した。その結果を以下の表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
一般にQ値は、SAWエネルギーの閉じ込め効果によって略決定され、言い換えれば反射器の反射効率即ち反射器の構造(反射器本数、実効膜厚、電極線幅、密度等)によって決定される。従って、水晶基板のカット角、例えばオイラー角θを多少変化させても、Q値にはほとんど影響しないはずである。表2から分かるように、オイラー角θを上述した優れた周波数温度特性が得られる角度範囲内で117°、123°、142°に変化させたが、η<ηrかつPt/Pr=1.00において、全ての場合においてQ値は10000以上であり、Q値への影響が小さいことを確認できた。
【0095】
また、一般に反射器の反射効率は、反射器の密度即ち反射器を構成する水晶の厚さ(G)と電極膜厚(H)との比率に強く影響されるが、水晶とAlとは比重の差が小さく、それらの比率を変えても反射効率に大きく影響しないことを、表2は実証している。このように、本発明のSAWデバイスは、η<ηrの関係を満足するように設定することにより、η及びηr以外の諸条件の影響をほとんど受けることなく、Q値を飛躍的に改善できることが裏付けられた。
【0096】
図14(A)、(B)は、傾斜型IDTを有する本発明によるSAW共振子の第3実施例をそれぞれ示している。図14(A)のSAW共振子21は、第1実施例と同様にオイラー角(−1.5°≦φ≦1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)で表される水晶基板22の主面に、傾斜型IDT23と1対の反射器24,24とを有する。水晶基板22は、その長手方向が、IDT23により励振されるSAWの位相速度の伝搬方向であるX’軸に対してエネルギーの伝搬方向であるパワーフロー角(PFA)δ°だけ傾けた向きに沿って配向されている。
【0097】
IDT23は、それぞれ複数の電極指25a,25bからなりかつそれらの基端部をバスバー26a,26bで接続した1対の櫛歯状電極23a,23bを有する。1対の反射器24,24は、SAWの伝搬方向に沿ってIDT23の両側に該IDTを挟むように配置され、それぞれSAWの伝搬方向に配列された複数の導体ストリップ24a,24aを有する。電極指25a、25b及び導体ストリップ24aは、その延長方向がパワーフロー角(PFA)δ°だけ傾いたX’軸に直交する向きに配置されている。
【0098】
水晶基板22の電極指25a、25b間に露出する表面には、第1実施例と同様に電極指間溝が凹設されている。導体ストリップ24a,24a間の水晶基板22の表面にも、同様に導体ストリップ間溝が凹設されている。
【0099】
このようにIDT及び反射器の少なくとも一部が、X’軸方向とパワーフロー角δをもって交差する方向に配置されることによって、SAWデバイス21は第1実施例と同様の作用効果を奏すると共に、Q値を更に高めることができる。これにより、より低損失なSAW共振子が実現される。
【0100】
図14(B)のSAW共振子21は、図14(A)とは異なる構成の傾斜型IDT23と1対の反射器24,24とを水晶基板22の主面に有する。水晶基板22は、その長手方向が、IDT23により励振されるSAWの位相速度の伝搬方向であるX’軸に沿って配向されている。
【0101】
IDT23は、それぞれ複数の電極指25a,25bからなりかつそれらの基端部をバスバー26a,26bで接続した1対の櫛歯状電極23a,23bを有する。1対の反射器24,24は、SAWの伝搬方向に沿ってIDT23の両側に該IDTを挟むように配置され、それぞれSAWの伝搬方向に配列された複数の導体ストリップ24a,24aを有する。電極指25a、25b及び導体ストリップ24aは、その延長方向がX’軸に直交する向きに配置されると共に、バスバー26a,26bが、X’軸からパワーフロー角(PFA)δ°だけ傾けた向きに配向されている。
【0102】
水晶基板22の電極指25a、25b間に露出する表面には、第1実施例と同様に電極指間溝が凹設されている。導体ストリップ24a,24a間の水晶基板22の表面にも、同様に導体ストリップ間溝が凹設されている。
【0103】
本実施例のSAW共振子21も、このようにIDT及び反射器の少なくとも一部が、X’軸方向とパワーフロー角δをもって交差する方向に配置されることによって、良好な周波数温度特性及び高いQ値を実現する作用効果を奏すると共に、Q値を更に高めることができる。これにより、より低損失なSAW共振子が実現される。
【0104】
本発明は、上述した本発明のSAW共振子と発振回路とを組み合わせて構成される発振器にも適用することができる。図15(A)、(B)は、そのような本発明によるSAW発振器の一実施例の構成を示している。本実施例のSAW発振器31は、本発明によるSAW共振子32と、該SAW共振子を駆動制御する発振回路としてIC(integrated circuit)33と、これらを収容するパッケージ34とを備える。SAW共振子32及びIC33は、パッケージ34の底板34a上に表面実装されている。
【0105】
SAW共振子32は、第1実施例のSAW共振子11と同様の構成を有し、第1実施例と同じオイラー角で表示される水晶基板35と、その表面に形成された1対の櫛歯状電極36a,36bからなるIDTと1対の反射器37,37とを有する。IC33の上面には、電極パッド38a〜38fが設けられている。パッケージ34の底板34a上には、電極パターン39a〜39gが形成されている。SAW共振子32の櫛歯状電極36a,36b及びIC33の電極パッド38a〜38fは、それぞれボンディングワイヤ40,41により対応する電極パターン39a〜39gと電気的に接続されている。このようにSAW共振子32及びIC33を搭載したパッケージ34は、その上部に接合されたリッド42により気密に封止されている。
【0106】
本実施例のSAW発振器31は、本発明のSAW共振子を備えることによって、広い動作温度範囲で周波数変動量が極めて小さい優れた周波数温度特性を有すると共に、高いQ値を有するので、安定した発振動作が可能であり、更に低インピーダンス化による消費電力の低減を実現することができる。その結果、近年の情報通信の高速化に基づく高周波化及び高精度化の要求に対応し、低温から高温まで温度が大きく変動するような環境下でも長期に安定して動作する優れた耐環境特性を備えたSAW発振器が得られる。
【0107】
本発明は、上記実施例に限定されるものでなく、その技術的範囲内で様々な変形又は変更を加えて実施することができる。例えば、IDTの電極構造は、上記実施例以外に、公知の様々な構成を採用することができる。また、本発明は、上述したSAW共振子及びSAW発振器以外の様々なSAWデバイスに同様に適用することができる。更に、本発明のSAWデバイスは、例えば携帯電話、ハードディスク、パーソナルコンピューター、BS及びCS放送用の受信チューナー、同軸ケーブルや光ケーブル中を伝搬する高周波信号や光信号用の各種処理装置、広い温度範囲で高周波・高精度クロック(低ジッタ、低位相雑音)を必要とするサーバー・ネットワーク機器、無線通信用機器等の様々な電子機器、各種モジュール装置や、圧力センサー、加速度センサー、回転速度センサー等の各種センサー装置にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
1,11,21,21,32…SAW共振子、2,12,22,22,35…水晶基板、3,13,23,23…IDT、3a,3b,13a,13b,23a,23b,23a,23b,36a,36b…櫛歯状電極、4,14,24,24,37…反射器、4a,4a,24a,24a…導体ストリップ、5…ウエーハ、5a…面、6a,6b,15a,15b,25a,25b,25a,25b…電極指、7a,7b,16a,16b,26a,26b,26a,26b…バスバー、8,17…電極指間溝、9,18…導体ストリップ間溝、31…SAW発振器、33…IC、34…パッケージ、34a…底板、38a〜38f…電極パッド、39a〜39g…電極パターン、40,41…ボンディングワイヤ、42…リッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイラー角(−1.5°≦φ≦1.5°,117°≦θ≦142°,42.79°≦|ψ|≦49.57°)の水晶基板と、
前記水晶基板の主面に設けられた複数の電極指からなり、ストップバンド上端モードの弾性表面波を励振するIDTと、
前記弾性表面波の伝播方向に沿って前記IDTを挟むようにその両側に配置した、それぞれ複数の導体ストリップからなる一対の反射器と、
前記IDTの隣り合う前記電極指間の前記水晶基板の表面に凹設した電極指間溝と、
前記反射器の隣り合う前記導体ストリップ間の前記水晶基板の表面に凹設した導体ストリップ間溝とを有し、
前記弾性表面波の波長λと前記電極指間溝の深さGとが、0.01λ≦Gの関係を満足し、
前記IDTのライン占有率ηと前記電極指間溝の深さGとが、
【数8】

及び、
【数9】

の関係を満足し、
前記IDTのライン占有率ηと前記反射器のライン占有率ηrとが、η<ηrの関係を満足することを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記反射器のライン占有率ηrが、0.70≦ηr≦0.95を満足することを特徴とする請求項1記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記IDTの前記電極指のピッチPtと前記反射器の前記導体ストリップのピッチPrとが、0.995≦Pt/Pr≦1.010の関係を満足することを特徴とする請求項1または2記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
前記IDTの前記電極指のピッチPtと前記反射器の前記導体ストリップのピッチPrとが、0.997≦Pt/Pr≦1.0075の関係を満足することを特徴とする請求項3記載の弾性表面波デバイス。
【請求項5】
前記IDTのライン占有率ηが、
【数10】

を満足することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項6】
前記電極指間溝の深さGと前記電極指の膜厚Hとの和が、0.0407λ≦G+Hを満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項7】
前記電極指及び前記導体ストリップに直交する第1の方向と前記水晶基板の電機軸とのなす角度が前記オイラー角ψであり、
前記IDT及び反射器の少なくとも一部が、前記第1の方向と角度δをもって交差する第2の方向に配置され、
前記角度δが、前記水晶基板のパワーフロー角±1°の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項8】
前記IDTを駆動するための発振回路を更に有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の弾性表面波デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを備えることを特徴とするデンサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−60422(P2012−60422A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201753(P2010−201753)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】