説明

弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法及び弾性表面波デバイスの製造方法並びに弾性表面波デバイス。

【課題】弾性表面波デバイスの中心周波数を容易に調整することができると共にばらつきの低減が可能な弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を提供する。
【解決手段】弾性表面波デバイスが形成された基板上に均等な間隔で測定点を設ける第1ステップと、測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定する第2ステップと、周波数調整領域を露出する開口部を有するマスクを用いて、当該周波数調整領域の周波数を調整する第3ステップと、所望の周波数特性が得られるまで第2ステップと第3ステップとを繰り返す第4ステップとから、概略構成されている弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法及び弾性表面波デバイスの製造方法並びに弾性表面波デバイスの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスは、周波数フィルタとして広く利用されている。このSAWフィルタは小型、軽量という特徴をもち、その製造プロセスには半導体デバイスの製造に用いられるフォトリソグラフィ技術を利用できるため量産性にも優れている。
【0003】
また、近年では、その共振周波数をより狭帯域化した水晶基板を用いたフィルタが開発されている。この高周波狭帯域フィルタは、水晶基板上のSTW(Surface Transverse Wave)を利用した高Q共振器フィルタであり、従来のデバイスに比べて高速化、高周波化、超狭帯域化が達成されている。
【0004】
しかしながら、このSTWデバイスでは、高いQ値、狭い通過帯域幅のため、電極指線幅、電極膜厚等の出来上がり寸法ばらつきが問題となった。特に電極膜厚がばらつくことにより、中心周波数がずれる場合がある。そのため、所望の中心周波数や通過帯域幅が得られなくなり、製造歩留まりを大きく低下させるという問題があった。
【0005】
そこで、弾性表面波デバイスの上記のような中心周波数のずれを調整して製造歩留まりを改善する方法が提案されている(特許文献1及び2参照)。具体的に、特許文献1に記載の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法は、電極上に自然酸化膜厚以上の酸化膜を予め形成し、RF測定により中心周波数測定を行い、目的の周波数が得られる膜厚まで酸化膜をエッチングするように構成されている。このように、酸化膜を除去すると共振周波数が高くなるため、中心周波数を調整することができる。
一方、特許文献2に記載の周波数調整方法は、共振器型弾性表面波共振子上に絶縁膜を被着する構成を有している。このように、共振子上に絶縁膜を被着すると共振周波数が低周波側へ移動するため、中心周波数を調整することができる。
【0006】
また、従来の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法について図面を参照しながら具体的に説明する。図5は、従来の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示すフローチャートである。この従来の中心周波数調整方法は、弾性表面波デバイスが形成された基板全面に例えば酸化シリコン等からなる保護膜を全面に形成し、この保護膜をドライエッチング等によって除去することで周波数を上昇させて中心周波数を調整する方法である。
【0007】
図5に示すように、先ず、ステップS5−1に示す条件設定を行う。この条件設定において、測定ポイント及び目標中心周波数を決定する。ここで、測定ポイントは、基板上に面付けされたデバイスの数量によって例えば30〜100ポイント程度を選出する。一方、目標中心周波数は、基板上に面付けされたデバイスの周波数分布及び検査規格等によって決定する。
【0008】
次に、ステップS5−2に示す前測定を行う。この前測定は、上記測定ポイントのデバイスの中心周波数を測定し、その平均値を記録するものである。そして、上記平均値と上記目標中心周波数とを比較して、同等でなければ、ステップS5−3において全数調整を行う。一方、上記平均値と上記目標中心周波数とが同等である場合には、後述するステップS5−5に示す全数測定を行う。
【0009】
ステップS5−3に示す全数調整では、基板上に形成された保護膜全体をエッチングして周波数を高周波側にシフトさせる。その後、ステップS5−4に示すサンプル測定を行う。このサンプル測定では、上記測定ポイントのデバイスの中心周波数を測定し、その平均値を記録する。そして、上記平均値が上記目標中心周波数の値と同等であれば、ステップS5−5に示す全数測定を実施する。なお、上記平均値が目標中心周波数の値と同等でなければ、再度ステップ5−3の全数調整を行う。最後に、ステップS5−5の全数測定において、基板上に面付けされた弾性表面波デバイスの全ての周波数を測定して合否判定を行うものである。
【特許文献1】特開2000−156620号公報
【特許文献2】特開平8−46467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2に記載の中心周波数調整方法並びに図5に示した従来の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法では、基板全体を一括して中心周波数の調整を行うため、中心周波数の平均値の調整は可能であるが、標準偏差(中心周波数のばらつき)を改善することができないという問題があった。すなわち、図6に示すように、周波数調整前の周波数分布プロファイルP1と調整後の周波数分布プロファイルP2とを比較すると、調整前の中心周波数yを目標中心周波数xに調整することは可能であるが、ばらつきを改善して周波数の規格範囲(x−d〜x+d)内とすることができなかった。さらに、近年では、高Q値化あるいは狭通過帯域化されているため、周波数の規格範囲が一層厳しくなっており、歩留まりの改善が十分ではないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、弾性表面波デバイスの中心周波数を容易に調整することができると共にばらつきの低減が可能な弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を提供することを目的とする。
また、上記中心周波数調整方法を用いることにより歩留まりを向上可能な弾性表面波デバイスの製造方法及び当該製造方法によって製造される弾性表面波デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
すなわち、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法は、基板上に形成された弾性表面波デバイスの中心周波数を調整する方法であって、弾性表面波デバイスが形成された基板上に均等な間隔で測定点を設ける第1ステップと、前記測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定する第2ステップと、前記周波数調整領域を露出する開口部を有するマスクを用いて、当該周波数調整領域の周波数を調整する第3ステップと、所望の周波数特性が得られるまで前記第2ステップと前記第3ステップとを繰り返す第4ステップとを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法は、前記周波数を調整する方法が、前記弾性表面波デバイス上に形成された保護膜をエッチングする又は前記保護膜上にさらに保護膜を被着する処理であることが好ましい。
さらに、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法は、前記マスクの前記開口部の形状が、開口部を有するベースマスクと前記ベースマスクの前記開口部の形状を調整する調整片とを用いて調整可能であることが好ましい。
【0014】
本発明の弾性表面波デバイスの製造方法は、上述の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を用いていることを特徴とする。
また、本発明の弾性表面波デバイスは、上記弾性表面波デバイスの製造方法を用いて製造されたことを特徴とする。
【0015】
本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、基板上に均等な間隔で設けられた測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定し、この周波数調整領域の周波数を、マスクを用いて調整するステップを繰り返して中心周波数を調整する構成を有している。このように周波数の調整が必要な周波数調整領域に対して繰り返し周波数の調整ができるため、基板上の弾性表面波デバイスの中心周波数を容易に調整することができると共にばらつきを低減することができる。
【0016】
また、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、周波数調整領域に対して、弾性表面波デバイス上に形成された保護膜をエッチングすることにより中心周波数を高周波側に、又はさらに保護膜を被着することにより中心周波数を低周波側に容易に調整することができる。
【0017】
さらに、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、マスクの開口部の形状をベースマスクと調整片とを組み合わせることによって容易に調整することができる。これにより、周波数調整領域の形状に合わせて個々にマスクをつくる必要がないため、コスト削減が可能となり生産性を高めることができる。
【0018】
また、本発明の弾性表面波デバイスの製造方法によれば、上述の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を用いているため、周波数特性に対して特に歩留まりを向上することができる。また、本発明の弾性表面波デバイスによれば、上記弾性表面波デバイスの製造方法を用いているため、歩留まりが高く、周波数特性に優れた弾性表面波デバイスを提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、弾性表面波デバイスの中心周波数を容易に調整することができると共に周波数のばらつきを低減可能な弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を提供することができる。
また、上記中心周波数調整方法を用いることにより、歩留まりを向上可能な弾性表面波デバイスの製造方法及び当該製造方法によって製造される弾性表面波デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照しながら説明する。
尚、以下の図1〜図4は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の基板及び弾性表面波デバイスの寸法関係とは異なる場合がある。
【0021】
図1は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示すフローチャートである。また、図2は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示す模式図である。さらに、図3は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示す分布図である。
本実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法は、弾性表面波デバイスが形成された基板上に均等な間隔で測定点を設ける第1ステップと、この測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定する第2ステップと、周波数調整領域を露出する開口部を有するマスクを用いて、当該周波数調整領域の周波数を調整する第3ステップと、所望の周波数特性が得られるまで上記第2ステップと上記第3ステップとを繰り返す第4ステップとから概略構成されている。
【0022】
より具体的には、図2(1)に示すように、本実施形態の中心周波数調整方法に用いる基板1には、例えば約1000〜2000個の弾性表面波デバイス(以下、単にデバイスと記す)2が一括して形成されると共に当該基板1上に面付けされている。そして、デバイス2上には、このデバイス2の周波数を調整するための図示しない保護膜が形成されている。
【0023】
ここで、基板上のデバイス間の周波数のばらつきは、デバイス間の電極の線幅及び厚み等のばらつきに起因する場合が多い。また、デバイス上に周波数調整用の保護膜が設けられている場合には、保護膜が厚くなると低周波側に、薄くなると高周波側に周波数が移動(シフト)することが知られている。一般的には、電極の線幅等の調整と比較して保護膜の膜厚調整の方が容易であるため、基板上のデバイス間の周波数ばらつきには、保護膜の膜厚の調整による最適化が適用されている。
【0024】
保護膜の材質には、例えば、酸化シリコン等の絶縁物質を適用することができる。また、保護膜の成膜方法は、スパッタ等の公知の成膜方法を用いることができる。そして、基板1に面付けされたデバイス2上に、例えば約200〜500Å程度の膜厚に形成されている。このように、基板1上のデバイス2の周波数は、周波数調整用の保護膜によって目標中心周波数よりも低周波側に一括して調整されている。そして、上記基板1を用いて、以下の手順に従って中心周波数を調整する。
【0025】
(条件設定)
先ず、図1中のステップS1−1に示す条件設定を行う。この条件設定では、測定点の選定、目標中心周波数及び良品周波数範囲の設定を行う。
測定点は、基板1上に面付けされたデバイス2の数量及び周波数分布等によって、この基板1上を分割した各ブロック(図2参照)を代表するデバイスを例えば約30〜100程度選出する。なお、新規な製品の場合には、一度全デバイスを測定して最適な測定点の位置及び間隔を決定することが好ましい。また、周波数測定を接触式の測定で行う場合に、デバイス2への周波数測定用プローブの接触回数が制限されることがある。この場合には、測定点に実製品デバイスを適用するのではなく、周波数測定専用に設けたダミーデバイスを適用してもよい。このようにして、弾性表面波デバイス2が形成された基板1上に均等な間隔で測定点を設ける(第1ステップ)。
【0026】
また、目標中心周波数及び良品周波数範囲は、製品の仕様によって個別に決定される。例えば、図3に示すように、製品規格がx±d(Hz)である仕様の場合には、目標中心周波数x、良品周波数範囲をx−d〜x+dと設定することができる。
【0027】
(前測定)
次に、図1中のステップS1−2に示す前測定を行う。前測定は、基板1上の各ブロックを代表する上記測定点の周波数を測定して、中心周波数、上限値、下限値、良品ブロック数及び良品ブロック位置を記録する。この前測定の結果、良品周波数範囲外である測定点を含むブロック(以下、規格外ブロックという)が周波数の調整が必要な領域(周波数調整領域)である。
【0028】
例えば、図3中のプロファイル(1)に示すように、全ての測定点の周波数が良品周波数範囲外である場合には、図2(1)に示すように、全ての規格外ブロック2Aが周波数調整領域となる。この場合は、図1中のステップS1−3に示す全数調整を行う。
一方、基板上に良品周波数範囲内である測定点を含むブロック(以下、規格内ブロック
という)が存在する場合には、後述するステップS1−5に示すマスキング調整を行う。
【0029】
(全数調整)
ステップS1−3に示す全数調整は、デバイス上に形成された保護膜をエッチングして、基板上の全てのデバイスの周波数を一括して調整するステップである。ここで、保護膜のエッチングは、ドライエッチング等公知の手法を用いることができる。また、エッチング量は、処理時間及び電力によって制御されるが、この処理時間及び電力に対する膜厚及び周波数の関係については事前に条件出しを行って確認しておくことが好ましい。
より具体的には、全数調整は、図3中に示す全数調整前のプロファイル(1)の上限値が良品周波数範囲の上限値であるx+dを超えないように周波数を一括調整する。
【0030】
(第1サンプル測定)
次に、図1中のステップS1−4に示す第1サンプル測定を行う。第1サンプル測定は、上記測定点の周波数を測定し、中心周波数、上限値、下限値、良品ブロック数及び良品ブロック位置を記録する。この第1サンプル測定の結果、基板上に規格内ブロックが存在する場合には、図1中のステップS1−5に示すマスキング調整を行う。一方、基板上に規格内ブロックが存在しない場合には、再度ステップS1−3の全数調整を実施する。
【0031】
具体的には、図2(1)に示すように、全てのブロックが規格外ブロック2Aである基板1に対して全数調整を行う。ここで、保護膜が基板1の中央部分で厚く、基板1の周辺部分で薄くなるような同心円状の膜厚分布を有する場合、全数調整後の第1サンプル測定の結果は、図(2−a)に示すように、基板1の周辺部分が規格内ブロック2Bとなる。
【0032】
また、図3に示すように、前測定の結果を示すプロファイル(1)と第1サンプル測定の結果を示すプロファイル(2)とを比較すると、全数調整によって保護膜の膜厚が基板1上で均一に薄くなったため、中心周波数が高周波側にシフトしている。そして、プロファイル(2)の上限値が良品周波数範囲の上限値であるx+dを超えないように調整されている。しかしながら、全数調整では、基板1上のデバイス2間の周波数ばらつきは改善されない。
【0033】
なお、図2(2−a)に示すように、この第1サンプル測定結果で示された規格外ブロック2Aの集合領域がステップS1−5のマスクキング調整における周波数調整領域2aとなる。このようにして、測定点の弾性表面波デバイス2の周波数を測定して周波数調整領域を決定する(第2ステップ)。
【0034】
(マスキング調整)
次に、図1中のステップS1−5に示すマスキング調整は、周波数調整領域を露出する開口部を有するマスクを用いて、周波数調整領域の周波数を調整する(第3ステップ)。すなわち、規格内ブロックをマスクで覆い、このマスクの開口部から露出する規格外ブロックの集合である周波数調整領域の保護膜をエッチングすることによってデバイスの周波数を調整するものである。
【0035】
マスクの材質は、特に限定されるものではないが、保護膜をエッチングする際にマスク自体が損傷し、基板上に異物が付着しない材質が好ましい。例えば、保護膜の材質が酸化シリコンであり、この保護膜をドライエッチングする場合、マスクの材質として水晶、クォーツ、シリコン等を例示することができる。また、マスクの開口部の形状は、前測定、第1サンプル測定及び後述する第2サンプル測定の結果により、周波数調整領域の形状(輪郭)に合わせて適宜最適形状を選択することが好ましい。本実施形態では、シリコンウェハーにレーザーを用いて開口部を設けてマスクを作成している。さらに、マスクと基板との位置合せ方法は、特に限定されるものではなく、デバイスサイズや必要な位置合せ精度に応じて適宜選択することができる。例えば、マスクと基板とが対応する場所に位置合せ用のマークを設けて、この位置合せ用マークを用いてマスクと基板とを位置合せすることができる。
【0036】
具体的には、図2(2−a)に示すような周波数調整領域2aを有する基板1に対して、図2(2−b)に示すような上記周波数調整領域2aに対応する開口部3aを有するマスク3Aを用いてマスキング調整を行う。すなわち、基板1とマスク3Aとを位置合せをして重ねた後に、開口部3aから露出する周波数調整領域2aのデバイス2の保護膜をエッチングする。また、保護膜のエッチングは、周波数調整領域2aの測定点の上限値が良品周波数範囲の上限値であるx+dを超えないように調整する。
【0037】
(第2サンプル測定)
次に、図1中のステップS1−6に示す第2サンプル測定を行う。第2サンプル測定は、上記第1サンプル測定と同様にして行う。この第2サンプル測定の結果、基板上に規格外ブロックが存在する場合には、再度ステップS1−5に示すマスキング調整を実施する。一方、基板上に規格外ブロックが存在しない場合には、後述するステップS1−7の全数測定を実施する。
【0038】
具体的には、図2(3−a)に示すように、マスキング調整によって基板1上に規格内ブロック2Bの範囲が拡大する。
また、図3に示すように、第1サンプル測定の結果を示すプロファイル(2)と第2サンプル測定の結果を示すプロファイル(3)とを比較すると、マスキング調整によって中心周波数が高周波側にシフトすると共にばらつきが改善されている。これは、マスキング調整が、プロファイル(2)中の良品周波数範囲の下限値であるx−d未満のデバイスについてのみ周波数調整を行ったためである。
【0039】
なお、図2(3−a)に示すように、この第2サンプル測定結果で示された規格外ブロック2Aの集合領域が再マスクキング調整における新たな周波数調整領域2bとなる。このようにして、測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定する(第2ステップ)。
【0040】
(再マスキング調整及び再サンプル測定)
図2(3−a)及び図3中のプロファイル(3)に示すように、第2サンプル測定の結果、基板1上には規格外ブロック2Aが存在するため、再度ステップS1−5に示すマスキング調整を行う。具体的には、図2(3−a)に示すような新たな周波数調整領域2bを有する基板1に対して、図2(3−b)に示すような上記周波数調整領域2bに対応する開口部3bを有するマスク3Bを用いてマスキング調整を行う。また、保護膜のエッチングは、周波数調整領域2bの測定点の上限値が良品周波数範囲の上限値であるx+dを超えないように調整する。その後、再度第2サンプル測定を実施する。
【0041】
また、図3に示すように、第2サンプル測定の結果を示すプロファイル(3)と再マスキング調整後の第2サンプル測定の結果を示すプロファイル(4)とを比較すると、再マスキング調整によって中心周波数がさらに高周波側にシフトする。さらに、再マスキング調整後のプロファイル(4)では、ばらつきが改善されて全ての測定点の周波数が良品周波数範囲となった。これにより、図2(4)に示すように、基板1上の全面に規格内ブロック2Bが形成されることとなる。
【0042】
このように、上記ステップS1−6(第2ステップ)と上記ステップS1−5(第3ステップ)とを所望の周波数特性が得られるまで繰り返す(第4ステップ)。これにより、ほぼ全ての測定点を良品周波数範囲内に調整することができる。但し、何度もマスキング調整とサンプル測定とを繰り返すと調整時間がかかると共に製造コストが上昇してしまう場合がある。したがって、繰り返し回数は生産性を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0043】
また、上述したようにマスキング調整を複数回実施する場合、規格外ブロック2Aの集合である周波数調整領域の形状が異なるため、開口部の形状が異なるマスクを予め数種類用意しておくことが好ましい。
【0044】
ところで、図2で説明したように保護膜の膜厚分布は必ずしも同心円状になるとは限らない。この保護膜の膜厚分布は、成膜方法や成膜条件によって異なり、例えば蒸着装置を用いて保護膜を成膜する場合には、傾斜(グラディエーション)の膜厚分布となる場合がある。したがって、上述したようにステップS1−5のマスキング調整において、周波数調整領域の形状と対応する開口部を有するマスクを複数用意することが困難な場合がある。
【0045】
そこで、マスクの開口部の形状は、開口部を有するベースマスクとこのベースマスクの開口部の形状を調整する調整片とを用いて調整可能であることが好ましい。すなわち、ステップS1−5のマスキング調整において規格外ブロックの保護膜をドライエッチングすることにより周波数を調整する場合、先ず、周波数調整領域の形状に近い開口部を有するベースマスクを選択する。そして、この開口部から露出されている規格内ブロックを覆うように調整片を重ねたり組み合わせたりして所望の形状の開口部を形成する。なお、ベースマスクと調整片とを重ねることにより段差が生じる場合があるが、基板との間に隙間が生じた場合であっても問題なく保護膜をドライエッチングすることができる。
【0046】
マスクの開口部の形状の調整方法について、図4を用いて具体的に説明する。図4は、本発明を適用した一実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法に用いるマスクを示す模式図である。
図4(1−a)に示すように、規格外ブロック2Aと規格内ブロック2Bとの分布が傾斜の場合には、図4(1−b)に示すように、開口部3cを有するベースマスク3Cと板状の調整片4Aとを組み合わせて対応することができる。
また、図4(2−a)に示すように、規格外ブロック2Aと規格内ブロック2Bとの分布がアイランド形状の場合には、図4(2−b)に示すように、開口部3aを有するベースマスク3A(図2(2−b)と同一)と浮島形状の調整片4Bとを組み合わせて対応することができる。
【0047】
(全数測定)
最後に、図1中のステップS1−7に示す全数測定を行う。全数測定は、基板上に面付けされた弾性表面波デバイス全ての周波数を測定して、個々のデバイスについて合否判定を行うものである。
【0048】
以上の手順に従って中心周波数を調整することにより、従来の調整方法と比較して弾性表面波デバイスの中心周波数を容易に調整することができると共に周波数のばらつきを低減することができる。そして、ステップS1−1において測定点を多く設定すると共に、ステップS1−5及びステップS1−6の繰り返し回数を増やすことにより、理論的には周波数規格に対して100%の歩留まりとすることができる。
【0049】
しかしながら、本実施形態では周波数調整用の保護膜の膜厚(例えば500Å)以上は処理できないので、実際には保護膜の膜厚による周波数の調整可能範囲が存在する。また、弾性表面波デバイスには、周波数以外の特性にもそれぞれ規格があるため、例えば500Å以上の膜厚を最初に設けて周波数のみ調整すれば良いというものではない。このように、保護膜の膜厚による調整可能範囲から逸脱するデバイスは、周波数規格に対して不良品となる。
【0050】
また、デバイスの中心周波数を調整した後に、基板のダイシング等の公知の実装工程を経ることによって弾性表面波デバイスを製造することができる。このように、本実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を適用した弾性表面波デバイスの製造方法によれば、周波数規格に対する歩留まりを改善することができる。
【0051】
以上説明したように本実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、基板1上に均等な間隔で設けられた測定点の周波数を測定して周波数調整領域2a(2b,2c)を決定し、この周波数調整領域2a(2b,2c)の周波数を、マスク3を用いて調整するステップを繰り返して中心周波数を調整する構成を有している。このように周波数規格の範囲から外れた領域(範囲外ブロック2A)に対して繰り返し周波数の調整ができるため、基板1上の弾性表面波デバイス2の中心周波数を容易に調整することができると共にばらつきを低減することができる。
【0052】
また、本実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、周波数調整領域2a(2b,2c)に対して、弾性表面波デバイス2上に形成された保護膜をエッチングすることにより中心周波数を高周波側に容易に調整することができる。
【0053】
さらに、本実施形態の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法によれば、マスク3の開口部の形状をベースマスク3C(3A)と調整片4A(4B)とを組み合わせることによって容易に調整することができる。これにより、周波数調整領域の形状に合わせて個々にマスクをつくる必要がないため、コスト削減が可能となって生産性を高めることができる。
【0054】
また、本実施形態の弾性表面波デバイスの製造方法によれば、上述の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を用いているため、周波数特性に対して特に歩留まりを向上することができる。また、本実施形態の弾性表面波デバイスによれば、上記弾性表面波デバイスの製造方法を用いているため、歩留まりが高く、周波数特性に優れた弾性表面波デバイスを提供することができる。
【0055】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述の実施形態において、弾性表面波デバイスの周波数調整方法を、基板上に形成された保護膜上にさらに保護膜を被着する方法とすることができる。あるいは、保護膜をエッチングする方法及び保護膜を被着する方法を併用することも可能である。このように、基板上に形成された保護膜をエッチングすることにより中心周波数を高周波側に、保護膜を被着することにより中心周波数を低周波側に容易に調整することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、保護膜のエッチングにマスクを用いてドライエッチングする方法を適用しているが、公知のレジスト及びフォトリソ技術を用いてマスクを作成し、ウェットエッチングすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示す模式図である。
【図3】図3は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示す分布図である。
【図4】図4は、本発明を適用した一実施形態である弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法に用いるマスクを示す模式図である。
【図5】図5は、従来の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示すフローチャートである。
【図6】図6は、従来の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を示す分布図である。
【符号の説明】
【0058】
1…基板、2…弾性表面波デバイス、2A…規格外ブロック、2B…規格内ブロック、2a,2b…周波数調整領域、3…マスク、3A,3B,3C…ベースマスク、3a,3b,3c…開口部、4A,4B…調整片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された弾性表面波デバイスの中心周波数を調整する方法であって、
弾性表面波デバイスが形成された基板上に均等な間隔で測定点を設ける第1ステップと、
前記測定点の周波数を測定して周波数調整領域を決定する第2ステップと、
前記周波数調整領域を露出する開口部を有するマスクを用いて、当該周波数調整領域の周波数を調整する第3ステップと、
所望の周波数特性が得られるまで前記第2ステップと前記第3ステップとを繰り返す第4ステップとを含むことを特徴とする弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法。
【請求項2】
前記周波数を調整する方法が、前記弾性表面波デバイス上に形成された保護膜をエッチングする又は前記保護膜上にさらに保護膜を被着することを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法。
【請求項3】
前記マスクの前記開口部の形状が、開口部を有するベースマスクと前記ベースマスクの前記開口部の形状を調整する調整片とを用いて調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスの中心周波数調整方法を用いた弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の弾性表面波デバイスの製造方法を用いて製造された弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−296265(P2009−296265A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147273(P2008−147273)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】