説明

弾性表面波デバイス並びに弾性表面波デバイスの製造方法、及び電子機器

【課題】
小型・薄型化することに適し、SAW素子片への応力の伝播を抑制することができ、ICを実装する場合には、このICに物理的な負荷をかけること無くSAW素子片を実装することができるSAWデバイスを提供する。
【解決手段】
上記課題を解決するためのSAWデバイス110は、ベース116の底部にIC128を実装し、前記IC128の上部にSAW素子片112を実装するSAWデバイス110であって、前記IC128の上部空間に掛け渡され、板面に開口部122aを形成したTAB基板122を備え、前記SAW素子片112は、励振電極112aを前記開口部122aに対向させた状態で実装し、前記励振電極112aがベース116の上部開口部側を向くように配置する構成としたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性表面波デバイス並びに弾性表面波デバイスの製造方法、及び当該弾性表面波デバイスを搭載した電子機器に係り、特に小型・薄型化に好適な弾性表面波デバイス並びに製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波発振器等の弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスとして、パッケージの内部にSAW素子片や、このSAW素子片の発振を制御する集積回路(IC:Integrated Circuit)等を収容する構成のものが知られている。
【0003】
このような構成のSAWデバイスにおいて課題とされていることは大別して、SAWデバイスを小型・薄型化することと、パッケージ内に実装されたSAW素子片に対する熱や応力の影響を除去することとを挙げることができる。この両者は製造において相反する作用をもたらす場合が多く、両者を同時に実現することは難しい。
【0004】
例えば、SAWデバイスを小型・薄型化する上で非常に有効と考えられる技術としては、特許文献1に開示された技術を挙げることができる。特許文献1に開示されている技術によって製造されるSAWデバイスは、SAW素子片とICとを縦方向に重ね合わせてパッケージに搭載する構成としたものである。具体的構成は次の通りである。まず、パッケージを構成するパッケージベースの底部に形成された電極パッドに対し、前記ICをフリップチップボンディングする。これにより、ICの能動面はパッケージベースの底部と対向することとなり、非能動面がパッケージベースの上部開口部側に晒されることとなる。次に、上部開口部側に晒されたICの非能動面に対して接着剤によりSAW素子片を搭載する。このような構成とすることにより、SAW素子片の能動面(電極形成面)がパッケージベースの上部開口部側に晒されることとなる。そして、上部開口部側に晒されたSAW素子片の電極と、パッケージベースに形成された電極パッドとをワイヤボンディングすることによりSAW素子片の実装を行う。このようにして製造されるSAWデバイスは、ICとSAW素子片との隙間を小さくすることができ、パッケージ内に生じる厚さ方向(縦方向)のデッドスペースを減らすことができ、薄型化を実現することができる。また、ICとSAW素子片を縦方向に重ねたことより、パッケージ自体の実装面積を小型化することも実現できる。
【0005】
一方、SAW素子片に対する熱の影響を回避する技術としては、例えば特許文献2に開示されている技術がある。特許文献2に開示されている技術は、SAW素子片が、SAWデバイスの小型、薄型化に伴って薄型化されたパッケージ構成部材によって、熱の影響を受けやすくなったことに対する対策であり、SAW素子片を片持ち構造とし、片持ち時の支持部に台を備える構成としたSAWデバイスである。このような構成によれば、パッケージに対する設置面積が減るため、パッケージに与えられた熱や衝撃といった外力がSAW素子片に伝播する確率は低くなる。また、支持部に台を設けていることから、この部分に関しては外力の影響を受け難い構造となる。
【特許文献1】特開2005−57577号公報
【特許文献2】特開2003−298388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された技術は確かに、SAWデバイスの小型・薄型化に対して有効なものであるということができる。しかし、上記構成によれば、ICの重量とSAW素子片の重量とを、ICの能動面に形成された電極パッドによって支持する構造となる。そして、SAW素子片をパッケージベースに実装するに際しては、ワイヤボンディングが用いられているため、ワイヤ接続時に生じる衝撃もICへの負担となる可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術を適用する場合には、パッケージ構造として必ず、SAW素子片の台となる部位を設ける必要があるため、パッケージ構造に制限が多くなり、SAWデバイス自体を小型・薄型化することが困難となる。
【0008】
本発明では、弾性表面波デバイスを小型・薄型化することに適し、SAW素子片への応力の伝播を抑制し、ICを搭載する場合であってもICに物理的な負荷をかけることの無い構成の弾性表面波デバイス並びにその弾性表面波デバイスを製造する上での特定の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明では、前記構成の弾性表面波デバイスを搭載した電子機器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためには、パッケージに対して弾性表面波素子片を直接搭載することを避け、集積回路を搭載する場合には、集積回路と弾性表面波素子片とを縦方向に重ねて配置し、かつ集積回路と弾性表面波素子片とが接触しないような構成とすることができれば良いと考えられる。そこで、本発明に係る弾性表面波デバイスは、パッケージ内に弾性表面波素子片を実装する弾性表面波デバイスであって、板面に開口部を形成したTAB基板と、前記TAB基板に対して、前記開口部に励振電極を対向させて実装される弾性表面波素子片とを備え、前記TAB基板を、前記弾性表面波素子片に形成された励振電極がパッケージベースの上部開口部側を向くように配置し、前記弾性表面波素子片は前記開口部に凸設したリードによって支持する構成としたことを特徴とした。
【0010】
このような構成とすることにより、パッケージに対してTAB基板を介して弾性表面波素子片を実装する構成となるため、パッケージに付加される外部からの応力や熱といった外力が、前記弾性表面波素子片に直接伝播されなくなる。また、TAB基板はパッケージベースを形成するための部材(例えば基板)に比べて薄型とすることができるため、弾性表面波デバイス自体の小型・薄型化も図ることができる。また、弾性表面波素子片を実装するTAB基板に開口部を設け、この開口部と弾性表面波素子片に形成された励振電極を対向させ、かつパッケージベースへの実装の際に前記励振電極が上部開口部側を向くように配置したことにより、弾性表面波素子片をパッケージに実装した後に周波数調整を行うことが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る弾性表面波デバイスは、パッケージの底部に集積回路を実装し、前記集積回路の上部に弾性表面波素子片を実装する弾性表面波デバイスであって、前記集積回路の上部空間に掛け渡され、板面に開口部を形成したTAB基板を備え、前記弾性表面波素子片は、励振電極を前記開口部に対向させた状態で実装し、前記励振電極がパッケージベースの上部開口部側を向くように配置し、前記開口部に凸設したリードによって支持される構成としたことを特徴とするものであっても良い。
【0012】
このような構成とすることにより弾性表面波素子片は、パッケージベースのキャビティ中に、TAB基板を介して吊るされた状態となる。このため、パッケージに付加される応力や熱といった外力が前記弾性表面波素子片に直接伝播するということが無い。また、集積回路と弾性表面波素子片を縦方向に重ねる構成としつつ、パッケージ内部に双方を隔てる隔壁を設けることが無く、かつ双方が直接接触しないという構成を実現する。このため、弾性表面波デバイスの小型・薄型化を実現し、かつ発振モジュールを構成する際に集積回路に余分な負荷をかけることが無い。よって、弾性表面波デバイスとして、信頼性の高い製品を提供することができる。また、弾性表面波素子片を実装するTAB基板に開口部を設け、この開口部と弾性表面波素子片に形成された励振電極を対向させ、かつパッケージベースへの実装の際に前記励振電極が上部開口部側を向くように配置したことにより、弾性表面波素子片をパッケージに実装した後に周波数調整を行うことが可能となる。
また、上記のような構成の弾性表面波デバイスでは前記集積回路を、フリップチップボンディングにより実装する構成とすると良い。
【0013】
このような構成とすることにより、キャビティとしてワイヤボンディングを行うための空間を確保する必要が無くなる。このため、弾性表面波デバイスの低背化を図ることができる。
上記のような構成の弾性表面波デバイスを製造するにあたっては、パッケージベースを封止するリッドに透光性材料を採用し、パッケージベースを封止した後に周波数調整を行うようにすると良い。
【0014】
このような製造方法を採用することによれば、弾性表面波素子片を実装する際に生じる応力や、パッケージベースを封止する際に発生するガス等の影響により生ずる発振周波数のバラツキを、パッケージベース封止後に調整することが可能となる。
【0015】
上記課題に挙げた電子機器は、上記構成を有する弾性表面波デバイスを搭載することを特徴とするものである。上記構成の弾性表面波デバイスを搭載することにより、電子機器の小型化・薄型化を図ることができ、かつ信頼性の高いものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の弾性表面波デバイス及びこれを搭載した電子機器について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部を示すものであり、本発明は以下の形態のみに拘束されるものでは無い。
【0017】
まず、図1を参照し、本発明の弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイスに係る第1の実施形態について説明する。図1において、図1(A)はSAWデバイスの側面断面図を示し、図1(B)はSAWデバイスの平面図を示す。本実施形態のSAWデバイス10は、SAW素子片12と、このSAW素子片12を内部に実装するパッケージ14とを基本構成とする。
【0018】
上記のような基本構成部材において、前記パッケージ14は、SAW素子片12を収容するキャビティ16aを備えたパッケージベース(ベース)16と、前記キャビティ16aの上部開口部を封止するリッド18とより成る。本実施形態のパッケージ14では、ベース16とリッド18との接合をシールリング20を介するシーム溶接によって成す構成としている。前記ベース16は、例えばアルミナ等のセラミック材料を焼結生成すれば良く、リッド18には、前記ベース16と熱膨張係数が近い金属(例えばコバール)やガラス等を用いると良い。そして、前記シールリング20としては、ベース16やリッド18の構成部材と熱膨張係数が近い素材を用いると良く、上述した部材によりベース16、リッド18を構成した場合には、コバールを使用すると良い。なお、ベース16は通常、複数の基板を積層し、それらの基板を焼結することにより形成される。
【0019】
SAW素子片12は、水晶(SiO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)等の圧電部材にアルミニウム等の電極部材によって形成された電極パターン12aを配したものである。圧電部材の板面に形成される電極パターン12aとしては、すだれ状電極(IDT:Inter Digital Transducer)やグレーティング反射器(反射器)等である。本実施形態のSAW素子12は、前記ベース16に対してTAB(Tape Automated Bonding)基板22を介して実装されている。TAB基板22は、ポリイミド等の樹脂によって構成されたフィルム上に銅メッキ等により形成されるリード(具体的形状は不図示)を配したものである。本実施形態に採用するTAB基板22は、図2に示すように、板面に開口部(デバイスホール)22aを有する。そして、図3に示すSAW素子片12は、TAB基板22の開口部22aに凸設されたリード(インナーリード)24に引き出し電極を接続することにより実装される。このとき、SAW素子片12に形成された励振電極(電極パターン)12aを前記TAB基板22の板面に形成された開口部22aと対向させる。
【0020】
上記のようにしてSAW素子片12を実装したTAB基板22をベース16内に配された実装部(電極パッド)26に実装する。TAB基板22の実装に際しては、前記SAW素子片12の励振電極12aが、キャビティ16aの上部開口部側を向くように配置する。このような構成とすることにより励振電極12aは、SAW素子片12を実装した状態で外部に晒されることとなり、この状態での周波数調整が可能となる。なお、周波数調整は、レーザ等により励振電極12aの一部を削り取って厚さ調整を行うことによれば良い。
【0021】
また、TAB基板22をベース16へ実装した状態で、ベース16の底部と、SAW素子片12とが非接触状態となるように、SAW素子片12は前記リード24によって支持されるようにする。このような構成とすることにより、ベース16に与えられた熱や衝撃、応力といった外力が、TAB基板22によって緩衝、あるいは吸収されることとなり、SAW素子片12へ直接伝播することがなくなる。このため、応力等を原因とする発振周波数の変動を低減することができる。
【0022】
また、ベース16の底部を厚くして応力の発生や熱の伝播を防止する構成と異なり、薄型形成が可能なTAB基板22をベース16の側壁間に掛け渡し、SAW素子片12がキャビティ16a内に宙吊り状態で支持されるようにしたことで外力がSAW素子片12に直接伝播することを防止する構成とした。このため、パッケージ14を薄型としつつ、内部に実装したSAW素子片12への外力の伝播を防止することができる。このような構成を採用するSAWデバイス10によれば、SAW素子片として外部応力の影響に左右されやすいものを採用した場合であっても、頂点温度のバラツキなどを抑えることが可能となる。
また、前記リッド18としてガラスリッドを採用した場合には、ベース16(キャビティ16a)を封止した後に、SAW素子片12の周波数調整を行うことが可能となる。
【0023】
次に、図4を参照して、本実施形態に係るSAWデバイス10の製造工程について説明する。まず、ベース16を形成する。なお、ベース16の形成は、上述したセラミックの焼結形成のみに限られるものでは無い(S100)。次に、ベース16の形成と同時に、あるいはベース16の形成と前後して、SAW素子片12をTAB基板22に実装する(S110)。その後、ベース16内に、SAW素子片12を実装したTAB基板22を実装する(S120)。TAB基板22を実装した後、ベース16とリッド18とをシールリング20を介して接合することにより、キャビティ16aの上部開口部を封止する(S130)。前記リッド18としてガラスリッドを採用した場合には、S130の工程後にレーザ等を用いてSAW素子片12の周波数調整を行う。このような製造工程によれば、SAW素子片10をTAB基板22に実装する工程とベース16の形成工程とを同時に行うことができるため、従来と変わらないサイクルタイム、スループットでSAWデバイス10を製造することができる。また、SAW素子片12の周波数調整を封止後に行った場合には、周波数のバラツキを抑えた高精度なSAWデバイス10を提供することが可能となる。
【0024】
次に、本発明のSAWデバイスに係る第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、図5において図5(A)はSAWデバイスの断面図、図5(B)はSAWデバイスの平面図をそれぞれ示す。本実施形態のSAWデバイスは、SAW素子片と、前記SAW素子片の発振周波数を制御する集積回路(IC:Integrated Circuit)と、前記SAW素子片及び前記ICを内部に収容するパッケージとを基本構成とする。
【0025】
本実施形態のSAWデバイスは、上述した第1の実施形態に係るSAWデバイスと機能を同様とする構成要素を含むため、機能を同様とする構成部材に関しては、図面の符号に100を足した符号を附して、その詳細な説明は省略する。
【0026】
本実施形態のパッケージ114の構成は、上述した第1の実施形態におけるSAWデバイス10におけるパッケージ14の構成と殆ど同様であるが、前記IC128を収容する分だけ、ベース116のキャビティ116aを広くしている点が第1の実施形態におけるパッケージ14と異なる。
【0027】
本実施形態のベース116は、キャビティ116aの下部領域をIC128の収容領域とし、キャビティ116aの上部領域をSAW素子片112の収容領域としている。本実施形態では、前記IC128を、キャビティ116aの下部領域に、能動面を上側にした状態で、接着剤130等を介して搭載する。上側を向いた能動面に形成された電極パッド(不図示)は、ベース116に形成された電極パッド(不図示)と、ボンディングワイヤ132によって電気的に接続される。
【0028】
前記SAW素子片112は、第1の実施形態と同様に、ベース116に実装される前工程として、TAB基板122に実装される。そして、本実施形態では、前記SAW素子片112を実装したTAB基板122をキャビティ116aの上部領域に実装する。TAB基板122の実装は、TAB基板122をパッケージ114の側壁間に掛け渡し、TAB基板122に形成されたリードと、TAB基板122を掛け渡した側壁に形成した電極パッド(実装部)126とを電気的に接続することにより行う。実装状態において、前記SAW素子片12の励振電極12aは、第1の実施形態と同様に、キャビティ116aの開口部側を向くように配置される。そして、IC128を実装するボンディングワイヤ132と、SAW素子片112の非能動面とが接触しないように、SAW素子片112をリード124によって支持する。
【0029】
このような構成とすることにより、SAW素子片112は、TAB基板122を介してキャビティ中に配置される(吊るされる)こととなるため、パッケージ114に与えられた衝撃や熱がSAW素子片112に直接伝播することが無くなる。そして、SAW素子片112とIC128とを高さ方向に配置していることより、IC128を備えるSAWデバイス110自体を小型化することができる。また、SAW素子片112をIC128の上部に配置する構成としているが、従来技術とは異なり両者間の直接的な接点を無くしているため、実装時(モジュール構成時)などにIC128がダメージを受けるという虞も無い。よって、上記のような構成のSAWデバイス110によれば、SAWデバイス110の小型・薄型化と共に、IC128に余分な負荷をかけることが無い信頼性の高いSAWデバイス110とすることができる。その他の作用効果は、第1の実施形態に示したSAWデバイス10と同様である。
【0030】
次に、図6を参照して本実施形態のSAWデバイス110の製造工程について説明する。まず、ベース116を形成する(S200)。次に、形成したベース116のキャビティ116a底部にIC128を実装する(S220)。ベース116の形成工程又はIC128の実装工程と同時に、あるいは前後して、SAW素子片112をTAB基板122に実装する(S210)。ベース116にIC128を実装し、SAW素子片112をTAB基板122に実装した後、ベース116にTAB基板122を実装する(S230)。なお、本実施形態では、TAB基板122がベース116の側壁間に掛け渡される状態となるように実装を行う。TAB基板122をベース116に実装した後、ベース116とリッド118を接合し、キャビティ116aの上部開口部を封止する(S240)。このような製造工程によれば、SAW素子片112をTAB基板122に実装する工程をベース116の形成工程あるいはベース116にIC128を実装する工程と同時に行うことができるため、従来と変わらないサイクルタイム、スループットでSAWデバイス110を製造することができる。
【0031】
次に、本発明の弾性表面波デバイスに係る第3の実施形態について、図7を参照して説明する。
本実施形態のSAWデバイスの基本的構成は、上述した第2の実施形態におけるSAWデバイス110と同様である。よって、その機能を同様とする箇所に関しては、図面に同一符号を附してその詳細な説明は省略する。
【0032】
本実施形態のSAWデバイス110は、ベース116の底部(キャビティ116aの下部領域)に収容するIC128の実装方式を、バンプ134によるフリップチップボンディングとしたことを特徴とするものである。このような構成とすることにより、キャビティ116aにワイヤボンディング用のボンディングワイヤ132(図5参照)を張り渡す領域を確保する必要が無くなる。このため、ベース116に必要とされるキャビティ116aの深さが浅くなり、その分だけSAWデバイス110の低背化を図ることが可能となる。
その他の構成及び作用効果に関しては、第2の実施形態に示したSAWデバイスの構成と同様である。
【0033】
次に、上記実施形態に示したSAWデバイス10,110を実装した電子機器について、図8に示す携帯電話装置を一例に挙げて説明する。
携帯電話装置200では、送信者からの音声信号は、マイクロフォン202によって電気信号に変換され、デモジュレータ・コーデック等を備える信号切替部206で変調等され、送信部208にて周波数変換等され、アンテナ212を介して基地局(不図示)に送信される。
【0034】
これに対し、基地局から送信された信号は、アンテナ212を介して受信し、受信部214にて周波数変換され、信号切替部206にて音声信号に変換されて、スピーカ204から出力される。
このような信号制御が成される携帯電話装置200の動作は、CPU(Central Processing Unit)216によって全体が制御されている。CPU216は、液晶画面やキーボード等の入出力部218や、制御プログラムや電話帳等を記録するメモリ220をはじめ、信号の送受信を制御する切替スイッチ210の動作も制御している。
【0035】
上記のような基本構成を有する携帯電話装置200において、上述したSAWデバイス10,110は特に、CPU216に接続され、CPU216の基本クロック等の役割を果たす。なお、上述したSAWデバイスは、送信部208や受信部214におけるフィルタや局部発振器として用いることもできる。
【0036】
上記実施形態に示したSAWデバイスでは、パッケージ内に実装する電子部品としてICのみを示したが、他の電子部品を実装した場合であっても、本発明に係るSAWデバイスを逸脱するものでは無い。また、上記実施形態では、TAB基板に形成した開口部と、SAW素子片との大きさを等しく示したが、開口部は少なくともSAW素子片に形成された励振電極がキャビティの開口部側に晒される状態となるものであれば良い。また、実施形態では、SAW素子片は2ポートの励振電極を有する旨図面に示したが、当然に他の構成を有するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のSAWデバイスに係る第1の実施形態を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に用いられるTAB基板の形状を示す平面図である。
【図3】SAW素子片単体を示す平面図である。
【図4】第1の実施形態に係るSAWデバイスを製造する工程の概略を示すフローである。
【図5】本発明のSAWデバイスに係る第2の実施形態を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係るSAWデバイスを製造する工程の概略を示すフローである。
【図7】本発明のSAWデバイスに係る第3の実施形態を示す図である。
【図8】本発明のSAWデバイスを搭載する電子機器の例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
10,110………弾性表面波デバイス(SAWデバイス)、12,112………弾性表面波素子片(SAW素子片)、14,114………パッケージ、16,116………パッケージベース(ベース)、16a,116a………キャビティ、18,118………リッド、20,120………シールリング、22,122………TAB基板、128………集積回路(IC)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ内に弾性表面波素子片を実装する弾性表面波デバイスであって、
板面に開口部を形成したTAB基板と、
前記TAB基板に対して、前記開口部に励振電極を対向させて実装される弾性表面波素子片とを備え、
前記TAB基板を、前記弾性表面波素子片に形成された励振電極がパッケージベースの上部開口部側を向くように配置し、前記弾性表面波素子片は前記開口部に凸設したリードによって支持する構成としたことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
パッケージの底部に集積回路を実装し、前記集積回路の上部に弾性表面波素子片を実装する弾性表面波デバイスであって、
前記集積回路の上部空間に掛け渡され、板面に開口部を形成したTAB基板を備え、
前記弾性表面波素子片は、励振電極を前記開口部に対向させた状態で実装し、前記励振電極がパッケージベースの上部開口部側を向くように配置し、前記開口部に凸設したリードによって支持される構成としたことを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記集積回路を、フリップチップボンディングにより実装したことを特徴とする請求項2に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弾性表面波デバイスのパッケージベースを封止するリッドに透光性材料を採用し、
パッケージベースを封止した後に周波数調整を行うことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の弾性表面波デバイスを搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−325052(P2006−325052A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147595(P2005−147595)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】