説明

弾性表面波デバイス

【課題】 ボンディングワイヤの垂れ下がりによる振動特性の劣化を防止しつつ、より一層の小型化に対応し得るSAWデバイスを提供する。
【解決手段】 SAW共振子1は、圧電基板6の主面に形成した1対のIDT8、その長手方向の両側に配置した反射器9a,9b、及びその長手方向の一辺6aに配置したボンディングパッド10a,10bを有するSAW素子2を備える。SAW素子はパッケージ5のキャビティに固定され、その内部にSAW素子の長手方向の両辺に対向させて配置した接続端子11a,11bとSAW素子の対応するボンディングパッドとがボンディングワイヤ10a,10bで接続される。SAW素子の長手方向の他辺6bに対向するパッケージの接続端子と対応するSAW素子のボンディングパッドとを接続するボンディングワイヤは、反射器を跨いで配線される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電基板の表面に形成した交差指電極からなるIDT(すだれ状トランスデューサ)とその両側に配置した反射器とを備えた、例えば共振器、フィルタ、センサなどとして使用される弾性表面波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧電基板の表面に形成した交差指電極からなるIDT(すだれ状トランスデューサ)と反射器とを備え、IDTにより励振した弾性表面波(SAW:surface acoustic wave)を利用するSAW素子を用いた共振子、フィルタ等のSAWデバイスが様々な電子機器に広く使用されている。また、バイオテクノロジや医療などの分野では、測定対象の化学物質を認識する受容体の化学的又は物理的変化を検出するためにSAW共振子を利用したSAWセンサが開発されている。これらのSAWデバイスは、特に通信機器などの分野で電子機器の小型化に対応して、より一層の小型化が要求されている。
【0003】
一般にSAWデバイスは、セラミック材料からなるベース内のキャビティにSAW素子を固定し、その上面に設けられた各ボンディングパッドをそれぞれパッケージ側の対応する接続端子とボンディングワイヤで電気的に接続する。通常SAW素子上面のボンディングパッドは、IDTを構成する各交差指電極から引き出されてそれに近い圧電基板の長手方向の両辺に沿って配置される。パッケージ側の各接続端子は、それぞれ対応するSAW素子のボンディングパッドを配置した圧電基板の長手方向の各辺に近接させて配置される(例えば、特許文献1、2を参照)。
【0004】
このようにSAW素子は、長手方向の両辺に沿ってそれぞれボンディングパッドの配置スペースを必要とするので、それだけ幅寸法が大きくなる。そこで、SAW素子のボンディングパッドを圧電基板の長手方向の一辺に配列し、SAW素子の幅寸法を小さくしたSAWデバイスが提案されている(例えば、特許文献3乃至5を参照)。
【0005】
特に、特許文献3に記載のSAWデバイスは、振動・衝撃等により垂れ下がったボンディングワイヤがIDTや他の電極パターンと接触することを防止するために、SAW素子のボンディングパッドを配置した圧電基板の長手方向の辺と対向させてパッケージ側の接続端子を配置している。また、特許文献4によれば、SAW素子のボンディングパッドを圧電基板の長手方向の一辺に配列することによって、これに接続するボンディングワイヤを短くでき、外部からの雑音や寄生インダクタンスの影響を排除し、かつ振動により切れたり外れたりする可能性が極めて小さくなる。
【0006】
これらのワイヤボンディングは、接合界面における金属材料の共晶を避けるために、アルミニウムのボンディングパッドに対してアルミニウム系材料のボンディングワイヤを使用し、その先端部をボンディングパッド面にウエッジツールで加圧しつつ超音波振動を加えて接合するウエッジボンディング法により行う(例えば、特許文献6を参照)。また、また、ボンディングワイヤに金線を使用し、ボールボンディング法により、その先端を加熱溶融させて形成したボールを圧着して接合することもできる。
【0007】
【特許文献1】特開平3−220911号公報
【特許文献2】特開2000−165190号公報
【特許文献3】特開2002−9585号公報
【特許文献4】特開平2−290308号公報
【特許文献5】特開2002−26656号公報
【特許文献6】特開2003−110401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ワイヤボンディングの場合、ボンディングワイヤの両端においてそれぞれボンディングパッドとの接合部に必要な大きさの面積を確保する必要があり、特にウエッジボンディングでは、ウエッジツールを使用するためのスペースが更に必要である。そのため、SAW素子のボンディングパッドとパッケージ側の接続端子とは、それらの間に少なくともボンディングワイヤの配線に必要な最小限の距離を確保して配置する必要がある。
【0009】
ところが、SAW素子の全ボンディングパッドを圧電基板の長手方向の一辺に配列しかつそれに対向させてパッケージ側の接続端子を配置すると、SAW素子をパッケージ側の接続端子から前記最小限の距離以上に離隔しなければならない。その結果、ベースの幅寸法を小さくすることには限界があり、SAWデバイスを十分に小型化できないという問題がある。
【0010】
更に、SAWデバイスの小型化が進む程、圧電基板の長手方向長さが短くなる。そのため、SAW素子の全ボンディングパッド及びパッケージ側の全接続端子を圧電基板の長手方向の一辺側に配置すると、隣接するボンディングパッド間の離隔距離及び接続端子間の離隔距離が小さくなり、ワイヤボンディングが困難になる。
【0011】
そこで本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、振動・衝撃等によるボンディングワイヤの垂れ下がりで振動特性が劣化することを防止しつつ、より一層の小型化に対応し得るSAWデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、上記目的を達成するために、圧電基板の主面に形成した少なくとも1対のIDTと、その長手方向の両側に配置した反射器と、その長手方向の一辺に配置した複数のボンディングパッドとを有するSAW素子と、該SAW素子を収容するキャビティを有する箱状をなし、その内部に複数の接続端子をSAW素子の長手方向の両辺に対向させて配置したパッケージと、SAW素子のボンディングパッドと対応するパッケージの接続端子とをそれぞれ接続する複数のボンディングワイヤとを備え、SAW素子の長手方向の他辺に対向するパッケージの接続端子とそれに対応するSAW素子のボンディングパッドとを接続するボンディングワイヤが反射器を跨いで配線されたSAWデバイスが提供される。
【0013】
このようにSAW素子のボンディングパッドを配置しかつワイヤボンディングすることによって、ボンディングワイヤの垂れ下がりによる振動特性の劣化を確実に防止すると同時に、圧電基板の幅寸法を小さくしてパッケージ即ちSAWデバイスの小型化を実現できる。更に、ボンディングワイヤがIDTの上を全く通過しないので、SAW素子の実装及びボンディングワイヤの結線後でパッケージの封止前に、IDTの電極膜をレーザビームやイオンビーム等によるドライエッチングで部分的に削除することによって、SAW素子の周波数を微調整することができる。また、本発明のSAWデバイスは、そのSAW素子が有するIDTの数、配置、それらの接続などの構成によって共振子、フィルタとして使用することができる。
【0014】
或る実施例では、更にSAW素子の長手方向の一辺に対向するパッケージの接続端子とそれに対応するSAW素子のボンディングパッドとを接続するボンディングワイヤが、SAW素子の長手方向の一辺に関して斜めに配線される。これにより、SAW素子の長手方向の一辺とこれに対向するパッケージの接続端子との離隔距離を、ボンディングワイヤの結線に最低限必要な距離よりも短くすることができ、それによってパッケージの幅寸法をより小さくして、SAWデバイスをより一層小型化することができる。
【0015】
別の実施例では、SAW素子のIDTにより励振されるSAWの伝搬面に固定され、目的物質を認識するための受容体を更に有することにより、該受容体の化学的又は物理的変化により目的物質を検出するSAWセンサとして使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明によるSAWデバイスの好適実施例について添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(A)、(B)は、本発明を適用したSAW共振子の好適な実施例を示している。このSAW共振子1は、SAW素子2が、セラミックべース3と金属リッド4とからなるパッケージ5の中に実装されている。べース3は、アルミナ等のセラミック材料からなる複数の薄板を積層して、上部を開放した矩形箱状に構成され、その内部に画定されるキャビティの底部にSAW素子2が固定されている。
【0017】
SAW素子2は、例えば水晶、リチウムタンタレート、リチウムニオベートなどの圧電材料で形成された矩形薄板からなる圧電基板6を有する。このSAW素子2は1ポート共振子の構成を有し、圧電基板6の主面中央に1対の交差指電極7a,7bからなるIDT8が形成され、その長手方向の両側に格子状の反射器9a,9bが形成されている。
【0018】
各交差指電極7a,7bのボンディングパッド10a,10bは、圧電基板6主面の長手方向の一辺6aに沿って形成されている。これにより圧電基板6即ちSAW素子2の幅寸法を小さくすることができ、従ってベース3即ちSAW共振子1の小型化を図ることができる。前記交差指電極、反射器、ボンディングパッド及び配線パターンは、加工性及びコストの観点からアルミニウムで形成されるが、それ以外にアルミニウム合金などの様々な導電性金属材料を使用することもできる。
【0019】
本実施例では、入出力用のボンディングパッド10aが、入出力用の交差指電極7aから引き出されて一方の反射器9a近傍に配置されている。接地用の交差指電極7bが他方の反射器9bに接続され、接地用のボンディングパッド10bが該反射器9bから引き出されてその近傍に配置されている。
【0020】
べース3の内部には、SAW素子2の幅方向の両側に段差が設けられ、その上面に各ボンディングパッド10a,10bに対応する接続端子11a,11bが形成されている。前記接続端子は、例えばW、Mo等の金属配線材料をべース3のセラミック薄板表面にスクリーン印刷しかつその上にNi、Auをめっき等することにより形成され、ベース内部の配線パターン等を介してべース外面の外部端子に接続されている。
【0021】
本実施例では、入出力用の接続端子11aは、SAW素子2の長手方向の一辺6aに対向させて前記一方の反射器9aに近い側に配置されている。接地用の接続端子11bは、SAW素子2の長手方向の他辺6bに対向させて他方の反射器9bに近い側に配置されている。このように接続端子11a,11bをSAW素子2の両側に分けて配置したことにより、ベース3が小型化しても、後述するボンディングワイヤを接続するのに十分な大きさを確保することができる。
【0022】
前記各ボンディングパッドと対応する各接続端子とは、それぞれボンディングワイヤ12a,12bで電気的に接続されている。前記各ボンディングワイヤは、例えば第1ボンドとして一方の端部をパッケージ側の接続端子11a,11bにボールボンディングで接続し、次に他方の端部を第2ボンドとしてSAW素子2の各ボンディングパッド10a,10bにウエッジボンディングで接続する。本実施例のボンディングワイヤは、共晶による接合強度の低下を防止するために、前記ボンディングパッドと同じ導電材料のアルミニウム線を使用する。
【0023】
接地用のボンディングパッド10bと接続端子11bとを上述したように配置したことにより、それらを接続するボンディングワイヤ12bは反射器9bを跨ぐように配線される。従って、使用時に振動や衝撃でボンディングワイヤ12bが垂れ下がった場合に、その下方の反射器9bと接触してもIDT8とは接触しないので、SAW共振子1の振動特性に影響を及ぼす虞は無い。
【0024】
他方、入出力用のボンディングパッド10aと入出力用の接続端子11aとを接続するボンディングワイヤ12aは、図示するようにSAW素子2の長手方向と直交する向きに最短距離で配線する。この最短距離がボンディングワイヤ12aの結線に最低限必要な距離よりも短い場合には、図1(A)に想像線13で示すように、SAW素子2の長手方向に対して斜めに配線することができる。これにより、SAW素子2をその長手方向の一辺6aを対向するベース3の接続端子11aにより近接させて配置し、ベース3の幅寸法を小さくすることができ、従ってSAW共振子1の小型化を図ることができる。
【0025】
また本実施例では、いずれのボンディングワイヤ12a,12bもIDT8の上を全く通過していないので、SAW素子2をベース3に固定しかつボンディングワイヤを結線した後にその周波数を測定しながら、レーザビームやイオンビーム等によるドライエッチングで交差指電極7a,7bを部分的に削除することによって、SAW素子2の周波数を微調整することができる。この後、金属リッド4をべース3の上端にシールリングを介してシーム溶接で接合し、パッケージ5を気密に封止する。これにより、より周波数精度の高いSAW共振子を実現することができる。
【0026】
図2(A)、(B)は、本発明を適用したSAWデバイスの別の実施例であるトランスバーサル型SAWフィルタを示している。このSAWフィルタ15は、ベース3のキャビティ内に固定されたSAW素子16が、圧電基板17の主面中央に2つのIDT18,19をSAWの伝搬方向に近接して並べ、かつその両側に反射器20a,20bが配置されている。各IDT18,19はそれぞれ1対の交差指電極21a,21b、22a,22bを有し、それら交差指電極のボンディングパッド23a,23b、24a,24bが同様に圧電基板17主面の長手方向の一辺17aに沿って形成されている。これにより圧電基板17即ちSAW素子16の幅寸法を小さくして、SAWフィルタ15の小型化を図ることができる。
【0027】
本実施例では、一方のIDT18の入出力用ボンディングパッド23aが、その入出力用交差指電極21aから引き出されて該交差指電極のバスバー近傍に配置されている。接地用交差指電極21bが隣接する反射器20bに接続され、接地用ボンディングパッド23bが該反射器20bから引き出されてその近傍に配置されている。また、他方のIDT19の入出力用ボンディングパッド24aは、入出力用の交差指電極22aが隣接する反射器20aに接続されかつ該反射器から引き出されてその近傍に配置されている。接地用ボンディングパッド24bは、接地用交差指電極22aから引き出されて該交差指電極のバスバー近傍に配置されている。
【0028】
べース3の内部には、同様にSAW素子16の幅方向の両側に段差が設けられ、その上面に前記各ボンディングパッドに対応する接続端子25a,25b、26a,26bが形成されている。4つの前記接続端子は、SAW素子16の両側に分けて配置され、それにより、ベース3が小型化しても、後述するボンディングワイヤを接続するのに十分な大きさを確保することができる。
【0029】
本実施例では、一方のIDT18に接続される入出力用の接続端子25aが、SAW素子16の長手方向の一辺17aに対向させて、入出力用ボンディングパッド23aに近い側に配置されている。接地用の接続端子25bは、SAW素子16の長手方向の他辺17bに対向させて、隣接する反射器20bに近い側に配置されている。他方のIDT19に接続される入出力用の接続端子26aは、SAW素子16の長手方向の他辺17bに対向させて、隣接する反射器20aに近い側に配置されている。接地用の接続端子26bは、SAW素子16の長手方向の一辺17aに対向させて、接地用ボンディングパッド24bに近い側に配置されている。
【0030】
前記各ボンディングパッドと対応する各接続端子とは、それぞれボンディングワイヤ27a,27b,28a,28bで電気的に接続されている。同様に前記各ボンディングワイヤは、例えば第1ボンドとして一方の端部をパッケージ側の前記接続端子にボールボンディングで接続し、次に他方の端部を第2ボンドとしてSAW素子16の前記各ボンディングパッドにウエッジボンディングで接続する。
【0031】
一方のIDT18について接地用ボンディングパッド23bと対応する接続端子25bとを、及び他方のIDT19について入出力用ボンディングパッド24aと対応する接続端子26aとを上述したように配置したことにより、それらを接続するボンディングワイヤ27b,28aはそれぞれ反射器20a,20bを跨ぐように配線される。従って、使用時に振動や衝撃でそれらボンディングワイヤ27b,28aが垂れ下がった場合に、その下方の反射器20a,20bと接触してもIDT18,19とは接触しないので、SAWフィルタ15の振動特性に影響を及ぼす虞は無い。
【0032】
他方、入出力用ボンディングパッド23aと対応する接続端子25aとを接続するボンディングワイヤ27a、及び接地用ボンディングパッド24bと対応する接続端子26bとを接続するボンディングワイヤ28bは、図示するようにSAW素子16の長手方向と直交する向きに最短距離で配線する。この最短距離がボンディングワイヤ27a,28bの結線に最低限必要な距離よりも短い場合には、図2(A)に想像線29で示すように、SAW素子16の長手方向に対して斜めに配線することができる。これにより、SAW素子16をその長手方向の一辺17aを対向するベース3の接続端子により近接させて配置し、ベース3の幅寸法を小さくすることができ、従ってSAWフィルタ15の小型化を図ることができる。
【0033】
また本実施例においても、前記各ボンディングワイヤがいずれのIDT18,19の上をも全く通過していないので、SAW素子16をベース3に固定しかつボンディングワイヤを結線した後にその周波数を測定しながら、レーザビームやイオンビーム等によるドライエッチングで前記交差指電極を部分的に削除することによって、SAW素子16の周波数を微調整することができる。この後、金属リッド4をべース3の上端にシールリングを介してシーム溶接で接合し、パッケージ5を気密に封止する。これにより、より周波数精度の高いSAWフィルタを実現することができる。
【0034】
図3(A)、(B)は、本発明を適用したSAWデバイスの更に別の実施例である横2重モードSAWフィルタの好適な実施例を示している。このSAWフィルタ30は、ベース3のキャビティ内に固定されたSAW素子31が、圧電基板32の幅方向に並設された2つのSAW共振子33,34から構成される。各SAW共振子33,34は、それぞれ圧電基板32の主面中央に配置されたIDT35,36と、その両側にそれぞれ配置された反射器37a,37b、38a,38bとを有する。各IDT35,36はそれぞれ1対の交差指電極39a,39b、40a,40bを有する。
【0035】
本実施例では、前記各IDTの入出力用交差指電極39a,40aは圧電基板32の幅方向両側に配置され、それらの間に配置された接地用交差指電極39b,40bはバスバーを共通にして互いに接続されている。SAW共振子33,34の隣接する反射器同士37a,38a、37b,38bが、同様にそれぞれ一方のバスバーを共通にして互いに接続されている。前記各IDTの入出力用交差指電極39a,40aにそれぞれ接続された入出力用ボンディングパッド41a,42aと、共通化された接地用交差指電極39b,40bに接続された共通の接地用ボンディングパッド41bとが、同様に圧電基板32主面の長手方向の一辺32aに沿って形成されている。これにより圧電基板32即ちSAW素子31の幅寸法を小さくして、SAWフィルタ30の小型化を図ることができる。
【0036】
一方のIDT35の入出力用ボンディングパッド41aは、その入出力用交差指電極39aから引き出されて該交差指電極のバスバー近傍に配置されている。他方のIDT36の入出力用ボンディングパッド42aは、その入出力用の交差指電極40aが一方の反射器38aに接続されかつそれと共通化した反射器37aから引き出されてその近傍に配置されている。共通の接地用ボンディングパッド41bは、他方の反射器37bから引き出されてその近傍に配置されている。
【0037】
べース3の内部には、同様にSAW素子31の幅方向の両側に段差が設けられ、その上面に前記各ボンディングパッドに対応する入出力用の接続端子43a,44aと共通の接地用の接続端子43bとが形成されている。3つの前記接続端子は、その1つ43bをSAW素子31の長手方向の一辺32aに対向する側に、かつ2つ43a,44aをSAW素子31の長手方向の他辺32bに対向する側に分けて配置されている。これにより、ベース3が小型化しても、後述するボンディングワイヤを接続するのに十分な大きさを確保することができる。
【0038】
前記各ボンディングパッドと対応する各接続端子とは、それぞれボンディングワイヤ45a,45b,46aで電気的に接続されている。同様に前記各ボンディングワイヤは、例えば第1ボンドとして一方の端部をパッケージ側の前記接続端子にボールボンディングで接続し、次に他方の端部を第2ボンドとしてSAW素子31の前記各ボンディングパッドにウエッジボンディングで接続する。
【0039】
一方の入力用ボンディングパッド42aと対応する接続端子44aとを、及び共通の接地用ボンディングパッド43bと共通の接続端子45bとを上述したように配置したことにより、それらを接続するボンディングワイヤ45b,46aはそれぞれ共通化した反射器37a,38a、37b,38bを跨ぐように配線される。従って、使用時に振動や衝撃でそれらボンディングワイヤ45b,46aが垂れ下がった場合に、その下方の反射器と接触してもIDT35,36とは接触しないので、SAWフィルタ30の振動特性に影響を及ぼす虞は無い。
【0040】
他方の入出力用のボンディングパッド41aと対応する入出力用接続端子43aとを接続するボンディングワイヤ45aは、図示するようにSAW素子31の長手方向に対して斜めに配線する。これにより、SAW素子31の長手方向の一辺32aを対向するベース3の接続端子43a側により近接させて配置し、それらの離隔距離がボンディングワイヤ45aの結線に最低限必要な距離よりも短い場合でも、容易に結線することができる。従って、ベース3の幅寸法をできる限り小さくして、SAWフィルタ30の小型化を図ることができる。
【0041】
本実施例においても、前記各ボンディングワイヤがIDT35,36の上を全く通過していないので、SAW素子31をベース3に固定しかつボンディングワイヤを結線した後にその周波数を測定しながら、レーザビームやイオンビーム等によるドライエッチングで交差指電極を部分的に削除することによって、SAW素子31の周波数を微調整することができる。この後、金属リッド4をべース3の上端にシールリングを介してシーム溶接で接合し、パッケージ5を気密に封止する。これにより、より周波数精度の高いSAW共振子を実現することができる。
【0042】
図4(A)、(B)は、本発明を適用したSAWデバイスの更にまた別の実施例であるSAWセンサの好適な実施例を示している。このSAWセンサ50はSAW共振子を利用した例えば質量センサとして使用され、SAW素子51が、セラミックべース3と金属リッド4とからなるパッケージ5の中に実装されている。べース3は、アルミナ等のセラミック材料からなる複数の薄板を積層して、上部を開放した矩形箱状に構成され、その内部に画定されるキャビティの底部にSAW素子51が固定されている。
【0043】
SAW素子51は、例えば水晶、リチウムタンタレート、リチウムニオベートなどの圧電材料で形成された矩形薄板からなる圧電基板52を有する。圧電基板52の主面中央には、1対の交差指電極53a,53bからなるIDT54が形成され、その長手方向の両側に格子状の反射器55a,55bが形成されている。
【0044】
IDT54の略中央には、前記交差指電極を構成する電極指と電極指間のSAW伝搬面に受容体56が配置されている。受容体56は、検出対象となる化学物質の性状・特質などに対応して、例えばガス吸着体、酵素、微生物、抗体、DNAなど従来公知の様々なものを用いることができ、それらを固定した膜、セルなど従来公知の様々な形態で使用される。
【0045】
このSAWセンサ50において、交差指電極53a,53b間に所定の高周波信号電圧を印加して所定周波数のSAWを励振したとき、受容体56が検出対象の化学物質を吸着するなどしてその重量が増加すると、SAWの伝搬速度が変化するのでその周波数が変化する。この周波数変化を測定することによって、目的の化学物質を検出してその質量を測定することができる。このようなSAWセンサは、目的物質の質量だけでなく、その濃度やpHなどの物性を測定することもできる。
【0046】
各交差指電極53a,53bのボンディングパッド57a,57bは、同様に圧電基板52主面の長手方向の一辺52aに沿って形成されている。これにより圧電基板52即ちSAW素子51の幅寸法を小さくして、ベース3即ちSAWセンサ50の小型化を図ることができる。前記交差指電極、反射器、ボンディングパッド及び配線パターンは、加工性及びコストの観点からアルミニウムで形成されるが、それ以外にアルミニウム合金などの様々な導電性金属材料を使用することもできる。
【0047】
本実施例では、図1の実施例と同様に、入力用ボンディングパッド57aが、入力用交差指電極53aから引き出されてそのバスバー近傍に配置されている。出力用交差指電極53bが一方の反射器55bに接続され、出力用ボンディングパッド57bが該反射器55bから引き出されてその近傍に配置されている。
【0048】
べース3の内部には、SAW素子51の幅方向の両側に段差が設けられ、その上面に前記各ボンディングパッドに対応する接続端子58a,58bが形成されている。前記接続端子は、例えばW、Mo等の金属配線材料をべース3のセラミック薄板表面にスクリーン印刷しかつその上にNi、Auをめっき等することにより形成され、ベース内部の配線パターン等を介してべース外面の外部端子に接続されている。
【0049】
本実施例では、入力用の接続端子58aが、SAW素子51の長手方向の一辺52aに対向させて他方の反射器55aに近い側に配置されている。出力用の接続端子58bは、SAW素子51の長手方向の他辺52bに対向させて前記一方の反射器55bに近い側に配置されている。このように接続端子58a,58bをSAW素子51の両側に分けて配置したことにより、ベース3が小型化しても、後述するボンディングワイヤを接続するのに十分な大きさを確保することができる。
【0050】
前記各ボンディングパッドと対応する各接続端子とは、それぞれボンディングワイヤ59a,59bで電気的に接続されている。前記各ボンディングワイヤは、例えば第1ボンドとして一方の端部を対応するパッケージ側の前記接続端子にボールボンディングで接続し、次に他方の端部を第2ボンドとしてSAW素子51の前記各ボンディングパッドにウエッジボンディングで接続する。
【0051】
出力用ボンディングパッド57bと接続端子58bとを上述したように配置したことにより、それらを接続するボンディングワイヤ59bは反射器55bを跨ぐように配線される。従って、使用時に振動や衝撃でボンディングワイヤ55bが垂れ下がった場合に、その下方の反射器55bと接触してもIDT54とは接触しないので、SAWセンサ50の振動特性及び感度に影響を及ぼす虞は無い。
【0052】
他方、入力用のボンディングパッド57aと接続端子58aとを接続するボンディングワイヤ59aは、図示するようにSAW素子51の長手方向に対して斜めに配線する。これにより、SAW素子51の長手方向の一辺52aを対向するベース3の接続端子58a側により近接させて配置し、それらの離隔距離がボンディングワイヤ59aの結線に最低限必要な距離よりも短い場合でも、容易に結線することができる。従って、ベース3の幅寸法をできる限り小さくして、SAWセンサ50の小型化を図ることができる。
【0053】
また本実施例では、いずれのボンディングワイヤ59a,59bもIDT54の上を全く通過していないので、SAW素子51をベース3に固定しかつボンディングワイヤを結線した後にその周波数を測定しながら、レーザビームやイオンビーム等によるドライエッチングで交差指電極53a,53bを部分的に削除することによって、SAW素子51の周波数を微調整することができる。これにより、より高い周波数精度でより正確な感度のSAWセンサを実現することができる。
【0054】
以上、本発明の好適実施例について詳細に説明したが、当業者に明らかなように、本発明はその技術的範囲内において上記各実施例に様々な変更・変形を加えて実施することができる。例えば、圧電基板上に2つのIDTを配置した2ポート型のSAW共振子やSAWセンサ、IDTの数・配置などを様々に変化させかつ/または組み合わせた縦又は横多重モードのSAWフィルタにも同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(A)図は本発明を適用したSAW共振子の実施例を示す平面図、(B)図はその断面図。
【図2】(A)図は本発明を適用したトランスバーサル型SAWフィルタの実施例を示す平面図、(B)図はその断面図。
【図3】(A)図は本発明を適用した横2重モードSAWフィルタの実施例を示す平面図、(B)図はその断面図。
【図4】(A)図は本発明を適用したSAWセンサの実施例を示す平面図、(B)図はその断面図。
【符号の説明】
【0056】
1…SAW共振子、2,16,31,51…SAW素子、3…べース、4…リッド、5…パッケージ、6,17,32,52…圧電基板、6a,17a、52a…一辺、6,17bb…他辺、7a,7b,21a,21b、22a,22b,39a,39b、40a,40b,53a,53b…交差指電極、8,18,19,35,36,54…IDT、9a,9b,20a,20b,37a,37b、38a,38b,55a,55b…反射器、10a,10b,23a,23b、24a,24b,41a,41b,42a,57a,57b…ボンディングパッド、11a,11b,25a,25b、26a,26b,43a,43b,44a,58a,58b…接続端子、12a,12b,27a,27b,28a,28b,45a,45b,46a,59a,59b…ボンディングワイヤ、13,29…想像線、15,30…SAWフィルタ、33,34…SAW共振子、50…SAWセンサ、56…受容体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の主面に形成した少なくとも1対のIDTと、その長手方向の両側に配置した反射器と、その長手方向の一辺に配置した複数のボンディングパッドとを有する弾性表面波素子と、
前記弾性表面波素子を収容するキャビティを有する箱状をなし、その内部に複数の接続端子を前記弾性表面波素子の長手方向の両辺に対向させて配置したパッケージと、
前記弾性表面波素子の前記ボンディングパッドと対応する前記パッケージの前記電極パッドとをそれぞれ接続する複数のボンディングワイヤとを備え、
前記弾性表面波素子の長手方向の他辺に対向する前記パッケージの前記接続端子とそれに対応する前記弾性表面波素子の前記ボンディングパッドとを接続する前記ボンディングワイヤが、前記反射器を跨いで配線されていることを特徴とする弾性表面波デバイス。
【請求項2】
前記弾性表面波素子の前記長手方向の一辺に対向する前記パッケージの前記接続端子とそれに対応する前記弾性表面波素子の前記ボンディングパッドとを接続する前記ボンディングワイヤが、前記弾性表面波素子の前記長手方向の一辺に関して斜めに配線されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
【請求項3】
前記弾性表面波素子の前記IDTにより励振される弾性表面波の伝搬面に固定され、目的物質を認識するための受容体を更に有することをことを特徴とする請求項1又は2に記載の弾性表面波デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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