説明

弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器、及びそれらを用いた高周波モジュール、通信機器

【課題】小型で、帯域内特性に優れる弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を提供すること。
【解決手段】本発明の弾性表面波フィルタは、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された複数のIDT電極と複数の反射器電極と、前記複数のIDT電極にそれぞれ接続された第1の配線電極及び第2の配線電極とを備えた弾性表面波フィルタであって、前記第1の配線電極、及び前記第2の配線電極とは絶縁層を介して立体交差する構成であって、前記第1の配線電極または前記第2の配線電極の少なくとも一方は、前記圧電基板の上に形成された電極パッドに接続され、前記圧電基板の上において、前記反射器電極を構成するストリップラインが前記IDT電極の交差幅よりも短くなることで前記反射器電極が削除された領域を有し、前記電極パッドの一部は前記領域に配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の通信機器に用いられる小型で、帯域内特性に優れる弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器に関する。また、本発明はそのような弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を有する高周波モジュール、及び通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の発展に伴い、特に、携帯電話等に使用されるデバイスの高性能化、小型化が期待されている。携帯電話等では、フィルタとして、弾性表面波フィルタが広く用いられており、低ロス化、及び高減衰化に加え、小型化が期待されている。
【0003】
以下、従来の弾性表面波フィルタについて説明する。図10に、従来の弾性表面波フィルタの構成を示す。弾性表面波フィルタ1000は、圧電基板1001上に、IDT電極1002、1003、1004と反射器電極1005、1006を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第1の縦モード型フィルタ1007と、IDT電極1008、1009、1010と反射器電極1011、1012を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第2の縦モード型フィルタ1013とにより構成される。第1の縦モード型フィルタ1007において、IDT電極1002、1003、1004の一方の電極指は、電極パッド1014、1015、1016に配線されてそれぞれ接地端子GND、入力端子IN、接地端子GNDに接続される。第2の縦モード型フィルタ1013において、IDT電極1008、1009、1010の一方の電極指は、電極パッド1017、1018、1019に配線されてそれぞれ接地端子GND、出力端子OUT、接地端子GNDに接続される。また、IDT電極1002の他方の電極指とIDT電極1008の他方の電極指とは配線電極1020により接続され、IDT電極1004の他方の電極指とIDT電極1010の他方の電極指とは配線電極1021により接続される。IDT電極1003の他方の電極指とIDT電極1009の他方の電極指とは電極パッド1022に配線されて接地端子GNDに接続される。以上の構成とすることにより、第1、及び第2の縦モード型フィルタ1007、1013とが縦続接続された弾性表面波フィルタ1000が構成される。
【0004】
また、弾性表面波フィルタの小型化のために、配線電極の一部を互いに、絶縁体を挟んで立体交差させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図11に、従来の弾性表面波フィルタの構成1100を示す。第1、第2の縦モード型フィルタ1007、1013とは配線電極1020、1021により縦続接続されている。さらに、配線電極1020、1021の上には、絶縁層1101、1102が設けられており、IDT電極1003、1009の他方の電極指は、配線電極1103により接続され、さらに上部に形成された配線電極1104により、接地端子GNDに接続される電極パッド1105、1106に接続される。このとき、図12に、A−A’の断面図を示すように、配線電極1021と配線電極1104とは、絶縁層1102を介して立体交差する構成となる。以上の構成とすることにより、第1、及び第2の縦モード型フィルタ1007、1013とが縦続接続された弾性表面波フィルタ1100が構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−282707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の技術では、第1と第2の弾性表面波フィルタとの間に電極パッドが存在し、弾性表面波フィルタのサイズが大きくなるという課題があった。また、配線電極を立体交差させた場合には、配線電極同士で容量結合が生じ、通過帯域特性が劣化するという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、小型で、帯域内特性に優れる弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を提供することを目的とする。また、本発明はそのような弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を用いて、小型で高性能な高周波モジュール、及び通信機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の弾性表面波フィルタは、圧電基板と、前記圧電基板上に形成された複数のIDT電極と複数の反射器電極と、前記複数のIDT電極にそれぞれ接続された第1の配線電極及び第2の配線電極とを備えた弾性表面波フィルタであって、前記第1の配線電極、及び前記第2の配線電極とは絶縁層を介して立体交差する構成であって、前記第1の配線電極または前記第2の配線電極の少なくとも一方は、前記圧電基板の上に形成された電極パッドに接続され、前記圧電基板の上において、前記反射器電極を構成するストリップラインが前記IDT電極の交差幅よりも短くなることで前記反射器電極が削除された領域を有し、前記電極パッドの一部は前記領域に配置されたことを特徴とする。
【0010】
本構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有する弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0011】
上記弾性表面波フィルタにおいては、第1の配線電極または第2の配線電極の少なくとも一方が接地端子に接続されることが好ましい。
【0012】
上記構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有する弾性表面波フィルタを実現することができるものである。
【0013】
また、上記弾性表面波フィルタにおいては、前記複数のIDT電極が、弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有する縦モード型の弾性表面波フィルタを実現することができるものである。
【0015】
また、上記弾性表面波フィルタにおいては、複数のIDT電極が弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された第1の弾性表面波フィルタと、複数のIDT電極が弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された第2の弾性表面波フィルタとを備え、前記第1または第2の配線電極の少なくとも一方により、前記第1の弾性表面波フィルタまたは前記第2の弾性表面波フィルタにおけるIDT電極が接地されることが好ましい。
【0016】
上記構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有する縦続接続された縦モード型の弾性表面波フィルタを実現することができるものである。
【0017】
また、上記弾性表面波フィルタにおいては、前記電極パッドの一部は、前記第1の弾性表面波フィルタと前記第2の弾性表面波フィルタとの間に配置されることが好ましい。
【0018】
上記構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有する弾性表面波フィルタを実現することができるものである。
【0019】
また、本発明のアンテナ共用器は、送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器であって、前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とするアンテナ共用器である。
【0020】
上記構成によって、小型で、優れた通過帯域特性を有するアンテナ共用器を実現することができるものである。
【0021】
また、本発明の高周波モジュールは、送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、送信増幅器または受信増幅器とを備えた高周波モジュールであって、前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする高周波モジュールである。
【0022】
上記構成によって、小型で、高性能な高周波モジュールを実現することができるものである。
【0023】
また、本発明の高周波モジュールは、送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、切換スイッチとを備えた高周波モジュールであって、前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とするアンテナ共用器である。
【0024】
上記構成によって、小型で、高性能な高周波モジュールを実現することができるものである。
【0025】
また、本発明の通信機器は、送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、送信増幅器と送信回路と、受信増幅器と受信回路とを備えた無線回路を有する通信機器であって、前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする通信機器である。
【0026】
上記構成によって、小型で、高性能な通信機器を実現することができるものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明の弾性表面波フィルタによれば、小型で、通過帯域特性に優れる弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を実現することができる。また、本発明の弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を用いることにより、小型で高性能な高周波モジュール、及び通信機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタの構成図
【図2】図1における破線部の拡大図
【図3】容量結合を考慮した場合の弾性表面波フィルタの通過帯域特性図
【図4】本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタの他の構成図
【図5】本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタの他の構成図
【図6】本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタの他の構成図
【図7】本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタの構成図
【図8】本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタの他の構成図
【図9】本発明の実施の形態3における通信機器の構成図
【図10】従来の弾性表面波フィルタの構成図
【図11】従来の弾性表面波フィルタの他の構成図
【図12】図11におけるA−A’の断面図
【図13】本発明の実施の形態4における弾性表面波フィルタの構成図
【図14】図13におけるB−B’の断面図
【図15】従来の弾性表面波フィルタの構成図
【図16】図15におけるC−C’の断面図
【図17】図13に示す本発明の実施の形態4における弾性表面波フィルタの特性と図15に示す従来の構成における弾性表面波フィルタの特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における弾性表面波フィルタの構成図である。図1において、弾性表面波フィルタ100は、圧電基板101上に、IDT電極102、103、104と反射器電極105、106を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第1の縦モード型フィルタ107と、IDT電極108、109、110と反射器電極111、112を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第2の縦モード型フィルタ113とにより構成される。第1の縦モード型フィルタ107において、IDT電極102、103、104の一方の電極指は、電極パッド114、115、116に配線されてそれぞれ接地端子GND、入力端子IN、接地端子GNDに接続される。第2の縦モード型フィルタ113において、IDT電極108、109、110の一方の電極指は、電極パッド117、118、119に配線されてそれぞれ接地端子GND、出力端子OUT、接地端子GNDに接続される。また、IDT電極102の他方の電極指とIDT電極108の他方の電極指とは配線電極120により接続され、IDT電極104の他方の電極指とIDT電極110の他方の電極指とは配線電極121により接続される。さらに、配線電極120、121の上には、絶縁層122、123が設けられており、IDT電極103、109の他方の電極指は、配線電極124により接続され、さらに上部に形成され、電気的に接続された配線電極125により、接地端子GNDに接続される電極パッド126、127に接続される。このとき、図2に、図1における破線で囲んだ部分の拡大図を示すように、配線電極125の電極幅は一部で電極幅が異なる領域を有する構成であり、絶縁層123を介して配線電極121と配線電極125とが立体交差する分の電極幅d1は、他の部分の電極幅d2に比べて小さく構成されており、d1<d2の構成となる。以上の構成とすることにより、配線電極125の抵抗を大きく増加させることなく、立体交差部の面積を小さくすることができ、従来に比べて、立体交差部における配線電極の容量結合を低減することができる。図3に、立体交差部の配線電極の容量を等価回路的に考慮した場合の弾性表面波フィルタの通過帯域特性を示す。図3に示すように、容量が大きくなると、弾性表面波フィルタは、通過帯域幅が減少し、帯域内特性も劣化する。よって、本実施の形態に示す構成を適用し、立体交差部の配線電極間の容量結合を小さくすることにより、弾性表面波フィルタの帯域内特性は良好となり、通過帯域幅の減少も低減できる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態の構成とすることにより、立体交差部における配線電極の容量結合を低減することができ、小型で帯域内特性に優れる弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、縦モード型フィルタを縦続接続した弾性表面波フィルタについて詳細な説明を行ったが、弾性表面波フィルタの構成に関しては、これに限るものではなく、弾性表面波共振器を梯子型に接続したラダー型フィルタ、あるいは格子型に接続したラティス型フィルタであってもよく、立体交差部の電極幅が他より小さく構成されていればかまわない。また、縦モード型フィルタと弾性表面波共振器を組み合わせた構成に適用することも可能である。
【0033】
また、図4に示すように、1段の縦モード型フィルタの構成に適用してもかまわない。図4において、弾性表面波フィルタ400は、IDT電極401、402の一方の電極指は電極パッドを介して接地端子GNDに接続され、IDT電極401、402の他方の電極指は電極パッドを介して出力端子OUTに接続される構成となる。
【0034】
また、本実施の形態における弾性表面波フィルタは不平衡型であるが、これは、図5に示すように、IDT電極109を2つのIDT電極501、502に2分割して平衡型の弾性表面波フィルタ500としてもかまわない。このとき、IDT電極501、502は電極パッド503、504を介して平衡型端子OUT1、OUT2に接続される。
【0035】
さらに、配線電極に関しては、上部の配線電極125の立体交差部における電極幅を小さくしたが、これは、配線電極120、121の電極幅を小さくしてもかまわない。また、配線電極120、121、125のすべての電極幅を立体交差部にて小さくしてもかまわない。この場合には、立体交差部の面積はさらに小さくでき、容量結合もさらに抑えることができるものである。
【0036】
また、絶縁層に関しては、SiO2やSiN、樹脂系の材料など、絶縁性が確保できる材料であればかまわない。特に、絶縁層としてSiO2など弾性表面波フィルタの温度補償に使用される材料を用いる場合には、図6に示すように、絶縁層601が覆うように構成すれば、小型で、帯域内特性、及び温度特性に優れた弾性表面波フィルタ600を実現することができる。
【0037】
また、弾性表面波フィルタの作製に関しては、パッケージへの実装のためパッド電極の厚みを厚くするプロセスを用いる場合があり、この場合には、配線電極125を、パッド電極を厚くする工程等と同時に行うことにより、プロセスの工程の数を増やすことなく本発明の弾性表面波フィルタが実現できるものである。
【0038】
(実施の形態2)
以下、本発明の弾性表面波フィルタの構成について、図面を用いて説明する。
【0039】
図7は、本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタの構成図である。図7において、弾性表面波フィルタ700は、圧電基板701上に、IDT電極702、703、704と反射器電極705、706を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第1の縦モード型フィルタ707と、IDT電極708、709、710と反射器電極711、712を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる第2の縦モード型フィルタ713とにより構成される。第1の縦モード型フィルタ707において、IDT電極702、703、704の一方の電極指は、電極パッド714、715、716に配線されてそれぞれ接地端子GND、入力端子IN、接地端子GNDに接続される。第2の縦モード型フィルタ713において、IDT電極708、709、710の一方の電極指は、電極パッド717、718、719に配線されてそれぞれ接地端子GND、出力端子OUT、接地端子GNDに接続される。また、IDT電極702の他方の電極指とIDT電極708の他方の電極指とは配線電極720により接続され、IDT電極704の他方の電極指とIDT電極710の他方の電極指とは配線電極721により接続される。さらに、配線電極720、721の上には、絶縁層722、723が設けられており、IDT電極703、709の他方の電極指は、配線電極724により接続され、さらに上部に形成され、電気的に接続された配線電極725により、接地端子GNDに接続される電極パッド726、727に接続される。このとき、配線電極725の電極幅は一部で電極幅の異なる領域を有する構成であり、絶縁層723を介して配線電極720、721と配線電極725とが立体交差する分の電極幅は、他の部分の電極幅に比べて小さく構成されている。さらに、反射器電極705、706、711、712は、反射器電極を構成するストリップラインの長さが一様ではなく、交差幅方向に斜めに削られている構成となっており、この削られた部分に電極パッド726、727が配置される。以上の構成とすることにより、配線電極725の抵抗を大きく増加させることなく、立体交差部の面積を小さくすることができ、従来に比べて、立体交差部における配線電極の容量結合を低減することができ、さらに、反射器電極において、ストリップラインの長さを変えて交差幅よりも短い領域を設けることにより、電極パッド726、727の一部が第1、第2の縦モード型フィルタの間に配置することができ、さらに小型化が実現できる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態の構成とすることにより、立体交差部における配線電極の容量結合を低減することができ、小型で通過帯域特性に優れる弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0041】
なお、本実施の形態においては、縦モード型フィルタを縦続接続した弾性表面波フィルタについて詳細な説明を行ったが、弾性表面波フィルタの構成に関しては、これに限るものではなく、弾性表面波共振器を梯子型に接続したラダー型フィルタ、あるいは格子型に接続したラティス型フィルタであってもよく、立体交差部の電極幅が他より小さく構成され、さらに、弾性表面波共振器を構成する反射器電極において、ストリップラインの長さが一様ではなく、一部削られた領域を有する構成であり、その領域に電極パッドが配置される構成であればかまわない。また、縦モード型フィルタと弾性表面波共振器を組み合わせた構成や1段の縦モード型フィルタに適用することも可能である。
【0042】
さらに、配線電極に関しては、上部の配線電極725の立体交差部における電極幅を小さくしたが、これは、配線電極720、721の電極幅を小さくしてもかまわない。また、配線電極720、721、725のすべての電極幅を立体交差部にて小さくしてもかまわない。この場合には、立体交差部の面積はさらに小さくでき、容量結合もさらに抑えることができるものである。
【0043】
また、配線電極に関しては、上部の配線電極725の立体交差部における電極幅を小さくしたが、図8に示すように、弾性表面波フィルタ800の配線電極801の電極幅が一様であっても小型化の効果は得られる。
【0044】
また、絶縁層に関しては、SiO2やSiN、樹脂系の材料など、絶縁性が確保できる材料であればかまわない。また、絶縁層としてSiO2など弾性表面波フィルタの温度補償に使用される材料を用い温度特性に優れた弾性表面波フィルタを実現することも可能である。
【0045】
また、反射器電極に関しては、本実施の形態においては、反射器電極がストリップラインの長さが交差幅方向に短い領域を有した構成であって、斜めに削れた構成としているが、この構成に限るものではなく、反射器の重み付けの効果を考慮して他の構成を適用してもよく、反射器を削った部分に電極パッドを配置さえすれば小型化の効果は同様に得られるものである。
【0046】
(実施の形態3)
以下、本発明のアンテナ共用器、高周波モジュール、通信機器の構成について、図面を用いて説明する。
【0047】
図9は、本発明の実施の形態3における通信機器の構成図である。図9において、通信機器900は、第1、第2の無線回路901、902と切換スイッチ903により構成される。第1の無線回路901は、送信フィルタ904と受信フィルタ905とにより構成されるアンテナ共用器906と、送信回路1と、送信回路1より出力された送信信号を増幅する送信増幅器907と、受信信号を増幅する受信増幅器908と、受信信号が入力される受信回路1とにより構成される。第2の無線回路902は、送信フィルタ909と受信フィルタ910とにより構成されるアンテナ共用器911と、送信回路2と、送信回路2より出力された送信信号を増幅する送信増幅器912と、受信信号を増幅する受信増幅器913と、受信信号が入力される受信回路2とにより構成される。切換スイッチの一方の端子はアンテナ端子ANTに接続され、他方の2つの端子は、それぞれ第1、第2の無線回路901、902を構成するアンテナ共用器906、911に接続される。以上の構成とすることにより、通信機器900は、第1と第2の無線回路901、902を有する複合機の構成となる。ここで、アンテナ共用器906において、送信フィルタ904または受信フィルタ905のいずれかに、実施の形態1または2で示した弾性表面波フィルタを適用することにより、小型で通過帯域特性に優れたアンテナ共用器906を実現することができる。また、アンテナ共用器911において、送信フィルタ909または受信フィルタ910のいずれかに、実施の形態1または2で示した弾性表面波フィルタを適用することにより、小型で通過帯域特性に優れたアンテナ共用器911を実現することができる。さらに、このようなアンテナ共用器906または911を用いて通信機器900を構成することにより、小型で高性能な通信機器を実現することができる。
【0048】
なお、本実施の形態において、通信機器における無線回路の数や回路構成などはこれに限るものではない。
【0049】
さらに、本実施の形態におけるアンテナ共用器を用いれば、アンテナ共用器906と送信増幅器907とから構成される高周波モジュール914として実現することも可能でありアンテナ共用器906、911と切換スイッチ903とから構成される高周波モジュール915を実現することが可能であり、小型で高性能な高周波モジュールを実現することができる。
【0050】
なお、高周波モジュールにおいて、アンテナ共用器と組み合わせるデバイスに関しては、これに限るものではなく、受信増幅器と組み合わせることも可能である。
【0051】
また、本実施の形態においては、高周波モジュール、通信機器に関して、アンテナ共用器を用いた構成となっているが、これは、実施の形態1または2の弾性表面波フィルタを用いた構成の通信機器であってもかまわない。
【0052】
(実施の形態4)
以下、本発明の弾性表面波フィルタの構成について、図面を用いて説明する。
【0053】
図13は、本発明の実施の形態4における弾性表面波フィルタの構成図である。図13において、弾性表面波フィルタ1300は、圧電基板1301上に、IDT電極1302、1303、1304と反射器電極1305、1306を弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置してなる1段の縦モード型フィルタにより構成される。前記縦モード型フィルタにおいて、IDT電極1302、1303、1304の一方の電極指は、電極パッド1314、1315、1316に配線されてそれぞれ接地端子GND、入力端子IN、接地端子GNDに接続される。また、IDT電極1303の他方の電極指は第1の配線電極1309を介して第2の配線電極と接することなく接地端子GNDに接続される電極パッド1317、1318に接続される。そして、IDT電極1302、1304の他方の電極指はそれぞれ第1の配線電極1307、1308を介して第2の配線電極1310、1313に接続され、電極パッド1319を介して出力端子OUTに接続される構成となる。また、第1の配線電極1309の上には、絶縁層1311、1312が設けられており、その上部を第2の配線電極である1310、1313が形成されている。このとき、第2の配線電極1310、1313の電極幅は一部で電極幅の異なる領域を有する構成であり、絶縁層1311、1312を介して第1の配線電極1309と立体交差する分の電極幅は、他の部分の電極幅に比べて小さく構成されている。ここで、図14に図13B−B’間の断面図を示す。本発明の実施の形態のような弾性表面波フィルタは第1の配線電極を形成した後、第2の配線電極を形成するという2段階のスパッタリングにより構成される。したがって、図14のように第1の配線電極1308と第2の配線電極1313間にはその密着度により接触抵抗が発生する。本実施の形態による構成であると、その接触抵抗1400は、IDT電極1302、1304の出力端子OUTへ接続される信号ライン上に発生する。一方で図15に従来の弾性表面波フィルタの構成図を示す。また、図16に図15C−C’間の断面図を示す。従来の弾性表面波フィルタの構成によると図16に示すように第1の配線電極1506と第2の配線電極1508との間の接触抵抗1600は、図15のIDT電極1503の接地端子GNDへと接続されるライン上に発生する。このため、本発明の実施の形態4における接触抵抗1400と従来の構成における接触抵抗1600が同程度の抵抗成分を持つとき、本発明の実施の形態では、出力端子OUTへの信号ライン上に抵抗成分が発生し、接地端子GNDへのライン上に発生する場合と比べて、弾性表面波フィルタのロス劣化を低減することができる。図17に、図13に示す本発明の実施の形態における弾性表面波フィルタの特性と図15に示す従来の構成における弾性表面波フィルタの特性の比較を示す。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態の構成とすることにより、配線電極間の接触抵抗の影響を低減することができ、小型で通過帯域特性に優れる弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0055】
なお、本実施の形態では、第2の配線電極1310、1313の電極幅は一部で電極幅の異なる領域を有する構成であるが、第2の配線電極1310、1313の電極幅によらずロス劣化を低減する効果は同様に得られるものである。
【0056】
また、本実施の形態において配線電極は、上部の配線電極1310、1313の立体交差部における電極幅を小さくしたが、これは、配線電極1309の電極幅を小さくしてもかまわない。また、配線電極1310、1313、1309のすべての電極幅を立体交差部にて小さくしてもかまわない。この場合には、立体交差部の面積はさらに小さくでき、容量結合もさらに抑えることができるものである。
【0057】
また、絶縁層に関しては、SiO2やSiN、樹脂系の材料など、絶縁性が確保できる材料であればかまわない。また、絶縁層としてSiO2など弾性表面波フィルタの温度補償に使用される材料を用い温度特性に優れた弾性表面波フィルタを実現することも可能である。
【0058】
また、反射器電極に関しては、本実施の形態においては、一様な交差幅をもつ反射器電極で構成されていたが、この構成に限るものではなく、反射器電極がストリップラインの長さが交差幅方向に短い領域を有して斜めに削れた構成や反射器の重み付けの効果を考慮した他の構成を適用してもよく、反射器を削った部分に電極パッドを配置さえすれば小型化の効果は同様に得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる弾性表面波フィルタは、小型で通過帯域特性に優れたアンテナ共用器として有用である。また、高周波モジュールや通信機器などの用途にも応用できる。
【符号の説明】
【0060】
100 弾性表面波フィルタ
101 圧電基板
102、103、104 IDT電極
105、106 反射器電極
107 第1の縦モード型フィルタ
108、109、110 IDT電極
111、112 反射器電極
113 第2の縦モード型フィルタ
114、115、116、117、118、119 電極パッド
120、121 配線電極
122、123 絶縁層
125 配線電極
126、127 電極パッド
400 弾性表面波フィルタ
401、402 IDT電極
500 弾性表面波フィルタ
501、502 IDT電極
503、504 電極パッド
600 弾性表面波フィルタ
601 絶縁層
700 弾性表面波フィルタ
701 圧電基板
702、703、704 IDT電極
705、706 反射器電極
707 第1の縦モード型フィルタ
708、709、710 IDT電極
711、712 反射器電極
713 第2の縦モード型フィルタ
714、715、716、717、718、719 電極パッド
720、721 配線電極
722、723 絶縁層
725 配線電極
726、727 電極パッド
800 弾性表面波フィルタ
801 配線電極
900 通信機器
901 第1の無線回路
902 第2の無線回路
903 切換スイッチ
904 送信フィルタ
905 受信フィルタ
906 アンテナ共用器
907 送信増幅器
908 受信増幅器
909 送信フィルタ
910 受信フィルタ
911 アンテナ共用器
912 送信増幅器
913 受信増幅器
914、915 高周波モジュール
1300 弾性表面波フィルタ
1301 圧電基板
1302、1303、1304 IDT電極
1305、1306 反射器電極
1307、1308、1309 第1の配線電極
1310、1313 第2の配線電極
1311、1312 絶縁層
1314、1315、1316、1317、1318、1319 電極パッド
1400 接触抵抗
1500 弾性表面波フィルタ
1501 圧電基板
1502、1503、1504 IDT電極
1505、1506、1507、1511 第1の配線電極
1508 第2の配線電極
1509、1510 絶縁層
1600 接触抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に形成された複数のIDT電極と複数の反射器電極と、
前記複数のIDT電極にそれぞれ接続された第1の配線電極及び第2の配線電極とを備えた弾性表面波フィルタであって、
前記第1の配線電極、及び前記第2の配線電極とは絶縁層を介して立体交差する構成であって、
前記第1の配線電極または前記第2の配線電極の少なくとも一方は、前記圧電基板の上に形成された電極パッドに接続され、
前記圧電基板の上において、前記反射器電極を構成するストリップラインが前記IDT電極の交差幅よりも短くなることで前記反射器電極が削除された領域を有し、
前記電極パッドの一部は前記領域に配置されたことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
前記第1の配線電極または前記第2の配線電極の少なくとも一方が接地端子に接続されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
前記複数のIDT電極が、弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
複数のIDT電極が弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された第1の弾性表面波フィルタと、
複数のIDT電極が弾性表面波の伝搬方向に沿って近接配置された第2の弾性表面波フィルタとを備え、
前記第1または第2の配線電極の少なくとも一方により、前記第1の弾性表面波フィルタまたは前記第2の弾性表面波フィルタにおけるIDT電極が接地されたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
前記電極パッドの一部は、前記第1の弾性表面波フィルタと前記第2の弾性表面波フィルタとの間に配置されたことを特徴とする請求項4に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器であって、
前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とするアンテナ共用器。
【請求項7】
送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、
送信増幅器または受信増幅器とを備えた高周波モジュールであって、
前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項8】
送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、
切換スイッチとを備えた高周波モジュールであって、
前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項9】
送信フィルタと受信フィルタとを備えたアンテナ共用器と、
送信増幅器と送信回路と、受信増幅器と受信回路とを備えた無線回路を有する通信機器であって、前記送信フィルタまたは受信フィルタの少なくとも一方が、請求項1に記載の弾性表面波フィルタにより構成されていることを特徴とする通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−217420(P2011−217420A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170674(P2011−170674)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【分割の表示】特願2007−43224(P2007−43224)の分割
【原出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】