説明

弾性表面波フィルタ

【課題】小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有する弾性表面波フィルタを提供する。
【解決手段】弾性表面波フィルタは、信号入力端子INと信号出力端子OUTとの間に挿入された直列腕共振子である1端子対弾性表面波共振子1と、信号入力端子INおよび信号出力端子OUTと接地との間に挿入された並列腕共振子である1端子対弾性表面波共振子2,3と、1端子対弾性表面波共振子1と並列に接続されたインダクタンス素子4とから構成される。1端子対弾性表面波共振子1〜3が形成される圧電基板は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を実現することができる弾性表面波フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の加入者数の増加に伴い、電波を効率的に利用する必要性が高まっている。また、携帯電話を用いて、電子メールはもとより、インターネットの閲覧や動画配信などのブロードバンドサービスへの需要が高まり、要求されるデータ通信量が増大している。このような急速なデータ通信需要の増加に対応して、通信容量の拡大や通信速度の高速化を目指した次世代高速データ通信サービスが次々と誕生している。
【0003】
通信容量の大容量化のため、帯域が広くとれるよう搬送周波数の高周波数化が進み、ワイヤレスLANでは、2GHz帯や5GHz帯などの周波数が使用されている。これらの周波数では、電波の直進性が高く、建物などの障害物があると受信感度が劣化し、データ通信ができないエリアが発生する。このような問題を解決するために、公共施設やオフィスビルなどに小型基地局や、屋外の電波を増幅して屋内に再送信するレピータなどを設置する取り組みが進んでいる。
【0004】
レピータは、屋外の弱い電波を受信して増幅し、受信周波数とは別の送信周波数で屋内に再送信する機能を有する。しかしながら、受信用アンテナと送信用アンテナとを近接して配置することが多く、また受信周波数と送信周波数とが接近している場合が多いので、受信信号と送信信号とが干渉しないよう互いの信号を急峻に減衰させるフィルタを必要とする。このような急峻な減衰特性を持つフィルタとして、従来は誘電体フィルタが多用されている。
【0005】
近年は公共施設やオフィスに限らず、いつどこでもシームレスに大容量通信環境を利用したいという需要が高まり、オフィスや家庭内にレピータを設置する需要が高まっている。しかしながら、オフィスや家庭内にリピ−タを設置する場合、設置スペースの関係からレピータを小さくする必要がある。そのため、レピータに使われる部品も小さくする必要がある。誘電体フィルタは、送信電力に対する耐性や、低挿入損失かつ急峻な減衰特性をもち、非常に優れているが、サイズが数センチ角と非常に大きく、原理的に小型化に適さない。
【0006】
小型化に適したフィルタとして、従来から弾性表面波フィルタが知られている。図23に、弾性表面波フィルタの一種であるラダー型フィルタの等価回路を示す。図23において、INは信号入力端子、OUTは信号出力端子である。ラダー型フィルタは、信号入出力端子間に挿入される1端子対弾性表面波共振子1と、信号入力端子INと接地との間に挿入される1端子対弾性表面波共振子2と、信号出力端子OUTと接地との間に挿入される1端子対弾性表面波共振子3とから構成される。
【0007】
図23のラダー型フィルタの動作原理について説明する。通常は、1端子対弾性表面波共振子1〜3について、LCフィルタなどの解析に用いられるフィルタ影像パラメータ法に基づいた解析を行うが、ここでは、汎用的な原理説明を行うため、偶奇モード解析を施しフィルタ構成全体に対して影像パラメータ法を適用する。
一般に、対称2端子対回路は、偶モード励振したときのインピーダンスをZeven、奇モード励振したときのインピーダンスをZoddとすると、図24に示すような対称格子型回路に変形できる。
【0008】
偶モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさと位相が同じ電圧を印加することであり、奇モード励振とは、2端子対回路の両端に大きさが同じで位相が反転した電圧を印加することである。偶モードインピーダンスZeven、奇モードインピーダンスZoddは、それぞれの励振モードにおける電圧と流入する電流の比である。また、偶モードインピーダンスZevenと奇モードインピーダンスZoddの値は、回路シミュレータなどにより容易に計算することができる。影像パラメータ法によれば、偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号のときに通過域となり、同符号のときに阻止域となる。
【0009】
図23に示したラダー型フィルタの通過特性を図25に示し、図23に示したラダー型フィルタを図24の格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図26に示す。図26において、B0は奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が急激に変動する領域である。図26と図23を対比させて分かるように、格子腕の偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と直列腕の奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号であれば通過域となり、同符号であれば阻止域となっていることが分かる。
【0010】
ただし、図23に示したラダー型フィルタでは、レピータに要求されるような急峻な減衰特性を実現できない。そこで、減衰特性を改善したラダー型フィルタが提案されている(例えば特許文献1参照)。図27に、特許文献1に開示されたラダー型フィルタの等価回路を示す。このラダー型フィルタは、図23に示した弾性表面波フィルタの1端子対弾性表面波共振子1と並列にインダクタンス素子4を接続した構成となっており、インダクタンス素子4の値を変化させることにより、減衰域を容易に確保できるようになっている。
【0011】
図27に示したラダー型フィルタの通過特性の1例を図28に示し、図26の場合と同様に、図27に示したラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図29に示す。図28において、1000は図23に示したラダー型フィルタの通過特性であり、1001は図27に示したラダー型フィルタの通過特性である。
【0012】
先と同様に偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|と奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|とが異符号であれば通過域となり、同符号であれば阻止域となるが、図26と異なるのは、図29に示すように奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が急激に変動する周波数領域がA,Bの2つ存在することである。領域AおよびBの周波数は、インダクタンス素子4の値を大きくすると、低周波数側に移動し、逆にインダクタンス素子4の値を小さくすると高周波側に移動する。このとき、領域AとBの周波数の差はほとんど変化しない。
【0013】
図27に示したラダー型フィルタにおいてインダクタンス素子4の値を小さくしたときの通過特性を図30に示し、このラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図31に示す。インダクタンス素子4の値を小さくすると、図31に示すように領域Aが通過域に近づき、通過域の低周波側近傍の2.46GHz付近に減衰域を形成できるが、図30に示すように2.55GHz付近の通過域低周波側の急峻性が劣化する。すなわち、通過域低周波側の減衰が図28に比べてなだらかになる。
【0014】
反対に、図27に示したラダー型フィルタにおいてインダクタンス素子4の値を大きくしたときの通過特性を図32に示し、このラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図33に示す。インダクタンス素子4の値を大きくすると、領域Aが通過域から離れ(図33では不図示)、領域Bが通過域に近づき、フィルタの通過域低周波側の急峻性が良くなる。しかし、減衰域が低周波側の2.25GHz付近へ大きく移動し、図32に示すように通過域近傍の2.4GHz付近の減衰量が図28に比べて劣化する。
【0015】
以上のように、フィルタの通過域近傍に減衰域を形成する場合、領域Aを通過域に近づければ良いが、領域Bが、インダクタンス素子4が無い図23のフィルタの領域B0(図26)から外れるため、フィルタの通過域低周波側の急峻性が劣化する。反対に領域Bが領域B0に近い配置になると、フィルタの通過域低周波側の急峻性が良くなるが、通過域低周波側の減衰域が通過域から離れてしまい望ましくない。このように、特許文献1に開示された従来の弾性表面波フィルタでは、減衰域を容易に変化させることが可能であるが、特に通過域低周披側近傍に減衰域を形成したい場合、フィルタの通過域低周波側の急峻性が劣化するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2003−69382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
以上のように、誘電体フィルタでは、サイズが数センチ角と非常に大きく、小型化に適していないという問題点があった。
また、従来の弾性表面波フィルタでは、減衰特性の急峻性が不十分であるという問題点があった。
【0018】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有する弾性表面波フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の弾性表面波フィルタは、信号入力端子と信号出力端子との間に挿入された直列腕共振子と、前記直列腕共振子と接地との間に挿入された並列腕共振子と、前記直列腕共振子と並列に接続された第1のインダクタンス素子または第1の位相線路とを備え、前記直列腕共振子と前記並列腕共振子とが形成される圧電基板は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第1の実施の形態)において、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子からなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第2の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子とからなることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波フィルタ(第1の実施の形態)は、前記直列腕共振子と前記並列腕共振子と前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路とを単位フィルタとして、複数の単位フィルタを直列に接続したことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第2の実施の形態)は、さらに、前記並列腕共振子と接地との間に挿入された第2、第3のインダクタンス素子を備え、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子からなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第2のインダクタンス素子の第1の端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が前記第3のインダクタンス素子の第1の端子に接続された第3の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記第2、第3のインダクタンス素子のそれぞれの第2の端子は、接地されていることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第3の実施の形態)は、さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のインダクタンス素子を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第2の実施の形態)は、前記直列腕共振子と前記並列腕共振子と前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路と前記第2、第3のインダクタンス素子とを単位フィルタとして、複数の単位フィルタを直列に接続したことを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第4の実施の形態)において、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第4の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第5の実施の形態)において、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地され、第3の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第4の端子が接地された2端子対弾性表面波共振子からなり、前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とするものである。
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第6の実施の形態)は、さらに、前記第3のインダクタンス素子の代わりに、前記信号出力端子と前記第3の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との間に挿入された第5のインダクタンス素子を備えることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第7の実施の形態)は、さらに、前記並列腕共振子と接地との間に挿入された第2、第3、第4のインダクタンス素子と、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第5のインダクタンス素子とを備え、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された1端子対弾性表面波共振子からなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第2のインダクタンス素子の第1の端子に接続され、第3の端子が前記信号出力端子に接続され、第4の端子が前記第3のインダクタンス素子の第1の端子に接続され、第5の端子が前記信号出力端子に接続され、第6の端子が前記第4のインダクタンス素子の第1の端子に接続された2端子対弾性表面波共振子からなり、前記第2、第3、第4のインダクタンス素子のそれぞれの第2の端子は、接地されていることを特徴とするものである。
【0026】
また、本発明の弾性表面波フィルタの1構成例(第8の実施の形態)において、前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第4の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第5の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が接地された第6の1端子対弾性表面波共振子とからなり、前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、信号入力端子と信号出力端子との間に挿入された直列腕共振子と、直列腕共振子と接地との間に挿入された並列腕共振子と、直列腕共振子と並列に接続された第1のインダクタンス素子または第1の位相線路とを設け、直列腕共振子と並列腕共振子とが形成される圧電基板の電気機械結合係数を0.1%以上1%以下とすることにより、低損失かつ急峻な減衰特性を有する弾性表面波フィルタを実現することができる。また、本発明では、弾性表面波フィルタを用いることにより、従来の誘電体フィルタに比べて小型化が可能となる。本発明は、屋外の弱い電波を受信して増幅し、受信周波数とは別の送信周波数で屋内に再送信する機能を有するレピータに好適である。
【0028】
また、本発明では、直列腕共振子を第1の1端子対弾性表面波共振子から構成し、並列腕共振子を第2の1端子対弾性表面波共振子と第3の1端子対弾性表面波共振子とから構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するハイパスフィルタを実現することができる。
【0029】
また、本発明では、さらに、並列腕共振子と接地との間に第2、第3のインダクタンス素子を設け、直列腕共振子を第1の1端子対弾性表面波共振子から構成し、並列腕共振子を第2の1端子対弾性表面波共振子と第3の1端子対弾性表面波共振子とから構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0030】
また、本発明では、さらに、信号入力端子と接地との間に第4のインダクタンス素子を設けることにより、配線と接地との間の不要な容量成分を相殺し、減衰量の劣化を防ぐことができる。
【0031】
また、本発明では、直列腕共振子を第1の1端子対弾性表面波共振子と第2の1端子対弾性表面波共振子とから構成し、並列腕共振子を第3の1端子対弾性表面波共振子と第4の1端子対弾性表面波共振子とから構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するハイパスフィルタを実現することができる。
【0032】
また、本発明では、直列腕共振子を第1の1端子対弾性表面波共振子と第2の1端子対弾性表面波共振子とから構成し、並列腕共振子を2端子対弾性表面波共振子から構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するハイパスフィルタを実現することができる。
【0033】
また、本発明では、第3のインダクタンス素子の代わりに、信号出力端子と第3の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との間に第5のインダクタンス素子を設けることにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0034】
また、本発明では、並列腕共振子と接地との間に挿入された第2、第3、第4のインダクタンス素子と、信号入力端子と接地との間に挿入された第5のインダクタンス素子とを設け、直列腕共振子を1端子対弾性表面波共振子から構成し、並列腕共振子を2端子対弾性表面波共振子から構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するローパスフィルタを実現することができる。
【0035】
また、本発明では、直列腕共振子を第1の1端子対弾性表面波共振子と第2の1端子対弾性表面波共振子とから構成し、並列腕共振子を第3の1端子対弾性表面波共振子と第4の1端子対弾性表面波共振子と第5の1端子対弾性表面波共振子と第6の1端子対弾性表面波共振子とから構成することにより、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有するバンドパスフィルタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの直列腕共振子を構成する1端子対弾性表面波共振子の平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する1端子対弾性表面波共振子の平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの通過特性を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における圧電基板の上限値設定の理由を説明する図である。
【図6】無線通信システムにおける周波数配置の例を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの他の構成を示す等価回路図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの直列腕からインダクタンス素子を除いた場合の等価回路図である。
【図10】図9の弾性表面波フィルタの通過特性を示す図である。
【図11】図9の弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの通過特性を示す図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの他の構成を示す等価回路図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図17】本発明の第5の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する2端子対弾性表面波共振子の平面図である。
【図19】本発明の第6の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図20】本発明の第7の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図21】本発明の第7の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する2端子対弾性表面波共振子の平面図である。
【図22】本発明の第8の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
【図23】従来のラダー型フィルタの等価回路図である。
【図24】対称2端子対回路を変形した対称格子型回路の等価回路図である。
【図25】図23のラダー型フィルタの通過特性を示す図である。
【図26】図23のラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を示す図である。
【図27】従来の他のラダー型フィルタの等価回路図である。
【図28】図27のラダー型フィルタの通過特性の1例を示す図である。
【図29】図27のラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性の1例を示す図である。
【図30】図27のラダー型フィルタの通過特性の他の例を示す図である。
【図31】図27のラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【図32】図27のラダー型フィルタの通過特性の他の例を示す図である。
【図33】図27のラダー型フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態においても、弾性表面波フィルタの回路構成は図27に示したとおりであるので、図27の符号を用いて説明する。
【0038】
図1は本実施の形態の弾性表面波フィルタの直列腕共振子を構成する1端子対弾性表面波共振子1の平面図である。1端子対弾性表面波共振子1は、圧電基板100上に1つのIDT(interdigital transducer :すだれ状電極)101を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器102,103を配置したものである。周知のように、IDTは、金属からなる櫛状の対向する2つの電極部を有し、各電極部は、対向する電極部に向かって交互に突出した複数の電極指を有している。1端子対弾性表面波共振子1の第1の端子(IDT101の一方の端子)はフィルタの信号入力端子INに接続され、1端子対弾性表面波共振子1の第2の端子(IDT101の他方の端子)はフィルタの信号出力端子OUTに接続されている。
【0039】
図2は本実施の形態の弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する1端子対弾性表面波共振子2の平面図である。1端子対弾性表面波共振子2は、圧電基板100上に1つのIDT201を形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器202,203を配置したものである。1端子対弾性表面波共振子2の第1の端子(IDT201の一方の端子)はフィルタの信号入力端子INに接続され、1端子対弾性表面波共振子2の第2の端子(IDT201の他方の端子)は接地されている。
1端子対弾性表面波共振子3の構成は、1端子対弾性表面波共振子2と同様なので、説明は省略する。
【0040】
発明者は、以上のような構成の弾性表面波フィルタにおいて、圧電基板100として電気機械結合係数の小さい基板を用いれば、通過域低周波側近傍に減衰域を形成し、かつ急峻な減衰特性が得られることを見出した。圧電基板100の材料としては、例えばXカット−112回転Y伝搬LiTaO3や、45°XカットZ伝播Li247など、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下の材料を選べばよい。
【0041】
電気機械結合係数が小さい圧電基板100を用いると、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が急激に変動する周波数領域AとBが互いに近づくことを見出した。領域AとBの間隔が狭いと、領域Bが、インダクタンス素子4が無い図23のフィルタの領域B0(図26)から離れることなく、領域Aを通過域に近づけることができるため、フィルタの減衰特性の急峻性を損なうことなく、通過域近傍に減衰域を設けることができる。
【0042】
圧電基板100として、電気機械結合係数がおよそ0.6%であるXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を用いた場合の本実施の形態の弾性表面波フィルタの通過特性を図3に示す。図3に示すように、通過域低周波側近傍の2.59GHz付近に減衰域が形成され、かつ2.61GHz付近で急峻な減衰特性が得られていることが分かる。
【0043】
本実施の形態の弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図4に示す。圧電基板100の電気機械結合係数が小さいため、図29に比べて、奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が変動する領域A’,B’におけるIm|Zodd|の変動量が小さいが、領域A’とB’の間隔が狭くなつていることが分かる。これにより、本実施の形態では、領域B’をフィルタの通過域から離すことなく、領域Aを通過域に近づけることができるため、減衰特性の急峻性を損なうことなく通過域近傍に減衰域を形成することができる。
なお、使用する圧電基板100は、Xカット−112回転Y伝搬LiTaO3に限定されず、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよい。
【0044】
次に、本実施の形態において、圧電基板100の電気機械結合係数を0.1%以上1%以下とした理由について説明する。
まず、圧電基板100の電気機械結合係数の下限値を0.1%とした理由は、圧電基板100の材料として使用できる周知の材料のうち、最も小さい電気機械結合係数を有する水晶の電気機械結合係数が0.1%だからである。
【0045】
次に、電気機械結合係数の上限値を1%とした理由について説明する。フィルタの通過域からfMHz離れた阻止域の周波数において、信号入力端子INに入力された信号を20dB減衰させるのに必要な圧電基板100の電気機械結合係数を図5に示す。図5によれば、通過域からf=20MHz離れた周波数で信号を20dB減衰させるには、圧電基板100の電気機械結合係数が3%程度でよいのに対し、通過域からf=5MHz離れた周波数で信号を20dB減衰させるには、圧電基板100の電気機械結合係数を1%以下にしなければならないことが分かる。
【0046】
そして、最近の無線通信では、各通信システムが使用する周波数帯域FBが、図6に示すように5MHzの帯域幅の干渉対策用帯域(ガードバンド)GBを挟んで配置されている。各周波数帯域間にガードバンドGBを設ける理由は、他の通信システムの周波数帯域との干渉を避けるためである。したがって、隣接する周波数帯域との干渉を避けるためには、フィルタの通過域から5MHz離れた阻止域の周波数において信号を20dB減衰させることが必要になる。このような要求を満たすためには、図5によれば、電気機械結合係数を1%以下にしなければならない。以上が、電気機械結合係数の上限値を1%とした理由である。
【0047】
以上のような構成により、本実施の形態では、小型で低損失かつ急峻な減衰特性を有する弾性表面波フィルタを実現することができる。本実施の形態は、例えば2.6GHz帯で動作するレピータ等に好適である。
なお、弾性表面波フィルタの構成は図27に限るものではない。図27の構成を単位フィルタとして、図7に示すように複数の単位フィルタを直列に接続するように構成してもよい。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1の実施の形態はハイパスフィルタの例であるが、ローパスフィルタを実現することも可能である。図8は本発明の第2の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。1端子対弾性表面波共振子1〜3については第1の実施の形態で説明したとおりである。
【0049】
本実施の形態は、第1の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、1端子対弾性表面波共振子2の第2の端子と接地との間にインダクタンス素子5を挿入し、1端子対弾性表面波共振子3の第2の端子と接地との間にインダクタンス素子6を挿入したものである。これにより、本実施の形態では、低周波側に通過域を有し、通過城高周波側近傍に減衰域を有したローパスフィルタを実現することができる。
【0050】
ここで本実施の形態の弾性表面波フィルタとの比較のために、図9に示すようにインダクタンス素子4が無い弾性表面波フィルタの通過特性を図10に示し、この弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図11に示す。図11において、B1は奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が急激に変動する領域である。第1の実施の形態と同様に、圧電基板100としては、電気機械結合係数がおよそ0.6%であるXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を用いた。
【0051】
図9の回路では、インダクタンス素子5,6を挿入することにより、図26と比較して偶モードインピーダンスの虚部Im|Zeven|が負から正へ変化していることが分かる。すなわち、直列腕のインダクタンス素子4が無い場合は、通過域であった領域が減衰域になり、減衰域であった領城が通過域となっている。
【0052】
次に、図8に示した本実施の形態の弾性表面波フィルタの通過特性を図12に示し、この弾性表面波フィルタを格子型回路に変形した場合のリアクタンス特性を図13に示す。本実施の形態においても、圧電基板100としては、電気機械結合係数がおよそ0.6%であるXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を用いた。
【0053】
このとき、図13に示す奇モードインピーダンスの虚部Im|Zodd|の正負が急激に変動する周波数領域Bが、インダクタンス素子4が無い図9のフィルタの領域B1(図11)の位置に近づくようにインダクタンス素子4の値を定める。これにより、図12に示すように、2.61GHz以下の低周波側に通過域を有し、通過域高周波側近傍の2.62GHz付近に急峻な減衰域を形成することができ、望ましい。
【0054】
本実施の形態においても、使用する圧電基板100は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよい。こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を奏するローパスフィルタを実現することができる。
【0055】
なお、弾性表面波フィルタの構成は図8に限るものではない。図8の構成を単位フィルタとして、図14に示すように複数の単位フィルタを直列に接続するように構成してもよい。
【0056】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は本発明の第3の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第2の実施の形態と同様にローパスフィルタを構成するものであり、第2の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、信号入力端子INと接地との間にインダクタンス素子7を挿入したものである。
【0057】
第2の実施の形態において、配線と接地との間の不要な容量成分が特性に悪影響を与え、減衰量が劣化する場合がある。本実施の形態は、このような減衰量の劣化を防ぐためのもので、信号入力端子INと接地との間にインダクタンス素子7を挿入することにより、不要な容量成分を相殺することができる。なお、インダクタンス素子を信号出力端子OUTと接地との間に挿入してもよい。
【0058】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。図16は本発明の第4の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第1の実施の形態と同様にハイパスフィルタを構成するものであり、第1の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、1端子対弾性表面波共振子1,3の出力側の端子およびインダクタンス素子4の出力側の端子と信号出力端子OUTとの間に1端子対弾性表面波共振子8を挿入すると共に、1端子対弾性表面波共振子1,3の出力側の端子およびインダクタンス素子4の出力側の端子と信号出力端子OUTとの間に1端子対弾性表面波共振子8と並列にインダクタンス素子9を挿入したものである。1端子対弾性表面波共振子8の構成は、1端子対弾性表面波共振子1と同様なので、説明は省略する。
【0059】
本実施の形態においても、使用する圧電基板100は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよく、例えばXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を使用すればよい。2GHz以上で動作させる場合、1端子対弾性表面波共振子1〜3,8の共振波長λを3μm以下とする。また、1端子対弾性表面波共振子2,3の共振波長は、1端子対弾性表面波共振子1、8の共振波長より長いものとする。
【0060】
1端子対弾性表面波共振子1〜3,8の電極の膜厚を共振波長λで割り規格化した規格化膜厚を4%から7%とした。1端子対弾性表面波共振子1〜3,8のIDTの電極指の規格化交差幅を7λ以下とし、本実施の形態では、1端子対弾性表面波共振子1〜3,8のIDTの電極指の規格化交差幅を同一の規格化交差幅とし、規格化交差幅を5λとした。
【0061】
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。図17は本発明の第5の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第4の実施の形態と同様にハイパスフィルタを構成するものであり、第4の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、1端子対弾性表面波共振子2,3の代わりに2端子対弾性表面波共振子10を用いるものである。
【0062】
図18は本実施の形態の弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する2端子対弾性表面波共振子10の平面図である。2端子対弾性表面波共振子10は、圧電基板100上に送信用IDT104と受信用IDT105とを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器106,107を配置したものである。
【0063】
2端子対弾性表面波共振子10の第1の端子(送信用IDT104の一方の端子)はフィルタの信号入力端子INに接続され、2端子対弾性表面波共振子10の第2の端子(送信用IDT104の他方の端子)は接地されている。また、2端子対弾性表面波共振子10の第3の端子(受信用IDT105の一方の端子)は1端子対弾性表面波共振子1の出力側の端子とインダクタンス素子4の出力側の端子と1端子対弾性表面波共振子8の入力側の端子とインダクタンス素子9の入力側の端子とに接続され、2端子対弾性表面波共振子10の第4の端子(受信用IDT105の他方の端子)は接地されている。
【0064】
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。図19は本発明の第6の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第3の実施の形態と同様にローパスフィルタを構成するものであり、第3の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、インダクタンス素子6を設ける代わりに、信号出力端子OUTと1端子対弾性表面波共振子3の第1の端子との間にインダクタンス素子11を挿入したものである。
【0065】
本実施の形態においても、使用する圧電基板100は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよく、例えばXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を使用すればよい。2GHz以上で動作させる場合、1端子対弾性表面波共振子1〜3の共振波長λを3μm以下とする。また、1端子対弾性表面波共振子2,3の共振波長は、1端子対弾性表面波共振子1の共振波長より長いものとする。
【0066】
1端子対弾性表面波共振子1〜3の電極の膜厚を共振波長λで割り規格化した規格化膜厚を4%から7%とした。1端子対弾性表面波共振子1〜3のIDTの電極指の規格化交差幅を7λ以下とし、ここでは、1端子対弾性表面波共振子1〜3のIDTの電極指の規格化交差幅を同一の規格化交差幅とし、規格化交差幅を5λとした。インダクタンス素子5,11のインダクタ値は、インダクタンス素子7のインダクタ値よりも大きい。
【0067】
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。図20は本発明の第7の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第3の実施の形態と同様にローパスフィルタを構成するものであり、第3の実施の形態の弾性表面波フィルタにおいて、1端子対弾性表面波共振子2,3の代わりに、2端子対弾性表面波共振子12を用い、さらに2端子対弾性表面波共振子12の端子と接地との間にインダクタンス素子13を追加したものである。
【0068】
図21は本実施の形態の弾性表面波フィルタの並列腕共振子を構成する2端子対弾性表面波共振子12の平面図である。2端子対弾性表面波共振子12は、圧電基板100上に送信用IDT121と受信用IDT122と受信用IDT123とを形成し、さらにその両側にそれぞれ反射器124,125を配置したものである。
【0069】
2端子対弾性表面波共振子12の第1の端子(送信用IDT121の一方の端子)はフィルタの信号入力端子INに接続され、2端子対弾性表面波共振子12の第2の端子(送信用IDT121の他方の端子)はインダクタンス素子5の第1の端子に接続されている。また、2端子対弾性表面波共振子12の第3の端子(受信用IDT122の一方の端子)および第5の端子(受信用IDT123の一方の端子)は1端子対弾性表面波共振子1の出力側の端子とインダクタンス素子4の出力側の端子とに接続され、2端子対弾性表面波共振子12の第4の端子(受信用IDT122の他方の端子)および第6の端子(受信用IDT123の他方の端子)はそれぞれインダクタンス素子6,13の第1の端子に接続されている。そして、インダクタンス素子5,6,13のそれぞれの第2の端子は接地されている。
【0070】
本実施の形態においても、使用する圧電基板100は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよく、例えばXカット−112回転Y伝搬LiTaO3を使用すればよい。2GHz以上で動作させる場合、1端子対弾性表面波共振子1および2端子対弾性表面波共振子12の共振波長λを3μm以下とする。また、2端子対弾性表面波共振子12の共振波長は、1端子対弾性表面波共振子1の共振波長より長いものとする。
【0071】
1端子対弾性表面波共振子1および2端子対弾性表面波共振子12の電極の膜厚を共振波長λで割り規格化した規格化膜厚を4%から7%とした。1端子対弾性表面波共振子1および2端子対弾性表面波共振子12のIDTの電極指の規格化交差幅を7λ以下とし、ここでは、1端子対弾性表面波共振子1および2端子対弾性表面波共振子12のIDTの電極指の規格化交差幅を同一の規格化交差幅とし、規格化交差幅を5λとした。インダクタンス素子5,6のインダクタ値は、インダクタンス素子13のインダクタ値よりも大きい。
【0072】
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。図22は本発明の第8の実施の形態に係る弾性表面波フィルタの等価回路図である。
本実施の形態の弾性表面波フィルタは、バンドパスフィルタを構成するものであり、1端子対弾性表面波共振子1a,1b,2a,2b,3a,3bと、インダクタンス素子4a,4b,5b,6bとから構成される。1端子対弾性表面波共振子1a,2a,3aとインダクタンス素子4aとは、図27に示した第1の実施の形態のハイパスフィルタに相当し、1端子対弾性表面波共振子1b,2b,3bとインダクタンス素子4b,5b,6bとは、図8に示した第2の実施の形態のローパスフィルタに相当する。このように、本実施の形態の弾性表面波フィルタは、第1の実施の形態のハイパスフィルタと第2の実施の形態のローパスフィルタとを直列に接続したものであるので、各構成素子の詳細な説明は省略する。使用する圧電基板100は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であればよい。
【0073】
本実施の形態では、ハイパスフィルタの減衰域がバンドパスフィルタの低周波側の減衰域となり、ローパスフィルタの減衰域がバンドパスフィルタの高周波側の減衰域となるように、ハイパスフィルタのフィルタの共振波長を、ローパスフィルタの共振波長より大きくする(すなわち、ハイパスフィルタの共振周波数を、ローパスフィルタの共振周波数よりも低くする)。これにより、通過域の両側に急峻な減衰特性を有するバンドパスフィルタを実現することができる。
【0074】
なお、第1〜第8の実施の形態において、インダクタンス素子4,4a,4b,9の代わりに、位相線路(ストリップライン)を用いてもよい。位相線路は、誘電体内に信号導体を設けたものである。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば屋外の弱い電波を受信して増幅し、受信周波数とは別の送信周波数で屋内に再送信する機能を有するレピータ等に使用可能な弾性表面波フィルタに適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1a,1b,2,2a,2b,3,3a,3b,8…1端子対弾性表面波共振子、4,4a,4b,5,5b,6,6b,7,9,11,13…インダクタンス素子、10,12…2端子対弾性表面波共振子、100…圧電基板、101,104,105,121,122,123,201…すだれ状電極、102,103,106,107,124,125,202,203…反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力端子と信号出力端子との間に挿入された直列腕共振子と、
前記直列腕共振子と接地との間に挿入された並列腕共振子と、
前記直列腕共振子と並列に接続された第1のインダクタンス素子または第1の位相線路とを備え、
前記直列腕共振子と前記並列腕共振子とが形成される圧電基板は、電気機械結合係数が0.1%以上1%以下であることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項2】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子からなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第2の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子とからなることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項3】
請求項1または2記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子と前記並列腕共振子と前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路とを単位フィルタとして、複数の単位フィルタを直列に接続したことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項4】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
さらに、前記並列腕共振子と接地との間に挿入された第2、第3のインダクタンス素子を備え、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子からなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第2のインダクタンス素子の第1の端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が前記第3のインダクタンス素子の第1の端子に接続された第3の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記第2、第3のインダクタンス素子のそれぞれの第2の端子は、接地されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項5】
請求項4記載の弾性表面波フィルタにおいて、
さらに、前記信号入力端子と接地との間に挿入された第4のインダクタンス素子を備えることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項6】
請求項4記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子と前記並列腕共振子と前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路と前記第2、第3のインダクタンス素子とを単位フィルタとして、複数の単位フィルタを直列に接続したことを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項7】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第4の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項8】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地され、第3の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第4の端子が接地された2端子対弾性表面波共振子からなり、
前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項9】
請求項5記載の弾性表面波フィルタにおいて、
さらに、前記第3のインダクタンス素子の代わりに、前記信号出力端子と前記第3の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との間に挿入された第5のインダクタンス素子を備えることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項10】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
さらに、前記並列腕共振子と接地との間に挿入された第2、第3、第4のインダクタンス素子と、
前記信号入力端子と接地との間に挿入された第5のインダクタンス素子とを備え、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された1端子対弾性表面波共振子からなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が前記第2のインダクタンス素子の第1の端子に接続され、第3の端子が前記信号出力端子に接続され、第4の端子が前記第3のインダクタンス素子の第1の端子に接続され、第5の端子が前記信号出力端子に接続され、第6の端子が前記第4のインダクタンス素子の第1の端子に接続された2端子対弾性表面波共振子からなり、
前記第2、第3、第4のインダクタンス素子のそれぞれの第2の端子は、接地されていることを特徴とする弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
請求項1記載の弾性表面波フィルタにおいて、
前記直列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続された第1の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子に接続され、第2の端子が前記信号出力端子に接続された第2の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記並列腕共振子は、第1の端子が前記信号入力端子に接続され、第2の端子が接地された第3の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第4の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記第1の1端子対弾性表面波共振子の第2の端子と前記第2の1端子対弾性表面波共振子の第1の端子との接続点に接続され、第2の端子が接地された第5の1端子対弾性表面波共振子と、第1の端子が前記信号出力端子に接続され、第2の端子が接地された第6の1端子対弾性表面波共振子とからなり、
前記第1のインダクタンス素子または第1の位相線路は、前記第1、第2の1端子対弾性表面波共振子の各々に1つずつ並列に接続されることを特徴とする弾性表面波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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