説明

弾性表面波共振器並びにそれを用いた弾性表面波フィルタ及びアンテナ共用器

【課題】弾性表面波の漏れを改善した弾性表面波共振器の提供。
【解決手段】圧電基板と、前記圧電基板の上面に設けられた櫛型電極102と、前記櫛型電極102を覆う誘電体薄膜とを備えた弾性表面波共振器であって、前記櫛型電極102は、バスバー電極領域105とダミー電極領域106と交差領域107とを含む構成であって、前記バスバー電極領域105の上部において、前記誘電体薄膜の厚みが前記交差領域上部の前記誘電体薄膜の厚みよりも薄い構成である。この構成で、弾性表面波の横方向の漏れを改善して、特性に優れた弾性表面波共振器を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波共振器、及びそれを用いた弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、広帯域な特性を有する弾性表面波フィルタを実現するためには、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)基板などの電気機械結合係数の大きな圧電基板が用いられていた。しかし、この種の基板を用いた弾性表面波フィルタは、一般に温度特性が悪いという欠点を有していた。温度特性の改善としては、LiNbO3基板上にSiO2の薄膜層を形成するとともに、前記LiNbO3基板の回転Y板のカット角度を−10度〜+30度とし、前記薄膜層の膜厚寸法をH、前記弾性表面波の動作中心周波数の波長をλとしたときに、H/λの値を0.115から0.31とする構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような基板上に形成される弾性表面波共振器をラダー型に接続することにより、広帯域な特性を有する弾性表面波フィルタを構成することができる。また、この種の基板を用いた場合には、横モードによるスプリアスが存在する場合がある。このスプリアスの抑圧には、一般には、櫛型電極に重み付けする方法がある。
【0004】
図15Aは従来の弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図15Bは図15AのF−F部分の断面図である。圧電基板1201上に櫛型電極1202と反射器電極1203が形成され、その上に、SiO2薄膜1204が形成されている。ここで、櫛型電極1202は、横モードのスプリアス抑圧のために、アポタイズ重み付けが施されている。
【0005】
尚、この出願に関する先行文献として、例えば特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−209458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この弾性表面波共振器においては、弾性表面波共振器における音速に起因する弾性表面波の横方向の漏れにより、弾性表面波共振器の特性が劣化するという課題を有していた。また、このような弾性表面波共振器を用いて弾性表面波フィルタを構成した場合には、弾性表面波フィルタの挿入損失や減衰特性が劣化するという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来の課題を解決するもので、弾性表面波の漏れを改善して、特性に優れた弾性表面波共振器を提供する。また、そのような弾性表面波共振器を用いた弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を提供する。本発明は、圧電基板と、前記圧電基板の上面に設けられた櫛型電極と、前記櫛型電極を覆う誘電体薄膜とを備えた弾性表面波共振器であって、前記櫛型電極は、バスバー電極領域とダミー電極領域と交差領域とを含む構成であって、前記バスバー電極領域の上部において、前記誘電体薄膜の厚みが前記交差領域上部の前記誘電体薄膜の厚みよりも薄い構成である。
【発明の効果】
【0009】
上記構成で、弾性表面波の横方向の漏れを改善して、特性に優れた弾性表面波共振器を実現することができるという効果がある。また、そのような弾性表面波共振器を用いて弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を構成することにより、優れた特性を有する弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】実施の形態1における弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図1B】実施の形態1における弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図2】実施の形態1における弾性表面波共振器の通過特性図
【図3A】実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す上面図
【図3B】実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す断面図
【図4】実施の形態1における弾性表面波共振器の通過特性図
【図5A】実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す上面図
【図5B】実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す断面図
【図6A】実施の形態2における弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図6B】実施の形態2における弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図7A】実施の形態2における弾性表面波共振器の通過特性図
【図7B】実施の形態2における弾性表面波共振器の通過特性図
【図8A】実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図8B】実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図9A】実施の形態2における比較のための通過特性図
【図9B】実施の形態2における比較のための通過特性図
【図10】実施の形態3における弾性表面波フィルタを示す回路図
【図11A】実施の形態2における弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図11B】実施の形態2における弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図12A】実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図12B】実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図13】実施の形態2における弾性表面波共振器の通過特性図
【図14】実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の通過特性図
【図15A】従来の弾性表面波共振器の構成を示す上面図
【図15B】従来の弾性表面波共振器の構成を示す断面図
【図16】従来の弾性表面波共振器の通過特性図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
図1Aは実施の形態1における弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図1Bは、図1AのA−Aの断面図である。圧電基板101上に櫛型電極102と反射器電極103が形成され、その上に、SiO2薄膜104が形成される構成である。櫛型電極102は、バスバー電極領域105とダミー電極領域106、交差領域107とを含む構成である。櫛型電極102は、横モードのスプリアス抑圧のために、アポタイズ重み付けが施されている。ここで、ダミー電極領域106とは、櫛型電極102におけるダミー電極の最小長さの領域を示し、交差領域107とは、櫛型電極102の交差する最大長さの領域を示す。さらに、櫛型電極102のバスバー電極領域105の上部はSiO2薄膜104が取り除かれ電極が露出した構成となっている。即ち、SiO2薄膜104の厚みがゼロである。
【0013】
このような弾性表面波共振器の周波数対通過特性を図2に示す。また、比較のために、図15A、図15Bで示した従来の弾性表面波共振器の通過特性を図16に示す。ここで、圧電基板101としては、カット角が5度の回転Y板のLiNbO3基板を用いており、電極はAlを主成分とした材料を用いている。また、電極とSiO2薄膜104の膜厚は、波長で規格化した値で、それぞれ8%、20%としている。図2と図16とに示すように、本発明の弾性表面波共振器における最大減衰量は−21dBであり、従来の弾性表面波共振器における最大減衰量は−19dBである。即ち、本発明の弾性表面波共振器の特性は改善されている。また、反共振点でのQ値に関しては、本発明の弾性表面波共振器ではQ値が230であり、従来の弾性表面波共振器ではQ値が194であった。共振器特性として改善が実現している。これは、バスバー電極領域105の上部のSiO2薄膜104を取り除き電極を露出させることにより、弾性表面波共振器における弾性表面波のバスバー電極領域105の音速が交差領域107の音速よりも速くすることができるため、弾性表面波の横方向すなわちバスバー電極方向への漏れを抑え、閉じ込めが良くなったためと考えられる。
【0014】
以上説明したように、本発明の弾性表面波共振器は、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105の上部のSiO2薄膜104を取り除くことにより、弾性表面波共振器の特性を改善でき、優れた弾性表面波共振器を実現することができる。
【0015】
SiO2薄膜を取り除く方法としては、SiO2薄膜の成膜後にエッチングして形成してもよく、また、SiO2薄膜の成膜前にあらかじめ櫛型電極102におけるバスバー電極領域105の上部にマスキングしてSiO2薄膜が非形成状態となるようにしてもかまわない。
【0016】
なお、本実施の形態においては、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105の上部のSiO2薄膜104を取り除く構成について説明したが、これは図3A、図3Bに示すような構成であってもよい。図3Aは実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す上面図である。図3Bは図3AのB−Bの断面図である。図1の構成と異なるのは、弾性表面波共振器の櫛型電極102のダミー電極領域106の上部のSiO2薄膜104が取り除かれている点である。このような弾性表面波共振器の通過特性を図4に示す。図4において、最大減衰量は−23dBとさらに改善している。また、反共振点のQ値は245であり、向上している。このように、ダミー電極領域106のSiO2薄膜104を取り除くことにより弾性表面波共振器の特性をさらに改善することができる。
【0017】
なお、本実施の形態においては、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105とダミー電極領域106の上部のSiO2薄膜104が全て取り除かれた構成として説明しているが、この構成に関してはこれに限るものではない。どちらか一方でもよい。また、図5Aに示すような弾性表面波共振器の構成であってもかまわない。図5Aは実施の形態1における弾性表面波共振器の他の構成を示す上面図である。図5Bは図5AにおけるC−Cの断面図である。このように、SiO2薄膜104を取り除く領域を櫛型電極102のダミー電極領域106と交差領域107の間のギャップ領域にまで適用してもかまわない。この場合には、弾性表面波の主な伝搬路である交差領域107の上部においては、SiO2薄膜104は残したままとするのが好ましく、交差領域107の上部のSiO2薄膜104を取り除くと共振器特性を劣化させてしまう可能性がある。よって、SiO2薄膜104は最大交差幅よりもダミー電極領域106側において取り除くことが好ましい。
【0018】
なお、本実施の形態においては、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105、またはダミー電極領域106の上部のSiO2薄膜104が全て取り除かれた構成、即ちSiO2薄膜104の厚みがゼロとして説明しているが、この構成に限るものではない。交差領域107の上部のSiO2薄膜104よりもバスバー電極領域105の上部のSiO2薄膜104が薄い構成であってもよい。弾性表面波共振器の交差領域107の上部とバスバー電極領域105、またはダミー電極領域106の上部との構成を変えて、弾性表面波共振器における弾性表面波のバスバー電極領域105の音速が交差領域107の音速よりも速くすることができる構成であればよい。
【0019】
また、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105、またはダミー電極領域106におけるすべての領域の上部のSiO2薄膜104が取り除かれたとしているが、これは少なくとも一部の領域だけであってもかまわない。すなわち、櫛型電極102におけるバスバー電極領域105、またはダミー電極領域106における一部の領域におけるSiO2薄膜104が取り除かれたか、あるいはSiO2薄膜104が薄い構成かであれば本発明と同様の効果は得られる。
【0020】
また、本実施の形態においては、圧電基板101として、カット角が5度の回転Y板のLiNbO3基板とし、電極とSiO2薄膜104の膜厚は、波長で規格化した値で、それぞれ8%、20%であるとして説明したが、これらに限るものではなく、また、LiNbO3基板のカット角については、−10から+30度程度の範囲であれば、本発明の構成を適用することにより、広帯域でかつ温度特性に優れ、特性の優れた弾性表面波共振器を実現することができる。
【0021】
また、電極の材料に関しては、Alを主成分とする材料としているが、これに限るものではなく、CuやAu、その他の材料を用いてもかまわない。
【0022】
また、誘電体薄膜としてSiO2薄膜104を用いた構成として説明したが、これは他の誘電体材料、またはその多層構成にも適用可能である。
【0023】
また、反射器電極103の構成に関しても、本実施の形態に限るものではない。また、反射器電極103において、櫛型電極102のバスバー電極領域105、ダミー電極領域106に対応する領域の上部におけるSiO2薄膜104を取り除く、あるいは薄くする構成であってもかまわない。この場合には、反射器における弾性表面波の横方向への漏れの軽減が期待できる。
【0024】
また、櫛型電極102に関しても、実施の形態においてはアポタイズ重み付けを施しているが、この構成に限るものではない。
【0025】
また、本実施の形態においては、反射器電極を備えた弾性表面波共振器として説明をしているが、本発明は櫛型電極に適用するものであり、反射器電極がない場合であっても効果は得られる。
【0026】
(実施の形態2)
図6Aは実施の形態2における弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図6Bは図6AのD−Dの断面図である。圧電基板701上に櫛型電極702と反射器電極703が形成され、その上に、SiO2薄膜704が形成されている。櫛型電極702は、バスバー電極領域705とダミー電極領域706、交差領域707とを含む構成であり、アポタイズ重み付けを施さない正規型の櫛型電極構成である。ここで、ダミー電極領域706とは、櫛型電極702におけるダミー電極の最小長さの領域を示し、交差領域707とは、櫛型電極の交差する最大長さの領域を示す。また、ダミー電極領域706はメタライズされたダミー電極重み付け708が施されている構成であって、中心部から外側に向かってメタライズ領域が大きくなり、ダミー電極の長さが徐々に短くなっている構成である。さらに、櫛型電極702のバスバー電極領域705、ダミー電極領域706及びその上部において、SiO2薄膜704が取り除かれた構成となっている。
【0027】
このような弾性表面波共振器の通過特性を図7A、図7Bに示す。図7A、図7Bは同じ弾性表面波共振器の通過特性であり、図7Bは図7Aの縦軸を拡大した図である。また、比較のため、図8A、図8Bで示すような弾性表面波共振器の通過特性を図9A、図9Bに示す。図8Aは実施の形態2における比較のための弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図8Bは図8AのE−Eの断面を示す。図9Bは、図9Aの縦軸を拡大した図である。ここで、圧電基板としては、カット角が5度の回転Y板のLiNbO3基板を用いており、電極はAlを主成分とした材料を用いている。また、電極とSiO2薄膜の膜厚は、波長で規格化した値で、それぞれ8%、20%としている。本実施の形態である図6A、図6Bの弾性表面波共振器の構成はメタライズされたダミー電極重み付け708を含むダミー電極領域706上のSiO2薄膜704が取り除かれている。一方、図8A、図8Bの比較のための弾性表面波共振器は、ダミー電極重み付け708を含むダミー電極領域706上のSiO2薄膜704が存在する。図9A、図9Bにおいては、横モードによるスプリアス1001が現れている。一方、図7A、図7Bにおいては、このスプリアスが抑圧されて優れた共振器特性が得られている。また、図7Aに示すように、本発明の弾性表面波共振器における最大減衰量は−20dBである。また、図9Aに示すように、比較のための弾性表面波共振器における最大減衰量は−18dBである。このように、本発明の構成により、弾性表面波共振器の特性の改善も同時に実現している。これは、ダミー電極領域706の上部のSiO2薄膜704を取り除くことにより、弾性表面波共振器における弾性表面波のダミー電極領域706の音速を交差領域707の音速よりも速くすることができ、弾性表面波の横方向すなわち、ダミー電極領域706方向への漏れを抑え、閉じ込めが良くなったためである。
【0028】
よって、本発明の構成においては、メタライズされたダミー電極重み付け708が施されたダミー電極領域の上部におけるSiO2薄膜を非形成状態とすることにより、横モードによるスプリアス1001を抑圧できるという効果に加えて、共振器特性を改善するという効果が得られるものである。
【0029】
また、本実施の形態で示したように、アポタイズ重み付けを施すことなく、正規型の櫛型電極構成で横モードによるスプリアスを抑圧できるということは、アポタイズ重み付けによるQ値などの共振器特性の低下を防ぐことができ、弾性表面波共振器を実現する上で特性的に有利な構成となる。さらに、弾性表面波共振器として、同一の静電容量を実現する場合、本発明の弾性表面波共振器のほうが、アポタイズ重み付けを施さなくても横モードのスプリアスを抑圧できるため、従来のアポタイズ重み付けされた弾性表面波共振器よりも共振器サイズを小さくすることができ、弾性表面波共振器を小型化できるという効果もある。
【0030】
以上説明したように、本発明の弾性表面波共振器は、櫛型電極702におけるダミー電極領域706に重み付けを施し、さらにその上部のSiO2薄膜704を取り除くことにより、弾性表面波共振器の特性を改善でき、優れた弾性表面波共振器を実現することができる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、櫛型電極702におけるダミー電極領域706の上部のSiO2薄膜704を取り除く構成について説明したが、これは、ダミー電極領域706とバスバー電極領域705の両方の上部のSiO2薄膜704を取り除く構成であってもかまわない。
【0032】
また、SiO2薄膜704が全て取り除かれたとして説明しているが、この構成に関してはこれに限るものではなく、交差領域707の上部のSiO2薄膜よりもダミー電極領域706の上部のSiO2薄膜が薄い構成であってもよい。弾性表面波共振器の交差領域707の上部とダミー電極領域706の上部との構成を変えて、弾性表面波共振器における弾性表面波のダミー電極領域706の音速を交差領域707の音速よりも速くすることができる構成であればよい。
【0033】
また、ダミー電極領域706におけるすべての領域の上部のSiO2薄膜704が取り除かれた構成としているが、これは少なくとも一部の領域であってもかまわない。すなわち、ダミー電極領域706における一部の領域におけるSiO2薄膜704が取り除かれた、あるいはSiO2薄膜704が薄い構成であれば本発明と同様の効果は得られる。
【0034】
また、ダミー電極領域706と合わせて、櫛型電極702におけるバスバー電極領域705における一部の領域におけるSiO2薄膜704が取り除かれた、あるいはSiO2薄膜が薄い構成であってもかまわない。
【0035】
また、ダミー重み付けの形状を中心部から外側に向かってメタライズされてダミー電極の長さが徐々に短くなっている構成としているがこれに限るものではなく、ダミー電極領域に何らかの重み付けがされ、かつ、SiO2薄膜704が取り除かれた、あるいはSiO2薄膜704が薄い構成であれば本発明と同様の効果が得られる。
【0036】
また、本実施の形態においては、圧電基板はカット角が5度の回転Y板のLiNbO3基板とし、櫛型電極702における電極とSiO2薄膜704の膜厚は、波長で規格化した値で、それぞれ8%、20%であるとして説明したが、これらに限るものではなく、また、LiNbO3基板のカット角については、−10から+30度程度の範囲であれば、本発明の構成を適用することにより、広帯域でかつ温度特性に優れ、特性の優れた弾性表面波共振器を実現することができる。
【0037】
また、電極の材料に関しては、Alを主成分とする材料としているが、これに限るものではなく、CuやAu、その他の材料を用いてもかまわない。
【0038】
また、誘電体薄膜としてSiO2薄膜704を用いた構成として説明したが、これは他の材料、または多層構成であってもかまわない。
【0039】
また、反射器電極703の構成に関しても、これに限るものではなく、また、反射器電極703におけるバスバー電極領域705、ダミー電極領域706に対応する領域の上部におけるSiO2薄膜704を取り除く、あるいは薄くする構成であってもかまわない。
【0040】
この場合には、反射器における弾性表面波の横方向への漏れの軽減が期待できる。
【0041】
また、櫛型電極702に関しても、本実施の形態においては正規型の電極構成としているが、アポタイズ重み付けと組み合わせて用いてもよい。その場合には、さらにスプリアスの抑圧の効果が実現できるものである。
【0042】
また、本実施の形態においては、反射器電極を備えた弾性表面波共振器として説明をしているが、本発明は櫛型電極に適用するものであり、反射器電極がない場合であっても効果は得られる。
【0043】
次に、誘電体薄膜の非形成状態の領域に関して説明する。図11Aは弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図11Bは図11AのH−Hの断面図である。図12Aは図11Aとの比較のための弾性表面波共振器の構成を示す上面図である。図12Bは図12AのI−Iの断面図である。図11A、図11Bに示すように、誘電体薄膜の非形成状態の領域がダミー領域の上とバスバー領域の上のみとした場合と、図12A、図12Bに示すように誘電体薄膜の非形成状態の領域が交差領域の一部を含むとした場合とについて比較を行った。ここでは、交差幅は25μmであり、図12A、図12Bでは、交差領域において、1μm内側に誘電体薄膜の非形成状態の領域を形成している。また、弾性表面波共振器の構成としては、正規型の電極構成とし、ダミー電極重み付けの施されていない状態で比較を行った。図11A、図11Bにおける弾性表面波共振器の通過特性を図13に示す。図12A、図12Bにおける弾性表面波共振器の通過特性を図14に示す。図11A、図11Bの弾性表面波共振器の共振器特性に比べ、図12A、図12Bの弾性表面波共振器の共振器特性はスプリアスが大きく、弾性表面波共振器として特性が劣化している。よって、交差領域に関しては、誘電体薄膜が形成状態とする方が好ましい。
【0044】
(実施の形態3)
図10は、本発明の実施の形態3における弾性表面波フィルタの構成を示す図である。図10において、1101、1102、1103、1104は直列腕の弾性表面波共振器であり、1105、1106は並列腕の弾性表面波共振器である。ここで、弾性表面波共振器1101、1102、1103、1104、1105、1106は、実施の形態1、あるいは実施の形態2で示した弾性表面波共振器を用いて構成される。以上の構成により、優れた特性を有するラダー型の弾性表面波フィルタを実現することができる。
【0045】
本実施の形態においては、6個の弾性表面波共振器1101、1102、1103、1104、1105、1106を用いたラダー型の弾性表面波フィルタについて説明したが、弾性表面波共振器の個数や構成に関してはこれに限るものではなく、弾性表面波フィルタを構成する弾性表面波共振器の少なくとも一つに、実施の形態1、あるいは実施の形態2の構成の弾性表面波共振器を適用すれば、改善の効果は得られるものである。
【0046】
また、本発明においては、櫛型電極102、702の両側に反射器電極103、703を配置した弾性表面波共振器によるラダー型の弾性表面波フィルタだけでなく、櫛型電極102、702を複数個近接配置して構成される縦モード型フィルタにおいても、実施の形態1、あるいは実施の形態2における櫛型電極102、702の構成を適用すれば、縦モード型の弾性表面波フィルタとしての特性改善の効果は得られるものである。
【0047】
また、本発明は弾性表面波フィルタだけでなく、送信フィルタと受信フィルタとにより構成されるアンテナ共用器にも適用可能であり、送信フィルタ、または受信フィルタのいずれかに本発明の弾性表面波共振器または弾性表面波フィルタを使用することにより、優れた特性を有するアンテナ共用器を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る弾性表面波共振器は、弾性表面波の横方向の漏れを改善して、特性に優れた弾性表面波共振器を実現することができるという効果を奏するものである。また、そのような弾性表面波共振器を用いた弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を構成することにより、優れた特性を有する弾性表面波フィルタ、アンテナ共用器を実現することができるという効果を奏するものである。
【符号の説明】
【0049】
101 圧電基板
102 櫛型電極
103 反射器電極
104 SiO2薄膜
105 バスバー電極領域
106 ダミー電極領域
107 交差領域
701 圧電基板
702 櫛型電極
703 反射器電極
704 SiO2薄膜
705 バスバー電極領域
706 ダミー電極領域
707 交差領域
708 ダミー電極重み付け
1001 横モードによるスプリアス
1101 弾性表面波共振器
1102 弾性表面波共振器
1103 弾性表面波共振器
1104 弾性表面波共振器
1105 弾性表面波共振器
1106 弾性表面波共振器
1201 圧電基板
1202 櫛型電極
1203 反射器電極
1204 SiO2薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、前記圧電基板の上面に設けられた櫛型電極と、前記櫛型電極を覆う誘電体薄膜とを備えた弾性表面波共振器であって、
前記櫛型電極は、バスバー電極領域とダミー電極領域と交差領域とを含む構成であって、前記バスバー電極領域の上部において、前記誘電体薄膜の厚みが前記交差領域上部の前記誘電体薄膜の厚みよりも薄い弾性表面波共振器。
【請求項2】
圧電基板と、前記圧電基板の上面に設けられた櫛型電極と、前記櫛型電極を覆う誘電体薄膜とを備えた弾性表面波共振器であって、
前記櫛型電極は、バスバー電極領域と交差領域とこれらの間のギャップ領域とを含む構成であって、
前記バスバー領域の上部において、前記誘電体薄膜の厚みが前記交差領域上部の前記誘電体薄膜の厚みよりも薄い弾性表面波共振器。
【請求項3】
前記櫛型電極はアポタイズ重み付けが施されている請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波共振器。
【請求項4】
前記圧電基板は、カット角が−10〜+30度の回転Y板のニオブ酸リチウムからなる請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波共振器。
【請求項5】
前記誘電体薄膜がSiO2薄膜である請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波共振器。
【請求項6】
前記ダミー電極領域は、メタライズされたダミー電極重み付けが施された請求項1に記載の弾性表面波共振器。
【請求項7】
前記櫛型電極は、正規型の櫛型電極構成である請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波共振器。
【請求項8】
複数の弾性表面波共振器を有する弾性表面波フィルタであって、
前記複数の弾性表面波共振器の少なくとも1つが請求項1又は請求項2に記載の弾性表面波共振器である弾性表面波フィルタ。
【請求項9】
前記弾性表面波フィルタはラダー型フィルタである請求項8に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項10】
前記弾性表面波フィルタは縦モード型フィルタである請求項8に記載の弾性表面波フィルタ。
【請求項11】
送信フィルタと受信フィルタとを有するアンテナ共用器であって、
前記送信フィルタまたは受信フィルタとして、請求項8に記載の弾性表面波フィルタを用いたアンテナ共用器。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−19249(P2011−19249A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177201(P2010−177201)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2008−518531(P2008−518531)の分割
【原出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】