説明

弾性表面波共振子及びこれを用いた弾性表面波フィルタ

【課題】通過特性においてリップルの小さい弾性表面波共振子及びこれを用いた弾性表面波フィルタを提供することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するために、本発明は、圧電基板11と、この圧電基板の表面に設けた複数個の電極指で構成されるIDT13と、前記IDTの両端部に近接して設けた反射器14とを備え、前記IDTは両端部において電極指ピッチを徐々に小さくしたグラデーション領域1250を有する構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等に用いられる弾性表面波共振子及び弾性表面波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等の通信機器においては、必要とする周波数のみを取り出すために弾性表面波フィルタが用いられている。このような弾性表面波フィルタとしては、例えば低損失で、かつ広帯域のフィルタ特性等、通信機器に対応して種々の特性が要求されている。
【0003】
一般に、低損失かつ広帯域を実現する方法としては、一端子対共振子を直列腕と並列腕とに交互に配置してなる梯子型弾性表面波フィルタが知られている。このような弾性表面波フィルタは、一般的に図19に示す構成を有している。図19に示す弾性表面波フィルタは、圧電基板100の表面上に、直列腕に2つの弾性表面波共振子200が接続され、並列腕に2つの弾性表面波共振子300が接続されて構成されている。そして、これらの弾性表面波共振子200、300は、複数の電極指で構成される一対のインターディジタルトランスデューサ(以下、IDTとよぶ)と、その両側に配置された反射器とにより構成されている。また、直列腕の弾性表面波共振子200を構成するIDTの櫛形電極の一方は、それぞれ入出力端子410、420に接続されている。
【0004】
このような弾性表面波フィルタが用いられる携帯電話等の通信機器では高周波化が進んでおり、それに対応した弾性表面波フィルタが要求されている。このような高周波化に対応するために、圧電基板として38°〜46°YcutX伝搬タンタル酸リチウム(LiTaO3)基板を用いて伝搬損失を小さくする開発が行われている。
【0005】
さらに、携帯電話では変調方式としてCDMA(codedivisionmultipleaccess)方式が採用されるようになってきており、通過帯域内の微小なリップルを抑制することが要求されている。
【0006】
日本特開2001−119260号公報には、リップルを抑制するための弾性表面波フィルタが示されている。この弾性表面波フィルタは、38°〜46°YcutX伝搬タンタル酸リチウム(LiTaO3)基板の表面に少なくとも2つの弾性表面波共振子を直列腕に、少なくとも1つの弾性表面波共振子を並列腕に備えている。さらに、直列腕の弾性表面波共振子が複数の電極指からなる励振電極を有しており、この直列腕の弾性表面波共振子のうち最も少ない電極指対数をN(Nは自然数)としたとき、他の直列腕の弾性表面波共振子のうち少なくとも1つの弾性表面波共振子における電極指対数をn×N(nは自然数)と異なる対数とした構成からなる。
【0007】
このような構成とすることにより、最も少ない電極指対数または反射電極本数を有する直列腕の弾性表面波共振子が原因となって生じるリップルを、電極指対数または反射電極本数が正の整数倍ではない直列腕の弾性表面波共振子によって打ち消すことができるとしている。
【0008】
上記文献に開示された弾性表面波フィルタの場合には、複数の直列共振子のリップルの位置をずらすことで、全体としてリップルを小さくしようとする方法である。しかし、それぞれの共振特性にリップルが存在するので、この構成でリップルを低減させるには限界が生じる。
【0009】
また、図19に示す従来の一般的な構成では、直列共振子の電極指対数を少なくすると、通過帯域内のリップルが大きくなるという課題がある。
【0010】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−119260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、通過特性においてリップルの小さい弾性表面波共振子および弾性表面波フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の弾性表面波共振子は、圧電基板と、この圧電基板の表面に設けた複数個の電極指で構成されるIDTと、IDTの両端部に近接して設けた反射器とを備え、IDTは両端部において電極指ピッチを徐々に小さくしたグラデーション領域を有する構成からなる。このような構成とすることにより、リップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0014】
また、上記構成において、反射器は、IDTに近接した領域に電極指ピッチを徐々に変化させた領域を有さないこととすることにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0015】
また、IDTのグラデーション領域と反射器の間において電極指ピッチの大きさを不連続に変化させることにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0016】
また、IDTのグラデーション領域と反射器の間において電極指ピッチの変化を不連続にすることにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0017】
また、グラデーション領域において反射器に最も近い位置の電極指ピッチをIDTの中央付近の電極指ピッチよりも1〜5%小さくすることにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0018】
また、グラデーション領域の電極指本数をn本、IDTの中央領域の電極指ピッチaに対するグラデーション領域の反射器に最も近い電極指ピッチbの縮小比をc=100×(a−b)/a%としたときに、1≦c≦5、かつ25≦c×n≦36を満足することにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0019】
また、グラデーション領域と反射器とが近接した位置において、反射器の電極指ピッチをグラデーション領域の電極指ピッチよりも大きくしたことにより、特にリップルの小さい弾性表面波共振子を得ることができる。
【0020】
また、梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、直列共振子と並列共振子の少なくとも1つに上記の弾性表面波共振子を用いることにより、リップルの小さい弾性表面波フィルタを得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の弾性表面波フィルタによれば、IDTの対数を少なくしても、両端部にグラデーション領域を設けることでリップルを小さくでき、弾性表面波共振子および弾性表面波フィルタの特性を向上できるという大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の平面図
【図2】同弾性波共振子の局所拡大図
【図3】同弾性波共振子の反射特性図
【図4】比較例1の弾性波共振子の反射特性図
【図5】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子のIDTの放射特性図
【図6】比較例1の弾性波共振子のIDTの放射特性図
【図7】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の通過特性図
【図8】比較例1の弾性波共振子の通過特性図
【図9】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図10】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図11】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図12】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図13】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図14】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図15】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図16】本発明の実施の形態1における弾性表面波共振子の特性図
【図17】本発明の実施の形態2における弾性表面波フィルタの平面図
【図18】本発明の実施の形態3における弾性表面波フィルタの平面図
【図19】従来の弾性表面波フィルタの平面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、同じ要素については同じ符号を付しているので説明を省略する場合がある。また、以下に示す図面は模式的な図であり、電極指本数やピッチを正確に表現してはいない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態にかかる弾性表面波共振子10の平面図である。この弾性表面波共振子10は、39°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO3)からなる圧電基板11の表面に形成された複数の電極指12で構成されるIDT13と、その両端部に近接して配置された反射器14とから構成されている。なお、IDT13の電極指12はそれぞれ共通に接続されて櫛型電極を構成し、これらは入出力端子21、22に接続される。
【0025】
本実施の形態においては、IDT13の電極指12の対数を全体として90対、すなわち電極指12の本数としては180本とし、反射器14の本数をそれぞれ40本とし、IDT13の電極指ピッチはその中央付近で2μmとした構成を例として説明する。さらに、本実施の形態の場合、電極指12の電極指ピッチを異ならせる本数は、IDT13の両端部の15本とした。この15本についての電極指ピッチは、以下のように変化させた。
【0026】
図2は、図1に示すIDT13の左側端部を拡大して示した図である。反射器14に最も隣接する最端部の電極指1201とその隣の電極指1202との中心間距離をd1、電極指1202とその隣の電極指1203との中心間距離をd2、電極指1203と電極指1204との中心間距離をd3、以降15番目の電極指1215までの中心間距離をd4、d5、・・・・、d15とする。本実施の形態の場合には、IDT13の中央領域の電極指の電極指ピッチである2μmに対して、d1を2%小さくし、以降15本まで直線的に増加させていき、16本目以降の電極指ピッチは2μmとした。すなわち、d1=1.96μm、d2=1.9626μm、d3=1.9653μm、・・・・、d15=1.9973μmとし、d16以降はすべて2μmのピッチとした。なお、IDT13の右側端部も同様にして、両方が対称になるように構成した。d1からd15に相当する電極指1201から1215までがグラデーション領域1250である。また、最端部の電極指ピッチはd1である。これを以下では、実施例1の共振子とよぶ。
【0027】
一方、図1に示す弾性表面波共振子と構成は同じであるが、IDT13の電極指ピッチがすべて同一ピッチで構成された弾性表面波共振子を比較用とした。これを以下では、比較例1の共振子とよぶ。
【0028】
図3は、実施例1の共振子の反射特性をシミュレーションにより求めた結果を示す図であり、図4は比較例1の共振子についての反射特性のシミュレーション結果を示す図である。それぞれ、縦軸は反射特性で、横軸は周波数である。
【0029】
図4からわかるように、比較例1の共振子は、ストップバンド外では、周期的に反射係数が極大、極小値をとることがわかる。なお、この反射係数の極大と極小の周波数間隔は、電極指の本数が少なくなるほど大きくなり、かつ極大と極小間の反射係数の差も大きくなることが見出された。
【0030】
一方、実施例1の共振子では、反射特性に重み付けされた状態になり、比較例1の共振子と比べると周波数の低い側のストップバンド近くのサイドローブの大きさが抑制されることが見出された。
【0031】
図5は、実施例1の共振子のIDTの放射特性のシミュレーション結果を示す図であり、図6は同様に比較例1の共振子のIDTの放射特性のシミュレーション結果を示す図である。それぞれ、縦軸は放射特性で、横軸は周波数である。また、この放射特性のピークは共振点である。実施例1の共振子では、比較例1の共振子に比べてピークの放射特性が改善されている。さらに、共振点であるピーク位置とピーク位置より低い周波数側で生じる複数の極大点のうちのピーク位置に隣接する極大値との減衰量の差が比較例1の共振子より大きくなることが見出された。
【0032】
図7は、実施例1の共振子の通過特性のシミュレーション結果を示す図であり、図8は、同様に比較例1の共振子の通過特性のシミュレーション結果を示す図である。それぞれ、縦軸は通過特性で、横軸は周波数である。
【0033】
図8からわかるように、比較例1の共振子では、反射特性と放射特性とから得られる結果として、通過特性においても共振点より低いストップバンド近くの周波数領域にリップルが生じた。このリップルは、IDTの対数を少なくするほど、通過特性、特に共振点より周波数の低い領域で大きくなる傾向を有する。
【0034】
これに対して、図7からわかるように実施例1の共振子では、通過特性のリップルがほとんど生じず、良好な特性を得られることが見出された。
【0035】
従来、弾性表面波共振子のIDTにアポダイズ重み付けを施すことは行われている。しかし、アポダイズ重み付けでは、電極指の位置は変わらない。したがって、反射特性も変わらないので、実施例1の共振子で示したような効果は得られない。
【0036】
実施例1の共振子は、IDTの電極指の本数を180本とし、両端の15本のみの電極指ピッチを変化させた。そこで、このような電極指ピッチ、すなわち対数を変化させる場合の効果について、IDTの対数および電極指ピッチの異なる弾性表面波共振子について同様なシミュレーションを行った。
【0037】
図9から図12までは、図1に示すような弾性表面波共振子においてIDTの電極指の本数を100本として、両端部に設けるグラデーション領域の本数を変化させたときのリップルとロスを求めた結果をそれぞれ示す。なお、図9から図12までにおいては、図1に示すようにグラデーション領域の一方の端部に位置する最端部の電極指の電極指ピッチ、すなわちd1の変化量をパラメータとしている。なお、リップルは共振点より周波数の低い領域で生じるリップルの最大値を求めた。さらに、ロスはピークのロスを求めた。また、これらの図において、左側縦軸はリップルを、右側縦軸はロスの値をそれぞれ示し、横軸はグラデーション領域の電極指の本数である。
【0038】
図9は、最端部の電極指ピッチd1をIDT中央付近の電極指ピッチに対して1%小さくした場合の結果である。この場合、グラデーション領域の電極指ピッチの変え方は以下のようにした。例えば、電極指の本数が20本の場合、d1からd20までにわたって直線的に電極指ピッチを変化させた。このようにグラデーション領域の電極指ピッチを直線的に変化させることについては、図10から図12においてもすべて同様とした。d1を中央部の電極指ピッチに対して1%小さくした場合には、リップルが最小となるグラデーション領域の電極指本数は25本で、そのときのリップルは0.002dBであった。また、ロスが最小となる電極指本数は30本で、そのときのロスの値は0.088dBであった。
【0039】
図10は、最端部の電極指ピッチd1をIDT中央付近の電極指ピッチに対して2%小さくした場合の結果である。d1を中央部の電極指ピッチに対して2%小さくした場合には、リップルが最小となるグラデーション領域の電極指本数は15本で、そのときのリップルは0dBであった。また、ロスが最小となる電極指本数はリップルが最小となる電極指本数と一致し、15本であり、そのときのロスの値は0.088dBであった。
【0040】
図11は、最端部の電極指ピッチd1をIDT中央付近の電極指ピッチに対して3%小さくした場合の結果である。d1を中央部の電極指ピッチに対して3%小さくした場合には、リップルが最小となるグラデーション領域の電極指本数は12本で、そのときのリップルは0.12dBであった。また、ロスが最小となる電極指本数は10本であり、そのときのロスの値は0.088dBであった。なお、図11からわかるように、d1を3%小さくしたときには、グラデーション領域の電極指本数の増加に伴い、リップルおよびロスともに急激に大きくなる傾向が見られた。
【0041】
図12は、最端部の電極指ピッチd1をIDT中央付近の電極指ピッチに対して5%小さくした場合の結果である。d1を中央部の電極指ピッチに対して5%小さくした場合には、リップルが最小となるグラデーション領域の電極指本数は7本で、そのときのリップルは0.2dBであった。また、ロスが最小となる電極指本数は5本であり、そのときのロスの値は0.089dBであった。さらに、図12からわかるように、d1を5%小さくしたときには、グラデーション領域の電極指本数の増加に伴い、リップルおよびロスが図11よりもさらに急激に大きくなる傾向が見られた。
【0042】
以上のように、グラデーション領域の電極指本数の最適値はd1の設定値に対応して異なるが、グラデーション領域を設けることによりリップルを大幅に低減できることが見出された。一方、グラデーション領域を設けることでロスも低減できることがわかった。
【0043】
図13は、上記の結果をもとに、IDT中央付近の電極指ピッチに対する最端部の電極指ピッチd1の変化量とリップルおよびロスのそれぞれの最小値との関係を求めた結果である。なお、図13においては、図9から図12までに示した結果だけでなく、さらにデータを加えている。左側縦軸はリップル、右側縦軸はロスであり、横軸はd1の変化量である。弾性表面波共振子や弾性表面波フィルタとして用いるためには、リップルを0.25dB以下とすることが要求されている。図からわかるように、リップルをこの値以下にするためには、d1の値は1〜5%とすることが要求される。さらに、CDMA等のように小さなリップルでも問題となるような用途に用いるためには、d1の値を1〜3%の範囲とすることがより好ましい。
【0044】
図14から図16までは、図1に示すような弾性表面波共振子においてIDTの電極指の本数を300本として、両端部に設けるグラデーション領域の本数を変化させたときのリップルとロスを求めた結果をそれぞれ示す。なお、図14から図16までにおいては、図1に示すようにグラデーション領域の一方の端部に位置する最端部の電極指ピッチd1の変化量をパラメータとしている図9から図11および図14から図16に示した図からわかるように、IDTの電極指本数を100本とした場合でも、300本とした場合であっても、リップルが最小値となるグラデーション領域の電極指本数はほぼ一致する結果が得られた。
【0045】
これらの結果から、グラデーション領域の最端部の電極指からこのグラデーション領域のもう一方の端部でIDTの中央側に位置する電極指にかけて電極指ピッチを順次変化させ、かつグラデーション領域の最端部の電極指の電極指ピッチをIDT中央付近の電極指ピッチの1〜5%小さくした場合、以下の結果が得られる。すなわち、リップルの最小値が得られるグラデーション領域の電極指本数は、IDTの電極指本数にはほとんど影響しないことが見出された。したがって、IDTの電極指の対数を少なくしても、グラデーション領域を設けることでリップルを大幅に低減でき、リップルが特に問題となるフィルタ用としても使用できる。さらに、対数を少なくすることで、弾性表面波フィルタの小型化も可能となる。
【0046】
また、これらの条件を最適化することにより、従来の構成より共振損失を小さくすることもできる。
【0047】
なお、グラデーション領域の電極指の電極指ピッチの異ならせ方は、例えば両端部の15本をすべて中央付近の電極指ピッチの0.98倍としてもリップル低減の効果が得られる。しかし、このような構成の場合には、挿入損失がやや大きくなる傾向を有するので、本実施の形態で説明したように順次変化させることがより望ましい。
【0048】
(実施の形態2)
図17は、本発明の第2の実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの構成を示す平面図である。本実施の形態では、第1の実施の形態にかかる弾性表面波共振子を用いて梯子型の弾性表面波フィルタを構成したことを特徴とする。
【0049】
図17において、39°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO3)からなる圧電基板11の上に電極膜厚が約0.4μmで、2個の直列共振子15と2個の並列共振子30を図示するように配置し、それぞれを電極配線により接続して梯子型弾性表面波フィルタを構成している。直列共振子15は、複数の電極指12からなるIDT13と、その両端部に近接して設けた反射器14よりなる。また、並列共振子30は、複数の電極指32からなるIDT33と、その両端部に近接して設けた反射器34よりなる。
【0050】
直列共振子15は、それぞれ対数90対で、中央付近の電極指ピッチを約2.34μmとし、グラデーション領域は図1と同様にIDT13の両端部に設けている。本実施の形態の場合、このグラデーション領域では、IDT13の両端部に位置する最端部の電極指の電極指ピッチを約2.29μmとし、中央側に向かって徐々にそのピッチを増加させていき、16本目で中央付近の電極指ピッチと同じになるように構成している。また、並列共振子30は、それぞれ対数130対で、電極指ピッチ約2.44μmであり、グラデーション領域は設けていない。
【0051】
第1の実施の形態で述べたように、共振点より周波数の低い領域でのリップルが大きく現れやすいため、梯子型弾性表面波フィルタを構成する場合、直列共振子15のリップルが通過帯域内に現れる。そこで、本実施の形態のように、直列共振子15のIDT13の両端部にグラデーション領域を設けることにより通過帯域内のリップルを低減することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、2個の直列共振子ともにグラデーション領域を設けたが、必ずしもすべての直列共振子に対してグラデーション領域を設ける必要はない。ただし、すべての直列共振子に対してグラデーション領域を設けるほうが、よりリップルを小さくできることから望ましい。また、直列共振子が複数個あり、それぞれの共振子でIDTの対数が異なる場合は、特に対数が少ない共振子に対してグラデーション領域を設けることが望ましい。
【0053】
また、並列共振子30については、直列共振子のように通過帯域のリップルに対する影響はないが、グラデーション領域を設けることで並列共振子30の共振損失を低減することができる。したがって、フィルタ特性として、特に低域側減衰量が要求される場合には、並列共振子30にグラデーション領域を設けることが望ましい。
【0054】
(実施の形態3)
図18は、本発明の第3の実施の形態にかかる弾性表面波フィルタの構成を示す平面図である。第2の実施の形態では、一端子対弾性表面波共振子を用いた梯子型弾性表面波フィルタであるのに対し、本実施の形態では多端子対弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタであることが特徴である。
【0055】
図18に示すように、本実施の形態の弾性表面波フィルタは、39°YカットX伝播タンタル酸リチウム(LiTaO3)からなる圧電基板11の表面に電極膜厚約0.4μmで、第1のIDT17、第2のIDT18、および第1のIDT17と第2のIDT18とが配設された構成の両端部に反射器14を近接して設けたものを2個図示するように配設している。
【0056】
第1のIDT17は、2個の入出力端子21、22間の信号経路に直列に配設されて接続されている。また、第2のIDT18は、信号経路とグランドとの間に配設されて接続されている。第1のIDT17は対数90対で、中央付近の電極指ピッチを約2.34μmとし、両端部にグラデーション領域を設けている。このグラデーション領域の最端部の電極指の電極指ピッチを約2.29μmとして、中央に向かって徐々に増加させて、16本目で中央付近の電極指ピッチと同じになるように構成している。また、第2のIDT18は対数130対で、電極指ピッチ約2.44μmであり、グラデーション領域は設けていない。
【0057】
このような構成からなる多端子対弾性表面波共振子であっても、IDTそのものの反射特性および放射特性は変わらないので、第2の実施の形態と同様に通過帯域のリップルを大幅に抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態では、第1のIDT17と第2のIDT18とが、1つの共振子の中にそれぞれ1個設けられているが、本発明はこれに限定されない。いずれか又は両方ともに複数個設けてもよい。また、第1のIDT17と第2のIDT18との間に反射器を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明にかかる弾性表面波共振子および弾性表面波フィルタは、リップルを低減できるという効果を有し、携帯電話等の通信分野あるいはテレビ等の映像分野等のフィルタに有用である。
【符号の説明】
【0060】
10,200,300 弾性表面波共振子
11,100 圧電基板
12,1201,1202,1203,1204,1205,1206,1213,1214,1215,1216,1217,1218,1219,1220 電極指
13 IDT
14 反射器
15 直列共振子
17 第1のIDT
18 第2のIDT
21,22,410,420 入出力端子
30 並列共振子
1250 グラデーション領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、この圧電基板の表面に設けた複数個の電極指で構成されるインターディジタルトランスデューサ(以下、IDTと表記する)と、前記IDTの両端部に近接して設けた反射器とを備え、前記IDTは両端部において電極指ピッチを徐々に小さくしたグラデーション領域を有する弾性表面波共振子。
【請求項2】
反射器は、IDTに近接した領域に電極指ピッチを徐々に変化させた領域を有さないことを特徴とした請求項1に記載の弾性表面波共振子。
【請求項3】
IDTのグラデーション領域と反射器の間において電極指ピッチの大きさを不連続に変化させた請求項1に記載の弾性表面波共振子。
【請求項4】
IDTのグラデーション領域と反射器の間において電極指ピッチの変化を不連続にした請求項1に記載の弾性表面波共振子。
【請求項5】
グラデーション領域において反射器に最も近い位置の電極指ピッチをIDTの中央付近の電極指ピッチよりも1〜5%小さくした請求項1から請求項4のいづれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項6】
圧電基板と、この圧電基板の表面に設けた複数個の電極指で構成されるIDTと、前記IDTの両端部に近接して設けた反射器とを備え、前記IDTは両端部において電極指ピッチを徐々に変化させたグラデーション領域を有し、このグラデーション領域の電極指本数をn本、前記IDTの中央領域の電極指ピッチaに対する前記グラデーション領域の反射器に最も近い電極指ピッチbの縮小比をc=100×(a−b)/a%としたときに、1≦c≦5、かつ25≦c×n≦36を満足する弾性表面波共振子。
【請求項7】
グラデーション領域と反射器とが近接した位置において、前記反射器の電極指ピッチを前記グラデーション領域の電極指ピッチよりも大きくした請求項1から請求項6のいづれかに記載の弾性表面波共振子。
【請求項8】
信号線路に弾性表面波共振子を直列に接続した直列共振子と、信号線路とグランド線路との間に弾性表面波共振子を接続した並列共振子とを備えた梯子型の弾性表面波フィルタにおいて、前記直列共振子と前記並列共振子の少なくとも1つに請求項1から請求項7のいづれかに記載の弾性表面波共振子を用いた弾性表面波フィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−273382(P2010−273382A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177200(P2010−177200)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2005−516917(P2005−516917)の分割
【原出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】