説明

弾性表面波素子、センサ、センシングシステム、及び状態検知方法

【課題】信号レベル検波方式を利用し、シンプル且つ小型な回路で、複数の素子部の応答の検波を容易に実現できる弾性表面波素子、センサ、センシングシステム、及び状態検知方法を提供すること。
【解決手段】測定用素子部19と参照用素子部21との間に、遅延線の構造を有する第1遅延部51を備えているので、測定用素子部19から出力される信号を参照用素子部21から出力される信号に対して遅延させることができる。つまり、測定用素子部19から出力される信号と参照用素子部21から出力される信号とを、時間的にずらすことができる。従って、測定用素子部19から出力される信号と参照用素子部21から出力される信号とを、無線によって送信した場合でも、その信号を受信した外部装置3では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(表面音響波:SAW)を利用して、測定対象の様々な状態(ガス濃度、温度、圧力、液体の粘度等)の変化を検出するために、2以上の素子部(例えば参照用素子部、測定用素子部)を備えた弾性表面波素子と、そのセンサと、センサと信号を送受信する外部装置を備えたセンシングシステムと、弾性表面波を利用して測定対象の状態を検出する状態検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性表面波の特性を利用して、測定対象のガス濃度、温度、圧力、液体の粘度等を検知するセンシングシステムが開発されており、例えば遅延線による遅延時間や位相変化を利用した検知方法や、共振器を用いた信号レベル変化や周波数変化による検知方法が知られている。
【0003】
このうち、遅延線を用いた遅延時間による温度、圧力の検知方法としては、チャープ信号を利用した技術が提案されている(特許文献1参照)。
また、測定対象ガスを検知する場合は、小型化と高感度化を目的に、共振型のセンサが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、応力・圧力といった機械的摂動を検知する場合は、遅延線による応答がナノオーダーと微小であるため、共振器を用いたセンサが主流となっているが、この共振型センサを用いた無線検波の技術、即ち、共振型センサから無線にて送信された信号波を受信回路にて検知する技術(共振型周波数検波)も、既に検討されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平7−502613号公報
【特許文献2】特開2006−313092号公報
【特許文献3】特表2005−501235号公報
【特許文献4】特表2007−52248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した共振型センサを用いた場合の検波方法として、共振周波数検波と信号レベル検波とが知られているが、例えば一対の櫛歯電極からなる電極部とそれに対応した反射器を備えた素子部を複数個(例えば測定用の素子部と参照用の素子部或いは複数のガス検知素子)を用い、その検波を無線で行う場合には、下記の様な問題があった。
【0007】
つまり、共振周波数検波では、共振周波数の異なる素子を配置し、周波数変調を用いることで、受信した信号から各素子部に対応する成分を分解できるため、複数の素子部から反射信号を同時に受信した場合でも、分離・復調が可能であるが、そのためには、周波数シンセサイザが必要となり、回路構成が複雑になりサイズも大きくなるという問題があった。
【0008】
一方、信号レベル検波の場合は、シンプルな回路構成となるが、受信信号が混信してしまうため、複数の素子部からの信号を分離して検波することが困難であった。
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、信号レベル検波方式を採用でき、シンプル且つ小型な回路で、複数の素子からなる応答波形の検波を容易に実現できる弾性表面波素子、センサ、センシングシステム、及び状態検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)請求項1の発明は、圧電基板に一対の電極と反射器と測定対象ガスを吸着するガス吸着体とを備えた一方の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備えた他方の素子部と、を有し、前記測定対象ガスが前記ガス吸着体に吸着することによる発熱量又は質量の増加量に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子であって、前記一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させる第1遅延部を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明では、両素子部のうち、一方の素子部(例えばガス吸着体を備えた測定用の素子部)の信号を他方の素子部(例えば参照用の素子部)の信号に対して遅延させる(例えば遅延線によって構成される)第1遅延部を備えているので、例えば、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、時間的にずらすことができる。
【0011】
従って、例えば、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、無線によって送信する場合でも、受信した装置では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離して検波することができる。よって、その各々の信号に対して、信号レベル検波方式を適用して信号の状態を把握し、所定の簡単な演算を行うことにより、測定対象ガスの状態(例えばガス濃度)を容易に把握することができる。
【0012】
つまり、本発明によれば、測定用の素子部と参照用の素子部とを備えた弾性表面波素子を用い、無線によって信号を送信する場合でも、シンプルな回路構成で済む信号レベル検波方式によって、容易に測定対象ガスの状態を検知することができる。
【0013】
(2)請求項2の発明は、前記弾性表面波素子は、ガスの濃度検知が可能であることを特徴とする。
本発明は、弾性表面波素子の用途を例示したものである。
【0014】
(3)請求項3の発明は、圧電基板に一対の電極と反射器とを備えた2以上の素子部を有し、前記素子部のいずれかに加わった摂動に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子であって、測定対象の摂動を受ける測定用の素子部と、該測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を備えるとともに、前記一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させる第1遅延部を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明では、測定用の素子部と参照用の素子部とのうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して遅延させる第1遅延部を備えているので、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、時間的にずらすことができる。
【0016】
従って、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、無線によって送信する場合でも、受信した装置では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離して検波することができる。よって、その各々の信号に対して、信号レベル検波方式を適用して信号の状態を把握し、所定の簡単な演算を行うことにより、測定対象の状態(圧力等)を容易に把握することができる。
【0017】
つまり、本発明によれば、測定用の素子部と参照用の素子部とを備えた弾性表面波素子を用い、無線によって信号を送信する場合でも、シンプルな回路構成で済む信号レベル検波方式によって、容易に測定対象の状態を検知することができる。
【0018】
ここで、参照用の素子部としては、測定対象の状態変化を受けない又は受ける程度が異なる素子部を採用できる。従って、例えば測定対象の変化(例えば圧力)を受け且つ他の要因からの影響(例えば温度)を受ける測定用の素子部からの信号と、測定対象の変化(例えば圧力)を受けず且つ前記他の要因からの影響(例えば温度)を受ける参照用の素子部からの信号の差分を求めることにより、測定対象の変化(例えば圧力)を測定できる。
【0019】
(4)請求項4の発明は、前記弾性表面波素子は、気体の圧力検知が可能であることを特徴とする。
本発明は、弾性表面波素子の用途を例示したものである。
【0020】
(5)請求項5の発明は、前記弾性表面波素子の圧電基板として、液体に対してエネルギを放射しない弾性表面波を励起する圧電基板を用いることを特徴とする。
本発明では、例えば圧電基板の材料やカット角を選択することにより(例えば36°YX−LiTaO3を採用することにより)、液体に対してエネルギを放射しない弾性表面波(例えば主としてSH波やラブ波等の横波)を励起する構成とすることができる。
【0021】
これにより、液体の物性値(例えば粘度、密度等)などの液体の状態の検出が可能となる。
(6)請求項6の発明は、前記弾性表面波素子は、液体の物性値を検出可能であることを特徴とする。
【0022】
本発明は、弾性表面波素子の用途を例示したものである。
(7)請求項7の発明は、前記他方の素子部に接続された信号線と、前記第1遅延部を介して接続された前記一方の素子部の信号線とを、互いの信号が混信しないように分配したことを特徴とする。
【0023】
本発明では、互いの信号線に流れる信号を時間的に遅延させることにより分離したので、信号の干渉なく測定が可能となる。
(8)請求項8の発明は、 前記第1遅延部が、音波を利用した遅延線であることを特徴とする。
【0024】
本発明は、第1遅延部の特徴を例示したものである。
(9)請求項9の発明は、前記第1遅延部が複数ある場合は、少なくとも1つを前記圧電基板上に設けたことを特徴とする。
【0025】
これにより、弾性表面波素子の構成をコンパクトにすることができる。
(10)請求項10の発明は、更に、単独で温度検知が可能な温度検知用の素子部を備えたことを特徴とする。
【0026】
本発明は、温度検知用の素子部を備えているので、例えば圧力等を検知できるとともに、精度良く温度を検知することができる。
なお、センサを設置する環境が測定対象と温度以外の摂動が生じない環境であるならば、参照用の素子部を温度用の素子部として利用できる。つまり、改めて温度用素子を設置する必要がないため、センサが小型かつ安価に作製可能となる。
【0027】
(11)請求項11の発明は、前記請求項3、4、7〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対して圧力を付与する圧力付与部と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、圧力センサの構成を例示したものである。
(12)請求項12の発明は、前記請求項1、2、7〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対してガスを付与するガス吸着体と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0029】
本発明は、ガスセンサの構成を例示したものである。
(13)請求項13の発明は、前記請求項5〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対して測定対象の液体を保持するための囲いを備えた液体付加部と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明は、液相系センサの構成を例示したものである。
(14)請求項14の発明は、前記弾性表面波素子と前記アンテナとの間に、前記外部装置から入力される信号と前記弾性表面波素子から出力される信号との混信を防ぐための第2遅延部を設けたことを特徴とする。
【0031】
本発明では、弾性表面波素子とアンテナとの間に、(例えば遅延線によって構成される)第2遅延部を設けているので、外部装置から入力される信号と弾性表面波素子から出力される信号とが混信するのを防止することができる。
【0032】
(15)請求項15の発明は、前記請求項11〜14のいずれかに記載のセンサと、該センサと無線にて信号の送受信を行う外部装置と、を備え、前記外部装置から前記素子部への特定周波数の入力信号に対する前記素子部の出力信号のレベル変化により、前記測定対象の状態を検知することを特徴とする。
【0033】
本発明は、センサと外部装置との間で、無線により信号の送受信を行うセンシングシステムである。このセンシングシステムでは、外部装置から素子部への特定周波数の入力信号に対する素子部の出力信号のレベル変化(信号強度の変化)により、測定対象の状態を容易に検知することができる。
【0034】
(16)請求項16の発明は、前記センサを測定空間内に配置し、前記センサからの信号を前記外部装置で受信して、前記測定空間内の状態を検知することを特徴とする。
本発明は、測定空間内の状態を検知するセンシングシステム、具体的には、例えばタイヤ内にセンサを配置してタイヤ内の圧力を検知するセンシングシステム、また、閉鎖された空間内にガスセンサを配置して空間内のガス濃度を測定するセンシングシステムを例示している。
【0035】
(17)請求項17の発明は、圧電基板に一対の電極と反射器と測定対象ガスを吸着するガス吸着体とを備え、前記測定対象ガスの吸着の影響を受ける測定用の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、前記測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を有し、前記測定対象ガスが前記ガス吸着体に吸着することによる発熱量又は質量の増加量に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子を備えたセンサと、該センサと無線通信を行う外部装置と、を用い、前記外部装置から前記弾性表面波素子への特定周波数の入力信号に対する前記弾性表面波素子からの出力信号(反射信号)のレベル変化により、測定対象ガスの状態を検知する状態検知方法であって、前記両素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、前記両素子部の信号を分離し、該分離した信号に基づいて(所定の演算を行うことで)前記測定対象の状態を検知することを特徴とする。
【0036】
本発明では、弾性表面波素子の測定用の素子部と参照用の素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、両素子部の信号を分離し、その分離した信号を用いて測定対象ガスの状態を検知することができる。
【0037】
つまり、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して遅延させることにより、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、時間的にずらすことができる。よって、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、無線によって送信する際に、受信した装置では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離することができる。そのため、その分離した信号に対して、信号レベル検波方式を適用して信号の状態を把握することにより、測定対象ガスの状態を容易に把握することができる。
【0038】
すなわち、本発明によれば、測定用の素子部と参照用の素子部とを備えた弾性表面波素子を用い、無線によって信号を送信する際に、シンプルな回路構成で済む信号レベル検波方式によって、容易に測定対象ガスの状態を検知することができる。
【0039】
なお、前記所定の演算とは、分離して受信された測定用の素子部からの応答から参照用の素子部からの応答を減算することで、測定対象(ガス)による応答のみを抽出し(例えば測定用の素子部が温度用の素子部の場合には、温度用の素子部からの応答から参照用の素子部からの応答を減算することで、温度による応答のみを抽出し)、変化量の基準となる関数もしくはデータとのフィッティングにより状態を表す数値を出力する作業のことである。
【0040】
(18)請求項18の発明は、圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、測定対象の摂動を受ける測定用の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、前記測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を有し、前記測定用の素子部に加わった摂動に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子を備えたセンサと、該センサと無線通信を行う外部装置と、を用い、前記外部装置から前記弾性表面波素子への特定周波数の入力信号に対する前記弾性表面波素子からの出力信号(反射信号)のレベル変化により、測定対象の状態を検知する状態検知方法であって、前記両素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、前記両素子部の信号を分離し、該分離した信号に基づいて(所定の演算を行うことで)前記測定対象の状態を検知することを特徴とする。
【0041】
本発明では、弾性表面波素子の測定用の素子部と参照用の素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、両素子部の信号を分離し、その分離した信号を用いて測定対象の状態を検知することができる。
【0042】
つまり、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して遅延させることにより、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、時間的にずらすことができる。よって、測定用の素子部から出力される信号と参照用の素子部から出力される信号とを、無線によって送信する際に、受信した装置では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離することができる。そのため、その分離した信号に対して、信号レベル検波方式を適用して信号の状態を把握することにより、測定対象の状態を容易に把握することができる。
【0043】
すなわち、本発明によれば、測定用の素子部と参照用の素子部とを備えた弾性表面波素子を用い、無線によって信号を送信する際に、シンプルな回路構成で済む信号レベル検波方式によって、容易に測定対象の状態を検知することができる。
【0044】
なお、前記所定の演算とは、分離して受信された測定用の素子部からの応答から参照用の素子部からの応答を減算することで、測定対象(例えばガス)による応答のみを抽出し(例えば測定用の素子部が温度用の素子部の場合には、温度用の素子部からの応答から参照用の素子部からの応答を減算することで温度による応答のみを抽出し)、変化量の基準となる関数もしくはデータとのフィッティングにより状態を表す数値を出力する作業のことである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1の圧力センサが用いられるセンシングシステムの概略構成を示す説明図である。
【図2】実施例1の圧力センサの概略構成を示す説明図である。
【図3】(a)は圧力センサの弾性表面波素子が貼り付けられる表面を示す説明図、(b)は圧力センサを厚み方向に破断した状態を示す断面図である。
【図4】(a)は参考例1の共振型の弾性表面波素子の基本構造を示す説明図、(b)はその基本動作を示す説明図、(c)はその出力特性を示すグラフである。
【図5】(a)は参考例1の弾性表面波素子の動作を示す説明図、(b)はその測定原理を示すグラフである。
【図6】(a)は参考例2の共振型の弾性表面波素子の基本構造と動作を示す説明図、(b)は、その測定原理を示す説明図である。
【図7】実施例1のセンシングシステムの電気的構成を示す説明図である。
【図8】実施例1のセンシングシステムにおける信号のタイミングチャートである。
【図9】実施例2の圧力センサの概略構成を示す説明図である。
【図10】実施例2のセンシングシステムの電気的構成を示す説明図である。
【図11】実施例2のセンシングシステムにおける信号のタイミングチャートである。
【図12】実施例3の水素濃度センサを示す説明図である。
【図13】水素濃度センサの他の例を示す説明図である。
【図14】液相センサを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明が適用される実施例について図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0047】
本実施例では、例えばタイヤ空気圧を検出するタイヤ空気圧センサとして用いられる圧力センサを例に挙げて説明する。
図1にシステム全体を示す様に、圧力センサ1は、外部装置(計測装置)3と無線にて信号の送受信を行うセンシングシステムを構成するものであり、外部装置3からの信号(高周波信号)を受け、その信号に対する応答を外部装置3に送信し、外部装置3にてタイヤ空気圧を求めるものである。
【0048】
なお、前記圧力センサ1は、例えばタイヤ5内部の内側表面などに取り付けられ、外部装置3は、例えば回転しない箇所(例えばリム7の近傍やタイヤハウジング9の周辺)に取り付けられるものである。以下、詳細に説明する。
【0049】
a)まず、圧力センサ1の構成について説明する。
・図2に圧力センサ1の要部を示すように、圧力センサ1は、弾性表面波素子11と、高周波分配・結合器13と、遅延部(第2遅延部)15と、アンテナ17とを備えている。
【0050】
このうち、前記アンテナ17は、外部装置3との間で高周波信号を送受信するためのアンテナであり、タブレットアンテナやパッチアンテナなどを用いることができる。
前記第2遅延部15は、高周波信号の伝播を遅延させるものであり、ここでは、外部装置3から入力される信号と弾性表面波素子11から出力される信号とが混信することを防止するために、アンテナ17と高周波分配・結合器13との間に配置されている。なお、第2遅延部15は、後述する周知の遅延線により構成されている。
【0051】
前記高周波分配・結合器13は、外部装置3から受信した高周波信号を、(一対の電極からなる)異なる電極部に対して分配して各素子部19、21に伝達するとともに、各素子部19、21からの応答に対しては、各電極部間を隔離することで信号の伝達方向に方向性を持たせて異なる電極部からの信号を1つの信号として外部装置3側に送信するためのものである。従って、異なる電極部間では、各電極部にて送受信される高周波信号により影響を受けることがない。
【0052】
前記弾性表面波素子11は、弾性表面波と電気信号との間の機械・電気的変換を行う第1変換器(測定用素子部)19と第2変換器(参照用素子部)21とを備えている。
詳しくは、弾性表面波素子11には、圧電基板23の同一表面上に、測定用素子部19の第1電極部25(一対の櫛歯状の電極27、29が互いに嵌り込んで構成されている電極部)と、参照用素子部21の第2電極部31(一対の櫛歯状の電極33、35が互いに嵌り込んで構成されている電極部)とが、同図の左右方向に離れて配置されている。なお、第1電極部25の一方の電極27(同図上側)と第2電極部31の一方の電極33(同図上側)は、同一の第1電極パターン37により電気的に接続されている。
【0053】
また、第1電極部25の両側(弾性表面波の進行方向における両側:同図左右方向)と第2電極部31の両側とには、それぞれ弾性表面波を反射する短冊状の反射器39、41、43、45が配置されている。
【0054】
更に、測定用素子部19と参照用素子部21との間には、左右一対の第3、第4電極部47、49からなる遅延部(第1遅延部)51が配置されている。この第3、第4電極部47、49は、前記第1、2電極部25、31と同様に、一対の櫛歯状の電極53、55、57、59が互いに嵌り込んで構成されている電極部である。
【0055】
前記第1遅延部51は、第4電極部49から第3電極部47への信号の伝播を遅延させるものであり、この第3、第4電極部47、49が、信号の伝播を所定の遅延時間だけ遅延させる遅延線となる。なお、前記第3、第4電極部47、49は、同図の左右の両側に信号の送信が可能な双方向電極であり、測定用素子部19と参照用素子部21との間にて隣接して配置されることにより、両素子部19、21の反射器41、43を利用できる。このため、小型で低損失な遅延線を構成できる。
【0056】
つまり、第4電極部49により励起された弾性表面波は、第4電極部49から第3電極部47に伝播されるまでに、第3、第4電極部47、49間の間隔によって定まる所定の時間分遅延されることになる。なお、前記第2遅延部15も同様な構成である。
【0057】
また、前記第4電極部49の一方の電極59と第2電極部31の一方の電極35は、互いに高周波信号が干渉しないように、それぞれ空間的及び電気的に分離された状態で、高周波分配・結合器13に接続されている。従って、高周波分配・結合器13からは、第4電極部49と第2電極部31とに対して、それぞれ別個に(送電線14、16で示す別の経路で)高周波信号が出力され、逆に、第4電極部49と第2電極部31とからは、高周波分配・結合器13に対して、それぞれ別個に(送電線14、16で示す別の経路で)高周波信号が出力される。
【0058】
これにより、一方の素子部から出力される信号(反射信号)が、他方の素子部の入力信号へ流れ込むことを防止できる。
更に、第1電極部25の一方の電極29と第3電極部47の一方の電極55は、第2電極パターン61により電気的に接続されている。
【0059】
・ここで、弾性表面波素子11における高周波信号の伝播経路について、簡単に説明する。
前記参照用素子部21は、外部装置3から供給される高周波信号を弾性表面波に変換するものであり、逆圧電効果により電気信号を弾性表面波に変換する。つまり、アンテナ17で受信し、第2遅延部15及び高周波分配・結合器13を介して送信された高周波信号を弾性表面波に変換し、第2電極部31の電極33、35に対して垂直方向(同図左右方向)へ弾性表面波を励起する。この弾性表面波は反射器43、45にて反射し、第2電極部31にて受信され、高周波分配・結合器13に出力される。
【0060】
一方、高周波分配・結合器13から第4電極部49に出力された高周波信号は、前記第2電極部31と同様に、弾性表面波に変換され、その弾性表面波は所定の遅延時間後、第3電極部47に伝播し、高周波信号に変換される。この第3電極部47は、第2電極パターン61により第1電極部25と接続されているので、第3電極部47から測定用素子部19の第1電極部25に高周波信号が伝達される。
【0061】
前記測定用素子部19は、前記参照用素子部21と同様に、弾性表面波を電気信号に変換するものである。この測定用素子部19は、上述の様に、その第1電極部25と第3電極部47とが接続されているので、(第4電極部49から送信され)第3電極部47にて受信された遅延した高周波信号は、第1電極部25に伝達され、第1電極部25の電極27、29に対して垂直方向(同図左右方向)へ弾性表面波を励起する。この弾性表面波は反射器39、41にて反射し、第1電極部25にて受信される。以後は、受信の際と逆の経路を辿って、第3電極部47、第4電極部49を介して、遅延した高周波信号が、高周波分配・結合器13に出力される。
【0062】
b)次に、前記弾性表面波素子11の製造方法について、簡単に説明する。
弾性表面波素子11を製造する場合には、圧電基板23上に、金属(アルミニウム)膜を、スパッタリングにより成膜し、フォトリソグラフィーによりマスキングし、エッチングにより、前記図1に示す(グレー部分の)電極等のパターンの形状となるようにパターニングする。
【0063】
下記に、433MHzの共振周波数を有する本実施例の弾性表面波素子11の設計値、材料を示す。
・圧電基板:ST−X水晶基板(単結晶)、厚さ0.5mm
表面=鏡面加工、裏面=粗加工
・金属膜:アルミニウム、厚さ0.1μm
・電極構造(図1等では模式的に示してある:λは波長である)
・励起電極(第1〜第4電極部)
電極幅:1/4λ(1.81μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、 交差幅:229.2μm
・反射器
電極幅:1/4λ(1.81μm)、電極間隔:1/4λ(1.81μm)、 本数:400本
・励起電極−反射器間距離:3/8λ(2.657μm)
・遅延線伝播距離:1500λ(4.735mm)
・素子サイズ:16.463mm×1.997mm
c)次に、前記弾性表面波素子11を収容した圧力センサ1の全体構成を説明する。
【0064】
図3(a)は圧力センサ1の基板の表面側を示し、図3(b)は圧力センサ1の縦断面を示している。
図3(a)に示す様に、弾性表面波素子11は、例えばコバールからなる金属製の土台71上に、接着剤等により貼り付けられる。
【0065】
詳しくは、図3(b)に示す様に、土台71には、弾性表面波素子11の一端側(測定用素子部19側)が撓むことが可能な様に凹部73が設けられており、弾性表面波素子11は、その測定用素子部19側が凹部73の上方に張り出すように配置され、参照用素子部21側が基板表面に貼り付けされている。
【0066】
そして、土台71の一方の側(弾性表面波素子11の配置側)には、弾性表面波素子11を空間を空けて覆うように、例えばポリカーボネート製のカバー74がかぶせられている。
【0067】
また、カバー74には、測定用素子部19と対向する位置に円形の開口部75が設けられ、この開口部75には、例えばステンレスからなる金属製の円盤(ダイヤフラム)77と、ゴム製のOリング79とが配置され、ダイヤフラム77には測定用素子部19の表面に当接する金属製の圧力伝達ピン81が取り付けられている。
【0068】
従って、圧力センサ1の周囲の空気圧が増加すると、ダイヤフラム77が凹み、圧力伝達ピン81が測定用素子部19付近を押圧するので、この押圧力に対応した出力が得られることになる。
【0069】
なお、弾性表面波素子11の電極等は、土台71に設けられたガラスシール83を貫くピン(図示せず)に接続され、そのピンを介してアンテナ17等を配置した電子部品設置用基板82に接続されている。なお、カバー74と電子部品設置用基板82を覆う蓋84により筐体86が構成されている。
【0070】
d)次に、圧力センサ1における測定の原理を、参考例とともに説明する。
図4(a)は参考例1の共振型の弾性表面波素子の基本構造を示し、図4(b)はその基本動作を示し、図4(c)は、その出力特性を示している。また、図5(a)は参考例1の弾性表面波素子の動作を示し、図5(b)は、その測定原理を示している。同様に、図6(a)は参考例2の共振型の弾性表面波素子の基本構造と動作を示し、図6(b)は、その測定原理を示している。
【0071】
・図4(a)に参考例1の共振型の弾性表面波素子91を示すが、この弾性表面波素子91は、圧電基板93の中央に高周波信号が入出力する一対の電極95、97からなる電極部99を備えるとともに、電極部99の両側に反射器101、103を備えたものである。
【0072】
この弾性表面波素子91では、各構成をファブリペローの共振条件を満たすように配置した場合に得られる共振波を利用したものである。
つまり、電極部99に電気信号(高周波信号)を印加すると、逆電圧効果により電極部99の電極95、97の周期で決定される周波数の弾性表面波に変換され、図4(b)に示す様に、電極部99から同図の左右の双方向へ伝播する(入力)。その後、反射器101、103で反射された弾性表面波が共振しながら再び電極部99に到達し、圧電効果により電気信号に変換される(出力)。
【0073】
従って、ネットワークアナライザー等の測定器を用いて反射特性(信号レベル)を観測すると、図4(c)に示す様に、信号レベルは共振点で最小となり、共振点から外れるにつれて大きくなる。
【0074】
・図5(a)に示す様に、参考例1の弾性表面波素子91は、負荷(圧力、温度、応力等)を加わると、負荷に応じて電極部99が膨張(収縮)することにより、図5(b)に示す様に、周波数特性が変化する。この応答を検知するために、信号レベル変化の検知(検知方法(1))と共振周波数変化の検知(検知方法(2))が知られている。
【0075】
このうち、信号レベル変化の検知方法では、負荷の有無によって変化する(共振点における)信号レベルの変化から、負荷の有無や負荷の程度を検知するものであり、本実施例では、この検知方法を採用する。
【0076】
一方、共振周波数変化の検知方法では、負荷の有無によって変化する共振周波数から、負荷の有無や負荷の程度を検知するものである。
・図6(a)に示す参考例2の共振型の弾性表面波素子111は、負荷をより精度良く検知するために、参考例1の弾性表面波素子91を改良したものである。
【0077】
センサによって負荷を検知する場合、センサの設置環境による不要応答が生じるため、その補正が必要になることが多い。この対策として、前記参考例1の弾性表面波素子91と同様な形状の素子部(測定用素子部113、参照用素子部115)を左右に配置した参考例2の弾性表面波素子111が開発されている。
【0078】
前記弾性表面波素子111では、測定用素子部113を測定対象の負荷を受ける素子部(センシング)とし、参照用素子部115を測定対象の負荷を受けない素子部(リファレンス)とし、図6(b)に示す様に、それぞれの信号の作動出力を得ることで、測定環境の変化による応答を除外し、測定したい応答のみを取り出すことができる。
【0079】
例えばセンサに加わる応力を測定する際に温度が変化した場合を考えると、センサに応力が加わると基板にひずみが生じて膨張・収縮が起こる。また、温度によっても基板に熱膨張・収縮が起こる。よって、測定対象の応力だけの応答を得るには、参照用素子部115には応力を加えずに温度影響のみが加わるようにし、測定用素子部113には、温度と応力の両方が加わるようにして、これらの素子部113、115の差分(センシング出力とリファレンス出力との差)を取ることで、測定対象の応力だけを検知することが可能である。
【0080】
・本実施例の弾性表面波素子11は、負荷をより精度良く検知するために、前記参考例2の弾性表面波素子111を改良したものである。
つまり、参考例2の弾性表面波素子111を用いて、信号レベル変化の検知方法によって負荷を検知することが可能であるが、2つの素子部113、115の応答を無線によって送信する場合には、両素子部113、115からの信号を分離することができない。なお、共振周波数変化の検知方法の場合は、信号を分離することは可能であるが、その場合には複雑な回路構成を必要とする。
【0081】
そこで、本実施例では、上述した構成の弾性表面波素子11とした。
即ち、前記図2に示す様に、測定用素子部19と参照用素子部21との間に、高周波信号を遅延させる第1遅延部51を設け、測定用素子部19から出力される信号と参照用素子部21か出力される信号とを、時間的にずらしている。
【0082】
また、本実施例では、アンテナ17と弾性表面波素子11との間に第2遅延部15を設け、外部装置3から入力される信号と弾性表面波素子11から出力される信号とが混信することを防止している。
【0083】
更に、本実施例では、先の参照用素子部21による反射信号が他の測定用素子部19へ伝達することによる信号の混信を防ぐために、アンテナ17と第2、第4電極部31、49との間に、高周波分配・結合器13を配置するとともに、2つの送電線14、16間、即ち第2電極部31と高周波分配・結合器13との間の送電線14と第4電極部49と高周波分配・結合器13との間の送電線16との間に、アイソレーション(相互に電気的な干渉が生じないような分離)を持たせている。
【0084】
e)次に、前記圧力センサ1を用いたセンシングシステムをその動作とともに説明する。
図7はセンシングシステムを示し、図8はセンシングシステムにおける信号のタイミングを示している。
【0085】
ここで、図7及び図8に示される各信号についてまとめて記載する。
SPDT(Vcount):外部装置から送信する信号
SPDT(Tx) :外部装置から送信する際のスイッチの信号
SPDT(Rx) :外部装置にて受信する際のスイッチの信号
REF :参照用素子部の出力信号
Sensing :測定用素子部の出力信号
Hold1 :参照用素子部の出力信号を保持するための信号
Hold2 :測定用素子部の出力信号を保持するための信号
SDO :コントローラに出力される信号
tS :外部装置から送信される信号の信号長さ
tSW :外部装置の送受信機を切り換える際にかかる時間
tD :第2遅延部による遅延時間
tDET :第1遅延部による遅延時間
なお、例えば、tS=1us、tD=2us、tSW<0.1us、tDEF=3us、tHold=0.1usを採用できる。
【0086】
なお、遅延時間は、信号の往路と復路において発生するので、図8に示す遅延時間は、その合計である。
・まず、図7に示す様に、外部装置3は、その主要部としてコントローラ121や位相同期IC(PLL IC)123等を備えている。
【0087】
位相同期IC123は、位相同期回路(PLL回路)125を備え、位相同期回路125には、基準周波数の発信器(TCXO)127からの信号と電圧制御発信回路(VCO)129からの信号が入力し、位相同期回路125からは、位相補償器であるローパスフィルタ(LPF)131と電圧制御発信回路129を介して、位相同期IC123外に信号が出力される。なお、コントローラ121からは、位相同期IC123に対して、位相同期IC123からの発振のオン・オフを制御する制御信号(Enable)が出力される。
【0088】
従って、位相同期IC123から発振された信号は、アッテネータアンプ(ATT)133によりその出力を減じられ、その信号はバンドパスフィルタ(BPF)135及びパワーアンプ(PA)136を介してスイッチ(SPDT)137に至り、スイッチ137が信号の送信が可能に設定されている場合には、アンテナ139を介して、圧力センサ1に信号を送信する。この信号は、例えば10mWの433MHzの高周波信号であり、tS間(図8参照)発振される。
【0089】
なお、スイッチ137の動作は、コントローラ121から出力される制御信号(Select)により制御され、送信するための回路側への接続(送信される信号Tx)と受信するための回路側への接続(受信される信号Rx)と切り換えられる。なお、送信するための回路側へ接続される期間により、図8に示すtSの期間が定まることになる。
【0090】
・次に、外部装置3から送信された信号は、圧力センサ1のアンテナ17によって受信され、第2遅延部(SAW DL)15、高周波分配・結合器(RF D・C)13を介して、弾性表面波素子(SAW)11に伝達される。以下、詳細に説明する。
【0091】
図8に示す様に、アンテナ17にて受信された信号は、第2遅延部15により、遅延時間tDだけ遅延される。これは、入力された信号Txと圧力センサ1から出力されて外部装置3側にて受信される信号(REF、Sensing)とが混信しないようにするためである。
【0092】
更に、第2遅延部15にて遅延した信号は、上述した様に、高周波分配・結合器13を介して、参照用素子部21の第2電極部31と第1遅延部51の第4電極部49に送信される。
【0093】
このうち、参照用素子部21の第2電極部31に送られた信号は、第2電極部31にて弾性表面波に変換され、反射器43、45にて反射し、第2電極部31にて受信されて高周波信号に変換される。この信号は、逆の経路を辿って、高周波分配・結合器13、第2遅延部15を介して、アンテナ17から、外部装置3に送信される。この信号は、REFに示されているように、第2遅延部15により遅延時間tDだけ遅延したものとなる。
【0094】
一方、第1遅延部51の第4電極部49に送信され、第1遅延部51にて所定の遅延時間だけ遅延した信号は、上述した様に、測定用素子部19の第1電極部25に送られる。測定用素子部19では、第1電極部25にて弾性表面波に変換され、反射器39、41にて反射し、第1電極部25にて受信されて高周波信号に変換される。この信号は、逆の経路を辿って、高周波分配・結合器13、第2遅延部15を介して、アンテナ17から、外部装置3に送信される。この信号は、Sensingに示されているように、前記第2遅延部15による遅延時間tDに加え、前記第1遅延部51による遅延時間tDEFだけ遅延したものとなる。
【0095】
つまり、各素子部19、21では、素子部19、21毎の信号を時間で分別するため、先の信号に対して更にtDEFの遅延時間を与えるために第1遅延部51を介して信号を伝達している。
【0096】
そして、圧力センサ1では、弾性表面波素子11から戻ってきた信号が、再び一つの信号にまとめられて、アンテナ17から外部装置3に送信される。
なお、図8に示す様に、前記遅延時間tDEFは、送信信号長さtSより十分長く設定されているので、外部装置3から圧力センサ1に送信される信号Txと、圧力センサ1から外部装置3に返送される信号REF、Sensingとを、時間により分離することができる。
【0097】
・次に、圧力センサ1から信号を受信した外部装置3では、ローノイズアンプ(LNA)141により、信号を必要レベルまで増幅・ノイズ除去を行い、バンドパスフィルタ(BPF)143を介して、ログアンプやダイオードからなる検波器(DET)145により検知する。
【0098】
その後、検波器145から、測定用と参照用の2つのアナログデジタルコンバータ(ADC)147、149に信号を出力する。この出力(REF、Sensing)は、図8に示す様に、遅延時間tDETだけずれているので、コントローラ121から各出力に対応した時間に出力されるホールド信号tHoldにより、各出力の値が保持され、その値(SDO)が、コントローラ121に出力される。
【0099】
詳しくは、発信してから受信するまでの1サイクル分の全信号の検知が終了したところで、保持された値の読み込みを行い、これを周期Tにて繰り返し測定を行う。
これにより、コントローラ121には、温度のみの参照用の信号と圧力(タイヤの空気圧)及び温度を示す測定用の信号とが、時間的に明瞭に分離された状態で得られることになる。
【0100】
よって、コントローラ121では、測定用の信号と参照用の信号の信号レベルの差分を取ることにより、圧力に対応した信号のみを抽出できるので、この圧力に対応した信号レベルから、圧力値を算出することができる。
【0101】
つまり、タイヤ5の空気圧(圧力)は、ダイヤフラム77や圧力伝達ピン81を介して測定用素子部19にひずみとして伝わり、測定用素子部19のひずみ量により圧力センサ1から出力される信号強度が変化する。よって、信号レベル検知方式を利用し、測定用の信号と参照用の信号の信号レベルを求めるとともに、両信号レベルの差分を取って、圧力に対応した信号のみを抽出できる。一方、圧力と圧力センサ1との応答との間には線形関係が成り立つことから、予め圧力に対する応答量をマッピングしておき、前記圧力の測定値と比較することにより、タイヤ5内の圧力を特定することができる。
【0102】
f)この様に、本実施例では、測定用素子部19と参照用素子部21との間に、遅延線の構造を有する第1遅延部51を備えているので、測定用素子部19から出力される信号を参照用素子部21から出力される信号に対して遅延させることができる。
【0103】
これにより、測定用素子部19から出力される信号と参照用素子部21から出力される信号とを、時間的にずらすことができるので、測定用素子部19から出力される信号と参照用素子部21から出力される信号とを、無線によって送信した場合でも、その信号を受信した外部装置3では、両信号の時間的ずれにより、両信号を分離することができる。
【0104】
よって、その分離した信号に対して、信号レベル検波方式を適用して信号の状態を把握することができる。そして、そのレベル検知後の信号を用い、測定用素子部19から出力される圧力及び温度に対応した信号と参照用素子部21から出力される温度に対応した信号とから、すなわち両信号の差分を取ることにより、圧力のみを示す信号を抽出することができる。
【0105】
つまり、本実施例によれば、測定用素子部19と参照用素子部21とを備えた弾性表面波素子11を用い、無線によって信号を送信する場合でも、シンプルな回路構成で済む信号レベル検波方式によって、容易にタイヤ5内の圧力(空気圧)を検知することができる。
【実施例2】
【0106】
次に、実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
a)まず、本実施例の圧力センサの構成について説明する。
図9に示す様に、本実施例の圧力センサ151は、前記実施例1と同様に、弾性表面波素子153と、高周波分配・結合器155と、第2遅延部157と、アンテナ159とを備えている。
【0107】
前記弾性表面波素子153は、前記実施例1と同様に、測定用素子部161と、参照用素子部163と、第1遅延部165とを備えている。
特に、本実施例では、第1電極パターン167の測定用素子部161及び参照用素子部163の反対側に、温度測定用素子部169が設けられている。
【0108】
この温度測定用素子部169は、一対の電極171、173からなる第5電極部175の両側に、反射器177、181を備えたものである。
そして、この第5電極部175の一方の電極171は、高周波分配・結合器153に接続されている。また、第1遅延部165の第4電極部185は、第3遅延部187を介して高周波分配・結合器153に接続され、参照用素子部163の第2電極部189は、第4遅延部191を介して高周波分配・結合器153に接続されている。
【0109】
b)次に、この圧力センサ151を用いたセンシングシステムについて説明する。
図10に示す様に、本実施例のセンシングシステムは、前記実施例1と同様に、圧力センサ151と外部装置201とを備えている。
【0110】
この外部装置201は、前記実施例1と同様に、コントローラ203、位相同期IC(PLL IC)205、アッテネータアンプ(ATT)207、バンドパスフィルタ(BPF)209、パワーアンプ(PA)211、スイッチ(SPDT)213、ローノイズアンプ(LNA)215、バンドパスフィルタ(BPF)217、検波器(DET)219、アンテナ221等を備えている。
【0111】
特に、本実施例では、3つの素子部161、163、169に対応して、温度測定用と参照用と測定用の3つのアナログデジタルコンバータ(ADC)223、225、227を備えている。
【0112】
従って、本実施例では、図11のような信号が得られる。以下図10及び図11を用いて詳細に説明する。
なお、外部装置201から圧力センサ151に到る信号については、前記実施例1と同様である。
【0113】
まず、外部装置201からの信号(高周波信号)を受信して、温度測定用素子部169に入力する信号は、第5電極部175にて弾性表面波に変換されて反射器177、181側に送信され、ここで反射した弾性表面波は、再度第5電極部175に戻って高周波信号に変換される。そして、温度測定用素子部169から出力される信号は、第1遅延部155により遅延時間tDだけ遅延され、外部装置201にて受信され、Hold1の信号tHoldにより、その値が保持される。
【0114】
また、参照用電極素子部163に入出力することによる同様な信号は、第1遅延部155により遅延時間tDだけ遅延されるとともに、第4遅延部191にても遅延時間tDEFだけ遅延され、外部装置201にて受信され、Hold2の信号tHoldにより、その値が保持される。
【0115】
更に、測定用素子部161に入出力することによる同様な信号は、第1遅延部155により遅延時間tDだけ遅延されるとともに、第3遅延部187にて遅延時間tDEFだけ遅延され、更に、第1遅延部165にて遅延時間tDEFだけ遅延され、外部装置201にて受信され、Hold3の信号tHoldにより、その値が保持される。
【0116】
従って、コントローラ203には、温度のみの参照用信号と圧力(空気圧)及び温度を示す測定用信号とに加え、より精度の高い温度を示す信号が、時間的に明瞭に分離された状態で得られることになる。
【0117】
よって、コントローラ203では、測定用信号と参照用信号の信号レベルの差分を取ることにより、圧力に対応した信号のみを抽出できるので、この圧力に対応した信号レベルから、圧力の値を求めることができる。また、温度測定用の信号により、温度を求めることができる。
【0118】
本実施例では、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、温度測定用素子部169を備えているので、圧力だけでなく温度も正確に検知することができる。
【実施例3】
【0119】
次に、実施例3について説明する。
本実施例では、ガス濃度センサの具体例として、図12に示す様な水素濃度センサ231を例示する。
【0120】
この水素濃度センサ231は、前記実施例1と同様に、圧電基板233、第1電極部235、第2電極部237、第1遅延部239、反射器241等を備えるとともに、測定用素子部243、参照用素子部245を備えている。なお、前記実施例1と同様である箇所の説明は省略し、相違点のガス感応膜(ガス吸着体)247を備えた素子構造と、その反応原理について説明する。
【0121】
弾性表面波素子249の特性が水素ガスの影響のみに依存し変化するには、弾性表面波の伝搬路上にガス選択性を持つ感応膜(ここでは水素を吸着するガス吸着体247)が必要となる。この感応膜247は、水素吸蔵合金(Pd合金等)から成る厚さ数百μm〜数十μmの薄膜で形成され、例えば第1電極部235と反射器241との間に配置される。
【0122】
水素に対する弾性表面波の応答は、2種類に大別できる。
1つ目は、感応膜247に水素吸蔵合金やPd−Ni合金等を用いて、水素分子が膜に吸着した際の化学反応熱(発熱量)による変化を利用したセンサである。このタイプは、基板の有する温度特性に対応して周波数特性がシフトする(水晶基板を用いた場合、その変化の様は2次曲線となる)。よって、そのシフト量を特定周波数の信号レベルの変化量から特定し、水素濃度を特定する。
【0123】
2つ目は、感応膜247にPbまたはPb合金を用いて、水素分子が付着することによる質量負荷や弾性率の変化を利用したセンサである。弾性表面波の伝搬面の弾性定数が変化することや質量負荷効果により、弾性表面波の伝搬速度が変化する。これにより、周波数特性のシフトを特定周波数の信号レベルの変化量から特定し、水素濃度を特定する。
【0124】
なお、図13に示す様に、他の水素濃度センサ251として、各電極部253〜259等を覆うように、SiO2等の絶縁性保護膜261を装荷した上に、感応膜(ガス吸着体)263を設けてもよい。
【0125】
また、ここでは、水素濃度を検出するセンサについて述べたが、他のガスについても、そのガスを吸着する感応膜を設け、同様な原理でガス濃度を検出することができる。
【実施例4】
【0126】
次に、実施例4について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は簡略化する。
本実施例では、図14に示す様に、液体センシングのセンサ構造(例えば液体の各種の物性値を検出できる液相系センサ271)を例示する。なお、他の実施例と同様である箇所は省略し、相違点の液体センシングのための電極構造とその反応原理について例示する。
【0127】
本実施例では、弾性表面波素子273の圧電基板275に液体が付着することによって、(圧力が加わった場合の様に)周波数特性が変化するので、この周波数特性の変化から液体の物性値を検知することができる。
【0128】
具体的には、液体に波のエネルギが放射しないモード(SH、Love等)の弾性表面波を励起する素子を用いることで、液体の粘度・密度等を検出することができる。
液体のセンシングに用いられる弾性表面波は、液体内にエネルギを放射する縦方向の変位成分が殆どなく、横方向の変位成分のみを有する、滑り横波(SH)型の弾性表面波となる。励起される弾性表面波のモードは、用いる圧電材料(材料の種類やカット角)に依存し、SH型の弾性表面波を励起する圧電基板材料として、比較的結合係数が高く温度係数の小さな36°YX−LiTaO3が知られている。
【0129】
電極及び反射器のパターンは、基板材料定数(結合係数や静電容量等)に依存するため実施例1と異なるが設計手法は同様である。また、励起電極−反射器間距離は、弾性表面波の伝搬面と測定溶液とが接触する幅(数mm)以上が必要となる。
【0130】
なお、圧電基板275上には、例えば測定用素子部277の第1電極部279と反射器281との間に、液体を保持するための囲い(例えばシリコンや樹脂で作られたプール)283を設けることが好ましい。
【0131】
また、液体内にセンサを直接浸けるディップ式のセンシングを行うには、励起電極及び反射器が濡れるのを防ぐ必要がある。そのため、センサ基板上に電極と反射器を覆うように防水シールドを形成する。この防水シールド材にはエポキシ系の樹脂を利用し、電極及び反射器と防水シールドの間には微小なエアギャップを設ける。なお、防水シールドとセンサ表面との設置面積が大きいと信号が減衰する要因となるため、設置面積は極力小さくするのが望ましい。
【0132】
なお、本発明は、前記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
(1)例えばタイヤ空気圧センサのような圧力センサに限らず、応力センサ、変位センサ、温度センサなど、各種の用途に適用できる。
【0133】
(2)また、ガスセンサでは、合成ジャロサイトMgFe3(SO42(OH)6や含水素酸化鉄(III)FeOOH等により一酸化炭素といったように、特定のガス感応膜を用いることで多種のガスセンシングにも適用できる。
【符号の説明】
【0134】
1、151…圧力センサ
3、201…外部装置
11、153、249、273…弾性表面波素子
15、157…第2遅延部
19、161、243、277…測定用素子部
21、163、245…参照用素子部
25、235、253、265、279…第1電極部
31、189、237、255…第2電極部
39、41、43、45、177、181、241、281…反射器
47、257…第3電極部
49、259…第4電極部
51、165、239…第1遅延部
86…筐体
169…温度測定用素子部
187…第3遅延部
191…第4遅延部
175…第5電極部
231、251…水素濃度センサ
247、263…ガス吸着体
271…液相センサ
283…囲い

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板に一対の電極と反射器と測定対象ガスを吸着するガス吸着体とを備えた一方の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備えた他方の素子部と、を有し、前記測定対象ガスが前記ガス吸着体に吸着することによる発熱量又は質量の増加量に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子であって、
前記一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させる第1遅延部を備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
前記弾性表面波素子は、ガスの濃度検知が可能であることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項3】
圧電基板に一対の電極と反射器とを備えた2以上の素子部を有し、前記素子部のいずれかに加わった摂動に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子であって、
測定対象の摂動を受ける測定用の素子部と、該測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を備えるとともに、
前記一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させる第1遅延部を備えたことを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項4】
前記弾性表面波素子は、気体の圧力検知が可能であることを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波素子。
【請求項5】
前記弾性表面波素子の圧電基板として、液体に対してエネルギを放射しない弾性表面波を励起する圧電基板を用いることを特徴とする請求項3に記載の弾性表面波素子。
【請求項6】
前記弾性表面波素子は、液体の物性値を検出可能であることを特徴とする請求項5に記載の弾性表面波素子。
【請求項7】
前記他方の素子部に接続された信号線と、前記第1遅延部を介して接続された前記一方の素子部の信号線とを、互いの信号が混信しないように分配したことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項8】
前記第1遅延部が、音波を利用した遅延線であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項9】
前記第1遅延部が複数ある場合は、少なくとも1つを前記圧電基板上に設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項10】
更に、単独で温度検知が可能な温度検知用の素子部を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波素子。
【請求項11】
前記請求項3、4、7〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対して圧力を付与する圧力付与部と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項12】
前記請求項1、2、7〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対してガスを付与するガス吸着体と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項13】
前記請求項5〜10のいずれかに記載の弾性表面波素子と、該弾性表面波素子の測定用の素子部に対して測定対象の液体を保持するための囲いを備えた液体付加部と、該弾性表面波素子における前記周波数特性の変化に対応した信号を無線により外部装置に送信するアンテナと、前記弾性表面波素子と前記アンテナとを収容する筐体と、を備えたことを特徴とするセンサ。
【請求項14】
前記弾性表面波素子と前記アンテナとの間に、前記外部装置から入力される信号と前記弾性表面波素子から出力される信号との混信を防ぐための第2遅延部を設けたことを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載のセンサ。
【請求項15】
前記請求項11〜14のいずれかに記載のセンサと、該センサと無線にて信号の送受信を行う外部装置と、を備え、
前記外部装置から前記素子部への特定周波数の入力信号に対する前記素子部の出力信号のレベル変化により、前記測定対象の状態を検知することを特徴とするセンシングシステム。
【請求項16】
前記センサを測定空間内に配置し、前記センサからの信号を前記外部装置で受信して、前記測定空間内の状態を検知することを特徴とする請求項15に記載のセンシングシステム。
【請求項17】
圧電基板に一対の電極と反射器と測定対象ガスを吸着するガス吸着体とを備え、前記測定対象ガスの吸着の影響を受ける測定用の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、前記測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を有し、前記測定対象ガスが前記ガス吸着体に吸着することによる発熱量又は質量の増加量に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子を備えたセンサと、
該センサと無線通信を行う外部装置と、
を用い、前記外部装置から前記弾性表面波素子への特定周波数の入力信号に対する前記弾性表面波素子からの出力信号のレベル変化により、測定対象ガスの状態を検知する状態検知方法であって、
前記両素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、前記両素子部の信号を分離し、該分離した信号に基づいて前記測定対象の状態を検知することを特徴とする状態検知方法。
【請求項18】
圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、測定対象の摂動を受ける測定用の素子部と、圧電基板に一対の電極と反射器とを備え、前記測定用の素子部の出力を補正するために用いられる参照用の素子部と、を有し、前記測定用の素子部に加わった摂動に応じて周波数特性が変化する弾性表面波素子を備えたセンサと、
該センサと無線通信を行う外部装置と、
を用い、前記外部装置から前記弾性表面波素子への特定周波数の入力信号に対する前記弾性表面波素子からの出力信号のレベル変化により、測定対象の状態を検知する状態検知方法であって、
前記両素子部のうち、一方の素子部の信号を他方の素子部の信号に対して時間的に遅延させて、前記両素子部の信号を分離し、該分離した信号に基づいて前記測定対象の状態を検知することを特徴とする状態検知方法。

【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−261840(P2010−261840A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113504(P2009−113504)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】