弾性表面波素子、無線通信装置
【課題】 位相誤差及び振幅誤差が小さい移相器を半導体基板上に弾性表面波素子で形成し、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置を提供する。
【解決手段】 弾性表面波素子1は、半導体基板10に形成される弾性表面波素子1であって、半導体基板10の上面に形成される圧電薄膜45と、圧電薄膜45の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、前記入力側IDTに対して、出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0°と位相差(1/4)nπ(rad)の二つの信号を出力する移相器を構成する。また、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置300を提供する。
【解決手段】 弾性表面波素子1は、半導体基板10に形成される弾性表面波素子1であって、半導体基板10の上面に形成される圧電薄膜45と、圧電薄膜45の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、前記入力側IDTに対して、出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0°と位相差(1/4)nπ(rad)の二つの信号を出力する移相器を構成する。また、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置300を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に形成される弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を備える無線通信装置に関し、詳しくは、弾性表面波素子によって構成される移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信装置において、主としてデジタル変調方式が採用されているが、このデジタル変調方式の基本技術として直交変調方式があり、I/Q信号の生成に移相器が用いられている。
【0003】
従来、発振用の増幅器の出力側及び入力側の帰還回路として、弾性表面波素子と、外部からの制御電圧を入力して発振ループ内の位相を可変させる移相器と、発振ループ内の位相を微調整する位相調整回路と、発振ループ内の電力を等分配して発振ループ内外に出力する等分配器を備え、移相器としては、チップインダクタンスと2個のオープンスタブ、またはチップコンデンサと2個のショートスタブとから構成される電圧制御型発信機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体基板上に、所定の周波数特性を有する弾性表面波素子と、弾性波の伝搬方向に差動増幅器の差動対を構成する2個のトランジスタが形成され、これらのトランジスタの内部で電子またはホールの走行する方向が弾性波の伝搬方向と同じであり、前述のトランジスタのゲートが弾性表面波素子の伝搬方向において、一方のトランジスタは、弾性波の時間0(つまり位相0°)、他方のトランジスタは(1/4)λだけ遅れる(位相90°遅れる)ように配置し、デジタル通信で必要とされるI/Q信号を得る高周波回路素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−124744号公報(第7,8頁、図1,3,4)
【特許文献2】特開平10−284984号公報(第5,6頁、図5,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1では、移相器としては、一般にハイブリットカプラ方式と呼ばれる構成であり、チップインダクタンスと2個のオープンスタブ、またはチップコンデンサと2個のショートスタブによって構成されており、ICチップにこれらの要素を内蔵することは困難であるとされている。また、ハイブリットカプラ方式は基本構成として、LCR(リアクタンス、コンデンサ、抵抗)によって構成されるが、LのQ値が低く、安定した発振には不向きであるとされている。
さらに、このような構成では構成部品数が多くなり、製造工程が増加するなどコスト低減についても不利になることが考えられる。
【0007】
また、前述した特許文献2では、半導体基板上に弾性表面波素子(SAW)を形成した後、トランジスタのゲート電極位置を、弾性表面波素子との距離を(1/4)λ(λは弾性波の波長)にして移相器を形成しているが、弾性表面波素子とトランジスタの製造プロセスが異なるため、正確な距離を管理することが困難であり、位相誤差及び振幅誤差を低減することができない。このことは、この移相器を無線通信機器等に採用した際に、転送効率が低下するというような課題が考えられる。
【0008】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、位相誤差及び振幅誤差が小さい移相器を半導体基板上に弾性表面波素子で形成することができ、また、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の弾性表面波素子は、半導体基板に形成される弾性表面波素子であって、前記半導体基板の上面に形成される圧電薄膜と、前記圧電薄膜の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、前記入力側IDTに対して、前記出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0と、位相差(1/4)nπ(rad)と、の二つの信号を出力する移相器を構成することを特徴とする。
ここで、半導体基板には、例えば、弾性表面波素子の駆動回路や信号処理回路等が含まれる。
【0010】
本発明では、半導体基板上に圧電薄膜と櫛歯形状のIDT(Inter digital Transducer)からなる弾性表面波素子を形成し、この弾性表面波素子が移相器を構成しているため、前述した従来技術に比べ構成部品数が少なく、簡単な構造で、小型の移相器を構成することができる。
また、この弾性表面波素子は、機能回路素子を含む半導体基板に形成するので、1チップICとすることができ、小型で取り扱い易く、コスト低減が可能なデバイスを提供することができる。
【0011】
また、IDTの構成を上述のようにすることで、仮に、n=1の場合にはπ/4(rad)つまり45°の位相差、n=2の場合にはπ/2(rad)つまり90°の位相差を有する移相器を提供することができ、容易に所望の位相差の移相器を提供することができる。
【0012】
また、前記出力側IDTが、第1の出力信号を出力する第1のIDTと、第2の出力信号を出力する第2のIDTと、を備え、前記移相器が、前記第1の出力信号の位相と第2の出力信号の位相の差が所望の位相差を有する移相器であることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、仮に位相差π/2(rad)つまり90°の場合、第1の出力側IDTの出力信号を0°、第2の出力側IDTの出力信号を90°に設定が可能であり、また、第1の出力側IDTの出力信号を−45°、第2の出力側IDTの出力信号を45°に設定し、位相差90°を作り出すことができる。
このような位相差をつくる場合においても、IDTのデザインによって所望の位相差の構成を行うことができる。
【0014】
また、本発明によれば、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)nλ+λ、前記入力側IDTと前記第2の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)nλ+(1/4)λ、に設定され、位相差がπ/2(rad)の移相器であることが好ましい。
【0015】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成でπ/2(rad)つまり90°の移相器を提供することができる。また、このように形成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるデジタル直交変調方式に最適なI/Q信号を生成する移相器を提供することができる。
【0016】
また、本発明による構造では、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとが共通に形成され、前記第1の出力信号を出力するIDTと前記第2の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)λとなるように形成され、位相差がπ(rad)の移相器であることが好ましい。
【0017】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成で位相差がπ(rad)つまり180°の移相器を提供することができる。また、このように構成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるバランとして使用することができる。
【0018】
また、本発明では、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとの間隔がnλ+(1/8)λに設定され、位相差がπ/4(rad)の移相器であることが好ましい。
【0019】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成で位相差がπ/4(rad)つまり45°の移相器を提供することができる。また、このようにすれば、±45°の構成により90°移相器を容易に構成することができる。
【0020】
さらに、所望の周波数帯域が所定のチャネルに分割され、前記所定の周波数に対応して前述した移相器それぞれが、単独、または複数個、または、それぞれを組み合わせて形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
ここで、移相器が複数個、または組み合わせ形成するとき、移相器それぞれは、並列に構成されている。
【0021】
詳しくは後述する実施の形態で説明するが、所望の周波数帯域が広帯域である場合、1個の移相器を使用する場合において、振幅誤差や位相誤差が大きくなることが予想されるが、所望の周波数帯域幅(チャネル)毎に移相器を用いることにより、それらに対応する位相差の複数の移相器を備えることで、位相誤差及び振幅誤差が小さくできる。これにより、移相器を並列接続し、所定の周波数の領域に対応することで、広帯域であっても、位相誤差及び振幅誤差を小さく抑えることができる。
【0022】
また、本発明の無線通信装置は、デジタル直交変調/復調方式による無線通信装置であって、デジタル直交変調/復調のための同相成分信号または直交成分信号を生成する移相器を備え、前記移相器が、前述の発明のいずれか一つに記載の弾性表面波素子からなることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、半導体基板に形成される弾性表面波素子からなる移相器を備え、デジタル直交変調及び復調を行うため、振幅誤差及び位相誤差を小さく抑えることができ転送効率が高い無線通信装置を提供することができる。
また、半導体基板に弾性表面波素子が形成され、1チップ化しているため、小型化やコスト低減にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4には、本発明に係る実施形態1の弾性表面波素子が示され、図5,6には、実施形態2、図7,8には実施形態3、図9〜図12には、実施形態4、図13には、本発明に係る無線通信装置が示されている。
(実施形態1)
【0025】
図1には、実施形態1に係る弾性表面波素子の構成を説明する部分断面図が示されている。図1において、弾性表面波素子1は、基本構成として、半導体基板10上にSi3N4からなる保護層40が形成され、この保護層40の表面にZnOからなる圧電薄膜45が形成されている。さらに、圧電薄膜45の表面に櫛歯状電極からなるIDT50が形成され構成されている。なお、圧電薄膜45は、ZnOの他に、SiO2、PZT等を採用することができる。
【0026】
半導体基板10は、ベース基板としてのSi基板20の表面にSiO2からなる絶縁層21が形成され、Al配線25、絶縁層22、Al配線26、絶縁層23.Al配線27、絶縁層24、が図示するように層状に形成されている。これらAl配線25〜27は、図示しないSi基板20内に形成されている弾性表面波素子の駆動回路や信号処理回路等を構成するトランジスタ等の回路素子、及びIDT50とを接続するために設けられている。なお、ベース基板としては、Siの他に、SiGe、GaAs等を採用することができる。また、配線材料は、Alの他にAu,Cu等を採用することができる。
【0027】
保護層40は、絶縁層24の表面全体にわたって形成され、後述するIDTの端子をSi基板20内の回路素子に接続するための開口部41,42が開設されている。開口部41の底部には絶縁層24上に形成されるAl配線28が露出し、開口部42の底部には、金属パッド34が形成され露出している。これらAl配線28、金属パッド34は、それぞれAl配線45,46によって、入力側IDTうちのIDT60及び出力側IDTのうちの第1のIDT70と接続されている。IDT60及びIDT70には端子が設けられてAl配線45,46に接続されるが、IDTの構成及び、これらの端子については、図3において説明する。
【0028】
Al配線28は、図示しない回路素子にAl配線やビアホールを介して接続され、金属パッド34は、ビアホール35によって、トランジスタ30のゲート電極31に接続され、ドレイン領域32は、ビアホール36を介して対応するAl配線に接続されている。なお、ソース領域33は、グランド(GND)に接地されている。これらの接続のために配線は、本実施形態の一例を示したものである。
このように、弾性表面波素子1は、半導体基板10と一体化された1チップICとして構成されている。
【0029】
図2には、この弾性表面波素子1が移相器2としたときの、入力及び出力の構成を示した説明図である。図3も参照して説明する。図2において、入力信号がIDT60の入力端子63に入力されると、移相器2によって、第1のIDT70のIN/OUT端子71には位相0°の信号が、第2のIDT73のOUT端子74には位相90°の信号が出力される。つまり、1信号入力に対し位相が異なる2出力信号が出力される移相器2が構成されている。
【0030】
続いて、弾性表面波素子1のIDTの構成について図面を参照して説明する。
図3は、90°位相差を作り出すためのIDTの一例を示し、実施形態1に係る弾性表面波素子1のIDTの構成を示す平面図である。図3において、入力側IDTは、IDT60,62と、GNDIDT61と、から構成されており、それぞれの櫛歯状電極が交互に間挿されて構成されている。IDT60は、入力端子63に接続され、IDT62は、やはり入力端子64に接続されている。また、GNDIDT61は、GND端子65に接続されて、これら入力端子63,64及びGND端子65は、前述した図1に示すようにAl配線28または金属パッド34、ビアホール35等に接続されて、Si基板20に内蔵される回路素子(図示せず)に接続されている。
【0031】
入力側IDTの弾性波の伝搬方向(図中、矢印で表す)には、入力側IDTから(1/2)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)の距離を隔てて出力側IDTが形成されている。出力側IDTは、入力側IDTと同様に、第1のIDT70と、第2のIDT73と、第1のIDT70と第2のIDT73との間にGNDIDT72が、それぞれ櫛歯状電極が間挿するように形成されている。ここで、第1のIDT70は、櫛歯状電極の端部電極75が、入力側IDTの端部電極から(1/2)nλ+λの距離を有する位置を起点として形成されている。
【0032】
また、GNDIDT72は、櫛歯状電極の端部電極76が入力側IDTから(1/2)nλの距離を隔てて櫛歯状電極の起点として形成され、第2のIDT73は、櫛歯状電極の端部電極77が入力側IDTの端部から(1/2)nλ+(1/4)λの距離を隔てて櫛歯状電極の起点として形成されている。
【0033】
第1のIDT70は、IN/OUT端子71に接続され、第2のIDT73は、OUT端子74に接続され、GNDIDT72は、GND端子66に接続されている。これらの端子は、前述した入力端子63,64、GND端子65と同様な構造でSi基板20の回路素子(図示せず)に接続されている。
【0034】
なお、これまで説明した各IDTは、櫛歯状電極の幅が(1/8)λ、櫛歯状電極間の空間の距離が(1/8)λで形成されている。
【0035】
入力側IDT及び出力側IDTの両側には、反射器51,52及び反射器53,54が形成されている。反射器51,52と入力側IDTとの距離、反射器53,54と出力側IDTとの距離は、入力側IDTおよび出力側IDTから伝搬される弾性波が、反射器によって反射された反射波が、入力側と出力側の所定の振動周波数に一致するように設計されている。
【0036】
また、GNDIDT61は、反射器51,52の間を貫通してGND端子65と接続され、同様にGNDIDT72は、反射器53,54の間を貫通してGND端子66と接続されている。これは、GND端子を設けることによる弾性波の乱れを防止するように配慮したものである。
【0037】
従って、このようなIDTの構成によれば、IN/OUT端子71には、位相差0°の信号が、OUT端子74には、位相差π/2(rad)つまり90°の信号が出力される。
なお、IN/OUT端子71は、第1のIDT70にとっては出力端子(OUT端子)であり、第2のIDT73にとっては、入力端子(IN端子)である。
このようにして、弾性表面波素子1によって移相器2が形成されている。この移相器によって出力される出力信号を図4に表す。
【0038】
なお、図3においては、GND電極61とGND端子65、GND電極72とGND電極66とを接続するために、反射器を反射器51と52、または反射器53と54とに分割しているが、GND電極61,62それぞれの櫛歯電極の基部の範囲にビアホール等を設けて、GND接地するようにすれば、反射器を2分割する必要はない。
【0039】
図4は、前述した移相器2により出力される信号波形を表すグラフである。横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。図4において、上段にはIN/OUT端子71に出力される信号波形を示している。この信号波形は、入力側IDTから入力される入力信号と同位相の信号波形である。下段には、OUT端子74から出力される信号波形であり、グラフに示すように、OUT端子74から出力される信号波形は、90°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°、及び位相差90°の2出力が得られる90°移相器が形成される。
【0040】
従って、前述した実施形態1によれば、半導体基板10上に圧電薄膜45と入力側IDTと出力側IDTからなる弾性表面波素子1を形成し、この弾性表面波素子1が移相器2を構成しているため、簡単な構造で、小型の移相器2を構成することができる。
また、この弾性表面波素子1は、機能回路素子を含む半導体基板10に形成するので、1チップICとすることができ、小型で取り扱いやすく、コスト低減が可能なデバイスを提供することができる。
【0041】
また、第1のIDT70、第2のIDT73の構成を前述のように構成することで、第1のIDT70は位相差0°、第2のIDT73は位相差90°の二つの信号を出力する移相器2を形成することができ、このように形成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器における直交変調方式に最適な移相器を提供することができる。
(実施形態2)
【0042】
続いて、本発明に係る実施形態2について図面を参照して説明する。実施形態2は、実施形態1に比べ、弾性表面波素子のIDTの構成を変えて位相差180°の移相器を形成するところに特徴を有し、基本構造は実施形態1と同じであるため、説明を省略し、IDTの構成について説明する。
図5には、本発明の実施形態2に係るIDTの構成が示されている。図5において、この弾性表面波素子のIDTは、反射器151と、入力側IDTとしての入力IDT170と、出力側IDTつぃての出力IDT173と、反射器152と、から構成されている。
【0043】
反射器151及び152は、入力IDT170と出力IDT173の弾性波の伝搬方向両側に配置され、その位置関係は、前述した実施形態1(図3、参照)と同じである。入力IDT170と出力IDT173とは、相互に櫛歯状電極が間挿するように設けられ、その相互位置関係を説明すると、入力IDT170の図中左端の櫛歯電極170Aと出力IDT173の櫛歯電極173Aとのピッチは、(1/2)λに設定されている。従って、入力IDT170の隣り合う櫛歯電極170Aと170Bとのピッチはλに設定されている。また、出力IDT173の隣り合う櫛歯電極173Aと173Bのピッチもλに設定されている。他の櫛歯電極も同じ関係に設定されている。
【0044】
なお、反射器151,152、入力IDT170及び出力IDT173は共に、櫛歯電極の幅が(1/4)λ、隣接する櫛歯電極間の距離が(1/4)λに設定されている。
【0045】
入力IDT170には、IN/OUT端子171が設けられ、このIN/OUT端子171には、所定周波数特性の駆動信号が入力されると共に、位相差0°の信号が出力される。また、出力IDTには、OUT端子174が設けられ、このOUT端子174からは、位相差π(rad)つまり180°の信号が出力される。従って、このようにIDTが構成されて位相差180°の移相器が形成される。
【0046】
続いて、前述した実施形態2による移相器から出力される信号波形について説明する。
図6は、IN/OUT端子171とOUT端子174から出力される信号波形について説明するグラフである。図6において、横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。グラフ上段にはIN/OUT端子171に出力される信号波形が示されている。この信号波形は、IN/OUT端子171に入力される入力信号と同位相の信号波形である。下段には、OUT端子174から出力される信号波形が示されており、グラフに示すように、OUT端子174から出力される信号波形は、π(rad)つまり180°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°と位相差180°の2出力を有する180°移相器が形成される。
【0047】
180°移相器は、バラン(balun:平衡不平衡変成器)として、入力側位相と出力側位相が反転した関係であるために、差動増幅回路に使用することができる。
【0048】
従って、前述した実施形態2によれば、入力IDT170と出力IDT173のIDTデザインによって、簡単な構成で180°移相器を提供することができる。このように構成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるバランとして用いることができる。
(実施形態3)
【0049】
続いて、本発明に係る実施形態3について図面を参照して説明する。実施形態3は、実施形態1及び実施形態2に比べ、弾性表面波素子のIDTの構成を変えて位相差45°の移相器を形成するところに特徴を有し、基本構造は実施形態1と同じであるため、説明を省略し、IDTの構成について説明する。
図7には、本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子のIDTの構成が示されている。図7において、上段には、本実施形態3のIDTの構成を分かりやすく説明するために、基準となる所定周波数特性を有する弾性表面波素子の標準IDTデザインの一例を示し、下段には、本実施形態に係るIDTの構成を示している。
【0050】
標準IDTは、入力IDT81と、GNDIDT91と、図示しない反射器とから構成されている。反射器は、前述の実施形態1(図3、参照)と同じ考え方で構成されているため、説明を省略する。入力IDT81は、櫛歯電極の幅が(1/8)λ、隣接する櫛歯電極82と83との間のピッチが(1/8)λ、櫛歯電極83と84との間のピッチも(1/8)λというように設定され、4本の櫛歯電極が連続し、次の櫛歯電極85との間に、入力IDT81と同様に形成されたGNDIDT91の櫛歯電極4本が間挿されて形成されている。このような入力IDT81とGNDIDT91とが、本図面においては、4組形成されている。
【0051】
従って、入力IDT81の櫛歯電極82とGNDIDT91の櫛歯電極92との間のピッチは、(1/2)λ、櫛歯電極82と85との間のピッチはλに設定されている。入力IDT81には、IN端子89が接続され、GNDIDT91には、GND端子95が接続され、前述した実施形態1(図1、参照)と同様な構造で、半導体基板10内の回路素子に接続されている。
【0052】
このようにIDTが構成された弾性表面波素子は、所定の周期λで弾性波を発振する。このようなIDTの構成を基礎にして、IDTを分割及び特定の櫛歯電極を削除することによって、位相差45°を有する移相器を形成する。
【0053】
図7の下段のIDTの構成図において、この位相差45°の移相器は、入力IDT160の左端の櫛歯電極からnλの位置で2分割された入力側IDTと出力側IDTと、図示しない反射器と、から構成されている。入力側IDTは、入力IDT160とGNDIDT162とから構成され、出力側IDTは、出力IDT270と入力IDT273とから構成されている。入力側IDTと出力側IDTとは、nλ+(1/8)λの間隔を有して形成される。このとき、この間隔は、上段の入力IDT81の櫛歯電極82からnλの位置にある櫛歯電極86が削除されて構成され、nλ+(1/8)λの位置にある櫛歯電極287(入力IDT81の櫛歯電極87に相当する位置)を起点にして出力IDT270が形成される。
【0054】
出力IDT270は、標準IDTの入力IDT81の4本ある櫛歯電極のうちの先頭の櫛歯電極86,88を削除した構成としており、櫛歯電極88と櫛歯電極275との間隔も(1/8)λに設定されている。
【0055】
また、入力側IDTにおいては、入力IDT160は、IN端子163に、GNDIDT162はGND端子164に接続され、出力側IDTにおいては、出力IDT270はOUT端子271に、入力IDT273は、IN/OUT端子274に接続されている。これらの端子は、前述した実施形態1(図1、参照)と同様に半導体基板10に内蔵される回路素子(図示せず)に接続されている。
【0056】
従って、OUT端子271からは位相差45°の信号が出力され、IN/OUT端子274からは位相差0°の信号が出力され、位相差45°の移相器が形成される。
なお、IN/OUT端子274は、位相差0°の信号を出力する出力端子(OUT端子)と、入力側からの入力信号を入力するための入力端子(IN端子)としての機能を兼備している。
【0057】
続いて、前述した実施形態3による移相器から出力される信号波形について説明する。
図8は、OUT端子271とIN/OUT端子274から出力される信号波形について説明するグラフである。図8において、横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。グラフ上段にはIN/OUT端子274に出力される信号波形が示されている。この信号波形は、入力側IDTから入力される信号と同位相の位相差0°の信号波形である。下段には、OUT端子271から出力される信号波形が示されている。このグラフに示すように、OUT端子271から出力される信号波形は、45°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°、及び位相差45°の2出力を有する45°移相器が形成される。
【0058】
従って、前述した実施形態3によれば、簡単なIDTの構成で45°移相器を提供することができる。
また、図示しないが、この出力側IDTを入力側IDTとし、OUT端子274をIN端子として、入力IDT270からさらに(1/8)λだけずらした出力側IDTを構成して並列して設けた場合、OUT端子274から出力される信号を位相差0°とするとIN/OUT端子271からは、−45°の位相差を有する信号が出力され、また、新たに設けられる出力側IDTのOUT端子には、OUT端子274に対して位相差+45°の信号が出力され、このことにより位相差±45°の移相器を形成することができる。この結果、このようなIDTの構成によっても位相差90°の移相器を形成することができる。
【0059】
位相差±45°移相器では、デジタル直交変調方式における同相成分I(In phase)と直交成分Q(Quadrature Phase)の直交座標において、座標中心からの距離(振幅)が小さいため、振幅誤差を低減できるという効果がある。
【0060】
また、このような位相差45°の移相器を(1/8)λだけ移相をずらして複数設けることにより、45°〜315°までの範囲で45°毎の移相器を容易に作り出せることになり、所望の位相差を有する移相器を容易に形成することができる。
(実施形態4)
【0061】
続いて、本発明に係る実施形態4について図面を参照して説明する。実施形態4は、広帯域に対応するために広帯域を狭帯域に分割し、その帯域に対応する前述の実施形態1〜実施形態3のいずれかに記載の移相器を複数個並列に設けたもので、IDTの構成については、説明を省略し、この実施形態4に係る所望の帯域における周波数と、振幅誤差、位相誤差の関係について説明する。
【0062】
図9,10には、広帯域の所望帯域において、位相差90°の移相器を単独で設けた場合の周波数と振幅誤差、位相誤差の関係のグラフが示されている。図9において、横軸には周波数、縦軸には振幅が示され、所望の周波数の帯域において、振幅が、周波数が高くなるに従い徐々に小さくなって、振幅誤差が大きくなることが示されている。
【0063】
また、図10においては、横軸に周波数、縦軸に位相差が表され、図9で説明したときと同様の条件における周波数と位相誤差との関係が示されている。周波数に対して、位相差が負の傾きを有する直線で表され、周波数の値によって位相誤差が大きくなることが示されている。図9,10で示すように、広帯域の周波数に対して1個の移相器を用いる場合、振幅誤差または位相誤差が大きくなる。このことは、このように広帯域において一つの移相器を無線通信装置に使用する際、誤りビット率が高まり、転送効率が低減することを意味している。
【0064】
そこで、所定の帯域(チャネル)において、移相器を分割して構成することが考えられ、このような広帯域において、複数の移相器を備えたときの周波数と、振幅誤差、位相誤差との関係を図11,12を参照して説明する。
図11において、横軸には周波数、縦軸には振幅が示され、所望の周波数帯域を、位相差90°の移相器を複数備え、それらで所望の周波数帯域をCH1〜CHnまでを分割している。
【0065】
ここで、CH1を例にして説明すると、CH1における周波数帯域において、振幅は、図9で示す振幅と同じ傾向を示しているが、CH1の周波数の帯域が狭いために、振幅誤差が図9で示す1個対応の場合よりも小さくなっている。これは、CH2、CH3でも同じ傾向を示し、広帯域であっても振幅誤差が小さいことを示している。
【0066】
図12には、周波数と位相誤差との関係が示されている。図12において、横軸には周波数が、縦軸には位相差が示されている。ここでも、CH1における周波数帯域において、位相差は、図10に示す位相差と同じ傾向を示しているが、やはりCH1の周波数の帯域が狭いために、位相誤差が図10に示す1個対応の場合よりも小さくなっている。他のチャネルにおいても同様であり、広帯域であっても位相誤差が小さいことを示している。
【0067】
このように、所望の帯域の範囲で、広帯域を狭帯域に分割し、この狭帯域の主低周波数に対応して複数の移相器を備え、所望の周波数帯域を変更するときには、チャネルをCH1からCH2、CH3というように切り替えてゆくことで広帯域に対応することができる。
【0068】
従って、前述の実施形態4によれば、所望の周波数帯域を狭帯域に分割することで、位相誤差及び振幅誤差が小さくできるため、同じ狭帯域に対応する複数の移相器を並列接続し、所定の周波数の帯域に対応することで、広帯域に対応できる他、広帯域であっても、位相誤差及び振幅誤差を小さく抑えることができる。
【0069】
また、従来のハイブリットカプラ方式のように、LCR等の回路素子を複数備える構成に比べ、半導体基板上に弾性表面波素子のIDTの構成だけで実現できるため、小型化が可能で、小型化によりコストの低減が可能である。
(無線通信装置)
【0070】
続いて、前述した実施形態に記載の弾性表面波素子からなる移相器を搭載した無線通信装置について図面を参照して説明する。
図13には、本発明に係る無線通信装置300の構成を示すブロック図が示され、特に本発明の要旨である移相器に係る部位の構成を示している。図13において、まず受信側からの信号の流れに沿って説明すると、アンテナ301(ATN)で受信されたデジタル信号は、送受切換器302(Duplexer)から低雑音増幅器303(LNA:Low noise Amplifier)で増幅され、帯域通過フィルタ304(BPF:Band pass fillter)で所定周波数領域の信号のみが通過されてミキサ305,306(Mixer)に入力される。
【0071】
ミキサ305には、電圧制御発信器310(VCO:Voltage controlled oscilator)からの所定の周波数の基準信号が入力され、演算処理される。ミキサ305から出力される信号は同相成分Iであり、差動増幅器309を経て帯域通過フィルタ307を経てベースバンド(Base band)信号が出力される。
【0072】
一方、ミキサ306には、移相器2(Phase Shifter)によって基準信号からつくられた位相90°の信号が入力され、演算処理される。ミキサ306から出力される信号は直交成分Qであり、差動増幅器309を経て帯域通過フィルタ308を経てベースバンド(Base band)信号に出力される。
このように、入力信号の位相に直交変調をかけて、図示しない信号処理回路によって音声等に変換される。
【0073】
次に、送信側からの信号の流れに沿って説明すると、直交変調されたベースバンド信号のうち同相成分Iは、ミキサ312に入力される。また、直交成分Qは、ミキサ311に入力される。ミキサ312では、移相器2からの位相90°の信号と同相成分Iとを演算処理し、ミキサ311では、電圧制御発信器からの基準信号と直交成分Qとを演算処理し、それぞれの信号が合成(直交復調)され、帯域通過フィルタ313において不要な周波数成分が除去されて、電力増幅器314(PA:power amplifier)で増幅されてアンテナ301から送信される。
【0074】
この無線通信装置300を構成する回路素子のうち、アンテナ301と送受切換器302以外は、弾性表面波素子からなる移相器2を含め、半導体基板10内部に内蔵されており1チップの半導体装置(IC)として構成されている。
【0075】
従って、このような無線通信装置300によれば、半導体基板10に形成される前述したような弾性表面波素子からなる移相器2を備え、デジタル直交変調及び復調を行うため、振幅誤差及び位相誤差を小さく抑えることができ転送効率が高い無線通信装置300を提供することができる。
【0076】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態3では、位相差45°を得るIDTを複数組み合わせて45°毎の位相差をつくりだすことを例示しているが、実施形態1による位相差90°と実施形態3による位相差45°のIDTとを組み合わせて、位相差135°、位相差225°というような45°毎の位相差を有する移相器を提供することができる。
【0077】
このようにすれば、45°毎の位相差をIDTの組み合わせ数を少なくして実現することができる。また、実施形態1と実施形態2との組み合わせ、実施形態2と実施形態3との組み合わせによる移相器を提供することができる。
【0078】
また、前述の実施形態4では、所望の周波数の帯域において、実施形態1による位相差90°の移相器を複数個備えているが、実施形態2または実施形態3による位相差180°、位相差45°の移相器を複数備えることができる。
【0079】
さらに、所望の周波数の帯域の範囲において、例えば、所望周波数帯域の中心部の出現頻度が多い場合には、その中心部の周波数帯域を細かく分割し、出現頻度が少ない低周波領域や高周波領域などは周波数帯域の分割を荒くするようにIDTの構成をデザインすることができる。
【0080】
このようにすれば、所望の周波数帯域において、出現頻度の高い領域においては、周波数帯域の分割を細かくすることで、振幅誤差及び位相誤差を低減することができ、組み合わせる移相器の数をへらしながら、実使用上において支障がない範囲で移相器の構成を簡略化することができる。
【0081】
また、前述の実施形態1ないし実施形態3において説明したIDTの構成は、本発明の実施形態の一例を例示したものであって、前述したような入力側IDTと出力側IDTの考え方において、様々に組み合わせて構成されるIDTデザインも、本発明の範疇に含まれるものである。
【0082】
従って、前述の実施形態1〜実施形態4によれば、位相誤差及び振幅誤差が小さい移相器を半導体基板上に弾性表面波素子で形成することができ、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素の構成を示す部分断面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る移相器の入出力の構成を示す説明図。
【図3】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子のIDTの構成を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態1に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図5】本発明の実施形態2に係るIDTの構成構成を示す平面図。
【図6】本発明の実施形態2に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図7】本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子のIDTの構成を示す平面図。
【図8】本発明の実施形態3に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図9】本発明の実施形態1に係る移相器を単独で設けた場合の周波数帯域と振幅誤差との関係を示すグラフ。
【図10】本発明の実施形態1に係る移相器を単独で設けた場合の周波数帯域と位相誤差との関係を示すグラフ図。
【図11】本発明の実施形態4に係る周波数帯域と振幅誤差との関係を示すグラフ。
【図12】本発明の実施形態4に係る周波数帯域と位相誤差との関係を示すグラフ。
【図13】本発明に係る無線通信装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0084】
1…弾性表面波素子、2…移相器、10…半導体基板、45…圧電薄膜、70…第1のIDT、73…第2のIDT。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板上に形成される弾性表面波素子と、この弾性表面波素子を備える無線通信装置に関し、詳しくは、弾性表面波素子によって構成される移相器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の無線通信装置において、主としてデジタル変調方式が採用されているが、このデジタル変調方式の基本技術として直交変調方式があり、I/Q信号の生成に移相器が用いられている。
【0003】
従来、発振用の増幅器の出力側及び入力側の帰還回路として、弾性表面波素子と、外部からの制御電圧を入力して発振ループ内の位相を可変させる移相器と、発振ループ内の位相を微調整する位相調整回路と、発振ループ内の電力を等分配して発振ループ内外に出力する等分配器を備え、移相器としては、チップインダクタンスと2個のオープンスタブ、またはチップコンデンサと2個のショートスタブとから構成される電圧制御型発信機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、半導体基板上に、所定の周波数特性を有する弾性表面波素子と、弾性波の伝搬方向に差動増幅器の差動対を構成する2個のトランジスタが形成され、これらのトランジスタの内部で電子またはホールの走行する方向が弾性波の伝搬方向と同じであり、前述のトランジスタのゲートが弾性表面波素子の伝搬方向において、一方のトランジスタは、弾性波の時間0(つまり位相0°)、他方のトランジスタは(1/4)λだけ遅れる(位相90°遅れる)ように配置し、デジタル通信で必要とされるI/Q信号を得る高周波回路素子が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−124744号公報(第7,8頁、図1,3,4)
【特許文献2】特開平10−284984号公報(第5,6頁、図5,6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような特許文献1では、移相器としては、一般にハイブリットカプラ方式と呼ばれる構成であり、チップインダクタンスと2個のオープンスタブ、またはチップコンデンサと2個のショートスタブによって構成されており、ICチップにこれらの要素を内蔵することは困難であるとされている。また、ハイブリットカプラ方式は基本構成として、LCR(リアクタンス、コンデンサ、抵抗)によって構成されるが、LのQ値が低く、安定した発振には不向きであるとされている。
さらに、このような構成では構成部品数が多くなり、製造工程が増加するなどコスト低減についても不利になることが考えられる。
【0007】
また、前述した特許文献2では、半導体基板上に弾性表面波素子(SAW)を形成した後、トランジスタのゲート電極位置を、弾性表面波素子との距離を(1/4)λ(λは弾性波の波長)にして移相器を形成しているが、弾性表面波素子とトランジスタの製造プロセスが異なるため、正確な距離を管理することが困難であり、位相誤差及び振幅誤差を低減することができない。このことは、この移相器を無線通信機器等に採用した際に、転送効率が低下するというような課題が考えられる。
【0008】
本発明の目的は、前述した課題を解決することを要旨とし、位相誤差及び振幅誤差が小さい移相器を半導体基板上に弾性表面波素子で形成することができ、また、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の弾性表面波素子は、半導体基板に形成される弾性表面波素子であって、前記半導体基板の上面に形成される圧電薄膜と、前記圧電薄膜の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、前記入力側IDTに対して、前記出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0と、位相差(1/4)nπ(rad)と、の二つの信号を出力する移相器を構成することを特徴とする。
ここで、半導体基板には、例えば、弾性表面波素子の駆動回路や信号処理回路等が含まれる。
【0010】
本発明では、半導体基板上に圧電薄膜と櫛歯形状のIDT(Inter digital Transducer)からなる弾性表面波素子を形成し、この弾性表面波素子が移相器を構成しているため、前述した従来技術に比べ構成部品数が少なく、簡単な構造で、小型の移相器を構成することができる。
また、この弾性表面波素子は、機能回路素子を含む半導体基板に形成するので、1チップICとすることができ、小型で取り扱い易く、コスト低減が可能なデバイスを提供することができる。
【0011】
また、IDTの構成を上述のようにすることで、仮に、n=1の場合にはπ/4(rad)つまり45°の位相差、n=2の場合にはπ/2(rad)つまり90°の位相差を有する移相器を提供することができ、容易に所望の位相差の移相器を提供することができる。
【0012】
また、前記出力側IDTが、第1の出力信号を出力する第1のIDTと、第2の出力信号を出力する第2のIDTと、を備え、前記移相器が、前記第1の出力信号の位相と第2の出力信号の位相の差が所望の位相差を有する移相器であることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、仮に位相差π/2(rad)つまり90°の場合、第1の出力側IDTの出力信号を0°、第2の出力側IDTの出力信号を90°に設定が可能であり、また、第1の出力側IDTの出力信号を−45°、第2の出力側IDTの出力信号を45°に設定し、位相差90°を作り出すことができる。
このような位相差をつくる場合においても、IDTのデザインによって所望の位相差の構成を行うことができる。
【0014】
また、本発明によれば、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)nλ+λ、前記入力側IDTと前記第2の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)nλ+(1/4)λ、に設定され、位相差がπ/2(rad)の移相器であることが好ましい。
【0015】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成でπ/2(rad)つまり90°の移相器を提供することができる。また、このように形成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるデジタル直交変調方式に最適なI/Q信号を生成する移相器を提供することができる。
【0016】
また、本発明による構造では、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとが共通に形成され、前記第1の出力信号を出力するIDTと前記第2の出力信号を出力するIDTとの間隔が(1/2)λとなるように形成され、位相差がπ(rad)の移相器であることが好ましい。
【0017】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成で位相差がπ(rad)つまり180°の移相器を提供することができる。また、このように構成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるバランとして使用することができる。
【0018】
また、本発明では、前記入力側IDTと前記第1の出力信号を出力するIDTとの間隔がnλ+(1/8)λに設定され、位相差がπ/4(rad)の移相器であることが好ましい。
【0019】
このようなIDTの構成によれば、簡単なIDTの構成で位相差がπ/4(rad)つまり45°の移相器を提供することができる。また、このようにすれば、±45°の構成により90°移相器を容易に構成することができる。
【0020】
さらに、所望の周波数帯域が所定のチャネルに分割され、前記所定の周波数に対応して前述した移相器それぞれが、単独、または複数個、または、それぞれを組み合わせて形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
ここで、移相器が複数個、または組み合わせ形成するとき、移相器それぞれは、並列に構成されている。
【0021】
詳しくは後述する実施の形態で説明するが、所望の周波数帯域が広帯域である場合、1個の移相器を使用する場合において、振幅誤差や位相誤差が大きくなることが予想されるが、所望の周波数帯域幅(チャネル)毎に移相器を用いることにより、それらに対応する位相差の複数の移相器を備えることで、位相誤差及び振幅誤差が小さくできる。これにより、移相器を並列接続し、所定の周波数の領域に対応することで、広帯域であっても、位相誤差及び振幅誤差を小さく抑えることができる。
【0022】
また、本発明の無線通信装置は、デジタル直交変調/復調方式による無線通信装置であって、デジタル直交変調/復調のための同相成分信号または直交成分信号を生成する移相器を備え、前記移相器が、前述の発明のいずれか一つに記載の弾性表面波素子からなることを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、半導体基板に形成される弾性表面波素子からなる移相器を備え、デジタル直交変調及び復調を行うため、振幅誤差及び位相誤差を小さく抑えることができ転送効率が高い無線通信装置を提供することができる。
また、半導体基板に弾性表面波素子が形成され、1チップ化しているため、小型化やコスト低減にも寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4には、本発明に係る実施形態1の弾性表面波素子が示され、図5,6には、実施形態2、図7,8には実施形態3、図9〜図12には、実施形態4、図13には、本発明に係る無線通信装置が示されている。
(実施形態1)
【0025】
図1には、実施形態1に係る弾性表面波素子の構成を説明する部分断面図が示されている。図1において、弾性表面波素子1は、基本構成として、半導体基板10上にSi3N4からなる保護層40が形成され、この保護層40の表面にZnOからなる圧電薄膜45が形成されている。さらに、圧電薄膜45の表面に櫛歯状電極からなるIDT50が形成され構成されている。なお、圧電薄膜45は、ZnOの他に、SiO2、PZT等を採用することができる。
【0026】
半導体基板10は、ベース基板としてのSi基板20の表面にSiO2からなる絶縁層21が形成され、Al配線25、絶縁層22、Al配線26、絶縁層23.Al配線27、絶縁層24、が図示するように層状に形成されている。これらAl配線25〜27は、図示しないSi基板20内に形成されている弾性表面波素子の駆動回路や信号処理回路等を構成するトランジスタ等の回路素子、及びIDT50とを接続するために設けられている。なお、ベース基板としては、Siの他に、SiGe、GaAs等を採用することができる。また、配線材料は、Alの他にAu,Cu等を採用することができる。
【0027】
保護層40は、絶縁層24の表面全体にわたって形成され、後述するIDTの端子をSi基板20内の回路素子に接続するための開口部41,42が開設されている。開口部41の底部には絶縁層24上に形成されるAl配線28が露出し、開口部42の底部には、金属パッド34が形成され露出している。これらAl配線28、金属パッド34は、それぞれAl配線45,46によって、入力側IDTうちのIDT60及び出力側IDTのうちの第1のIDT70と接続されている。IDT60及びIDT70には端子が設けられてAl配線45,46に接続されるが、IDTの構成及び、これらの端子については、図3において説明する。
【0028】
Al配線28は、図示しない回路素子にAl配線やビアホールを介して接続され、金属パッド34は、ビアホール35によって、トランジスタ30のゲート電極31に接続され、ドレイン領域32は、ビアホール36を介して対応するAl配線に接続されている。なお、ソース領域33は、グランド(GND)に接地されている。これらの接続のために配線は、本実施形態の一例を示したものである。
このように、弾性表面波素子1は、半導体基板10と一体化された1チップICとして構成されている。
【0029】
図2には、この弾性表面波素子1が移相器2としたときの、入力及び出力の構成を示した説明図である。図3も参照して説明する。図2において、入力信号がIDT60の入力端子63に入力されると、移相器2によって、第1のIDT70のIN/OUT端子71には位相0°の信号が、第2のIDT73のOUT端子74には位相90°の信号が出力される。つまり、1信号入力に対し位相が異なる2出力信号が出力される移相器2が構成されている。
【0030】
続いて、弾性表面波素子1のIDTの構成について図面を参照して説明する。
図3は、90°位相差を作り出すためのIDTの一例を示し、実施形態1に係る弾性表面波素子1のIDTの構成を示す平面図である。図3において、入力側IDTは、IDT60,62と、GNDIDT61と、から構成されており、それぞれの櫛歯状電極が交互に間挿されて構成されている。IDT60は、入力端子63に接続され、IDT62は、やはり入力端子64に接続されている。また、GNDIDT61は、GND端子65に接続されて、これら入力端子63,64及びGND端子65は、前述した図1に示すようにAl配線28または金属パッド34、ビアホール35等に接続されて、Si基板20に内蔵される回路素子(図示せず)に接続されている。
【0031】
入力側IDTの弾性波の伝搬方向(図中、矢印で表す)には、入力側IDTから(1/2)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)の距離を隔てて出力側IDTが形成されている。出力側IDTは、入力側IDTと同様に、第1のIDT70と、第2のIDT73と、第1のIDT70と第2のIDT73との間にGNDIDT72が、それぞれ櫛歯状電極が間挿するように形成されている。ここで、第1のIDT70は、櫛歯状電極の端部電極75が、入力側IDTの端部電極から(1/2)nλ+λの距離を有する位置を起点として形成されている。
【0032】
また、GNDIDT72は、櫛歯状電極の端部電極76が入力側IDTから(1/2)nλの距離を隔てて櫛歯状電極の起点として形成され、第2のIDT73は、櫛歯状電極の端部電極77が入力側IDTの端部から(1/2)nλ+(1/4)λの距離を隔てて櫛歯状電極の起点として形成されている。
【0033】
第1のIDT70は、IN/OUT端子71に接続され、第2のIDT73は、OUT端子74に接続され、GNDIDT72は、GND端子66に接続されている。これらの端子は、前述した入力端子63,64、GND端子65と同様な構造でSi基板20の回路素子(図示せず)に接続されている。
【0034】
なお、これまで説明した各IDTは、櫛歯状電極の幅が(1/8)λ、櫛歯状電極間の空間の距離が(1/8)λで形成されている。
【0035】
入力側IDT及び出力側IDTの両側には、反射器51,52及び反射器53,54が形成されている。反射器51,52と入力側IDTとの距離、反射器53,54と出力側IDTとの距離は、入力側IDTおよび出力側IDTから伝搬される弾性波が、反射器によって反射された反射波が、入力側と出力側の所定の振動周波数に一致するように設計されている。
【0036】
また、GNDIDT61は、反射器51,52の間を貫通してGND端子65と接続され、同様にGNDIDT72は、反射器53,54の間を貫通してGND端子66と接続されている。これは、GND端子を設けることによる弾性波の乱れを防止するように配慮したものである。
【0037】
従って、このようなIDTの構成によれば、IN/OUT端子71には、位相差0°の信号が、OUT端子74には、位相差π/2(rad)つまり90°の信号が出力される。
なお、IN/OUT端子71は、第1のIDT70にとっては出力端子(OUT端子)であり、第2のIDT73にとっては、入力端子(IN端子)である。
このようにして、弾性表面波素子1によって移相器2が形成されている。この移相器によって出力される出力信号を図4に表す。
【0038】
なお、図3においては、GND電極61とGND端子65、GND電極72とGND電極66とを接続するために、反射器を反射器51と52、または反射器53と54とに分割しているが、GND電極61,62それぞれの櫛歯電極の基部の範囲にビアホール等を設けて、GND接地するようにすれば、反射器を2分割する必要はない。
【0039】
図4は、前述した移相器2により出力される信号波形を表すグラフである。横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。図4において、上段にはIN/OUT端子71に出力される信号波形を示している。この信号波形は、入力側IDTから入力される入力信号と同位相の信号波形である。下段には、OUT端子74から出力される信号波形であり、グラフに示すように、OUT端子74から出力される信号波形は、90°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°、及び位相差90°の2出力が得られる90°移相器が形成される。
【0040】
従って、前述した実施形態1によれば、半導体基板10上に圧電薄膜45と入力側IDTと出力側IDTからなる弾性表面波素子1を形成し、この弾性表面波素子1が移相器2を構成しているため、簡単な構造で、小型の移相器2を構成することができる。
また、この弾性表面波素子1は、機能回路素子を含む半導体基板10に形成するので、1チップICとすることができ、小型で取り扱いやすく、コスト低減が可能なデバイスを提供することができる。
【0041】
また、第1のIDT70、第2のIDT73の構成を前述のように構成することで、第1のIDT70は位相差0°、第2のIDT73は位相差90°の二つの信号を出力する移相器2を形成することができ、このように形成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器における直交変調方式に最適な移相器を提供することができる。
(実施形態2)
【0042】
続いて、本発明に係る実施形態2について図面を参照して説明する。実施形態2は、実施形態1に比べ、弾性表面波素子のIDTの構成を変えて位相差180°の移相器を形成するところに特徴を有し、基本構造は実施形態1と同じであるため、説明を省略し、IDTの構成について説明する。
図5には、本発明の実施形態2に係るIDTの構成が示されている。図5において、この弾性表面波素子のIDTは、反射器151と、入力側IDTとしての入力IDT170と、出力側IDTつぃての出力IDT173と、反射器152と、から構成されている。
【0043】
反射器151及び152は、入力IDT170と出力IDT173の弾性波の伝搬方向両側に配置され、その位置関係は、前述した実施形態1(図3、参照)と同じである。入力IDT170と出力IDT173とは、相互に櫛歯状電極が間挿するように設けられ、その相互位置関係を説明すると、入力IDT170の図中左端の櫛歯電極170Aと出力IDT173の櫛歯電極173Aとのピッチは、(1/2)λに設定されている。従って、入力IDT170の隣り合う櫛歯電極170Aと170Bとのピッチはλに設定されている。また、出力IDT173の隣り合う櫛歯電極173Aと173Bのピッチもλに設定されている。他の櫛歯電極も同じ関係に設定されている。
【0044】
なお、反射器151,152、入力IDT170及び出力IDT173は共に、櫛歯電極の幅が(1/4)λ、隣接する櫛歯電極間の距離が(1/4)λに設定されている。
【0045】
入力IDT170には、IN/OUT端子171が設けられ、このIN/OUT端子171には、所定周波数特性の駆動信号が入力されると共に、位相差0°の信号が出力される。また、出力IDTには、OUT端子174が設けられ、このOUT端子174からは、位相差π(rad)つまり180°の信号が出力される。従って、このようにIDTが構成されて位相差180°の移相器が形成される。
【0046】
続いて、前述した実施形態2による移相器から出力される信号波形について説明する。
図6は、IN/OUT端子171とOUT端子174から出力される信号波形について説明するグラフである。図6において、横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。グラフ上段にはIN/OUT端子171に出力される信号波形が示されている。この信号波形は、IN/OUT端子171に入力される入力信号と同位相の信号波形である。下段には、OUT端子174から出力される信号波形が示されており、グラフに示すように、OUT端子174から出力される信号波形は、π(rad)つまり180°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°と位相差180°の2出力を有する180°移相器が形成される。
【0047】
180°移相器は、バラン(balun:平衡不平衡変成器)として、入力側位相と出力側位相が反転した関係であるために、差動増幅回路に使用することができる。
【0048】
従って、前述した実施形態2によれば、入力IDT170と出力IDT173のIDTデザインによって、簡単な構成で180°移相器を提供することができる。このように構成された移相器は、構成が簡素で、小型化が可能であるために、無線通信機器におけるバランとして用いることができる。
(実施形態3)
【0049】
続いて、本発明に係る実施形態3について図面を参照して説明する。実施形態3は、実施形態1及び実施形態2に比べ、弾性表面波素子のIDTの構成を変えて位相差45°の移相器を形成するところに特徴を有し、基本構造は実施形態1と同じであるため、説明を省略し、IDTの構成について説明する。
図7には、本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子のIDTの構成が示されている。図7において、上段には、本実施形態3のIDTの構成を分かりやすく説明するために、基準となる所定周波数特性を有する弾性表面波素子の標準IDTデザインの一例を示し、下段には、本実施形態に係るIDTの構成を示している。
【0050】
標準IDTは、入力IDT81と、GNDIDT91と、図示しない反射器とから構成されている。反射器は、前述の実施形態1(図3、参照)と同じ考え方で構成されているため、説明を省略する。入力IDT81は、櫛歯電極の幅が(1/8)λ、隣接する櫛歯電極82と83との間のピッチが(1/8)λ、櫛歯電極83と84との間のピッチも(1/8)λというように設定され、4本の櫛歯電極が連続し、次の櫛歯電極85との間に、入力IDT81と同様に形成されたGNDIDT91の櫛歯電極4本が間挿されて形成されている。このような入力IDT81とGNDIDT91とが、本図面においては、4組形成されている。
【0051】
従って、入力IDT81の櫛歯電極82とGNDIDT91の櫛歯電極92との間のピッチは、(1/2)λ、櫛歯電極82と85との間のピッチはλに設定されている。入力IDT81には、IN端子89が接続され、GNDIDT91には、GND端子95が接続され、前述した実施形態1(図1、参照)と同様な構造で、半導体基板10内の回路素子に接続されている。
【0052】
このようにIDTが構成された弾性表面波素子は、所定の周期λで弾性波を発振する。このようなIDTの構成を基礎にして、IDTを分割及び特定の櫛歯電極を削除することによって、位相差45°を有する移相器を形成する。
【0053】
図7の下段のIDTの構成図において、この位相差45°の移相器は、入力IDT160の左端の櫛歯電極からnλの位置で2分割された入力側IDTと出力側IDTと、図示しない反射器と、から構成されている。入力側IDTは、入力IDT160とGNDIDT162とから構成され、出力側IDTは、出力IDT270と入力IDT273とから構成されている。入力側IDTと出力側IDTとは、nλ+(1/8)λの間隔を有して形成される。このとき、この間隔は、上段の入力IDT81の櫛歯電極82からnλの位置にある櫛歯電極86が削除されて構成され、nλ+(1/8)λの位置にある櫛歯電極287(入力IDT81の櫛歯電極87に相当する位置)を起点にして出力IDT270が形成される。
【0054】
出力IDT270は、標準IDTの入力IDT81の4本ある櫛歯電極のうちの先頭の櫛歯電極86,88を削除した構成としており、櫛歯電極88と櫛歯電極275との間隔も(1/8)λに設定されている。
【0055】
また、入力側IDTにおいては、入力IDT160は、IN端子163に、GNDIDT162はGND端子164に接続され、出力側IDTにおいては、出力IDT270はOUT端子271に、入力IDT273は、IN/OUT端子274に接続されている。これらの端子は、前述した実施形態1(図1、参照)と同様に半導体基板10に内蔵される回路素子(図示せず)に接続されている。
【0056】
従って、OUT端子271からは位相差45°の信号が出力され、IN/OUT端子274からは位相差0°の信号が出力され、位相差45°の移相器が形成される。
なお、IN/OUT端子274は、位相差0°の信号を出力する出力端子(OUT端子)と、入力側からの入力信号を入力するための入力端子(IN端子)としての機能を兼備している。
【0057】
続いて、前述した実施形態3による移相器から出力される信号波形について説明する。
図8は、OUT端子271とIN/OUT端子274から出力される信号波形について説明するグラフである。図8において、横軸には時間t、縦軸には振幅stが示されている。グラフ上段にはIN/OUT端子274に出力される信号波形が示されている。この信号波形は、入力側IDTから入力される信号と同位相の位相差0°の信号波形である。下段には、OUT端子271から出力される信号波形が示されている。このグラフに示すように、OUT端子271から出力される信号波形は、45°位相差を有する。
このようにして、入力信号に対して位相差0°、及び位相差45°の2出力を有する45°移相器が形成される。
【0058】
従って、前述した実施形態3によれば、簡単なIDTの構成で45°移相器を提供することができる。
また、図示しないが、この出力側IDTを入力側IDTとし、OUT端子274をIN端子として、入力IDT270からさらに(1/8)λだけずらした出力側IDTを構成して並列して設けた場合、OUT端子274から出力される信号を位相差0°とするとIN/OUT端子271からは、−45°の位相差を有する信号が出力され、また、新たに設けられる出力側IDTのOUT端子には、OUT端子274に対して位相差+45°の信号が出力され、このことにより位相差±45°の移相器を形成することができる。この結果、このようなIDTの構成によっても位相差90°の移相器を形成することができる。
【0059】
位相差±45°移相器では、デジタル直交変調方式における同相成分I(In phase)と直交成分Q(Quadrature Phase)の直交座標において、座標中心からの距離(振幅)が小さいため、振幅誤差を低減できるという効果がある。
【0060】
また、このような位相差45°の移相器を(1/8)λだけ移相をずらして複数設けることにより、45°〜315°までの範囲で45°毎の移相器を容易に作り出せることになり、所望の位相差を有する移相器を容易に形成することができる。
(実施形態4)
【0061】
続いて、本発明に係る実施形態4について図面を参照して説明する。実施形態4は、広帯域に対応するために広帯域を狭帯域に分割し、その帯域に対応する前述の実施形態1〜実施形態3のいずれかに記載の移相器を複数個並列に設けたもので、IDTの構成については、説明を省略し、この実施形態4に係る所望の帯域における周波数と、振幅誤差、位相誤差の関係について説明する。
【0062】
図9,10には、広帯域の所望帯域において、位相差90°の移相器を単独で設けた場合の周波数と振幅誤差、位相誤差の関係のグラフが示されている。図9において、横軸には周波数、縦軸には振幅が示され、所望の周波数の帯域において、振幅が、周波数が高くなるに従い徐々に小さくなって、振幅誤差が大きくなることが示されている。
【0063】
また、図10においては、横軸に周波数、縦軸に位相差が表され、図9で説明したときと同様の条件における周波数と位相誤差との関係が示されている。周波数に対して、位相差が負の傾きを有する直線で表され、周波数の値によって位相誤差が大きくなることが示されている。図9,10で示すように、広帯域の周波数に対して1個の移相器を用いる場合、振幅誤差または位相誤差が大きくなる。このことは、このように広帯域において一つの移相器を無線通信装置に使用する際、誤りビット率が高まり、転送効率が低減することを意味している。
【0064】
そこで、所定の帯域(チャネル)において、移相器を分割して構成することが考えられ、このような広帯域において、複数の移相器を備えたときの周波数と、振幅誤差、位相誤差との関係を図11,12を参照して説明する。
図11において、横軸には周波数、縦軸には振幅が示され、所望の周波数帯域を、位相差90°の移相器を複数備え、それらで所望の周波数帯域をCH1〜CHnまでを分割している。
【0065】
ここで、CH1を例にして説明すると、CH1における周波数帯域において、振幅は、図9で示す振幅と同じ傾向を示しているが、CH1の周波数の帯域が狭いために、振幅誤差が図9で示す1個対応の場合よりも小さくなっている。これは、CH2、CH3でも同じ傾向を示し、広帯域であっても振幅誤差が小さいことを示している。
【0066】
図12には、周波数と位相誤差との関係が示されている。図12において、横軸には周波数が、縦軸には位相差が示されている。ここでも、CH1における周波数帯域において、位相差は、図10に示す位相差と同じ傾向を示しているが、やはりCH1の周波数の帯域が狭いために、位相誤差が図10に示す1個対応の場合よりも小さくなっている。他のチャネルにおいても同様であり、広帯域であっても位相誤差が小さいことを示している。
【0067】
このように、所望の帯域の範囲で、広帯域を狭帯域に分割し、この狭帯域の主低周波数に対応して複数の移相器を備え、所望の周波数帯域を変更するときには、チャネルをCH1からCH2、CH3というように切り替えてゆくことで広帯域に対応することができる。
【0068】
従って、前述の実施形態4によれば、所望の周波数帯域を狭帯域に分割することで、位相誤差及び振幅誤差が小さくできるため、同じ狭帯域に対応する複数の移相器を並列接続し、所定の周波数の帯域に対応することで、広帯域に対応できる他、広帯域であっても、位相誤差及び振幅誤差を小さく抑えることができる。
【0069】
また、従来のハイブリットカプラ方式のように、LCR等の回路素子を複数備える構成に比べ、半導体基板上に弾性表面波素子のIDTの構成だけで実現できるため、小型化が可能で、小型化によりコストの低減が可能である。
(無線通信装置)
【0070】
続いて、前述した実施形態に記載の弾性表面波素子からなる移相器を搭載した無線通信装置について図面を参照して説明する。
図13には、本発明に係る無線通信装置300の構成を示すブロック図が示され、特に本発明の要旨である移相器に係る部位の構成を示している。図13において、まず受信側からの信号の流れに沿って説明すると、アンテナ301(ATN)で受信されたデジタル信号は、送受切換器302(Duplexer)から低雑音増幅器303(LNA:Low noise Amplifier)で増幅され、帯域通過フィルタ304(BPF:Band pass fillter)で所定周波数領域の信号のみが通過されてミキサ305,306(Mixer)に入力される。
【0071】
ミキサ305には、電圧制御発信器310(VCO:Voltage controlled oscilator)からの所定の周波数の基準信号が入力され、演算処理される。ミキサ305から出力される信号は同相成分Iであり、差動増幅器309を経て帯域通過フィルタ307を経てベースバンド(Base band)信号が出力される。
【0072】
一方、ミキサ306には、移相器2(Phase Shifter)によって基準信号からつくられた位相90°の信号が入力され、演算処理される。ミキサ306から出力される信号は直交成分Qであり、差動増幅器309を経て帯域通過フィルタ308を経てベースバンド(Base band)信号に出力される。
このように、入力信号の位相に直交変調をかけて、図示しない信号処理回路によって音声等に変換される。
【0073】
次に、送信側からの信号の流れに沿って説明すると、直交変調されたベースバンド信号のうち同相成分Iは、ミキサ312に入力される。また、直交成分Qは、ミキサ311に入力される。ミキサ312では、移相器2からの位相90°の信号と同相成分Iとを演算処理し、ミキサ311では、電圧制御発信器からの基準信号と直交成分Qとを演算処理し、それぞれの信号が合成(直交復調)され、帯域通過フィルタ313において不要な周波数成分が除去されて、電力増幅器314(PA:power amplifier)で増幅されてアンテナ301から送信される。
【0074】
この無線通信装置300を構成する回路素子のうち、アンテナ301と送受切換器302以外は、弾性表面波素子からなる移相器2を含め、半導体基板10内部に内蔵されており1チップの半導体装置(IC)として構成されている。
【0075】
従って、このような無線通信装置300によれば、半導体基板10に形成される前述したような弾性表面波素子からなる移相器2を備え、デジタル直交変調及び復調を行うため、振幅誤差及び位相誤差を小さく抑えることができ転送効率が高い無線通信装置300を提供することができる。
【0076】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述の実施形態3では、位相差45°を得るIDTを複数組み合わせて45°毎の位相差をつくりだすことを例示しているが、実施形態1による位相差90°と実施形態3による位相差45°のIDTとを組み合わせて、位相差135°、位相差225°というような45°毎の位相差を有する移相器を提供することができる。
【0077】
このようにすれば、45°毎の位相差をIDTの組み合わせ数を少なくして実現することができる。また、実施形態1と実施形態2との組み合わせ、実施形態2と実施形態3との組み合わせによる移相器を提供することができる。
【0078】
また、前述の実施形態4では、所望の周波数の帯域において、実施形態1による位相差90°の移相器を複数個備えているが、実施形態2または実施形態3による位相差180°、位相差45°の移相器を複数備えることができる。
【0079】
さらに、所望の周波数の帯域の範囲において、例えば、所望周波数帯域の中心部の出現頻度が多い場合には、その中心部の周波数帯域を細かく分割し、出現頻度が少ない低周波領域や高周波領域などは周波数帯域の分割を荒くするようにIDTの構成をデザインすることができる。
【0080】
このようにすれば、所望の周波数帯域において、出現頻度の高い領域においては、周波数帯域の分割を細かくすることで、振幅誤差及び位相誤差を低減することができ、組み合わせる移相器の数をへらしながら、実使用上において支障がない範囲で移相器の構成を簡略化することができる。
【0081】
また、前述の実施形態1ないし実施形態3において説明したIDTの構成は、本発明の実施形態の一例を例示したものであって、前述したような入力側IDTと出力側IDTの考え方において、様々に組み合わせて構成されるIDTデザインも、本発明の範疇に含まれるものである。
【0082】
従って、前述の実施形態1〜実施形態4によれば、位相誤差及び振幅誤差が小さい移相器を半導体基板上に弾性表面波素子で形成することができ、半導体装置と1チップ化された弾性表面波素子を搭載する小型で、転送効率が高い無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素の構成を示す部分断面図。
【図2】本発明の実施形態1に係る移相器の入出力の構成を示す説明図。
【図3】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子のIDTの構成を示す平面図。
【図4】本発明の実施形態1に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図5】本発明の実施形態2に係るIDTの構成構成を示す平面図。
【図6】本発明の実施形態2に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図7】本発明の実施形態3に係る弾性表面波素子のIDTの構成を示す平面図。
【図8】本発明の実施形態3に係る移相器により出力される信号波形を表すグラフ。
【図9】本発明の実施形態1に係る移相器を単独で設けた場合の周波数帯域と振幅誤差との関係を示すグラフ。
【図10】本発明の実施形態1に係る移相器を単独で設けた場合の周波数帯域と位相誤差との関係を示すグラフ図。
【図11】本発明の実施形態4に係る周波数帯域と振幅誤差との関係を示すグラフ。
【図12】本発明の実施形態4に係る周波数帯域と位相誤差との関係を示すグラフ。
【図13】本発明に係る無線通信装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0084】
1…弾性表面波素子、2…移相器、10…半導体基板、45…圧電薄膜、70…第1のIDT、73…第2のIDT。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に形成される弾性表面波素子であって、
前記半導体基板の上面に形成される圧電薄膜と、
前記圧電薄膜の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、
前記入力側IDTに対して、出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0°と、位相差(1/4)nπ(rad)と、の二つの信号を出力する移相器を構成することを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記出力側IDT第1の出力信号を出力する第1のIDTと、第2の出力信号を出力する第2のIDTと、を備え、
前記移相器が、前記第1の出力信号の位相と第2の出力信号の位相との差が所望の位相差を有する移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとの間隔が(1/2)nλ+λ、前記入力側IDTと前記第2IDTとの間隔が(1/2)nλ+(1/4)λ、に設定され、所望の位相差がπ/2(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとが共通に形成され、前記第1のIDTと前記第2のIDTとの間隔が(1/2)λとなるように形成され、位相差がπ(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとの間隔がnλ+(1/8)λに設定され、位相差がπ/4(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
所望の周波数帯域を所定の周波数に分割され、前記所定の周波数に対応して請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の移相器それぞれが、単独、または複数個、または、それぞれを組み合わせて形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項7】
デジタル直交変調/復調方式による無線通信装置であって、
デジタル直交変調/復調のための同相成分信号または直交成分信号を生成する移相器を備え、
前記移相器が、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子からなることを特徴とする無線通信装置。
【請求項1】
半導体基板に形成される弾性表面波素子であって、
前記半導体基板の上面に形成される圧電薄膜と、
前記圧電薄膜の上面に形成される入力側IDTと出力側IDTと、を備え、
前記入力側IDTに対して、出力側IDTを選択的に(1/8)nλ(λは弾性波の波長、nは整数)で求められる位置にずらして形成し、入力信号に対して位相差0°と、位相差(1/4)nπ(rad)と、の二つの信号を出力する移相器を構成することを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波素子において、
前記出力側IDT第1の出力信号を出力する第1のIDTと、第2の出力信号を出力する第2のIDTと、を備え、
前記移相器が、前記第1の出力信号の位相と第2の出力信号の位相との差が所望の位相差を有する移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとの間隔が(1/2)nλ+λ、前記入力側IDTと前記第2IDTとの間隔が(1/2)nλ+(1/4)λ、に設定され、所望の位相差がπ/2(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとが共通に形成され、前記第1のIDTと前記第2のIDTとの間隔が(1/2)λとなるように形成され、位相差がπ(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
前記入力側IDTと前記第1のIDTとの間隔がnλ+(1/8)λに設定され、位相差がπ/4(rad)の移相器であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の弾性表面波素子において、
所望の周波数帯域を所定の周波数に分割され、前記所定の周波数に対応して請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の移相器それぞれが、単独、または複数個、または、それぞれを組み合わせて形成されていることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項7】
デジタル直交変調/復調方式による無線通信装置であって、
デジタル直交変調/復調のための同相成分信号または直交成分信号を生成する移相器を備え、
前記移相器が、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の弾性表面波素子からなることを特徴とする無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−186487(P2006−186487A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375700(P2004−375700)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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