弾性表面波素子及び電子部品
【課題】LSAWからなる弾性表面波を利用するためにタンタル酸リチウム製の圧電基板上にIDT電極を配置した弾性表面波素子において、この弾性表面波素子の周波数帯域が2GHz以上もの高周波数帯域であっても伝搬損失を小さく抑える。
【解決手段】45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウムを圧電基板10として用いると共に、IDT電極2の膜厚hを7.5%λ〜8%λに設定すると共に、IDT電極2における電極指6群について、電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法に於いて、幅寸法と離間寸法との和で幅寸法を除した値で表されるライン占有率を0.55〜0.65に設定する。
【解決手段】45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウムを圧電基板10として用いると共に、IDT電極2の膜厚hを7.5%λ〜8%λに設定すると共に、IDT電極2における電極指6群について、電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法に於いて、幅寸法と離間寸法との和で幅寸法を除した値で表されるライン占有率を0.55〜0.65に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSAW(Leaky Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波素子及びこの弾性表面波素子を備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
Y−Xタンタル酸リチウム(LiTaO3:結晶軸のX軸周りにある角度だけ回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬する基板)は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)のうちL(Leaky)SAWを利用した弾性表面波素子の代表的な圧電基板として用いられている。この弾性表面波素子は、例えば一対のバスバー及びこれらバスバー間に配置された電極指群を備えたIDT(Inter Digital Transducer)電極と、このIDT電極における弾性表面波の伝搬方向両側に形成された反射器とを備えた共振子などとして構成される。
【0003】
前記圧電基板中をX軸方向に伝搬するバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)には、図19に示すように、伝搬速度が比較的遅い横波(3349m/s)、この横波よりも伝搬速度が速い横波(4214m/s)及び縦波(5588m/s)がある。そして、このような圧電基板では、前記速い横波がSH(Shear Horizontal)波(変位方向が圧電基板の表面に平行な横波)になると共に圧電基板の表面に集中し、既述のLSAWとなる。このLSAWは、完全なSH波ではなく、SV(Shear Vertical)成分も持っている。
【0004】
この時、LSAWが前記圧電基板を伝搬する時には、伝搬損失が生じてしまう。このような伝搬損失が生じる理由の具体的な一例について説明すると、既述のように、このLSAWはSVバルク波(遅い横波)より伝搬速度が速いため、当該LSAWにおけるSV成分がSVバルク波と結合して、伝搬するに従ってエネルギー損失を生じてしまう。
【0005】
ここで、後で詳述するように、LSAWの伝搬損失について、電極指の対数を無限に設定した場合(無限周期IDT)においては既に解析されているが、実際の有限構造の場合においては未だ解析されていない。また、特許文献1〜6では、圧電基板のカット角やIDT電極の膜厚などについて種々記載されているが、LSAWの伝搬損失の詳細な検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−167936
【特許文献2】国際公開2008−4408
【特許文献3】特開2003−283298
【特許文献4】特開2006−87145
【特許文献5】特開2007−74754
【特許文献6】特開昭63−238708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、LSAWからなる弾性表面波を利用するためにタンタル酸リチウム基板上にIDT電極を配置した弾性表面波素子において、この弾性表面波素子の周波数帯域が2GHz以上もの高周波数帯域であっても伝搬損失を小さく抑えることのできる弾性表面波素子及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性表面波素子は、
2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、
結晶軸のX軸周りに45°〜46°回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬するように構成された圧電基板と、
弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された導電体膜からなる一対のバスバー及び、これらバスバーから対向するバスバーに向かって互いに櫛歯状に交差するように配置された導電膜からなる電極指群を有するIDT電極と、
弾性表面波の伝搬方向における前記IDT電極の一方側及び他方側に各々設けられ、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された一対の反射器バスバー及び、これら反射器バスバー同士を互いに接続するように各々形成された反射器電極指群を各々有する反射器と、を備え、
前記電極指群の周期長をλとすると、前記電極指群における各々の前記導電体膜の膜厚は、7.5%λ〜8%λであり、
前記電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法を夫々D及びSとすると、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率は、0.55〜0.65であることを特徴とする。
前記ライン占有率は、当該ライン占有率の変動に対する周波数の変動を抑える場合には0.55〜0.60に設定されていることが好ましく、一方前記弾性表面波素子における共振周波数と反共振周波数との間の間隔を広げる場合には、0.60〜0.65に設定されていることが好ましい。即ち、弾性表面波素子によりバンドパスフィルタを構成する場合には、主要なIDT電極のライン占有率を0.60〜0.65に設定することにより、その通過域を広帯域化することが最も容易となる。
また、本発明の電子部品は、
前記弾性表面波素子を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウム基板を圧電基板として用いている。そして、IDT電極における電極指群の膜厚を7.5%λ〜8%λ(λ:電極指の周期長)に設定すると共に、IDT電極における電極指群について、ライン占有率を0.55〜0.65に設定している。そのため、製造ばらつきによる周波数特性のずれを抑制しながら、弾性表面波の伝搬損失を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の弾性表面波素子の一例を示す平面図である。
【図2】前記弾性表面波素子の圧電基板のカット角を示す説明図である。
【図3】前記弾性表面波素子を示す縦断面図である。
【図4】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図5】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図6】前記弾性表面波素子について得られた特性を示す模式図である。
【図7】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図8】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図9】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図10】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図11】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図12】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図13】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図14】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図15】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図16】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図17】前記弾性表面波素子の他の例を示す回路図である。
【図18】前記弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図19】弾性表面波の伝搬速度を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[弾性表面波素子の概観]
本発明の弾性表面波素子の実施の形態の一例について、図1〜図3を参照して説明する。始めに、弾性表面波素子を以下のように構成した理由について説明する前に、この弾性表面波素子の概観について説明する。弾性表面波素子は、図1に示すように、SAW(surface acoustic wave)のうちL(Leaky)SAWを利用するように構成されており、この例では複数の共振子1を圧電基板10上に形成し、電気的にラダー型に相互接続して、ラダー型バンドパスフィルタを構成している。この圧電基板10は、図2に模式的に示すように、回転Y−Xタンタル酸リチウム基板(結晶軸のX軸周りに角度θだけ回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬する基板)により構成されている。前記角度θは、45°〜46°具体的には46°となっている。尚、圧電基板10について、角度θとは反対周りに回転させた場合にも、当該圧電基板10の表裏を入れ替えた関係になり、同様のSAW特性となる。
【0012】
この例では、入力ポート11と出力ポート12との間に例えば3つの共振子1が各々直列腕をなすように互いに直列に接続されており、これら共振子1、1間に1つの共振子1が各々並列腕をなすように並列に接続されている。図1中13は接地ポートであり、4は各々の共振子1、1同士あるいは共振子1と各ポート11、12、13とを電気的に接続する引き回し電極である。尚、図1では、各共振子1については模式的に簡略化して描画している。
【0013】
各々の共振子1は、IDT電極2と、弾性表面波(LSAW)の伝搬方向においてこのIDT電極2の一方側及び他方側に各々形成された反射器3、3とを備えている。IDT電極2は、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように配置された一対のバスバー5、5と、これらバスバー5、5間において互いに交差するように櫛歯状に形成された複数本の電極指6と、を備えている。この例では、IDT電極2は、一対のバスバー5、5のうち一方側のバスバー5から伸びる電極指6と、当該電極指6に隣接して他方側のバスバー5から伸びる電極指6と、が弾性表面波の伝搬方向に沿って交互に配置されて正規型電極をなしている。図1中、7は反射器バスバー、8は反射器電極指である。
【0014】
そして、各々の電極指6は、図3に示すように、互いに隣接する2本の電極指6、6の各々の幅寸法と、これら電極指6、6間の離間寸法と、からなる周期長λが圧電基板10上を伝搬する弾性表面波の周波数に対応するように構成されている。具体的には、前記周期長λは、所望の周波数における弾性表面波の波長λと同じ寸法となっている。この実施の形態では、圧電基板10上において、共振周波数fが2GHz以上この例では2.4GHzのLSAWが伝搬するように、前記周期長λが構成されている。即ち、この圧電基板10上では、電極指6の配置領域を伝搬するLSAWの伝搬速度Vが例えば3877m/sとなるので、f=V/λとなるように、周期長λが設定されている。具体的には、周期長λは約1.62μmとなっている。尚、図3は圧電基板10を図1のA−A線で切断した縦断面図を示しており、圧電基板10の厚さ寸法については模式的に示している。
【0015】
ここで、電極指6の幅寸法及び互いに隣接する電極指6、6間の離間寸法を夫々D及びSとすると、以下の式(1)に示すように、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率rは、0.55〜0.65この例では0.6となっている。
r=D÷(D+S) ・・・(1)
具体的な寸法としては、前記幅寸法D及び離間寸法Sは、夫々0.486μm及び0.324μmとなっている。互いに交差する電極指6、6の数量(電極指6の対数)Nは、例えば300対に設定され、互いに隣接する電極指6、6同士が交差する交差長Wは例えば37.5λとなっている。
【0016】
また、各々の電極指6は、図3に示すように、導電体膜である例えばアルミニウム(Al)膜により構成されている。具体的には、各々の共振子1は、圧電基板10上に例えばアルミニウム膜とレジスト膜とを下側からこの順番で積層し、次いでフォトリソグラフィーやエッチングなどを用いたパターニング法により一体的に形成されている。電極指6の膜厚hは、周期長λを用いて表すと、例えば7.5%λ〜8%λこの例では8%λとなっている。このように弾性表面波素子を構成した理由について、以下に詳述する。
【0017】
[これまでに得られている弾性表面波のエネルギー損失の原因]
LSAWは、背景の項にて説明したように、SV成分を持っているので、既述の圧電基板10上を伝搬する時、このSV成分がLSAWとは別のSVバルク波と結合して伝搬損失を生じる。従って、LSAWのSV成分がちょうどゼロであれば、SVバルク波放射がなくなり、伝搬損失がゼロとなる。このように伝搬損失がゼロとなる条件は、電極指6の膜厚及び幅寸法、圧電基板10のカット角及び弾性表面波素子の周波数帯域の組み合わせにより決まる。そのため、弾性表面波素子がこの条件を概略満たすように各パラメータを設定することにより、当該弾性表面波素子が低損失となる。具体的には、電極指6の膜厚h及びライン占有率rが夫々8%λ及び0.5の場合には、共振子1の共振周波数(ストップバンド下端)において伝搬損失がゼロとなるのは、以下に挙げた技術資料1には42°Y板である旨記載されている。また、膜厚h及びライン占有率rが夫々10%λ及び0.5の場合には、共振周波数から反共振周波数に亘っての伝搬損失の平均が最小となるのは、技術資料2に依れば、48°Y板である。
【0018】
しかしながら、これら技術資料1、2の解析は、電極指6の本数が無限(無限周期IDT)の場合について成されたものであり、弾性表面波の伝搬方向に端部のない理想的な共振子について得られた結果である。一方、現実の共振子1は、電極指6の本数が有限の構造であるために、既述のSVバルク波損失以外の損失を考慮する必要がある。そこで、本発明では、以下に説明するように、SVバルク波損失以外の損失を検討すると共に、LSAWにおける損失ができるだけ小さくなる条件を解析した。
【0019】
[SVバルク波損失以外の損失について]
図4は、以下に示す共振子について、実測により求めた機械損失量を1/Q(Q:共振のQ値)として表示した特性を示している。図4における横軸は、2つの横波のうち伝搬速度の速い横波の伝搬速度(4214m/s)で考えたブラッグ周波数(約2107MHz)即ち速い横波のカットオフ周波数で規格化した周波数となっている。図4では、電極指の抵抗によるオーミック損失は除いてあり、機械的(Mechanical)損失1/Qmのみを示している。尚、「損失」とは、単位時間に失われるエネルギーの(全体に対する)割合であり、単位は無次元となっている。
(測定に用いた共振子)
圧電基板:48°Y−Xタンタル酸リチウム
周期長λ:2μm
電極指の対数N:250対
反射器電極指:各々50本
共振子の膜厚:9.53%λ
【0020】
図4に「実験値」として示した実線が実測値であり、共振子の共振点(共振周波数)において損失が最小となり、この共振点から反共振点(反共振周波数)に近づくにつれて損失が増加している。
【0021】
また、圧電基板のカット角、共振子の膜厚、IDT電極のライン占有率、IDT電極におけるバスバー間の寸法(開口長)、電極指の対数Nなどの実験パラメータが異なる様々な1ポート共振子を実際に作製し、これら共振子の共振特性を高周波プローバー及びネットワークアナライザを用いて測定すると共に、この測定結果に基づいて損失を表す実験式を算出した。具体的には、前記測定により共振特性(反射特性で見れば共振円)が得られるので、これを集中定数等価回路(L(インダクタンス)、C(コンデンサ)、R(抵抗)で構成した単純回路)にフィッティング処理して定数を決定する。この時、機械損失を表す直列共振腕の抵抗RMは周波数に依存して変化するとして決定し、1/Qm=RM(ω)/ωLとして損失の周波数特性を得る。
【0022】
オーミック損失は、回路全体の直列抵抗REにより表現され、分離される。従って、1/Qmとして得られた機械損失とは、何らかの理由で波動が漏れた結果起こる損失であり、次に分類される。
(1)基板の中へのバルク波放射
(2)伝搬方向について反射器で閉じこめられず漏れ出てしまうSAW
(3)横方向(開口長方向)への漏れ
(4)電極が持つ粘性により失われるエネルギー損失
【0023】
今回のケースでは、(2)は十分な反射量と反射器長とを有するため、着目した共振特性付近では損失がほとんど生じない。(3)は十分な大きさの開口長でのデータに着目し、影響が少ない状態で議論する。(4)は影響が顕著になる絶対周波数以下である。このように、この実験では、機械損失について(1)が主因となる条件に着目している。そして、以上の結果に基づいて、実験式について、前記実験パラメータを変化させた時の損失を評価できるように構成した。即ち、SH−BAW損失をシミュレーションにより把握するためには、数百に及ぶ電極指を表現しての解析が必要になるため、解析規模が大きく困難である。一方、このように実験結果を基にした近似式であれば、自由にパラメータを設定して評価できる。
【0024】
ここで、図4には、「伝搬損失(SV−BAW)」として、技術資料1、2と同様の手法により理論的に決定したSV−BAWによる伝搬損失を示しており、また「伝搬損失(SH−BAW)、その他」として、前記実験式による損失を示している。また、「伝搬損失合計」として、これら2つの損失の和(SV+SH)を示している。この損失の合計は、図4に「実験値」として示した結果と極めて良く合致しており、従って第1の損失である「無限周期構造におけるSV−BAWの損失」以外の部分について、第2の損失を示す実験式によって良好に補完できていることを示している。
【0025】
以上をまとめると、LSAWにおける伝搬損失は、第1の損失及び第2の損失により構成され、第1の損失は理論値であるSV−BAW損失である。また、第2の損失は、実験式により求められた値であり、主にSH−BAWによることが分かった。従って、(1)の損失は、SV−BAWとSH−BAWとの混合であるが、SV−BAWは理想的な無限周期構造の理論解析により求められるので、実験結果からこれを差し引くことで、有限構造に由来するSH−BAWの損失を取り出しモデル化(近似式化)することができる。
【0026】
ここで、フィルタやデュープレクサなどの共振デバイスを構成する時には、特に共振点と反共振点との間の領域における伝搬損失が小さいことが好ましい。そこで、当該領域における伝搬損失について検討する。SV−BAWについては、図4から分かるように共振点と反共振点との間でちょうど損失がゼロとなっており、従って既述の測定に用いた共振子は、SV−BAWに関しては最適な条件になっていると言える。
【0027】
一方、SH−BAWについては、共振子が有限な構造であるため、既述の速い横波のカットオフ周波数(規格化周波数:1)以下でも損失が発生し、共振点からカットオフ周波数に近づくにつれて増大している。実験で得られた損失において、反共振点における損失が共振点における損失よりも大きかったのは、このSH−BAW損失が主たる要因となっている。
【0028】
図5は、このSH−BAW損失について、共振子の膜厚hの依存性を確認した結果を示している。図5は、膜厚hを7%λ、8%λ、9%λ及び10%λに各々設定した時のSH−BAW損失を示しており、各々の損失を示す線種と同じ線種で各条件における共振点及び反共振点を示している。この結果から、反共振点におけるSH−BAW損失は、膜厚が増加するにつれて大きくなっていることが分かる。この理由としては、カットオフに近い周波数では、膜厚hが厚くなる程SAWとBAWとの結合が大きくなり、従ってSAWからBAWへの変換及び放射が増えるためと考えられる。
【0029】
しかし、2GHz以上もの高周波数帯域で共振子を使用する場合には、共振子の膜厚hが小さすぎると、共振点を中心にオーミックロスが増加するため、7%λ(λ=2μmの場合には140nm)以上であることが望まれる。そこで、本発明では、損失ができるだけ小さくなる条件(パラメータ)を求めるにあたって、膜厚hの下限を7%λに設定した。この時、オーミック損失については、波長比膜厚が同じ条件であっても、周波数帯(または周期長λ)に伴って変化するので、最適化する対象には加えなかった。尚、図6は、以上説明した損失の周波数依存性を模式的に示している。
【0030】
[各パラメータの最適化]
続いて、損失ができるだけ小さくなるように膜厚h、カット角及びライン占有率rの最適値を算出した結果について説明する。図7〜図10は、ライン占有率rを各々0.5に設定した場合において、共振点(fr)及び反共振点(fa)の夫々の損失の膜厚h依存性を示している。図7は、カット角が44°の場合についての結果を示しており、図8は45°の場合の結果を示している。また、図9及び図10は、カット角が夫々46°及び47°の場合の結果を示している。また、図7〜図10の各々の横軸には、膜厚hに代えて、波長比膜厚(h/λ)を用いている。このシミュレーションでは、電極指の対数N及び開口長は夫々300対及び37.5λとした。
【0031】
図7〜図10に示すように、共振点の損失及び反共振点の損失のいずれについても、波長比膜厚が0.05程度から大きく(厚く)なるにつれて減少し、その後0.10に近づくにつれて増大する曲線となっている。そして、共振点及び反共振点での損失が最も小さくなる時の波長比膜厚は、カット角が44°の場合(図7)には、7%よりも小さく(薄く)なっている。従って、2GHz以上もの高周波数帯域で共振子を使用する場合の最適なカット角は、45°以上である(44°は適していない)ことが分かる。
【0032】
一方、カット角が45°(図8)及び46°(図9)の場合には、共振点及び反共振点での損失が最小となる時の波長比膜厚は、0.075〜0.08(7.5%〜8%)の範囲となっており、この範囲は2GHz以上の高周波数帯域でオーミック損失の影響が少ない領域である。カット角が47°の場合(図10)には、図7〜図9と比べて共振点及び反共振点での損失が増大していた。従って、ライン占有率rが0.5の場合には、カット角及び波長比膜厚の最適値は、夫々45°〜46°及び7.5%〜8%であることが分かった。
ライン占有率rが0.6の場合について、同様にカット角及び波長比膜厚を夫々変えて計算したところ、図11〜図14に示すように、カット角及び波長比膜厚の夫々の最適値は、夫々45°〜46°及び7.5%〜8%となった。
【0033】
次に、ライン占有率rの最適値について検討した。2GHz以上もの高周波数帯域のLSAWを利用した弾性表面波素子では、電極指の幅寸法や互いに隣接する電極指間の離間寸法などが極めて小さくなり、従って当該弾性表面波素子を製造しにくくなると共に、製造時の寸法ばらつきによって周波数特性のずれが起こりやすい。そこで、周波数特性に対するライン占有率rの依存性が小さいことが望ましい。即ち、弾性表面波素子を製造した時に、製造ばらつきにより変動する程度の寸法誤差では、周波数特性はほとんど変わらないことが好ましい。そこで、以下のように、実験式を用いて同様にライン占有率rと共振点及び反共振点との相関関係について考察した。
【0034】
図15は、45°Y−Xタンタル酸リチウム基板を用いると共に膜厚hを7.5%λとした時について、共振点及び反共振点に対するライン占有率rの依存性を示している。図15から分かるように、共振点は、ライン占有率rが0.5程度から0.7程度の領域において変化が小さい。従って、ライン占有率rは、この領域の値を取ることが好ましいと言える。尚、他の条件については前述の条件と同様である。
【0035】
ここで、図16は、共振子の容量比とライン占有率rとの相関関係を示したグラフを示している。この「容量比」とは、共振子を等価回路で見た時に、この共振子の元々の静電容量C0に対する当該共振子の圧電性を示す容量値C1の比率であり、小さい程共振点と反共振点との間が離間して広帯域のフィルタとなり、大きい程狭帯域のフィルタとなる。そして、弾性表面波素子では、非常に広帯域のフィルタを要求されることが多いため、前記容量比は、できるだけ小さいことが好ましい。従って、図16において容量比ができるだけ小さい値を取り、且つ図15において共振点の周波数の変動幅ができるだけ小さくなる時のライン占有率rは、0.55〜0.65となる。このライン占有率rの最適範囲は、カット角が45°〜46°の領域及び膜厚hが7.5%λ〜8%λの領域ではほとんど変化しない。また、電極指の対数及び開口長が極端に小さくなければ、即ち電極指の対数及び開口長について夫々100対程度以上及び12λ程度以上であれば、損失の量については変化するかもしれないが、以上説明した最適な条件はほとんど影響を受けない。
【0036】
更に、目的とする特性(仕様)に応じてライン占有率rを設定することにより、夫々の仕様に特化した最適な特性が得られる。具体的には、ライン占有率rの変動に対して周波数変動が小さい特性を得るためには、ライン占有率rを0.55〜0.60に設定することが好ましい。一方、容量比が小さく共振点と反共振点との間の間隔ができるだけ広い弾性表面波素子としての性能を重視する場合には、ライン占有率rを0.60〜0.65に設定することが好ましい。即ち、前記弾性表面波素子として、通過域及び阻止域を備えたフィルタを構成する時に、通過域を広くして広帯域のバンドパスフィルタを得る場合には、ライン占有率rを0.60〜0.65に設定することが好ましい。また、ライン占有率rを0.60〜0、65に設定して広帯域な弾性表面波素子を構成する場合には、当該弾性表面波素子を電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)に適用することにより、このVCOにおける周波数の可変幅の広帯域化が図られる。このようなVCOの一例を図17に示すと、このVCOは、コンデンサ20、インダクタ21、抵抗22、トランジスタ23及びダイオード24を組み合わせたコルピッツ回路を用いた構成を採っており、トランジスタ23のベース端子と入力端子25との間には既述の共振子1が介在している。図17中26はトランジスタ23を駆動するために電圧が印加されるポートであり、27は出力ポートである。
【0037】
上述の実施の形態によれば、2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウム基板を圧電基板10として用いている。そして、IDT電極2の膜厚hを7.5%λ〜8%λに設定すると共に、IDT電極2における電極指6群について、ライン占有率rを0.55〜0.65に設定している。そのため、製造ばらつきによる周波数特性のずれを抑制しながら、LSAWにおける伝搬損失を小さく抑えることができる。また、弾性表面波素子の容量比を既述のように小さく設定できるので、共振点と反共振点との間を大きく離間させて広帯域のフィルタを構成できる。
【0038】
従来、全ての機械的損失の周波数特性を総合的に検討すると共にライン占有率rまで含めて最適条件を特定した解析は行われて来なかった。しかし、本発明では、以上詳述したように、SV−BAWに加えてSH−BAWの損失についても検討すると共に、SH−BAWの損失を表す実験式を作成し、この実験式に基づいて圧電基板10のカット角、膜厚h及びライン占有率rを最適化している。従って、有限構造を採る現実の共振子などの弾性表面波素子について、現実に即した最適な条件を得ることができる。また、従来では例えば伝搬速度、電極指反射率等を調整するためのパラメータでしかなかったライン占有率rについて、損失ができるだけ小さくなる範囲に設定すると共に、製造ばらつきに基づく共振点の変動が抑えられ、且つ広帯域のフィルタとなるように値を合わせ込んでいる。従って、既述のように損失の抑えられた弾性表面波素子を得ることができる。
そのため、以上説明した弾性表面波素子は、当該弾性波表面素子を備えた電子部品に好適に用いられる。
【0039】
以上説明した弾性表面波素子としては、共振子1を利用したラダー型フィルタを例に挙げたが、図18に示すように、縦共振器型フィルタであっても良い。図18では、圧電基板10上に複数例えば3つのIDT電極2を弾性表面波の伝搬方向に沿って並べると共に、当該伝搬方向におけるこれらIDT電極2の並びの一方側及び他方側に各々反射器3を配置した例を示している。また、電極指6の膜厚hについて、例えば7.5%λ〜8%λに設定したが、バスバー5の膜厚については当該電極指6は別個に設定しても良い。
【0040】
技術文献1:Ken-ya Hashimoto et al, "Optimum Leaky-SAW Cut of LiTaO3 for Minimised Insertion Loss Devices," Proc. 1997 IEEE Ultrason. Symp., pp.245-254.
技術文献2:Natalya Naumenko and Benjamin Abbotto, "Optimized Cut of LiTaO3 for Resonator Filters with Improved Performance" Proc. 2002 IEEE Ultrason. Symp., pp.385-390
【符号の説明】
【0041】
h 膜厚
r ライン占有率
1 共振子
2 IDT電極
6 電極指
10 圧電基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSAW(Leaky Surface Acoustic Wave)を利用した弾性表面波素子及びこの弾性表面波素子を備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
Y−Xタンタル酸リチウム(LiTaO3:結晶軸のX軸周りにある角度だけ回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬する基板)は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)のうちL(Leaky)SAWを利用した弾性表面波素子の代表的な圧電基板として用いられている。この弾性表面波素子は、例えば一対のバスバー及びこれらバスバー間に配置された電極指群を備えたIDT(Inter Digital Transducer)電極と、このIDT電極における弾性表面波の伝搬方向両側に形成された反射器とを備えた共振子などとして構成される。
【0003】
前記圧電基板中をX軸方向に伝搬するバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)には、図19に示すように、伝搬速度が比較的遅い横波(3349m/s)、この横波よりも伝搬速度が速い横波(4214m/s)及び縦波(5588m/s)がある。そして、このような圧電基板では、前記速い横波がSH(Shear Horizontal)波(変位方向が圧電基板の表面に平行な横波)になると共に圧電基板の表面に集中し、既述のLSAWとなる。このLSAWは、完全なSH波ではなく、SV(Shear Vertical)成分も持っている。
【0004】
この時、LSAWが前記圧電基板を伝搬する時には、伝搬損失が生じてしまう。このような伝搬損失が生じる理由の具体的な一例について説明すると、既述のように、このLSAWはSVバルク波(遅い横波)より伝搬速度が速いため、当該LSAWにおけるSV成分がSVバルク波と結合して、伝搬するに従ってエネルギー損失を生じてしまう。
【0005】
ここで、後で詳述するように、LSAWの伝搬損失について、電極指の対数を無限に設定した場合(無限周期IDT)においては既に解析されているが、実際の有限構造の場合においては未だ解析されていない。また、特許文献1〜6では、圧電基板のカット角やIDT電極の膜厚などについて種々記載されているが、LSAWの伝搬損失の詳細な検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−167936
【特許文献2】国際公開2008−4408
【特許文献3】特開2003−283298
【特許文献4】特開2006−87145
【特許文献5】特開2007−74754
【特許文献6】特開昭63−238708
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、LSAWからなる弾性表面波を利用するためにタンタル酸リチウム基板上にIDT電極を配置した弾性表面波素子において、この弾性表面波素子の周波数帯域が2GHz以上もの高周波数帯域であっても伝搬損失を小さく抑えることのできる弾性表面波素子及び電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の弾性表面波素子は、
2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、
結晶軸のX軸周りに45°〜46°回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬するように構成された圧電基板と、
弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された導電体膜からなる一対のバスバー及び、これらバスバーから対向するバスバーに向かって互いに櫛歯状に交差するように配置された導電膜からなる電極指群を有するIDT電極と、
弾性表面波の伝搬方向における前記IDT電極の一方側及び他方側に各々設けられ、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された一対の反射器バスバー及び、これら反射器バスバー同士を互いに接続するように各々形成された反射器電極指群を各々有する反射器と、を備え、
前記電極指群の周期長をλとすると、前記電極指群における各々の前記導電体膜の膜厚は、7.5%λ〜8%λであり、
前記電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法を夫々D及びSとすると、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率は、0.55〜0.65であることを特徴とする。
前記ライン占有率は、当該ライン占有率の変動に対する周波数の変動を抑える場合には0.55〜0.60に設定されていることが好ましく、一方前記弾性表面波素子における共振周波数と反共振周波数との間の間隔を広げる場合には、0.60〜0.65に設定されていることが好ましい。即ち、弾性表面波素子によりバンドパスフィルタを構成する場合には、主要なIDT電極のライン占有率を0.60〜0.65に設定することにより、その通過域を広帯域化することが最も容易となる。
また、本発明の電子部品は、
前記弾性表面波素子を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウム基板を圧電基板として用いている。そして、IDT電極における電極指群の膜厚を7.5%λ〜8%λ(λ:電極指の周期長)に設定すると共に、IDT電極における電極指群について、ライン占有率を0.55〜0.65に設定している。そのため、製造ばらつきによる周波数特性のずれを抑制しながら、弾性表面波の伝搬損失を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の弾性表面波素子の一例を示す平面図である。
【図2】前記弾性表面波素子の圧電基板のカット角を示す説明図である。
【図3】前記弾性表面波素子を示す縦断面図である。
【図4】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図5】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図6】前記弾性表面波素子について得られた特性を示す模式図である。
【図7】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図8】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図9】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図10】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図11】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図12】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図13】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図14】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図15】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図16】前記弾性表面波素子について得られた特性図である。
【図17】前記弾性表面波素子の他の例を示す回路図である。
【図18】前記弾性表面波素子の他の例を示す平面図である。
【図19】弾性表面波の伝搬速度を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[弾性表面波素子の概観]
本発明の弾性表面波素子の実施の形態の一例について、図1〜図3を参照して説明する。始めに、弾性表面波素子を以下のように構成した理由について説明する前に、この弾性表面波素子の概観について説明する。弾性表面波素子は、図1に示すように、SAW(surface acoustic wave)のうちL(Leaky)SAWを利用するように構成されており、この例では複数の共振子1を圧電基板10上に形成し、電気的にラダー型に相互接続して、ラダー型バンドパスフィルタを構成している。この圧電基板10は、図2に模式的に示すように、回転Y−Xタンタル酸リチウム基板(結晶軸のX軸周りに角度θだけ回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬する基板)により構成されている。前記角度θは、45°〜46°具体的には46°となっている。尚、圧電基板10について、角度θとは反対周りに回転させた場合にも、当該圧電基板10の表裏を入れ替えた関係になり、同様のSAW特性となる。
【0012】
この例では、入力ポート11と出力ポート12との間に例えば3つの共振子1が各々直列腕をなすように互いに直列に接続されており、これら共振子1、1間に1つの共振子1が各々並列腕をなすように並列に接続されている。図1中13は接地ポートであり、4は各々の共振子1、1同士あるいは共振子1と各ポート11、12、13とを電気的に接続する引き回し電極である。尚、図1では、各共振子1については模式的に簡略化して描画している。
【0013】
各々の共振子1は、IDT電極2と、弾性表面波(LSAW)の伝搬方向においてこのIDT電極2の一方側及び他方側に各々形成された反射器3、3とを備えている。IDT電極2は、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように配置された一対のバスバー5、5と、これらバスバー5、5間において互いに交差するように櫛歯状に形成された複数本の電極指6と、を備えている。この例では、IDT電極2は、一対のバスバー5、5のうち一方側のバスバー5から伸びる電極指6と、当該電極指6に隣接して他方側のバスバー5から伸びる電極指6と、が弾性表面波の伝搬方向に沿って交互に配置されて正規型電極をなしている。図1中、7は反射器バスバー、8は反射器電極指である。
【0014】
そして、各々の電極指6は、図3に示すように、互いに隣接する2本の電極指6、6の各々の幅寸法と、これら電極指6、6間の離間寸法と、からなる周期長λが圧電基板10上を伝搬する弾性表面波の周波数に対応するように構成されている。具体的には、前記周期長λは、所望の周波数における弾性表面波の波長λと同じ寸法となっている。この実施の形態では、圧電基板10上において、共振周波数fが2GHz以上この例では2.4GHzのLSAWが伝搬するように、前記周期長λが構成されている。即ち、この圧電基板10上では、電極指6の配置領域を伝搬するLSAWの伝搬速度Vが例えば3877m/sとなるので、f=V/λとなるように、周期長λが設定されている。具体的には、周期長λは約1.62μmとなっている。尚、図3は圧電基板10を図1のA−A線で切断した縦断面図を示しており、圧電基板10の厚さ寸法については模式的に示している。
【0015】
ここで、電極指6の幅寸法及び互いに隣接する電極指6、6間の離間寸法を夫々D及びSとすると、以下の式(1)に示すように、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率rは、0.55〜0.65この例では0.6となっている。
r=D÷(D+S) ・・・(1)
具体的な寸法としては、前記幅寸法D及び離間寸法Sは、夫々0.486μm及び0.324μmとなっている。互いに交差する電極指6、6の数量(電極指6の対数)Nは、例えば300対に設定され、互いに隣接する電極指6、6同士が交差する交差長Wは例えば37.5λとなっている。
【0016】
また、各々の電極指6は、図3に示すように、導電体膜である例えばアルミニウム(Al)膜により構成されている。具体的には、各々の共振子1は、圧電基板10上に例えばアルミニウム膜とレジスト膜とを下側からこの順番で積層し、次いでフォトリソグラフィーやエッチングなどを用いたパターニング法により一体的に形成されている。電極指6の膜厚hは、周期長λを用いて表すと、例えば7.5%λ〜8%λこの例では8%λとなっている。このように弾性表面波素子を構成した理由について、以下に詳述する。
【0017】
[これまでに得られている弾性表面波のエネルギー損失の原因]
LSAWは、背景の項にて説明したように、SV成分を持っているので、既述の圧電基板10上を伝搬する時、このSV成分がLSAWとは別のSVバルク波と結合して伝搬損失を生じる。従って、LSAWのSV成分がちょうどゼロであれば、SVバルク波放射がなくなり、伝搬損失がゼロとなる。このように伝搬損失がゼロとなる条件は、電極指6の膜厚及び幅寸法、圧電基板10のカット角及び弾性表面波素子の周波数帯域の組み合わせにより決まる。そのため、弾性表面波素子がこの条件を概略満たすように各パラメータを設定することにより、当該弾性表面波素子が低損失となる。具体的には、電極指6の膜厚h及びライン占有率rが夫々8%λ及び0.5の場合には、共振子1の共振周波数(ストップバンド下端)において伝搬損失がゼロとなるのは、以下に挙げた技術資料1には42°Y板である旨記載されている。また、膜厚h及びライン占有率rが夫々10%λ及び0.5の場合には、共振周波数から反共振周波数に亘っての伝搬損失の平均が最小となるのは、技術資料2に依れば、48°Y板である。
【0018】
しかしながら、これら技術資料1、2の解析は、電極指6の本数が無限(無限周期IDT)の場合について成されたものであり、弾性表面波の伝搬方向に端部のない理想的な共振子について得られた結果である。一方、現実の共振子1は、電極指6の本数が有限の構造であるために、既述のSVバルク波損失以外の損失を考慮する必要がある。そこで、本発明では、以下に説明するように、SVバルク波損失以外の損失を検討すると共に、LSAWにおける損失ができるだけ小さくなる条件を解析した。
【0019】
[SVバルク波損失以外の損失について]
図4は、以下に示す共振子について、実測により求めた機械損失量を1/Q(Q:共振のQ値)として表示した特性を示している。図4における横軸は、2つの横波のうち伝搬速度の速い横波の伝搬速度(4214m/s)で考えたブラッグ周波数(約2107MHz)即ち速い横波のカットオフ周波数で規格化した周波数となっている。図4では、電極指の抵抗によるオーミック損失は除いてあり、機械的(Mechanical)損失1/Qmのみを示している。尚、「損失」とは、単位時間に失われるエネルギーの(全体に対する)割合であり、単位は無次元となっている。
(測定に用いた共振子)
圧電基板:48°Y−Xタンタル酸リチウム
周期長λ:2μm
電極指の対数N:250対
反射器電極指:各々50本
共振子の膜厚:9.53%λ
【0020】
図4に「実験値」として示した実線が実測値であり、共振子の共振点(共振周波数)において損失が最小となり、この共振点から反共振点(反共振周波数)に近づくにつれて損失が増加している。
【0021】
また、圧電基板のカット角、共振子の膜厚、IDT電極のライン占有率、IDT電極におけるバスバー間の寸法(開口長)、電極指の対数Nなどの実験パラメータが異なる様々な1ポート共振子を実際に作製し、これら共振子の共振特性を高周波プローバー及びネットワークアナライザを用いて測定すると共に、この測定結果に基づいて損失を表す実験式を算出した。具体的には、前記測定により共振特性(反射特性で見れば共振円)が得られるので、これを集中定数等価回路(L(インダクタンス)、C(コンデンサ)、R(抵抗)で構成した単純回路)にフィッティング処理して定数を決定する。この時、機械損失を表す直列共振腕の抵抗RMは周波数に依存して変化するとして決定し、1/Qm=RM(ω)/ωLとして損失の周波数特性を得る。
【0022】
オーミック損失は、回路全体の直列抵抗REにより表現され、分離される。従って、1/Qmとして得られた機械損失とは、何らかの理由で波動が漏れた結果起こる損失であり、次に分類される。
(1)基板の中へのバルク波放射
(2)伝搬方向について反射器で閉じこめられず漏れ出てしまうSAW
(3)横方向(開口長方向)への漏れ
(4)電極が持つ粘性により失われるエネルギー損失
【0023】
今回のケースでは、(2)は十分な反射量と反射器長とを有するため、着目した共振特性付近では損失がほとんど生じない。(3)は十分な大きさの開口長でのデータに着目し、影響が少ない状態で議論する。(4)は影響が顕著になる絶対周波数以下である。このように、この実験では、機械損失について(1)が主因となる条件に着目している。そして、以上の結果に基づいて、実験式について、前記実験パラメータを変化させた時の損失を評価できるように構成した。即ち、SH−BAW損失をシミュレーションにより把握するためには、数百に及ぶ電極指を表現しての解析が必要になるため、解析規模が大きく困難である。一方、このように実験結果を基にした近似式であれば、自由にパラメータを設定して評価できる。
【0024】
ここで、図4には、「伝搬損失(SV−BAW)」として、技術資料1、2と同様の手法により理論的に決定したSV−BAWによる伝搬損失を示しており、また「伝搬損失(SH−BAW)、その他」として、前記実験式による損失を示している。また、「伝搬損失合計」として、これら2つの損失の和(SV+SH)を示している。この損失の合計は、図4に「実験値」として示した結果と極めて良く合致しており、従って第1の損失である「無限周期構造におけるSV−BAWの損失」以外の部分について、第2の損失を示す実験式によって良好に補完できていることを示している。
【0025】
以上をまとめると、LSAWにおける伝搬損失は、第1の損失及び第2の損失により構成され、第1の損失は理論値であるSV−BAW損失である。また、第2の損失は、実験式により求められた値であり、主にSH−BAWによることが分かった。従って、(1)の損失は、SV−BAWとSH−BAWとの混合であるが、SV−BAWは理想的な無限周期構造の理論解析により求められるので、実験結果からこれを差し引くことで、有限構造に由来するSH−BAWの損失を取り出しモデル化(近似式化)することができる。
【0026】
ここで、フィルタやデュープレクサなどの共振デバイスを構成する時には、特に共振点と反共振点との間の領域における伝搬損失が小さいことが好ましい。そこで、当該領域における伝搬損失について検討する。SV−BAWについては、図4から分かるように共振点と反共振点との間でちょうど損失がゼロとなっており、従って既述の測定に用いた共振子は、SV−BAWに関しては最適な条件になっていると言える。
【0027】
一方、SH−BAWについては、共振子が有限な構造であるため、既述の速い横波のカットオフ周波数(規格化周波数:1)以下でも損失が発生し、共振点からカットオフ周波数に近づくにつれて増大している。実験で得られた損失において、反共振点における損失が共振点における損失よりも大きかったのは、このSH−BAW損失が主たる要因となっている。
【0028】
図5は、このSH−BAW損失について、共振子の膜厚hの依存性を確認した結果を示している。図5は、膜厚hを7%λ、8%λ、9%λ及び10%λに各々設定した時のSH−BAW損失を示しており、各々の損失を示す線種と同じ線種で各条件における共振点及び反共振点を示している。この結果から、反共振点におけるSH−BAW損失は、膜厚が増加するにつれて大きくなっていることが分かる。この理由としては、カットオフに近い周波数では、膜厚hが厚くなる程SAWとBAWとの結合が大きくなり、従ってSAWからBAWへの変換及び放射が増えるためと考えられる。
【0029】
しかし、2GHz以上もの高周波数帯域で共振子を使用する場合には、共振子の膜厚hが小さすぎると、共振点を中心にオーミックロスが増加するため、7%λ(λ=2μmの場合には140nm)以上であることが望まれる。そこで、本発明では、損失ができるだけ小さくなる条件(パラメータ)を求めるにあたって、膜厚hの下限を7%λに設定した。この時、オーミック損失については、波長比膜厚が同じ条件であっても、周波数帯(または周期長λ)に伴って変化するので、最適化する対象には加えなかった。尚、図6は、以上説明した損失の周波数依存性を模式的に示している。
【0030】
[各パラメータの最適化]
続いて、損失ができるだけ小さくなるように膜厚h、カット角及びライン占有率rの最適値を算出した結果について説明する。図7〜図10は、ライン占有率rを各々0.5に設定した場合において、共振点(fr)及び反共振点(fa)の夫々の損失の膜厚h依存性を示している。図7は、カット角が44°の場合についての結果を示しており、図8は45°の場合の結果を示している。また、図9及び図10は、カット角が夫々46°及び47°の場合の結果を示している。また、図7〜図10の各々の横軸には、膜厚hに代えて、波長比膜厚(h/λ)を用いている。このシミュレーションでは、電極指の対数N及び開口長は夫々300対及び37.5λとした。
【0031】
図7〜図10に示すように、共振点の損失及び反共振点の損失のいずれについても、波長比膜厚が0.05程度から大きく(厚く)なるにつれて減少し、その後0.10に近づくにつれて増大する曲線となっている。そして、共振点及び反共振点での損失が最も小さくなる時の波長比膜厚は、カット角が44°の場合(図7)には、7%よりも小さく(薄く)なっている。従って、2GHz以上もの高周波数帯域で共振子を使用する場合の最適なカット角は、45°以上である(44°は適していない)ことが分かる。
【0032】
一方、カット角が45°(図8)及び46°(図9)の場合には、共振点及び反共振点での損失が最小となる時の波長比膜厚は、0.075〜0.08(7.5%〜8%)の範囲となっており、この範囲は2GHz以上の高周波数帯域でオーミック損失の影響が少ない領域である。カット角が47°の場合(図10)には、図7〜図9と比べて共振点及び反共振点での損失が増大していた。従って、ライン占有率rが0.5の場合には、カット角及び波長比膜厚の最適値は、夫々45°〜46°及び7.5%〜8%であることが分かった。
ライン占有率rが0.6の場合について、同様にカット角及び波長比膜厚を夫々変えて計算したところ、図11〜図14に示すように、カット角及び波長比膜厚の夫々の最適値は、夫々45°〜46°及び7.5%〜8%となった。
【0033】
次に、ライン占有率rの最適値について検討した。2GHz以上もの高周波数帯域のLSAWを利用した弾性表面波素子では、電極指の幅寸法や互いに隣接する電極指間の離間寸法などが極めて小さくなり、従って当該弾性表面波素子を製造しにくくなると共に、製造時の寸法ばらつきによって周波数特性のずれが起こりやすい。そこで、周波数特性に対するライン占有率rの依存性が小さいことが望ましい。即ち、弾性表面波素子を製造した時に、製造ばらつきにより変動する程度の寸法誤差では、周波数特性はほとんど変わらないことが好ましい。そこで、以下のように、実験式を用いて同様にライン占有率rと共振点及び反共振点との相関関係について考察した。
【0034】
図15は、45°Y−Xタンタル酸リチウム基板を用いると共に膜厚hを7.5%λとした時について、共振点及び反共振点に対するライン占有率rの依存性を示している。図15から分かるように、共振点は、ライン占有率rが0.5程度から0.7程度の領域において変化が小さい。従って、ライン占有率rは、この領域の値を取ることが好ましいと言える。尚、他の条件については前述の条件と同様である。
【0035】
ここで、図16は、共振子の容量比とライン占有率rとの相関関係を示したグラフを示している。この「容量比」とは、共振子を等価回路で見た時に、この共振子の元々の静電容量C0に対する当該共振子の圧電性を示す容量値C1の比率であり、小さい程共振点と反共振点との間が離間して広帯域のフィルタとなり、大きい程狭帯域のフィルタとなる。そして、弾性表面波素子では、非常に広帯域のフィルタを要求されることが多いため、前記容量比は、できるだけ小さいことが好ましい。従って、図16において容量比ができるだけ小さい値を取り、且つ図15において共振点の周波数の変動幅ができるだけ小さくなる時のライン占有率rは、0.55〜0.65となる。このライン占有率rの最適範囲は、カット角が45°〜46°の領域及び膜厚hが7.5%λ〜8%λの領域ではほとんど変化しない。また、電極指の対数及び開口長が極端に小さくなければ、即ち電極指の対数及び開口長について夫々100対程度以上及び12λ程度以上であれば、損失の量については変化するかもしれないが、以上説明した最適な条件はほとんど影響を受けない。
【0036】
更に、目的とする特性(仕様)に応じてライン占有率rを設定することにより、夫々の仕様に特化した最適な特性が得られる。具体的には、ライン占有率rの変動に対して周波数変動が小さい特性を得るためには、ライン占有率rを0.55〜0.60に設定することが好ましい。一方、容量比が小さく共振点と反共振点との間の間隔ができるだけ広い弾性表面波素子としての性能を重視する場合には、ライン占有率rを0.60〜0.65に設定することが好ましい。即ち、前記弾性表面波素子として、通過域及び阻止域を備えたフィルタを構成する時に、通過域を広くして広帯域のバンドパスフィルタを得る場合には、ライン占有率rを0.60〜0.65に設定することが好ましい。また、ライン占有率rを0.60〜0、65に設定して広帯域な弾性表面波素子を構成する場合には、当該弾性表面波素子を電圧制御発振器(VCO:Voltage Control Oscillator)に適用することにより、このVCOにおける周波数の可変幅の広帯域化が図られる。このようなVCOの一例を図17に示すと、このVCOは、コンデンサ20、インダクタ21、抵抗22、トランジスタ23及びダイオード24を組み合わせたコルピッツ回路を用いた構成を採っており、トランジスタ23のベース端子と入力端子25との間には既述の共振子1が介在している。図17中26はトランジスタ23を駆動するために電圧が印加されるポートであり、27は出力ポートである。
【0037】
上述の実施の形態によれば、2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、45〜46°回転Y−X板からなるタンタル酸リチウム基板を圧電基板10として用いている。そして、IDT電極2の膜厚hを7.5%λ〜8%λに設定すると共に、IDT電極2における電極指6群について、ライン占有率rを0.55〜0.65に設定している。そのため、製造ばらつきによる周波数特性のずれを抑制しながら、LSAWにおける伝搬損失を小さく抑えることができる。また、弾性表面波素子の容量比を既述のように小さく設定できるので、共振点と反共振点との間を大きく離間させて広帯域のフィルタを構成できる。
【0038】
従来、全ての機械的損失の周波数特性を総合的に検討すると共にライン占有率rまで含めて最適条件を特定した解析は行われて来なかった。しかし、本発明では、以上詳述したように、SV−BAWに加えてSH−BAWの損失についても検討すると共に、SH−BAWの損失を表す実験式を作成し、この実験式に基づいて圧電基板10のカット角、膜厚h及びライン占有率rを最適化している。従って、有限構造を採る現実の共振子などの弾性表面波素子について、現実に即した最適な条件を得ることができる。また、従来では例えば伝搬速度、電極指反射率等を調整するためのパラメータでしかなかったライン占有率rについて、損失ができるだけ小さくなる範囲に設定すると共に、製造ばらつきに基づく共振点の変動が抑えられ、且つ広帯域のフィルタとなるように値を合わせ込んでいる。従って、既述のように損失の抑えられた弾性表面波素子を得ることができる。
そのため、以上説明した弾性表面波素子は、当該弾性波表面素子を備えた電子部品に好適に用いられる。
【0039】
以上説明した弾性表面波素子としては、共振子1を利用したラダー型フィルタを例に挙げたが、図18に示すように、縦共振器型フィルタであっても良い。図18では、圧電基板10上に複数例えば3つのIDT電極2を弾性表面波の伝搬方向に沿って並べると共に、当該伝搬方向におけるこれらIDT電極2の並びの一方側及び他方側に各々反射器3を配置した例を示している。また、電極指6の膜厚hについて、例えば7.5%λ〜8%λに設定したが、バスバー5の膜厚については当該電極指6は別個に設定しても良い。
【0040】
技術文献1:Ken-ya Hashimoto et al, "Optimum Leaky-SAW Cut of LiTaO3 for Minimised Insertion Loss Devices," Proc. 1997 IEEE Ultrason. Symp., pp.245-254.
技術文献2:Natalya Naumenko and Benjamin Abbotto, "Optimized Cut of LiTaO3 for Resonator Filters with Improved Performance" Proc. 2002 IEEE Ultrason. Symp., pp.385-390
【符号の説明】
【0041】
h 膜厚
r ライン占有率
1 共振子
2 IDT電極
6 電極指
10 圧電基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、
結晶軸のX軸周りに45°〜46°回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬するように構成された圧電基板と、
弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された導電体膜からなる一対のバスバー及び、これらバスバーから対向するバスバーに向かって互いに櫛歯状に交差するように配置された導電膜からなる電極指群を有するIDT電極と、
弾性表面波の伝搬方向における前記IDT電極の一方側及び他方側に各々設けられ、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された一対の反射器バスバー及び、これら反射器バスバー同士を互いに接続するように各々形成された反射器電極指群を各々有する反射器と、を備え、
前記電極指群の周期長をλとすると、前記電極指群における各々の前記導電体膜の膜厚は、7.5%λ〜8%λであり、
前記電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法を夫々D及びSとすると、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率は、0.55〜0.65であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
前記ライン占有率は、当該ライン占有率の変動に対する周波数の変動を抑えるために、0.55〜0.60に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項3】
前記ライン占有率は、前記弾性表面波素子における共振周波数と反共振周波数との間の間隔を広げるために、0.60〜0.65に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする電子部品。
【請求項1】
2GHz以上の周波数のLSAWからなる弾性表面波を利用した弾性表面波素子において、
結晶軸のX軸周りに45°〜46°回転したY軸に対して垂直に切断したタンタル酸リチウム基板上をX軸方向に弾性表面波が伝搬するように構成された圧電基板と、
弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された導電体膜からなる一対のバスバー及び、これらバスバーから対向するバスバーに向かって互いに櫛歯状に交差するように配置された導電膜からなる電極指群を有するIDT電極と、
弾性表面波の伝搬方向における前記IDT電極の一方側及び他方側に各々設けられ、弾性表面波の伝搬方向に沿って各々伸びると共に互いに平行となるように前記圧電基板上に形成された一対の反射器バスバー及び、これら反射器バスバー同士を互いに接続するように各々形成された反射器電極指群を各々有する反射器と、を備え、
前記電極指群の周期長をλとすると、前記電極指群における各々の前記導電体膜の膜厚は、7.5%λ〜8%λであり、
前記電極指の幅寸法及び互いに隣接する電極指間の離間寸法を夫々D及びSとすると、幅寸法Dと離間寸法Sとの和で幅寸法Dを除した値で表されるライン占有率は、0.55〜0.65であることを特徴とする弾性表面波素子。
【請求項2】
前記ライン占有率は、当該ライン占有率の変動に対する周波数の変動を抑えるために、0.55〜0.60に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項3】
前記ライン占有率は、前記弾性表面波素子における共振周波数と反共振周波数との間の間隔を広げるために、0.60〜0.65に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波素子。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一つに記載の弾性表面波素子を備えたことを特徴とする電子部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−102418(P2013−102418A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−173011(P2012−173011)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【Fターム(参考)】
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