弾性表面波装置
【課題】複数の分割共振子の熱的ストレスを相対的に調整可能な弾性表面波装置を提供する。
【解決手段】SAW装置1は、第1、第2の分割共振子13E、13Fを含む共振子11を有する。第1、第2の分割共振子13E、13Fは、それぞれSAW共振子により構成され、両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されている。第2の分割共振子13Fは第1の分割共振子13Eよりも静電容量が大きい。
【解決手段】SAW装置1は、第1、第2の分割共振子13E、13Fを含む共振子11を有する。第1、第2の分割共振子13E、13Fは、それぞれSAW共振子により構成され、両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されている。第2の分割共振子13Fは第1の分割共振子13Eよりも静電容量が大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波共振子を有する弾性表面波装置が知られている。特許文献1では、複数の弾性表面波共振子を直列に接続することにより、共振子を構成する技術を開示している。換言すれば、共振子を複数の分割共振子に分割する技術を開示している。特許文献1では、このように共振子を分割することにより、弾性表面波を励振したときに生じる機械的ストレスが複数の分割共振子に分散され、耐電力性が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−205343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の分割共振子は、熱的ストレスが互いに異なる。例えば、一列に配列された3つの分割共振子をそれぞれ熱源として捉えた場合に、中央に配置された分割共振子は、両側を他の分割共振子に塞がれていることから、両側の分割共振子に比べて放熱をすることが難しく、温度が上昇し易い。このような場合、マイグレーションの熱加速により、中央の分割共振子においてマイグレーションが生じやすくなる。ひいては、共振子全体としての耐電力性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、複数の分割共振子の熱的ストレスを相対的に調整可能な弾性表面波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様の弾性表面波装置は、第1、第2の分割共振子を含む共振子を有する。前記第1、第2の分割共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、且つ両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されている。前記第1の分割共振子は第2の分割共振子よりも静電容量が大きい。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成を有する弾性表面波装置によれば、複数の分割共振子の熱的ストレスを相対的に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るSAW装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のSAW装置の回路構成を示す模式図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す、共振子の模式的な平面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】第1の実施形態の効果の説明に用いられる記号を説明する模式図である。
【図6】(a)は、設定例1の消費電力のシミュレーション結果を示す図である。図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0010】
また、説明の対象となる実施形態において、既に説明された実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態の構成と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
【0011】
符号は、同一又は類似する構成のものについて、「アンテナ端子7A、送信側端子7T」などのように、同一の数字の符号と、互いに異なる大文字のアルファベットの付加符号とが組み合わされたものが使用されることがある。また、この場合において、単に「端子7」というなど、名称の頭の文字及び付加符号が省略されることがあるものとする。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1を示す平面図である。
【0013】
SAW装置1は、基板3を有している。基板3は、圧電効果を示す圧電体により構成された、いわゆる圧電基板である。圧電体は、例えばLiNbO3やLiTaO3である。なお、基板3の平面形状は適宜に設定されてよい。
【0014】
基板3の主面3a上においては、導電層がパターニングされることにより、複数のSAW素子(11、15)、複数のSAW素子に接続された複数の配線5、配線5を介してSAW素子に接続された複数の端子7が設けられている。
【0015】
このような構成により、主面3aの一方側には送信フィルタ9Tが構成され、主面3aの他方側には受信フィルタ9Rが構成されている。そして、SAW装置1は、デュプレクサとして構成されている。
【0016】
図2は、SAW装置1の回路構成を示す模式図である。
【0017】
上述のように、SAW装置1は、送信フィルタ9Tと、受信フィルタ9Rとを有している。送信フィルタ9Tは、送信側端子7Tに入力された信号をフィルタリングして、アンテナ端子7Aに出力する。受信フィルタ9Rは、アンテナ端子7Aから入力された信号をフィルタリングして2つの受信側端子7Rに出力する。
【0018】
送信側端子7Tに入力される信号、アンテナ端子7Aから出力される信号、アンテナ端子7Aから入力される信号は、例えば、不平衡信号である。2つの受信側端子7Rから出力される信号は、例えば、平衡信号である。なお、不平衡信号は、基準電位に対する電位を信号レベルとする信号である。一方、平衡信号は、2つの信号からなり、2つの信号の電位差を信号レベルとする信号である。
【0019】
送信フィルタ9Tは、例えば、ラダー型SAWフィルタとして構成されている。具体的には、送信フィルタ9Tは、送信側端子7Tとアンテナ端子7Aとの間において直列に接続された複数の直列共振子11A、11C、11E及び11Gと、これら直列共振子に対して並列に接続された複数の並列共振子11B、11D及び11Fとを有している。並列共振子11B、11D及び11Fは、複数の直列共振子11A、11C、11E及び11Gの接続の間と、グランド(例えば図1のグランド端子7G)とを接続している。
【0020】
受信フィルタ9Rは、例えば、SAWフィルタ15と、SAWフィルタ15に直列に接続された複数の共振子11H、11I及び11Jとを有している。SAWフィルタ15は、例えば、不平衡信号を平衡信号に変換する機能を有する共振子型ダブルモードSAWフィルタにより構成されている。共振子11Hは、アンテナ端子7AとSAWフィルタ15との間に配置されている。共振子11I及び11Jは、SAWフィルタ15と受信側端子7Rとの間に配置されている。
【0021】
共振子11は、複数の分割共振子13に分割されている。換言すれば、共振子11は、複数の分割共振子13が直列に接続されて構成されている。分割数は適宜に設定されてよいが、本実施形態では、各共振子11は、2又は3に分割されている。
【0022】
各共振子11において、複数の分割共振子13のうち、隣接する分割共振子13同士は、その間に分岐回路を有しない状態で接続されている。ここで分岐回路とは、隣接する分割共振子13同士を接続する配線から分岐して、その先に所定の機能を果たす素子(インダクタ、キャパシタ、抵抗、及びグランドなど)を有する回路をいう。例えば、共振子11Cにおいて、分割共振子13E、13F及び13Gの接続の間は、グランドと接続されていない。この点は、複数の分割共振子13と、直列共振子11A及び11C等とが異なる点の一つである。
【0023】
SAW装置1は、上記の他、アンテナ端子7Aとグランドとの間に設けられたインダクタ17と、2つの受信側端子7R間に設けられたインダクタ17とを有している。なお、SAW装置1は、上記の他にも、適宜な位置にインダクタ、キャパシタ、抵抗が設けられてよい。
【0024】
図3は、図1の共振子11C付近を拡大して示す模式的な平面図である。なお、以降においては、共振子11Cについて分割共振子13の構成等を説明するが、他の共振子11の分割共振子13の構成等も、寸法などの具体的な設計事項を除いて、共振子11Cと同様である。
【0025】
上述のように、共振子11Cは、3つの分割共振子13E〜13Gを有している。各分割共振子13は、例えば、1ポートSAW共振子により構成されている。具体的には、分割共振子13は、1つのIDT(InterDigital Transducer)電極19と、IDT電極19の両側に配置された2つの反射器21とを有している。
【0026】
IDT電極19は、1対の櫛歯状電極23を有している。各櫛歯状電極23は、直線状に延びるバスバー25と、バスバー25から、バスバー25の長手方向に直交する方向に延びる複数の電極指27とを有している。複数の電極指27のピッチは、全体として概ね一定のピッチとされている。1対の櫛歯状電極23は、複数の電極指27が互いに噛合うように配置されている。
【0027】
IDT電極19に電圧が印加されると、複数の電極指27のピッチを半波長とし、複数の電極指27の配列方向に伝搬するSAWが励振される。なお、以下では、複数の電極指27の配列方向を伝搬方向D1といい、伝搬方向D1に直交する方向を直交方向D2ということがある。
【0028】
2つの反射器21は、IDT電極19に対して伝搬方向D1の両側に配置されている。各反射器21は、伝搬方向D1に延びる1対のバスバー29と、1対のバスバー29間において直交方向D2に延びる複数の電極指31とを有している。複数の電極指31のピッチ、及び、反射器21とIDT電極19との距離(互いに隣接する電極指27と電極指31とのピッチ)は、複数の電極指27のピッチと概ね同等である。
【0029】
IDT電極19の配置位置において伝搬方向D1に伝搬したSAWは、反射器21により反射され、定在波となる。これにより、Qの高い共振現象が生じる。すなわち、分割共振子13はQの高い共振子として機能する。
【0030】
3つの分割共振子13E〜13Gは、直交方向D2において配列されている。3つの分割共振子13E〜13Gは、伝搬方向D1の大きさが互いに同一となっており、また、伝搬方向D1における位置も互いに同一となっている。
【0031】
隣接する分割共振子13同士は、バスバー25同士が接続されている。バスバー25同士の接続は、バスバー25の長手方向の全体に亘ってなされている。これにより、分割共振子13間においては、熱が伝達されやすくなっている。なお、バスバー25同士は、図3のように直接的に接続されてもよいし、配線5を介して間接的に接続されてもよい。
【0032】
3つの分割共振子13E〜13Gのうち両側の分割共振子13E及び13Gは、配線5と接続されている。接続は、バスバー25の長手方向の全体に亘ってなされている。これにより、分割共振子13から配線5へ熱が伝達されやすくなっている。
【0033】
なお、図3では、バスバー25間の境界線、及び、配線5とバスバー25との境界線を示している。ただし、実際の製品においては、複数のバスバー25及び配線5等は、同一の導電層により一体的に形成されてよい。
【0034】
図4は、IDT電極19の一部を拡大して示す平面図である。
【0035】
分割共振子13(IDT電極19)の特性は、電極指ピッチP、交差幅W、電極指27の本数、電極比率(デューティー)などにより規定される。電極指ピッチPは、複数の電極指27のピッチであり、例えば、一対の櫛歯状電極23の複数の電極指27の中心間距離により定義される。交差幅Wは、互いに噛み合う電極指27の直交方向D2における重複量である。電極比率は、電極指ピッチPに対する電極指27の幅の割合((F1+F2)/P)である。
【0036】
一般に、各共振子11内において、複数の分割共振子13は、機械的ストレスを均等に分散させるために、同一の構成とされる。具体的には、上記の電極指ピッチP、交差幅W、電極指27の本数、電極比率等は、複数の分割共振子13間で互いに同一とされる。また、その結果、複数の分割共振子13の静電容量も互いに同一とされる。
【0037】
ただし、本実施形態においては、複数の分割共振子13の構成が互いに同一と仮定したときに、換言すれば、複数の分割共振子13の静電容量が互いに同一と仮定したときに、温度が最も高くなる分割共振子13において、静電容量が他の分割共振子13の静電容量よりも大きくなるように、各共振子11の分割が行われている。
【0038】
例えば、図3に示した共振子11Cにおいては、3つの分割共振子13E〜13Gが一列に配列されている。これら3つの分割共振子13をそれぞれ熱源として捉えた場合に、両側の分割共振子13E及び13Gは、配線5に対して放熱を行うことができるのに対し、中央に配置された分割共振子13Fは、両側を分割共振子13E及び13Gに塞がれている。その結果、3つの分割共振子13E〜13Gが互いに同一の構成と仮定すると、中央の分割共振子13Fが、温度が最も高くなる分割共振子であることになる。この場合、中央の分割共振子13Fの静電容量は、他の分割共振子13E及び13Gの静電容量よりも大きくなるように設定される。
【0039】
また、例えば、共振子11Cの周囲の他の共振子11の配置、共振子11Cの周囲の配線5の配置などによっては、端の分割共振子13E又は13Gの温度が他の分割共振子13の温度よりも高くなることもある。例えば、端子7は、放熱に大きく寄与することから、端子7に近い分割共振子13ほど温度が低く、端子7から遠い分割共振子13ほど温度が高くなることがある。この場合、温度が高くなる端の分割共振子13E又は13Gの静電容量は、他の分割共振子13の静電容量よりも大きくなるように設定される。
【0040】
複数の分割共振子13間において、静電容量を相対的に大きくする方法としては、例えば、交差幅Wを相対的に大きくする方法、電極指27の本数を相対的に多くする方法、電極比率を相対的に大きくする方法、又は、これらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
なお、上記の方法の中では、交差幅Wを相対的に大きくする方法が好ましい。その理由としては、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極比率を相対的に大きくする方法に比較して、共振子の作製プロセスのゆらぎに対する特性感度に及ぼす影響が少ないことが挙げられる。換言すれば、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極比率を相対的に大きくする方法に比べ不良の発生率を抑えることができる。また、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極指27の本数を相対的に多くする方法に比較して、熱抵抗の変化が少なく、後述する静電容量の調整による効果と熱抵抗の変化との双方を考慮する必要が少なく、設計が簡便であることが挙げられる。
【0042】
静電容量が大きく設定された分割共振子13は、他の分割共振子13よりも分圧が低くなり、消費電力が低下する。その結果、発熱量が下がり、他の分割共振子13と熱的ストレスが同等になる。具体的には、以下のとおりである。
【0043】
図5は、以下の説明における記号を説明する模式図である。
【0044】
3つの分割共振子13の周波数特性は、弾性表面波の作用により複雑なアドミタンス特性を示すが、ここでの説明は簡略化して静電容量に着目することとし、分割共振子13を直列接続された3つのキャパシタとして考えることとする。従って、各分割共振子13において、静電容量をCi(i=1〜3)、電荷量をQとし、電圧Vが印加されたとすると、分圧Vi(V=ΣVi)は以下の式で表わされる。
Vi=Q/Ci
【0045】
また、3つの分割共振子13の内部抵抗(コンダクタンスG)が等しいとすると、各分割共振子13において、アドミタンスYiは以下の式で表わされる。
Yi=G+jωCi
【0046】
従って、各分割共振子13において、消費電力Wiは以下の式で表わされる。
Wi=Re{Vi2(G+jωCi)}
=Q2G/Ci2
【0047】
そして、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
【0048】
上式から、静電容量が相対的に大きく設定されることにより、消費電力が相対的に小さくなり、発熱が抑制されることが分かる。
【0049】
さらに、図5に示す2つの設定例について消費電力Wiの比について説明する。
【0050】
(設定例1)
設定例1では、中央の分割共振子13Fの静電容量C2が相対的に大きく設定され、また、両側の分割共振子13E及び13Gの静電容量C1及びC3は互いに同一とされる。
【0051】
共振子11Cの静電容量、換言すれば、3つの分割共振子13の合成容量をCとする。また、3つの分割共振子13が互いに同一の構成(同一の静電容量)とされたと仮定した場合の静電容量をC0(3×C)とする。また、α<1、β>1とする。このとき、静電容量Ciは、C0、α、βを用いて、図5に示すように表わされる。
【0052】
そして、直列接続のキャパシタの合成容量の計算式から以下の式が成立する。
C=1/(1/(αC0)+1/(βC0)+1/(αC0))=C0/3
αβ/(2β+α)=1/3
β=α/(3α−2)
【0053】
従って、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
=1/α2:1/β2:1/α2
=1:(3α−2)2:1
【0054】
(設定例2)
設定例2では、C1<C2<C3となるように分割共振子13の静電容量が設定される。このとき、静電容量Ciは、C0、α、βを用いて、図5に示すように表わすことが可能である。
【0055】
そして、直列接続のキャパシタの合成容量の計算式から以下の式が成立する。
C=1/(1/(αC0)+1/(C0)+1/(βC0))=C0/3
αβ/(α+β+αβ)=1/3
β=α/(2α−1)
【0056】
従って、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
=1/α2:1:1/β2
=1/α2:1:(2α−1)2/α2
【0057】
なお、上記の設定例1及び2において示したαとβとの関係式は、静電容量Ciの設定を、静電容量C0からの設計変更として捉えて行う場合において、合成容量Cが変化しないように静電容量Ciを決定するのに有用である。また、上記の設定例1及び2において示したαを用いた消費電力Wiの比は、その設計変更の効果を調べるのに有用である。
【0058】
(実施例)
図6(a)は、設定例1のように設定した場合の消費電力のシミュレーション結果を示す図である。図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。図6(a)及び図6(b)において、横軸は、共振子11Cに印加された電圧の周波数を示し、縦軸は、消費電力を示している。
【0059】
シミュレーションにおいては、分割共振子13の静電容量の比が以下のようになる、4つのケースについて消費電力を計算した。
ケース1:C1(C3):C2=1.00:1.00
ケース2:C1(C3):C2=0.98:1.04
ケース3:C1(C3):C2=0.97:1.07
ケース4:C1(C3):C2=0.93:1.17
【0060】
図6(a)及び図6(b)において、L1〜L7は、それぞれ、ケース4のC1、ケース3のC1、ケース2のC1、ケース1のC1(C2)、ケース2のC2、ケース3のC2、ケース4のC2に対応している。
【0061】
シミュレーション結果から、静電容量の比を変化させることにより、消費電力の比を変化させることができることが確認された。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、第1の分割共振子13(例えば設定例1の分割共振子13F)の静電容量を第2の分割共振子13(例えば設定例1の分割共振子13E)の静電容量よりも大きく設定することにより、第1の分割共振子13の発熱量を第2の分割共振子13の発熱量よりも抑え、相対的に熱的ストレスの調整を行うことができる。その結果、複数の分割共振子13のうち、特定の分割共振子13において、他の分割共振子13よりも早期にマイグレーションが生じることが抑制され、共振子11全体としての耐電力性が向上する。このように第1の分割共振子13の静電容量を第2の分割共振子13より大きくする構成は、比較的温度が上昇しやすい送信フィルタ9Tにおいて適用することが好ましい。
【0063】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0064】
第2の実施形態のSAW装置は、反射器21同士を接続する配線51を有している。配線51は、例えば、反射器21のバスバー29の長手方向全体に亘って、バスバー29同士を接続している。このように、反射器21同士を接続することにより、相対的に温度が高い分割共振子13の熱を相対的に温度が低い分割共振子13に逃がし易くなる。
【0065】
また、第2の実施形態のSAW装置は、反射器21と、共振子11Cに信号を入力するための配線5とを接続する配線53が設けられている。配線53は、反射器21のバスバー29の長手方向全体に亘って、バスバー29に接続されている。このように、反射器21と配線5とを接続することにより、分割共振子13の熱を配線5に逃がし易くなる。
【0066】
なお、図7では、配線51と反射器21との境界線、配線53と反射器21との境界線、及び、配線53と配線5との境界線を示している。ただし、実際の製品においては、配線51、配線53及び反射器21等は、同一の導電層により一体的に形成されてよい。
【0067】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0068】
第3の実施形態においては、共振子111Cを構成する3つの分割共振子113E〜113Gは、伝搬方向D1における大きさが互いに異なっている。換言すれば、3つの分割共振子113E〜113Gは、電極指27の本数が互いに異なっている。
【0069】
具体的には、中央の分割共振子113FのIDT電極19の伝搬方向D1における長さは、両側の分割共振子113E及び113GのIDT電極19の伝搬方向D1における長さよりも長くなっている。その結果、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gから伝搬方向D1において突出している。なお、3つの分割共振子113E〜113Gの中心の伝搬方向D1における位置は互いに同一であり、中央の分割共振子113Fは、伝搬方向D1の両側端部が分割共振子113E及び113Gから突出している。突出量は、適宜に設定されてよい。図8では、突出量が反射器21の量となっている場合を例示しているが、突出量は、これよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0070】
第3の実施形態によれば、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gから突出した部分において放熱が可能となっている。従って、分割共振子113E及び113Gに挟まれて放熱に不利な中央の分割共振子113Fの放熱性を向上させることができ、共振子111C全体の耐電力性の向上が期待される。なお、中央の分割共振子113Fは、電極指27の本数が両側の分割共振子113E及び113Gよりも多いから、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、静電容量が大きくなることによる温度上昇抑制の効果も奏される。
【0071】
<第4の実施形態>
図9は、第4の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0072】
第4の実施形態の共振子211Cは、第1の実施形態と同様の3つの分割共振子13E〜13Gを有している。ただし、3つの分割共振子13E〜13Gは、伝搬方向D1における位置が互いに異なっている。
【0073】
具体的には、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gに対して、伝搬方向D1の一方側にずれている。換言すれば、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gから伝搬方向D1において突出している。突出量(ずれ量)は、適宜に設定されてよい。図9では、反射器21の大きさ以上で突出している場合を例示しているが、突出量は、反射器21の大きさよりも小さくてもよい。なお、両側の分割共振子13E及び13Gは、伝搬方向D1における位置が互いに同一である。
【0074】
第4の実施形態によれば、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gから突出した部分において放熱が可能となっている。従って、第3の実施形態と同様に、分割共振子13E及び13Gに挟まれて放熱に不利な中央の13Fの放熱性を向上させることができ、共振子11C全体の耐電力性の向上が期待される。
【0075】
<第5の実施形態>
図10は、第5の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0076】
第5の実施形態は、第3の実施形態と、第4の実施形態とを組み合わせた態様である。すなわち、第5の実施形態は、複数の分割共振子113の伝搬方向D1における大きさ及び位置を互いに異ならせる態様である。
【0077】
具体的には、共振子311Cは、第3の実施形態と同様の3つの分割共振子113E〜113Gを有している。各分割共振子113の中心を基準として考えると、入力側の分割共振子113Eは、中央の分割共振子113Fに対して伝搬方向D1の一方側(図10の紙面下方側)にずれている。また、出力側の分割共振子113Gは、中央の分割共振子113Fに対して伝搬方向D1の他方側(図10の紙面上方側、分割共振子113Eがずれる側とは反対側)にずれている。分割共振子113の大きさの差や位置のずれ量は、適宜に設定されてよい。
【0078】
なお、両側の分割共振子113Eの伝搬方向D1の一方側の端部は、中央の分割共振子113Fの伝搬方向D1の一方側の端部に揃えられている。同様に、両側の分割共振子113Gの伝搬方向D1の他方側の端部は、中央の分割共振子113Fの伝搬方向D1の他方側の端部に揃えられている。ただし、これらは互いにずれていてもよい。
【0079】
両側の分割共振子113E及び113Gは、伝搬方向D1の位置が配線5に対してもずれている。その結果、バスバー25と配線5とは、バスバー25の伝搬方向D1の全体に亘って接続されていない。ただし、配線5の位置及び幅の少なくとも一方を変更して、第1の実施形態と同様に、バスバー25の伝搬方向D1の全体に亘って、バスバー25と配線5とを接続してもよい。
【0080】
第5の実施形態によれば、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gに隣接しない部分が生じ、当該部分において放熱が可能となっている。従って、第3及び第4の実施形態と同様に、分割共振子113E及び113Gに挟まれて放熱に不利な中央の分割共振子113Fの放熱性を向上させることができ、共振子311C全体の耐電力性の向上が期待される。さらに、両側の分割共振子113E及び113G同士も、伝搬方向D1における位置が互いにずれていることから、互いに熱的に影響を及ぼすことが緩和され、共振子311C全体の耐電力性の向上が期待される。
【0081】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0082】
上記の各種の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第2の実施形態(図7)の反射器の接続により放熱性を向上させる態様と、第3〜第5の実施形態の分割共振子の長さ又は大きさのばらつきにより放熱性を向上させる態様とは組み合わされてよい。
【0083】
実施形態では、3つの分割共振子により構成された共振子を例にとって説明したが、共振子を構成する分割共振子は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0084】
第3〜第5の実施形態では、第1の実施形態の第1設定例と同様に、3つの分割共振子のうち、中央の分割共振子において温度上昇が見込まれるものと仮定して、中央の分割共振子の放熱性を向上させる態様を示した。しかし、第1の実施形態の設定例2と同様に、端の分割共振子において温度上昇が見込まれる場合には、その分割共振子において放熱性が向上されるように伝搬方向の長さなどが設定されてよい。
【0085】
第2の実施形態において、複数の反射器は、互いに接続されるだけ(配線5に接続されない)でもよいし、配線5に接続されるだけ(互いに接続されない)でもよい。反射器は、共振子に信号を入力するための配線5に代えて、共振子からの信号が出力される配線5と接続されてもよい。伝搬方向の一方側に配列された反射器は入力側の配線5に接続され、伝搬方向の他方側に配列された反射器は出力側の配線5に接続されるなどしてもよい。伝搬方向の一方側に配列された複数の反射器が互いに接続されていない場合には、そのうちの一部が入力側の配線5に接続され、他の一部が出力側の配線5に接続されてもよい。
【0086】
なお、本願に開示された技術内容からは、以下の発明を抽出可能である。
【0087】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない複数の分割共振子を有し、
前記複数の分割共振子の少なくとも一つは、反射器が、前記共振子への信号の入力用の配線又は前記共振器からの信号の出力用の配線に接続されている
弾性表面波装置。
【0088】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない第1及び第2の分割共振子を有し、
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されており、
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも前記伝搬方向において長く形成されている
弾性表面波装置。
【0089】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない第1及び第2の分割共振子を有し、
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されるとともに、中心が前記伝搬方向において互いにずれるように配置されている
弾性表面波装置。
【0090】
上記の抽出可能な発明においては、複数の分割共振子間において静電容量が互いに同一であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…SAW装置、11…共振子、13E…分割共振子(第2の分割共振子)、13F…分割共振子(第1の分割共振子)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性表面波共振子を有する弾性表面波装置が知られている。特許文献1では、複数の弾性表面波共振子を直列に接続することにより、共振子を構成する技術を開示している。換言すれば、共振子を複数の分割共振子に分割する技術を開示している。特許文献1では、このように共振子を分割することにより、弾性表面波を励振したときに生じる機械的ストレスが複数の分割共振子に分散され、耐電力性が向上するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−205343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、複数の分割共振子は、熱的ストレスが互いに異なる。例えば、一列に配列された3つの分割共振子をそれぞれ熱源として捉えた場合に、中央に配置された分割共振子は、両側を他の分割共振子に塞がれていることから、両側の分割共振子に比べて放熱をすることが難しく、温度が上昇し易い。このような場合、マイグレーションの熱加速により、中央の分割共振子においてマイグレーションが生じやすくなる。ひいては、共振子全体としての耐電力性が低下する。
【0005】
本発明の目的は、複数の分割共振子の熱的ストレスを相対的に調整可能な弾性表面波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施態様の弾性表面波装置は、第1、第2の分割共振子を含む共振子を有する。前記第1、第2の分割共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、且つ両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されている。前記第1の分割共振子は第2の分割共振子よりも静電容量が大きい。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成を有する弾性表面波装置によれば、複数の分割共振子の熱的ストレスを相対的に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るSAW装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1のSAW装置の回路構成を示す模式図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す、共振子の模式的な平面図である。
【図4】図3の一部を拡大して示す平面図である。
【図5】第1の実施形態の効果の説明に用いられる記号を説明する模式図である。
【図6】(a)は、設定例1の消費電力のシミュレーション結果を示す図である。図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るSAW装置における共振子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係るSAW装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0010】
また、説明の対象となる実施形態において、既に説明された実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明された実施形態の構成と同一の符号を付すことがあり、また、説明を省略することがある。
【0011】
符号は、同一又は類似する構成のものについて、「アンテナ端子7A、送信側端子7T」などのように、同一の数字の符号と、互いに異なる大文字のアルファベットの付加符号とが組み合わされたものが使用されることがある。また、この場合において、単に「端子7」というなど、名称の頭の文字及び付加符号が省略されることがあるものとする。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るSAW装置1を示す平面図である。
【0013】
SAW装置1は、基板3を有している。基板3は、圧電効果を示す圧電体により構成された、いわゆる圧電基板である。圧電体は、例えばLiNbO3やLiTaO3である。なお、基板3の平面形状は適宜に設定されてよい。
【0014】
基板3の主面3a上においては、導電層がパターニングされることにより、複数のSAW素子(11、15)、複数のSAW素子に接続された複数の配線5、配線5を介してSAW素子に接続された複数の端子7が設けられている。
【0015】
このような構成により、主面3aの一方側には送信フィルタ9Tが構成され、主面3aの他方側には受信フィルタ9Rが構成されている。そして、SAW装置1は、デュプレクサとして構成されている。
【0016】
図2は、SAW装置1の回路構成を示す模式図である。
【0017】
上述のように、SAW装置1は、送信フィルタ9Tと、受信フィルタ9Rとを有している。送信フィルタ9Tは、送信側端子7Tに入力された信号をフィルタリングして、アンテナ端子7Aに出力する。受信フィルタ9Rは、アンテナ端子7Aから入力された信号をフィルタリングして2つの受信側端子7Rに出力する。
【0018】
送信側端子7Tに入力される信号、アンテナ端子7Aから出力される信号、アンテナ端子7Aから入力される信号は、例えば、不平衡信号である。2つの受信側端子7Rから出力される信号は、例えば、平衡信号である。なお、不平衡信号は、基準電位に対する電位を信号レベルとする信号である。一方、平衡信号は、2つの信号からなり、2つの信号の電位差を信号レベルとする信号である。
【0019】
送信フィルタ9Tは、例えば、ラダー型SAWフィルタとして構成されている。具体的には、送信フィルタ9Tは、送信側端子7Tとアンテナ端子7Aとの間において直列に接続された複数の直列共振子11A、11C、11E及び11Gと、これら直列共振子に対して並列に接続された複数の並列共振子11B、11D及び11Fとを有している。並列共振子11B、11D及び11Fは、複数の直列共振子11A、11C、11E及び11Gの接続の間と、グランド(例えば図1のグランド端子7G)とを接続している。
【0020】
受信フィルタ9Rは、例えば、SAWフィルタ15と、SAWフィルタ15に直列に接続された複数の共振子11H、11I及び11Jとを有している。SAWフィルタ15は、例えば、不平衡信号を平衡信号に変換する機能を有する共振子型ダブルモードSAWフィルタにより構成されている。共振子11Hは、アンテナ端子7AとSAWフィルタ15との間に配置されている。共振子11I及び11Jは、SAWフィルタ15と受信側端子7Rとの間に配置されている。
【0021】
共振子11は、複数の分割共振子13に分割されている。換言すれば、共振子11は、複数の分割共振子13が直列に接続されて構成されている。分割数は適宜に設定されてよいが、本実施形態では、各共振子11は、2又は3に分割されている。
【0022】
各共振子11において、複数の分割共振子13のうち、隣接する分割共振子13同士は、その間に分岐回路を有しない状態で接続されている。ここで分岐回路とは、隣接する分割共振子13同士を接続する配線から分岐して、その先に所定の機能を果たす素子(インダクタ、キャパシタ、抵抗、及びグランドなど)を有する回路をいう。例えば、共振子11Cにおいて、分割共振子13E、13F及び13Gの接続の間は、グランドと接続されていない。この点は、複数の分割共振子13と、直列共振子11A及び11C等とが異なる点の一つである。
【0023】
SAW装置1は、上記の他、アンテナ端子7Aとグランドとの間に設けられたインダクタ17と、2つの受信側端子7R間に設けられたインダクタ17とを有している。なお、SAW装置1は、上記の他にも、適宜な位置にインダクタ、キャパシタ、抵抗が設けられてよい。
【0024】
図3は、図1の共振子11C付近を拡大して示す模式的な平面図である。なお、以降においては、共振子11Cについて分割共振子13の構成等を説明するが、他の共振子11の分割共振子13の構成等も、寸法などの具体的な設計事項を除いて、共振子11Cと同様である。
【0025】
上述のように、共振子11Cは、3つの分割共振子13E〜13Gを有している。各分割共振子13は、例えば、1ポートSAW共振子により構成されている。具体的には、分割共振子13は、1つのIDT(InterDigital Transducer)電極19と、IDT電極19の両側に配置された2つの反射器21とを有している。
【0026】
IDT電極19は、1対の櫛歯状電極23を有している。各櫛歯状電極23は、直線状に延びるバスバー25と、バスバー25から、バスバー25の長手方向に直交する方向に延びる複数の電極指27とを有している。複数の電極指27のピッチは、全体として概ね一定のピッチとされている。1対の櫛歯状電極23は、複数の電極指27が互いに噛合うように配置されている。
【0027】
IDT電極19に電圧が印加されると、複数の電極指27のピッチを半波長とし、複数の電極指27の配列方向に伝搬するSAWが励振される。なお、以下では、複数の電極指27の配列方向を伝搬方向D1といい、伝搬方向D1に直交する方向を直交方向D2ということがある。
【0028】
2つの反射器21は、IDT電極19に対して伝搬方向D1の両側に配置されている。各反射器21は、伝搬方向D1に延びる1対のバスバー29と、1対のバスバー29間において直交方向D2に延びる複数の電極指31とを有している。複数の電極指31のピッチ、及び、反射器21とIDT電極19との距離(互いに隣接する電極指27と電極指31とのピッチ)は、複数の電極指27のピッチと概ね同等である。
【0029】
IDT電極19の配置位置において伝搬方向D1に伝搬したSAWは、反射器21により反射され、定在波となる。これにより、Qの高い共振現象が生じる。すなわち、分割共振子13はQの高い共振子として機能する。
【0030】
3つの分割共振子13E〜13Gは、直交方向D2において配列されている。3つの分割共振子13E〜13Gは、伝搬方向D1の大きさが互いに同一となっており、また、伝搬方向D1における位置も互いに同一となっている。
【0031】
隣接する分割共振子13同士は、バスバー25同士が接続されている。バスバー25同士の接続は、バスバー25の長手方向の全体に亘ってなされている。これにより、分割共振子13間においては、熱が伝達されやすくなっている。なお、バスバー25同士は、図3のように直接的に接続されてもよいし、配線5を介して間接的に接続されてもよい。
【0032】
3つの分割共振子13E〜13Gのうち両側の分割共振子13E及び13Gは、配線5と接続されている。接続は、バスバー25の長手方向の全体に亘ってなされている。これにより、分割共振子13から配線5へ熱が伝達されやすくなっている。
【0033】
なお、図3では、バスバー25間の境界線、及び、配線5とバスバー25との境界線を示している。ただし、実際の製品においては、複数のバスバー25及び配線5等は、同一の導電層により一体的に形成されてよい。
【0034】
図4は、IDT電極19の一部を拡大して示す平面図である。
【0035】
分割共振子13(IDT電極19)の特性は、電極指ピッチP、交差幅W、電極指27の本数、電極比率(デューティー)などにより規定される。電極指ピッチPは、複数の電極指27のピッチであり、例えば、一対の櫛歯状電極23の複数の電極指27の中心間距離により定義される。交差幅Wは、互いに噛み合う電極指27の直交方向D2における重複量である。電極比率は、電極指ピッチPに対する電極指27の幅の割合((F1+F2)/P)である。
【0036】
一般に、各共振子11内において、複数の分割共振子13は、機械的ストレスを均等に分散させるために、同一の構成とされる。具体的には、上記の電極指ピッチP、交差幅W、電極指27の本数、電極比率等は、複数の分割共振子13間で互いに同一とされる。また、その結果、複数の分割共振子13の静電容量も互いに同一とされる。
【0037】
ただし、本実施形態においては、複数の分割共振子13の構成が互いに同一と仮定したときに、換言すれば、複数の分割共振子13の静電容量が互いに同一と仮定したときに、温度が最も高くなる分割共振子13において、静電容量が他の分割共振子13の静電容量よりも大きくなるように、各共振子11の分割が行われている。
【0038】
例えば、図3に示した共振子11Cにおいては、3つの分割共振子13E〜13Gが一列に配列されている。これら3つの分割共振子13をそれぞれ熱源として捉えた場合に、両側の分割共振子13E及び13Gは、配線5に対して放熱を行うことができるのに対し、中央に配置された分割共振子13Fは、両側を分割共振子13E及び13Gに塞がれている。その結果、3つの分割共振子13E〜13Gが互いに同一の構成と仮定すると、中央の分割共振子13Fが、温度が最も高くなる分割共振子であることになる。この場合、中央の分割共振子13Fの静電容量は、他の分割共振子13E及び13Gの静電容量よりも大きくなるように設定される。
【0039】
また、例えば、共振子11Cの周囲の他の共振子11の配置、共振子11Cの周囲の配線5の配置などによっては、端の分割共振子13E又は13Gの温度が他の分割共振子13の温度よりも高くなることもある。例えば、端子7は、放熱に大きく寄与することから、端子7に近い分割共振子13ほど温度が低く、端子7から遠い分割共振子13ほど温度が高くなることがある。この場合、温度が高くなる端の分割共振子13E又は13Gの静電容量は、他の分割共振子13の静電容量よりも大きくなるように設定される。
【0040】
複数の分割共振子13間において、静電容量を相対的に大きくする方法としては、例えば、交差幅Wを相対的に大きくする方法、電極指27の本数を相対的に多くする方法、電極比率を相対的に大きくする方法、又は、これらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
なお、上記の方法の中では、交差幅Wを相対的に大きくする方法が好ましい。その理由としては、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極比率を相対的に大きくする方法に比較して、共振子の作製プロセスのゆらぎに対する特性感度に及ぼす影響が少ないことが挙げられる。換言すれば、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極比率を相対的に大きくする方法に比べ不良の発生率を抑えることができる。また、交差幅Wを相対的に大きくする方法は、電極指27の本数を相対的に多くする方法に比較して、熱抵抗の変化が少なく、後述する静電容量の調整による効果と熱抵抗の変化との双方を考慮する必要が少なく、設計が簡便であることが挙げられる。
【0042】
静電容量が大きく設定された分割共振子13は、他の分割共振子13よりも分圧が低くなり、消費電力が低下する。その結果、発熱量が下がり、他の分割共振子13と熱的ストレスが同等になる。具体的には、以下のとおりである。
【0043】
図5は、以下の説明における記号を説明する模式図である。
【0044】
3つの分割共振子13の周波数特性は、弾性表面波の作用により複雑なアドミタンス特性を示すが、ここでの説明は簡略化して静電容量に着目することとし、分割共振子13を直列接続された3つのキャパシタとして考えることとする。従って、各分割共振子13において、静電容量をCi(i=1〜3)、電荷量をQとし、電圧Vが印加されたとすると、分圧Vi(V=ΣVi)は以下の式で表わされる。
Vi=Q/Ci
【0045】
また、3つの分割共振子13の内部抵抗(コンダクタンスG)が等しいとすると、各分割共振子13において、アドミタンスYiは以下の式で表わされる。
Yi=G+jωCi
【0046】
従って、各分割共振子13において、消費電力Wiは以下の式で表わされる。
Wi=Re{Vi2(G+jωCi)}
=Q2G/Ci2
【0047】
そして、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
【0048】
上式から、静電容量が相対的に大きく設定されることにより、消費電力が相対的に小さくなり、発熱が抑制されることが分かる。
【0049】
さらに、図5に示す2つの設定例について消費電力Wiの比について説明する。
【0050】
(設定例1)
設定例1では、中央の分割共振子13Fの静電容量C2が相対的に大きく設定され、また、両側の分割共振子13E及び13Gの静電容量C1及びC3は互いに同一とされる。
【0051】
共振子11Cの静電容量、換言すれば、3つの分割共振子13の合成容量をCとする。また、3つの分割共振子13が互いに同一の構成(同一の静電容量)とされたと仮定した場合の静電容量をC0(3×C)とする。また、α<1、β>1とする。このとき、静電容量Ciは、C0、α、βを用いて、図5に示すように表わされる。
【0052】
そして、直列接続のキャパシタの合成容量の計算式から以下の式が成立する。
C=1/(1/(αC0)+1/(βC0)+1/(αC0))=C0/3
αβ/(2β+α)=1/3
β=α/(3α−2)
【0053】
従って、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
=1/α2:1/β2:1/α2
=1:(3α−2)2:1
【0054】
(設定例2)
設定例2では、C1<C2<C3となるように分割共振子13の静電容量が設定される。このとき、静電容量Ciは、C0、α、βを用いて、図5に示すように表わすことが可能である。
【0055】
そして、直列接続のキャパシタの合成容量の計算式から以下の式が成立する。
C=1/(1/(αC0)+1/(C0)+1/(βC0))=C0/3
αβ/(α+β+αβ)=1/3
β=α/(2α−1)
【0056】
従って、3つの分割共振子13の消費電力Wiの比は以下のようになる。
W1:W2:W3=1/C12:1/C22:1/C32
=1/α2:1:1/β2
=1/α2:1:(2α−1)2/α2
【0057】
なお、上記の設定例1及び2において示したαとβとの関係式は、静電容量Ciの設定を、静電容量C0からの設計変更として捉えて行う場合において、合成容量Cが変化しないように静電容量Ciを決定するのに有用である。また、上記の設定例1及び2において示したαを用いた消費電力Wiの比は、その設計変更の効果を調べるのに有用である。
【0058】
(実施例)
図6(a)は、設定例1のように設定した場合の消費電力のシミュレーション結果を示す図である。図6(b)は、図6(a)の一部拡大図である。図6(a)及び図6(b)において、横軸は、共振子11Cに印加された電圧の周波数を示し、縦軸は、消費電力を示している。
【0059】
シミュレーションにおいては、分割共振子13の静電容量の比が以下のようになる、4つのケースについて消費電力を計算した。
ケース1:C1(C3):C2=1.00:1.00
ケース2:C1(C3):C2=0.98:1.04
ケース3:C1(C3):C2=0.97:1.07
ケース4:C1(C3):C2=0.93:1.17
【0060】
図6(a)及び図6(b)において、L1〜L7は、それぞれ、ケース4のC1、ケース3のC1、ケース2のC1、ケース1のC1(C2)、ケース2のC2、ケース3のC2、ケース4のC2に対応している。
【0061】
シミュレーション結果から、静電容量の比を変化させることにより、消費電力の比を変化させることができることが確認された。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、第1の分割共振子13(例えば設定例1の分割共振子13F)の静電容量を第2の分割共振子13(例えば設定例1の分割共振子13E)の静電容量よりも大きく設定することにより、第1の分割共振子13の発熱量を第2の分割共振子13の発熱量よりも抑え、相対的に熱的ストレスの調整を行うことができる。その結果、複数の分割共振子13のうち、特定の分割共振子13において、他の分割共振子13よりも早期にマイグレーションが生じることが抑制され、共振子11全体としての耐電力性が向上する。このように第1の分割共振子13の静電容量を第2の分割共振子13より大きくする構成は、比較的温度が上昇しやすい送信フィルタ9Tにおいて適用することが好ましい。
【0063】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0064】
第2の実施形態のSAW装置は、反射器21同士を接続する配線51を有している。配線51は、例えば、反射器21のバスバー29の長手方向全体に亘って、バスバー29同士を接続している。このように、反射器21同士を接続することにより、相対的に温度が高い分割共振子13の熱を相対的に温度が低い分割共振子13に逃がし易くなる。
【0065】
また、第2の実施形態のSAW装置は、反射器21と、共振子11Cに信号を入力するための配線5とを接続する配線53が設けられている。配線53は、反射器21のバスバー29の長手方向全体に亘って、バスバー29に接続されている。このように、反射器21と配線5とを接続することにより、分割共振子13の熱を配線5に逃がし易くなる。
【0066】
なお、図7では、配線51と反射器21との境界線、配線53と反射器21との境界線、及び、配線53と配線5との境界線を示している。ただし、実際の製品においては、配線51、配線53及び反射器21等は、同一の導電層により一体的に形成されてよい。
【0067】
<第3の実施形態>
図8は、第3の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0068】
第3の実施形態においては、共振子111Cを構成する3つの分割共振子113E〜113Gは、伝搬方向D1における大きさが互いに異なっている。換言すれば、3つの分割共振子113E〜113Gは、電極指27の本数が互いに異なっている。
【0069】
具体的には、中央の分割共振子113FのIDT電極19の伝搬方向D1における長さは、両側の分割共振子113E及び113GのIDT電極19の伝搬方向D1における長さよりも長くなっている。その結果、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gから伝搬方向D1において突出している。なお、3つの分割共振子113E〜113Gの中心の伝搬方向D1における位置は互いに同一であり、中央の分割共振子113Fは、伝搬方向D1の両側端部が分割共振子113E及び113Gから突出している。突出量は、適宜に設定されてよい。図8では、突出量が反射器21の量となっている場合を例示しているが、突出量は、これよりも大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0070】
第3の実施形態によれば、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gから突出した部分において放熱が可能となっている。従って、分割共振子113E及び113Gに挟まれて放熱に不利な中央の分割共振子113Fの放熱性を向上させることができ、共振子111C全体の耐電力性の向上が期待される。なお、中央の分割共振子113Fは、電極指27の本数が両側の分割共振子113E及び113Gよりも多いから、第3の実施形態では、第1の実施形態と同様に、静電容量が大きくなることによる温度上昇抑制の効果も奏される。
【0071】
<第4の実施形態>
図9は、第4の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0072】
第4の実施形態の共振子211Cは、第1の実施形態と同様の3つの分割共振子13E〜13Gを有している。ただし、3つの分割共振子13E〜13Gは、伝搬方向D1における位置が互いに異なっている。
【0073】
具体的には、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gに対して、伝搬方向D1の一方側にずれている。換言すれば、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gから伝搬方向D1において突出している。突出量(ずれ量)は、適宜に設定されてよい。図9では、反射器21の大きさ以上で突出している場合を例示しているが、突出量は、反射器21の大きさよりも小さくてもよい。なお、両側の分割共振子13E及び13Gは、伝搬方向D1における位置が互いに同一である。
【0074】
第4の実施形態によれば、中央の分割共振子13Fは、両側の分割共振子13E及び13Gから突出した部分において放熱が可能となっている。従って、第3の実施形態と同様に、分割共振子13E及び13Gに挟まれて放熱に不利な中央の13Fの放熱性を向上させることができ、共振子11C全体の耐電力性の向上が期待される。
【0075】
<第5の実施形態>
図10は、第5の実施形態に係るSAW装置における、図3に対応する平面図である。
【0076】
第5の実施形態は、第3の実施形態と、第4の実施形態とを組み合わせた態様である。すなわち、第5の実施形態は、複数の分割共振子113の伝搬方向D1における大きさ及び位置を互いに異ならせる態様である。
【0077】
具体的には、共振子311Cは、第3の実施形態と同様の3つの分割共振子113E〜113Gを有している。各分割共振子113の中心を基準として考えると、入力側の分割共振子113Eは、中央の分割共振子113Fに対して伝搬方向D1の一方側(図10の紙面下方側)にずれている。また、出力側の分割共振子113Gは、中央の分割共振子113Fに対して伝搬方向D1の他方側(図10の紙面上方側、分割共振子113Eがずれる側とは反対側)にずれている。分割共振子113の大きさの差や位置のずれ量は、適宜に設定されてよい。
【0078】
なお、両側の分割共振子113Eの伝搬方向D1の一方側の端部は、中央の分割共振子113Fの伝搬方向D1の一方側の端部に揃えられている。同様に、両側の分割共振子113Gの伝搬方向D1の他方側の端部は、中央の分割共振子113Fの伝搬方向D1の他方側の端部に揃えられている。ただし、これらは互いにずれていてもよい。
【0079】
両側の分割共振子113E及び113Gは、伝搬方向D1の位置が配線5に対してもずれている。その結果、バスバー25と配線5とは、バスバー25の伝搬方向D1の全体に亘って接続されていない。ただし、配線5の位置及び幅の少なくとも一方を変更して、第1の実施形態と同様に、バスバー25の伝搬方向D1の全体に亘って、バスバー25と配線5とを接続してもよい。
【0080】
第5の実施形態によれば、中央の分割共振子113Fは、両側の分割共振子113E及び113Gに隣接しない部分が生じ、当該部分において放熱が可能となっている。従って、第3及び第4の実施形態と同様に、分割共振子113E及び113Gに挟まれて放熱に不利な中央の分割共振子113Fの放熱性を向上させることができ、共振子311C全体の耐電力性の向上が期待される。さらに、両側の分割共振子113E及び113G同士も、伝搬方向D1における位置が互いにずれていることから、互いに熱的に影響を及ぼすことが緩和され、共振子311C全体の耐電力性の向上が期待される。
【0081】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0082】
上記の各種の実施形態は、適宜に組み合わされてよい。例えば、第2の実施形態(図7)の反射器の接続により放熱性を向上させる態様と、第3〜第5の実施形態の分割共振子の長さ又は大きさのばらつきにより放熱性を向上させる態様とは組み合わされてよい。
【0083】
実施形態では、3つの分割共振子により構成された共振子を例にとって説明したが、共振子を構成する分割共振子は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0084】
第3〜第5の実施形態では、第1の実施形態の第1設定例と同様に、3つの分割共振子のうち、中央の分割共振子において温度上昇が見込まれるものと仮定して、中央の分割共振子の放熱性を向上させる態様を示した。しかし、第1の実施形態の設定例2と同様に、端の分割共振子において温度上昇が見込まれる場合には、その分割共振子において放熱性が向上されるように伝搬方向の長さなどが設定されてよい。
【0085】
第2の実施形態において、複数の反射器は、互いに接続されるだけ(配線5に接続されない)でもよいし、配線5に接続されるだけ(互いに接続されない)でもよい。反射器は、共振子に信号を入力するための配線5に代えて、共振子からの信号が出力される配線5と接続されてもよい。伝搬方向の一方側に配列された反射器は入力側の配線5に接続され、伝搬方向の他方側に配列された反射器は出力側の配線5に接続されるなどしてもよい。伝搬方向の一方側に配列された複数の反射器が互いに接続されていない場合には、そのうちの一部が入力側の配線5に接続され、他の一部が出力側の配線5に接続されてもよい。
【0086】
なお、本願に開示された技術内容からは、以下の発明を抽出可能である。
【0087】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない複数の分割共振子を有し、
前記複数の分割共振子の少なくとも一つは、反射器が、前記共振子への信号の入力用の配線又は前記共振器からの信号の出力用の配線に接続されている
弾性表面波装置。
【0088】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない第1及び第2の分割共振子を有し、
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されており、
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも前記伝搬方向において長く形成されている
弾性表面波装置。
【0089】
共振子を有し、
前記共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、互いに直列に接続され、その接続の間に分岐回路を有しない第1及び第2の分割共振子を有し、
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されるとともに、中心が前記伝搬方向において互いにずれるように配置されている
弾性表面波装置。
【0090】
上記の抽出可能な発明においては、複数の分割共振子間において静電容量が互いに同一であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1…SAW装置、11…共振子、13E…分割共振子(第2の分割共振子)、13F…分割共振子(第1の分割共振子)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の分割共振子を含む共振子を少なくとも1つ備え、
前記第1及び第2の分割共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、且つ両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されており、
前記第1の分割共振子は第2の分割共振子よりも静電容量が大きい
弾性表面波装置。
【請求項2】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指の交差幅が大きい
請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指の本数が多い
請求項1又は2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指ピッチに対する電極指の幅の割合が大きい
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記第1の分割共振子は、前記第1及び第2の分割共振子の静電容量が互いに同一であると仮定したときに、前記第2の分割共振子よりも温度が高くなる位置に設けられている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
前記第1の分割共振子は反射器を有し、
前記反射器が、前記共振子への信号の入力用の配線又は前記共振器からの信号の出力用の配線に接続されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の分割共振子は、それぞれ反射器を有し、
前記第1の分割共振子の反射器と前記第2の分割共振子の反射器とが接続されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されており、
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも前記伝搬方向において長く形成されている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されるとともに、中心が前記伝搬方向において互いにずれるように配置されている
請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項1】
第1及び第2の分割共振子を含む共振子を少なくとも1つ備え、
前記第1及び第2の分割共振子は、それぞれ弾性表面波共振子により構成され、且つ両者の間に分岐回路を有しない状態で互いに直列に接続されており、
前記第1の分割共振子は第2の分割共振子よりも静電容量が大きい
弾性表面波装置。
【請求項2】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指の交差幅が大きい
請求項1に記載の弾性表面波装置。
【請求項3】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指の本数が多い
請求項1又は2に記載の弾性表面波装置。
【請求項4】
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも電極指ピッチに対する電極指の幅の割合が大きい
請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項5】
前記第1の分割共振子は、前記第1及び第2の分割共振子の静電容量が互いに同一であると仮定したときに、前記第2の分割共振子よりも温度が高くなる位置に設けられている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項6】
前記第1の分割共振子は反射器を有し、
前記反射器が、前記共振子への信号の入力用の配線又は前記共振器からの信号の出力用の配線に接続されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項7】
前記第1及び第2の分割共振子は、それぞれ反射器を有し、
前記第1の分割共振子の反射器と前記第2の分割共振子の反射器とが接続されている
請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されており、
前記第1の分割共振子は、前記第2の分割共振子よりも前記伝搬方向において長く形成されている
請求項1〜7のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【請求項9】
前記第1及び第2の分割共振子は、弾性表面波の伝搬方向に直交する方向に配列されるとともに、中心が前記伝搬方向において互いにずれるように配置されている
請求項1〜8のいずれか1項に記載の弾性表面波装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−172191(P2011−172191A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36593(P2010−36593)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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