説明

弾性表面波速度測定装置

【目的】 斜角探触子を用いて弾性表面波速度を確実に測定したい。
【構成】 本発明は固体表面に弾性波を励起させる送信用斜角探触子と、該送信用斜角探触子と互いに異なる距離で対向するように配置された第1、第2の受信用斜角探触子と、この送信用斜角探触子と第1、第2の受信用斜角探触子とを支持固定するハウジングと、上記、送信用探触子から発せられた超音波が固体を伝播し、第1、第2の受信用斜角探触子で受信され第1、第2の受信信号について、その受信時間差分を求め、この差分と第1、第2の受信用斜角探触子間の距離とから弾性表面波速度を算出する手段と、より成る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、固体表面の弾性的性質(弾性定数等)を評価するに好適な表面弾性波速度測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の測定装置を図4に示す。試料8に弾性表面波を発生させる2つの斜角探触子14A、14Bを対向させ、距離L1で保持する。斜角探触子14A、14Bには遅延材14b、14cと、これに取り付けた振動子14a、14dより成る。斜角探触子14Aを送信用(T)、もう一方の斜角探触子14Bを受信用(R1)として用いる。この配置状態で、超音波探傷回路9のパルサ10から電気信号が発せられ斜角探触子14Aの振動子14aで超音波に変換され、遅延材14bを伝播し、試料8表面に弾性表面波が発生する。弾性表面波は受信R1の斜角探触子14Bの遅延材14cを伝播し、振動子14dによって電気信号に変換し、レシーバ及び処理回路12で増幅し、この結果をモニタ13に表示させる。モニタ13の表示内容をみて表面弾性波速度を算出する。表示をみることなく、表面弾性波速度をレシーバ・処理回路12で算出することもできる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図5に超音波波形のタイミング図を示す。(イ)はタイミングパルスで(ロ)が探触子14Aと探触子14Bとが距離L1で対向するときの超音波波形である。タイミングパルスとの伝播時間は遅延材14b及び14cと距離L1を加算された時間(t1+t2+t3)で表せる。ここで、t1は遅延材14b内の伝播時間、t2は遅延材14c内の伝播時間、t3は距離L1における伝播時間である。これから弾性表面波速度を求めようとすると、t1及びt2が既知でなければならない。そこで、t1及びt2を事前に求めておき、弾性表面波速度を算出する。
【0004】また、遅延材14b、14cの伝播時間t1、t2を求めておく代わりに、t1とt2とを相殺する方法がある。上記による伝播時間t1+t2+t3を測定し、次に図4の点線で示す距離L2受信用斜角探触子14Bを移動し、図5(ハ)で示す伝播時間t1+t2+t4を測定し、これらの差t5を求めるとt5=t4−t3となる。従って、R1とR2との間の、距離L(=L2−L1)は既知であることから、弾性表面波速度Crは、Cr=L/t5で求めることができる。
【0005】このように、従来法では接触式による測定で、探触子の遅延材を伝搬する遅延時間が既知でなければならないとの問題点、伝播時間を2回測定しなければならない、との問題点を持つ。更に、R1からR2への探触子の移動を正確にしなければならないという問題点があった。
【0006】本発明の目的は、簡単に表面弾性波速度を検出可能にする表面弾性波測定装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、固体表面に弾性表面波を励起させる送信用斜角探触子と、該送信用斜角探触子と互いに異なる距離で対向するように配置された第1、第2の受信用斜角探触子と、この送信用斜角探触子と第1、第2の受信用斜角探触子とを支持固定するハウジングと、上記送信用探触子から発せられた超音波が固体を伝播し、第1、第2の受信用斜角探触子で受信されて得られる第1、第2の受信信号について、その受信時間差分を求め、この差分と第1、第2の受信用斜角探触子間の距離とから弾性表面波速度を算出する手段と、より成る。
【0008】
【作用】本発明によれば、第1、第2の受信用斜角探触子を異なる距離に設置しておくことにより、両者の受信信号の時間差を求め、これと第1、第2の受信用斜角探触子との距離とから、表面弾性波速度を求めることができる。
【0009】
【実施例】図1は本発明による送信用斜角探触子20、第1、第2の受信用斜角探触子21、22の実施例で、(イ)図は本発明による上面から見た断面図で、(ロ)図は線A−A′の断面図、(ハ)図は線B−B′の断面図である。送信用斜角探触子20の送信用振動子1は遅延材2に取り付けられ、受信用斜角探触子21の受信用振動子3は遅延材4、受信用斜角探触子22の受信用振動子5は遅延材6にそれぞれ取り付けられ、入射点間距離L1、L2と異なる距離をおいてハウジング7によって1体化した構造となっている。遅延材4、6は同一形状になっている。従って、遅延材4、6内の伝播時間tr1、tr2はtr1=tr2である。送信振動子1から試料8への入射角度と、受信用振動子3、5の試料8からの入射角度とは、同一入射角度θである。(イ)図に示すように、送信用斜角探触子20は、2つの探触子21、22へ同時に弾性波を送れるだけの大きさとなっている。この入射角度θは、
【数1】


に、設定されている。
【0010】図2において超音波探傷器9のパルサ10より発せられた電気信号は送信用振動子1によって超音波が励起され遅延材2を伝播し、試料8表面に弾性表面波が伝播する。距離L1離れた遅延材4を伝播し、受信振動子3によって電気信号に変換、距離L2離れた遅延材6を伝播し受信振動子5によって電気信号に変換される二つの信号経路があり、これを加算回路(オペアンプ)11に取り込み、レシーバ、処理回路12で増幅し、モニタ13で、表示される。
【0011】図3はモニタ13に表示されるタイミング図で(イ)がタイミングパルスで(ロ)が超音波形を示す。受信された電気信号は受信振動子3の波形R1受信振動子5の波形R2が同時に表示される。これにより、弾性表面波が試料8に入射する点間の距離Lが既知であり、固定なので、その間を伝播する弾性表面波速度Crは図3(ロ)で示す。伝播時間tLを測定し、次式で求める。
【数2】Cr=L/tLこのCrは波形を表示することなく、レシーバ及び処理回路12で自動算出することもできる。
【0012】
【発明の効果】従来法で1回の伝播時間の測定で弾性表面波速度を測定する場合には、遅延材を伝播する時間を考慮しなければならなかったが考慮する必要が無い。1回の伝播時間の測定で、簡単な式で弾性表面波の測定が可能になった。従来法で探触子間の距離を正確に測定毎に計測しなければならなかったが、固定であるので計測の必要がなく、測定時間の短縮が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の探触子の実施例図である。
【図2】本発明の超音波測定装置の実施例図である。
【図3】本発明の実施例のタイミングチャート図である。
【図4】従来例図である。
【図5】従来例でのタイミングチャート図である。
【符号の説明】
1、3、5 振動子(圧電素子)
2、4、6 遅延材
7 ハウジング
8 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電気信号の印加により固体表面に弾性表面波を励起させる送信用斜角探触子と、該送信用斜角探触子と互いに異なる距離で対向するように配置された第1、第2の受信用斜角探触子と、この送信用斜角探触子と第1、第2の受信用斜角探触子とを支持固定するハウジングと、上記送信用探触子から発せられた超音波が固体を伝播し、第1、第2の受信用斜角探触子で受信されて得られる第1、第2の受信信号について、その受信時間差分を求め、この差分と第1、第2の受信用斜角探触子間の距離とから弾性表面波速度を算出する手段と、より成る弾性表面波速度測定装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【公開番号】特開平6−27089
【公開日】平成6年(1994)2月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−179805
【出願日】平成4年(1992)7月7日
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)