弾性表面波霧化装置
【課題】弾性表面波霧化装置において、液体供給量と霧化量のバランスを保ち、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定して噴霧可能とする。
【解決手段】弾性表面波霧化装置1は、一対の櫛形電極21が形成され、その櫛形電極21に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子2と、振動子2の表面Sに液体を供給する液体供給手段3と、を備え、液体供給手段3によって振動子2の表面Sに供給される液体を表面Sに生成される弾性表面波wによって霧化する。液体供給手段3は、供給液体を振動子2の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30を備えており、膜形成隙間Gの形状が、振動子2の表面Sに生成される弾性表面波wの進行方向xに直交する幅方向yの長さaよりも、弾性表面波wの進行方向xの長さbを短く形成されている。
【解決手段】弾性表面波霧化装置1は、一対の櫛形電極21が形成され、その櫛形電極21に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子2と、振動子2の表面Sに液体を供給する液体供給手段3と、を備え、液体供給手段3によって振動子2の表面Sに供給される液体を表面Sに生成される弾性表面波wによって霧化する。液体供給手段3は、供給液体を振動子2の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30を備えており、膜形成隙間Gの形状が、振動子2の表面Sに生成される弾性表面波wの進行方向xに直交する幅方向yの長さaよりも、弾性表面波wの進行方向xの長さbを短く形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波を用いた霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波が伝搬している圧電材料などからなる基板の表面に液体を供給すると、液体が弾性表面波のエネルギを受け取って流動したり、振動したりして、微小粒子となって飛翔する現象が知られている。この現象を利用して液体を霧化する装置が種々提案されている。このような装置における霧化の原理として、例えば、基板表面を伝搬している弾性表面波(レイリー波)が、液体内部に進入してその表面を伝搬する表面張力波(キャピラリ波)となり、その結果、液体の表面から霧が発生するとの説明が成されている。なお、超音波振動によって発生するキャビテーション効果による霧化なども考えられる。
【0003】
このような弾性表面波霧化装置において、安定した霧化を小電力で効率的に行うためには、液体を薄く延ばすと共に、液体供給量と噴霧量とのバランスを良好に保つことが必要である。そこで、弾性表面波が伝搬する振動面の一部に振動面との間に隙間を形成するカバーを設け、前記隙間に供給した液体が隙間から弾性表面波の振動源の方向に出るようにした霧化装置がある。この装置では、カバーに達した弾性表面波が、薄く広がった液体にキャピラリ波を生じさせ、そこから霧化が行われるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、無数の貫通孔を有する多孔薄板を、弾性表面波が伝搬する振動面の上方に、振動面との間に微小間隙をあけて配置し、振動面と多孔薄板とが成す微小間隙内に液体を供給するようにした霧化装置がある。この装置では、表面弾性波による振動が微小間隙内の液体を介して多孔薄板に伝達され、多孔薄板の振動によって、貫通孔に浸透した微量の液が霧化され、噴霧されるので、小電力の電池駆動で噴霧が可能とされている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−232114号公報
【特許文献2】特許第3341023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1,2に示されるような弾性表面波霧化装置においては、液体を薄く延ばすことはできるが、霧化に関与しない液体が、依然として弾性表面波の伝搬面に多量に存在するので、これらの液体によって弾性表面波のエネルギが無駄に消費されてしまい、霧化の効率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、液体供給量と霧化量のバランスを保ち、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定して噴霧できる弾性表面波霧化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、一対の櫛形電極が形成された圧電材料から成り、前記櫛形電極に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子と、前記振動子の表面に液体を供給する液体供給手段と、を備え、前記液体供給手段によって前記振動子の表面に供給される液体を前記表面に生成される弾性表面波によって霧化する弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、前記振動子の表面に対向して配置され、供給液体を前記振動子の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間を形成する液膜形成部材を備え、前記液膜形成部材の膜形成隙間の形状が、前記振動子の表面に生成される弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるほど弾性表面波の進行方向下流側に位置するように前記膜形成隙間を形成しているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるに従って隙間が狭くなるように前記膜形成隙間を形成しているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液膜形成部材は、前記振動子の表面との相対位置を変化させることにより前記膜形成隙間の形状を変化させて霧化量を調整するものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液膜形成部材は、弾性表面波進行方向に沿って複数設けられ、前記液体供給手段は、弾性表面波進行方向の上流側の液膜形成部材に対して液体を供給し、前記上流側の液膜形成部材部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体が下流側の膜形成部材に対して供給されるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置において、前記振動子は、弾性表面波の進行方向線上に互いに離間し対向して形成された前記櫛形電極の2つの対を備え、前記液膜形成部材は前記櫛形電極の2つの対の間に設けられ、前記膜形成隙間に供給する液体が両側の櫛形電極からの弾性表面波によって霧化されるものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の弾性表面波霧化装置において、前記櫛形電極の2つの対の間に前記液膜形成部材を複数設け、前記液体供給手段は、前記複数の液膜形成部材による膜形成隙間に液体を供給するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の弾性表面波霧化装置において、前記複数の液膜形成部材が一体的に構成されているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の弾性表面波霧化装置において、前記振動子は、前記櫛形電極の2つの対から成る組を弾性表面波進行方向を異ならせて複数組備えるものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の弾性表面波霧化装置において、前記互いに組を成す櫛形電極の対を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして形成したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、液膜形成部材が形成する膜形成隙間の形状が、弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されているので、この膜形成隙間に液体を膜状に分布させて表面張力によって保持させると、弾性表面波がこの分布した液体を通過する距離よりも、弾性表面波の波面が液体と相互作用する距離が長くなり、従って、広い面積で効率的に霧化することができる。すなわち、弾性表面波の波面に沿って細長い液体分布を形成する液膜形成部材によって、液体供給量と霧化量のバランスを保つと共に、霧化に関与しない液体の存在を抑えることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定して噴霧することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、弾性表面波の進行方向上流側から供給された液体が、弾性表面波によって、膜形成隙間に沿って下流側に輸送される。この輸送は、霧化に使われなかった弾性表面波エネルギによって、液体供給量を自動調整するように行われるので、液体供給量と霧化量のバランスを安定に保って、液膜の薄い範囲を広げることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を噴霧できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、表面張力によって、供給点の液体を供給点から離れた部分に輸送することができるので、液膜の供給を強制的に送る手段が不要になり、コンパクトな構造で液膜の薄い範囲を広げ大量に効率的に霧化することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、弾性表面波を生成するための電源電圧値を変化することなく容易に霧化量を調整することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、新たな液体の供給点を設けることなく、コンパクトな構造で大量に霧化することができる。また、上流側の液膜形成部材部分で消費されなかった弾性表面波を下流側の液膜形成部材部分で利用できるので、エネルギ効率良く霧化できる。
【0022】
請求項6の発明によれば、1つの液膜形成部材の両側から伝搬する弾性表面波によって霧化できるので、片側からだけの場合に比べて、より強力かつ大量に霧化できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、複数の液膜形成部材部分および各部材間の表面領域において、弾性表面波のエネルギを液体に吸収させて霧化することができるので、エネルギと液体を無駄にすることなく、安定に効率良く液体を霧化できる。
【0024】
請求項8の発明によれば、液膜形成部材、従って膜形成隙間を振動子の表面上でひと繋がりのものとすることができるので、液膜形成部材に沿って効率良く液を広げることができ、より大量の霧化ができる。また、部品点数を減らすことができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、膜状に分布させた液体に対して、周囲から弾性表面波を送り込むことができるので、コンパクトで強力な霧化が可能となる。
【0026】
請求項10の発明によれば、膜状に分布させた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻き状に送り込むようにすることにより、渦巻き状に分布した弾性表面波によって、液体を、液膜形成部材に沿って広げることができ、さらには、循環させることができるので、より大量の液体を、効率的かつ安定に霧化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波霧化装置を、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1(a)(b)は第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置を示し、図2はその要部断面を示す。弾性表面波霧化装置1は、一対の櫛形電極21が形成され、その櫛形電極21に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子2と、振動子2の表面Sに液体を供給する液体供給手段3と、を備え、液体供給手段3によって振動子2の表面Sに供給される液体4を表面Sに生成される弾性表面波wによって液体4の微粒子41として飛翔させて霧化する装置である。弾性表面波霧化装置1は、例えば、小電力の乾電池によって駆動する医療用の吸霧器として用いられる。この場合、霧化される液体4は、水や、水に薬品を溶かした薬液などである。また、弾性表面波霧化装置1を比較的大電力で駆動する場合は、例えば、乾燥防止用の湿度調整装置として用いられる。
【0029】
液体供給手段3は、供給液体を溜める液体容器31と、液体容器31から液体を導出する液導出部材32と、振動子2の表面Sに対向して配置され、液導出部材32を介して供給される供給液体4を振動子2の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30と、を備えている。液膜形成部材30の膜形成隙間Gは、その形状が、振動子2の表面Sに生成される弾性表面波wの進行方向xに直交する幅方向yの長さaよりも、弾性表面波wの進行方向xの長さbを短くして形成されている。以下、詳細説明する。
【0030】
振動子2を構成する圧電材料は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電材料は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよい。その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波が励振される。従って、振動子2を構成する圧電材料は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよい。
【0031】
一対の櫛形電極21は、圧電材料の表面に2つの櫛形の電極を互いに噛み合わせて形成した電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)である。櫛形電極21のy方向の幅は、安定した弾性表面波wを生成するには、波長λの20倍程度にする必要があることがわかっているが、それ以下でもよい。櫛形電極21の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる電極に属し、励振する弾性表面波wの波長λの半分の長さのピッチで配列されている。
【0032】
2つの櫛形電極21に高周波電圧印加用の電気回路23から高周波(例えば、MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極21によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに変換されて、振動子2の表面にレイリー波と呼ばれる弾性表面波wが励振される。励振された弾性表面波wの振幅は、櫛形電極21に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波wの波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。
【0033】
櫛形電極21によって励振された弾性表面波wは、一対の櫛形電極21の歯が交差した幅に対応する幅の波となって、櫛の歯に垂直な方向xに伝搬(以下、進行ともいう)する。櫛形電極21は、その両側に伝搬する弾性表面波を生成するので、図1(a)に示すように、櫛形電極21の左方に反射用櫛形電極22が配置されている。反射用櫛形電極22は、弾性表面波を全反射する、いわゆる反射器を構成する。櫛形電極21は、この反射用櫛形電極22と組み合わされて、x方向にのみ伝搬する弾性表面波wを生成する、いわゆる一方向性電極を構成する。なお、一方向性電極の構成は、本実施形態に示したものに限られない。
【0034】
液膜形成部材30と、膜形成隙間Gの形状を説明する。液膜形成部材30は、細長い部材であって、図2に示すように、振動子2の表面Sに対向する面を表面Sから一様な距離gだけ隔てて、表面Sに近接して配置されている。液膜形成部材30と表面Sとの互いの対向面、および距離gによって定義される空間が、膜形成隙間Gを形成している。液体4は、この膜形成隙間Gに自身の表面張力によって保持されると共に、距離gで定まる厚さに規制されて、表面S上に膜状に分布する。なお、表面張力によって保持された液体は、霧化によって消費されると、表面張力によって自動的に液体を補充するように動作する。
【0035】
ところで、弾性表面波wによる霧化は、液体4の表面を伝搬する、いわゆる表面張力波(キャピラリ波)によって、液体4の表面から液滴が離脱飛翔することによって行われる。従って、液体4の膜厚が厚いと弾性表面波のエネルギが液体4の表面に到達する前に減衰してしまい、霧化することができない。そこで、できるだけ液体の膜厚を薄くする必要がある。膜厚は、上述の距離gを調整することによって最適化することができる。
【0036】
また、液膜形成部材30によって覆われている膜形成隙間Gの上部からは霧化しないので、この部分を減らすことによって、効率的かつ安定に霧化することができる。これを説明する。液膜形成部材30が形成する膜形成隙間Gの形状は、y方向の長さaを櫛形電極21の幅と大体同じ長さとし、x方向の長さbを波長λの10倍以下とされている。つまり、これらの長さa,bは、b<a、の関係を満たしている。
【0037】
上述のような形状の膜形成隙間Gにより、弾性表面波wの進行方向xの、液膜形成部材30によって覆われた液体4の量を少なくし、幅方向yに薄く延ばして液体4の有効表面積を増大させることができるので、弾性表面波wのエネルギ損失を抑制し、液体4の供給量を少なくすることができると共に、効率的に大量の微細な粒に霧化することができる。
【0038】
膜形成隙間Gに液体4を供給する手段について説明する。また、液体供給手段3として、液体4の微小量を送るポンプを備えてもよく、毛細管現象を利用する方法としてもよい。毛細管現象を利用する場合に、液膜形成部材30を親水性部材にしたり、液膜形成部材30の表面に親水性薄膜をコーティングしたりすることが有効である。
【0039】
また、図1(a)(b)に示した液導出部材32は、極細パイプとすることができる。
その端部は、膜形成隙間Gに対向して開口させて直接その膜形成隙間Gに液体4を供給する構造や、液膜形成部材30の一部に液体4を垂らすと共に液膜形成部材30を介して膜形成隙間Gに液体4を供給する構造とすることができる。また、毛細管現象を利用する場合、液導出部材32の一部、特に端部などに、毛細管現象によって液体4を導く繊維部材や多孔部材を取り付けるようにしてもよい。これらの部材は、交換可能とすることが清潔さを保つために有効である。
【0040】
膜形成隙間Gに液体4を供給する点(液供給点)は、液膜形成部材30によって形成される膜形成隙間Gの一部に少なくとも1箇所以上設ける。その位置は、膜形成隙間Gの中央であっても端であってもよい。液膜形成部材30の長さを、膜形成隙間Gの長さaや櫛形電極21の幅よりも長くし、端から液体4を供給すれば、弾性表面波wの進行を妨げることなく、また、霧化を邪魔することがない。
【0041】
上述のような膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30を備えた弾性表面波霧化装置1によれば、膜形成隙間Gに液体4を膜状に分布させて表面張力によって保持させることにより、弾性表面波wがこの分布した液体4を通過する距離よりも、弾性表面波wの波面が液体4と相互作用する距離が長くなり、従って、広い面積で効率的に霧化することができる。すなわち、弾性表面波wの波面に沿って細長い液体分布を形成する液膜形成部材30によって、液体供給量と霧化量のバランスを保つと共に、霧化に関与しない液体4の存在を抑えることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定に噴霧できる。
【0042】
次に、図3(a)〜(g)、図4(a)(b)を参照して、第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1に用いられる液膜形成部材30の種々の変形例を説明する。これらの図に示す液膜形成部材30は、振動子2の表面Sと表面Sに対向する液膜形成部材30の面とによって膜形成隙間Gを形成し、膜形成隙間Gに表面張力によって液体4を保持する。これらの液膜形成部材30は、保持される液体4が、薄く分布され、また、液膜形成部材30によって覆われる表面積を抑制して、液滴が離脱飛翔する表面積を広くされることを意図するものである。
【0043】
また、図3(a)(b)に示す液膜形成部材30は、図4(a)(b)に示すように、振動子2の表面Sに向けて開口する複数の微小貫通孔33を有する中空部材を用いて、中空部に液体を通すと共に微小貫通孔33から液体を供給するものである。このような液膜形成部材30によって、容易に安定に液体を供給することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図5(a)(b)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図6(a)(b)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第2の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の実施形態の弾性表面波霧化装置1とは、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gの表面Sに対する平面構造が異なっており、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液体供給手段3(図1(a)(b)参照、以下同様)は、局在した供給点Pから膜形成隙間Gに液体を供給し、液膜形成部材30は、供給点Pから離れるほど弾性表面波wの進行方向下流側、すなわち方向x側に位置するように膜形成隙間Gを形成している。
【0045】
図5(a)(b)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、端部に供給点Pが配置された直線形状であって、櫛形電極21に対して斜めに配置されている。また、図6(a)(b)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、その中央部に供給点Pが配置され、供給点Pの位置で上流側に屈曲した形状となっている。そして、これらの液膜形成部材30の形状に対応して、膜形成隙間Gが振動子2の表面Sに形成される。
【0046】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、弾性表面波wの進行方向上流側から供給された液体が、弾性表面波wによって、膜形成隙間Gに沿って下流側に輸送される。この輸送は、霧化に使われなかった弾性表面波エネルギによって、液体供給量を自動調整するように行われるので、液体供給量と霧化量のバランスを安定に保って、液膜の薄い範囲を広げることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を噴霧できる。
【0047】
(第3の実施形態)
図7(a)(b)(c)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図8(a)(b)(c)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第3の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の実施形態の弾性表面波霧化装置1とは、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gの表面Sに対する立体構造が異なっており、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液体供給手段3は、局在した供給点Pから膜形成隙間Gに液体を供給し、液膜形成部材30は、供給点Pから離れるに従って隙間が狭くなるように膜形成隙間Gを形成している。
【0048】
図7(a)(b)(c)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、端部に供給点Pが配置された外形が直線形状であって、表面Sとの隙間が、供給点Pのところで大きくされている。また、図8(a)(b)(c)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、図7(a)(b)(c)に示した液膜形成部材30を、さらに、上述の第2の実施形態の液膜形成部材30と同様に、櫛形電極21に対して斜めにして、配置されている。
【0049】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、表面張力と毛細管現象とによって、供給点Pに供給された液体を供給点Pから離れた部分に輸送することができるので、液膜の供給を強制的に送る手段が不要になり、コンパクトな構造で液膜の薄い範囲を広げ大量に効率的に霧化することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
図9(a)(b)は第4の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図10(a)(b)、図11(a)(b)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。これらの弾性表面波霧化装置1は、液膜形成部材30を、振動子2の表面Sとの相対位置を変化させて膜形成隙間Gの空間形状を変化させる不図示の隙間変化手段を備えており、この点が上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1と異なり、他の点は同様である。
【0051】
上述の隙間変化手段は、膜形成隙間Gの空間形状、すなわち表面Sに対する配置や膜形成隙間Gの容積を変化させることにより、その膜形成隙間Gに保持させる液体の量、厚み、表面積等を変化させて霧化量を調整する。
【0052】
図9(a)(b)に示す液膜形成部材30は、表面Sとの距離が変化されるものであり、図10(a)(b)、図11(a)(b)に示す液膜形成部材30は、表面Sに対する平面的配置、従って櫛形電極21との平行度が変化されるものである。
【0053】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、弾性表面波wを生成するための電源電圧値を変化することなく容易に霧化量を調整することができる。一般に、霧化量の調整方法として、弾性表面波の振幅を増大させる方法がある。振幅の調整は櫛形電極への入力電源の電圧調整で行われるが、電圧を大きくし過ぎると圧電材料に熱が蓄積して振動子2が割れることがある。また、振幅調整によって霧化量を微小調整することは難しい。
【0054】
本実施形態の弾性表面波霧化装置1では、液膜形成部材30の位置や姿勢を変えることにより、液体を薄く広げて霧化量を増やしたり、逆に減らしたりして、微小に霧化量を調整することができる。また、霧化中に液膜形成部材30の位置や姿勢を調整することにより、表面S上における発熱場所を変えることができるので、熱の局在によって振動子2を割ってしまうことを回避できる。
【0055】
(第5の実施形態)
図12(a)(b)は第5の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図13は弾性表面波霧化装置1の要部を示し、図14は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第5の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gを複数備えたものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30は、弾性表面波進行方向xに沿って2つ設けられている。弾性表面波進行方向xの上流側の液膜形成部材30に対して液体4を供給し、上流側の液膜形成部材30部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体4が下流側の液膜形成部材30に対して供給される。
【0056】
図14に示す弾性表面波霧化装置1は、上流側の液膜形成部材30と表面Sとの隙間g1よりも、下流側の液膜形成部材30と表面Sとの隙間g2の方が狭く、g2<g1、とされている。このような構成により、下流の液膜形成部材30が、より少ない液体を捕捉し易くなる。
【0057】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、新たな液体の供給点を設けることなく、コンパクトな構造で大量に霧化することができる。また、上流側の液膜形成部材30部分で消費されなかった弾性表面波wを下流側の液膜形成部材30部分、または液体4の輸送途中において利用できるので、エネルギ効率良く霧化できる。液膜形成部材30は、2つ以上設けることができる。
【0058】
(第6の実施形態)
図15(a)(b)は第6の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図16は弾性表面波霧化装置1の要部を示す。この第6の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、櫛形電極21を液膜形成部材30の両側に設けたものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、振動子2は、弾性表面波の進行方向線上(図15(a)のx軸方向)に互いに離間し対向して形成された櫛形電極21の2つの対(21A,21B)を備え、液膜形成部材30は櫛形電極21A,21Bの間に設けられ、膜形成隙間Gに供給する液体4が両側の櫛形電極21A,21Bからの(x1,x2方向からの)弾性表面波w1,w2によって霧化される。
【0059】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、1つの液膜形成部材30の両側から伝搬する弾性表面波によって液体4を霧化できるので、片側からだけの場合に比べて、より強力かつ大量に霧化できる。
【0060】
(第7の実施形態)
図17(a)(b)は第7の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図18は弾性表面波霧化装置1の要部を示す。この第7の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第6の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30を複数設けるものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、櫛形電極21A,21Bの間に液膜形成部材30を2つ設け、液体供給手段3は、それぞれの液膜形成部材30による膜形成隙間Gに液体4を供給する。
【0061】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、複数の液膜形成部材30部分および各部材間の表面領域において、弾性表面波w1,w2のエネルギを液体4に吸収させて霧化することができるので、エネルギと液体を無駄にすることなく、安定に効率良く液体4を霧化できる。
【0062】
図18において、左からx1方向に進行する弾性表面波w1は、左方の液膜形成部材30に供給された液体4を霧化する。右からx2方向へ進行する弾性表面波w2は右方の液膜形成部材30に供給された液体4を霧化する。左右の液膜形成部材30に供給された液体4の量に過多がある場合、多い方の液体4が分離されて少ない方の液膜形成部材30に向けて輸送される。このように、液体4が自動的に動いて液体量のバランスが取られると共に、離された液体4が、移動中に霧化されるので、安定に効率良く霧化できる。
【0063】
(第8の実施形態)
図19(a)(b)は第8の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図20(a)〜(g)は弾性表面波霧化装置1で用いられる液膜形成部材30の変形例を示す。この第8の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第7の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30を一体化したものであり、他の点は同様である。一体化した液膜形成部材30の他の例として、図20(a)〜(g)に示すようなものがあげられる。
【0064】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gを振動子2の表面S上でひと繋がりのものとできるので、液膜形成部材30に沿って液体を広げることができ、より大量の霧化ができる。また、液膜形成部材30の部品点数を減らすことができる。
【0065】
(第9の実施形態)
図21は第9の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。この第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、液膜形成部材30を取り囲むように櫛形電極21を複数設けたものであり、他の点は上述の第8の実施形態の弾性表面波霧化装置1などと同様である。
【0066】
図21に示す弾性表面波霧化装置1における振動子2は、櫛形電極21A,21Cの組、および櫛形電極21B,21Dの組という2つの組を、弾性表面波進行方向を異ならせて備えている。つまり、各櫛形電極21A,21B,21C,21Dは、それぞれ、x1,y2,x2,y1方向に進行する弾性表面波w1,w4,w2,w3を生成する。これらの弾性表面波w1,w4,w2,w3は、振動子2の中央部分に設けられた液膜形成部材30による膜形成隙間G(不図示)に向けて進行する。
【0067】
液膜形成部材30は、渦巻状に一体化された形状を有し、その下部に形成される膜形成隙間Gも同様の形状に形成される。この、液膜形成部材30における、各櫛形電極21A〜21Dに対向する位置に液体の供給点P(不図示)を設けることにより、それぞれの液膜形成部材30部分で液体が霧化される。液膜形成部材30における外周部で霧化されなかった液体は、各弾性表面波w1〜w4によって渦巻状の液膜形成部材30の中心部側に輸送されると共に霧化される。
【0068】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、膜状に分布させた液体4に対して、周囲から弾性表面波w1〜w4を送り込むことができるので、コンパクトで強力な霧化が可能となる。
【0069】
図22は上述の弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この弾性表面波霧化装置1は、図21の弾性表面波霧化装置1における液膜形成部材30を回転させ、各櫛形電極21A〜21Dに対向する液膜形成部材30部分を斜めに配置して、図5(a)に示した第2の実施形態における弾性表面波による液体の輸送効果を組み入れたものである。この構成によると、液膜形成部材30の最外部の端部に液体の供給点Pを設けて、ここから液体を供給すれば、矢印Rで示すように、液体が液膜形成部材30に沿って輸送される。
【0070】
(第10の実施形態)
図23は第10の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。この第10の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1における各櫛形電極21A〜21Dを、振動子2における中心軸(液膜形成部材30の中心軸)を外して配置し、液膜形成部材30を略四角形とし、液体の供給点Pを液膜形成部材30の角部に配置したものであり、他の点は第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1と同様である。
【0071】
この弾性表面波霧化装置1は、互いに対向して組を成す櫛形電極21A,21C、櫛形電極21B,21D、を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして、全体として、中央の液膜形成部材30によって膜状に分布させれた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻状に送り込む構成となっている。この構成によると、1つの供給点Pから供給した液体を、液膜形成部材30の回りで循環させて広げることができる。すなわち、この構成は、上述の図22に示した弾性表面波霧化装置1が、渦巻状の液膜形成部材30によって液体を循環させるのに対して、渦巻状に分布する弾性表面波によって循環させるものである。
【0072】
上述の循環は以下のように行われる。例えば、櫛形電極21Aからx1方向に進行する弾性表面波は、液膜形成部材30の対向する辺3aに保持された液体を霧化すると共に、辺3bに保持された液体を辺3bに沿ってx1方向に輸送する。また、櫛形電極21Bからy2方向に進行する弾性表面波は、液膜形成部材30の対向する辺3bに保持された液体を霧化すると共に、辺3cに保持された液体を辺3cに沿ってy2方向に輸送する。以下同様にして、液膜形成部材30に保持された液体は、矢印Rで示すように、液膜形成部材30に沿って循環する。
【0073】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、膜状に分布させた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻き状に送り込むことができ、液体を、液膜形成部材30に沿って広げると共に、液体を洪給しながら霧化し、霧化されない残りの液体は循環させながら搬送し、搬送中に液体を霧化することができるので、大量の液体を、効率的かつ安定に霧化することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、振動子2は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよいので、その面形状は、平面の他に、円柱面やさらに一般的な曲面からなる面形状とすることができる。また、霧化するための液体を膜形成隙間Gに表面張力によって保持できるので、膜形成隙間Gを水平に保つ必要がなく、任意の形状面から、液体粒子を脱離飛翔させて霧化することができる。そこで、垂直円筒の内面や外面から霧化する振動子2を備えた弾性表面波霧化装置1としてもよい。
【0075】
また、液膜を広げる振動子2の表面Sを親水性処理することによって、より薄い液膜を形成して霧化効率を上げるようにしてもよい。また、複数の櫛形電極21を用いる場合、これらを交互、または順番に動作、停止させることにより、熱負荷の集中を回避して高パワーで運転するようにしてもよく、また、渦巻状の液体循環を効率的に行うようにしてもよい。また、上述した複数の櫛形電極21を用いる場合において、それぞれの櫛形電極21A,21B等に、高周波電圧印加用の電気回路23を接続した例を図示したが、これらの電気回路23は、共用とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図2】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図3】(a)〜(g)は同上弾性表面波霧化装置における液膜形成部材の種々の変形例を示す要部断面図。
【図4】(a)は同上弾性表面波霧化装置における液膜形成部材の他の変形例を示す要部縦断面図、(b)は同横断面図。
【図5】(a)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図6】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図7】(a)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図、(c)は同正面図。
【図8】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図、(c)は同正面図。
【図9】(a)は第4の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図10】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図11】(a)は同上弾性表面波霧化装置の他の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図12】(a)は第5の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図13】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図14】同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す側面図。
【図15】(a)は第6の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図16】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図17】(a)は第7の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図18】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図19】(a)は第8の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図20】(a)〜(g)は同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材の種々の変形例を示す平面図。
【図21】第9の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図。
【図22】同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図。
【図23】第10の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図。
【符号の説明】
【0077】
1 弾性表面波霧化装置
2 振動子
3 液体供給手段
4 液体
21,21A〜21D 櫛形電極
30 膜形成部材
w,w1〜w4 弾性表面波
G 膜形成隙間
P 供給点
S 表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波を用いた霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波が伝搬している圧電材料などからなる基板の表面に液体を供給すると、液体が弾性表面波のエネルギを受け取って流動したり、振動したりして、微小粒子となって飛翔する現象が知られている。この現象を利用して液体を霧化する装置が種々提案されている。このような装置における霧化の原理として、例えば、基板表面を伝搬している弾性表面波(レイリー波)が、液体内部に進入してその表面を伝搬する表面張力波(キャピラリ波)となり、その結果、液体の表面から霧が発生するとの説明が成されている。なお、超音波振動によって発生するキャビテーション効果による霧化なども考えられる。
【0003】
このような弾性表面波霧化装置において、安定した霧化を小電力で効率的に行うためには、液体を薄く延ばすと共に、液体供給量と噴霧量とのバランスを良好に保つことが必要である。そこで、弾性表面波が伝搬する振動面の一部に振動面との間に隙間を形成するカバーを設け、前記隙間に供給した液体が隙間から弾性表面波の振動源の方向に出るようにした霧化装置がある。この装置では、カバーに達した弾性表面波が、薄く広がった液体にキャピラリ波を生じさせ、そこから霧化が行われるとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、無数の貫通孔を有する多孔薄板を、弾性表面波が伝搬する振動面の上方に、振動面との間に微小間隙をあけて配置し、振動面と多孔薄板とが成す微小間隙内に液体を供給するようにした霧化装置がある。この装置では、表面弾性波による振動が微小間隙内の液体を介して多孔薄板に伝達され、多孔薄板の振動によって、貫通孔に浸透した微量の液が霧化され、噴霧されるので、小電力の電池駆動で噴霧が可能とされている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−232114号公報
【特許文献2】特許第3341023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1,2に示されるような弾性表面波霧化装置においては、液体を薄く延ばすことはできるが、霧化に関与しない液体が、依然として弾性表面波の伝搬面に多量に存在するので、これらの液体によって弾性表面波のエネルギが無駄に消費されてしまい、霧化の効率が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、液体供給量と霧化量のバランスを保ち、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定して噴霧できる弾性表面波霧化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、一対の櫛形電極が形成された圧電材料から成り、前記櫛形電極に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子と、前記振動子の表面に液体を供給する液体供給手段と、を備え、前記液体供給手段によって前記振動子の表面に供給される液体を前記表面に生成される弾性表面波によって霧化する弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、前記振動子の表面に対向して配置され、供給液体を前記振動子の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間を形成する液膜形成部材を備え、前記液膜形成部材の膜形成隙間の形状が、前記振動子の表面に生成される弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるほど弾性表面波の進行方向下流側に位置するように前記膜形成隙間を形成しているものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるに従って隙間が狭くなるように前記膜形成隙間を形成しているものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液膜形成部材は、前記振動子の表面との相対位置を変化させることにより前記膜形成隙間の形状を変化させて霧化量を調整するものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記液膜形成部材は、弾性表面波進行方向に沿って複数設けられ、前記液体供給手段は、弾性表面波進行方向の上流側の液膜形成部材に対して液体を供給し、前記上流側の液膜形成部材部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体が下流側の膜形成部材に対して供給されるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置において、前記振動子は、弾性表面波の進行方向線上に互いに離間し対向して形成された前記櫛形電極の2つの対を備え、前記液膜形成部材は前記櫛形電極の2つの対の間に設けられ、前記膜形成隙間に供給する液体が両側の櫛形電極からの弾性表面波によって霧化されるものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項6に記載の弾性表面波霧化装置において、前記櫛形電極の2つの対の間に前記液膜形成部材を複数設け、前記液体供給手段は、前記複数の液膜形成部材による膜形成隙間に液体を供給するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の弾性表面波霧化装置において、前記複数の液膜形成部材が一体的に構成されているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項8に記載の弾性表面波霧化装置において、前記振動子は、前記櫛形電極の2つの対から成る組を弾性表面波進行方向を異ならせて複数組備えるものである。
【0016】
請求項10の発明は、請求項9に記載の弾性表面波霧化装置において、前記互いに組を成す櫛形電極の対を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして形成したものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、液膜形成部材が形成する膜形成隙間の形状が、弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されているので、この膜形成隙間に液体を膜状に分布させて表面張力によって保持させると、弾性表面波がこの分布した液体を通過する距離よりも、弾性表面波の波面が液体と相互作用する距離が長くなり、従って、広い面積で効率的に霧化することができる。すなわち、弾性表面波の波面に沿って細長い液体分布を形成する液膜形成部材によって、液体供給量と霧化量のバランスを保つと共に、霧化に関与しない液体の存在を抑えることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定して噴霧することができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、弾性表面波の進行方向上流側から供給された液体が、弾性表面波によって、膜形成隙間に沿って下流側に輸送される。この輸送は、霧化に使われなかった弾性表面波エネルギによって、液体供給量を自動調整するように行われるので、液体供給量と霧化量のバランスを安定に保って、液膜の薄い範囲を広げることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を噴霧できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、表面張力によって、供給点の液体を供給点から離れた部分に輸送することができるので、液膜の供給を強制的に送る手段が不要になり、コンパクトな構造で液膜の薄い範囲を広げ大量に効率的に霧化することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、弾性表面波を生成するための電源電圧値を変化することなく容易に霧化量を調整することができる。
【0021】
請求項5の発明によれば、新たな液体の供給点を設けることなく、コンパクトな構造で大量に霧化することができる。また、上流側の液膜形成部材部分で消費されなかった弾性表面波を下流側の液膜形成部材部分で利用できるので、エネルギ効率良く霧化できる。
【0022】
請求項6の発明によれば、1つの液膜形成部材の両側から伝搬する弾性表面波によって霧化できるので、片側からだけの場合に比べて、より強力かつ大量に霧化できる。
【0023】
請求項7の発明によれば、複数の液膜形成部材部分および各部材間の表面領域において、弾性表面波のエネルギを液体に吸収させて霧化することができるので、エネルギと液体を無駄にすることなく、安定に効率良く液体を霧化できる。
【0024】
請求項8の発明によれば、液膜形成部材、従って膜形成隙間を振動子の表面上でひと繋がりのものとすることができるので、液膜形成部材に沿って効率良く液を広げることができ、より大量の霧化ができる。また、部品点数を減らすことができる。
【0025】
請求項9の発明によれば、膜状に分布させた液体に対して、周囲から弾性表面波を送り込むことができるので、コンパクトで強力な霧化が可能となる。
【0026】
請求項10の発明によれば、膜状に分布させた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻き状に送り込むようにすることにより、渦巻き状に分布した弾性表面波によって、液体を、液膜形成部材に沿って広げることができ、さらには、循環させることができるので、より大量の液体を、効率的かつ安定に霧化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波霧化装置を、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図1(a)(b)は第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置を示し、図2はその要部断面を示す。弾性表面波霧化装置1は、一対の櫛形電極21が形成され、その櫛形電極21に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子2と、振動子2の表面Sに液体を供給する液体供給手段3と、を備え、液体供給手段3によって振動子2の表面Sに供給される液体4を表面Sに生成される弾性表面波wによって液体4の微粒子41として飛翔させて霧化する装置である。弾性表面波霧化装置1は、例えば、小電力の乾電池によって駆動する医療用の吸霧器として用いられる。この場合、霧化される液体4は、水や、水に薬品を溶かした薬液などである。また、弾性表面波霧化装置1を比較的大電力で駆動する場合は、例えば、乾燥防止用の湿度調整装置として用いられる。
【0029】
液体供給手段3は、供給液体を溜める液体容器31と、液体容器31から液体を導出する液導出部材32と、振動子2の表面Sに対向して配置され、液導出部材32を介して供給される供給液体4を振動子2の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30と、を備えている。液膜形成部材30の膜形成隙間Gは、その形状が、振動子2の表面Sに生成される弾性表面波wの進行方向xに直交する幅方向yの長さaよりも、弾性表面波wの進行方向xの長さbを短くして形成されている。以下、詳細説明する。
【0030】
振動子2を構成する圧電材料は、例えば、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電材料は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよい。その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波が励振される。従って、振動子2を構成する圧電材料は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよい。
【0031】
一対の櫛形電極21は、圧電材料の表面に2つの櫛形の電極を互いに噛み合わせて形成した電極(IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)である。櫛形電極21のy方向の幅は、安定した弾性表面波wを生成するには、波長λの20倍程度にする必要があることがわかっているが、それ以下でもよい。櫛形電極21の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる電極に属し、励振する弾性表面波wの波長λの半分の長さのピッチで配列されている。
【0032】
2つの櫛形電極21に高周波電圧印加用の電気回路23から高周波(例えば、MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極21によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに変換されて、振動子2の表面にレイリー波と呼ばれる弾性表面波wが励振される。励振された弾性表面波wの振幅は、櫛形電極21に印加する電圧の大きさで決まる。励振された弾性表面波wの波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。
【0033】
櫛形電極21によって励振された弾性表面波wは、一対の櫛形電極21の歯が交差した幅に対応する幅の波となって、櫛の歯に垂直な方向xに伝搬(以下、進行ともいう)する。櫛形電極21は、その両側に伝搬する弾性表面波を生成するので、図1(a)に示すように、櫛形電極21の左方に反射用櫛形電極22が配置されている。反射用櫛形電極22は、弾性表面波を全反射する、いわゆる反射器を構成する。櫛形電極21は、この反射用櫛形電極22と組み合わされて、x方向にのみ伝搬する弾性表面波wを生成する、いわゆる一方向性電極を構成する。なお、一方向性電極の構成は、本実施形態に示したものに限られない。
【0034】
液膜形成部材30と、膜形成隙間Gの形状を説明する。液膜形成部材30は、細長い部材であって、図2に示すように、振動子2の表面Sに対向する面を表面Sから一様な距離gだけ隔てて、表面Sに近接して配置されている。液膜形成部材30と表面Sとの互いの対向面、および距離gによって定義される空間が、膜形成隙間Gを形成している。液体4は、この膜形成隙間Gに自身の表面張力によって保持されると共に、距離gで定まる厚さに規制されて、表面S上に膜状に分布する。なお、表面張力によって保持された液体は、霧化によって消費されると、表面張力によって自動的に液体を補充するように動作する。
【0035】
ところで、弾性表面波wによる霧化は、液体4の表面を伝搬する、いわゆる表面張力波(キャピラリ波)によって、液体4の表面から液滴が離脱飛翔することによって行われる。従って、液体4の膜厚が厚いと弾性表面波のエネルギが液体4の表面に到達する前に減衰してしまい、霧化することができない。そこで、できるだけ液体の膜厚を薄くする必要がある。膜厚は、上述の距離gを調整することによって最適化することができる。
【0036】
また、液膜形成部材30によって覆われている膜形成隙間Gの上部からは霧化しないので、この部分を減らすことによって、効率的かつ安定に霧化することができる。これを説明する。液膜形成部材30が形成する膜形成隙間Gの形状は、y方向の長さaを櫛形電極21の幅と大体同じ長さとし、x方向の長さbを波長λの10倍以下とされている。つまり、これらの長さa,bは、b<a、の関係を満たしている。
【0037】
上述のような形状の膜形成隙間Gにより、弾性表面波wの進行方向xの、液膜形成部材30によって覆われた液体4の量を少なくし、幅方向yに薄く延ばして液体4の有効表面積を増大させることができるので、弾性表面波wのエネルギ損失を抑制し、液体4の供給量を少なくすることができると共に、効率的に大量の微細な粒に霧化することができる。
【0038】
膜形成隙間Gに液体4を供給する手段について説明する。また、液体供給手段3として、液体4の微小量を送るポンプを備えてもよく、毛細管現象を利用する方法としてもよい。毛細管現象を利用する場合に、液膜形成部材30を親水性部材にしたり、液膜形成部材30の表面に親水性薄膜をコーティングしたりすることが有効である。
【0039】
また、図1(a)(b)に示した液導出部材32は、極細パイプとすることができる。
その端部は、膜形成隙間Gに対向して開口させて直接その膜形成隙間Gに液体4を供給する構造や、液膜形成部材30の一部に液体4を垂らすと共に液膜形成部材30を介して膜形成隙間Gに液体4を供給する構造とすることができる。また、毛細管現象を利用する場合、液導出部材32の一部、特に端部などに、毛細管現象によって液体4を導く繊維部材や多孔部材を取り付けるようにしてもよい。これらの部材は、交換可能とすることが清潔さを保つために有効である。
【0040】
膜形成隙間Gに液体4を供給する点(液供給点)は、液膜形成部材30によって形成される膜形成隙間Gの一部に少なくとも1箇所以上設ける。その位置は、膜形成隙間Gの中央であっても端であってもよい。液膜形成部材30の長さを、膜形成隙間Gの長さaや櫛形電極21の幅よりも長くし、端から液体4を供給すれば、弾性表面波wの進行を妨げることなく、また、霧化を邪魔することがない。
【0041】
上述のような膜形成隙間Gを形成する液膜形成部材30を備えた弾性表面波霧化装置1によれば、膜形成隙間Gに液体4を膜状に分布させて表面張力によって保持させることにより、弾性表面波wがこの分布した液体4を通過する距離よりも、弾性表面波wの波面が液体4と相互作用する距離が長くなり、従って、広い面積で効率的に霧化することができる。すなわち、弾性表面波wの波面に沿って細長い液体分布を形成する液膜形成部材30によって、液体供給量と霧化量のバランスを保つと共に、霧化に関与しない液体4の存在を抑えることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を安定に噴霧できる。
【0042】
次に、図3(a)〜(g)、図4(a)(b)を参照して、第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1に用いられる液膜形成部材30の種々の変形例を説明する。これらの図に示す液膜形成部材30は、振動子2の表面Sと表面Sに対向する液膜形成部材30の面とによって膜形成隙間Gを形成し、膜形成隙間Gに表面張力によって液体4を保持する。これらの液膜形成部材30は、保持される液体4が、薄く分布され、また、液膜形成部材30によって覆われる表面積を抑制して、液滴が離脱飛翔する表面積を広くされることを意図するものである。
【0043】
また、図3(a)(b)に示す液膜形成部材30は、図4(a)(b)に示すように、振動子2の表面Sに向けて開口する複数の微小貫通孔33を有する中空部材を用いて、中空部に液体を通すと共に微小貫通孔33から液体を供給するものである。このような液膜形成部材30によって、容易に安定に液体を供給することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
図5(a)(b)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図6(a)(b)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第2の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の実施形態の弾性表面波霧化装置1とは、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gの表面Sに対する平面構造が異なっており、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液体供給手段3(図1(a)(b)参照、以下同様)は、局在した供給点Pから膜形成隙間Gに液体を供給し、液膜形成部材30は、供給点Pから離れるほど弾性表面波wの進行方向下流側、すなわち方向x側に位置するように膜形成隙間Gを形成している。
【0045】
図5(a)(b)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、端部に供給点Pが配置された直線形状であって、櫛形電極21に対して斜めに配置されている。また、図6(a)(b)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、その中央部に供給点Pが配置され、供給点Pの位置で上流側に屈曲した形状となっている。そして、これらの液膜形成部材30の形状に対応して、膜形成隙間Gが振動子2の表面Sに形成される。
【0046】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、弾性表面波wの進行方向上流側から供給された液体が、弾性表面波wによって、膜形成隙間Gに沿って下流側に輸送される。この輸送は、霧化に使われなかった弾性表面波エネルギによって、液体供給量を自動調整するように行われるので、液体供給量と霧化量のバランスを安定に保って、液膜の薄い範囲を広げることができ、より少ない消費電力で大量の微細粒子を噴霧できる。
【0047】
(第3の実施形態)
図7(a)(b)(c)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図8(a)(b)(c)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第3の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の実施形態の弾性表面波霧化装置1とは、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gの表面Sに対する立体構造が異なっており、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液体供給手段3は、局在した供給点Pから膜形成隙間Gに液体を供給し、液膜形成部材30は、供給点Pから離れるに従って隙間が狭くなるように膜形成隙間Gを形成している。
【0048】
図7(a)(b)(c)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、端部に供給点Pが配置された外形が直線形状であって、表面Sとの隙間が、供給点Pのところで大きくされている。また、図8(a)(b)(c)に示す弾性表面波霧化装置1の液膜形成部材30は、図7(a)(b)(c)に示した液膜形成部材30を、さらに、上述の第2の実施形態の液膜形成部材30と同様に、櫛形電極21に対して斜めにして、配置されている。
【0049】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、表面張力と毛細管現象とによって、供給点Pに供給された液体を供給点Pから離れた部分に輸送することができるので、液膜の供給を強制的に送る手段が不要になり、コンパクトな構造で液膜の薄い範囲を広げ大量に効率的に霧化することができる。
【0050】
(第4の実施形態)
図9(a)(b)は第4の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図10(a)(b)、図11(a)(b)は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。これらの弾性表面波霧化装置1は、液膜形成部材30を、振動子2の表面Sとの相対位置を変化させて膜形成隙間Gの空間形状を変化させる不図示の隙間変化手段を備えており、この点が上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1と異なり、他の点は同様である。
【0051】
上述の隙間変化手段は、膜形成隙間Gの空間形状、すなわち表面Sに対する配置や膜形成隙間Gの容積を変化させることにより、その膜形成隙間Gに保持させる液体の量、厚み、表面積等を変化させて霧化量を調整する。
【0052】
図9(a)(b)に示す液膜形成部材30は、表面Sとの距離が変化されるものであり、図10(a)(b)、図11(a)(b)に示す液膜形成部材30は、表面Sに対する平面的配置、従って櫛形電極21との平行度が変化されるものである。
【0053】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、弾性表面波wを生成するための電源電圧値を変化することなく容易に霧化量を調整することができる。一般に、霧化量の調整方法として、弾性表面波の振幅を増大させる方法がある。振幅の調整は櫛形電極への入力電源の電圧調整で行われるが、電圧を大きくし過ぎると圧電材料に熱が蓄積して振動子2が割れることがある。また、振幅調整によって霧化量を微小調整することは難しい。
【0054】
本実施形態の弾性表面波霧化装置1では、液膜形成部材30の位置や姿勢を変えることにより、液体を薄く広げて霧化量を増やしたり、逆に減らしたりして、微小に霧化量を調整することができる。また、霧化中に液膜形成部材30の位置や姿勢を調整することにより、表面S上における発熱場所を変えることができるので、熱の局在によって振動子2を割ってしまうことを回避できる。
【0055】
(第5の実施形態)
図12(a)(b)は第5の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図13は弾性表面波霧化装置1の要部を示し、図14は前記弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この第5の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gを複数備えたものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30は、弾性表面波進行方向xに沿って2つ設けられている。弾性表面波進行方向xの上流側の液膜形成部材30に対して液体4を供給し、上流側の液膜形成部材30部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体4が下流側の液膜形成部材30に対して供給される。
【0056】
図14に示す弾性表面波霧化装置1は、上流側の液膜形成部材30と表面Sとの隙間g1よりも、下流側の液膜形成部材30と表面Sとの隙間g2の方が狭く、g2<g1、とされている。このような構成により、下流の液膜形成部材30が、より少ない液体を捕捉し易くなる。
【0057】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、新たな液体の供給点を設けることなく、コンパクトな構造で大量に霧化することができる。また、上流側の液膜形成部材30部分で消費されなかった弾性表面波wを下流側の液膜形成部材30部分、または液体4の輸送途中において利用できるので、エネルギ効率良く霧化できる。液膜形成部材30は、2つ以上設けることができる。
【0058】
(第6の実施形態)
図15(a)(b)は第6の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図16は弾性表面波霧化装置1の要部を示す。この第6の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、櫛形電極21を液膜形成部材30の両側に設けたものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、振動子2は、弾性表面波の進行方向線上(図15(a)のx軸方向)に互いに離間し対向して形成された櫛形電極21の2つの対(21A,21B)を備え、液膜形成部材30は櫛形電極21A,21Bの間に設けられ、膜形成隙間Gに供給する液体4が両側の櫛形電極21A,21Bからの(x1,x2方向からの)弾性表面波w1,w2によって霧化される。
【0059】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、1つの液膜形成部材30の両側から伝搬する弾性表面波によって液体4を霧化できるので、片側からだけの場合に比べて、より強力かつ大量に霧化できる。
【0060】
(第7の実施形態)
図17(a)(b)は第7の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図18は弾性表面波霧化装置1の要部を示す。この第7の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第6の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30を複数設けるものであり、他の点は同様である。すなわち、弾性表面波霧化装置1において、櫛形電極21A,21Bの間に液膜形成部材30を2つ設け、液体供給手段3は、それぞれの液膜形成部材30による膜形成隙間Gに液体4を供給する。
【0061】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、複数の液膜形成部材30部分および各部材間の表面領域において、弾性表面波w1,w2のエネルギを液体4に吸収させて霧化することができるので、エネルギと液体を無駄にすることなく、安定に効率良く液体4を霧化できる。
【0062】
図18において、左からx1方向に進行する弾性表面波w1は、左方の液膜形成部材30に供給された液体4を霧化する。右からx2方向へ進行する弾性表面波w2は右方の液膜形成部材30に供給された液体4を霧化する。左右の液膜形成部材30に供給された液体4の量に過多がある場合、多い方の液体4が分離されて少ない方の液膜形成部材30に向けて輸送される。このように、液体4が自動的に動いて液体量のバランスが取られると共に、離された液体4が、移動中に霧化されるので、安定に効率良く霧化できる。
【0063】
(第8の実施形態)
図19(a)(b)は第8の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示し、図20(a)〜(g)は弾性表面波霧化装置1で用いられる液膜形成部材30の変形例を示す。この第8の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第7の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、液膜形成部材30を一体化したものであり、他の点は同様である。一体化した液膜形成部材30の他の例として、図20(a)〜(g)に示すようなものがあげられる。
【0064】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、液膜形成部材30、従って膜形成隙間Gを振動子2の表面S上でひと繋がりのものとできるので、液膜形成部材30に沿って液体を広げることができ、より大量の霧化ができる。また、液膜形成部材30の部品点数を減らすことができる。
【0065】
(第9の実施形態)
図21は第9の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。この第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、液膜形成部材30を取り囲むように櫛形電極21を複数設けたものであり、他の点は上述の第8の実施形態の弾性表面波霧化装置1などと同様である。
【0066】
図21に示す弾性表面波霧化装置1における振動子2は、櫛形電極21A,21Cの組、および櫛形電極21B,21Dの組という2つの組を、弾性表面波進行方向を異ならせて備えている。つまり、各櫛形電極21A,21B,21C,21Dは、それぞれ、x1,y2,x2,y1方向に進行する弾性表面波w1,w4,w2,w3を生成する。これらの弾性表面波w1,w4,w2,w3は、振動子2の中央部分に設けられた液膜形成部材30による膜形成隙間G(不図示)に向けて進行する。
【0067】
液膜形成部材30は、渦巻状に一体化された形状を有し、その下部に形成される膜形成隙間Gも同様の形状に形成される。この、液膜形成部材30における、各櫛形電極21A〜21Dに対向する位置に液体の供給点P(不図示)を設けることにより、それぞれの液膜形成部材30部分で液体が霧化される。液膜形成部材30における外周部で霧化されなかった液体は、各弾性表面波w1〜w4によって渦巻状の液膜形成部材30の中心部側に輸送されると共に霧化される。
【0068】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、膜状に分布させた液体4に対して、周囲から弾性表面波w1〜w4を送り込むことができるので、コンパクトで強力な霧化が可能となる。
【0069】
図22は上述の弾性表面波霧化装置1の変形例を示す。この弾性表面波霧化装置1は、図21の弾性表面波霧化装置1における液膜形成部材30を回転させ、各櫛形電極21A〜21Dに対向する液膜形成部材30部分を斜めに配置して、図5(a)に示した第2の実施形態における弾性表面波による液体の輸送効果を組み入れたものである。この構成によると、液膜形成部材30の最外部の端部に液体の供給点Pを設けて、ここから液体を供給すれば、矢印Rで示すように、液体が液膜形成部材30に沿って輸送される。
【0070】
(第10の実施形態)
図23は第10の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。この第10の実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1における各櫛形電極21A〜21Dを、振動子2における中心軸(液膜形成部材30の中心軸)を外して配置し、液膜形成部材30を略四角形とし、液体の供給点Pを液膜形成部材30の角部に配置したものであり、他の点は第9の実施形態の弾性表面波霧化装置1と同様である。
【0071】
この弾性表面波霧化装置1は、互いに対向して組を成す櫛形電極21A,21C、櫛形電極21B,21D、を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして、全体として、中央の液膜形成部材30によって膜状に分布させれた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻状に送り込む構成となっている。この構成によると、1つの供給点Pから供給した液体を、液膜形成部材30の回りで循環させて広げることができる。すなわち、この構成は、上述の図22に示した弾性表面波霧化装置1が、渦巻状の液膜形成部材30によって液体を循環させるのに対して、渦巻状に分布する弾性表面波によって循環させるものである。
【0072】
上述の循環は以下のように行われる。例えば、櫛形電極21Aからx1方向に進行する弾性表面波は、液膜形成部材30の対向する辺3aに保持された液体を霧化すると共に、辺3bに保持された液体を辺3bに沿ってx1方向に輸送する。また、櫛形電極21Bからy2方向に進行する弾性表面波は、液膜形成部材30の対向する辺3bに保持された液体を霧化すると共に、辺3cに保持された液体を辺3cに沿ってy2方向に輸送する。以下同様にして、液膜形成部材30に保持された液体は、矢印Rで示すように、液膜形成部材30に沿って循環する。
【0073】
上述のような弾性表面波霧化装置1によれば、膜状に分布させた液体に対して、弾性表面波を周囲から渦巻き状に送り込むことができ、液体を、液膜形成部材30に沿って広げると共に、液体を洪給しながら霧化し、霧化されない残りの液体は循環させながら搬送し、搬送中に液体を霧化することができるので、大量の液体を、効率的かつ安定に霧化することができる。
【0074】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、振動子2は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよいので、その面形状は、平面の他に、円柱面やさらに一般的な曲面からなる面形状とすることができる。また、霧化するための液体を膜形成隙間Gに表面張力によって保持できるので、膜形成隙間Gを水平に保つ必要がなく、任意の形状面から、液体粒子を脱離飛翔させて霧化することができる。そこで、垂直円筒の内面や外面から霧化する振動子2を備えた弾性表面波霧化装置1としてもよい。
【0075】
また、液膜を広げる振動子2の表面Sを親水性処理することによって、より薄い液膜を形成して霧化効率を上げるようにしてもよい。また、複数の櫛形電極21を用いる場合、これらを交互、または順番に動作、停止させることにより、熱負荷の集中を回避して高パワーで運転するようにしてもよく、また、渦巻状の液体循環を効率的に行うようにしてもよい。また、上述した複数の櫛形電極21を用いる場合において、それぞれの櫛形電極21A,21B等に、高周波電圧印加用の電気回路23を接続した例を図示したが、これらの電気回路23は、共用とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図2】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図3】(a)〜(g)は同上弾性表面波霧化装置における液膜形成部材の種々の変形例を示す要部断面図。
【図4】(a)は同上弾性表面波霧化装置における液膜形成部材の他の変形例を示す要部縦断面図、(b)は同横断面図。
【図5】(a)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図6】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図7】(a)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図、(c)は同正面図。
【図8】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図、(c)は同正面図。
【図9】(a)は第4の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図10】(a)は同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図11】(a)は同上弾性表面波霧化装置の他の変形例を示す平面図、(b)は同側面図。
【図12】(a)は第5の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図13】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図14】同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す側面図。
【図15】(a)は第6の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図16】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図17】(a)は第7の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図18】同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材を含む要部断面図。
【図19】(a)は第8の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図、(b)は同側面図。
【図20】(a)〜(g)は同上弾性表面波霧化装置の液膜形成部材の種々の変形例を示す平面図。
【図21】第9の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図。
【図22】同上弾性表面波霧化装置の変形例を示す平面図。
【図23】第10の実施形態に係る弾性表面波霧化装置の平面図。
【符号の説明】
【0077】
1 弾性表面波霧化装置
2 振動子
3 液体供給手段
4 液体
21,21A〜21D 櫛形電極
30 膜形成部材
w,w1〜w4 弾性表面波
G 膜形成隙間
P 供給点
S 表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の櫛形電極が形成された圧電材料から成り、前記櫛形電極に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子と、前記振動子の表面に液体を供給する液体供給手段と、を備え、前記液体供給手段によって前記振動子の表面に供給される液体を前記表面に生成される弾性表面波によって霧化する弾性表面波霧化装置において、
前記液体供給手段は、前記振動子の表面に対向して配置され、供給液体を前記振動子の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間を形成する液膜形成部材を備え、
前記液膜形成部材の膜形成隙間の形状が、前記振動子の表面に生成される弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されていることを特徴とする弾性表面波霧化装置。
【請求項2】
前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるほど弾性表面波の進行方向下流側に位置するように前記膜形成隙間を形成していることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項3】
前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるに従って隙間が狭くなるように前記膜形成隙間を形成していることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項4】
前記液膜形成部材は、前記振動子の表面との相対位置を変化させることにより前記膜形成隙間の形状を変化させて霧化量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項5】
前記液膜形成部材は、弾性表面波進行方向に沿って複数設けられ、前記液体供給手段は、弾性表面波進行方向の上流側の液膜形成部材に対して液体を供給し、前記上流側の液膜形成部材部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体が下流側の膜形成部材に対して供給されることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項6】
前記振動子は、弾性表面波の進行方向線上に互いに離間し対向して形成された前記櫛形電極の2つの対を備え、前記液膜形成部材は前記櫛形電極の2つの対の間に設けられ、前記膜形成隙間に供給する液体が両側の櫛形電極からの弾性表面波によって霧化されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項7】
前記櫛形電極の2つの対の間に前記液膜形成部材を複数設け、前記液体供給手段は、前記複数の液膜形成部材による膜形成隙間に液体を供給することを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項8】
前記複数の液膜形成部材が一体的に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項9】
前記振動子は、前記櫛形電極の2つの対から成る組を弾性表面波進行方向を異ならせて複数組備えることを特徴とする請求項8に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項10】
前記互いに組を成す櫛形電極の対を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして形成したことを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項1】
一対の櫛形電極が形成された圧電材料から成り、前記櫛形電極に高周波電圧を印加することにより弾性表面波が生成される振動子と、前記振動子の表面に液体を供給する液体供給手段と、を備え、前記液体供給手段によって前記振動子の表面に供給される液体を前記表面に生成される弾性表面波によって霧化する弾性表面波霧化装置において、
前記液体供給手段は、前記振動子の表面に対向して配置され、供給液体を前記振動子の表面に膜状に分布させるための膜形成隙間を形成する液膜形成部材を備え、
前記液膜形成部材の膜形成隙間の形状が、前記振動子の表面に生成される弾性表面波の進行方向に直交する幅方向の長さよりも、前記弾性表面波の進行方向の長さを短く形成されていることを特徴とする弾性表面波霧化装置。
【請求項2】
前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるほど弾性表面波の進行方向下流側に位置するように前記膜形成隙間を形成していることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項3】
前記液体供給手段は、局在した供給点から前記膜形成隙間に液体を供給し、前記液膜形成部材は、前記供給点から離れるに従って隙間が狭くなるように前記膜形成隙間を形成していることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項4】
前記液膜形成部材は、前記振動子の表面との相対位置を変化させることにより前記膜形成隙間の形状を変化させて霧化量を調整することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項5】
前記液膜形成部材は、弾性表面波進行方向に沿って複数設けられ、前記液体供給手段は、弾性表面波進行方向の上流側の液膜形成部材に対して液体を供給し、前記上流側の液膜形成部材部分で霧化できずに弾性表面波によって搬送された液体が下流側の膜形成部材に対して供給されることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項6】
前記振動子は、弾性表面波の進行方向線上に互いに離間し対向して形成された前記櫛形電極の2つの対を備え、前記液膜形成部材は前記櫛形電極の2つの対の間に設けられ、前記膜形成隙間に供給する液体が両側の櫛形電極からの弾性表面波によって霧化されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項7】
前記櫛形電極の2つの対の間に前記液膜形成部材を複数設け、前記液体供給手段は、前記複数の液膜形成部材による膜形成隙間に液体を供給することを特徴とする請求項6に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項8】
前記複数の液膜形成部材が一体的に構成されていることを特徴とする請求項7に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項9】
前記振動子は、前記櫛形電極の2つの対から成る組を弾性表面波進行方向を異ならせて複数組備えることを特徴とする請求項8に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項10】
前記互いに組を成す櫛形電極の対を弾性表面波の進行方向に直交する幅方向に沿って互い反対向きにずらして形成したことを特徴とする請求項9に記載の弾性表面波霧化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
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【図20】
【図21】
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【公開番号】特開2008−104974(P2008−104974A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291277(P2006−291277)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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