説明

弾性表面波霧化装置

【課題】弾性表面波霧化装置において、簡単でしかもコンパクトな構成により、霧化時に供給液体にガスやイオンを溶存させ、新たな効能を付加した霧を生成することを可能とする。
【解決手段】本装置1は、弾性表面波Wを生成するためのパターン電極2が形成された圧電材料から成る振動子3を備え、パターン電極2に高周波電圧を印加することにより生成される弾性表面波Wによって、その弾性表面波Wが伝播する振動子3の表面Sに供給される液体Lを微粒子Mとして飛翔させて霧化する装置であり、液体Lを電気分解するための一対の電極4を振動子3上に備え、電気分解用の電極4間と振動子3の表面Sとの間に、供給された液体Lを、その表面張力を利用して保持する。これにより、霧化に際して、電極4間に電圧を印加することにより、霧化するその場で液体Lにガスやイオンを溶存させて新たな効能を付加した霧を生成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波を用いた霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波が伝搬している圧電材料などからなる基板の表面に液体を供給すると、液体が弾性表面波のエネルギを受け取って流動したり、振動したりして、微小粒子となって飛翔する現象が知られている。この現象を利用して液体を霧化する装置が種々提案されている。このような弾性表面波を用いた霧化装置において、供給液体を振動子の表面に膜状に分布させる膜形成隙間を形成する液膜形成部材を備えて液体を薄く延ばすと共に、液体供給量と噴霧量とのバランスを良好に保つようにして、安定した霧化を小電力で効率的に行うようにした弾性表面波霧化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−104974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような弾性表面波霧化装置においては、供給液体をそのまま霧化するものであり、霧化に際して供給液体に新たな効能を付加することが望まれる。例えば、従来から、健康増進等を目的として、水を電気分解することによって生じる水素ガスを溶存させた水素水や、酸素ガスを溶存させた酸素水を利用することが行われている。水素水は還元作用を有することからアンチエイジング効果や食品の長期保存効果を発揮することが期待され、酸素水は酸素を供給することにより細胞の酸素不足を解消し、疲労回復効果等を発揮することが期待されており、このような効能を付加して供給液体を霧化することが望まれる。また、液体にこのような効能を付加して霧化することのできる装置を多様な機器に組み込んで使い勝手よく用いるには、装置全体をコンパクト化することが望ましい。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、簡単な構成により、霧化に際して供給液体にガスやイオンを溶存させ、新たな効能を付加した霧を生成することができ、しかもコンパクトに構成される弾性表面波霧化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、弾性表面波を生成するためのパターン電極が形成された圧電材料から成る振動子を備え、前記パターン電極に高周波電圧を印加することにより前記振動子の表面に生成されて伝播する弾性表面波によって、前記振動子の表面における前記弾性表面波が伝播する領域に供給される液体を霧化する弾性表面波霧化装置において、前記供給される液体を電気分解するための一対の電極を前記振動子上に備え、前記電気分解用の電極間と前記振動子の表面との間に、前記供給された液体を、その表面張力を利用して保持するようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の弾性表面波霧化装置において、前記振動子の表面に対向して隙間を形成するように配置された液体保持部材を備え、前記電気分解用の電極は、前記弾性表面波の伝播方向に関して前記液体保持部材の前後に配置されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の弾性表面波霧化装置において、前記電気分解用の電極は、金属線によって形成されているものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置において、前記電気分解用の電極は、霧化に際して電圧を印加されることにより液体中に金属イオンを供給するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、簡単な構成により、電気分解するための一対の電極の間に安定的に液体を保持することができ、霧化に際して、その一対の電極間に電圧を印加することにより、霧化するその場で液体にガスやイオンを溶存させて新たな効能を付加した霧を生成することができ、しかもコンパクトに構成することができる。
【0011】
請求項2の発明によれば、さらに備えた液体保持部材によって液体の量をより適正に調節したり制限したりすることが容易にでき、また、液体量が適量とされるため、低電力で効率的かつ安定して電気分解したりイオン化したりすることができる。
【0012】
請求項3の発明によれば、例えば市販の金属線を用いて、電気分解するための電極を低コストで、簡単に製作することができる。
【0013】
請求項4の発明によれば、液体に液体以外の物質を霧化の場で溶存させて霧化することができ、アルカリ水、酸性水、水素含有水などによる効能以外の効能を付加した霧を生成することができ、しかもコンパクトに装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置についての模式的斜視図、(b)は同装置の弾性表面波伝播方向に沿った部分断面図。
【図2】(a)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置についての模式的斜視図、(b)は同装置の弾性表面波伝播方向に沿った部分断面図。
【図3】同装置の実施例の分解斜視図。
【図4】図3の装置の一部透視の組み立て斜視図。
【図5】(a)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置についての模式的斜視図、(b)は同装置の弾性表面波伝播方向に沿った部分断面図。
【図6】同装置の主要部の実施例の斜視図。
【図7】図6の液体保持部周辺の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係る弾性表面波霧化装置について、図面を参照して説明する。図1(a)(b)は第1の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。弾性表面波霧化装置1は、弾性表面波Wを励振して生成するためのパターン電極2が形成された圧電材料から成る振動子3を備え、パターン電極2に高周波電源10から高周波電圧を印加することにより振動子3の表面Sに生成され伝播する弾性表面波Wによって、表面Sにおける弾性表面波Wが伝播する領域に液供給部11から供給される液体Lを、微粒子Mとして飛翔させて霧化する。弾性表面波霧化装置1は、液体Lを電気分解するための一対の電極4を振動子3上に備えており、液供給部11によって供給される液体Lを、その表面張力を利用して電気分解用の電極4間と振動子3の表面Sとの間に保持する。電極4は、振動子3上に振動子3との間に若干の隙間をおいて保持される。その具体構成は後述する。電極4に接している液体Lは、電極4に直流電源12を接続することにより電気分解されて水素や酸素や含んだ状態とされ、その状態で弾性表面波Wによって霧化される。
【0016】
振動子3を構成する圧電材料は、例えば、LiNbO(ニオブ酸リチウム)のような圧電体そのものからなる基板である。また、圧電材料は、非圧電基板の表面に圧電薄膜、例えば、PZT薄膜(鉛、ジルコニューム、チタン合金薄膜)を形成したものでもよい。その表面の圧電体薄膜の表面部分において、弾性表面波が励振される。従って、振動子3を構成する圧電材料は、弾性表面波が励振される圧電体部分を表面に備えた基板であればよい。パターン電極2は、振動子3の表面Sに2つの櫛形の電極を互いに噛み合わせて形成した電極(交差指電極、IDT:インター・ディジタル・トランスジューサ)である。パターン電極2の互いに隣り合う櫛の歯は互いに異なる電極に属し、励振する弾性表面波Wの波長の半分の長さのピッチで配列されている。パターン電極2の2つの櫛形電極に高周波電圧印加用の高周波電源10から高周波(例えば、MHz帯)電圧を印加することにより、櫛形電極によって電気的エネルギが波の機械的エネルギに変換されて、表面Sに弾性表面波Wが励振される。弾性表面波Wの振幅は、パターン電極2に印加する電圧の大きさで決まり、励振された弾性表面波Wの波束の長さは、電圧の印加時間の長さに対応する。励振された弾性表面波Wは、パターン電極2の歯が交差した幅に対応する幅の波となって、櫛の歯に垂直な前後方向に伝播する。パターン電極2は、前後両側に伝播する弾性表面波を生成するので、表面Sにおける液体Lを供給される側とは反対側に反射用櫛形電極を配置してもよい。
【0017】
液供給部11は、弾性表面波Wが伝播する領域、すなわち、パターン電極2が形成された領域から離れた領域に液体Lを供給する。表面Sにおける液体Lを供給し保持する領域をパターン電極2から離れた位置とすることにより、パターン電極2の損傷を防ぎ、その寿命を延ばすことができる。液供給部11は、例えば、極細パイプや毛細管構造を有する多孔体などを液体Lが導出される液体供給口として備える。液体Lは、水、例えば水道水であり、液供給部11の液体供給口から滴下させたり、滲み出させたりして表面S上に供給される。なお、液体Lは単なる水に限らず、水に前もってオゾンなどのガスを溶存させたり、可溶物質を溶解させたりしたものや、水以外の任意の液体の混合物や溶液などとすることができる。純水に電解物質を入れて電解液として電気分解可能としたものでもよい。
【0018】
電極4は、2本の金属角棒を不図示の部材で保持して互いに並列させると共に、それぞれが表面Sとの間に一定の間隔を形成するように振動子3上に配置されている。電極4間の間隔および電極4と表面Sとの間隔は、電極4間に供給されて保持される液体Lの量と、その保持した液体Lがパターン電極2側に滲み出て霧化に消費される液体量との兼ね合いで決めればよい。電極4と表面Sとの間は、全面で離間している必要はなく、一部で互いに接触していてもよい。電極4を構成する2本の金属角棒は、直線形状である必要はなく、湾曲した形状や、V字状やW字状にジグザグに屈曲した形状や、これらの形状の複合した形状など、任意の形状とすることができ、一対の電極4が互いに等間隔で並列していなくてもよい。また、電極4が湾曲する場合の湾曲の方向は、パターン電極2に向かって凸でも凹でも、いずれの方向の湾曲でもよい。なお、表面Sを平面視した場合の一対の電極4の配置は、図1(a)に示すように、電極4の一方のみがパターン電極2に対向する配置(その電極4の周辺の液体にのみ弾性表面波Wが伝播してくる配置)が好ましいが、そのような配置構成は絶対的なものではなく、両電極4がパターン電極2に対向する配置でもよい。
【0019】
電極4の材質や、一対の電極4のうち、いずれを陽極にし、いずれを陰極にするかは、弾性表面波霧化装置1の用途に応じて適宜選択される。例えば、弾性表面波霧化装置1の用途が、水を電気分解することによって生じる水素ガスを溶存させた水素水による霧を発生する用途である場合には、パターン電極2側にある電気分解用の電極4を陽極としてこの電極4に接する部分の液体Lに水素ガスを発生させる。また、用途が、電気分解によって生じる酸素ガスを溶存させた酸素水による霧を発生する用途である場合には、パターン電極2側にある電気分解用の電極4を陰極としてこの電極4に接する部分の液体Lに酸素ガスを発生させる。このような液体Lの電気分解において、電極4の消耗を抑えたり、清潔度を維持したりするために、電極4の材質として、錆びにくく、イオン化傾向が低くて溶出しにくい金属、例えば、白金などを好適に用いることができる。また、積極的に液体L中に金属イオンを供給するために、電極4の材質として、イオン化傾向が高くてイオンが溶出し易い金属、例えば、銅、銀などから成る電極4をパターン電極2側に配置し、これを陽極としてもよい。なお、両電極4がパターン電極2に対向して両電極4周辺の液体に弾性表面波Wが伝播してくる配置の場合には、両電極4の材質や電圧印加の状態に応じて、イオンを含む霧や水素水や酸素水を含む霧が混在して発生する。
【0020】
本実施形態によれば、簡単な構成により、電気分解するための一対の電極4の間に液体Lを保持するので、安定的に液体Lを保持することができ、霧化に際して、その一対の電極4間に電圧を印加することにより、霧化するその場で、液体Lに水素ガスや酸素ガスを溶存させて、水素水の霧や酸素水の霧という、アルカリ水、酸性水、水素含有水などによる新たな効能を付加した霧を、自己完結的に、生成することができ、しかも装置をコンパクトに構成することができる。また、イオンが溶出し易い金属から成る電極4をパターン電極2側に配置し、これを陽極とすることにより、液体Lに液体以外の物質を溶存させて霧化することができ、アルカリ水、酸性水、水素含有水などによる効能以外の効能を付加した霧を生成することができる。金属イオン(水酸化物)を含む霧を発生させることにより、その霧の噴霧によって殺菌性を得ることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
図2(a)(b)は第2の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。本実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、振動子3の表面Sに対向して隙間を形成するように配置された液体保持部材5をさらに備え、電気分解用の電極4が、弾性表面波Wの伝播方向に関して液体保持部材5の前後に配置されているものであり、他は同様である。液体保持部材5は、表面Sに対向する面である底面が平面であり、この底面から立ち上がる両側壁面も平面であって底面と直交している。電極4は2本の金属角棒であって液体保持部材5の両側壁面にそれぞれ接着固定されている。液体保持部材5の底面と電極4の底面とは面一とされて、振動子3の表面Sとの間に一定の隙間を形成している。液供給部11によって供給される液体Lは、この一定の隙間に一定量となるように保持される。前記隙間への液体Lの供給は、例えば、液体保持部材5に表面Sに向かう貫通孔(不図示)を形成してその貫通孔から、または、液体保持部材5の端部側から、毛細管現象を利用して行うことができる。なお、液体保持部材5および電極4の構成は、図2(a)(b)に示す構成に限られず、上述した第1の実施形態における説明と同様に、湾曲や屈曲した形状構成とすることができる。また、金属角棒の電極4を液体保持部材5に接着固定せずに、金属板をはめ込みやねじ止めによって液体保持部材5に固定して電極4としたり、液体保持部材5の表面に金属膜を蒸着、スパッタ、めっきなどによって成膜して電極4としたりしてもよい。液体保持部材5そのものは、樹脂やセラミックスなどの絶縁材料を用いて構成される。本実施形態によれば、電気分解するための電極以外に備えた液体保持部材5によって、液体の量をより適正に調節したり制限したりすることが容易にでき、また、適量の液体に対して低電力で電気分解したりイオン化したりすることができ、効率的な霧化ができる。
【0022】
図3、図4は、第2の実施形態の実施例を示す。この弾性表面波霧化装置1は、振動子3と、電極4を有する液体保持部材5と、装置全体のベースとなる直方体の固定台6と、振動子3を下方から支持する基礎部材であり固定台6上の一端側に寄せて配置された支持プレート7と、液体溜め部81を有し固定台6上の他端側に寄せて配置された液体容器8と、振動子3上に装着される接点治具9と、を備えている。振動子3は、長方形の板状に形成され、弾性表面波Wを励振して生成するパターン電極2の他に、液体Lを供給される側とは反対方向に向かう弾性表面波を全反射させて有効利用するための反射用櫛形電極20を備えている。パターン電極2は、このような反射用櫛形電極20と組み合わされて、一方向にのみ伝搬する弾性表面波Wを生成する一方向性電極を構成する。振動子3は、支持プレート7に設けられた溝部71を橋渡しするように支持プレート7上に配置され、2本のネジ(不図示、他のネジも同様)を用いて支持プレート7に固定された接点治具9によって、支持プレート7に固定されている。
【0023】
接点治具9は、パターン電極2に電気接続して電圧を印加するための電極ピン14を有しており、パターン電極2の上方から振動子3上に装着されることにより、固定と電気接続とがなされる。なお、接点治具9における振動子3との対向面には、弾性表面波Wの励振と伝搬を妨げないように凹部が形成されている。振動子3における液体供給と霧化とが行われる領域は、支持プレート7の溝部71の位置に設定されており、過剰の液体は溝部71から排出されてパターン電極2に至らないようになっている。液体保持部材5は、略棒状の部材の一端に、固定用孔を有する翼状部材を有し、翼状部材と固定用孔を介して2本のネジを用いて片持ち梁の状態で液体容器8に固定されている。液体保持部材5の多端(自由端)は、角板状であり、振動子3の表面Sに対向して隙間を形成するように立てた状態で配置され、その隙間が液体Lを保持する保持部を構成している。液体保持部材5の自由端側には電気分解用の板状の電極4が備えられ、電極4に電気接続された引き出し電極13が液体保持部材5の上面に備えられている。この液体保持部材5は液供給部11と一体構成されている。液供給部11は、液体容器8の液体溜め部81から振動子3の表面Sにおける保持部領域に液体Lを供給する。液供給部11の下方凸部は、液体溜め部81における液体(不図示)を吸上げ、その液体は、液体保持部材5の自由端側に移動供給される。液体の吸上げや移動は、例えば、液供給部11の表面に凹凸や多孔性を付与して発現するようにした毛細管現象が用いられる。本実施例の弾性表面波霧化装置1は、このような構成により、コンパクトな構成が実現されている。
【0024】
(第3の実施形態)
図5(a)(b)は第3の実施形態に係る弾性表面波霧化装置1を示す。本実施形態の弾性表面波霧化装置1は、上述の第2の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、電気分解用の電極4が金属線によって形成されているものであり、他は同様である。本図では、金属線から成る電極4が液体保持部材5の下面に配置されているが、液体保持部材5の側面に配置することもできる。また、液体保持部材5を用いずに、上述の第1の実施形態の弾性表面波霧化装置1において、金属線から成る電極4と振動子3の表面Sとの間に液体Lを保持するようにしてもよい。電極4を形成する金属線は、市販されている断面円形の種々のサイズ、および種々の材質のものを用途に応じて選択して用いることができる。また、電極4として断面が円形に限らず、市販に限らず、任意の金属線を用いることもできる。本実施形態によれば、入手容易な金属線を用いて、電気分解するための電極4を低コストで、簡単に製作することができる。
【0025】
図6、図7は、第3の実施形態の実施例を示す。この弾性表面波霧化装置1は、上述の図3、図4に示した弾性表面波霧化装置1において、液体保持部材5に上下方向の2つの貫通孔と下面においてこれらの貫通孔を接続する溝または切り欠き部とを設け、金属線を一方の貫通孔の上方から挿入し、下面の溝または切り欠き部に沿って配設し、他方の貫通孔を通って導出することによって、溝または切り欠き部における金属線を電極4とするものである。貫通孔から上方に出ている金属線の両端をネジ止め等により固定し、電気分解用の直流電源に電気接続することができる。このように、金属線の両端をネジ止め等によって容易に固定できるので、電極4を形成する金属線が消耗したり断線したりした場合に容易に交換することができる。本図では一対の電極4の一方を溝に、他方を切り欠き部に配置する構成を示しているが、両方とも溝に配設する構成にしたり、両方とも切り欠き部に配設する構成にしたりしてもよい。
【0026】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、一対の電極4に印加する電圧の正負を切り替える切り替えスイッチを備えるようにしてもよい。切り替えスイッチを用いて、酸素水による霧と、水素水による霧とを容易に切り替えることができる。また、電気分解するための一対の電極4を、平面視で内側電極と外側電極として、内側電極を外側電極が囲む構成とし、外側電極に対して、1方向に限らず2方向や多方向から弾性表面波Wを伝播させるようにしてもよい。この場合、パターン電極2は、外側電極に対して、1方向に限らず2方向や多方向に配置する。これにより、霧の発生量を増大することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 弾性表面波霧化装置
2 パターン電極
3 振動子
4 電気分解するための電極
5 液体保持部材
L 液体
S 表面
W 弾性表面波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性表面波を生成するためのパターン電極が形成された圧電材料から成る振動子を備え、前記パターン電極に高周波電圧を印加することにより前記振動子の表面に生成されて伝播する弾性表面波によって、前記振動子の表面における前記弾性表面波が伝播する領域に供給される液体を霧化する弾性表面波霧化装置において、
前記供給される液体を電気分解するための一対の電極を前記振動子上に備え、
前記電気分解用の電極間と前記振動子の表面との間に、前記供給された液体を、その表面張力を利用して保持するようにしたことを特徴とする弾性表面波霧化装置。
【請求項2】
前記振動子の表面に対向して隙間を形成するように配置された液体保持部材を備え、
前記電気分解用の電極は、前記弾性表面波の伝播方向に関して前記液体保持部材の前後に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項3】
前記電気分解用の電極は、金属線によって形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の弾性表面波霧化装置。
【請求項4】
前記電気分解用の電極は、霧化に際して電圧を印加されることにより液体中に金属イオンを供給することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の弾性表面波霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−101859(P2011−101859A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258091(P2009−258091)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】