説明

弾性部材、保持治具、一組の保持治具及び小型部品保持装置

【課題】交換作業性に優れると共に、交換された場合にも、柱体の小型部品を所望のように粘着保持することのできる弾性部材及び保持治具を提供すること、並びに、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の小型部品を移し替えることができ、リサイクル性に優れた一組の保持治具及び小型部品保持装置を提供すること。
【解決手段】柱体の小型部品を粘着保持する保持治具の弾性部材1であって、板状部材2と、板状部材2の一方の表面に設けられ、粘着力を有する第1の弾性層3と、板状部材2の他方の表面に設けられ、粘着力を有する第2の弾性層4とを備えて成ることを特徴とする弾性部材1、及び、治具本体と治具本体の表面に配置された弾性部材1とを備えた保持治具、並びに、この保持治具を二種備えた一組の保持治具、及び、一組の保持治具を備えた小型部品保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性部材、保持治具、一組の保持治具及び小型部品保持装置に関し、さらに詳しくは、交換作業性に優れ、柱体の小型部品を所望のように粘着保持することのできる弾性部材及び保持治具、並びに、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の柱体の小型部品を移し替えることができ、リサイクル性に優れた一組の保持治具及び小型部品保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、チップコンデンサ等の小型部品等を製造する際等に、この小型部品等を製造可能な小型部品用部材等をその表面に粘着保持することのできる保持治具が用いられている。例えば、特許文献1に記載の保持治具は、「少なくとも表面部が粘着性を有するゴム弾性材で形成され、その粘着力により小型部品をその弾性材表面において密着保持可能であることを特徴とする」(特許文献1の請求項1参照)。
【0003】
ところで、例えば、チップコンデンサを製造するには、チップコンデンサは角柱体又は円柱体等における軸線方向の両端部に電極を形成して成るから、チップコンデンサを製造する際に使用される保持治具には、その表面に粘着保持した、角柱体又は円柱体等の小型部品用部材の下端面に一方の電極を形成した後に、その小型部品用部材を前記保持治具から離脱し、次いで、電極を形成して成る端面を再び保持治具の表面に密着保持させる必要がある。この必要に応える発明として、例えば、特許文献2に記載された小型部品チップ用ホルダがある。この特許文献2に記載された小型部品チップ用ホルダは、「互いに対向する第1及び第2の端面を有する小型部品チップを保持するための小型部品チップ用ホルダにおいて、前記小型部品チップ用ホルダは、第1部材と第2部材とを含み、前記第1部材は、前記小型部品チップを保持するための第1の粘着面を備え、前記第2部材は、前記小型部品チップの前記第2の端面に粘着して前記小型部品チップを保持するための、前記第1の粘着面が与える粘着力よりも強い粘着力を与える第2の粘着面を備えることを特徴とする」(特許文献2の請求項1参照。)。
【0004】
これらの保持治具は、ある程度の剛性を有する板状の治具本体と、所望の粘着力を有する弾性部材とから成り、通常、弾性部材は治具本体の所定の位置に正確に固定される必要があるから、弾性部材は治具本体の表面に接着剤又は両面テープ等により固定される。
【0005】
ところが、保持治具は、小型部品等を粘着保持したまま、製造工程等に供されるから、保持治具に固定された弾性部材は汚染されやすく、また、劣化しやすい。そうすると、弾性部材は所望の粘着力を発揮することができず、小型部品等を所望のように粘着保持することができなくなるから、所望の粘着力を発揮することができなくなった弾性部材を備えた保持治具は、保持治具ごと交換されることになる。
【0006】
したがって、保持治具のうち、所望の粘着力を発揮することができなくなった弾性部材のみを交換することができれば、治具本体を再使用することができ、保持治具のコストを低減すると共に、優れたリサイクル性を実現することが可能になる。しかし、治具本体と弾性部材とを接着剤又は両面テープ等により固定せず、弾性部材の粘着力により治具本体に粘着固定して、弾性部材の取り外し容易性を確保する場合には、この弾性部材は通常ゴム弾性を有するから、新たな弾性部材を治具本体の所定の位置に正確に粘着固定することが難しいこと等によって、多数の小型部品等を所望のように粘着保持することができなくなることがあり、また、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の小型部品等を移し替えることができなくなることがある。
【0007】
【特許文献1】特公平7−93247号公報
【特許文献2】特許第2682250号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、交換作業性に優れると共に、交換された場合にも、柱体の小型部品を所望のように粘着保持することのできる弾性部材、及び、リサイクル性に優れ、柱体の小型部品を所望のように粘着保持することのできる保持治具を提供することを、目的とする。
【0009】
また、この発明は、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の柱体の小型部品を移し替えることができ、リサイクル性に優れた一組の保持治具、及び、この一組の保持治具を備えた小型部品保持装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、柱体の小型部品を粘着保持する保持治具の弾性部材であって、板状部材と、前記板状部材の一方の表面に設けられ、粘着力を有する第1の弾性層と、前記板状部材の他方の表面に設けられ、粘着力を有する第2の弾性層とを備えて成ることを特徴とする弾性部材であり、
請求項2は、治具本体と、治具本体における表面の少なくとも一部に配置された、請求項1に記載の弾性部材とを備えた保持治具であり、
請求項3は、請求項1に記載の第1の弾性部材を第1の治具本体の表面に前記第1の弾性層を介して粘着固定して成る第1の保持治具と、請求項1に記載の第2の弾性部材を第2の治具本体の表面に前記第2の弾性層を介して粘着固定して成る第2の保持治具とを有する一組の保持治具であり、
請求項4は、請求項3に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る弾性部材は、板状部材と第1の弾性層と第2の弾性層とを備えて成るから、第1の弾性層又は第2の弾性層によって小型部品を所望のように粘着保持することができると共に、第2の弾性層又は第1の弾性層によって治具本体に粘着固定されることができ、かつ、第1の弾性層と第2の弾性層との間に配置された板状部材によって、取扱性が低下するほどの、第1の弾性層及び第2の弾性層の伸び及び変形等を防止することができる。したがって、この発明によれば、交換作業性に優れると共に、交換された場合にも、小型部品を所望のように粘着保持することのできる弾性部材、及び、リサイクル性に優れ、小型部品を所望のように粘着保持することのできる保持治具を提供することができる。
【0012】
また、この発明に係る一組の保持治具は、第1の弾性層又は第2の弾性層を介して、この発明に係る弾性部材を治具本体に粘着固定して成る第1の保持治具及び第2の保持治具を備えているから、第1の保持治具及び第2の保持治具のリサイクル性に優れると共に、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の小型部品を移し替えることができる。したがって、この発明によれば、一方の保持治具から他方の保持治具へと多数の柱体の小型部品を移し替えることができ、リサイクル性に優れた一組の保持治具、及び、この一組の保持治具を備えた小型部品保持装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る弾性部材における第1の弾性層及び第2の弾性層に粘着保持される小型部品は、柱体の小型部品であり、このような小型部品そのもの、及び、このような小型部品を製造することのできる、柱体の小型部品製造用部材等が挙げられる。したがって、この発明においては、柱体の小型部品と柱体の小型部品製造用部材とは明確に区別される必要はない。柱体の小型部品及び柱体の小型部品製造用部材としては、多角柱体、円柱体及び楕円柱体、並びに、これら柱体の一部例えば端部に鍔部を備えた柱体、例えば、I字型柱体、H字型柱体等が挙げられる。このような小型部品及び小型部品製造用部材として、具体的には、小型器具及び小型器具製造用部材、小型機械要素及び小型機械要素製造用部材、並びに、小型電子部品及び小型電子部品製造用部材等が挙げられ、より具体的には、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ、コイルフィルター等の完成品若しくは未完成品等、及び/又は、これらを製造することのできる柱体の部材等が挙げられる。柱体の小型部品(以下、単に小型部品と称することがある。)は、後述する第1の弾性層及び第2の弾性層に粘着保持される少なくとも1つの被粘着端面を有している。
【0014】
この発明に係る一実施例である弾性部材を、図を参照して、説明する。この弾性部材1は、図1及び図2に示されるように、板状部材2と、板状部材2の一方の表面に設けられ、粘着力を有する第1の弾性層3と、板状部材2の他方の表面に設けられ、粘着力を有する第2の弾性層4とを備えて成る。換言すると、弾性部材1は、粘着力を有する第1の弾性層3と粘着力を有する第2の弾性層4との間に板状部材2が介在してなる積層体である。そして、この弾性部材1は、第1の弾性層3によって後述する治具本体に粘着固定され、第2の弾性層4によって柱体の小型部品を粘着保持するように、構成され、又は、第2の弾性層4によって後述する治具本体に粘着固定され、第1の弾性層3によって柱体の小型部品を粘着保持するように、構成される。弾性部材1は、後述する保持治具を構成する弾性部材等として好適に使用される。
【0015】
弾性部材1は、後述する保持治具を構成する治具本体に粘着固定され、小型部品を粘着保持することができる限り、種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、弾性部材1は、図1及び図2に示されるように、方形を成す盤状体に形成されている。この弾性部材1における寸法の一例として、例えば、110mm×110mmの寸法を挙げることができる。弾性部材1は、均一な厚さを有しているのが好ましく、その厚さは、例えば、0.5〜5mmであるのが好ましく、1〜2mmであるのが特に好ましい。
【0016】
この弾性部材1は、前記構成を有するから、特に、板状部材2が第1の弾性層3と第2の弾性層4との間に介在してなる積層体であるから、第1の弾性層3と第2の弾性層4とがゴム弾性を有していても、取扱性が低下するほどの、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の伸び及び変形等を防止することができる。
【0017】
例えば、弾性部材1は、その引張強さ(JIS K6249、引張速度500mm/min)が1〜20MPaであるのがよく、1〜10MPaであるのが特によい。また、弾性部材1は、その切断時伸び(JIS K6249、引張速度500mm/min)が0〜100%であるのがよく、0〜50%であるのが特によい。引張強さ及び切断時伸びは、板状部材2の材質に大きく影響されるが、弾性部材1の引張強さ及び/又は切断時伸びが前記範囲内にあると、小型部品の粘着保持及び脱離を繰り返し行っても亀裂及び破損等が生じにくくなり、弾性部材1の耐久性に優れる。
【0018】
そして、このような構成を有する弾性部材1は、伸びにくく、また変形等もしにくいから、後述する治具本体に粘着固定させる際の取扱性がよく、弾性部材1の交換作業性に優れる。また、同時に、弾性部材1が交換された場合にも、交換される前の弾性部材1が粘着固定されていた位置に、新たな弾性部材1を正確に粘着固定させることができるから、弾性部材1の位置精度が高く、小型部品を所望のように粘着保持するこができる。
【0019】
また、弾性部材1は、前記構成を有するから、第1の弾性層3と第2の弾性層4とが異なる材料で形成されていても、第1の弾性層3を形成する成分及び第2の弾性層4を形成する成分が、第1の弾性層3及び第2の弾性層4に移行することを防止することができ、第1の弾性層3と第2の弾性層4とにおける初期の粘着力を長期間にわたって維持することができる。
【0020】
すなわち、弾性部材1は、交換作業性に優れると共に、交換された場合にも、小型部品を所望のように粘着保持することができる。
【0021】
弾性部材1は、板状部材2と第2の弾性層4とが接着等により固定され、板状部材2と第1の弾性層3とが接着等により、又は、第1の弾性層3の粘着力で粘着固定されて、製造される。具体的には、弾性部材1は、板状部材2の両表面(必要により接着剤等が塗工されている)に、後述する材料で第1の弾性層3及び第2の弾性層4が形成されて、製造されればよく、例えば、板状部材2の両表面に後述する材料を塗工し、板状部材2と第1の弾性層3及び第2の弾性層4とを一体成形して、製造されてもよく、また、後述する材料を成形して第1の弾性層3及び第2の弾性層4を予め作製し、この第1の弾性層3及び第2の弾性層4を板状部材2の両表面に、必要により接着剤等により固定され、又は、粘着固定されて、製造されてもよい。なお、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の表面を研磨、研削又は切削等により、表面状態及び/又は厚さを均一にしてもよい。
【0022】
弾性部材1を構成する前記板状部材2は、第1の弾性層3と第2の弾性層4とを保持又は支持すると共に、第1の弾性層3と第2の弾性層4との間における含有成分の移行を防止する。板状部材2は、第1の弾性層3と第2の弾性層4とを保持又は支持することができる限り、種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、弾性部材1において、板状部材2は、図1及び図2に示されるように、方形を成す盤状体に形成されている。
【0023】
板状部材2における寸法の一例として、例えば、110mm×110mmの寸法を挙げることができる。板状部材2は、第1の弾性層3と第2の弾性層4とを保持又は支持可能な厚さを有していればよいが、弾性部材1の厚さを均一に調整することができる点で、板状部材2の表面は平滑であるのがよく、さらに、板状部材2は均一な厚さを有しているのがよい。板状部材2における厚さの一例として、例えば、0.01〜1mmの寸法を挙げることができる。
【0024】
板状部材2は、第1の弾性層3と第2の弾性層4とを保持又は支持可能な強度を有する材料により、製造される。このような材料としては、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板、和紙、合成紙及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに、布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びに、ガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。これらの中でも、第1の弾性層3と第2の弾性層4とを保持又は支持可能な強度を発揮すると共に軽量である点で、樹脂フィルム、樹脂板又は複合材料であるのが好ましく、特に、ポリイミド及びポリアミドの樹脂フィルム又は樹脂板であるのが特に好ましい。
【0025】
板状部材2は、第1の弾性層3と第2の弾性層4との密着性を向上させるために、第1の弾性層3と第2の弾性層4とが固定される表面に、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。
【0026】
弾性部材1を構成する前記第1の弾性層3及び前記第2の弾性層4は、後述する保持治具を構成する治具本体に弾性部材1を粘着固定することができるように、かつ、小型部品を粘着保持することができるように、設計されている。すなわち、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、後述する治具本体に弾性部材1を粘着固定することができ、かつ、小型部品を粘着保持することができる粘着力を有している。第1の弾性層3及び第2の弾性層4の粘着力については後述する。
【0027】
第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、少なくとも小型部品を粘着保持する表面、好ましくは両面における十点平均粗さRz(JIS B 0601−1994)が、例えば、5μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがさらに好ましく、0.5μm以下であるのが特に好ましい。表面における十点平均粗さRzが前記範囲内にあると、第1の弾性層3又は第2の弾性層4と板状部材2又は治具本体とを強固に粘着固定することができ、かつ、小型部品を強固に粘着保持して、保持治具の振動及びその他の原因による、小型部品の粘着保持位置のずれ、小型部品の脱落等を防止することができる。十点平均粗さRzは、カットオフ0.8mm、測定長さ2.4mm等の条件で測定する。前記表面の十点平均粗さRzは、例えば、第1の弾性層3及び第2の弾性層4を形成する際に用いる金型における製品部形成面のブラスト処理等により調整することができる。
【0028】
第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、少なくとも小型部品を粘着保持させる際に、わずかに陥没することのできる程度のゴム弾性、例えば、ヤング率が2MPa以下のゴム弾性を有しているのが好ましく、ヤング率が1.5MPa以下のゴム弾性を有しているのが特に好ましい。なお、この発明において、ヤング率の下限値は、1MPa程度であればよい。弾性層のヤング率は、単位断面積にかかる力ΔSと単位長さでの伸びΔaを測定し、式E=ΔS/Δa により求めることができる。ここで、前記式中、ΔSは、負荷F、無端ベルト1の厚さt及び幅wより、式ΔS=F/(w×t)で表され、Δaは、無端ベルト1の基準長さL、負荷をかけたときの無端ベルト1の伸びΔLより、Δa=ΔL/Lで表される。無端ベルト1のヤング率は、引張り試験機、例えば、商品名「MODEL−1605N」(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて、測定することもできる。また、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、少なくとも小型部品を粘着保持する表面、好ましくは両面における硬度(JIS K6253[デュロメータA])が、例えば、10〜40であるのが好ましく、20〜30であるのが特に好ましい。小型部品を粘着保持する表面が範囲内のゴム弾性及び/又は硬度を有していると、小型部品を所望のように粘着保持することができる。
【0029】
図1及び図2に示されるように、第1の弾性層3は、板状部材2の一方の表面に方形を成す盤状体に成形され、第2の弾性層4は、板状部材2の他方の表面に方形を成す盤状体に成形されている。第1の弾性層3及び第2の弾性層4における寸法の一例として、例えば、110mm×110mmの寸法を挙げることができる。第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、後述する治具本体に弾性部材1を粘着固定し、かつ、小型部品を粘着保持することができる点で、その表面が平滑であるのがよく、さらに、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、小型部品を起立状態に粘着保持することのできる均一な厚さを有しているのがよい。第1の弾性層3及び第2の弾性層4における厚さの一例として、例えば、0.25〜2mmの寸法を挙げることができる。
【0030】
第1の弾性層3及び第2の弾性層4のいずれか一方は他方よりも強い粘着力を有する。第1の弾性層3及び第2の弾性層4のいずれか一方の弾性層における粘着力が他方の弾性層における粘着力よりも強いと、一方の弾性層を介して後述する治具本体に弾性部材1を粘着固定させた場合に、他方の弾性層に粘着保持された小型部品を取り外すときに、弾性部材1が後述する治具本体から剥がれることがなく、他方の弾性層に粘着保持された小型部品を容易に取り外すことができると共に、再度、他方の弾性層に小型部品を粘着保持する際の位置精度を確保することができる。例えば、以下、第1の弾性層3における粘着力fが第2の弾性層4における粘着力fよりも強い場合を一例として説明するが、この発明においては、第2の弾性層4における粘着力が第1の弾性層3における粘着力よりも強くてもよい。前記一例においては、第1の弾性層3における粘着力fは、通常、25〜125g/mmであるのが好ましく、30〜75g/mmであるのがより好ましく、30〜50g/mmであるのが特に好ましく、一方、第2の弾性層4における粘着力fは、通常、1〜25g/mmであるのが好ましく、5〜20g/mmであるのがより好ましく、10〜20g/mmであるのが特に好ましい。そして、第1の弾性層3における粘着力fと第2の弾性層4における粘着力fとの差(f−f)は、例えば、5〜100g/mmであるのが好ましく、10〜75g/mmであるのがより好ましく、10〜40g/mmであるのが特に好ましい。
【0031】
ここで、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の粘着力f及びfは、以下のようにして求める。以下の粘着力の測定方法は、出願人により案出されたので、信越ポリマー法と称する。第1の弾性層3を例にして説明する。まず、第1の弾性層3を水平に固定する吸着固定装置(例えば、商品名:電磁チャック、KET−1530B、カネテック(株)製)又は真空吸引チャックプレート等と、測定部先端に、直径10mmの円柱を成したステンレス鋼(SUS304)製の接触子を取り付けたデジタルフォースゲージ(商品名:ZP−50N、(株)イマダ製)とを備えた荷重測定装置を用意する。次いで、この荷重測定装置における吸着固定装置又は真空吸引チャックプレート上に第1の弾性層3を固定し、測定環境を21±1℃、湿度50±5%に設定する。次いで、20mm/minの速度で第1の弾性層3の被測定部位に接触するまで前記荷重測定装置に取り付けられた前記接触子を下降させ、次いで、この接触子を被測定部位に所定の荷重で被測定部に対して垂直に3秒間押圧する。ここで、前記所定の荷重を25g/mmに設定する。次いで、180mm/minの速度で前記接触子を被測定部位から引き離し、このときに前記デジタルフォースゲージにより測定される引き離し荷重を読み取る。この操作を、被測定部位の複数箇所で行い、得られる複数の引き離し荷重を算術平均し、得られる平均値を第1の弾性層3の粘着力fとする。なお、この測定方法は、手動で行ってもよいが、例えば、テストスタンド(例えば、商品名:VERTICAL MODEL MOTORIZED STAND シリーズ、(株)イマダ製)等の機器を用いて、自動で行ってもよい。
【0032】
弾性部材1を単に小型部品を粘着保持する保持治具に用いる場合には、小型部品を写し替える必要はないから、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、前記した範囲のいずれかの粘着力に調整されればよく、前記範囲の粘着力の差(f−f)となるように、粘着力f及びfが調整されるのが好ましい。
【0033】
一方、弾性部材1を後述する一組の保持治具(例えば、図4等参照。)を構成する保持治具、すなわち、一方の保持治具から他方の保持治具へと小型部品を移し替えるのに使用される保持治具に用いる場合には、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、前記範囲の粘着力及び前記範囲の粘着力の差に加えて、以下の条件を満たすように、粘着力f及びfが調整されるのが特に好ましい。第1の弾性層3及び第2の弾性層4に粘着保持させる小型部品の数をN及びN(通常N=N)とし、小型部品における被粘着端面の表面積をStx(xは小型部品の数であり、1以上の整数である。)で示し、第1の弾性層3及び第2の弾性層4と治具本体との粘着面積をS及びSで示す。例えば、図9に示されるように、第1の弾性層3Aによって第1の弾性部材1Aが第1の治具本体6Aに粘着固定された第1の保持治具5Aから第2の弾性層4Bによって第2の弾性部材1Bが第2の治具本体6Bに粘着固定された第2の保持治具5Bへと小型部品30を移し替えるときに、第1の弾性層3A及び第2の弾性層4Bが治具本体6A又は6Bから剥離すると、小型部品30を所望のように移し替えることができなくなるから、第1の弾性層3A及び第2の弾性層4Bと治具本体6A及び6Bとの粘着強度F及びF(図9に図示しない。)はそれぞれ、第2の弾性層4A及び第1の弾性層3Bと小型部品30との粘着保持強度の和F及びF(図9に図示しない。)よりも大きく設定される。また、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bへと小型部品30を移し替えるには、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aと小型部品30との粘着保持強度の和Fは、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bと小型部品30との粘着保持強度の和Fよりも小さく設定される。すなわち、弾性部材1を後述する一組の保持治具を構成する保持治具に用いる場合には、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の粘着力f及びfは、前記各粘着保持強度がF>F>F>Fの関係を満足するように、調整される。換言すると、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の粘着力f及びfは、f×S>f×S>f×N×St>f×N×Stの関係を満足するように、調整される。したがって、第1の弾性層3及び第2の弾性層4の粘着力f及びfの調整は、前記関係を満足するように、S及びS、St及びSt並びにN及びNを考慮して、行われる。なお、この説明においては、第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bにおける第1の弾性部材1A及び第2の弾性部材1Bは同様に構成されている。
【0034】
第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、粘着力を有する粘着性材料、又は、この粘着性材料の硬化物により、前記粘着力等の条件を満足するように、形成される。第1の弾性層3及び第2の弾性層4を形成する粘着性材料及びその硬化物は、同種であっても、異種であってもよい。前記粘着材料として、例えば、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴム、フッ素系樹脂又はフッ素系ゴムを含有するフッ素系組成物、シリコーン樹脂又はシリコーンゴム、シリコーン樹脂又はシリコーンゴムを含有するシリコーン組成物、ウレタン系エラストマー、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合エラストマー等の各種エラストマー等が挙げられる。この中でも、シリコーンゴム、及び/又は、シリコーンゴムを含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物が好ましい。
【0035】
前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物としては、シリコーン生ゴム(a)と、架橋成分(b)と、粘着力向上剤(c)と、触媒(d)と、シリカ系充填材(e)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
【0036】
前記シリコーン生ゴム(a)としては、(RSiO2/2)単位(Rは、炭化水素基を表す。)を含み、置換基を有していてもよいポリジメチルシロキサンの長鎖重合体等であればよく、例えば、付加反応により架橋可能なポリオルガノシロキサンを用いることができ、より具体的には、アルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、下記(1)式で示されるアルケニル基含有ポリオルガノシロキサンを好適に用いることができる。
【0037】
(3−a)SiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(3−b) (1)式
【0038】
ただし、(1)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有することのない1価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、Xはアルケニル含有有機基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、aは0〜3の整数、bは0〜3の整数、mは0以上の整数、nは100以上の整数であり、a、b及びmは同時に0とはならない。
【0039】
前記式(1)において、Rとしては、炭素数1〜10の前記炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられ、特にメチル基、フェニル基が好ましい。また、Xで示されるアルケニル基含有有機基としては、炭素数2〜10のアルケニル基含有有機基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の炭素二重結合含有炭化水素基、アクリロイルプロピル基、アクリロイルメチル基、メタクリロイルプロピル基、メタクリロイルメチル基等の(メタ)アクリロイルアルキル基、シクロヘキセニルメチル基、シクロヘキセニルエチル基、シクロヘキセニルプロピル基等のシクロアルケニルアルキル基、ビニルオキシプロピル基等を挙げることができる。
【0040】
シリコーン生ゴム(a)は、オイル状、粘土状の性状を有していてもよく、その粘度は25℃において50mPa・s以上であるのが好ましく、特に100mPa・s以上であるのが好ましい。
【0041】
シリコーン生ゴム(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
前記架橋成分(b)は、前記シリコーン生ゴム(a)と架橋反応可能な成分であり、例えば、1分子中にSi原子に結合したH原子を少なくとも2個以上、好ましくは3個以上有するSiH結合含有ポリオルガノシロキサン(以下、オルガノハイドロジェンポリシロキサンと称することもある。)を用いることができる。
【0043】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、分枝状、環状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中から適宜に選択して使用することができ、例えば、下記(2)式又は(3)式で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを好適例として挙げることができる。
【0044】
HcR(3−c)SiO−(HRSiO)−(RSiO)−SiR(3−d) (2)式
【0045】
【化1】

【0046】
前記(2)式及び(3)式において、Rは前記と同様の1価の炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。また、c及びdは0〜3の整数、x、y及びsは0以上の整数、rは1以上の整数であり、c、d及びxは同時に0とはならず、さらに、x+y≧0である。また、r+s≧3、好ましくは8≧r+s≧3である。
【0047】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの中でも、オイル状の性状を有し、粘度が25℃において1〜5000mPa・sであるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。
【0048】
架橋成分(b)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
架橋成分(b)の配合割合は、適宜に選択可能であるが、前記シリコーン生ゴム(a)がアルケニル基を含有すると共に、前記架橋成分(b)がSiH結合を含有する場合には、シリコーン生ゴム(a)中のアルケニル基に対する架橋成分(b)中のSiH結合のモル比が0.5〜20であるのが好ましく、特に1〜15の範囲であるのが好ましい。このモル比が0.5未満では、後述する硬化後の架橋密度が低くなり、弾性部材の形状を保持しにくくなることがある。一方、前記モル比が20を超えると、得られる弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0050】
前記粘着力向上剤(c)は、粘着力を向上するために配合される成分であり、例えば、ポリオルガノシロキサンを用いることができ、特に、RSiO1/2単位及びSiO単位(ただし、Rは脂肪族不飽和結合を有しない1価の炭化水素基である。)を含有するものを好適に用いることができる。ここで、Rとしては、炭素数1〜10の置換基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の直鎖又は分岐アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等を例示でき、特にメチル基、フェニル基が好ましい。
【0051】
粘着力向上剤(c)は、一般的に粘着性をより高度に確保するために、シリコーン生ゴム(a)及び架橋成分(b)とともに架橋反応を生じない、又は、生じ難い構造を有するものが好ましい。
【0052】
粘着力向上剤(c)としてポリオルガノシロキサンを用いる場合は、RSiO1/2単位/SiO単位のモル比が0.6〜1.7となるものが好ましい。このモル比が0.6未満では、弾性部材の粘着性が高くなり過ぎ、又はシリコーン生ゴム(a)と相溶し難くなって、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とが分離して粘着性を発現しなくなることがある。一方、前記モル比が1.7を超えると弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0053】
なお、このポリオルガノシロキサンは、Si原子に結合するOH基を含有していてもよく、その場合、OH基含有量が0〜4.0モル%であるのが好ましい。
【0054】
Si原子に結合するOH基を含有するものを用いる場合、前記シリコーン生ゴム(a)として、下記(4)式に示されるポリオルガノシロキサンを含有するときには、前記シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とが一部縮合反応物を形成していてもよい。
【0055】
(OH)RYSiO−(RXSiO)−(RSiO)−SiR(OH) (4)式
【0056】
ただし、(4)式中、Rは脂肪族不飽和結合を有することのない1価の前記炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、YはR又はアルケニル基含有有機基である。Xはアルケニル含有有機基である。また、pは1以上の整数、qは100以上の整数である。1価の炭化水素基及びアルケニル基含有有機基は前記したのと同様である。
【0057】
前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との縮合反応物を形成するには、トルエン等の溶剤に溶解したシリコーン生ゴム(a)及び粘着力向上剤(c)の混合物を、アルカリ性触媒の存在下で、室温乃至還流下で反応させればよい。
【0058】
粘着力向上剤(c)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
粘着力向上剤(c)は、シリコーン生ゴム(a)/粘着力向上剤(c)の質量比として20/80〜80/20の範囲で用いるのが好ましく、特に、30/70〜70/30とするのが好適である。この範囲を超えて粘着力向上剤(c)が少ないと粘着性が不足しやすくなり、一方、多いと弾性部材が硬くなるとともに弾性力が強く、弾性部材が変形し難くなり、何れにおいても、小型部品を粘着保持しにくくなることがある。
【0060】
前記触媒(d)は、主として、前記シリコーン生ゴム(a)と前記架橋成分(b)との架橋反応を促進する触媒であり、通常、ハイドロサイレーションの触媒として使用されるものであればよく、例えば、白金化合物等が挙げられる。白金化合物としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物等が挙げられる。
【0061】
触媒(d)の配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記架橋成分(b)との合計質量に対し、白金成分として1〜5,000ppmとするのが好ましく、特に5〜2,000ppmとすることが好適である。配合割合が1ppm未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなって弾性部材の粘着力が低下することがあり、一方、5,000ppmを超えると処理浴の使用可能時間が短くなる場合がある。
【0062】
前記シリカ系充填材(e)は、前記各成分とともに添加され、弾性部材の機械的強度を補強するとともに、弾性部材を構成する成分、特に、粘着性を付与する粘着力向上剤(c)を粘着層に分散させて、小型部品の確実な粘着保持に寄与する成分である。
【0063】
シリカ系充填材(e)としては、シリカ、石英紛、珪藻土等が挙げられるが、好ましくはシリカである。好適なシリカとしては、BET法により測定されるその比表面積が50m/g以上、好ましくは100〜400m/gのシリカを挙げることができる。このような比表面積を有するシリカが付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物に含まれていると、弾性部材の引っ張り強度等の機械的強度を向上させることができるとともに粘着性を付与する成分が脱離し難くなり、微細な削りカスやのり残りが生じ難くなる。なお、比表面積が400m/gを超えると、付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物の流動特性が低下することがあり、弾性部材の製造に時間がかかるとともにコストが増大することがある。
【0064】
シリカ系充填材(e)としては、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ等の乾式法により合成されたシリカ、沈降シリカ、シリカゲル等の湿式法により合成されたシリカを挙げることができる。これらの中でも、前記比表面積を有するシリカを得やすい点で、ヒュームドシリカ、沈降シリカが好ましい。
【0065】
シリカ系充填材(e)は、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。また、必要に応じて、シリカ系充填材(e)の表面を、例えば、オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等の表面処理剤で処理したものを用いてもよい。
【0066】
シリカ系充填材(e)の配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との合計100質量部に対して、1〜30質量部とするのが好ましく、5〜20質量部とするのがより好ましい。配合割合が1質量部未満であると、弾性部材の強度が低下して、十分な効果が得られ難くなり、また、使用時に微細な削りカスやのり残りが発生しやすくなることがある。一方、配合割合が30質量部を超えると、弾性部材の粘着力が低下することがある。
【0067】
さらに、この発明では、前記シリコーン生ゴム(a)から前記シリカ系充填材(e)の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。
【0068】
例えば、前記成分を混合する時の架橋反応を抑制するための反応制御剤を添加することができる。この反応制御剤としては、例えば、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0069】
この反応制御剤を添加する場合、その配合割合は、前記シリコーン生ゴム(a)と前記粘着力向上剤(c)との合計100質量部に対して、0〜5.0質量部とすることができ、特に0.05〜2.0質量部とするのが好ましい。この反応制御剤の配合割合が5.0質量部を超えると粘着性組成物の硬化時に硬化し難くなることがある。
【0070】
また、この反応制御剤の他にも、適宜、任意成分を添加することが可能であり、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等の非反応性のポリオルガノシロキサン、塗工の際の粘度を下げるための溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、ヘキサン、オクタン、イソパラフィン等の脂肪族系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤、染料、顔料等を使用することができる。
【0071】
前記シリコーン生ゴム(a)、架橋成分(b)、粘着力向上剤(c)、触媒(d)及びシリカ系充填材(e)を含有する組成物としては、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、前記シリカ系充填材(e)を含有しない組成物である信越化学工業株式会社製の商品名「KE1214」、「X−40−3098」等の「X−40系」及び「X−34−632A/B」等の「X−34系」組成物等が入手可能である。
【0072】
前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物は、シリコーン生ゴム(a)と、粘着力向上剤(c)と、シリカ系充填材(e)と、有機過酸化物(f)とを含有する粘着性組成物を挙げることができる。
【0073】
前記ゴムシリコーン生ゴム(a)としては、(RSiO2/2)単位(Rは、炭化水素基を表す。)を含み、置換基を有していてもよいポリシロキサンの長鎖重合体等であればよく、例えば、ポリジメチルシロキサン、その置換体等が挙げられる。このシリコーン生ゴム(a)の性状、粘度等は、前記付加反応硬化型粘着性組成物に含有されるシリコーン生ゴム(a)と基本的に同様である。シリコーン生ゴム(a)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0074】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物に含有される粘着力向上剤(c)及びシリカ系充填材(e)は、それぞれ、前記付加反応硬化型粘着性組成物に含有される粘着力向上剤(c)及びシリカ系充填材(e)と基本的に同様である。
【0075】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物に含有される有機過酸化物(f)は、主として、シリコーン生ゴム(a)同士を、又は、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)とを架橋させる硬化剤であり、例えば、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類等が挙げられる。有機過酸化物(f)としては、ジアシルパーオキサイド類が好ましく、ベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。
【0076】
有機過酸化物(f)の配合割合は、シリコーン生ゴム(a)と粘着力向上剤(c)との合計質量に対し、0.2〜5.0質量部とするのが好ましく、特に0.5〜2.5質量部とすることが好適である。配合割合が、0.2質量部未満では硬化性が低下して架橋密度が低くなって粘着層の粘着力が低下することがあり、一方、5.0質量部を超えると、粘着性組成物によって形成される弾性部材の硬度が高くなり、粘着力が低下するという欠点が生じる場合がある。
【0077】
過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物には、さらに、シリコーン生ゴム(a)、粘着力向上剤(c)、シリカ系充填材(e)及び前記有機過酸化物(f)の他に、適宜、任意成分を添加することが可能である。任意成分としては、前記付加反応硬化型粘着性組成物で例示した成分が挙げられる。
【0078】
このような過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物としては、適宜製造してもよく、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、前記有機過酸化物(f)を含有しない組成物である、信越化学工業株式会社製の商品名「KR−101−10」、「KR−120」、「KR−130」及び「KR−140」等が入手可能である。
【0079】
この付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物において、粘着力を調整するには、例えば、前記架橋成分(b)及び前記粘着力向上剤(c)の配合量を調整すればよく、また、過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物において、粘着力を調整するには、例えば、前記粘着力向上剤(c)の配合量を調整すればよい。また、粘着力を調整するには、例えば、粘着力の小さなゴム又はゴム組成物を添加してもよい。
【0080】
第1の弾性層3及び第2の弾性層4が前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物で形成される場合には、通常、80〜130℃で3〜40分加熱することにより、前記付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物を硬化させることができる。一方、第1の弾性層3及び第2の弾性層4が前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物で形成される場合には、通常、100〜150℃で5〜20分加熱することにより、前記過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物を硬化させることができる。なお、このようにして硬化された付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物及び過酸化物硬化型粘着性シリコーン組成物は、さらに、170〜220℃、2〜10時間の条件で二次加熱されてもよい。なお、第1の弾性層3及び第2の弾性層4は、必要により、その表面を研磨、研削又は切削等により、表面状態及び/又は厚さを均一にしてもよい。
【0081】
この発明における弾性部材は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、弾性部材1は、板状部材2と第1の弾性層3と第2の弾性層4とを積層してなる3層構造に形成されているが、この発明において、弾性部材は3層構造に限定されず、例えば、板状部材2と第1の弾性層3、及び/又は、板状部材2と第2の弾性層4の間に、プライマー層又は接着層等が介在した4層以上の構造に形成されてもよい。
【0082】
また、弾性部材1は、板状部材2と第1の弾性層3と第2の弾性層4とがいずれも同じ寸法に形成され、板状部材2の全面に第1の弾性層3と第2の弾性層4とを備えているが、板状部材2の形状は方形に限られず、例えば、長方形、円形、楕円形、流線形等であってもよく、また、板状部材2における表面の一部に、任意の形状に形成された第1の弾性層3及び/又は第2の弾性層4を備えていてもよい。例えば、板状部材2の寸法が第1の弾性層及び第2の弾性層の寸法よりも小さい場合には、弾性部材は、第1の弾性層と第2の弾性層との間に板状部材が埋め込まれて構成され、すなわち、第1の弾性層と第2の弾性層とで板状部材が被覆されて構成されてもよい。
【0083】
さらに、弾性部材1は、板状部材2の表面に、1つの第1の弾性層3と1つの第2の弾性層4とが形成されているが、この発明において、板状部材の表面に形成される第1の弾性層と第2の弾性層とはそれぞれ、1つに限られず、2つ以上であってもよい。また、この場合に、形成される複数の第1の弾性層又は第2の弾性層はそれぞれ粘着力が同一でも異なっていてもよい。
【0084】
また、板状部材2は、一層構造とされているが、この発明において、板状部材は、一層構造に限られず、二層以上の構造とされてもよい。
【0085】
また、弾性部材1は、板状部材2と第2の弾性層4とが接着固定され、かつ、板状部材2と第1の弾性層3とが第1の弾性層の粘着力で粘着固定されているから、第1の弾性層3と共にその全体が交換されてもよく、又は、第2の弾性層と板状部材とを第1の弾性層から剥がして、板状部材と第2の弾性層とが交換されてもよい。
【0086】
この発明において、第1の弾性層3及び/又は第2の弾性層4は、その判別を容易にする等の点で、着色されてもよく、互いに異なる色に着色されてもよい。第1の弾性層3及び第2の弾性層4を着色するには、例えば、前記粘着性材料等に、顔料、着色料等の着色剤を添加すればよい。
【0087】
この発明に係る一実施例である保持治具を、図を参照して、説明する。この保持治具5は、図3に示されるように、治具本体6と、治具本体6の表面に配置された弾性部材1とを備え、弾性部材1における第1の弾性層3によって、弾性部材1が治具本体6の表面に粘着固定されている。この保持治具5は、弾性部材1における第2の弾性層4によって、小型部品を粘着保持することができる。
【0088】
保持治具5を構成する治具本体6は、弾性部材1を保持又は支持する。治具本体6は、弾性部材1を保持又は支持することができる限り種々の設計変更に基づく各種の形態にすることができる。例えば、治具本体6は、図3に示されるように、方形を成す盤状体に形成されている。治具本体6における寸法の一例として、例えば、120mm×120mmの寸法を挙げることができる。この治具本体6は、弾性部材1を保持又は支持可能な厚さを有していればよいが、治具本体6は平滑な表面を有しているのがよく、さらに、治具本体6は均一な厚さを有しているのがよい。治具本体6の厚さの一例として、例えば、0.5mmを挙げることができる。
【0089】
治具本体6は、弾性部材1を保持又は支持可能な材料で形成されればよく、例えば、ステンレス鋼及びアルミニウム等の金属製プレート、アルミニウム箔及び銅箔等の金属箔、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等の樹脂フィルム又は樹脂板、和紙、合成紙及びポリエチレンラミネート紙等の紙、並びに、布、ガラス繊維及びガラス板等のセラミックス、並びに、ガラスエポキシ樹脂板等の複合材料等を挙げることができる。さらに、治具本体6として、シート状物を複数積層して成る積層体とすることもできる。治具本体6は、金属、樹脂又はセラミックスからなる硬質材料で形成されるのが好適である。
【0090】
治具本体6は、弾性部材1を形成する面に、弾性部材1における第1の弾性層3との密着性を向上させるために、プライマー処理、コロナ処理、エッチング処理及び/又はプラズマ処理等が施されるのが好ましい。
【0091】
保持治具5を構成する弾性部材1は、この発明に係る弾性部材であり、前記したとおりである。
【0092】
保持治具5は、治具本体6の表面における所定の位置に、弾性部材1における第1の弾性層3を密着保持させることで、作製することができる。ここで、弾性部材1は、前記したように、伸びにくく、また、変形等もしにくく、第1の弾性層3と第2の弾性層4とにおける初期の粘着力を長期間にわたって維持することができ、弾性部材1における第1の弾性層3は、前記したように、治具本体6と弾性部材1とが粘着固定するのに十分な粘着力を有しているから、保持治具5は、治具本体6の表面に弾性部材1を載置すること等の簡単な操作によって、容易かつ高い位置精度で、作製されることができる。そして、保持治具5は、弾性部材1を構成する第2の弾性層4における粘着力が低下した場合には、弾性部材1のみを交換することによって、再使用することができると共に、弾性部材1の交換作業性に優れ、また、弾性部材1を交換しても、弾性部材1の位置精度が高く、小型部品を所望のように粘着保持することができる。すなわち、保持治具5は、リサイクル性に優れ、小型部品を所望のように粘着保持することができる。
【0093】
この発明における保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、保持治具5は、弾性部材1における第1の弾性層3によって弾性部材1が治具本体6の表面に粘着固定されて成るが、この発明において、保持治具は、弾性部材における第2の弾性層によって弾性部材が治具本体の表面に粘着固定されていてもよい。
【0094】
また、保持治具5は、治具本体6の一方の表面に1個の弾性部材1を備えているが、この発明において、保持治具は治具本体6の一方の表面に2以上の弾性部材を備えていてもよい。
【0095】
さらに、保持治具5は、弾性部材1を治具本体6から剥がして、新たな弾性部材1に交換する態様に加えて、弾性部材の第2の弾性層と板状部材とを第1の弾性層から剥がして、新たな第2の弾性層と板状部材とを第1の弾性層に粘着固定して、交換する態様も可能である。
【0096】
また、保持治具5を構成する治具本体には、保持治具を水平移動させ、上下移動させ、及び、保持治具が有する水平中心軸を中心にして軸回りに回転運動させることのできる保持治具変位手段が併設されてもよい。この基板変位手段の機械的構成としては、上下移動、水平移動、及び回転動作させることができる限り種々の構成を採用することができる。
【0097】
この発明に係る一実施例である一組の保持治具を、図を参照して、説明する。図4に示されるように、第1の弾性部材1Aを第1の治具本体6Aの一表面に第1の弾性層3Aを介して粘着固定して成る第1の保持治具5Aと、第2の弾性部材1Bを第2の治具本体6Bの一表面に第2の弾性層4Bを介して粘着固定して成る第2の保持治具5Bとを備えて成り、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4A及び第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bで小型部品を粘着保持する。第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bにおける第1の弾性部材1A及び第2の弾性部材1Bは同様に構成され、第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bは前記保持治具5と基本的に同様に構成されている。
【0098】
第1の弾性部材1A及び第2の弾性部材1Bにおける第1の弾性層3A及び3B並びに第2の弾性層4A及び4Bはそれぞれ、小型部品を粘着保持することのできる粘着力、通常、1〜125g/mmの粘着力を有しているのがよい。
【0099】
そして、第1の弾性層3A及び3Bはそれぞれ、第2の弾性層4A及び4Bよりも大きな粘着力を有している。第1の弾性層3A及び3Bと第2の弾性層4A及び4Bとがこのような粘着力の関係を有することにより、第1の弾性部材1A及び第2の弾性部材1Bが第1の治具本体6A及び第2の治具本体6Bから剥がれることなく、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aから第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに小型部品を移し替えることができる。第2の弾性層4Aから第1の弾性層3Bに小型部品を脱落することなくスムーズに移し替えることができる点で、第1の弾性層3Aと第2の弾性層4Bとの粘着力の差は5〜100g/mmであるのが好ましく、10〜75g/mmであるのがより好ましく、10〜40g/mmであるのが特に好ましい。
【0100】
さらに、第1の弾性層3A及び3B、並びに、第2の弾性層4A及び4Bは、各粘着力が前記F>F>F>Fの関係、すなわち、S及びS、St及びSt並びにN及びNを考慮して、f×S>f×S>f×N×St>f×N×Stの関係を満足する粘着力f及びfに調整されている。第1の弾性層3A及び3B、並びに、第2の弾性層4A及び4Bの粘着力f及びfがこの関係を満たすように調整されていると、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bへと多数の小型部品を、起立状態を維持したまま、移し替えることができる。粘着力f及びfの一例を挙げると、S=S=10000mm、N=N=4000、St=St=1mmの場合には、第1の弾性層3A及び3Bの粘着力fは40g/mm、第2の弾性層4A及び4Bの粘着力fは20g/mmとされる。
【0101】
この一組の保持治具7は、前記粘着力の範囲内であって前記範囲の粘着力の差及び前記関係を満たすように、調整された粘着力をそれぞれ有する第1の弾性層3A及び3B並びに第2の弾性層4A及び4Bを有する弾性部材1A及び1Bを備えた第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bを備えているから、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bへと多数の小型部品を、起立状態を維持したまま、移し替えることができるうえ、第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bの優れたリサイクル性を実現することができる。
【0102】
また、一組の保持治具7を構成する第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bはそれぞれ同一の弾性部材1A及び1Bを備えているから、ただ1種の弾性部材を作製するだけで、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bへと多数の小型部品を移し替えることができ、粘着力等が異なる複数の弾性部材を準備する必要がない。
【0103】
この発明における一組の保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、前記一組の保持治具7は、第1の保持治具5Aと第2の保持治具5Bとを備えているが、これらの保持治具に加えて、第3の保持治具等を備えていてもよい。
【0104】
この発明に係る一実施例である小型部品保持装置を、図を参照して、説明する。図5に示されるように、小型部品保持装置10は、第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bを含む一組の保持治具を備え、小型部品を粘着保持すると共に、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bに小型部品を移し替えることのできる装置である。小型部品保持装置10が備える一組の保持治具は、前記一組の保持治具7と同様に構成されている。
【0105】
図5に示されるように、小型部品保持装置10は、第1の保持治具5Aと第2の保持治具5Bとが、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aと第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bとが相対向するように配置可能になっている。これにより、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aに粘着保持された小型部品を、起立状態を維持したままに、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに移し替えることができる。このような第1の保持治具5Aと第2の保持治具5Bとの配置は、機械的構成からなる変位手段により実現されてもよく、手動により実現されてもよい。
【0106】
図5に示されるように、第1の保持治具5Aは、第1の治具本体6Aにおける第1の弾性部材1Aが粘着固定されていない表面側が、保持治具変位手段12から下方に延在する支持アーム13の先端に設けられた支持部材14に固定され、保持治具変位手段12に支持されている。
【0107】
この保持治具変位手段12は、軌条11に取り付けられ、この軌条11に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム13を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段12に支持された第1の保持治具5Aは、保持治具変位手段12によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能と成っている。すなわち、第1の保持治具5Aは、例えば、導電ペースト浴の上方に、又はその位置から導電ペースト浴の上方以外の適宜の位置、例えば、第2の保持治具5Bの上方の位置に移送されることができると共に、第1の保持治具5Aは、第2の保持治具5Bに向けて下降させられ、また第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに小型部品を保持させ替えた後、第1の保持治具5Aを第2の保持治具5Bから上昇させることができる。
【0108】
さらに、この保持治具変位手段12は、軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段12がこのように回転運動可能であると、第1の保持治具5Aの状態を、第2の弾性層4Aが小型部品を懸垂保持する状態、及び、第2の弾性層4Aが小型部品を立設保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0109】
また、図5に示されるように、第2の保持治具5Bは、第2の治具本体6Bにおける第2の弾性部材1Bが粘着固定されていない表面側が、保持治具変位手段16から上方に延在する支持アーム17の先端に設けられた支持部材18に固定され、保持治具変位手段16に支持されている。
【0110】
この保持治具変位手段16は、軌条11とほぼ直交する軌条15に取り付けられ、この軌条15に沿って水平方向に運動可能に構成されると共に、支持アーム17を上下方向に運動可能に構成されている。したがって、この保持治具変位手段16に支持された第2の保持治具5Bは、保持治具変位手段16によって、水平方向及び上下方向に自在に移動可能とされている。すなわち、第2の保持治具5Bは、適宜の位置、例えば、第1の保持治具5Aの下方の位置に移送されることができると共に、第1の保持治具5Aに向けて上昇させられ、また第2の保持治具5Bを第1の保持治具5Aから下降させることができる。
【0111】
さらに、この保持治具変位手段16は、軌条15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されている。保持治具変位手段16がこのように回転運動可能であると、第2の保持治具5Bの状態を、第1の弾性層3Bが小型部品を立設保持する状態、及び、第1の弾性層3Bが小型部品を懸垂保持する状態に所望のように変えることができるようになる。
【0112】
前記保持治具変位手段12及び前記保持治具変位手段16における運動機構は、特に限定されず、例えば、駆動力を発生する駆動手段、例えば、モータと、このモータの出力を軌条11又は15、及び、支持アーム13又は17に伝達する伝達手段、例えば、歯車、ワイヤ等とを備えた運動機構が挙げられる。この運動機構は、通常のパソコン等によって、制御しても、手動で制御してもよい。
【0113】
図5に示されるように、この小型部品保持装置10は、軌条11と軌条15が交差する位置近傍で、第1の保持治具5Aと第2の保持治具5Bとが、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aと第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bとが相対向するように配置可能になっている。これにより、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aに粘着保持された小型部品を、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに移し替えることができる。
【0114】
次に、この発明に係る小型部品保持装置10を用いて小型電子部品用部材の一つであるチップコンデンサ本体に電極を形成して、小型電子部品であるチップコンデンサを製造する方法について説明し、併せてこの小型部品保持装置10の作用について説明する。図6に示されるように、このチップコンデンサ本体30は、断面が正方形の四角柱体であり、図10に示されるように、チップコンデンサ32はこのチップコンデンサ本体30の両端部それぞれに電極31が形成されて成る。
【0115】
この発明の一例である小型部品保持装置10を用いて、チップコンデンサ本体30に電極31を、例えば、次のようにして形成する。先ず、図5に示された保持治具変位手段12を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図6に示されるように、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aを上にした第1の保持治具5A上に立設配置板20を重ねる。この立設配置板20には、上部開口部に環状のテーパ面21が形成されて成る貫通孔である複数の配設孔22が形成されている。この立設配置板20の上面に多数のチップコンデンサ本体30を乱雑状態に頒布する。この立設配置板20に振動を加えると、チップコンデンサ本体30がテーパ面21に案内されるようにして配設孔22に収まる。この立設配置板20の厚みは、チップコンデンサ本体30の軸線方向長さよりも小さく設計されているので、配設孔22に収まったチップコンデンサ本体30は、その下端面が第2の弾性層4Aに接触し、その上端面が立設配置板20の上端面から突出した状態になっている。
【0116】
次いで、図6に示されるように、平坦なプレス板23で、多数のチップコンデンサ本体30全ての突出頭部を、押圧する。このとき、プレス板23でチップコンデンサ本体30を第2の弾性層4Aに押圧するときの第2の弾性層4Aにおける被押し込み量(X)は、第1の弾性部材1A、特に、第2の弾性層4Aのゴム弾性、硬度等を考慮して、第2の弾性層4Aが多数のチップコンデンサ本体30を所望のように粘着保持することのできるように、調整される。例えば、第2の弾性層4Aの被押し込み量(X)は、50〜250μmに調整され、好ましくは150〜250μmに調整される。このように、被押し込み量(X)が調整されてチップコンデンサ本体30を押圧すると、配設孔22に収容されているチップコンデンサ本体30の下端面が第2の弾性層4Aにめり込むと共に第2の弾性層4Aの粘着力によりチップコンデンサ本体30の下端部が第2の弾性層4Aに粘着する。その後、立設配置板20を除去すると、多数のチップコンデンサ本体30を数百個から数千個の単位で一挙に起立状態で第2の弾性層4Aに粘着保持させることができる。次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)を軌条11を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図7に示されるように、第1の保持治具5Aを回転させて第2の弾性層4Aを下側に向けると、第2の弾性層4Aの下側面に多数のチップコンデンサ本体30が懸垂保持された状態になる。
【0117】
次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)を軌条11(図示せず。)に沿って水平方向に運動させて、多数のチップコンデンサ本体30を第2の弾性層4Aに懸垂保持された状態のまま第1の保持治具5Aを導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段12により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、導電ペースト浴に向かって第1の保持治具5Aを下降させる。第1の保持治具5Aを下降させて導電ペースト浴にチップコンデンサ本体30の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、保持治具変位手段12により支持アーム13を上方向に運動させて、第1の保持治具5Aを上昇させ、チップコンデンサ本体30に塗布された導電ペーストを乾燥する。そうすると、図8に示されるように、第2の弾性層4Aに懸垂保持された各チップコンデンサ本体30の下端部にほぼ均等な大きさの電極31が形成される。このとき、チップコンデンサ本体30は、第2の弾性層4Aに所望のように粘着保持されているから、導電性ペーストに浸漬中及び導電性ペーストから引上げるときに、第2の弾性層4Aから脱落することも、傾斜することもない。
【0118】
次いで、保持治具変位手段12を軌条11に沿って水平方向に運動させて、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bの上方に、下端部に電極31を塗設した多数のチップコンデンサ本体30を第2の弾性層4Aに懸垂保持した第1の保持治具5Aを水平移動させる。
【0119】
図9に示されるように、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13(図示せず。)を下方向に運動させて、第1の保持治具5Aを下降させ、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aに懸垂保持された多数のチップコンデンサ本体30の、電極31が形成された下端部を、粘着させる。このとき、第1の保持治具5Aが降下される降下距離は、第2の弾性層4A及び第1の弾性層3Bのゴム弾性、硬度等を考慮して、第1の弾性層3Bに多数のチップコンデンサ本体30を所望のように粘着保持することができ、かつ、第2の弾性層4Aと第1の弾性層3Bとの粘着力の差が前記範囲となるように、調整される。なお、チップコンデンサ本体30は第2の弾性層4Aと共に第1の弾性層3Bにも押し込まれるから、第1の保持治具5Aが降下される降下距離は、第2の弾性層4Aにおける被押し込み量(X)と第1の弾性層3Bにおける被押し込み量(X)との合計被押し込み量に調整する必要がある。次いで、保持治具変位手段12(図示せず。)により支持アーム13(図示せず。)を上方向に運動させて、第1の保持治具5Aを上昇させると、第1の弾性層3Bは所望の粘着力を発現していると共に第2の弾性層4Aの粘着力よりも大きな粘着力を有しているから、チップコンデンサ本体30は電極31を介して第1の弾性層3Bに強固に粘着されており、第1の保持治具5Aにおける第2の弾性層4Aにチップコンデンサ本体30がほとんど残存することなく離脱する。このようにして、第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bに多数のチップコンデンサ本体30を、起立状態を維持したまま、脱落することも転倒することもなく所望のように移し替えることができる。
【0120】
次いで、保持治具変位手段16(図示せず。)を軌条15(図示せず。)を中心軸にして軸回りに回転運動させ、図9に示されるように、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに電極31を介してチップコンデンサ本体30を立設した状態で粘着保持している第2の保持治具5Bが、回転されてチップコンデンサ本体30が懸垂保持された状態にされる。
【0121】
次いで、保持治具変位手段16(図示せず。)を軌条15(図示せず。)に沿って水平方向に運動させて、多数のチップコンデンサ本体30を第1の弾性層3Bに懸垂保持された状態のまま第2の保持治具5Bを導電ペースト浴(図示せず。)の上方に水平移動させる。その後、保持治具変位手段16(図示せず。)により支持アーム17(図示せず。)を下方向に運動させて、導電ペースト浴に向かってこの第2の保持治具5Bを下降させる。第2の保持治具5Bを下降させて導電ペースト浴にチップコンデンサ本体30の下端部を、浸漬させる。浸漬後に、保持治具変位手段16(図示せず。)により支持アーム17(図示せず。)を上方向に運動させて、第2の保持治具5Bを上昇させ、チップコンデンサ本体30に塗布された導電ペーストを乾燥する。そうすると、図10に示されるように、第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bに懸垂保持された各チップコンデンサ本体30の下端部にほぼ均等な大きさの電極31が形成される。このとき、チップコンデンサ本体30は、第1の弾性層3Bに所望のように粘着保持されているから、導電性ペーストに浸漬中及び導電性ペーストから引上げるときに、第1の弾性層3Bから脱落することも、傾斜することもない。
【0122】
第2の保持治具5Bにおける第1の弾性層3Bには、図10に示されるように、チップコンデンサ本体30それぞれの両端部にほぼ均等な大きさの電極31が形成されて成るチップコンデンサ32が、懸垂された状態で粘着保持されている。第1の弾性層3Bに懸垂保持されているチップコンデンサ32は、例えば、第1の弾性層3Bの下側面にストリッパ(図示せず。)を摺接することによって、離脱し、落下する。又は、チップコンデンサ32は、第1の弾性層3Bを備えた第2の弾性部材1Bごと、第2の治具本体6Bから取り外され、第2の弾性部材1Bを例えば変形させること等によって、第1の弾性層3Bから取り外される。
【0123】
このように、この発明に係る保持治具1又は一組の保持治具7を用いることにより、小型部品を数百個から数千個の単位で一挙に起立状態で第1の保持治具5Aに所望のように粘着保持することができると共に、小型部品を第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bに移し替える際に、小型部品が第1の保持治具5Aに取り残され、転倒することを効果的に防止して、多数の小型部品を第1の保持治具5Aから第2の保持治具5Bに起立状態を維持したままに移し替えることができる。また、この発明に係る一組の保持治具7を構成する第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bは、第1の治具本体5A及び第2の治具本体5Bに第1の弾性部材1A及び第2の弾性部材1Bを粘着力によって粘着固定されているから、第1の保持治具5A及び第2の保持治具5Bのリサイクル性に優れる。
【0124】
この発明に係る小型部品保持装置10は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、小型部品保持装置10においては、第1の弾性部材1Aと第2の弾性部材1Bとは、同一の粘着性材料によって形成されていても、異なる粘着性材料によって形成されてもよい。
【0125】
さらに、小型部品保持装置10においては、軌条11と軌条15とがほぼ直角に交差するように配設されているが、軌条と軌条とは略平行に配設されていてもよい。
【0126】
また、小型部品保持装置10においては、保持治具変位手段12及び16は軌条11及び15を中心軸にして軸回りに回転運動可能に構成されているが、これらの保持治具変位手段は回転運動不能に構成されてもよい。この場合には、第2の弾性層にチップコンデンサ本体を粘着保持させた第1の保持治具を保持治具変位手段に支持させればよく、第1の弾性層にチップコンデンサを粘着保持した第2の保持治具を保持治具変位手段から取り外して、チップコンデンサを第2の弾性部材から取り外せばよい。
【実施例】
【0127】
<弾性部材の製造>
(実施例1)
ポリイミドフィルム(厚さ0.025mm)から、一辺の長さが110mmである正方形の板状部材2を切り出した。また、厚さ1mmのときの粘着力が40g/mmである下記組成のゴム組成物Iを用いて、一辺の長さが110mm(厚さ1.0mm)である正方形の第1の弾性層3を作製し、同様にして、厚さ1mmのときの粘着力が15g/mmである下記組成のゴム組成物IIを用いて、一辺の長さが110mm(厚さ1.0mm)である正方形の第2の弾性層4を作製した。次いで、板状部材2の一方の表面に第2の弾性層4をシリコーン系接着剤で接着固定し、また、板状部材2の他方の表面に第1の弾性層3をシリコーン系接着剤で接着固定して、弾性部材1Aを作製した。
【0128】
ゴム組成物I:シリコーンゴム(商品名「X-34−632 A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%及び(e)成分としてシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%を含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物と、粘着力調整組成物として液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE-1950/30 A/B」、信越化学工業株式会社製)とを配合した粘着性シリコーン組成物(付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物:液状シリコーンゴム組成物=95:5(質量比))。
【0129】
ゴム組成物II:シリコーンゴム(商品名「X-34−632 A/B」、信越化学工業株式会社製)99質量%及び(e)成分としてシリカ系充填材(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」)1質量%を含有する付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物と、粘着力調整組成物として液状シリコーンゴム組成物(商品名「KE-1950/30 A/B」、信越化学工業株式会社製)とを配合した粘着性シリコーン組成物(付加反応硬化型粘着性シリコーン組成物:液状シリコーンゴム組成物=60:40(質量比))。
【0130】
この弾性部材1Aの引張強さ及び切断時伸びをJIS K6249(引張速度500mm/min)に記載の方法にしたがって、測定したところ、それぞれ、3.5MPa及び30%であった。
【0131】
(実施例2)
前記ポリイミドフィルムを、ポリエステルフィルム(厚さ0.1mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、弾性部材1Bを作製した。弾性部材1Bの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、10MPa及び70%であった。
(実施例3)
前記ポリイミドフィルムを、ガラスエポキシ樹脂板(厚さ0.8mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、弾性部材1Cを作製した。弾性部材1Cの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、8MPa及び5%であった。
(実施例4)
前記第1の弾性層及び第2の弾性層の厚さを2.0mm(粘着力はそれぞれ30g/mm及び10g/mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、弾性部材1Dを作製した。弾性部材1Dの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、4MPa及び30%であった。
【0132】
(比較例1)
前記第1の弾性層3のみから成る弾性部材1E(厚さ1.0mm)を作製した。弾性部材1Eの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、3MPa及び200%であった。
(比較例2)
前記第2の弾性層4のみから成る弾性部材1F(厚さ1.0mm)を作製した。弾性部材1Fの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、2MPa及び320%であった。
(比較例3)
前記板状部材2を用いず、前記第1の弾性層3及び前記第2の弾性層4を直接重ね合わせて、弾性部材1G(厚さ2.0mm)を作製した。弾性部材1Gの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、2.5MPa及び200%であった。
(比較例4)
前記第1の弾性層3及び第2の弾性層4を、アクリル系粘着テープ(商品名「#578」、積水化学工業株式会社製、厚さ0.13mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、粘着性部材Hを作製した。粘着性部材Hの引張強さ及び切断時伸びはそれぞれ、20MPa及び40%であった。
【0133】
このようにして作製した弾性部材1A〜1D及び1Gを、23±2℃、相対湿度50±10%の環境下に10日間放置した後、第1の弾性層3及び/又は前記第2の弾性層4の粘着力を前記方法により測定した。その結果、弾性部材1Gは、第1の弾性層3及び前記第2の弾性層4の粘着力は変化が大きかったのに対して、弾性部材1A〜1Dにおける第1の弾性層3及び前記第2の弾性層4の粘着力はほとんど変化しなかった。
【0134】
<保持治具の作製>
(実施例5〜12及び比較例5〜9)
ステンレス鋼板(SUS304製、厚さ0.5mm)から、一辺の長さが120mmである正方形の盤状体を切り出した。この盤状体における一方の表面をアセトン等の有機溶媒で脱脂処理し、治具本体を作製した。この治具本体上に、前記弾性部材1A〜1D(実施例5〜8)、並びに、前記弾性部材1F(比較例5)及び1G(比較例6)を、前記第1の弾性層3を前記治具本体に粘着固定して(弾性部材1Fは、直接前記治具本体へ粘着固定)、保持治具5A1A、保持治具5A1B、保持治具5A1C、保持治具5A1D、保持治具5A1F及び保持治具5A1Gを作製した。次いで、前記治具本体上に、前記弾性部材1A〜1D(実施例9〜12)、並びに、前記弾性部材1E(比較例7)及び1G(比較例8)を、前記第2の弾性層4を前記治具本体に粘着固定して(弾性部材1Eは、直接前記治具本体へ粘着固定)、保持治具5B1A、保持治具5B1B、保持治具5B1C、保持治具5B1D、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gを作製した。なお、前記持治具5A1A〜5A1D、保持治具5A1F及び保持治具5A1Gは、各弾性部材1A〜1D、1F及び1Gにおける第1の弾性層3の粘着力により(弾性部材1Fは、弾性層4のみの粘着力)、前記治具本体に粘着固定し、前記保持治具5B1A〜5B1D、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gは、各弾性部材1A〜1D、1E及び1Gにおける第2の弾性層4の粘着力により(弾性部材1Eは、弾性層3のみの粘着力)、前記治具本体に粘着固定した。さらに、前記治具本体上に、前記粘着性部材Hを、アクリル系粘着テープで接着固定して、保持治具5A1Hを作製した(比較例9)。
【0135】
このようにして作製した前記保持治具5A1A〜5A1D、保持治具5A1F及び保持治具5A1Gにおける各弾性部材1A〜1D、1F及び1Gの交換作業性を評価した。また、このようにして作製した前記保持治具5B1A〜5B1D、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gにおける各弾性部材1A〜1D、1E及び1Gの交換作業性を評価した。その結果、弾性部材1A〜1D、1E、1F及び1Gはすべて治具本体から剥離できたものの、弾性部材1E、1F及び1Gは剥離中に伸びて変形し、交換作業性が悪かった。なお、保持治具5A1Hの粘着性部材Hは交換することができなかった。
【0136】
前記保持治具5A1A〜5A1D、保持治具5A1F及び保持治具5A1G、並びに、前記保持治具5B1A〜5B1D、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gのリサイクル性を評価した。その結果、保持治具5A1A〜5A1D及び前記保持治具5B1A〜5B1Dは、治具本体と弾性部材1A〜1Dとを剥離して、治具本体を再度使用することができ、かつ、これらの保持治具における弾性部材1A〜1Dは剥離後もその形状を保持し、再度使用することができ、リサイクル性に優れていた。これに対して、保持治具5A1F、保持治具5A1G、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gは、治具本体と弾性部材1E〜1Gとを剥離することができたが、これらの保持治具における弾性部材1E〜1Gは剥離後もその形状を保持することができず筒状になってしまい、再度使用することができなかった。なお、保持治具5A1Hは、粘着性部材Hを治具本体から剥離することができず、治具本体も粘着性部材Hも再度使用することはでなかった。
【0137】
前記交換作業性の評価において、前記保持治具5A1A〜5A1D、保持治具5A1F及び保持治具5A1G、並びに、前記保持治具5B1A〜5B1D、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gにおける各弾性部材1A〜1D、1E、1F及び1Gをそれぞれ複数回交換して、交換された新たな弾性部材1A〜1D、1E、1F及び1Gそれぞれが粘着保持された位置を確認した。その結果、弾性部材1A〜1Dは、治具本体における所定の位置に容易に粘着保持させることができ、保持治具5A1A〜5A1D及び保持治具5B1A〜5B1Dにおける各弾性部材の位置精度は高かった。これに対して、弾性部材1E、1F及び1Gは、治具本体における所定の位置に粘着保持させることが非常に困難であり、保持治具5A1F、保持治具5A1G、保持治具5B1E及び保持治具5B1Gにおける各弾性部材の位置精度は極めて低かった。
【0138】
同じ弾性部材を備えた一組の保持治具5A1A及び5B1A、一組の保持治具5A1B及び5B1B、一組の保持治具5A1C及び5B1C、一組の保持治具5A1D及び5B1D、並びに、一組の保持治具5A1G及び5B1Gをそれぞれ作製し、図5に示される小型部品保持装置を組み立てた。小型部品は、一辺の長さ0.3mm、軸線方向長さ約0.6mmの四角柱体であるチップコンデンサ本体4,000個を用いた。これら一組の保持治具を使用して、チップコンデンサ本体の転写性試験を行った。その結果、前記一組の保持治具5A1A及び5B1A、一組の保持治具5A1B及び5B1B、一組の保持治具5A1C及び5B1C、並びに、一組の保持治具5A1D及び5B1Dにおいては、図9の様に第1の保持治具5Aに懸垂保持されたチップコンデンサ本体を、第2の保持治具5Bに押圧した状態から両者を離したところ、第1の保持治具5Aから第2保持治具5Bにすべてのチップコンデンサ本体が立設状態を維持した状態で転写された。これに対して、一組の保持治具5A1G及び5B1Gにおいては、すべてのチップコンデンサ本体が第1の保持治具5Aから第2保持治具5Bに立設状態を維持した状態で転写されずに、複数のチップコンデンサ本体が第1の保持治具5Aに残存し、又は、転写時に横転した。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】図1は、この発明の一実施例である弾性部材を示す概略斜視図である。
【図2】図2は、この発明の一実施例である弾性部材を示す概略正面図である。
【図3】図3は、この発明の一実施例である保持治具を示す概略斜視図である。
【図4】図4は、この発明の一実施例である一組の保持治具を示す概略正面図である。
【図5】図5は、この発明の一実施例である小型部品保持装置を示す概略説明図である。
【図6】図6は、この発明の一実施例である小型部品保持装置における第1の保持治具にチップコンデンサ本体を立設状態で粘着させる手順を説明するための概略断面説明図である。
【図7】図7は、この発明の一実施例である小型部品保持装置における第1の保持治具によりチップコンデンサ本体を懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【図8】図8は、この発明の一実施例である小型部品保持装置における第1の保持治具に、電極が形成されたチップコンデンサ本体を、懸垂保持した状態を示す概略説明図である。
【図9】図9は、この発明の一実施例である小型部品保持装置における第1の保持治具に懸垂保持されたチップコンデンサ本体を、第2の保持治具に押圧した状態を示す概略説明図である。
【図10】図10は、この発明の一実施例である小型部品保持装置における第2の保持治具に、両端部に電極を塗設して成るチップコンデンサを懸垂保持する状態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0140】
1、1A、1B 弾性部材
2 板状部材
3 第1の弾性層
4 第2の弾性層
5、5A、5B 保持治具
6、6A、6B 治具本体
7 一組の保持治具
10 小型部品保持装置
11、15 軌条
12、16 保持治具変位手段
13、17 支持アーム
14、18 支持部材
20 立設配置板
21 テーパ面
22 貫通孔
23 プレス板
30 チップコンデンサ本体
31 電極
32 チップコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱体の小型部品を粘着保持する保持治具の弾性部材であって、
板状部材と、前記板状部材の一方の表面に設けられ、粘着力を有する第1の弾性層と、前記板状部材の他方の表面に設けられ、粘着力を有する第2の弾性層とを備えて成ることを特徴とする弾性部材。
【請求項2】
治具本体と、治具本体における表面の少なくとも一部に配置された、請求項1に記載の弾性部材とを備えた保持治具。
【請求項3】
請求項1に記載の第1の弾性部材を第1の治具本体の表面に前記第1の弾性層を介して粘着固定して成る第1の保持治具と、請求項1に記載の第2の弾性部材を第2の治具本体の表面に前記第2の弾性層を介して粘着固定して成る第2の保持治具とを有する一組の保持治具。
【請求項4】
請求項3に記載の一組の保持治具を備えた小型部品保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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