説明

弾球遊技機および遊技盤

【課題】遊技球の帯電による、弾球遊技機の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを防止するため、帯電している遊技球から静電気を放電させる。
【解決手段】パチンコ機1には、その内部11の遊技球9が送られる球移動可能領域12であってその表面121に、帯電防止膜8が面形成されている。帯電防止膜8は透明導電膜であり、遊技盤4の表面に透明導電膜が面形成されている。また、球移動可能領域12は、遊技盤4と、遊技盤4の遊技領域43に遊技球9を送るためのガイドレール42が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾球遊技機および遊技盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ機等の弾球遊技機では、遊技球が通る通路(ガイドレール)や遊技盤などにおいて遊技球との摩擦が生じ、その結果、静電気が発生して球技球が帯電する。
【0003】
この遊技球の帯電により、弾球遊技機の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを誘発したりする。
【0004】
そこで、この遊技球の帯電を放電させる方法として、特許文献1に示すような障害釘を接地させ、この障害釘に遊技球を接触させることで遊技球に帯電する静電気を放電させる従来技術がある。
【特許文献1】特開2002−17984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この特許文献1に示すような従来技術の構成によれば、障害釘との接触によって遊技球に帯電した静電気を放電するため、障害釘と接触しない間、遊技球は帯電したままの状態となる。そのため、この特許文献1に示すような従来技術では、遊技球から十分な放電を行うことができない。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、帯電している遊技球から静電気を放電させる弾球遊技機および遊技盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる弾球遊技機は、当該機内の遊技球が送られる球移動可能領域であってその表面に、帯電防止膜が面形成されたことを特徴とする。特に、本発明では、当該機内の遊技球が送られる球移動可能領域であってその全表面に、帯電防止膜が面形成されることが好ましい。
【0008】
本発明によれば、帯電している遊技球から静電気を放電させることが可能となる。具体的に、本発明によれば、前記機内の遊技球が送られる前記球移動可能領域であってその表面に、前記帯電防止膜が面形成されるので、前記球移動可能領域上を動く間(移動する間)、遊技球は常に前記帯電防止膜と接することになり、遊技球に帯電している静電気は、常に接する前記帯電防止膜により放電される。その結果、遊技球が帯電することによる弾球遊技機の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを防止することが可能となる。また、本発明によれば、当該弾球遊技機を設計する際に、帯電防止用の電気回路を別途設計する必要がなく、製造コストを抑えることが可能となる。
【0009】
前記構成において、前記帯電防止膜は透明導電膜であってもよい。
【0010】
この場合、前記帯電防止膜は透明導電膜であるので、前記球移動可能領域の表面の形状を限定せずにいずれの形状であっても前記帯電防止膜を面形成することが可能となる。具体的に、比較例として帯電防止フィルムと比較して、帯電防止フィルムではその厚みや硬さにより三次元(立体)曲面形状や微細な形状に面形成することが難しい。それに対して、本発明に示す透明導電膜はその厚さが薄く、さらに柔らかく平坦な材質であるので、三次元曲面形状や微細な形状に容易に面形成を行うことができる。
【0011】
前記構成において、前記帯電防止膜の厚みは5〜50nmであってもよい。
【0012】
この場合、前記帯電防止膜の厚みは5〜50nmであるので、例えば、孔を加工するなど三次元(立体)曲面形状や微細な形状に面形成する場合に、切削や孔開けなどの加工後に前記帯電防止膜を形成することが可能となり、製造の自由度を増すことが可能となる。例えば、遊技盤に障害釘を挿通させるための孔が形成され、この孔の径は現在1.5〜2.0mmとされている。この場合であっても、孔開け加工後に前記帯電防止膜を面形成することが可能となる。なお、比較例として、帯電防止フィルムの場合、孔開け加工後に帯電防止フィルムを形成することができないため、孔開け前に遊技盤に帯電防止フィルムを形成することになるが、この場合、孔開け加工時にフィルムの剥がれや破れ等の破損の可能性がある。
【0013】
前記構成において、前記帯電防止膜の面積当たりの抵抗値は0.5〜2.0kΩ/m2であってもよい。
【0014】
この場合、前記帯電防止膜の抵抗値は0.5〜2.0kΩ/m2であり、遊技球の帯電防止を図ることが可能となる。
【0015】
前記構成において、前記遊技盤には障害釘を挿通させるための孔が形成され、前記孔の径は1.5〜2.0mmであってもよい。
【0016】
この場合、前記球移動可能領域に遊技盤が含まれ、前記孔の径は1.5〜2.0mmであっても、前記孔を埋めることなく、前記帯電防止膜を面形成することが可能となる。
【0017】
具体的に、前記球移動可能領域に前記遊技盤や前記ガイドレールが含まれることが好適である。
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる弾球遊技機の遊技盤は、当該遊技盤の表面に、帯電防止膜である透明導電膜が面形成されたことを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、帯電している遊技球から静電気を放電させることが可能となる。具体的に、本発明によれば、当該遊技盤の表面に帯電防止膜である透明導電膜が面形成されるので、当該遊技盤上で遊技球が動く間(移動する間)、遊技球は常に前記帯電防止膜と接することになり、遊技球に帯電している静電気は、常に接する前記帯電防止膜により放電される。その結果、遊技球が帯電することによる当該遊技盤を設けた弾球遊技機の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを防止することが可能となる。また、本発明によれば、当該遊技盤を設計する際に、帯電防止用の電気回路を別途設計する必要がなく、製造コストを抑えることが可能となる。また、前記帯電防止膜は透明導電膜であるので、当該遊技盤の表面の形状を限定せずにいずれの形状であっても前記帯電防止膜を面形成することが可能となる。具体的に、比較例として帯電防止フィルムと比較して、帯電防止フィルムではその厚みや硬さにより三次元(立体)曲面形状や微細な形状に面形成することが難しい。それに対して、本発明に示す透明導電膜はその厚さが薄く、さらに柔らかく平坦な材質であるので、三次元曲面形状や微細な形状に容易に面形成を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる弾球遊技機および遊技盤によれば、帯電している遊技球から静電気を放電させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、弾球遊技機としてパチンコ機に本発明を適用した場合を示す。なお、弾球遊技機として他にスマートボールなどの球体を用いた遊技機に適用可能である。
【0022】
本実施例にかかるパチンコ機1には、矩形枠状の外側枠部2と、この外側枠部2の前面に開閉自在に設けられた前側枠部3とが設けられている。
【0023】
前側枠部3には、遊技盤4が裏側から着脱自在に装着され、遊技盤4の前側に窓ガラス部51を有する扉部5が開閉自在に設けられている。また、この前側枠部3には、発射用の遊技球9を貯留(供給)して待機させる球受け皿61が設けられ、前側枠部3の下部に、球受け皿61から溢流し又は抜き取った遊技球9を貯留する貯留部62と、遊技球9の発射を操作する操作部7とが設けられている。
【0024】
遊技盤4は絶縁材料のアクリル基材からなり、この遊技盤4には、図1,2に示すような金属製の外レール421と内レール422とからなるガイドレール42がほぼ環状に設けられている。また、遊技盤4には、図3に示すように、障害釘48を挿通させるための孔49が形成され、孔49の径は1.5〜2.0mmとされている。
【0025】
ガイドレール42の内側の遊技領域43には、表示部44(カラー表示)、図柄始動手段(図柄始動兼入賞手段)45、開閉式入賞手段(大入賞手段)46、2つのゲート部47(通過口)等が夫々所定の位置に配設されている。
【0026】
表示部44は、変動図柄を表示するとともに背景画像や各種のキャラクタの動画などを表示するものとして機能する。この表示部44では、背景画やキャラクタを動画的に表示するとともに、例えば左右方向に3個(左、中、右)の図柄を表示し、図柄始動手段45に遊技球9が入賞することを条件に、各表示図柄が所定時間だけスクロール表示し、図柄始動手段45への遊技球9の入賞タイミングに応じた抽選結果に基づいてスクロール表示する図柄を停止する。
【0027】
上記したような構成からなるパチンコ機1の内部11(機内)には、遊技球9が送られる球移動可能領域12が設けられている。この球移動可能領域12の表面121(具体的に全表面)に、帯電防止膜8が面形成され、帯電防止膜8は図示しない導通部により接地する。
【0028】
なお、本実施例でいう帯電防止膜8は透明導電膜であり、その帯電防止膜8の厚みは約10nmであり、その帯電防止膜8の面積当たりの抵抗値は約1.5kΩ/m2である。具体的に、本実施例では、透明導電膜としてITO膜を用いている。しかしながら、透明導電膜はITO膜に限定されるものではなくIZO膜、ZnO系、SnO2系などの他の膜であってもよい。
【0029】
本実施例にかかる球移動可能領域12には、図3に示す遊技盤4(具体的にガイドレール42の内側の遊技領域43)と、遊技領域43に遊技球9を送るための図2に示すガイドレール42が含まれる。具体的に、遊技盤4の表面41に帯電防止膜8である透明導電膜が面形成され、ガイドレール42の外レール421と内レール422の表面423に帯電防止膜8である透明導電膜が面形成されている。
【0030】
なお、本実施例では、球移動可能領域12に遊技盤4とガイドレール42とが含まれているが、球移動可能領域12はこれに限定されるものではなく、遊技盤4とガイドレール42とのいずれか一方だけであってもよい。また、パチンコ機1の内部11(機内)の遊技球9が移動可能な領域であれば任意の領域を球移動可能領域12としてもよい。
【0031】
また、本実施例では、金属製の外レールと内レールとからなるガイドレール42を用いているが、ガイドレールの材料が絶縁材料であれば本実施例の構成(本発明の手段)を用いることによる更なる効果を有する。
【0032】
上記したように、本実施例にあっかるパチンコ機1によれば、帯電している遊技球9から静電気を放電させることができる。具体的に、本実施例によれば、パチンコ機1の内部(機内)の遊技球9が送られる球移動可能領域12であってその表面121(例えば本実施例では遊技盤4の表面41とガイドレール42の表面423)に、帯電防止膜8が面形成されるので、球移動可能領域12上を動く間(移動する間)、遊技球9は常に帯電防止膜8と接することになり、遊技球9に帯電している静電気は、常に接する帯電防止膜8により放電される。その結果、遊技球9が帯電することによるパチンコ機1の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを防止することができる。また、本実施例によれば、パチンコ機1を設計する際に、帯電防止用の電気回路を別途設計する必要がなく、製造コストを抑えることができる。特に、パチンコ機1の内部(機内)の遊技球9が送られる球移動可能領域12であってその全表面に、帯電防止膜8が面形成されることで、本実施例の上記した作用効果は更に顕著に表れる。
【0033】
また、帯電防止膜8は透明導電膜であるので、球移動可能領域12の表面121の形状を限定せずにいずれの形状であっても帯電防止膜8を面形成することができる。具体的に、比較例として帯電防止フィルムと比較して、帯電防止フィルムではその厚みや硬さにより三次元(立体)曲面形状や微細な形状に面形成することが難しい。それに対して、本実施例に示す透明導電膜はその厚さが薄く、さらに柔らかく平坦な材質であるので、三次元曲面形状や微細な形状に容易に面形成を行うことができる。
【0034】
また、帯電防止膜8の厚みは約10nmであるので、例えば、障害釘48を設けるための孔49を加工するなど三次元(立体)曲面形状や微細な形状に面形成する場合に、切削や孔開けなどの加工後に帯電防止膜8を形成することができ、パチンコ機1の製造の自由度を増すことができる。
【0035】
例えば、遊技盤4に障害釘48を挿通させるための孔49が形成され、この孔49の径は現在1.5〜2.0mmとされている。この場合であっても、孔開け加工後に帯電防止膜8を面形成することができる。なお、比較例として、従来の帯電防止フィルムの場合、孔開け加工後に帯電防止フィルムを形成することができないため、孔開け前に遊技盤に帯電防止フィルムを形成することになるが、この場合、孔開け加工時にフィルムの剥がれや破れ等の破損の可能性がある。これに対して、本実施例では、帯電防止膜8の剥がれや破れ等の破損はない。
【0036】
また、帯電防止膜の面積当たりの抵抗値は約1.5kΩ/m2であり、遊技球9の帯電防止を図るのに好適な抵抗値である。
【0037】
また、球移動可能領域12に遊技盤4が含まれ、遊技盤4に形成された孔49の径が1.5〜2.0mmであっても、孔49を埋めることなく、帯電防止膜8を面形成することができる。
【0038】
また、本実施例に示すように、具体的に球移動可能領域12に遊技盤4やガイドレール42が含まれることが好適である。
【0039】
また、上記したように、本実施例にかかる遊技盤4によれば、帯電している遊技球9から静電気を放電させることが可能となる。具体的に、本実施例によれば、遊技盤4の表面41に帯電防止膜8である透明導電膜が面形成されるので、遊技盤4上で遊技球9が動く間(移動中)、遊技球9は常に帯電防止膜8と接することになり、遊技球9に帯電している静電気は、常に接する帯電防止膜8により放電される。その結果、遊技球9が帯電することによる遊技盤4を設けたパチンコ機1の電子制御部品の破壊や、制御基板の誤動作などを防止することができる。また、本実施例によれば、遊技盤4を設計する際に、帯電防止用の電気回路を別途設計する必要がなく、製造コストを抑えることができる。また、帯電防止膜8は透明導電膜であるので、遊技盤4の表面41の形状を限定せずにいずれの形状であっても帯電防止膜8を面形成することができる。
【0040】
なお、本実施例では、帯電防止膜8の面積当たりの抵抗値が約1.5kΩ/m2であるが、これは好適な例である。そのため、これに限定されるものではなく、帯電防止膜8の面積当たりの抵抗値が0.5〜2.0kΩ/m2であればよい。
【0041】
また、本実施例では、帯電防止膜8の厚みが約10nmであるが、これは好適な例である。そのため、これに限定されるものではなく、帯電防止膜8の厚みが5〜50nmであればよい。
【0042】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、弾球遊技機としてパチンコ機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本実施例にかかるパチンコ機1の概略構成を示した概略正面図である。
【図2】図2は、本実施例にかかる遊技盤に設けられたガイドレールと帯電防止膜との関係を示した遊技盤の拡大断面図である。
【図3】図3は、本実施例にかかる遊技盤に形成された孔と帯電防止膜との関係を示した遊技盤の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 パチンコ機
11 パチンコ機の内部(機内)
12 球移動可能領域
121 表面
2 外側枠部
3 前側枠部
4 遊技盤
41 表面
42 ガイドレール
421 外レール
422 内レール
423 表面
43 遊技領域
44 表示部
45 図柄始動手段
46 開閉式入賞手段
47 ゲート部
48 障害釘
49 孔
5 扉部
51 窓ガラス部
61 球受け皿
62 貯留部
7 操作部
8 帯電防止膜
9 遊技球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾球遊技機において、
機内の遊技球が送られる球移動可能領域であってその表面に、帯電防止膜が面形成されたことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の弾球遊技機において、
前記帯電防止膜は、透明導電膜であることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弾球遊技機において、
前記帯電防止膜の厚みは、5〜50nmであることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の弾球遊技機において、
前記帯電防止膜の面積当たりの抵抗値は、0.5〜2.0kΩ/m2であることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか1つに記載の弾球遊技機において、
前記球移動可能領域に、遊技盤が含まれることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項6】
請求項5に記載の弾球遊技機において、
前記遊技盤には、障害釘を挿通させるための孔が形成され、
前記孔の径は、1.5〜2.0mmであることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1つに記載の弾球遊技機において、
球移動可能領域に、遊技盤の遊技領域に遊技球を送るためのガイドレールが含まれることを特徴とする弾球遊技機。
【請求項8】
弾球遊技機の遊技盤において、
当該遊技盤の表面に、帯電防止膜である透明導電膜が面形成されたことを特徴とする弾球遊技機の遊技盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−22438(P2010−22438A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184207(P2008−184207)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(391006429)三容真空工業株式会社 (13)
【出願人】(508213687)株式会社エフ・アイ・ティ (3)
【Fターム(参考)】