説明

弾球遊技機

【課題】各種制御基板の配設スペースを確保しつつ、前枠と裏セット盤との間に工具等を挿入して行われる不正行為を防止可能な弾球遊技機を提供する。
【解決手段】前枠2と、ガラス扉と、裏セット盤20とを備えたパチンコ機において、裏セット盤20には、払い出された遊技球を上球皿に導く上球皿用通路と、上球皿用通路から分岐して遊技球を下球皿に導くことが可能な下球皿通路とを備え、上球皿用通路から下球皿通路に遊技球を導くことが可能な球受容部32が形成されたオーバーフロー通路形成部材12が、前枠の前面側に着脱可能に取り付けられ、オーバーフロー通路形成部材12および裏セット盤20には、互いに係合可能な固定片部37、盤側係合突起26dが形成されており、固定片部37と盤側係合突起26dとを係合させて前枠2に対する裏セット盤20の閉鎖状態を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤を収容保持する前枠と、この前枠の前方を覆って閉鎖するガラス扉と、前枠に保持された遊技盤の後面側を覆って閉鎖する裏セット盤とを備えた弾球遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
弾球遊技機の代表例であるパチンコ機には、前面に遊技領域を形成する遊技盤を立設姿勢で収容保持する前枠に対して、前面および背面に遊技球の処理経路を一体に設けるとともに、背面に各種制御基板が取り付けられる裏セット盤を装着して構成される。そして、上球皿に貯留された遊技球を発射装置に送り、この発射装置により遊技領域上部に発射された遊技球を落下させる過程で遊技領域内に設けた各種の入賞装置に入賞させる遊技を行うように構成されている。
【0003】
このようなパチンコ機は一般的に、遊技盤の後面側に各入賞具に入賞した遊技球を検出する入賞検出器や電動入賞具を開閉させる電磁石、大入賞口を開閉させるソレノイドなど各種の電気部品が取り付けられている。また、裏セット盤の前面側には、遊技済み球の処理通路や球抜き通路など複数の球通路が形成されている。このような構成のため、保守点検や球通路の清掃作業を行う場合には、遊技盤の後面側および裏セット盤の前面側を開放する必要があり、そのため裏セット盤は、前枠と裏セット盤の互いの一側縁上下に固定されたヒンジ機構により横開き開閉および着脱が可能に組み付けられている。このように、ヒンジ機構を利用して遊技盤の後面に閉鎖された裏セット盤は、例えば特許文献1のように、裏セット盤の四隅近傍に設けられた回動式の施錠金具を回動操作することにより、前枠に固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−237424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近において、前枠と裏セット盤との間を無理やり押し広げてスペースを作り出し、このスペースに工具等を挿入して入賞検出器等に不正行為が行うことが問題となっている。このようにして行われる不正行為では、遊技盤の下部中央に設けられたアタッカーと称される大入賞装置の入賞検出器が行為対象として狙われやすい傾向にある。なぜならば、前枠と裏セット盤との下部中央部分から工具を挿入したときに、比較的近くの不正行為を行いやすい位置に大入賞装置(大入賞装置の入賞検出器)が設けられていることが挙げられる。このような不正行為を防止するためには、例えば前枠と裏セット盤との下部中央部分に、特許文献1に開示された施錠金具等を設ける方法が考えられるが、この方法を採用すると、裏セット盤におけるこの部分に各種制御基板を配置することが困難となり、各種制御基板の配置構成に支障をきたす虞があった。すなわち、各種制御基板の配設スペースを確保しつつ、前枠と裏セット盤との間に工具等を挿入して行われる不正行為を防止することが難しいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、各種制御基板の配設スペースを確保しつつ、前枠と裏セット盤との間に工具等を挿入して行われる不正行為を防止可能な弾球遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的達成のために、本発明に係る弾球遊技機は、遊技盤を収容保持する前枠と、前記前枠の前面側に横開き開閉可能に設けられ前記前枠に収容保持された前記遊技盤の前方を覆って閉鎖するガラス扉と、前記前枠の後面側に横開き開閉可能に設けられ前記前枠に収容保持された前記遊技盤の後面側を覆って閉鎖する裏セット盤とを備えた弾球遊技機(例えば、実施形態におけるパチンコ機PM)において、前記ガラス扉には、遊技球を貯留可能な上球皿と、前記上球皿の下方に位置して遊技球を貯留可能な下球皿とが設けられ、前記裏セット盤には、前記裏セット盤に設けられた球貯留タンクに貯留された遊技球を入賞状態に応じて払い出す球払出装置が備えられ、前記裏セット盤から前記前枠を通って前記上球皿に繋がって形成されて前記球払出装置により払い出された遊技球を前記上球皿に導く上球皿用通路(例えば、実施形態における上球皿筒部6a、上球皿用球払出通路28、前枠側上球皿用開口40a)と、前記上球皿用通路から分岐して前記前枠を通って前記下球皿に繋がって形成されて遊技球を前記下球皿に導くことが可能な下球皿通路(例えば、実施形態における下球皿用球払出通路29、流下排出通路35)とを備え、前記上球皿用通路から前記下球皿通路に遊技球を導くことが可能なバイパス通路(例えば、実施形態における球受容部32)が形成されたバイパス部材(例えば、実施形態におけるオーバーフロー通路形成部材12)が、前記前枠の前面側に着脱可能に取り付けられ、前記バイパス部材および前記裏セット盤には、互いに係合可能な閉鎖保持用係合部(例えば、実施形態における盤側係合突起26d、固定片部37)が形成されており、前記遊技盤の後面側を前記裏セット盤により閉鎖した状態で前記前枠に前記バイパス部材を装着することにより、前記バイパス部材および前記裏セット盤の前記閉鎖保持用係合部を係合させて前記前枠に対する前記裏セット盤の閉鎖状態を保持する。
【0008】
なお、前記前枠は、固定保持用の外枠に前方に横開き開閉可能に設けられ、前記前枠の後面側には、左右にスライド移動可能にスライドロック部材が設けられ、前記裏セット盤の前面側には、前記スライドロック部材と係合して前記前枠に対する前記裏セット盤の閉鎖状態を保持するロック受け部材が設けられており、前記外枠に対して前記前枠を閉鎖させることにより、前記スライドロック部材を前記外枠に当接させて前記ロック受け部材と係合する方向にスライド移動させて前記ロック受け部材と係合可能に構成されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る弾球遊技機は、バイパス部材および裏セット盤に互いに係合可能な閉鎖保持用係合部が形成されており、遊技盤の後面側を裏セット盤により閉鎖した状態でバイパス部材を装着することにより、バイパス部材および裏セット盤の閉鎖保持用係合部を係合させて前枠に対する裏セット盤の閉鎖状態を保持するように構成されている。このように構成することで、バイパス部材が前枠の前面側に装着されるので各種制御基板の配設スペースを圧迫することなく、且つ、前枠と裏セット盤との下部中央部分が不正に開放されないように閉鎖保持用係合部により固定することができて、前枠と裏セット盤との間に工具等を挿入して行われる不正行為を防止可能となる。
【0010】
なお、外枠に対して前枠を閉鎖させることにより、スライドロック部材を外枠に当接させてロック受け部材と係合する方向にスライド移動させて係合可能に構成されたことが好ましい。このように構成した場合、仮にスライドロック部材をスライド移動させてロックし忘れた状態で外枠に対して前枠(弾球遊技機)を閉鎖させても、自動的にスライドロック部材がスライド移動されてロック受け部材と係合されて、前枠と裏セット盤とを確実にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るパチンコ機PMの正面図である。
【図2】上記パチンコ機PMの背面図である。
【図3】前枠に対してガラス扉が開いた状態を示す斜視図である。
【図4】前枠の正面図である。
【図5】裏セット盤の正面図(球通路形成板を装着した状態)である。
【図6】裏セット盤の正面図(球通路形成板を外した状態)である。
【図7】オーバーフロー通路形成部材の斜視図である。
【図8】オーバーフロー通路形成部材を示す図であって、(a)は正面図を、(b)は背面図をそれぞれ示す。
【図9】前枠の部分拡大図(オーバーフロー通路形成部材が装着されていない状態)を示す。
【図10】前枠に対して裏セット盤が開放された状態を示す斜視図である。
【図11】図4中のXI−XI部分の断面図を示す。
【図12】図4中のXII−XII部分の断面図を示す。
【図13】図1中のXIII−XIII部分の断面図を示す。
【図14】前枠の背面図(一部省略)を示す。
【図15】上記弾球遊技機を上方から見た図(外枠に対して前枠が閉鎖される前の状態)である。
【図16】上記弾球遊技機を上方から見た図(外枠に対して前枠が閉鎖された状態)である。
【図17】裏セット盤(裏面側固定部材)の拡大図である。
【図18】裏面側固定部材を示す図であって、(a)は斜視図を、(b)は正面図をそれぞれ示す。
【図19】(a)は、裏面側固定部材により前枠と裏セット盤とがロックされた状態の断面図を、(b)は、裏面側固定部材による前枠と裏セット盤とのロックが解除された状態の断面図をそれぞれ示す。
【図20】ファール球用通路形成部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。以下においては、弾球遊技機の代表例としてのパチンコ機に本発明を適用した例について説明する。まず、図1〜図6を参照しながら、本発明に係るパチンコ機PMの全体構成について概要説明する。
【0013】
パチンコ機PMは、図1に示すように、外郭方形枠サイズに構成された縦向きの固定保持枠をなす外枠1の開口前面に、これに合わせた方形枠サイズに構成されて開閉搭載枠をなす前枠2が互いの正面左側縁部に配設された上下のヒンジ機構3により横開き開閉および着脱が可能に取り付けられ、正面右側縁部に設けられたダブル錠と称される施錠装置4を利用して常には外枠1と係合連結された閉鎖状態に保持される。
【0014】
前枠2の前面側には、前枠2の上部前面域に合わせた方形状のガラス扉5が上下のヒンジ機構3を利用して横開き開閉および着脱可能に組み付けられ(図3参照)、施錠装置4を利用して常には前枠2の前面を覆う閉鎖状態に保持される。ガラス扉5の背後に位置する前枠2の前面側には、遊技盤10を着脱可能に収容する収容枠9(図4を参照)が設けられており、この収容枠9の上部領域に遊技盤10が後方から着脱可能にセット保持され、常には閉鎖保持されるガラス扉5を通して遊技盤10の正面の遊技領域を臨ませるようになっている。
【0015】
図1では遊技盤10の詳細な図示を省略しているが、遊技盤10の前面には略円形の遊技領域が区画形成され、この遊技領域に多数本の遊技釘とともに風車や各種入賞具、遊技の進行状況に応じて所定の画像が表示される画像表示装置などの遊技構成部品が取り付けられ、遊技領域の下端部に入賞具に入賞せずに落下した遊技球を遊技盤10の裏面側に排出させるアウト口が設けられている。
【0016】
図1および3に示すように、ガラス扉5の前面側下部には、前方に突出した上球皿6が設けられるとともに、この上球皿6の下方に下球皿7が設けられている。また、下球皿7の右側には、遊技球の発射操作を行う操作ハンドル8が設けられている。図4に示すように、収容枠9の下部領域の各部には、オーバーフロー通路形成部材12、遊技盤10の遊技領域に遊技球を発射する遊技球発射装置13、ファール球用通路形成部材70等が設けられている。また、パチンコ機PMにおいては、収容枠9に外レール9aが一体的に形成されているので、遊技盤10に外レールが形成された構成と比較して、遊技球発射装置13と外レール9aとの位置精度を確保しやすく、遊技球発射装置13から打ち出される遊技球の軌道を安定させることができるようになっている。
【0017】
前枠2の裏面側には、中央に前後連通する窓口を有して前枠2よりもやや小型の方形枠状に形成された裏セット盤20が、上下のヒンジ機構3aにより横開き開閉および着脱可能に取り付けられている。この裏セット盤20の方形枠部分を形成する盤本体20aには、図2および図6に示すように、遊技球を貯留する球貯留タンク21、球貯留タンク21から右方に緩やかな下り傾斜を有して延びるタンクレール22、タンクレール22の右端部に繋がり下方に延びる整列待機通路23、整列待機通路23の下端部に繋がって設けられた球払出装置24、球払出装置24の下方に設けられて球払出装置24から払い出された遊技球を上球皿6に導く上球皿用球払出通路28、この上球皿用球払出通路28から分岐して上球皿用球払出通路28内に溢れた遊技球を盤側下球皿用開口20bから下球皿7に導く下球皿用球払出通路29、遊技領域に到達しなかったファール球を盤側下球皿用開口20bから下球皿7に導くファール球導出通路30からなる賞球機構が設けられている。
【0018】
盤本体20aの前面下部に球通路形成板26が取り付けられることにより、上記の上球皿用球払出通路28、下球皿用球払出通路29およびファール球導出通路30が形成される。この球通路形成板26には、上球皿用球払出通路28と連通する盤側上球皿用開口26a、オーバーフロー通路形成部材12と連通する盤側オーバーフロー通路用開口26b、開放検出突起26c、盤側係合突起26dおよびファール球用開口26eが形成されるとともに、ロック受け部材27が前方に突出して取り付けられている。
【0019】
また、裏セット盤20の裏面各部には、電源基板アッセンブリや主基板アッセンブリ等の各種制御基板アッセンブリが取り付けられている。この裏セット盤20は、裏面側上部の左右端部および裏面側下部のヒンジ機構3aとは反対側端部に、裏セット盤20を前枠2にロックするための裏面側固定部材50を合計3つ備えて構成される(詳細については後述)。
【0020】
このように構成されるパチンコ機PMでは、前枠2に対してガラス扉5および裏セット盤20が閉止され施錠された状態で遊技に供され、上球皿6に遊技球を貯留させて操作ハンドル8を回動操作することにより遊技が開始される。操作ハンドル8が回動操作されると、上球皿6に貯留された遊技球が遊技球発射装置13により1球ずつ遊技盤10の遊技領域に打ち出され、以降パチンコゲームが展開される。
【0021】
以上ここまでは、パチンコ機PMの全体構成について概要説明した。ところで最近、このパチンコ機PMのように、前枠2に対して裏セット盤20が揺動開閉可能となった構造のパチンコ機に対して、前枠2と裏セット盤20との間を無理やり押し広げてスペースを作り出し、このスペースに工具等を挿入して例えば遊技盤10の下部中央に設けられた大入賞装置の入賞検出器に対して遊技球が通過したように検知させることで、賞球を不正に払い出させる不正行為が行われることが問題となっている。
【0022】
このような不正行為が行われる場合、各種制御基板アッセンブリの配設スペースの関係から裏面側固定部材50を設けにくく、且つ、挿入した工具を比較的簡単に大入賞装置の入賞検出器に到達させることができる前枠2と裏セット盤20との下部中央部分が特に狙われやすい。そこで、本発明に係るパチンコ機PMにおいては、前枠2(収容枠9)に対してオーバーフロー通路形成部材12を着脱可能に構成するとともに、この着脱可能なオーバーフロー通路形成部材12を利用して前枠2と裏セット盤20との下部中央部分を強固に固定することで、上述のような不正行為を確実に防止できるようになっている。それでは、オーバーフロー通路形成部材12による前枠2と裏セット盤20と固定構造ついて、図7〜図13を参照しながら以下に説明する。
【0023】
オーバーフロー通路形成部材12は、図7および図8に示すように、略L字状に形成された通路本体部31と揺動ストッパ34とから構成され、例えば透明な樹脂材料を用いて形成されて外部から内部を転動する遊技球を視認可能となっている。通路本体部31の左側上部には、前後に遊技球を受容可能な球受容部32が形成され、この球受容部32の前部に、上球皿6に連通してガラス扉5に形成された上球皿筒部6a(図3参照)を受容可能な筒部受容開口33が形成されている。球受容部32の内部に、筒部受容開口33を部分的に覆うように揺動ストッパ34が配設されている。この揺動ストッパ34の軸部34aは、捩りバネ34bによって揺動ストッパ34を球受容部32の内部に当接させる方向に常時付勢されている。通路本体部31の右側下部には、後方から受容した遊技球を下方に導く流下排出通路35が形成されている。
【0024】
図8(a)に示すように、流下排出通路35の左側部分には、このオーバーフロー通路形成部材12を収容枠9に装着したときに、収容枠9に形成された前枠側係止突起43b(図9参照)と係合する取付操作片36が左方に延びて形成されている。また、流下排出通路35の上部左部には、収容枠9に形成された前枠側係合部43d(図9参照)、および球通路形成板26に形成された盤側係合突起26dに係合可能な固定片部37が形成されるとともに、流下排出通路35の下部左部には、収容枠9に形成された第1スライド係合部43c(図9参照)と係合可能な第1スライド片部38が形成されている。球受容部32の左側には、収容枠9に形成された第2スライド係合部43a(図9参照)と係合可能な第2スライド片部39が形成されている。
【0025】
一方、収容枠9における前枠側係合部43dの上方には、前枠2と裏セット盤20との開放状態を検出するための開放検出スイッチ40cが設けられており、前枠側係合部43dの下方には、球流出ストッパ42が前後に揺動可能に設けられている。
【0026】
図10に示す状態から前枠2に対して裏セット盤20を閉鎖させることで、盤側上球皿用開口26aと収容枠9に形成された前枠側上球皿用開口40a、盤側オーバーフロー通路用開口26bと収容枠9に形成された前枠側オーバーフロー通路用開口40b、盤側下球皿用開口20bと収容枠9に形成され前枠側下球皿用開口40gとがそれぞれ連通し、開放検出突起26cと収容枠9に設けられた開放検出スイッチ40cとが当接され、収容枠9に形成された前後開口40dに盤側係合突起26dが挿入されて位置する。このとき、図11および図12に示すように、収容枠9の裏面側に後方に突出して形成された前枠側庇部40fと、盤本体20aの前面側に前方に突出して形成された盤側庇部26fとが、上下に折り重なるように対向して位置しているため、万が一、パチンコ機PMの下部から工具を挿入しても遊技盤10の裏面部分にまで到達させにくく、不正行為を効果的に防止できるようになっている。
【0027】
なお、ガラス扉5の裏面側における球流出ストッパ42に対応する位置に、後方に突出したストッパ開放部材(図示せず)が設けられている。そのため、前枠2に対してガラス扉5を閉鎖することで、ストッパ開放部材が球流出ストッパ42に当接して球流出ストッパ42を後方に揺動させて、流下排出通路35と下球皿7とが連通される。一方、前枠2に対してガラス扉5を開放したときには、球流出ストッパ42が流下排出通路35を塞ぐ位置に揺動するようになっており、これによって流下排出通路35から外部に遊技球がこぼれ落ちることを防止できる。
【0028】
なお、図9に示すように収容枠9には、前枠側係合部43dに対応して前後開口40d、および第1スライド係合部43cに対応して前後開口40hが形成されているが、これらは前枠側係合部43dおよび第1スライド係合部43cを形成するために成形金型の構造上必要とされる開口である。
【0029】
上記のように構成されるオーバーフロー通路形成部材12は、前枠2に対して裏セット盤20を閉鎖した状態で、前枠2(収容枠9)の前面側に取り付けられる。このとき、図11に示すように、盤側係合突起26dが前後開口40dに挿入されて前枠側係合部43d内に位置した状態で、オーバーフロー通路形成部材12を左方にスライド移動させることにより、前枠側係合部43dと固定片部37との間に盤側係合突起26dが挟み込まれるようになっている。そのため、パチンコ機PMにおいては、前枠2と裏セット盤20との下部中央部分を、前後に開いて隙間が形成されないように強固に固定することができ、この部分に隙間を形成することで行われる不正行為を確実に防止できるようになっている。
【0030】
前枠2に対して裏セット盤20を閉鎖した状態において、開放検出突起26cと開放検出スイッチ40cとを当接させておくことで、万が一前枠2と裏セット盤20との間に隙間を形成して不正行為を行おうとしても、その行為を早期に検出して報知することが可能となり、不正行為を未然に防止できるようになる。また、前枠2に対して裏セット盤20を閉鎖する際に、裏面側固定部材50および後述するスライドロック部材41を操作して固定し忘れることがあっても、開放検出スイッチ40cを利用して固定忘れを検出して報知することができる。
【0031】
このようにして、前枠2に装着されたオーバーフロー通路形成部材12に対して、図13に示すように、上球皿筒部6aが前後に挿入されてガラス扉5が閉鎖されることで、賞球として払い出された遊技球が上球皿用球払出通路28、前枠側上球皿用開口40aおよび上球皿筒部6aを転動して上球皿6に導かれる。そして、上球皿6が遊技球で満杯になった状態でさらに賞球が払い出されると、上球皿用球払出通路28、前枠側上球皿用開口40aおよび上球皿筒部6aに遊技球が滞留することとなるが、このときには、上球皿用球払出通路28から溢れた遊技球が下球皿用球払出通路29を転動し、盤側下球皿用開口20b、前枠側下球皿用開口40gおよび流下排出通路35を経由して下球皿7に導かれるので、上球皿6から遊技球がこぼれ落ちることがない。
【0032】
ところで、上記のように上球皿用球払出通路28に遊技球が溢れて、溢れた遊技球が下球皿7に導かれている状態で球詰まりが発生した場合、上球皿用球払出通路28、前枠側上球皿用開口40aおよび上球皿筒部6aに遊技球が滞留した状態のままで、前枠2に対してガラス扉5を開放させる必要がある。このときに、特に上球皿用球払出通路28および前枠側上球皿用開口40aに滞留した遊技球は、ガラス扉5の開放と同時に前方へ転動して外部にこぼれ落ちる虞があるが、オーバーフロー通路形成部材12が装着されているが故に、オーバーフロー通路形成部材12の球受容部32に受容された後、前枠側オーバーフロー通路用開口40bおよび盤側オーバーフロー通路用開口26bを通過して下球皿用球払出通路29に導かれ、最終的には下球皿7に導かれる。
【0033】
なお、前枠2に対してガラス扉5を開放させると、球受容部32から上球皿筒部6aが前方に抜かれると同時に、揺動ストッパ34が前方に揺動して筒部受容開口33を部分的に覆うため、上球皿用球払出通路28および前枠側上球皿用開口40aから球受容部32に転動する遊技球が、筒部受容開口33から前方にこぼれ落ちることがない。
【0034】
以上説明したように、上球皿用球払出通路28と下球皿用球払出通路29とに跨るように収容枠9の前面側に装着されるオーバーフロー通路形成部材12は、前枠2に対してガラス扉5を開放させたときに、上球皿用球払出通路28および前枠側上球皿用開口40aから転動してくる遊技球を、下球皿用球払出通路29を経由させて下球皿7に導くことで、外部にこぼれ落ちることを防止するという本来の機能に加えて、裏セット盤20と係合されることで前枠2と裏セット盤20との下部中央部分に隙間が形成されないように強固に固定するという機能を有している。そのため、前枠2と裏セット盤20との下部中央部分は、工具を挿入することで比較的簡単に賞球機構にアクセスできるために、工具を挿入する部分として狙われやすい箇所であるが、この部分をオーバーフロー通路形成部材12によって隙間が形成されないように強固に固定することで、不正行為を効果的に防止可能となる。
【0035】
以上ここまでは、オーバーフロー通路形成部材12による前枠2と裏セット盤20と固定構造ついて説明した。このパチンコ機PMにおいては、賞球機構に遊技球が詰まった場合や賞球機構の清掃作業を行う場合に、まずヒンジ機構3を利用して外枠1に対してパチンコ機PMを前方に揺動させ、次に裏セット盤20の裏面側から裏面側固定部材50を操作して前枠2と裏セット盤20とのロックを解除し、ヒンジ機構3aを利用して前枠2に対して裏セット盤20を後方に揺動させた後、賞球機構のメンテナンスを行う。そして、メンテナンスが終了すると、前枠2に対して裏セット盤20を前方に揺動させて閉鎖させた状態で、裏面側固定部材50を操作して前枠2と裏セット盤20とをロックし、外枠1に対してパチンコ機PMを後方に揺動させて、元の外枠1に収容保持された状態に戻す。
【0036】
ところで、例えば裏セット盤20の下部のヒンジ機構3a側端部に、裏面側から操作可能な裏面側固定部材50を設けた場合、裏セット盤20の4隅をバランス良く前枠2に固定可能になるが、一方で、メンテナンス作業者にとってはこの裏面側固定部材50が視認しづらい奥まった所にあるため、メンテナンス作業終了後にロックし忘れた状態のままパチンコ機PMを外枠1に収容保持させてしまうことがあった。そうすると、裏セット盤20の下部のヒンジ機構3a側端部が固定されていないため、前枠2と裏セット盤20との間を押し広げ、そのスペースに工具を挿入して行う不正行為が行いやすくなるという問題があった。
【0037】
そこで、本発明に係るパチンコ機PMにおいては、裏セット盤20の下部のヒンジ機構3a側端部にスライドロック部材41を設けることで、前枠2に対して裏セット盤20をロックし忘れた状態のままパチンコ機PMを外枠1に収容保持させても自動的にロックされて、前枠2と裏セット盤20との間を押し広げることを防止できるようになっている。それでは、このスライドロック部材41の構造および作動について、図14〜図16を参照しながら以下に説明する。
【0038】
スライドロック部材41は、図14に示すように、左右に延びる板状に形成されており、左右に延びる2つの長穴41aが開口形成されて構成される。このスライドロック部材41は、取付ネジ41bが長穴41aに挿通されることで、前枠2(収容枠9)の裏面側下部のヒンジ機構3a側端部に左右にスライド移動可能に取り付けられており、スライド位置に応じて裏セット盤20の前面側に取り付けられたロック受け部材27と係脱されるようになっている。
【0039】
すなわち、スライドロック部材41は、外側(外枠1側)に引き出されて前枠2から突出して位置することで、ロック受け部材27との係合が解除されて前枠2に対して裏セット盤20を開放可能となり、一方、前枠2に対して裏セット盤20を閉鎖した状態で内側(外枠1側とは反対側)に押し込まれて前枠2内に収まって位置することで、ロック受け部材27と係合されて前枠2に対して裏セット盤20が後方に開かないように固定されるようになっている。
【0040】
このため、例えば図15に示すように、メンテナンス作業後にスライドロック部材41を内側に押し込んでロック受け部材27に係合させることを忘れたまま、ヒンジ機構3を利用してパチンコ機PMを矢印Aの方向に揺動させて外枠1に収容保持させようとすると、スライドロック部材41は外枠1側に当接して矢印Bの方向にスライド移動される。パチンコ機PMをそのまま揺動させて、図16に示すように、パチンコ機PMを外枠1に収容保持させることで、スライドロック部材41が前枠2内に収まる位置にまでスライド移動されるとともに、そのスライド移動の過程で球通路形成板26とロック受け部材27との間に挟持されて、前枠2に対して裏セット盤20を前後に開かないように自動的に固定することができる。
【0041】
以上、スライドロック部材41の構造および作動について説明した。ところで、上述したようにして不正行為を行う際に、例えば前枠2と裏セット盤20との隙間に挿入した工具を利用して、前枠2に対して裏セット盤20を固定する固定部材を操作(破壊)することで、前枠2に対して裏セット盤20を開きやすくして不正行為を行う場合がある。そこで、本発明に係るパチンコ機PMにおいては、裏面側固定部材50を用いることでこのような操作に対して簡単に裏セット盤20が開かないように構成されている。それでは、この裏面側固定部材50の構造および作動について、図17〜図19を参照しながら以下に説明する。なお、以下においては、裏セット盤20を裏面側から見た場合に上側左端部に設けられた裏面側固定部材50を例示して説明する。
【0042】
裏面側固定部材50は、図17および図18に示すように、例えば弾性変形可能な樹脂材料を用いて形成されており、本体部51の一端側に左右に延びる長穴52が形成されるとともに、他端側上部に上下に弾性変形可能な弾性変形片53が形成される。この弾性変形片53の先端部には上方に延びる係合突起部54が形成されており、係合突起部54の上端面の一部には長穴52側に向けて下がるように傾斜した押圧傾斜面54aが形成されている。本体部51の略中央部分には、断面視L字状の前側係合突起55が前方に突出して形成されている。
【0043】
この裏面側固定部材50は、図17に示すように、裏セット盤20の裏面側に開口した固定部材保持空間60に収容された状態で、取付ネジ62が長穴52に挿通されて左右にスライド移動可能となっている。固定部材保持空間60の開口部には、下方に突出した係止突起61が形成されており、この係止突起61の正面視右側端面が当接係止面61aとなっている。
【0044】
前枠2に対して裏セット盤20が閉鎖されて、裏面側固定部材50がヒンジ機構3a側にスライド移動された状態においては、図19(a)に示すように、収容枠9の裏面側に後方に突出して形成された断面視コの字状の収容枠側係合部9bと前側係合突起55とが係合して、前枠2に対して裏セット盤20が前後に開かないように固定される。このとき、図17に示すように、係合突起部54と当接係止面61aとが当接しており、裏面側固定部材50がヒンジ機構3aとは反対側にスライド移動すること、すなわち、収容枠側係合部9bと前側係合突起55との係合が解除されることが規制される。ここで、収容枠側係合部9bと前側係合突起55との係合を解除させるためには(図19(b)参照)、弾性変形片53を下方に押し下げることで係合突起部54が当接係止面61aに当接しない位置にまで弾性変形させた状態で、裏面側固定部材50をヒンジ機構3aとは反対側にスライド移動させる必要がある。
【0045】
このように、裏面側固定部材50は、一旦弾性変形片53を下方に押し下げなければ、収容枠側係合部9bと前側係合突起55との係合を解除して、前枠2に対して裏セット盤20を開くことができないように構成されている。そのため、前枠2と裏セット盤20との僅かな隙間に挿入した工具を用いて、収容枠側係合部9bと前側係合突起55との係合を解除することは困難であり、前枠2に対して裏セット盤20が開かれて行われる不正行為を効果的に防止できる。
【0046】
以上、裏面側固定部材50の構造および作動について説明した。上述したように、本発明に係るパチンコ機PMは、主にオーバーフロー通路形成部材12、スライドロック部材41および裏面側固定部材50に特徴を有しているが、これ以外にも、収容枠9に対して着脱可能に装着されたファール球用通路形成部材70に特徴を有している。そこで以下においては、ファール球用通路形成部材70について図20を参照しながら簡単に説明する。
【0047】
遊技球発射装置13により打ち出される遊技球のうちで、十分な打ち出し強度で打ち出される遊技球は遊技盤10の遊技領域に達するが、一方、打ち出し強度が足りないため遊技盤10の遊技領域に到達できない遊技球がファール球として遊技球発射装置13側に戻ってくることとなる。このように、遊技球発射装置13側に戻ってくるファール球を回収する通路を形成するための部材が、ファール球用通路形成部材70である。
【0048】
ファール球用通路形成部材70の内部には、上下に延びる通路形成壁71および回収通路仕切り壁72によって、発射通路73、左側ファール球回収通路74および右側ファール球回収通路75が区画形成されている。また、通路形成壁71の下方には、左右に延びる下側ファール球回収通路76が形成されている。
【0049】
ファール球用通路形成部材70の上部から流入したファール球は、発射通路73に入るよりも高い確率で左側ファール球回収通路74または右側ファール球回収通路75に流入する。左側ファール球回収通路74および右側ファール球回収通路75は、通路幅がそれぞれ遊技球の径よりも若干大きい通路幅となるように形成されているため、通路内に流入した遊技球が内部で暴れることを規制しつつ、当該ファール球回収通路から、収容枠9の前面側に形成されたファール球排出凹部(図示せず)、収容枠9に前後に貫通して形成された枠側排出通路40e(図10参照)、球通路形成板26に形成されたファール球用開口26e、およびファール球導出通路30を通過して下球皿7に排出される。
【0050】
なお、遊技発射装置13による遊技球の打ち出し強度が非常に弱く、発射通路73までしか到達できずに戻ってくるファール球は、下側ファール球回収通路76に流入するようになっている。そして、当該ファール球は、下側ファール球回収通路68を通ってファール球排出凹部に流入し、上記ファール球と同様に、ファール球導出通路30を通過して下球皿7に排出される。この下側ファール球回収通路76が設けることで、打ち出し強度が非常に弱く発射通路73の上部まで届かないファール球を迅速に回収することができるようになっている。
【0051】
また、上述の実施形態において、スライドロック部材41を前枠2の裏面側下部のヒンジ機構3a側端部に設けた構成例について説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、前枠2の裏面側のヒンジ機構3a側上下それぞれにスライドロック部材41を配設する構成でも良い。
【0052】
なお、以上説明した実施形態では、本発明の適用対象となる弾球遊技機の一例としてパチンコ機を例示して説明したが、これに限定されるものではない。例えばアレンジボール、雀球遊技機等についても同様に適用可能であり、同様の効果を得ることができるものである。
【符号の説明】
【0053】
PM パチンコ機(弾球遊技機)
1 外枠
2 前枠
5 ガラス扉
6 上球皿
6a 上球皿筒部(上球皿用通路)
7 下球皿
10 遊技盤
12 オーバーフロー通路形成部材(バイパス部材)
20 裏セット盤
21 球貯留タンク
24 球払出装置
26d 盤側係合突起(閉鎖保持用係合部)
26f 盤側庇部(裏セット盤側庇部)
27 ロック受け部材
28 上球皿用球払出通路(上球皿用通路)
29 下球皿用球払出通路(下球皿用通路)
32 球受容部(バイパス通路)
35 流下排出通路(下球皿用通路)
37 固定片部(閉鎖保持用係合部)
40a 前枠側上球皿用開口(上球皿用通路)
40f 前枠側庇部
41 スライドロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤を収容保持する前枠と、前記前枠の前面側に横開き開閉可能に設けられ前記前枠に収容保持された前記遊技盤の前方を覆って閉鎖するガラス扉と、前記前枠の後面側に横開き開閉可能に設けられ前記前枠に収容保持された前記遊技盤の後面側を覆って閉鎖する裏セット盤とを備えた弾球遊技機において、
前記ガラス扉には、遊技球を貯留可能な上球皿と、前記上球皿の下方に位置して遊技球を貯留可能な下球皿とが設けられ、
前記裏セット盤には、前記裏セット盤に設けられた球貯留タンクに貯留された遊技球を入賞状態に応じて払い出す球払出装置が備えられ、
前記裏セット盤から前記前枠を通って前記上球皿に繋がって形成されて前記球払出装置により払い出された遊技球を前記上球皿に導く上球皿用通路と、前記上球皿用通路から分岐して前記前枠を通って前記下球皿に繋がって形成されて遊技球を前記下球皿に導くことが可能な下球皿通路とを備え、
前記上球皿用通路から前記下球皿通路に遊技球を導くことが可能なバイパス通路が形成されたバイパス部材が、前記前枠の前面側に着脱可能に取り付けられ、
前記バイパス部材および前記裏セット盤には、互いに係合可能な閉鎖保持用係合部が形成されており、
前記遊技盤の後面側を前記裏セット盤により閉鎖した状態で前記前枠に前記バイパス部材を装着することにより、前記バイパス部材および前記裏セット盤の前記閉鎖保持用係合部を係合させて前記前枠に対する前記裏セット盤の閉鎖状態を保持することを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】
前記前枠は、固定保持用の外枠に前方に横開き開閉可能に設けられ、
前記前枠の後面側には、左右にスライド移動可能にスライドロック部材が設けられ、
前記裏セット盤の前面側には、前記スライドロック部材と係合して前記前枠に対する前記裏セット盤の閉鎖状態を保持するロック受け部材が設けられており、
前記外枠に対して前記前枠を閉鎖させることにより、前記スライドロック部材を前記外枠に当接させて前記ロック受け部材と係合する方向にスライド移動させて前記ロック受け部材と係合可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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