説明

弾褥体

【課題】使用時の快適性に優れた形態調整可能な弾褥体を提供する。また、使用時の形態上の位置ぶれを生じず、形態変更度の大きい場合も対応可能な弾褥体を提供する。
【解決手段】吸排気弁を備えた袋状非通気性膜体に、嵩高充填物を収容してなる袋体を、少なくともその一部に用いてなる弾褥体であって、上記嵩高充填物が、JIS K6400による25%圧縮時の硬度が20〜50N/314cm、密度が25〜80kg/mであることを特徴とする弾褥体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具寝装分野に属し、特に、枕、クッション、敷き布団、ベッドパッド、マットレス等の弾褥体に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、睡眠に対する関心の高まりより、自分にフィットした寝具が求められている。寝具売場では様々な計測器を用いて自分にフィットした寝具を計測して提供してくれる。
【0003】
このような状況の中、寝具の1つである枕において、様々な枕が提案されている。例えば、弾性材料で立体的に形成された枕芯体と、これを収納する通気性を有しない素材で形成された枕側とからなる携帯用枕が提案されている(特許文献1参照)。同じく携帯用枕において、硬度が7〜14kg/314cm、密度が13〜23kg/mであるウレタンフォームを充填することで、圧縮畳み込みが可能で自己復元能力を有する携帯用枕が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、これらの枕は、携帯可能なことを特徴としている為に寝心地は十分とは言えなかった。
また、嵩高充填物が密度の低いウレタンフォームでは、使用時、頭部のあたる部分は底付感があり、その周辺では膨れる為に寝心地を悪くしていた。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3059354号公報
【特許文献2】特開2001−87107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記における問題点を解消し、使用時の快適性に優れた形態調整可能な弾褥体を提供することをその目的としている。
また、本発明の他の目的は、使用時の形態上の位置ぶれを生じず、形態変更度の大きい場合も対応可能な弾褥体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、吸排気弁を備えた袋状非通気性膜体に、嵩高充填物を収容してなる袋体を、少なくともその一部に用いてなる弾褥体であって、上記嵩高充填物が、JIS K6400による25%圧縮時の硬度が20〜50N/314cm、密度が25〜80kg/mであることを特徴とする弾褥体によって達成される。
【0008】
また、本発明は、袋体に収容する嵩高充填物が、ポリウレタンフォーム及び/又はポリウレタンフォームチップであることが好適である。
また、本発明は、袋状非通気性膜体が、伸縮性を有するフィルム又は伸縮性を有するフィルムと伸縮性を有する繊維構造体とを一体化してなる複合体であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、袋状非通気性膜体の中に空気と弾性を有する嵩高充填物とを入れた袋体を使用する弾褥体であって、所望の形態(高さ)になるように弾褥体に力を加えれば吸排気弁を介して袋体内部にある空気が外部に抜け、形態と硬さを調整することが出来る。形態を調整した状態で吸排気弁を閉じた状態にすれば、この状態を持続させることができ、吸排気弁を開けた状態にすれば、嵩高充填物の自己復元能により元の状態に戻る。
すなわち、本発明は、消費者ニーズに基づき身体にフィットしやすい弾褥体の提供が可能であり、取り扱いが簡単で且つ使い心地のよい弾褥体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の弾褥体とは、弾力性のある寝具のことであり、枕、クッション、敷き布団、ベッドパッド、マットレス、ベッドマットレス等の身体をのせて使用する寝具の総称である。
【0011】
本発明の弾褥体は、袋状非通気性膜体内に、嵩高充填物を収容してなる袋体を少なくともその一部に用いたものである。
【0012】
非通気性膜体は、ガスバリア性を有するものであればよいが、特に、ポリウレタン等の伸縮性に優れたフィルムが好適である。
伸縮性に優れたフィルムを用いると、形態の大きな変化にも対応が可能となる。また、形態変更時にシワが入りにくい。すなわち、空気を吸排気すると非通気性膜体の張力が変動し、伸縮性の少ない非通気性膜体ではシワが発生し、寝心地を悪くすることがある。
フィルムの破断伸度は、200%以上であることが好適である。
【0013】
上記フィルムの厚みは、好ましくは0.02〜0.2mm、より好ましくは0.05〜0.1mmである。
本発明に係るフィルムは、公知の成形方法により成形される。例えば、ブロー成形法、インフレーション法、Tダイ法等の方法により成形されたものを使用することができる。また、多重構造にしてもよく、例えば二重構造の場合、少なくとも内外の何れかがガスバリヤ性を保有していればよい。
【0014】
また、ガスバリア性及び伸縮性を有するフィルムに、伸縮性を有する繊維構造体を一体化してなる複合体を用いるとより好適である。
上記伸縮性を有する繊維構造体としては、伸縮性に優れたポリウレタン等からなる不織布が好適に用いられる。繊維構造体としては、織物、編物等も使用可能である。
上記のような不織布は、公知の方法により得られる。例えば、メルトブロー法、スパンポンド法等により製造されたものを使用することができる。
伸縮性を有する繊維構造体の厚みは、好ましくは0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。
また、繊維構造体の破断伸度は、200%以上であることが好適である。
【0015】
上記フィルムと繊維構造体とは、熱融着により、または接着剤を用いるにより一体化し、複合体とする。
複合体の厚みは、薄すぎると強度の問題があり、厚すぎると形状変更に対応するのに不適な場合がある。最終用途によって適切な厚みは異なってくるが、一般的には0.2〜1.0mmが適しており、好ましくは0.3〜0.7mmである。
また、複合体の破断伸度は、200%以上であることが好適である。
【0016】
本発明に用いる嵩高充填物は、JIS K6400による25%圧縮時の硬度は20〜50N/314cmであることが必要である。この範囲内であれば、形態調整が可能で、使用時の快適性に優れた弾褥体が得られる。
特に、弾褥体が枕の場合、頭部や頚部を支えるためには、20〜40N/314cm、敷き寝具の場合、胴部や腰を支えるためには、30〜50N/314cmの硬さが好ましい。
また、密度は、弾褥体の大きさとも関連するが、密度が高すぎると重くなり、取り扱い難く、軽すぎると弾褥体として身体を支えきれなくなるので、25〜80kg/mであ
ることが必要であり、30〜75kg/mであることが好ましい。
【0017】
上記条件を満たす嵩高充填物としては、外力を加えたとき変形し易く、弾力性を有する発泡体や繊維塊、粒状物集合体など、空気を内包し、且つ空気が動き易いものが良い。天然物、合成物等の発泡体等いかなるものでも良く、また、繊維塊のように使用を繰り返すことにより嵩高の減少(ヘタリ)が大きいものは別の材料を併用しても良い。
粒状物としては、種々多様に使用できるが、球状とした場合、粒径は0.4〜30mmが好ましく、他の形状の場合もこれに準じた大きさが好ましい。
【0018】
ポリウレタンフォームは、ポリオールとイソシアネートの組成を変更することで、硬度、密度の変更が可能であり、本発明の目的に適した素材である。
ポリウレタンフォームは、一体物で使用しても、粉砕等による粒状物を使用してもよい。
【0019】
本発明に係る袋体は、袋状非通気性膜体に、嵩高充填物を収容したものである。
最終的に形成される袋体の内容積と収容される嵩高充填物との大きさの関係は、形状保持、形態調整を鑑みれば、ほぼ同等であることが好ましく、具体的には、1:0.7〜1.3が好適である。
【0020】
本発明に係る袋体は、上記非通気性膜体を、所望形状とし、ウェルダー加工、縫製、接着剤の使用等により3方を封じて袋状にし、嵩高充填物を収容した後、開放端部を封じるようにしてもよいし、1枚又は2枚の非通気性膜体の間に嵩高充填物を配設し、端部全部を接合するようにしてもよい。
【0021】
また、袋状非通気性膜体には、空気を出し入れ可能なように吸排気弁を設けておく。吸気口と排気口や、吸排兼用の口部を設けて空気の入った状態と、必要量抜いた状態を選択できる、いわゆる可逆的固定方式を採用できるようにしておけば、空気の出し入れが非常に行い易いものとなる。
【0022】
この袋体を用い、枕、クッション、敷き布団、ベッドパッド、マットレス、ベッドマットレス等の所望形状の弾褥体とする。袋体をそのまま弾褥体としてもよいし、袋体と共に、他の充填物を用いて弾褥体としてもよい。また、袋体を複数個組み合わせ、部位別に所望の硬さ、高さを調節することが可能な弾褥体としてもよい。
【0023】
枕の場合、袋体単体を弾褥体とし、直接頭部に当てて枕として使用してもよいし、また、他の充填物と共に、袋体を用い、それら全体を側生地で覆って枕としてもよい。
さらに、枕を左右に2分割して、それぞれに袋体を配設した枕とし、使用時にそれぞれの硬さ、高さを自分の好みに合わせ、一方向だけの横寝姿勢をとりやすい枕として使用することもできる。
【0024】
クッション、敷き布団、マットレス等でも同様に、頭部、腰部や足部などがくる位置に袋体を使用することで、自分にフィットした形状に合わせることができる弾褥体とすることができる。
【0025】
また、袋体単体を弾褥体とし、敷布団やマットレスと組み合わせて使用するようにしてもよい。
【0026】
本発明の弾褥体によれば、弾褥体に頭部を乗せるなどして一旦形状を決めて、空気を抜いた後は、中の嵩高充填物は集合体となり、袋体内での移動を遮断することができ、まとわりつく感触を排除できる。また、空気の抜き加減の強弱で、表面の質感を硬くも柔らか
くも自在に調整できる。よって、個人の感性に応じた状態での形状・質感の固定化が容易にはかれる特性があって、使用し易いものとなる。
【0027】
しかも、本発明の場合、袋体内の空気を必要量抜き取った後は、中の詰め物の固定化が完全にできるので、保持できる形状自身、頭部をのせたときの形状そのものとなる。
さらに、本発明の場合、前述の空気を抜き取る行為で、中の詰め物の固定化が完全にできるので、使用時に音がすることはない。よって、袋状包装体内に入れる詰め物は単素材で十分であり、ライフサイクルの見地からも環境負荷の少ない商品が出来る。
また、吸排気弁を介して袋体の中の空気を抜いても袋体内の嵩高充填物(発泡体)により高さを維持出来、また、吸排気弁を開放しておけば通常の弾褥体と同様に使用することが出来る。
【0028】
また、上記非通気性膜体に十分な伸縮性を付与することにより、形態変更度の大きい場合も対応可能となり、かつ、形態変更時にしわが入りにくい。
また、非通気性膜体として、外層部が繊維構造体となるような複合体を用いることにより、肌触りがよく、汗のべたつきがないので、袋体をそのまま弾褥体として用いることができ、適正用途を拡大することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
尚、以下に示す硬度は、JIS K6400に準拠する25%圧縮時の硬度である。
【0030】
(実施例1)
破断伸度200%以上を有する厚み0.05mmのポリウレタンフィルム(日本マタイ(株)製、商品名:エスマーURS)と、破断伸度200%以上を有する厚さ0.3mmのポリウレタン不織布(KBセーレン(株)製、エスパンシオーネ(登録商標)不織布)とをラミネート加工にて複合化した。得られた複合体を非通気性膜体として用い、熱接着加工にて40cm×55cmの袋状に成形した。
嵩高充填物として、硬度30N/314cmで、密度30kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム(株)製、商品名:304)を粉砕機にて、1cm程度の大きさに粉砕したポリウレタンフォームチップを用い、上記袋状の非通気性膜体に袋体内容積と同量のポリウレタンチップを収容し、また、空気の出し入れが可能なように、吸排気弁を設け、袋体とした。
次に、図1に示すように、ポリエステル綿(帝人(株)製、3.3デシテックス、38mmカット長)で、上記袋体2が中央部分にくるように袋体2を包み込み、それを側生地4覆い、たて43cm×よこ63cm×高さ13cmの枕1を作成した。
【0031】
やや硬めのマットレス(硬度130N/314cm、密度35kg/mのポリウレタンフォーム使用)の上に上記作成した枕をおき、仰臥位に寝たとき後頭部がKにあたるようにして、圧を加えた。無荷重状態で13cmの高さの枕が頭を枕の上に載せることで加圧され6cmになり、吸排気弁3を閉じることで、6cmの高さに調節でき、寝心地も良好であった。
また、非常にソフトな和綴じ布団(ポリエステル綿(帝人(株)製、14.3デシテックス、カット長51mm)使用)の上に仰臥位で寝て、枕高さを調節した。枕の高さは7.3cmで違和感のない状態を保つことができ、形態(高さ)調節ができ、寝心地も良好であった。
【0032】
(比較例1)
硬度30N/314cm、密度85kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム(
株)製、商品名:GTF )を用いる以外は、実施例1と同様にして枕を作成し、評価した。
その結果、弾力性が強く、形態調節後も頭を安定化させることができず寝心地の悪い枕であった。
【0033】
(比較例2)
硬度20N/314cm、密度20kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム(株)製、商品名:MSS )を用いる以外は、実施例1と同様にして枕を作成しようとしたが、ポリウレタンフォームが柔らかすぎて粉砕することができなかった。そのため、粉砕せずにブロック形状のままのウレタンフォームを用い、枕を作成し、評価した。
その結果、内部の空気を抜き、形態固定は出来たが、柔らかすぎて後頭部が低くなりすぎ、寝心地の悪い枕であった。
【0034】
(実施例2)
実施例1の非通気性膜体を用い、長さ70cm×直径20cmの袋体を作成し、この中に、硬度35N/314cm、密度75kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム製、商品名:LRB75)を収容し、また、空気の出し入れが可能なように、吸排気弁を設け、弾褥体を作成した。
この弾褥体をベッドマットレス(硬度130N/314cm、密度35kg/mのポリウレタンフォーム使用)の上におき、体重70kg、身長170cmの男性が横寝しやすいように自分の右側に置き、腰〜背中の部分を押し付けて自分の体型に合った形状で上記弾褥体の中の空気を抜き就寝した。就寝中、側右に寝返ろうとしても寝返ることはできなかったが、左を下にした横寝姿勢で違和感なく寝ることができ、快適性に優れていた。
【0035】
(比較例3)
硬度20N/314cm、密度85kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム(株)製、商品名:GTF)を用いる以外は、実施例2と同様にして弾褥体を作成し、評価した。
その結果、形態調節後、寝返る際に弾褥体の抵抗が少なく、役に立たなかった。
【0036】
(実施例3)
実施例1の非通気性膜体を用いて袋体を作成し、この中に、硬度40N/314cm、密度50kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム製、商品名:GTF)を収容し、また、空気の出し入れが可能なように、吸排気弁を設け、たて50cm×横80cm×高さ5cmの弾褥体を作成した。
得られた弾褥体を、やや柔らかめのムアツ敷き布団(西川産業(株)製:硬度90N/314cm、密度35kg/mの凹凸プロファイル加工を施したポリウレタンフォーム使用。厚さ8cmの布団)の下におき、体重48kg、身長162cmの女性が、一番体重のかかる臀部付近に置き、自分の体型に合った形状で弾褥体の中の空気を抜き就寝した。
弾褥体のない場合は腰部の沈み量は7cmで底付き感を感じたが、弾褥体を入れた場合、初期高さが8+5=13cmで、腰部の沈み量は5.3cmであり、底付き感もなく快適であった。
【0037】
(比較例4)
硬度15N/314cm、密度50kg/mのポリウレタンフォーム(東洋ゴム(株)製、商品名:GTF )を用いた他は、実施例3と同様にして弾褥体を作成し、評価した。
その結果、初期高さは13cmであるにもかかわらず、変形が大きく、腰部の沈み量は
7.5cmであり、満足のいくものではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、自分にフィットし、好適な睡眠が得られる、枕、クッション、敷き布団、ベッドパッド、マットレス、ベッドマットレス等の身体をのせて使用する弾褥体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1において調製した枕を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
1 枕
2 袋体
3 吸排気弁
4 側生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸排気弁を備えた袋状非通気性膜体に、嵩高充填物を収容してなる袋体を、少なくともその一部に用いてなる弾褥体であって、上記嵩高充填物が、JIS K6400による25%圧縮時の硬度が20〜50N/314cm、密度が25〜80kg/mであることを特徴とする弾褥体。
【請求項2】
袋体に収容する嵩高充填物が、ポリウレタンフォーム及び/又はポリウレタンフォームチップであることを特徴とする請求項1記載の弾褥体。
【請求項3】
袋状非通気性膜体が、伸縮性を有するフィルム又は伸縮性を有するフィルムと伸縮性を有する繊維構造体とを一体化してなる複合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の弾褥体。

【図1】
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【公開番号】特開2008−113789(P2008−113789A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298665(P2006−298665)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【出願人】(000196129)西川産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】