説明

弾道材料中への水の浸透の抑制

液体暴露による劣化に対して優れた抵抗性を有する弾道抵抗性物品。さらに詳細には、海水や有機溶媒(例えば、ガソリンや他の石油系物質)等の液体にさらされた後でも、優れた弾道抵抗性能を保持する弾道抵抗性の繊維複合物と物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体暴露(liquid exposure)による劣化に対して優れた抵抗性を有する弾道抵抗性物品に関する。さらに詳細には、本発明は、海水や有機溶媒(例えば、ガソリンや他の石油ベース物質)等の液体にさらされた後に優れた弾道抵抗性能を保持する弾道抵抗性布帛と弾道抵抗性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
発射体に対して優れた抵抗性をもつ高強度繊維を含有する弾道抵抗性物品がよく知られている。軍装備品である防弾ベスト、防弾ヘルメット、防弾車両パネル、および防弾構造部材等の物品は、一般には高強度繊維を含む布帛から製造される。従来から使用されている高強度繊維としては、ポリエチレン繊維、ポリ(フェニレンジアミンテレフタルアミド)のようなアラミド繊維、グラファイト繊維、ナイロン繊維、およびガラス繊維等がある。多くの用途(例えば、ベストもしくはベストの一部)に対し、繊維は、織物もしくは編物の形で使用することができる。他の用途では、繊維は、剛性もしくは可撓性の織布又は不織布を形成するよう、マトリックス材料中にカプセル封入するか又は埋め込むことができる。
【0003】
ヘルメット、パネル、およびベスト等の硬質もしくは軟質の防護具を作製するのに有用な種々の弾道抵抗性構造物が知られている。例えば、米国特許第4,403,012号、第4,457,985号、第4,613,535号、第4,623,574号、第4,650,710号、第4,737,402号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、第6,846,758号(これら全ての特許を参照により本明細書に含める)は、伸び切り鎖超高分子量ポリエチレン等の材料から製造される高強度繊維を含む弾道抵抗性複合物を開示している。これらの複合物は、発射体(例えば、銃弾、砲弾、及び爆弾の破片等)からの高速度衝撃による貫入に対して様々な程度の抵抗性を示す。
【0004】
例えば、米国特許第4,623,574号と第4,748,064号は、エラストマーマトリックス中に埋め込まれた高強度繊維を含む単純な複合構造物を開示している。米国特許第4,650,710号は、高強度の伸び切り鎖ポリオレフィン(ECP)繊維で構成される複数の可撓性層を含む可撓性製品を開示している。ネットワークの繊維が低モジュラスのエラストマー材料でコーティングされている。米国特許第5,552,208号と第5,587,230号は、少なくとも1種の高強度繊維網と、ビニルエステルとジアリルフタレートを含むマトリックス材料とを含む物品、および前記物品の製造法を開示している。米国特許第6,642,159号は、マトリックス中に配列されたフィラメント網を含む複数の繊維層(エラストマー層が間に存在する)を有する、耐衝撃性の剛性複合物を開示している。徹甲発射体に対する保護を強めるために、該複合物が硬質プレートに結合されている。
【0005】
堅牢もしくは硬質の身体防護具は、良好な弾道抵抗性を示すが、極めて剛性でかさばることがある。したがって、弾道抵抗性ベスト等の身体防護具衣料品は、柔軟性もしくは軟質の防護具材料から作製するのが好ましい。しかしながら、このような柔軟性もしくは軟質の材料は、優れた弾道抵抗性を示すものの、一般的には、淡水、海水、及び有機溶媒(例えば、石油、ガソリン、銃用潤滑油(gun lube)、及び石油から誘導される他の溶媒)などの液体に対する抵抗性は良くない。このような材料は、一般的には液体にさらされたり、液体中に浸漬されたりすると弾道抵抗性能が低下することが知られているので、問題がある。さらに、布帛表面に保護フィルムを施すと、布帛の耐久性や耐摩耗性だけでなく、耐水性や耐薬品性も高まることが知られているが、該フィルムにより布帛に対する重量が増加する。したがって当業界では、種々の液体と接触した後に許容可能な弾道抵抗基準で性能を発揮し、更に優れた耐久性を有する、軟質で柔軟性の弾道抵抗性材料を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,403,012号
【特許文献2】米国特許第4,457,985号
【特許文献3】米国特許第4,613,535号
【特許文献4】米国特許第4,623,574号
【特許文献5】米国特許第4,650,710号
【特許文献6】米国特許第4,737,402号
【特許文献7】米国特許第4,748,064号
【特許文献8】米国特許第5,552,208号
【特許文献9】米国特許第5,587,230号
【特許文献10】米国特許第6,642,159号
【特許文献11】米国特許第6,841,492号
【特許文献12】米国特許第6,846,758号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な柔軟性を保持しつつ、耐熱性、耐寒性、耐磨耗性、及び耐摩耗性だけでなく、液体に対する所望の保護をもたらす繊維複合材料を提供する。本発明は特に、表面のそれぞれがポリマーフィルムで取り囲まれた、少なくとも2つの繊維層を組み込んだ弾道抵抗性構造物を提供し、ここで繊維層は、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆された繊維を含む。ポリマーフィルムと繊維層との組み合わせは、有害となり得る液体に対して長期間暴露した後の布帛の弾道抵抗特性の維持に寄与し、その結果、上記メリットを達成するために保護表面フィルムは必要ではない、ということが見出された。さらに、それぞれの繊維表面上にポリマーフィルムが存在すると、布帛端部での布帛中への液体の吸い上げ作用が阻止され、液体が繊維間のスペース中に入り込んでとどまることを防止できる、ということが予想外にも見出された。したがって本発明の布帛は、水または他の液体中に浸漬された後でも低重量を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)第1の外側ポリマーフィルム;b)前記第1の外側ポリマーフィルムと接触している第1の繊維層、ここで前記第1の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;c)前記第1の繊維層と接触している中央ポリマーフィルム;d)前記中央ポリマーフィルムと接触している第2の繊維層、ここで前記第2の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;及びe)前記第2の繊維層と接触している第2の外側ポリマーフィルム;をこの順序で含む繊維複合材料を提供する。
【0009】
本発明はさらに、a)第1の外側ポリマーフィルムを供給すること;b)前記第1の外側ポリマーフィルムに第1の繊維層を貼付すること、ここで前記第1の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;c)前記第1の繊維層に中央ポリマーフィルムを貼付すること;d)前記中央ポリマーフィルムに第2の繊維層を貼付すること、ここで前記第2の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;及びe)前記第2の繊維層に第2の外側ポリマーフィルムを貼付すること;を含む繊維複合材料の作製方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1と第2の繊維層のそれぞれが、一方向の平行配列不織布で構成されている、本発明の五層複合構造物の概略図である。
【図2】図2は、第1と第2の繊維層のそれぞれが、複数層の重なり合った不織繊維プライ又は織布で構成されている、本発明の五層複合構造物の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、水(特に海水)や有機溶媒[特に、石油から製造される溶媒(例えばガソリン)]に暴露した後でも、優れた弾道貫入抵抗性を維持する繊維複合材料及び繊維複合物品を提供する。本発明の物品は、銃弾や高エネルギーフラグメント(例えば爆弾の破片)を含む高エネルギーの弾道脅威に対して優れた弾道貫入抵抗性を有する。
【0012】
本発明の繊維複合材料は、ポリマーフィルムと繊維層が交互に組み込まれていることを特徴としており、ここで材料の各隣接層が異なっている。図1と2は、本発明の複合材料の好ましい層化構造物を概略的に示している。図1と2に示すように、本発明の繊維複合材料は、2種の好ましい構造物のうちの1種を含むことが好ましい。各構造物は、少なくとも5つの成分層を含むことが好ましい。追加的な交互層を組み込んでよいが、低重量を維持するためには合計で5層が最も好ましい。第1の外側ポリマーフィルム14、第1の繊維層20、中央ポリマーフィルム16、第2の繊維層22、及び第2の外側ポリマーフィルム18をこの順序で含む繊維複合材料10を図1に示す。第1の外側ポリマーフィルム14、第1の繊維層24、中央ポリマーフィルム16、第2の繊維層26、及び第2の外側ポリマーフィルム18をこの順序で含む繊維複合材料12を図2に示す。
【0013】
それぞれの実施態様は、複数のポリマーフィルムと複数の繊維層を含む。これら2つの実施態様は、主として繊維層の構造が異なる。図1に示す本発明の第1の実施態様においては、第1の繊維層20と第2の繊維層22はそれぞれ、一方向の実質的に平行な配列になるように整列した、好ましくは重なり合っていない不織繊維のシングルプライを含む。このタイプの繊維層は、当業界において「ユニテープ」(あるいは「一方向テープ」)として知られており、本明細書では「シングルプライ」とも呼ぶ。図面からわかるように、各繊維層の繊維が、互いに対して0°/90°のクロスプライとなるように、前記第1の繊維層20の平行繊維を、各繊維プライの縦繊維方向に関して、前記第2の繊維層22の平行繊維に対して直角に配置することが好ましい。当業界において従来から知られているように、優れた弾道抵抗性は、ある1つの層の繊維整列方向が、別の層の繊維整列方向に対してある角度で回転されるように個別の繊維層がクロスプライになるときに達成される。隣接層は、別の層の縦繊維方向に対して約0°〜約90°の実質的にいかなる角度でも整列させることができる。繊維層20と繊維層22の繊維を、0°と90°の角度で直角のクロスプライとすることが好ましい。
【0014】
本発明によれば、この第1の実施態様の各シングルプライ繊維層は、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆された繊維を含む。このポリマーバインダー物質は、層14、16、18、24、及び26の合併を支援するだけでなく、環境汚染物による劣化に対して良好な抵抗性を有する安定な複合材料をもたらすのに役立つ。
【0015】
本発明の第2の実施態様においては、第1の繊維層24と第2の繊維層26のそれぞれが、単一層のモノリシック部材に圧密される複数の重なり合った不織繊維プライを含むことが好ましく、ここで各プライが、一方向の実質的に平行な配列になるように整列した繊維を含み、繊維層の各プライが、各繊維プライ(ユニテープ)の縦繊維方向に関して、該繊維層内の各隣接プライの平行繊維に対して直角に配置される。繊維層24と26のそれぞれはさらに、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆された繊維を含む。繊維層24と26は、0°/90°のクロスプライとされた圧密「ユニテープ」を2つだけ含むことが最も好ましいが、圧密された単一層部材内に追加のユニテープを組み込むこともでき、また隣接プライを、0°と90°以外の角度でクロスプライすることもできる。任意の追加層はさらに、隣接繊維プライの縦繊維方向に関してある角度のクロスプライとなることが好ましい。例えば、5層の不織構造物は、0°/45°/90°/45°/0°の配向のプライ、又は別の角度のプライを有してよい。このような回転した一方向整列が、例えば、米国特許第4,457,985号;第4,748,064号;第4,916,000号;第4,403,012号;第4,623,573号;及び第4,737,402号;に開示されている。繊維層24と26は、不織繊維プライを含むときは、1〜約6個のプライを含むのが最も典型的であるが、種々の用途に応じて必要となる場合は、約10〜約20個という多数のプライを含んでもよい。このような不織繊維層は、よく知られている方法(例えば、米国特許第6,642,159号に記載の方法)を使用して構築することができる。
【0016】
プライの数が多くなるほど弾道抵抗性は高くなるが、重量も増加する。繊維層24又は26を形成する、あるいは追加のシングルプライ繊維層が貼付された複合構造物10を形成する繊維プライの数は、所望の弾道抵抗性物品の最終用途に応じて変わる。例えば、軍事用途向けの身体防護ベストにおいては、所望の1.0ポンド/ft(4.9kg/m)の面密度を達成する複合物品を作製するために合計で22個のプライが必要とされ、ここでプライは、本明細書に記載の高強度繊維により形成されるされる織布、編物、又は不織布であってよい。他の実施態様においては、公務執行用途(law enforcement use)向けの身体防護ベストは、National Institute of Justice(NIJ)の脅威レベルに依拠して多数の層を有してよい。例えば、NIJ脅威レベルがIIIAのベストの場合、合計で22個の層が存在してよい。より低いNIJ脅威レベルの場合は、より少数の層を使用することができる。
【0017】
繊維層24と26は、織物繊維層を交互に含んでよい。織物繊維層は、任意の織物[例えば、平織物、クローフット織物(crowfoot weave)、バスケット織物、サテン織物、及びトゥイル織物(twill weave)等]を使用して、当業界によく知られている方法によって作製することができる。最も一般的なのは、繊維を0°/90°の配向で一緒に織って得られる平織物である。他の実施態様においては、1つの繊維層が織物繊維層を含み、もう1つの繊維層が不織繊維層を含む、というハイブリッド構造物を形成することができる。これとは別に、繊維層24と26はさらに、織物繊維プライと不織繊維プライとの圧密一体物を含んでもよい。
【0018】
本発明の目的に適うよう、「繊維」は、その長さ寸法が、幅と厚さの横断寸法よりはるかに大きい細長い物体である。本発明において使用するための繊維の断面は、広範囲で変わり得る。繊維の断面は、円形であっても、フラットであっても、あるいは長円形であってもよい。したがって「繊維」という用語は、規則的又は不規則な断面を有するフィラメント、リボン、及びストリップ等を含む。繊維はさらに、繊維の線状軸又は長手方向軸から突き出た1つ以上の規則的又は不規則なローブを有する、規則的又は不規則なマルチローブ断面であってもよい。繊維は、シングルローブになっていて、実質的に円形の断面を有することが好ましい。
【0019】
本明細書で使用されている「配列」は、繊維もしくはヤーンの規則正しい配置を表わしており、「平行配列」は、繊維もしくはヤーンの規則正しい平行的な配置を表わしている。繊維「層」は、織った繊維もしくは不織繊維、又は織ったヤーンもしくは不織ヤーンの平面的な配置を表わしている。本明細書で使用される「単一層」構造物は、圧密により単一の一体構造物にされた、1つ以上の個別繊維層で構成されるモノリシック構造物を表わしている。一般には、「布帛」は、織布材料または不織布材料に関する。本発明の繊維プライは、繊維よりむしろヤーンを含んでおり、本明細書中の「ヤーン」は、複数のフィラメントからなるストランドである。不織繊維プライはさらに、従来から知られている技法によって形成される、ランダム配向の繊維を含むフェルト加工構造物を含んでよい。
【0020】
本発明によれば、繊維層20、22、24、及び26のそれぞれを構成する繊維は、高強度で高引張モジュラスの繊維を含むのが好ましい。本明細書で使用される「高強度高引張モジュラス繊維」は、少なくとも約7g/デニール以上の好ましいテナシティ、少なくとも約150g/デニール以上の好ましい引張モジュラス、及び少なくとも約8J/g以上の好ましい破断エネルギー(いずれもASTM D2256に従って測定)を有する繊維である。本明細書で使用している「デニール」は、線密度の単位を表わしており、繊維もしくはヤーンの9000メートル当たりの質量(g)に等しい。本明細書で使用される「テナシティ」は、応力を受けていない試験片の単位線密度(デニール)当たりの力(g)として表示される引張応力を表わしている。繊維の「初期モジュラス」は、耐変形性を示す材料の特性である。「引張モジュラス」という用語は、テナシティの変化量[1デニール当たりのグラム重量で表示(g/d)]と歪の変化量[初期繊維長さのフラクションとして表示(in/in)]との比を表わしている。
【0021】
特に適切な高強度・高引張モジュラスの繊維材料としてはポリオレフィン繊維があり、特に伸び切り鎖ポリオレフィン繊維[例えば、高配向高分子量ポリエチレン繊維(特に超高分子量ポリエチレン繊維)と超高分子量ポリプロピレン繊維]がある。さらに、アラミド繊維(特にパラ−アラミド繊維)、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、伸び切り鎖ポリビニルアルコール繊維、伸び切り鎖ポリアクリロニトリル繊維、ポリベンザゾール繊維[例えば、ポリベンゾオキサゾール(PBO)繊維やポリベンゾチアゾール(PBT)繊維]、及び液晶コポリエステル繊維も好適である。これらの種類の繊維は、いずれも当業界において従来から知られている。
【0022】
ポリエチレンの場合、好ましい繊維は、少なくとも500,000(好ましくは少なくとも100万、さらに好ましくは200万〜500万)の分子量を有する伸び切り鎖ポリエチレンである。このような伸び切り鎖ポリエチレン(ECPE)繊維は、溶液紡糸法にて成長させることもできるし[例えば、米国特許第4,137,394号や第4,356,138号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている]、あるいはゲル構造を形成するよう溶液から紡糸することもできる[例えば、米国特許第4,551,296号や第5,006,390号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている]。本発明に使用するための特に好ましい繊維タイプは、ハネウェル・インターナショナル社からスペクトラ(SPECTRA)(登録商標)の商品名で市販されているポリエチレン繊維である。スペクトラ繊維は、当業界においてよく知られており、例えば米国特許第4,623,547号や第4,748,064号に記載されている。
【0023】
さらに、特に好ましいのはアラミド(芳香族ポリアミド)繊維すなわちパラ−アラミド繊維である。これらは商業的に入手可能であり、例えば米国特許第3,671,542号に記載されている。例えば、有用なポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)フィラメントが、デュポン社からケブラー(KEVLAR)(登録商標)の商品名で工業的に製造されている。本発明を実施する上で有用なのはさらに、デュポン社からノメックス(NOMEX)(登録商標)の商品名で工業的に製造されているポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)繊維、および帝人(株)からツワロン(TWARON)(登録商標)の商品名で工業的に製造されている繊維である。
【0024】
本発明を実施する上で適切なポリベンザゾール繊維は商業的に入手可能であり、例えば米国特許第5,286,833号、第5,296,185号、第5,356,584号、第5,534,205号、および第6,040,050号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。好ましいポリベンザゾール繊維は、東洋紡(株)から市販のザイロン(ZYLON)(登録商標)銘柄の繊維である。本発明を実施する上で適切な液晶コポリエステル繊維は商業的に入手可能であり、例えば米国特許第3,975,487号、第4,118,372号、および第4,161,470号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。
【0025】
適切なポリプロピレン繊維としては、米国特許第4,413,110号(該特許を参照により本明細書に含める)に開示の高配向伸び切り鎖ポリプロピレン(ECPP)繊維がある。適切なポリビニルアルコール(PV−OH)繊維は、例えば米国特許第4,440,711号と第4,599,267号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。適切なポリアクリロニトリル(PAN)繊維は、例えば米国特許第4,535,027号(該特許を参照により本明細書に含める)に開示されている。これらの種類の繊維はいずれも従来から公知であって、広く商業的に入手可能である。
【0026】
本発明において使用するための他の適切な種類の繊維としては、ガラス繊維、炭素から形成される繊維、玄武岩または他の鉱物から形成される繊維、剛性ロッド繊維(rigid rod fibers)[例えばM5(登録商標)繊維]、およびこれらの材料(全て商業的に入手可能)を組み合わせた物がある。例えば、繊維層は、スペクトラ繊維とケブラー繊維とを組み合わせた物から形成することができる。M5繊維は、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)から形成され、バージニア州リッチモンドのマゼラン・システムズ・インターナショナル社から商業的に入手可能であり、例えば米国特許第5,674,969号、第5,939,553号、第5,945,537号、および第6,040,478号(これらの特許を参照により本明細書に含める)に記載されている。特に好ましい繊維としては、M5繊維、スペクトラ(登録商標)ポリエチレン繊維、及びケブラー(登録商標)アラミド繊維がある。繊維は、任意の適切なデニールであってよい(例えば、好ましくは約50〜3000デニール、さらに好ましくは約200〜3000デニール、さらに好ましくは約650〜2000デニール、そして最も好ましくは約800〜1500デニール)。
【0027】
本発明の目的に適う最も好ましい繊維は、高強度で高引張モジュラスの伸び切り鎖ポリエチレン繊維、または高強度で高引張モジュラスのパラ−アラミド繊維である。前述したように、高強度で高引張モジュラスの繊維は、約7g/デニール以上の好ましいテナシティ、約150g/デニール以上の好ましい引張モジュラス、および約8J/g以上の好ましい破断エネルギー(いずれもASTM D2256に従って測定)を有する繊維である。本発明の好ましい実施態様においては、繊維のテナシティは、約15g/デニール以上でなければならず、好ましくは約20g/デニール以上であり、さらに好ましくは約25g/デニール以上であり、そして最も好ましくは約30g/デニール以上である。本発明の繊維はさらに、約300g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが好ましく、約400g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、約1,000g/デニール以上の引張モジュラスを有するのがさらに好ましく、そして約1,500g/デニール以上の引張モジュラスを有するのが最も好ましい。本発明の繊維はさらに、約15J/g以上の破断エネルギーを有するのが好ましく、約25J/g以上の破断エネルギーを有するのがさらに好ましく、約30J/g以上の破断エネルギーを有するのがさらに好ましく、そして約40J/g以上の破断エネルギーを有するのが最も好ましい。
【0028】
これらの複合された高強度特性は、よく知られている方法を使用することによって得られる。米国特許第4,413,110号、第4,440,711号、第4,535,027号、第4,457,985号、第4,623,547号、第4,650,710号、および第4,748,064号は、本発明において使用される好ましい高強度伸び切り鎖ポリエチレン繊維の形成について一般的に説明している。溶液成長法やゲルファイバー法を含めたこのような方法は、当業界においてよく知られている。パラ−アラミド繊維を含めた他の好ましい種類の繊維のそれぞれを作製する方法も、従来から当業界に公知であり、これらの繊維は商業的に入手可能である。
【0029】
前述したように、繊維層20、22、24、及び26のそれぞれは、ポリマーバインダー物質(当業界では一般に、ポリマーマトリックス材料とも呼ばれる)をさらに含む。ポリマーマトリックス材料は1種以上の成分を含み、熱及び/又は圧力にさらしたときに、複数の繊維プライ(すなわち複数のユニテープ)の圧密または一体化を容易にし、これにより圧密されて一体となった単一層部材が形成される。繊維層20、22、24、及び26のそれぞれに対し、成分である繊維にコーティングされるポリマーバインダー物質は、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質を含む。前記繊維層を形成する各繊維の表面は、ポリマーマトリックス材料で少なくとも部分的にコーティングされ、好ましくはポリマーマトリックス材料で実質的にコーティングされる。織物繊維層または織布の繊維をポリマーマトリックス材料でコーティングすることは、製織の前でも後でも行うことができる。前記繊維層は、マトリックス材料でコーティングされた複数のヤーンプライと、もつれ合い、一緒に圧縮されたランダム配向の繊維を含む圧密もしくはフェルト加工された構造物とを交互に含んでよく、適切なマトリックス材料中に埋め込むようにして交互に含んでよい。
【0030】
本発明の繊維層は、低モジュラス弾性マトリックス材料と高モジュラス剛性マトリックス材料を両方とも含む、種々のマトリックス材料を使用して形成することができる。有用なポリマーマトリックス材料としては、上記の望ましい特性を有する、低モジュラス熱可塑性マトリックス材料、高モジュラス熱硬化性マトリックス材料、及びこれらを組み合わせた物がある。適切な熱可塑性マトリックス材料は、約6,000psi(41.3MPa)未満の初期引張モジュラスを有することが好ましく、適切な高モジュラスの熱硬化性マトリックス材料は、少なくとも約300,000psi(2068MPa)の初期引張モジュラスを有することが好ましい(いずれもASTM D638に従って測定)。本明細書全体にわたって使用されている「引張モジュラス」という用語は、あるマトリックス材料に関して、ASTM D638に従って測定した弾性率を意味している。軟質の身体防護具を製造する場合、低モジュラスの熱可塑性マトリックス材料が最も好ましい。低モジュラスの熱可塑性材料は、約4,000psi(27.6MPa)以下の引張モジュラスを有することが好ましく、約2400psi(16.5MPa)以下の引張モジュラスを有することがさらに好ましく、約1200psi(8.23MPa)以下の引張モジュラスを有することがさらに好ましく、約500psi(3.45MPa)以下の引張モジュラスを有することが最も好ましい。
【0031】
前述のとおり、ポリマーマトリックス材料は、独立して、特に海水に対する耐溶解性を有し、また独立して、1種以上の有機溶媒(例えば、ディーゼルガソリン、非ディーゼルガソリン、銃用潤滑油、石油、及び石油から得られる有機溶媒等)に対する耐溶解性を有する。ポリマーマトリックス材料はさらに、水と1種以上の有機溶媒とを組み合わせたものに対する耐溶解性を有することが好ましい。従来、軟質の身体防護具の製造において主として使用されているポリマーが2種類ある[すなわち、溶媒ベースの合成ゴムや水ベースの合成ゴム;及びポリウレタン(一般には水ベース)]。このような合成ゴムは、一般には、スチレンとイソプレンとのブロックコポリマー[特に、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)コポリマー]である。これらのSISコポリマーは、溶媒ベースの溶液中でも、水性分散液中でも加工することができる。溶媒ベースの合成ゴムは、一般には石油系溶媒に対して感受性であり、石油系溶媒にさらされると溶解する。このような溶媒ベースの合成ゴムは、一般的には水による影響を受けない。しかしながら、水性分散液は、分散方法や分散物質に応じて、水や海水にかなり影響されやすい場合がある。現在使用されているポリウレタンマトリックスポリマーは、それらのもつ固有の極性により、幾つかの例外はあるが、一般的には石油系溶媒に対して耐性がある。水性ポリウレタンは、水(特に海水)によって分解されることがあり、このため加水分解によるポリウレタン鎖の破断を引き起こし、この結果、分子量が減少し、物理的特性が低下する。
【0032】
極性であって且つ加水分解安定性であるポリマーは、効果的な弾道抵抗性物品を得るために必要な所望の弾道抵抗特性を保持しつつ、耐水性と耐有機溶媒性の間の望ましいバランスを達成する、ということが見出された。極性のポリマーは、一般には無極性の有機溶媒に対して耐溶解性を有し、また加水分解安定性のポリマーは、水による加水分解に対して安定である(すなわち、水に暴露された際に化学分解抵抗性を有する)。したがって、このようなポリマーマトリックス材料を組み込むことによって形成される弾道抵抗性物品は、こうした液体に長時間にわたって暴露された後でも弾道抵抗特性を保持する。
【0033】
本発明の好ましい実施態様においては、適切なポリマーマトリックス材料は、合成ゴム、ジエンゴム、スチレンブロックコポリマー[スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)とスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)を含む]、極性ビニル系ポリマー、極性アクリルポリマー、ポリ塩化ビニルホモポリマー、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニルターポリマー、ポリビニルブチルール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、極性エチレン酢酸ビニルコポリマー、極性エチレンアクリル酸コポリマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、ニトリルゴム、ポリクロロプレン〔例えばネオプレン(デュポン社製)〕、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリアミド、セルロース系誘導体、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、又はこれらの組み合わせを含むことが好ましい。
【0034】
ここに明記されていない、極性で加水分解安定性の他のポリマーも適切である。無極性の合成ゴムとスチレンブロックコポリマー(例えば、SISやSBS)は一般に、充分に撥油性となるよう、例えば、カルボキシル基をグラフトすることにより、あるいは酸官能価もしくはアルコール官能価又は他の任意の極性基を付加させることにより、極性基を組み込むことによって変性させなければならない。例えば無極性のポリマーは、カルボン酸基を含有するモノマー(例えば、アクリル酸やマレイン酸)を使用して、あるいは他の極性基(例えば、アミノ基、ニトロ基、又はスルホネート基)を含有するモノマーを使用して共重合させることができる。このような手法は、当業界によく知られている。
【0035】
特に好ましいのは、C−Cポリマー主鎖を有する極性ポリマーである。本明細書中に記載される極性ポリマーは、一般には無極性有機溶媒に対して耐溶解性である。C−C主鎖を有するポリマー(例えば、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系ポリマー)は、加水分解安定性の分子構造を有する。さらに、特に好ましいのは、極性の熱可塑性ポリウレタン(特に、加水分解安定性が増すように配合されたポリウレタン)である。C−C結合と異なって、ウレタン結合やエステル結合は、一般には加水分解による劣化の影響を受けやすい。したがって、このような結合を有するポリマーは、一般には撥水性や加水分解安定性を高めるように配合もしくは変性される。例えば、ポリウレタンは、ポリエーテルポリオール成分もしくは脂肪族ポリオール成分、又は加水分解安定性を高めることが知られている他の成分との共重合によって、加水分解安定性を高めるように配合されてよい。主要なポリウレタン生成反応は、触媒の存在下における、脂肪族もしくは芳香族ジイソシアネートとポリオール(一般には、ポリエチレングリコールやポリエステルポリオール)との反応である。イソシアネート共反応物の選択は、加水分解安定性に影響を及ぼすことがある。共反応物のどちらか又は両方にバルキーなペンダント基が存在すると、ウレタン結合を攻撃から保護することができる。ポリウレタンは、使用するモノマーの種類を変えることによって、そして特性を変えるための又は加水分解安定性を高めるための他の物質を加えることによって(例えば、撥水剤、pH緩衝剤、架橋剤、及びキレート剤等を使用して)、種々の密度及び硬度をとるように製造することができる。最も好ましいポリウレタンマトリックス材料は、極性で加水分解安定性の、ポリエーテル系もしくは脂肪族系の熱可塑性ポリウレタン(ポリエステル系のポリウレタンより好ましい)を含む。
【0036】
熱可塑性ポリウレタンは、ホモポリマー、コポリマー、又はポリウレタンホモポリマーとポリウレタンコポリマーとのブレンドのいずれであってもよい。このようなポリマーは商業的に入手可能である。このようなポリウレタンは一般的に、水溶液、分散液、又はエマルジョンとして入手可能であり、このとき固体成分は約20〜80重量%、さらに好ましくは約40〜60重量%であって、残部の重量は水である。使いやすさの点から水性の系が好ましい。好ましいポリウレタン被覆繊維層が、米国特許出願第11/213,253号(該特許出願の全開示内容を参照により本明細書に含める)に記載されている。
【0037】
好ましい熱可塑性マトリックス材料のガラス転移温度(Tg)は、約0℃未満であることが好ましく、約−40℃未満であるのがさらに好ましく、そして約−50℃未満であることが最も好ましい。好ましい熱可塑性材料はさらに、少なくとも約50%の破断点伸びを有することが好ましく、少なくとも約100%の破断点伸びを有することがさらに好ましく、少なくとも約300%の破断点伸びを有することが最も好ましい。
【0038】
織物繊維層に関しては、圧密処理がなされないので、一般には繊維をポリマーマトリックス材料でコーティングする必要はない。しかしながら、本明細書に記載のメリットを達成するためには、織物繊維層を構成する繊維を、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーマトリックス材料でコーティングすることが好ましい。
【0039】
本発明の布帛複合物から形成される物品の剛性、耐衝撃性、及び弾道特性は、マトリックスポリマーの引張モジュラスによって影響される。例えば米国特許第4,623,574号は、約6000psi(41,300kPa)未満の引張モジュラスを有するエラストマーマトリックスで構成された繊維強化複合物が、高モジュラスポリマーで構成された複合物と比較して、そしてマトリックスを含まない同様の繊維構造物と比較して優れた弾道特性を有する、ということを開示している。しかしながら、低引張モジュラスのマトリックスポリマーは、低剛性複合物も生じさせる。さらに、特定の用途、特に、複合物が対弾道モードと構造モードの両方において機能しなければならないという用途においては、優れた弾道抵抗性と剛性との組み合わせが必要となる。したがって、使用するマトリックスポリマーの最も適切な種類は、本発明の布帛から形成される物品の種類に応じて変化する。2つの特性の折り合いをつけるために、適切なマトリックス材料は、単一のマトリックス材料が形成されるよう、低モジュラス材料と高モジュラス材料の両方を組み合わせてよい。マトリックス材料は、当業界でよく知られているように、さらに、カーボンブラックやシリカ等のフィラーを含んでもよく、オイルで増量してもよく、あるいはイオウ、過酸化物、金属酸化物、又は放射線硬化系によって加硫してもよい。
【0040】
マトリックスの塗布は、繊維プライを圧密する前に行う。マトリックスは、種々の方法で繊維に塗布することができ、「コーティングされた」という用語は、マトリックス材料を繊維の表面に塗布する方法を限定することを意図したものではない。例えば、ポリマーマトリックス材料は、繊維の表面上にマトリックス材料の溶液を噴霧もしくはロールコーティングし(このとき溶液の一部が所望のポリマーを含み、そして溶液の一部が、ポリマーを溶解することができる溶媒を含む)、次いで乾燥することによって、溶液の形態で塗布することができる。
【0041】
他の方法は、コーティング物質のニートポリマーを繊維に、液体、糊状固体、もしくは懸濁状態の粒子として、又は流動床として施す、という方法である。これとは別に、コーティング物質は、塗布温度にて繊維の特性に悪影響を及ぼさない適切な溶媒中の溶液もしくはエマルジョンとして施すこともできる。例えば、マトリックス材料の溶液中に繊維を移動させて繊維を実質的にコーティングし、次いで繊維を乾燥して、被覆された繊維を形成することができる。このようにして得た被覆繊維を配置して、所望する繊維層構造にすることができる。別のコーティング方法では、先ず繊維の層を配置し、次いでこの繊維層を、マトリックス材料を適切な溶媒に溶解して得られる溶液の浴中に浸漬する。これによりそれぞれの個別層をマトリックス材料で実質的に被覆し、次いで溶媒を蒸発させることにより乾燥する。この浸漬手順は、所望量のマトリックス材料の被膜を繊維上に配置するために、必要に応じて数回繰り返すことができる(個々の繊維のそれぞれをカプセル封入するか、あるいは繊維表面積の100%をマトリックス材料で被覆することが好ましい)。
【0042】
ポリマーを溶解もしくは分散させうる任意の液体を使用できるが、好ましい群の溶媒としては、水、パラフィン油、及び芳香族溶媒もしくは炭化水素溶媒があり、具体的な溶媒としては、パラフィン油、キシレン、トルエン、オクタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン(MEK)、及びアセトンがある。コーティングポリマーを溶媒中に溶解もしくは分散させるのに使用される手法は、種々の支持体への類似材料のコーティングのために従来使用されている手法である。
【0043】
繊維にコーティングを施すための他の方法も使用することができ、例えば、繊維から溶媒を除去する前、または除去した後に、高モジュラス前駆体(ゲル繊維)をコーティングしてから繊維を高温延伸操作にかける(ゲル紡糸による繊維作製法を使用する場合)、という方法もある。次いで繊維を高温の下で延伸して、コーティングされた繊維を得ることができる。このゲル繊維を、適切な条件の下で適切なコーティングポリマーの溶液に通して、所望のコーティングを実現することができる。ゲル繊維中の高分子量ポリマーの結晶化は、繊維が溶液中を通過する前に起きてよく、あるいは起こらなくてよい。これとは別に、繊維は、適切なポリマー粉末の流動床中に押出すこともできる。さらに、延伸操作もしくは他の操作プロセス(例えば、溶媒交換や乾燥など)を行えば、最終繊維の前駆体物質にコーティングを施すことができる。本発明の最も好ましい実施態様においては、本発明の繊維を先ずマトリックス材料でコーティングし、次いで複数の繊維を配列して織物繊維層または不織繊維層とする。このような方法は、当業界ではよく知られている。
【0044】
したがって、本発明の繊維にマトリックス材料をコーティングして、本発明の繊維にマトリックス材料を含浸させて、本発明の繊維をマトリックス材料中に埋め込んで、あるいは繊維にマトリックス材料を塗布し、次いでマトリックス材料−繊維結合体を圧密することによって本発明の繊維にマトリックス材料を施して、複合物を形成することができる。前述のとおり、「圧密」とは、マトリックス材料とそれぞれの個別繊維層とを合わせて単一の一体層にすることを意味している。圧密は、乾燥、冷却、加熱、加圧、あるいはこれらの組み合わせによって実施することができる。「複合物」とは、繊維とマトリックス材料からなる圧密された結合体を表わしている。前述のとおり、本明細書で使用されている「マトリックス」という用語は、当業界においてよく知られており、圧密処理後に繊維を結びつけるバインダー物質(例えばポリマーバインダー物質)を表わすために使用されている。
【0045】
図1と図2に示すように、ポリマーフィルム14、16、及び18が、繊維層20、22、24、及び26に貼付される。図2に示すように、ポリマーフィルム14、16、及び18は、適用可能な任意の圧密工程の後に前記繊維層に貼付されることが好ましい。前記ポリマーフィルム用の適切なポリマーとしては、熱可塑性ポリマーと熱硬化性ポリマーがあるが、これらに限定されない。適切な熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー及びコポリマー、並びにこれらの混合物(これらに限定されない)を含む群から選択することができる。これらのうちで好ましいのはポリオレフィン層である。好ましいポリオレフィンはポリエチレンである。ポリエチレンフィルムの例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、線状超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状超々低密度ポリエチレン(ULDPE)、および高密度ポリエチレン(HDPE)などがあるが、これらに限定されない。これらのうちで最も好ましいポリエチレンはLLDPEである。適切な熱硬化性ポリマーとしては、熱硬化性のアリル樹脂、アミノ樹脂、シアナート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、硬質ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、並びにこれら物質のコポリマー及びブレンド(例えば、米国特許第6,846,758号、第6,841,492号、および第6,642,159号に記載の物質)などがあるが、これらに限定されない。それぞれの実施態様において、ポリマーフィルム14、16、及び18は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0046】
ポリマーフィルム14、16、及び18は押出層であることが好ましく、これらの押出層が冷却され、よく知られている積層法を使用して積層することによって繊維層に貼付される。積層は一般に、十分な熱と圧力の条件の下で個々の層を互いに配置し、これらの層を一体化させることによって行われる。個々の層を互いに配置し、次いで一般には、結合体を、当業界においてよく知られている手法によって、加熱された一対の積層ローラーのニップに通す。積層加熱は、約5psig(0.034MPa)〜約100psig(0.69MPa)の圧力で、約5秒〜約36時間(好ましくは約30秒〜約24時間)にわたって、約95℃〜約175℃(好ましくは約105℃〜約175℃)の温度で行うことができる。第1の繊維層20と第2の繊維層22のそれぞれが繊維のシングルプライだけからなっている、という本発明の実施態様では、繊維層20と22へのポリマーフィルムの貼付、及び繊維層20と22のお互いに対する貼付は、単一の積層−圧密工程で行うことが好ましい。これとは別に、バインダー樹脂を繊維に塗布し、次いでこの繊維をポリマーフィルム上に配置するか、あるいはバインダー樹脂をフィルムに塗布し、支持体上の樹脂中に繊維を配置し、そして互いに接触状態のままで乾燥する、というコーティング工程で、ポリマーフィルムを繊維に貼付することができる。第1の繊維層24と第2の繊維層26が複数の不織繊維プライを含む本発明の実施態様では、前記繊維層を圧密してから、ポリマーフィルム14、16、及び18を積層することが好ましい。
【0047】
繊維プライを繊維層24及び/又は26に圧密するための適切な圧密条件は、前記積層条件に類似している。一般的な圧密プロセスでは、クロスプライの繊維プライを、約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)〔さらに好ましくは約200°F〜約300°F(約149℃)、最も好ましくは約200°F〜約250°F(約121℃)〕の温度にて、約25psi(約172kPa)〜約500psi(約3447kPa)もしくはそれ以上の圧力で、約30秒〜約24時間の持続時間にわたって一緒にプレスする。このような方法は、当業界において従来から知られている。加熱する際に、マトリックスを完全に溶融させることなく、粘着性にしたり、流動性にしたりすることができる。しかしながら、一般には、マトリックス材料を溶融させる場合は、複合物を形成するために比較的小さな圧力しか必要とされないが、マトリックス材料が粘着温度にまでしか加熱されない場合は、通常はより大きな圧力が必要とされる。圧密工程は一般に、約10秒〜約24時間かかる。成形の場合と同様に、適切な圧密温度、圧密圧力、及び圧密時間は一般に、ポリマーの種類、ポリマーの含量、使用するプロセス、及び繊維の種類に依存する。圧密は、当業界において従来から知られているように、オートクレーブ中で交互に行うことができる。繊維プライを圧密して繊維層24及び/又は26にすること及びポリマーフィルムを貼付することは、単一の圧密工程で行うこともできる。
【0048】
本発明の構造物10及び12は、適切な成形装置中において加圧・加熱下において成形することにより各構造物の複数成分層を組み合わせることによって形成することができる。成形は、一般には約50psi(344.7kPa)〜約5000psi(34474kPa)の圧力で行い、約100psi(689.5kPa)〜約1500psi(10342kPa)の圧力で行うのがさらに好ましく、約150psi(1034kPa)〜約1000psi(6895kPa)の圧力で行うのが最も好ましい。約500psi(3447kPa)〜約5000psiというより高い圧力、さらに好ましくは約750psi(517kPa)〜約5000psiというより高い圧力、さらに好ましくは約1000psi〜約5000psiというより高い圧力も使用することができる。成形工程は、約4秒〜約45分の時間がかかる。成形温度は、約200°F(約93℃)〜約350°F(約177℃)の範囲であることが好ましく、約約200°F〜約300°F(約149℃)の範囲であることがさらに好ましく、約200°F(約93℃)〜約280°F(約138℃)の範囲であることが最も好ましい。適切な成形温度、成形圧力、及び成形時間は一般に、ポリマーマトリックスの種類、ポリマーマトリックスの含量、層の数、材料の質量、及び繊維の種類に応じて変わる。本明細書に記載の成形法と圧密法は類似しているけれども、それぞれのプロセスは異なっている。具体的に言えば、成形はバッチプロセスであって、圧密は連続プロセスである。さらに、成形は一般に、モールド〔例えば、シェイプトモールド(a shaped mold)やマッチドダイモールド(a match−die mold)〕の使用を伴う。本発明の布帛を成形する際の圧力が、得られる成形物の剛性に直接影響を及ぼす。特に、複合物を成形する圧力が高くなるほど、剛性が高くなり、逆の場合も同様である。成形圧力のほかに、布帛層の量、布帛層の厚さ、布帛層の組成、マトリックスの種類、及びポリマーフィルムの種類も、本発明の複合物から形成される物品の剛性に直接影響を及ぼす。
【0049】
本発明の複合構造物10と12は、表面を平滑化もしくは研磨するために、必要に応じて加熱・加圧下でカレンダー仕上げすることができる。カレンダー法は当業界によく知られており、成形前に実施してよく、あるいは成形後に実施してよい。
【0050】
本発明の好ましい実施態様においては、ポリマーフィルム層は、繊維複合材料全体(繊維、任意のポリマーマトリックス材料、及びポリマーフィルムの重量を含む)の約2重量%〜約20重量%を構成することが好ましく、約2重量%〜約15重量%を構成することがさらに好ましく、約2重量%〜約10重量%を構成することが最も好ましい。ポリマーフィルム層の重量%は一般に、多層フィルムを形成する布帛層の数に応じて変化する。繊維層を構成するマトリックス材料(存在する場合)は、繊維層の約3重量%〜約30重量%を構成することが好ましく、繊維層の約3重量%〜約20重量%を構成することがさらに好ましく、繊維層の約3重量%〜約16重量%を構成することがさらに好ましく、繊維層の約5重量%〜約15重量%を構成することがさらに好ましく、そして繊維層の約11量%〜約15重量%を構成することがさらに好ましい。本発明の各繊維層を構成する繊維は、各繊維層の約60重量%〜約98重量%を構成することが好ましく、各繊維層の約70重量%〜約95重量%を構成することがさらに好ましく、そして各繊維層の約80重量%〜約90重量%を構成することが最も好ましい。
【0051】
個々の繊維層の厚さは、個々の繊維の厚さ及び繊維層を形成するプライの数に対応する。したがって単一の不織繊維プライは、約5μm〜約3000μmの厚さを有することが好ましく、約15μm〜約300μmの厚さを有することがさらに好ましく、そして約25μm〜約125μmの厚さを有することが最も好ましい。単一層で複数プライの圧密不織繊維層は、約12μm〜約3000μmの厚さを有することが好ましく、約15m〜約385μmの厚さを有することがさらに好ましく、そして約25μm〜約255μmの厚さを有することが最も好ましい。織った繊維層は、約25μm〜約500μmの厚さを有することが好ましく、約75μm〜約385μmの厚さを有することがさらに好ましく、そして約125μm〜約255μmの厚さを有することが最も好ましい。ポリマーフィルムは、極めて薄いのが好ましく(約1μm〜約250μmの厚さを有することが好ましく)、約5μm〜約25μmの厚さを有することがさらに好ましく、そして約5μm〜約9μmの厚さを有することが最も好ましい。構造物10及び12はそれぞれ、約5μm〜約1000μmの全厚さを有することが好ましく、約6μm〜約750μmの厚さを有することがさらに好ましく、そして約7μm〜約500μmの厚さを有することが最も好ましい。このような厚さが好ましいけれども、理解しておかねばならないことは、特定のニーズを満たす上で他のフィルム厚さを採用することも可能であり、このようなフィルム厚さも本発明の範囲内に含まれる、という点である。本発明の物品はさらに、約0.25ポンド/ft(psf)(1.22kg/m(ksm))〜約5.0psf(24.41ksm)の面密度を有することが好ましく、約0.5psf(2.44ksm)〜約2.0psf(9.76ksm)の面密度を有することがさらに好ましく、約0.7psf(3.41ksm)〜約1.5psf(7.32ksm)の面密度を有することがさらに好ましく、そして約0.75psf(3.66ksm)〜約1.25psf(6.1ksm)の面密度を有することが最も好ましい。
【0052】
本発明の構造物は、よく知られている手法により種々の弾道抵抗性物品を製造するのに使用することができる。弾道抵抗性物品を形成するための適切な手法は、例えば米国特許第4,623,574号、第4,650,710号、第4,748,064号、第5,552,208号、第5,587,230号、第6,642,159号、第6,841,492号、及び第6,846,758号に記載されている。
【0053】
本発明の構造物は、多くの弾道脅威[例えば、9mmフルメタルジャケット(FMJ)弾丸、ならびに、手榴弾、砲弾、即席爆発装置(IED)、及び軍事任務や平和維持任務において直面する他のこのような装置の爆発によって生じる種々の破片]に打ち勝つために兵士が使用する、柔軟性で軟質の防護具(ベスト、ズボン、帽子、他の衣類、及び寝具もしくは毛布を含む)を作製するのに特に有用である。本明細書中に使用される「軟質」又は「柔軟性」の防護具とは、相当量の応力を受けたときにその形状を保持せず、崩壊せずに自立することができない防護具を表わしている。本発明の構造物はさらに、剛性で硬質の防護具物品を作製するのにも有用である。「硬質の」防護具とは、相当量の応力を受けたときに構造的剛性を保持し、そして崩壊することなく自立することができるような十分な機械的強度を有するヘルメット、軍用車両用のパネル、又は防御用の盾等の物品を意味している。本発明の構造物を複数の個別シートに切断し、これらのシートを積層して物品を作製することができる。あるいは本発明の構造物から前駆体を形成し、引き続き物品を形成することもできる。このような手法は、当業界においてよく知られている。
【0054】
本発明の衣料品は、当業界において従来から知られている方法によって作製することができる。衣料品は、本発明の弾道抵抗性物品と衣類とを接合することによって作製することができる。例えば、ベストは、本発明の弾道抵抗性構造物と接合された一般的な布帛ベストを含んでよく、こうして得られる本発明の構造物を戦略的に配置されたポケット中に挿入する。これにより弾道防御を最大限に高めるとともに、ベストの重量を最小限に抑えることができる。本明細書中に使用される「接合する(adjoining)」や「接合さられた(adjoined)」という用語は、貼付すること(例えば、縫製や接着などによって)だけでなく、弾道抵抗性物品が、必要に応じてベストや他の衣類から簡単に取り外しできるように、貼付ではないカップリング(un−attached coupling)や他の布帛との並置も包含することを意図したものである。柔軟性のシート、ベスト、及び他の衣料品等の柔軟性構造物を作製する際に使用される物品は、低引張モジュラスのマトリックス材料を使用して作製されることが好ましい。ヘルメットや防具具等の硬質物品は、高引張モジュラスのマトリックス材料を使用して作製されることが好ましい。
【0055】
弾道抵抗特性は、当業界においてよく知られている標準的な試験法を使用して測定される。特に、構造物の防御能力や貫入抵抗性は通常、発射体の50%が複合物中に貫入しつつ、50%がシールドによって停止されているという場合の衝撃速度(V50弾道限界値としても知られている)によって表示される。本明細書で使用している物品の「貫入抵抗性」とは、指定された脅威(例えば、銃弾、破片、及び爆弾の金属片等を含めた物理的物体、並びに爆発からの爆風等の非物理的物体)による貫入に対する抵抗性を表わしている。等しい面密度(組成物の重量を表面積で除して得られる値)を有する複合物の場合は、V50が大きくなるほど、組成物の抵抗性は良好になる。本発明の物品の弾道抵抗性は、多くのファクター(特に、布帛を製造するのに使用される繊維の種類)に応じて変わる。しかしながら、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーマトリックス材料を使用しても、本発明の物品の弾道特性に悪影響を及ぼすことはない。
【0056】
本発明に従って作製される柔軟性の弾道防護具(少なくとも約0.75psfの重量を有する)は、17グレインのフラグメント・シミュレーティング・プロジェクタイル(Fragment Simulating Projectile;FSP)発射体または9mmのフルメタルジャケット(FMJ)拳銃弾丸で衝撃を受けたときに、少なくとも1450fps(442mps)のV50を有する。本発明の柔軟性弾道防護具はさらに、17グレインのFSPまたは9mmのFMJ拳銃弾丸で衝撃を受けたときに、水道水もしくは海水中への浸漬後において、V50性能の少なくとも約85%を保持することを特徴とするのが好ましく、少なくとも90%の保持を特徴とするのがさらに好ましい。これらの条件下では、柔軟性弾道防護具はさらに、その乾燥重量から約50%以下の重量増加を示すことが好ましく、約40%以下の重量増加を示すことがさらに好ましい。本発明の柔軟性弾道防護具はさらに、9mmのFMJ弾丸または17グレインのFSPで衝撃を受けたときに、ガソリン中に70°F±5°F(21℃±2.8℃)で4時間浸漬した後に、V50性能の少なくとも約85%を保持することを特徴とするのが好ましく、少なくとも90%を保持することを特徴とするのがさらに好ましい。
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。
【実施例】
【0058】
実施例1(比較例)
破片抵抗性を試験するために、27枚の布帛層を含む弾道発射パック(a ballistic shoot pack)を作製した。発射パックを作製する前に、クレイトン(Kraton)(登録商標)D1107熱可塑性バインダー樹脂を含むポリマーバインダー物質を含浸させた、一方向性高モジュラスポリエチレン(HMPE)繊維の、圧密プライ2つで構成される材料の連続積層シートから布帛層を切り出した。HMPE繊維は、ハネウェル・インターナショナル社製造のスペクトラ(SPECTRA)(登録商標)1300であり、35g/デニールのテナシティ、1150g/デニールの引張モジュラス、及び3.4%の破断点伸びを有していた。クレイトンD1107樹脂は、14重量%のスチレンを含むポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンブロックコポリマーであり、テキサス州ヒューストンのクレイトンポリマーズ社から商業的に入手可能である。各布帛層は、繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として79.5重量%の繊維、及び繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として20.5重量%のバインダー樹脂を含んでいた。
【0059】
各層の2つの繊維プライを、一方のプライの繊維が、各繊維プライの縦繊維方向に関して、別のプライの繊維に対して直角に配向するようなクロスプライとした(従来の0°/90°配置)。プライを、2つの線状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(それぞれが、9μmの厚さと16g/m(gsm)の面密度を有する)の間に積層した。この構造物は、当業界では、スペクトラシールド(SPECTRA SHIELD)(登録商標)LCRとしても知られており、ハネウェル・インターナショナル社から商業的に入手可能である。積層プロセスは、クロスプライ材料上にLLDPEフィルムを、200psi(1379kPa)の圧力の下、110℃で30分プレスすることを含み、これにより0.06”(1.524mm)の厚さを有する材料の連続積層シートが形成された。このシートを切断して27枚の個別シートを作製した[それぞれが18”×18”(45.7mm×45.7mm)の長さと幅を有し、ある布帛層の全面密度は150gsmであった]。次いで、これら27層をゆるく積み重ねて発射パックを作製した。これらの層は、互いに結合させなかった。この発射パックの面密度は0.84psf(4.01ksm)であった。
【0060】
破片抵抗性に関して試験するために、発射パックをテストフレームに据え付け、フレームの頂部でしっかりクランプ止めした。このフレームを、堅く据え付けられたユニバーサルレシーバーから発射される破片のラインに対して直角配向に据え付けた。17グレインのフラグメント・シミュレーティング・プロジェクタイルを試験用に使用し、形状、サイズ、及び重量を、MIL−P−46593Aに従って適合させた。MIL−STD−662Eに記載の手順に従ってV50弾道試験を行って、弾丸が試験物体に50%貫入する可能性を有する速度を実験的に測定した。
【0061】
各フラグメントの速度を変えて、17グレインのFSPフラグメントを幾つか発射した。前回の発射フラグメントが、発射パックを完全に貫入したか、あるいは発射パックの2〜3の層に部分的に貫入したかに応じて、各フラグメントの速度を上げたり下げたりした。平均速度は、125fps(38.1mps)の速度幅(a velocity spread)内に、少なくとも4つのフラグメント部分貫入と少なくとも4つのフラグメント完全貫入を含めることによって得た。8つの部分的及び完全貫入の平均速度を算出し、これをV50と呼んだ。この発射パックのV50は1500fps(457.2mps)と算出された。標的の固有エネルギー吸収(Specific Absorption of the Target;SEAT)は27.86J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表1に示す。
【0062】
実施例2(比較例)
33枚の積み重ねられた布帛層を含むこと以外は、実施例1の場合と同様の弾道発射パックを作製した。発射パックの面密度は1.00psf(4.88ksm)であった。この発射パックを、実施例1の場合と同様にフラグメント抵抗性に関して試験した。この発射パックのV50は1705fps(519.7mps)と算出された。SEATは30.23J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表1に示す。
【0063】
実施例3(比較例)
28枚の布帛層を含むこと以外は、実施例1の場合と同様の弾道発射パックを作製した。本実施例ではさらに、各布帛層が、繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として89.9重量%の繊維を含み、繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として10.1重量%のバインダー樹脂を含んでいた。発射パックの面密度は0.76psf(3.71kg/m)であった。この発射パックを、実施例1の場合と同様にフラグメント抵抗性に関して試験した。この発射パックのV50は1616fps(492.6mps)と算出された。SEATは35.7J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表1に示す。
【0064】
実施例4
フラグメント抵抗性の試験をすべく、11枚の布帛層を含む弾道発射パックを作製した。図2に示す構造を有する材料の連続積層シートから布帛層を切り出した。具体的には、材料は下記のような構造を有していた:a)第1のLLDPEフィルム;b)一方向性アラミド繊維(1000デニールのツワロン繊維)の4プライ、前記プライは、0°、90°、0°、90°の向きにて配向されている;c)第2のLLDPEフィルム;d) 一方向性アラミド繊維の追加の4プライ、前記プライは、0°、90°、0°、90°の向きで配向されている;及びe)第3のLLDPEフィルム。
【0065】
アラミド繊維プライに、水性ポリウレタン熱可塑性バインダー物質[バイエル社のディスパーコール(DISPERCOLL)(登録商標)U53ポリウレタン樹脂]をコーティングし、バインダーと共にプライを圧密して、モノリシックの不織布帛を作製した。LLDPEフィルムはそれぞれ、9μmの厚さと16gsmの面密度を有した。各布帛層は、繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として86重量%のアラミド繊維、及び繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として14重量%のバインダー樹脂を含んでいた。このマルチプライ材料を、200psi(1379kPa)の圧力の下、110℃で30分積層して、0.021”(0.533mm)の厚さを有する連続布帛シートを作製した。シートを切断して11枚の個別シートを作製した(それぞれが18”×18”の長さと幅を有し、ある布帛層の全面密度は459gsmであった)。次いで、これら27層をゆるく積み重ねて発射パックを作製した。これらの層は、互いに結合させなかった。この発射パックの面密度は1.01psf(4.94ksm)であった。この発射パックを、実施例1の場合と同様にフラグメント抵抗性に関して試験した。この発射パックのV50は1841fps(561.28mps)と算出された。SEATは34.89J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
実施例5(比較例)
発射パックが25枚の布帛層を含み、発射パックを、9mmのフルメタルジャケット弾丸(弾丸重量:124グレイン)に対して試験したこと以外は、実施例1の手順を繰り返した。発射パックのサイズは18”×18”(45.7mm×45.7mm)であった。発射パックの面密度は0.78psf(3.81ksm)であった。9mmのFMJ弾丸に対する抵抗性に関して試験するために、プラスチリナ(Plastilina)#1クレーを充填したテストフレームに発射パックを据え付け、フレーム上にひもで結びつけた。プラスチリナ充填フレームを、堅く据え付けられたユニバーサルレシーバーから発射される破片のラインに対して直角に配向するように据え付けた。試験に使用した9mmのFMJ弾丸の形状、サイズ、及び重量は、National Institute of Justice(NIJ)0101.04試験基準に適合した。
【0068】
弾道試験は、MIL−STD−662Eに記載の手順に従って行った。幾つかの9mmFMJ弾丸を発射し、このとき各弾丸の速度を変えた。前回の発射弾丸が、発射パックを完全に貫入したか、あるいは発射パックの2〜3の層に部分的に貫入したかに応じて、各弾丸の速度を上げたり下げたりした。平均速度は、125fpsの速度幅(a velocity spread)内に、少なくとも4つのフラグメント部分貫入と少なくとも4つのフラグメント完全貫入を含めることによって得た。8つの部分的及び完全貫入の平均速度を算出し、これをV50と呼んだ。この発射パックのV50は1475fps(449.6mps)と算出され、プラスチリナに対する平均背面変形は39mmと測定された。SEATは210.87J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表2に示す。
【0069】
実施例6(比較例)
実施例3における発射パックを、実施例5における9mmFMJ弾丸に対して試験した。発射パックの面密度は0.77psf(3.75ksm)であった。この発射パックのV50は1620fps(493.8mps)と算出され、プラスチリナ上の平均背面変形は43mmと測定された。SEATは257.67J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表2に示す。
【0070】
実施例7(比較例)
布帛の樹脂含量を10.1%から7.0%に減らしたこと以外は、9mmFMJ弾丸を使用して実施例6を繰り返した。発射パックの面密度は0.77psf(3.75ksm)であった。この発射パックのV50は1571fps(478.8mps)と算出され、プラスチリナ上の平均背面変形は55mmと測定された。SEATは242.32J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表2に示す。
【0071】
実施例8
実施例4に記載の材料の布帛層を9枚積み重ねることによって弾道発射パックを作製した。積み重ねた層は、互いに結合させなかった。発射パックの面密度は0.74psf(3.61ksm)であった。この発射パックを、実施例5における9mmFMJ弾丸に対するV50に関して試験した。この発射パックのV50は1572fps(479mps)と算出され、プラスチリナ上の平均背面変形は25mmと測定された。SEATは252.46J−m/kgと算出された。発射パック構造物と試験結果の概要を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例9(比較例)
実施例1に記載の材料に対し、ASTM D1876−01に従って剥離強度試験を実施した。完全に積層された材料シートから、0°または90°の繊維方向に沿って、2インチ(5.08cm)×12インチ(30.48cm)のストリップサンプルを10個切断した。これらサンプルのそれぞれに対し、インストロン(INSTRON)(登録商標)試験機で、2インチ幅の端部の一方の左端と右端をつかみ、約1インチ(2.54cm)幅の中央部分を剥離試験用に残した。各サンプルの該中央部分を90°で剥離して、各サンプルに対して0°プライと90°プライとの間の剥離強度を測定した。10個のサンプルの平均剥離強度は2.42ポンドと測定された。材料の構造と試験結果の概要を表3に示す。
【0074】
実施例10(比較例)
実施例3に記載の材料から切断した2インチ×12インチのストリップサンプルに対し、実施例9に従って剥離強度試験を実施した。10個のサンプルの平均剥離強度は1.01ポンドと測定された。材料の構造と試験結果の概要を表3に示す。
【0075】
実施例11
実施例4に記載の材料から切断した2インチ×12インチのストリップサンプルに対し、実施例9に従って剥離強度試験を実施した。10個のサンプルの平均剥離強度は2.62ポンドと測定された。材料の構造と試験結果の概要を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
実施例12(比較例)
ASTM570−05試験法に従って、実施例1の材料を吸水率に関して試験した。3つの試験サンプル〔それぞれ直径2インチ(50.8mm)のディスクの形態〕を、幅4インチ(50.8mm)で長さ8インチ(101.6mm)の、水道水を満たしたガラスビーカー中に浸漬した。1”×1”×0.2”(25.4mm×25.4mm×5.1mm)のセラミックタイルを、サンプルが水中で浮遊しないようにサンプル上に配置した。水中から一度に1つのサンプルを取り出し、乾燥した布でふき取り、そしてサンプルの重量を測ることによって、吸水率を数回の間隔で記録した。材料の構造と試験結果の概要を表4に示す。
【0078】
実施例13
実施例12において使用したのと同じ方法に従って、実施例4の材料を吸水率に関して試験した。材料の構造と試験結果の概要を表4に示す。表4に示すように、実施例13からの材料の吸水率は、比較用実施例12からの材料の吸水率より低かった。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例14(比較例)
実施例1の材料を、ASTM570−05ガイドラインに従ってガソリンの吸収に関して試験した。実施例12及び13の場合と同様に、3つの試験サンプル〔それぞれ直径2インチ(50.8mm)のディスク形態〕を、幅4インチ(50.8mm)で長さ8インチ(101.6mm)の、水の代わりにガソリンを満たしたガラスビーカー中に浸漬した。1”×1”×0.2”(25.4mm×25.4mm×5.1mm)のセラミックタイルを、サンプルがガソリン中で浮遊しないようにサンプル上に配置した。サンプルを目視試験することによって、ガソリン吸収の影響を記録した。材料の構造と試験結果の概要を表5に示す。
【0081】
実施例15
実施例4の材料を、実施例14の場合と同じ方法に従ってガソリンの吸収に関して試験した。サンプルを目視検査することによって、ガソリン吸収の影響を記録した。材料の構造と試験結果の概要を表5に示す。表からわかるように、実施例14のサンプルは、ガソリン中へ浸漬してから1分後に、繊維プライとLDPEフィルムとが分離することを示した。しかしながら、実施例15のサンプルは、ガソリン中へ4時間浸漬しても影響が見られなかった。
【0082】
【表5】

【0083】
実施例16(比較例)
実施例1の材料を、ASTM570−05試験法に従って塩水の吸収率に関して試験した。3つの試験サンプル〔それぞれ直径2インチ(50.8mm)のディスクの形態〕を、幅4インチ(50.8mm)で長さ8インチ(101.6mm)の、塩水混合物を満たしたガラスビーカー中に浸漬した。1”×1”×0.2”(25.4mm×25.4mm×5.1mm)のセラミックタイルを、サンプルが塩水中で浮遊しないようにサンプル上に配置した。塩水中から一度に1つのサンプルを取り出し、乾燥した布でふき取り、そしてサンプルの重量を測ることによって、吸水率を数回の間隔で記録した。材料の構造と試験結果の概要を表6Aと表6Bに示す。
【0084】
実施例17
実施例4の材料を、実施例16の場合と同じ方法に従って吸水率に関して試験した。材料の構造と試験結果の概要を表6Aと表6Bに示す。表からわかるように、実施例17からの材料の吸水率は、比較実施例16からの材料の吸水率より低かった。
【0085】
【表6A】

【0086】
【表6B】

【0087】
実施例18
水性ポリウレタン熱可塑性バインダー物質(バイエル社製のディスパーコールU53)で被覆したツワロン1000デニールアラミド繊維の一方向性プライ2つと、3つのLLDPEフィルムとを含む5プライ材料を作製した。この5プライ材料から、図1に示すような構造物(すなわち、LLDPEフィルム/0°ユニテープ/LLDPEフィルム/90°ユニテープ/LLDPEフィルム)を作製した。各LLDPEフィルムは、9μmの厚さと16gsmの面密度を有した。それぞれの一方向プライは、繊維とバインダー樹脂の合計重量を基準として、86重量%のアラミド繊維と14重量%のバインダー樹脂を含んでいた。5プライ材料を、110℃200psi(1379kPa)の圧力の下、110℃で30分積層して、0.021(0.533mm)の厚さを有するモノリシックの連続布帛シートを作製した。このシートをカットして別個の層を作製した(それぞれが18”×18”の長さと幅を有し、ある1つの布帛層の全面密度は116gsmであった)。次いで、32枚の個別の層をゆるく積み重ねて弾道発射パックを作製した。層は互いに結合させなかった。
【0088】
この構造の乾燥発射パックを、予め水中に浸漬することなく、実施例5に記載のように、9mmFMJ弾丸(弾丸重量:124グレイン)に対する弾道試験にかけた。発射パックの構造と弾道試験結果の概要を表7に示す。
【0089】
実施例19
この構造の別の発射パックを海水中に24時間浸漬し、次いで垂直ドリップドライを15分行って、発射パック層間に捕捉された水をきった。次いでこの発射パックを、実施例18に記載のような9mmFMJ弾丸に対する弾道試験にかけた。発射パックの構造と弾道試験結果の概要を表7に示す。
【0090】
【表7】

【0091】
実施例20
実施例18の材料を、実施例12に記載のように吸水率に関して試験した。試験結果の概要を表8に示す。
【0092】
【表8】

【0093】
実施例21
実施例18の材料を、実施例14に記載のようにガソリンの吸収に関して試験した。試験結果の概要を表9に示す。
【0094】
【表9】

【0095】
好ましい実施態様を挙げて本発明を具体的に説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく種々の変更や改良を行うことができることは、当業者にとって言うまでもないことである。特許請求の範囲は、開示された実施態様、以上に説明されている代替的な態様、及びこれらに対する均等な態様に及ぶことが意図されている。
【符号の説明】
【0096】
10 繊維複合材料
12 繊維複合材料
14 第1の外側ポリマーフィルム
16 中央ポリマーフィルム
18 第2の外側ポリマーフィルム
20 第1の繊維層
22 第2の繊維層
24 第1の繊維層
26 第2の繊維層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の外側ポリマーフィルム;
b)前記第1の外側ポリマーフィルムと接触している第1の繊維層、ここで前記第1の繊維層は複数の繊維を含み、前記繊維は、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;
c)前記第1の繊維層と接触している中央ポリマーフィルム;
d)前記中央ポリマーフィルムと接触している第2の繊維層、ここで前記第2の繊維層は複数の繊維を含み、前記繊維は、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;及び
e)前記第2の繊維層と接触している第2の外側ポリマーフィルム;
をこの順序で含む繊維複合材料。
【請求項2】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、実質的に平行な配列になるように整列した、重なり合っていない不織繊維のシングルプライを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項3】
前記第1の繊維層の平行繊維が、各繊維プライの縦繊維方向に関して、前記第2の繊維層の平行繊維に対して直角に配置されている、請求項2に記載の繊維複合材料。
【請求項4】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、複数の圧密された不織繊維プライを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項5】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、単一のエレメントに圧密された複数の重なり合った不織繊維プライを含み、各プライが、実質的に平行な配列になるように整列した繊維を含み、繊維層の各プライが、各繊維プライの縦繊維方向に関して、当該繊維層内の各隣接プライの平行繊維に対して直角に配置されている、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項6】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが織物繊維配列を含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項7】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する繊維を含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項8】
各繊維層の前記繊維が、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ポリベンザゾール繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアクリロニトリル繊維、液晶コポリエステル繊維、ピリドビスイミダゾール−2,6−ジイル(2,5−ジヒドロキシ−p−フェニレン)を含む剛性ロッド繊維、又はこれらの組み合わせ物を含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項9】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、加水分解安定性の極性ポリマーを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項10】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、極性ビニル系ポリマーを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項11】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、ジエンゴム、スチレンブロックコポリマー、極性ビニル系ポリマー、極性アクリルポリマー、ポリ塩化ビニルホモポリマー、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニルターポリマー、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、極性エチレン酢酸ビニルコポリマー、極性エチレンアクリル酸コポリマー、シリコーン、熱可塑性ポリウレタン、ニトリルゴム、ポリクロロプレン、ポリカーボネート、ポリケトン、ポリアミド、セルロース系誘導体、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項12】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、加水分解安定性の熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項13】
前記第1の外側ポリマーフィルム、前記中央ポリマーフィルム、及び前記第2の外側ポリマーフィルムが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項14】
前記第1の外側ポリマーフィルム、前記中央ポリマーフィルム、及び前記第2の外側ポリマーフィルムのそれぞれが線状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項15】
前記ポリマーバインダー物質が、第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれの約3重量%〜約16重量%を構成する、請求項1に記載の繊維複合材料。
【請求項16】
請求項1に記載の繊維複合材料から作製される弾道抵抗性物品。
【請求項17】
a)第1の外側ポリマーフィルムを供給すること;
b)前記第1の外側ポリマーフィルムに第1の繊維層を貼付すること、ここで前記第1の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;
c)前記第1の繊維層に中央ポリマーフィルムを貼付すること;
d)前記中央ポリマーフィルムに第2の繊維層を貼付すること、ここで前記第2の繊維層が複数の繊維を含み、前記繊維が、水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性のポリマーバインダー物質で少なくとも部分的に被覆されている;及び
e)前記第2の繊維層に第2の外側ポリマーフィルムを貼付すること;
を含む繊維複合材料の作製方法。
【請求項18】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、実質的に平行な配列になるように整列した、重なり合っていない不織繊維のシングルプライを含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項19】
前記第1の繊維層の平行繊維が、各繊維プライの縦繊維方向に関して、前記第2の繊維層の平行繊維に対して直角に配置されている、請求項18に記載の作製方法。
【請求項20】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、複数の圧密された不織繊維プライを含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項21】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、単一のエレメントに圧密された複数の重なり合った不織繊維プライを含み、各プライが、実質的に平行な配列になるように整列した繊維を含み、繊維層の各プライが、各繊維プライの縦繊維方向に関して、当該繊維層内の各隣接プライの平行繊維に対して直角に配置されている、請求項17に記載の作製方法。
【請求項22】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが織物繊維配列を含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項23】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、極性のビニルベースポリマーを含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項24】
水に対して耐溶解性であり且つ1種以上の有機溶媒に対して耐溶解性の前記ポリマーバインダー物質が、加水分解安定性の熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項25】
第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれが、約7g/デニール以上のテナシティと約150g/デニール以上の引張モジュラスを有する繊維を含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項26】
前記第1の外側ポリマーフィルム、前記中央ポリマーフィルム、及び前記第2の外側ポリマーフィルムが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマー、フルオロポリマー、又はこれらの組み合わせ物を含む、請求項17に記載の作製方法。
【請求項27】
前記ポリマーバインダー物質が、第1の繊維層と第2の繊維層のそれぞれの約3重量%〜約16重量%を構成する、請求項17に記載の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−532280(P2010−532280A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−554689(P2009−554689)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/057310
【国際公開番号】WO2008/137218
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】