説明

形態保持性成形体

【課題】 形態保持性成形体として、使用時の形態上の位置ぶれを生じず、形態変更度の大きい場合も対応可能な成形体を提供すること。
【解決手段】 ガスバリア性及び伸縮性を有する袋状包装体内に、多数の詰め物を収容してなり、上記袋状包装体は多数の詰め物を集合体として形状保持できる程度に内部の空気を抜いた状態が得られるようにしてなる成形体において、上記袋状包装体が、ガスバリア性及び伸縮性を有するフィルムと伸縮性を有する繊維構造体とを一体化してなる複合体であり、上記袋状包装体の外層部が上記繊維構造体であることを特徴とする形態保持性成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰め物による集合体を用いた成形体に係り、使用時の形態保持を図るのに好適で、使用感に優れた形態保持性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通気性を有する外被袋に発泡スチロール粒等を充填したクッションが、成形体として一般的に知られている。
A)そして、ビーズクッションに代表される座家具(特許文献1参照)では、腰を掛ける人の体の形状に順応して形成されているので、非常に快適な座り心地が得られる等、優れた特徴を有する反面、以下のような欠点があった。
【0003】
坐る位置は、毎回微妙にぶれる。ぶれても常に中の発泡粒は移動し、順応してくれる。一見、長所のような特性ではあるが、常にまとわりつく感触があって、その点は個人の感覚にゆだねられる部分ではあるが、それを不快と感じる人がいるのも現状である。また、袋内の発泡粒が袋の中で自由に動くため、未使用時の収納に苦慮することとなる。
【0004】
さらに、上記した先行技術の公報には、「この安楽椅子の腰掛け部の形状は、腰掛ける人の体の形状に順応して形成されるので、非常に快適な坐り心地がえられる。そして、上記形状は力がなくなっても、すなわち人が立ち上がって椅子を去っても、新たに力を加えない限りほぼその形状を保持するものである。
更に、椅子を背もたれ部を席部となし、席部を背もたれ部となすように位置を変え、座高の異なる安楽椅子を得ることも可能である。」という記述があるが、新たに力を加えない限りほぼその形状を保持するために、外被袋の形状をテトラ形状としたり、発泡スチロールの袋内移動を抑制するために、ウレタンまたはフォームラバーを混入し、摩擦係数を上げるという工夫がなされている。
【0005】
しかしながら、人間が立ち上がる際に椅子に加える力というのは、坐る際に形状をなじませるために使用したエネルギーよりもはるかに大きい力が加わるので、ここにある保持できている形状とは、決して坐っていたときの形状ではないということである。よって、この形状保持できるという内容には、なんら機能的な意義はないと言わざるを得ない。しかも、発泡粒の移動時に発生する摩擦音を解消するためにウレタンまたはフォームラバーを混入するということは、資源再利用時の分別回収が困難となる。
【0006】
B)次に、従来の下敷緩衝材(特許文献2参照)では、非常にランダムな凸凹形状をなすものであっても、被包装物自体の重量による荷重を略均等に分散して負担でき、しかも発泡粒子がそれ自体適度の弾力性を保有すると共に略球状をなすので、被包装物との当触感が良好であり、表面が柔軟な被包装物を損傷するおそれがなく、また発泡粒子の流動性と弾力性によりきわめて優れた緩衝効果を発揮でき、被包装物の保護を好適になすという特徴を有するものであるが、以下のような欠点を有する。
即ち、輸送中の振動で外被袋内の発泡粒は動き、被包装物が相当な重量物であるとき、及び外被袋内の発泡粒の充填量が外被容量より基準を超えて少ない場合などには、底づき・横づきする可能性がある。ということは、発泡粒の流動により、緩衝効果の期待できない事象の発生を防ぐすべがなかった。
【0007】
C)また、クッション材に対する具体的用途の一例として、担架に用いる場合、従来品は傷病者の重量でクッション全体が大きく撓んで身体が沈み込んでしまうものが多く、負傷者等の場合、負傷部位の確実な固定ができず、好ましくない状態で負傷者等を移動させ
ねばならない不充分なものであった。
【0008】
D)次に従来のクッション(特許文献3参照)では、小粒状体を収容してある袋状包装体において、内部の空気を抜いた状態でシールして形状固定できるものが提案されているが、形状変化が大きい場合に、袋を形成するガスバリア性のあるプラスチックフィルム又はシートに伸縮性がない為に、表面にしわが入ったり、高低差に限界があり、実際の形状どおりにならないという欠点があった。
【0009】
【特許文献1】特公昭47−31978号公報
【特許文献2】実開昭57−98262号公報
【特許文献3】特開2003−135221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上記A〜Dにおける問題点を解消し、成形体として使用時の形態上の位置ぶれを生じず、形態変更度の大きい場合も対応可能なものを提供することをその目的としている。
また、本発明の他の目的は、使用時の快適性に優れた形態保持性成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、ガスバリア性及び伸縮性を有する袋状包装体内に、多数の詰め物を収容してなり、上記袋状包装体は多数の詰め物を集合体として形状保持できる程度に内部の空気を抜いた状態が得られるようにしてなる成形体であって、上記袋状包装体が、ガスバリア性及び伸縮性を有するフィルムと伸縮性を有する繊維構造体とを一体化してなる複合体であり、上記袋状包装体の外層部が上記繊維構造体であることを特徴とする形態保持性成形体によって達成される。
【0012】
更に、本発明の目的は、詰め物を収容してなる袋状包装体は、空気を出し入れ可能なように構成してあることを特徴とする上記形態保持性成形体によって達成される。
更に、本発明の目的は、詰め物を収容してなる袋状包装体は、その内部の空気を抜いた状態で密封して形状固定してあることを特徴とする上記形態保持性成形体によって達成される。
更に、本発明の目的は、詰め物が、合成樹脂製の球状発泡体であることを特徴とする上記形態保持性成形体によって達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、袋状包装体内に単に詰め物を収容させるだけでなく、袋状包装体は少なくとも多数の詰め物を集合体として形状保持できる程度に内部の空気を抜いた状態が得られるように構成してあるので、多数の詰め物を集合体として流動しない状態での使用が可能となり、詰め物を固定化でき、形状保持を安定化させることが必要な用途に多用でき、多大な効果を発揮できる。
また、袋状包装体に十分な伸縮性を付与することにより、形態変更度の大きい場合も対応可能となり、かつ、形態変更時にしわが入りにくくい。また、袋状包装体として、外層部が繊維構造体となるような複合体を用いることにより、肌触りがよく、汗のべたつきがなくなるので、長時間の使用や肌に直に接するように使用することが可能となり、使用時の快適性を増すことができ、適正用途を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次いで、本発明の実施態様について、図面に基づき説明する。
図1は本発明の形態保持性成形体であって、空気を抜脱する前の状態を示す断面図、図2は所望の形態になるように積載物Aをのせて空気を抜脱した後の状態を示す断面図である。
1は形態保持性成形体、10は袋状包装体、20は詰め物、30は吸排口を示す。
【0015】
形態保持性成形体1は、袋状包装体10内に、小粒状体で且つそれ自体が緩衝機能を有する詰め物20を多数収容してなるものであり、袋状包装体10内の空気を抜脱した際には、多数の詰め物20を個々ではなく集合体として所定の形状に図2のごとく保持できるものである。
図中における30は空気の出し入れをする為の兼用の吸排口を示しているもので、逆止弁等の弁機構や、詰め物20が排出されないように網状等のフィルターを具備することもあるほか、ポンプにも接続できる。なお、袋状包装体10には当初、詰め物20の多数を入れるための開口部(図示せず)があるが、詰め物20を収容した後にはシールして閉塞されるため、図示されていない。
【0016】
袋状包装体10は、ガスバリア性及び伸縮性を有するものであり、ガスバリア性及び伸縮性を有するフィルム11と伸縮性を有する繊維構造体12とを一体化してなる複合体からなる。また、伸縮性を有する繊維構造体12が袋状包装体の外層部となっている。
【0017】
上記のガスバリア性及び伸縮性を有するフィルム11としては、ポリウレタン等の伸縮性に優れたフィルムが好適である。
フィルム11の厚みは、好ましくは0.02〜0.2mm、より好ましくは0.05〜0.1mmである。
本発明に係るフィルムは、公知の成形方法により成形される。例えば、ブロー成形法、インフレーション法、Tダイ法等の方法により成形されたものを使用することができる。また、多重構造にしてもよく、例えば二重構造の場合、少なくとも内外の何れかがガスバリヤ性を保有していればよい。
【0018】
また、上記伸縮性を有する繊維構造体としては、伸縮性に優れたポリウレタン等からなる不織布が好適に用いられる。繊維構造体としては、織物、編物等も使用可能である。
上記のような不織布は、公知の方法により得られる。例えば、メルトブロー法、スパンポンド法等により製造されたものを使用することができる。
伸縮性を有する繊維構造体の厚みは、好ましくは0.2〜0.8mm、より好ましくは0.3〜0.6mmである。
【0019】
上記フィルム11と繊維構造体12とは、熱融着により、または接着剤を用いるにより一体化し、複合体とする。
複合体の厚みは、薄すぎると強度の問題があり、厚すぎると形状変更に対応するのに不適な場合がある。最終用途によって適切な厚みは異なってくるが、一般的には0.2〜1mmが適しており、好ましくは0.3〜0.7mmである。
また、複合体の破断伸度は、200%以上であることが好適である。
【0020】
上記複合体を、所望形状とし、ウェルダー加工、縫製、接着剤の使用等により袋状に成形し、袋状包装体10とする。
【0021】
また、詰め物20は、小粒状体であり、合成及び天然を問わず、合成樹脂製の球状発泡体、球形押潰状発泡体、さらには、米、麦、とうもろこし、タピオカ等食品自体による粒
状体もしくはこれらのデンプン質を利用した食品発泡体の1種または数種を組合せた物を用いることができる。また、低融点綿とレギュラー綿との混合物を熱処理して、形状を固定化した短切片を用いることもできる。
これらの中でも、合成樹脂製の球状発泡体が、軽量で緩衝機能を有していて好適である。
合成樹脂製の球状発泡体としては、発泡スチロール、ポリ乳酸等の生分解性樹脂の発泡体が好適に使用される。
詰め物20の大きさは、種々多様に使用できるが、球状の場合、その粒径は好ましくは0.1〜20mm、より好ましくは0.4〜5mmである。他の形状の場合もこれに準じた大きさが好ましい。
【0022】
本発明の成形体によれば、成形体に坐るなどして一旦形状を決めて、空気を抜いた後は、中の詰め物は集合体となり、袋状包装体内での移動を遮断することができ、まとわりつく感触を排除できる。また、空気の抜き加減の強弱で、表面の質感を硬くも柔らかくも自在に調整できる。よって、個人の感性に応じた状態での形状・質感の固定化が容易にはかれる特性があって、使用し易いものとなる。
【0023】
しかも、本発明の場合、袋状包装体内の空気を必要量抜き取った後は、中の詰め物の固定化が完全にできるので、保持できる形状自身、坐っていたときの形状そのものとなる。しかも、本発明の成形体は、袋状包装体が伸縮性を有することから、凹凸差の大きい形状をなす対象物への対応が可能であり、かつ、形態変更時にしわが入りにくい。
さらに、本発明の場合、前述の空気を抜き取る行為で、中の詰め物の固定化が完全にできるので、使用時に音がすることはない。よって、袋状包装体内に入れる詰め物は単素材で十分であり、ライフサイクルの見地からも環境負荷の少ない商品が出来る。
【0024】
次いで、本発明は、詰め物を収容してある袋状包装体は、空気を出し入れ可能なように構成すると、吸気口と排気口や、吸排兼用の口部を設けて空気の入った状態と、必要量抜いた状態を選択できる、いわゆる可逆的固定方式を採用できるようにしており、空気の出し入れが非常に行い易いものとなり、詰め物に対する可逆的固定方式が一段と採用し易くなり、形態の異なる再使用が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る袋状包装体は、フィルムと繊維構造体との2層構造で一体化されてなり、その外層部が繊維構造体となっているので、肌触りがよく、汗のべたつきがなくなるので長時間の使用が可能となり、使用時の快適性を増すことができる。
【0026】
また、本発明の形態保持性成形体を、細長い棒状の成形体1’にすることにより、図3に示すように、腕や脚等の対象物Bに巻き付け、この状態で空気を抜いて対象物Bを固定することができ、ギブス用途として好適に使用することができる。
または、本発明の形態保持性成形体を、帯状、リング状、円筒状等にしてもよい。
【0027】
本発明において、詰め物を収容してある袋状包装体は、内部の空気を抜いた状態でシールして形状固定すると、包装体内の空気を必要量抜いて、多数の詰め物を集合体として形状保持した状態を固定できることになるので、成形体を種々用途に応じて所望の形状に簡単に形成できる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0029】
(実施例1)
破断伸度200%以上有する厚み0.05mmのポリウレタンフィルム(日本マタイ(株)製のエスマーURS)を破断伸度200%以上有する厚さ0.3mmのポリウレタン不織布(KBセーレン(株)製の商標エスパンシオーネ不織布)にラミネート加工にて複合化した。得られた複合シートを用い、熱接着加工にて袋状包装体を作成した。
この袋状包装体に、詰め物として発泡スチロールの小粒粒子(粒径0.4〜0.5mm)を充填し、空気の出し入れが可能なように、吸排口を設け、50×430×430mmの成形体とした。
得られた成形体を、車椅子を利用している人のクッションとして使用した。すなわち、まず、空気を抜く前に、クッションの上に利用者の臀部を載せ、次に、袋状包装体内の空気を小型ポンプにて抜き、臀部の形態に沿った凹部が形成された状態に形態保持した。
この状態で使用した結果、従来品と比較して臀部のフィット感が良好であり、移動時の振動でのクッションのズレもなく、とても好評であった。
【0030】
(実施例2)
破断伸度300%以上を有する厚み0.05mmのポリウレタンフィルム(日本マタイ(株)製のエスマーURS)を破断伸度300%以上有する厚さ0.4mmのポリウレタン不織布(KBセーレン(株)製の商標エスパンシオーネ不織布)にラミネート加工にて複合化した。得られた複合シートを用い、熱接着加工にて袋状包装体を作成した。
この袋状包装体に、トウモロコシを原料とする生分解性発泡体の小粒粒子(粒径0.4〜0.5mm)を充填し、空気の出し入れが可能なように、吸排口を設け、直径5cmで長さが1mの棒状物を作成した。
これは、空気が入った状態では柔らかく、自由な形状が容易に形成出来、伸縮性が大きい為に上腕部や脚部にも巻くことが出来た。巻いた状態で空気を抜いていくとその形態を保持できることができ、簡易ギブスの機能を果たすことが出来た。また、表面が繊維状であることから空気の流通が可能であり、フィルムの場合と異なり、汗によるべとつき感が少なく快適であった。
【0031】
(比較例)
ポリプロピレンフィルム(東セロ(株)製SC50)を用い、実施例2と同様にして、棒状物を作成した。
得られた棒状物では、伸縮性が十分ではなく、曲部でのフィット性が不足し、十分な固定が出来ず、目的を達成することが出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、人体等の対象物を固定できる、クッション、座椅子、ベッド、ギブス等に好適に使用できる形態保持性成形体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の形態保持性成形体の一実施態様であって、空気の抜脱前の状態を示す断面部である。
【図2】図1の形態保持性成形体の空気を抜脱した後の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の形態保持性成形体の他の実施態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 形態保持性成形体
10 袋状包装体
20 詰め物
30 吸排口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバリア性及び伸縮性を有する袋状包装体内に、多数の詰め物を収容してなり、上記袋状包装体は多数の詰め物を集合体として形状保持できる程度に内部の空気を抜いた状態が得られるようにしてなる成形体であって、上記袋状包装体が、ガスバリア性及び伸縮性を有するフィルムと伸縮性を有する繊維構造体とを一体化してなる複合体であり、上記袋状包装体の外層部が上記繊維構造体であることを特徴とする形態保持性成形体。
【請求項2】
詰め物を収容してなる袋状包装体は、空気を出し入れ可能なように構成してあることを特徴とする請求項1記載の形態保持性成形体。
【請求項3】
詰め物を収容してなる袋状包装体は、その内部の空気を抜いた状態で密封して形状固定してあることを特徴とする請求項1記載の形態保持性成形体。
【請求項4】
詰め物が、合成樹脂製の球状発泡体であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の形態保持性成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−98868(P2007−98868A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294284(P2005−294284)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(305037123)KBセーレン株式会社 (97)
【出願人】(501424983)日新化成工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】