説明

形状フィット閉鎖具構造を有する靴

形状フィット閉鎖具構造及び靴の内部締め付け方法によって、閉鎖具システムが靴着用者の足の位置の保持を確実にすることが容易になった。このシステムは、(1)足を入れることができるように開いており、閉鎖具システムによって足の上で閉じることが可能であるアウターソールと、(2)足のインステップを包むと共に靴の閉鎖具システムに固定される、靴下状内部締め付け構造とを備える。靴内での足の位置の保持を確実にすることによって、靴着用者の足の周りでの靴のより良いフィットをもたらす方法も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴と、靴の形状フィット閉鎖具(a form fitting closure)とに関する。より詳細には、本発明は、靴の外部甲被につながっており外部甲被の剛性に関係なく閉じることができる靴下状内部ライナを有する靴に関する。
[関連出願の相互参照]
【0002】
本願は、2007年5月3日に出願された米国仮特許出願第60/927,694号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
靴の閉鎖具は通常、靴の甲被の一部であり、靴着用者が足を出し入れするために、また、足を入れた後で靴を着用者の足の周りで締め付けるために、靴を開閉することを可能にする。靴は、着用者の足に靴を適切にフィットさせる様々な閉鎖具システムと共に製造されてきた。既知の靴の閉鎖具システムとして、靴紐システム、ジッパーシステム、フックアンドループ(hook and loop:面ファスナ)(ベルクロとしても知られている)システム、並びにボタン、バックル、及び留め金のシステムが挙げられる。単純な靴紐システムは一般的に、甲被の外側サイド(lateral side)及び内側サイド(medial side)の双方にあるループ又は孔を交互に通過して、締められるとそれらの両サイドを互いに引き寄せる1本の靴紐を含む。靴紐システムは、靴を着用者の足によりしっかりとつけてぴったりなフィットをもたらすようになっている。
【0004】
たとえば、特許文献1は、ストラップを有するスポーツブーツを開示している。このストラップはソールに固定され、ブーツのインステップ領域へ上方に延び、その先端が靴紐用のループを提供する。ループはブーツの外部甲被内部に取り付けられている。靴紐が締められると、ストラップは甲被を着用者の足の周りでしっかり引き寄せる。甲被へのループの取り付けに起因して、着用者の足の周りで締め付けるというストラップの性能は、甲被の剛性又は可撓性によって決まる。ブーツは通常、革等の剛性で非可撓性の材料から成る。そのような材料の剛性によって、靴を着用者の足の周りで締め付けることができる度合いが制限される。
【0005】
特許文献2は、靴紐システムと履物物品の外側サイド及び内側サイドに取り付けられる一対のヒールストラップとを有する履物物品を開示している。靴紐システムは、片面でソールの外側サイド及び内側サイドに取り付けられているインステップ片(instep pieces)を含む。インステップ片の自由端は、甲被に挿通されているストラップに取り付けられて、靴紐用のループを形成する。ヒールストラップは、靴紐が通過する最後のループ対を形成する。靴紐が締められると、履物物品の外側サイド及び内側サイド及びインステップ片は互いに引き寄せられ、ヒールストラップは着用者の足首の周りでヒール領域を内方へ引っ張る。インステップ片に取り付けられるストラップが甲被に挿通されているため、着用者の足に適合するという履物物品の性能は、甲被を作製するのに使用される材料の剛性によって依然として制限されている。
【0006】
より可撓性の材料の使用は、よりカスタマイズされたタイトなフィットをもたらすことができるが、足を保護及び支持するという靴の性能が損われる。たとえば、特許文献3は、ソールに固定されている複数のストラップを有する運動靴を開示している。これらのストラップは、爪先領域から後方にかかと領域まで離間している。これらのストラップの端は、靴紐が通過するループをインステップ領域内に形成する。靴紐が締められると、ストラップは着用者の足の周りを締め付ける。ぴったりなフィットがもたらされる一方、この靴は足を保護する剛性のカバーを欠いている。
【0007】
特許文献4は、着用者の足の支持及び保護を行うための、内部締め付け装置及び外部甲被の双方を有するスポーツシューズを開示している。内部締め付け装置は、足のミッドステップ(midstep)部分を囲む可撓性材料から成る靴下状ライナを含む。ライナは、ソールにおいて靴に取り付けられ、足の外側サイド及び内側サイドを上に延びる。足の上部(top)において、ライナの縁は、靴紐システム等の締め付け装置を介して互いにつながる。締め付け装置を締め付けることによって、靴下状ライナが足に適合するようにライナを足の周りで引っ張る。外部甲被は、足全体及び内部締め付け装置を覆うが、別個の閉鎖具システムも有する。この靴はぴったりなフィットをもたらす一方、靴下状ライナの締め付けは外部甲被へ連動しないため足がブーツ内で大幅に自由に動くことを可能にする。
【0008】
最後に、特許文献5は、ユーザの足に固定させるように、クッション中敷に連結される靴紐又は柔軟なバンドを使用する運動靴を開示している。クッション中敷は弾性的に可撓性である。クッション中敷は、靴内で主中敷の上方に位置し、足の裏に接触する。クッション中敷は、爪先部分の囲壁及び甲被によって定位置に保持され得る。代替的に、クッション中敷は主中敷のかかと部分に接着固定され得る。靴のインステップ領域は、靴紐又は柔軟なバンドをかける孔を含む。各靴紐又は柔軟なバンドは、靴の外部から孔の1つを通って靴内のインステップ領域へと延びる。靴の内部では、靴紐又は柔軟なバンドは、足を横方向に横断し、足の側面をクッション中敷の下へとループし、クッション中敷の底面下で靴を横断し、足の側面を上がり、足の上部へと戻って交差してから、入ってきた側とは反対側の穴の1つを通って靴を出る。靴紐又は柔軟なバンドの端はしっかりと引っ張られ、インステップ領域は閉じて、クッション中敷は足の裏に対してぴったりとするように引っ張られる。靴紐又はバンドは、足の上でインステップ領域を閉じて足をクッション中敷にしっかりと固定するが、足の位置は靴内でしっかりと固定されない。クッション中敷自体は靴の中敷にしっかりと固定されないため、足は靴内で依然として動くことができる。この特許は、主中敷が主中敷のかかと領域に接着固定され得ることを教示しているが、クッション中敷の爪先及び土踏まず領域は依然として、靴の中敷から自由に分離し、そのため足が靴内で自由に動くことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6954996号明細書
【特許文献2】米国特許第5992057号明細書
【特許文献3】米国特許第6701644号明細書
【特許文献4】米国特許第5704138号明細書
【特許文献5】米国特許第4592154号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、締め付けられると着用者の足に適合し、中で足を安定させ、足を保護することができる靴が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[要約]
本発明は、ソールと、足を入れることができるようにインステップに沿って開いており、閉じることが可能である甲被とを有する靴を提供する。甲被はインナー部分及びアウター部分を含む。インナー部分及びアウター部分は、靴の外面としての機能を果たす。好ましくは、アウター部分は足を保護する材料を含む。好ましくは、インナー部分は靴下状ライナを含む。各部分は、ソールの底部で該ソールに取り付けられており、複数の離間した材料片によってソールの上部で互いに接着されている。好ましくは、離間した材料片はストラップを含む。好ましくは、離間した材料片は、インナー部分及びアウター部分に縫い付けられ、靴紐が通過するループを形成する。靴紐が、材料片を通ってインナー部分とアウター部分との間に位置付けられて、インナー部分及びアウター部分の双方を足の周りで同時に締め付ける。好ましくは、インナー部分は、フィット閉鎖具構造が締め付けられると、着用者の足に適合する。
【0012】
本発明は、閉鎖具システムによる靴の内部締め付け方法も提供する。足を入れることができるように開いており、閉鎖具システムによって足の上で閉じることが可能である靴のアウターソール。靴は、靴内に位置する靴下状内部締め付け構造を含む。靴下状内部締め付け構造は、その底部によって靴のソールに固定され、その上部が靴の閉鎖具システムに固定される。靴下状締め付け構造は、靴の着用者の足の周りでの靴のより良いフィットをもたらすように調整して、靴内での足の位置の保持を確実にすることができる。
【0013】
本発明の例示的な実施形態の態様、特徴、及び利点が、添付の図面と関連して以下の詳細な説明に関してさらに理解されるであろう。本明細書に提供される本発明の記載した実施形態は、例示にすぎず、限定ではなく例としてのみ提示されるものであることが当業者に明らかであろう。寸法、材料等を含む、本明細書で開示されている全ての特徴を、別段明示されない限り、同じ目的又は同様の目的に適う代替的な特徴で置き換えることができる。したがって、本発明の変更形態の多くの他の実施形態が、本明細書で定義される本発明及びその均等物の範囲内にあるものとして想定される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】閉位置にある左足の靴を内側サイドから見た斜視図である。
【図2】図1の靴の閉鎖具システムへの靴下状内部締め付け構造の取り付けを示す、開位置の靴の後面図である。
【図3】図1の靴の閉鎖具システムへの靴下状内部締め付け構造の取り付けを示す、開位置の靴のインステップ部分の上面図である
【図4】図1の靴のインナー部分の概略側断面図である。
【図5】図1の靴の概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[詳細な説明]
ここで図1を参照すると、靴1が、ソール3、外部甲被5、靴紐7、及び舌片13を有する。本発明は、カジュアルシューズ、作業靴、および運動靴(サッカーシューズ、ランニングシューズ、フットボールシューズ、テニスシューズ、ゴルフシューズ、サイクリングシューズ、レスリングシューズ、アイススケート靴、インラインスケート靴、スキーブーツ、及びハイキングブーツ等)を含むがこれらに限定されない多種多様の靴と共に使用することができる。
【0016】
ここで図2及び図3を参照すると、靴1は、外部甲被5の内部にあるインナー部分9を有する。外部甲被5は、インナー部分の材料よりも剛性である材料から成る。好ましくは、材料は、ポリエステル、ナイロンメッシュ、ポリウレタン合成繊維、革、及びキャンバス地等、着用者の足を保護するのに十分な材料である。より好ましくは、材料は、ポリエステル又はポリウレタン合成繊維である。インナー部分9は、可撓性材料(たとえば、ポリエステル、ナイロン、スパンデックス、及び他の伸縮性合成繊維)から成る。好ましくは、可撓性材料は、伸縮自在でもある。より好ましくは、インナー部分9はポリエステルテキスタイルから成る。
【0017】
インナー部分9は、2つの部分、すなわち靴の外側サイド(lateral side)にある9A及び靴の内側サイド(medial side)にある9Bを有する。図4及び図5に示されるように、インナー部分9の両サイドは、爪先領域からかかと領域まで底面の縁に沿ってソール3に固定されている。インナー部分9の両サイド9A及び9Bは、図5に示されるように、外部甲被5の内部側面を上に延びて、上部の縁に沿って外部甲被5に再び取り付けられる。
【0018】
インナー部分9A及び9Bの上部の縁は、ストラップ11によって外部甲被5の外側サイド及び内側サイドに固定される。ストラップ11の端は、縫付け、接着、スナッピング、フックアンドループ(面ファスナ)(ベルクロ(登録商標)を含む)、又はジッパー等の当技術分野で既知の任意の適切な方法によってインナー部分9及び甲被5につながっている。好ましくは、ストラップ11の端は、インナー部分9及び外部甲被5に縫い付けられる。
【0019】
図3に最もよく示されるように、ストラップ11は、靴紐7が通過するループを形成する。靴紐7は、舌片13の上で外側サイド及び内側サイドにあるストラップ11のループを交互に通過する。靴紐7の両端は、着用者の足首の前のインステップ領域15内の点で結ばれる。
【0020】
着用者の足は、インステップ領域15において靴1内へ入れられる。着用者の足が靴1内にあるとき、爪先及び足中央領域(midfoot area)はインナー部分9によって囲まれている。靴紐7が締められると、外部甲被5の外側サイド及び内側サイドは着用者の足及び舌片13の上で互いに引き寄せられる。同時に、インナー部分9A及び9Bも着用者の足に対して舌片13の上で互いに引き寄せられる。
【0021】
締め付けられた位置(tightened position)では、外部甲被5はインステップ領域を閉じて足を靴1の内部に固定する。外部甲被5の剛性材料は足に保護カバーを提供する。靴紐7の締め付けによって、インナー部分9も着用者の足の周りへ引っ張られる。インナー部分9の可撓性材料は、足をしっかりと包み(hug)、ぴったりなフィットをもたらす靴下状ライナを形成する。足はインナー部分9によってしっかりと保持され、外部甲被5へのインナー部分9の取り付けによって靴1内で足が安定する。したがって、閉鎖具システムによるインナー部分9と剛性の外部甲被5との連結によって、甲被の保護性能を損なうことなくぴったりなフィットがもたらされる。
【0022】
本発明の例示的な実施形態を添付の図面を参照して本明細書で説明してきたが、本発明はそれらの正確な実施形態に限定されないこと、及び他の様々な変形及び変更を本発明の範囲又は精神から逸脱することなく当業者によって本発明内で行うことができることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴であって、
前記靴はソールを備え、
前記靴は甲被を備え、
前記甲被は、足を入れることができるようにインステップに沿って開いており、閉じることが可能であり、
前記甲被は、インナー部分及びアウター部分を含み、
前記各部分はそれぞれ、その底部で前記ソールに取り付けられ、
前記各部分はそれぞれ、その上部において、複数の離間した材料片によって互いに取り付けられており、
前記インナー部分及び前記アウター部分は、前記靴の外面としての機能を果たし、
前記靴は靴紐を備え、
前記靴紐は、前記材料片を通って、前記インナー部分及び前記アウター部分の間に位置付けられ、それによって、前記インナー部分及び前記アウター部分の双方を、前記足の周りで同時に締め付ける
靴。
【請求項2】
前記インナー部分は、前記アウター部分の材料よりも可撓性である材料を含む、請求項1に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項3】
前記インナー部分は、前記フィット閉鎖具構造が締め付けられると、着用者の足に適合する、請求項2に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項4】
前記アウター部分は前記足を保護する材料を含む、請求項2に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項5】
前記インナー部分は靴下状ライナを含む、請求項1に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項6】
前記離間した材料片はストラップを含む、請求項1に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項7】
前記離間した材料片は、前記インナー部分及び前記アウター部分に縫い付けられる、請求項1に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項8】
前記離間した材料片は、前記靴紐が通過するループを形成する、請求項1に記載の形状フィット閉鎖具構造。
【請求項9】
閉鎖具システムによる靴の内部締め付け方法であって、
前記閉鎖具システムは、
(a)足を入れることができるように開いており、前記閉鎖具システムによって足の上で閉じることが可能である靴のアウターソールと、
(b)前記靴内に位置する靴下状内部締め付け構造であって、その底部が前記靴の前記ソールに固定され、その上部が前記靴の前記閉鎖具システムに固定される、靴下状内部締め付け構造と
を備え、
前記靴下状締め付け構造は調整可能であり、それによって、前記靴の着用者の足の周りでの前記靴のより良いフィットをもたらすことができると共に、前記靴内での前記足の位置の保持を確実にすることができる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−525927(P2010−525927A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507426(P2010−507426)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2008/005772
【国際公開番号】WO2008/137136
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(500262119)ニュー バランス アスレティック シュー,インコーポレーテッド (7)
【住所又は居所原語表記】20 Guest Street, Boston, MA 02135, U.S.A.
【Fターム(参考)】