形状保持靴
【課題】
着脱容易な靴を提供するにあたり、形状保持のために金属類を使用せず、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供する。
【解決手段】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、合成樹脂製の形状保持材を使用し、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用して履き口を希望する形状にし得るようにした。
着脱容易な靴を提供するにあたり、形状保持のために金属類を使用せず、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供する。
【解決手段】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、合成樹脂製の形状保持材を使用し、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用して履き口を希望する形状にし得るようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状保持靴に関するものであって、より詳しくは、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用して履き口を希望する形状にし得るようにした形状保持靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、足を挿入又は着脱する際には十分な大きさの開口部を必要とする一方、足を挿入した後は足を確実に固定しなければならない。
着脱の為の開口部は一般に、甲被、舌片、緊締具により構成されている。履用において、これらの構成部品は、それぞれに形状に癖を持ち、着脱時には、手で希望する形に保持して着脱しなければならない。
【0003】
例えば、面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴においては、一旦ベルトを外しても、ベルトがすぐに戻り、係止用ファスナーと再度くっ付いてしまい、その為ベルトを外に押さえて着脱しなければならない。
【0004】
又、履き口の甲被も、履く為に一旦開いても、逆戻りし、履きにくくなる。特に介護用靴は、履き口確保の為、甲被前方に形成された切欠き部を広く取り、デザイン的にも特殊靴のイメージを受ける。
【0005】
靴の着脱を容易にするために形状記憶合金を緊締用の面ファスナー付ベルトに取り付けて、靴を履こうとするときに履きやすくした靴が提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−14402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
形状記憶合金を使用する場合の問題点は、柔らかい金属でも感触が硬く着用感が悪いことである。さらに、金属片両端末の鋭角削り処理不足による足当たりの怖れがある。
【0007】
形状保持のために金属類を使用せず、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。すなわち本発明によれば、金属の着用感が悪い事を改善され、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供することができる。
【0009】
すなわち、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、天然繊維、合成繊維等の素材に形状保持材が所定比率で組み込まれている塑性変形可能な帯状体、又は形状保持材が縦横に編み込まれている網状の帯状体を成し、該甲被切欠き部の縁部を該帯状体で構成し、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。この場合緊締手段としては、取り外し方式の面ファスナー付ベルトが好適である。
【0010】
又、本発明によれば、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、切欠き部の周辺及び切欠き部の周辺に付設された部品に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。前記部品としは、舌片や緊締具が必要に応じて付設される。
【0011】
又、本発明によれば、面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴において、該ベルトの必要個所に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に該ベルトを希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。
【0012】
又、本発明によれば、前記形状保持材が、塑性変形性を有する合成樹脂により構成されている上記形状保持靴が提供される。
【0013】
又、本発明によれば、前記塑性変形性を有する合成樹脂が、ポリエチレン又は該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物であり、塑性変形性は180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が20度以下である請求項4記載の形状保持靴が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に合成樹脂製の形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用することにより、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明に係わる実施の形態の一例を説明する。図1及び図2は本発明の実施の形態を示す塑性変形可能な帯状体の断面図である。該帯状体は、甲被を構成する素材2又は素材3に所定比率で形状保持材1を組み込み、縫着可能な帯状体4にしたものである。
【0016】
前記素材2及び素材3は、特に限定がなく、例示の天然繊維、合成繊維のいずれでもよく、又他の種類でもよい。そして、この素材2及び素材3は、糸状で適度の強度と柔軟性があればよい。
【0017】
図1及び図2では、縦糸としては、糸状の形状保持材1及び素材2が使われる。横糸としては、素材3が使われる。該帯状体の製作は通常の織機にて製作することができる。
形状保持材1としての塑性変形性を有する糸状プラスチックは、特開昭61−282416号に記載された製法や、特開平7−238417号に記載された製法で生産される。
【0018】
又、該帯状体は、糸状の形状保持材1を縦糸及び横糸と成し、数本の縦糸に対し一本の横糸を編んで網又はメッシュ又はネット状にしたものでも良い。 網状帯状体の短幅は、面ファスナー付きベルト短幅内とする。
【0019】
形状保持材1の塑性変形性は、図11及び図12に示すように,180度及び90度に折り曲げた時の10分経過後の折り曲げによる戻り角度(シータ)で評価する。180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が共に20度以下、更に好ましくは180度折り曲げ戻り角度(シータ)が20度以下で且つ90度折り曲げ戻り角度(シータ)が15度以下で定義される。180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)のいずれか一方、特に180度折れ曲げ戻り角度(シータ)が20度を越えると、十分な形状保持性が得られない。
【0020】
図3は、前記帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け状態を示す。取り付ける帯状体4の幅及び取り付け長さは、靴の着脱時に形状保持が必要な寸法でよい。
【0021】
図4は、糸状の形状保持材1をテープ7にて溶着一体化し、帯状体8と成したものである。
図5は、板状の形状保持材9である。使用する個所によっては、帯状体8及び板状の形状保持材9も帯状体4と同様に扱うこともできる。帯状体4の特徴は、縦糸と横糸が変形時に滑りによるズレを生じ、無理なく変位に従うことである。
【0022】
図1又は図2における形状保持材1を素材2及び素材3に組み込む比率であるが、比率は特に限定しないが、通常、素材:形状保持材=1:1ないし10:1程度が好ましい。
【0023】
本発明において、形状保持材1として、ポリエチレン単独又はポリエチレンに他のポリオレフィンが混合された混合物が使用される。形状保持性を有するポリエチレンの原料としては、汎用ポリエチレンでも、超高分子量ポリエチレンでもよい。特開第昭61−282416号に記載された製法では、超高分子量ポリエチレンが、特開平7−238417号に記載された製法では汎用の高密度ポリエチレンが好適に使用される。
【0024】
図6は、図1の帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け、更に面ファスナー付甲バンド10の付け根部分に帯状体4を取り付けた形状保持靴を示す。面ファスナー付甲バンド10は、持ち上げると、持ち上がった状態で保持され、逆戻りしない。又甲被切欠き部5の縁部6も外側に広げると、広がった状態のままとなる。この場合、図6の甲被は、ループを有するパイル地を用いた例である。
【0025】
図7は、帯状体4を甲被切欠き部の縁部と、面ファスナー付甲バンド10の付け根と舌片11の付け根とに取り付けた状態図である。面ファスナー付甲バンド10は、係止用ファスナー12により緊締される。帯状体4により任意に履き口を広げた状態で縁部と、甲バンド10と、舌片11の形状が保持される。
【0026】
図8は、帯状体4を面ファスナー付甲バンド10の付け根と、舌片11の立ち上がり部に取り付けた状態図である。帯状体4により任意に変形させた状態で甲バンド10と、舌片11との形状が保持される。
【0027】
図9は、面ファスナー付甲バンド10の付け根に帯状体4を取り付けた状態図である。この場合、帯状体4の代わりに、帯状体8や板状の形状保持材9を取り付けてもよい。
【0028】
図10は、面ファスナー付甲バンド10のほぼ全面に網状の帯状体4を取り付けた状態の図である。図10は、構造的に表示したが、実際の製品は、甲バンド10と網状の帯状体4は、縫着により一体化される。
【実施例1】
【0029】
本発明に係わる実施の形態の一例を説明する。
図1の塑性変形可能な帯状体の製作を行った。形状保持材1は、高密度ポリエチレンより生産された断面形状がほぼ円で、直径1mmの形状保持材を使用した。この形状保持材の折り曲げ戻り角度(シータ)は、折り曲げ角度180度及び90度共に、17度であった。
【0030】
縦糸素材2及び横糸素材3共に200デニールのポリエステルの撚り糸を使用した。縦糸としての形状保持材1は、4本使用した。織り機により、幅約7mm、厚み約1.2mmの帯状体4が得られた。
この帯状体4を40mmの長さに裁断し、図9に示す面ファスナー付ベルトの付け根に縫着し形状保持靴を製作した。
【0031】
該形状保持靴は、面ファスナー付ベルトを持ち上げて外側に向けると、その形状を保持し、靴を履く時、スムーズに履けた。
【実施例2】
【0032】
図10の網状の帯状体4の製作を行った。 形状保持材1は、高密度ポリエチレンより生産された断面形状がほぼ円で、直径0.25mm、1000デニールの糸状形状保持材1を使用した。 縦糸素材及び横糸素材は共に同じ糸状形状保持材1を使用した。
縦糸12本、横糸1本を使用し幅約15mm、厚み約0.5mmの帯状体4が得られた。
この帯状体4を、図10に示す幅約15mm面ファスナー付ベルトのほぼ全面に縫着し形状保持靴を製作した。
【0033】
該形状保持靴は、面ファスナー付ベルトを持ち上げて外側に向けると、その形状を保持し、靴を履く時、スムーズに履けた。
【0034】
望ましくは、網状の帯状体4は、価格上昇するが、糸の太さを二種類用意し、縦糸を横糸より太くする方が良い。 縦2000デニール横1000デニールの網状の帯状体が、最も感触及び形状保持効果の高い組み合わせである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
合成樹脂の形状保持材を利用した形状保持靴は、履き心地良く、高齢者、リハビリを必要とする被介護者あるいは、幼児等が無理なく簡単に履ける靴として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態に係わる塑性変形可能な帯状体の断面図である。
【図2】本実施の形態に係わる塑性変形可能な帯状体の断面図である。
【図3】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図4】本実施の形態に係わる糸状の形状保持材1をテープ7にて溶着一体化した帯状体8の説明図である。
【図5】本実施の形態に係わる板状の形状保持材9の説明図である。
【図6】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け、更に面ファスナー付甲バンド10の付け根部分に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図7】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6と、面ファスナー付甲バンド10の付け根と舌片11の付け根とに取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図8】本実施の形態に係わる帯状体4を面ファスナー付甲バンド10の付け根と、舌片11の立ち上がり部に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図9】本実施の形態に係わる面ファスナー付甲バンド10の付け根に帯状体4を取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図10】本実施の形態に係わる面ファスナー付甲バンド10のほぼ全面に網状の帯状体4を取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図11】本実施の形態に係わる糸状又は板状の形状保持材の180度折り曲げ時の折り曲げ戻り角度(シータ)の測定法についての説明図である。
【図12】本実施の形態に係わる糸状又は板状の形状保持材の90度折り曲げ時の折り曲げ戻り角度(シータ)の測定法についての説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 形状保持材
2 素材
3 素材
4 帯状体
5 甲被切欠き部
6 縁部
7 テープ
8 帯状体
9 形状保持材
10 甲バンド
11 舌片
12 係止用面ファスナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状保持靴に関するものであって、より詳しくは、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用して履き口を希望する形状にし得るようにした形状保持靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、足を挿入又は着脱する際には十分な大きさの開口部を必要とする一方、足を挿入した後は足を確実に固定しなければならない。
着脱の為の開口部は一般に、甲被、舌片、緊締具により構成されている。履用において、これらの構成部品は、それぞれに形状に癖を持ち、着脱時には、手で希望する形に保持して着脱しなければならない。
【0003】
例えば、面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴においては、一旦ベルトを外しても、ベルトがすぐに戻り、係止用ファスナーと再度くっ付いてしまい、その為ベルトを外に押さえて着脱しなければならない。
【0004】
又、履き口の甲被も、履く為に一旦開いても、逆戻りし、履きにくくなる。特に介護用靴は、履き口確保の為、甲被前方に形成された切欠き部を広く取り、デザイン的にも特殊靴のイメージを受ける。
【0005】
靴の着脱を容易にするために形状記憶合金を緊締用の面ファスナー付ベルトに取り付けて、靴を履こうとするときに履きやすくした靴が提案されている。(特許文献1参照)
【特許文献1】特開2000−14402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
形状記憶合金を使用する場合の問題点は、柔らかい金属でも感触が硬く着用感が悪いことである。さらに、金属片両端末の鋭角削り処理不足による足当たりの怖れがある。
【0007】
形状保持のために金属類を使用せず、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。すなわち本発明によれば、金属の着用感が悪い事を改善され、デザインが自由に採用でき、着脱時には、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供することができる。
【0009】
すなわち、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、天然繊維、合成繊維等の素材に形状保持材が所定比率で組み込まれている塑性変形可能な帯状体、又は形状保持材が縦横に編み込まれている網状の帯状体を成し、該甲被切欠き部の縁部を該帯状体で構成し、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。この場合緊締手段としては、取り外し方式の面ファスナー付ベルトが好適である。
【0010】
又、本発明によれば、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、切欠き部の周辺及び切欠き部の周辺に付設された部品に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。前記部品としは、舌片や緊締具が必要に応じて付設される。
【0011】
又、本発明によれば、面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴において、該ベルトの必要個所に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に該ベルトを希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴が提供される。
【0012】
又、本発明によれば、前記形状保持材が、塑性変形性を有する合成樹脂により構成されている上記形状保持靴が提供される。
【0013】
又、本発明によれば、前記塑性変形性を有する合成樹脂が、ポリエチレン又は該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物であり、塑性変形性は180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が20度以下である請求項4記載の形状保持靴が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、着脱を容易にする為に、履き口を希望する形状にするのに必要な個所、例えば緊締用ベルトや舌片や前記切欠き部の縁に合成樹脂製の形状保持材を取り付けて、形状保持材の形状保持性を利用することにより、履き口を構成する甲被、舌片、緊締具等を広げても、逆戻りしない、広い履き口の確保が可能な着脱容易な靴を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を参照して本発明に係わる実施の形態の一例を説明する。図1及び図2は本発明の実施の形態を示す塑性変形可能な帯状体の断面図である。該帯状体は、甲被を構成する素材2又は素材3に所定比率で形状保持材1を組み込み、縫着可能な帯状体4にしたものである。
【0016】
前記素材2及び素材3は、特に限定がなく、例示の天然繊維、合成繊維のいずれでもよく、又他の種類でもよい。そして、この素材2及び素材3は、糸状で適度の強度と柔軟性があればよい。
【0017】
図1及び図2では、縦糸としては、糸状の形状保持材1及び素材2が使われる。横糸としては、素材3が使われる。該帯状体の製作は通常の織機にて製作することができる。
形状保持材1としての塑性変形性を有する糸状プラスチックは、特開昭61−282416号に記載された製法や、特開平7−238417号に記載された製法で生産される。
【0018】
又、該帯状体は、糸状の形状保持材1を縦糸及び横糸と成し、数本の縦糸に対し一本の横糸を編んで網又はメッシュ又はネット状にしたものでも良い。 網状帯状体の短幅は、面ファスナー付きベルト短幅内とする。
【0019】
形状保持材1の塑性変形性は、図11及び図12に示すように,180度及び90度に折り曲げた時の10分経過後の折り曲げによる戻り角度(シータ)で評価する。180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が共に20度以下、更に好ましくは180度折り曲げ戻り角度(シータ)が20度以下で且つ90度折り曲げ戻り角度(シータ)が15度以下で定義される。180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)のいずれか一方、特に180度折れ曲げ戻り角度(シータ)が20度を越えると、十分な形状保持性が得られない。
【0020】
図3は、前記帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け状態を示す。取り付ける帯状体4の幅及び取り付け長さは、靴の着脱時に形状保持が必要な寸法でよい。
【0021】
図4は、糸状の形状保持材1をテープ7にて溶着一体化し、帯状体8と成したものである。
図5は、板状の形状保持材9である。使用する個所によっては、帯状体8及び板状の形状保持材9も帯状体4と同様に扱うこともできる。帯状体4の特徴は、縦糸と横糸が変形時に滑りによるズレを生じ、無理なく変位に従うことである。
【0022】
図1又は図2における形状保持材1を素材2及び素材3に組み込む比率であるが、比率は特に限定しないが、通常、素材:形状保持材=1:1ないし10:1程度が好ましい。
【0023】
本発明において、形状保持材1として、ポリエチレン単独又はポリエチレンに他のポリオレフィンが混合された混合物が使用される。形状保持性を有するポリエチレンの原料としては、汎用ポリエチレンでも、超高分子量ポリエチレンでもよい。特開第昭61−282416号に記載された製法では、超高分子量ポリエチレンが、特開平7−238417号に記載された製法では汎用の高密度ポリエチレンが好適に使用される。
【0024】
図6は、図1の帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け、更に面ファスナー付甲バンド10の付け根部分に帯状体4を取り付けた形状保持靴を示す。面ファスナー付甲バンド10は、持ち上げると、持ち上がった状態で保持され、逆戻りしない。又甲被切欠き部5の縁部6も外側に広げると、広がった状態のままとなる。この場合、図6の甲被は、ループを有するパイル地を用いた例である。
【0025】
図7は、帯状体4を甲被切欠き部の縁部と、面ファスナー付甲バンド10の付け根と舌片11の付け根とに取り付けた状態図である。面ファスナー付甲バンド10は、係止用ファスナー12により緊締される。帯状体4により任意に履き口を広げた状態で縁部と、甲バンド10と、舌片11の形状が保持される。
【0026】
図8は、帯状体4を面ファスナー付甲バンド10の付け根と、舌片11の立ち上がり部に取り付けた状態図である。帯状体4により任意に変形させた状態で甲バンド10と、舌片11との形状が保持される。
【0027】
図9は、面ファスナー付甲バンド10の付け根に帯状体4を取り付けた状態図である。この場合、帯状体4の代わりに、帯状体8や板状の形状保持材9を取り付けてもよい。
【0028】
図10は、面ファスナー付甲バンド10のほぼ全面に網状の帯状体4を取り付けた状態の図である。図10は、構造的に表示したが、実際の製品は、甲バンド10と網状の帯状体4は、縫着により一体化される。
【実施例1】
【0029】
本発明に係わる実施の形態の一例を説明する。
図1の塑性変形可能な帯状体の製作を行った。形状保持材1は、高密度ポリエチレンより生産された断面形状がほぼ円で、直径1mmの形状保持材を使用した。この形状保持材の折り曲げ戻り角度(シータ)は、折り曲げ角度180度及び90度共に、17度であった。
【0030】
縦糸素材2及び横糸素材3共に200デニールのポリエステルの撚り糸を使用した。縦糸としての形状保持材1は、4本使用した。織り機により、幅約7mm、厚み約1.2mmの帯状体4が得られた。
この帯状体4を40mmの長さに裁断し、図9に示す面ファスナー付ベルトの付け根に縫着し形状保持靴を製作した。
【0031】
該形状保持靴は、面ファスナー付ベルトを持ち上げて外側に向けると、その形状を保持し、靴を履く時、スムーズに履けた。
【実施例2】
【0032】
図10の網状の帯状体4の製作を行った。 形状保持材1は、高密度ポリエチレンより生産された断面形状がほぼ円で、直径0.25mm、1000デニールの糸状形状保持材1を使用した。 縦糸素材及び横糸素材は共に同じ糸状形状保持材1を使用した。
縦糸12本、横糸1本を使用し幅約15mm、厚み約0.5mmの帯状体4が得られた。
この帯状体4を、図10に示す幅約15mm面ファスナー付ベルトのほぼ全面に縫着し形状保持靴を製作した。
【0033】
該形状保持靴は、面ファスナー付ベルトを持ち上げて外側に向けると、その形状を保持し、靴を履く時、スムーズに履けた。
【0034】
望ましくは、網状の帯状体4は、価格上昇するが、糸の太さを二種類用意し、縦糸を横糸より太くする方が良い。 縦2000デニール横1000デニールの網状の帯状体が、最も感触及び形状保持効果の高い組み合わせである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
合成樹脂の形状保持材を利用した形状保持靴は、履き心地良く、高齢者、リハビリを必要とする被介護者あるいは、幼児等が無理なく簡単に履ける靴として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施の形態に係わる塑性変形可能な帯状体の断面図である。
【図2】本実施の形態に係わる塑性変形可能な帯状体の断面図である。
【図3】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図4】本実施の形態に係わる糸状の形状保持材1をテープ7にて溶着一体化した帯状体8の説明図である。
【図5】本実施の形態に係わる板状の形状保持材9の説明図である。
【図6】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6に取り付け、更に面ファスナー付甲バンド10の付け根部分に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図7】本実施の形態に係わる帯状体4を甲被切欠き部5の縁部6と、面ファスナー付甲バンド10の付け根と舌片11の付け根とに取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図8】本実施の形態に係わる帯状体4を面ファスナー付甲バンド10の付け根と、舌片11の立ち上がり部に取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図9】本実施の形態に係わる面ファスナー付甲バンド10の付け根に帯状体4を取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図10】本実施の形態に係わる面ファスナー付甲バンド10のほぼ全面に網状の帯状体4を取り付けた形状保持靴の説明図である。
【図11】本実施の形態に係わる糸状又は板状の形状保持材の180度折り曲げ時の折り曲げ戻り角度(シータ)の測定法についての説明図である。
【図12】本実施の形態に係わる糸状又は板状の形状保持材の90度折り曲げ時の折り曲げ戻り角度(シータ)の測定法についての説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 形状保持材
2 素材
3 素材
4 帯状体
5 甲被切欠き部
6 縁部
7 テープ
8 帯状体
9 形状保持材
10 甲バンド
11 舌片
12 係止用面ファスナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、天然繊維、合成繊維等の素材に形状保持材が所定比率で組み込まれている塑性変形可能な帯状体、又は形状保持材が縦横に編み込まれている網状の帯状体を成し、該甲被切欠き部の縁部を該帯状体で構成し、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項2】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、切欠き部の周辺及び切欠き部の周辺に付設された部品に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項3】
面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴において、該ベルトに形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に該ベルトを希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項4】
前記形状保持材が、塑性変形性を有する合成樹脂により構成されている請求項1〜請求項3記載の形状保持靴。
【請求項5】
前記塑性変形性を有する合成樹脂が、ポリエチレン又は該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物であり、塑性変形性は180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が20度以下である請求項4記載の形状保持靴。
【請求項1】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、天然繊維、合成繊維等の素材に形状保持材が所定比率で組み込まれている塑性変形可能な帯状体、又は形状保持材が縦横に編み込まれている網状の帯状体を成し、該甲被切欠き部の縁部を該帯状体で構成し、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項2】
甲被前方に形成された切欠き部を開放して着脱する靴において、切欠き部の周辺及び切欠き部の周辺に付設された部品に形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に履き口を希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項3】
面ファスナー付きベルトにより履き口部の緊締をする靴において、該ベルトに形状保持材、又は前記帯状体を取り付け、該形状保持材の有する形状保持性を利用して着脱時に該ベルトを希望する形状にすることを特徴とする形状保持靴。
【請求項4】
前記形状保持材が、塑性変形性を有する合成樹脂により構成されている請求項1〜請求項3記載の形状保持靴。
【請求項5】
前記塑性変形性を有する合成樹脂が、ポリエチレン又は該ポリエチレンと他のポリオレフィンとの混合物であり、塑性変形性は180度及び90度折り曲げによる戻り角度(シータ)が20度以下である請求項4記載の形状保持靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−204407(P2006−204407A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17946(P2005−17946)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002989)月星化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000002989)月星化成株式会社 (10)
【Fターム(参考)】
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