説明

形状検査装置

【課題】サイズや凹凸が大きい被検物体であっても光干渉計測法により表面形状を検査することが可能な形状検査装置及び形状検査方法を提供する。
【解決手段】形状検査装置1は、ホログラム原器3及び結像手段を備える。ホログラム原器3は、被検物体Oの理想形状に対応する再生光を再生する。結像手段は、前記被検物体Oに所要の入射角で斜め方向に光L1を入射する一方、前記ホログラム原器3に光を入射することによって、前記被検物体Oに反射した反射光L3又は前記被検物体Oを経由した透過光と前記ホログラム原器3からの前記再生光との干渉光による干渉画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状検査装置及び形状検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子や精密加工部品等の凹凸のある物体の表面形状の理想形状からの誤差を測定する方法として光干渉計測法が知られている。例えば、レンズの曲率を測定する場合には、理想の曲率を有する原器と加工したレンズとを密着させて、原器とレンズ間における光の干渉によってレンズの形状誤差を評価することができる。
【0003】
このような2つの物体の表面間における光干渉を利用して形状誤差を検査するニュートン検査法では、被検査面の形状誤差が干渉縞の画像として得られる。光干渉計測法によれば、表面形状の測定結果が画像として得られるので、高速測定が可能である。加えて、光干渉計測法は、測定感度が使用する光の波長で決まり、高感度である。
【0004】
また、光干渉計測法の応用として、計算機合成ホログラムを利用して被検物体の表面形状を検査する方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。この方法は、計算機合成ホログラム原器で再生された光と、被検物体からの反射光とを干渉させて干渉縞の画像を得るものである。計算機合成ホログラムを利用すれば、容易に非球面形状の原器を製作することができる。このため、計算機合成ホログラムを利用した検査は、携帯電話用のカメラレンズの形状測定などに利用されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】谷田貝 豊彦、斉藤 弘義、「計算機ホログラムとその応用」、精密機械47巻12号、P1541−1545、1981年12月。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光干渉計測法では、凹凸の測定範囲が測定に用いられる光の数波長程度の狭い範囲に限定される。また、計算機合成ホログラム原器の大きさには製作上の限界がある。このため、計算機合成ホログラム原器を用いた光干渉計測法では、大型の被検物体や表面粗さの粗い被検物体を対象とする形状測定が困難である。
【0007】
この結果、原器の製作が困難な非球面レンズ等の被検物体の形状検査には、従来、凹凸の測定範囲が広い三次元座標測定法による検査が行われている。すなわち、被検物体上に設定された複数の点を走査することによって被検物体の表面形状誤差が測定される。このため、球面度の低い被検物体やサイズの大きい被検物体の形状検査には、煩雑な作業と時間を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、サイズや凹凸が大きい被検物体であっても光干渉計測法により表面形状を検査することが可能な形状検査装置及び形状検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係る形状検査装置は、ホログラム原器及び結像手段を備える。ホログラム原器は、被検物体の理想形状に対応する再生光を再生する。結像手段は、前記被検物体に所要の入射角で斜め方向に光を入射する一方、前記ホログラム原器に光を入射することによって、前記被検物体に反射した反射光又は前記被検物体を経由した透過光と前記ホログラム原器からの前記再生光との干渉光による干渉画像を取得する。
【0010】
また、本発明の実施形態に係る形状検査方法は、被検物体に所要の入射角で斜め方向に光を入射する一方、前記被検物体の理想形状に対応する再生光を再生するホログラム原器に光を入射するステップと、前記被検物体に反射した反射光又は前記被検物体を経由した透過光と前記ホログラム原器からの前記再生光との干渉光による干渉画像を取得するステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施形態に係る形状検査装置及び形状検査方法によれば、サイズや凹凸が大きい被検物体であっても光干渉計測法により表面形状を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る形状検査装置の構成図。
【図2】図1に示す形状検査装置による被検物体の形状誤差の測定原理を説明する図。
【図3】図1に示す形状検査装置によって得られた干渉縞の画像の一例を示す図。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る形状検査装置の構成図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る形状検査装置の構成図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る形状検査装置の構成図。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る形状検査装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る形状検査装置及び形状検査方法について添付図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
(構成および機能)
図1は本発明の第1の実施形態に係る形状検査装置の構成図である。
【0015】
形状検査装置1は、被検物体Oの理想形状からの実際の表面形状の誤差を光干渉計測法により検査する装置である。そのために、形状検査装置1は、光源2、ホログラム原器3、複数の光学素子4、光学素子移動機構5、結合荷電素子(CCD: Charge Coupled Device)カメラ6、データ処理装置7及び表示装置8を備えている。
【0016】
光源2は、レーザ光を発生させる光源とすることが実用的である。従って、以下、レーザ光を発生させる場合について説明する。また、光源2としては、必要な波長のレーザ光を発生できれば、光の波長を変更することが可能な光源及び所定の波長の光を発生させる光源のいずれを用いてもよい。
【0017】
ホログラム原器3には、被検物体Oの理想形状に対応する再生光を再生するための干渉縞が記録されている。ホログラム原器3としては、任意の方法で作成した任意のタイプのホログラム原器を用いることができる。例えば、被検物体Oの理想形状を有する基準となる物体からの光を感光フィルムに感光させて撮影した写真をホログラム原器3として用いることができる。
【0018】
また、ホログラム原器3として計算機合成ホログラム原器を用いれば、被検物体Oの理想形状を有する物体が存在しない場合であっても、被検物体Oの理想形状に対応する再生光を再生するホログラム原器を製作することができる。計算機合成ホログラム原器は、公知の手法で製作することができる。代表的な計算機合成ホログラム原器の製作法としては、ホログラム原図をプロッタで描画して写真に縮小する方法と、電子ビーム露光装置でフォトレジスト等に描画する方法が知られている。
【0019】
複数の光学素子4の種類及び配置並びに光源2、ホログラム原器3及び被検物体Oの各配置は、光源2からのレーザ光を被検物体O及びホログラム原器3にそれぞれ入射させ、かつ被検物体Oに反射した反射光L3とホログラム原器3からの再生光との干渉光L4が得られるように決定される。特に、被検物体Oには、所要の入射角で斜め方向にレーザ光が入射するように複数の光学素子4の種類及び配置が決定される。
【0020】
図1は、そのような光学素子群の配置の一例を示しているが、上述のような条件が満たされれば所望の光学素子を所望の位置に配置して形状検査装置1を構成することができる。以下、図1に示す複数の光学素子4の構成例を参照して説明する。
【0021】
複数の光学素子4は、ノードフィルタ9、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12、第2の反射鏡13、コリメータレンズ14、分波回折格子15、結像レンズ16及び第2のピンホール17で構成される。
【0022】
光源2により出力されたレーザ光の光路上には、順にノードフィルタ9、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12、第2の反射鏡13、コリメータレンズ14及び分波回折格子15が配置される。換言すれば、ノードフィルタ9、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12、第2の反射鏡13、コリメータレンズ14及び分波回折格子15が順に配置されることによってレーザ光の光路が形成される。
【0023】
ノードフィルタ9は、光源2により出力されたレーザ光を入射可能な位置に配置される。ノードフィルタ9は、光源2により出力されたレーザ光の明るさを調整するフィルタである。
【0024】
レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12及び第2の反射鏡13は、ノードフィルタ9を経由したレーザ光の幅を所定の幅に拡大してコリメータレンズ14に入射させる役割を担っている。
【0025】
従って、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12及び第2の反射鏡13は、第2の反射鏡13による反射光L3をコリメータレンズ14に入射させることが可能な位置に配置される。換言すれば、コリメータレンズ14は、第2の反射鏡13からの反射光L3を入射することが可能な位置に配置される。
【0026】
コリメータレンズ14は、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12及び第2の反射鏡13によって幅が拡大された光から平行ビームL0が得られるように収差補正されたレンズである。
【0027】
分波回折格子15は、コリメータレンズ14によって生成された平行ビームL0を被検物体Oに入射する斜め方向の平行な入射光L1と直進する平行な直進ビームL2とに分割する役割を担う光学素子である。従って、分波回折格子15は、コリメータレンズ14からの平行ビームL0を入射することが可能な位置に配置される。
【0028】
尚、被検物体Oへの光の入射角は、少なくとも被検物体Oの表面粗さによる散乱の影響が無視でき、十分な強度の反射光L3を得ることが可能な限界角度以下に設定される。換言すれば、被検物体Oの表面が微視的に平面とみなせる角度の範囲内となるように光の入射角が決定される。従って、入射光L1の入射角は、被検物体Oの表面における凹凸の高さ及び傾斜、つまり表面粗さの指標値及び凹凸の形状に依存して決定される。
【0029】
入射角の限界角度は、表面粗さの指標値をパラメータとする解析的な関係式に基づいて理論的に求めることができる。但し、入射角の限界角度を実験によって求めてもよい。同様に入射光L1の被検物体Oへの最適な入射角についてもシミュレーション又は実験によって予め決定しておくことができる。
【0030】
そして、分波回折格子15は、被検物体Oに対して予め決定された入射角で入射光L1として光を照射させることが可能な位置に配置される。逆に、被検物体Oが分波回折格子15からの斜め方向の光を入射光L1として反射させることが可能な位置に配置されると言うこともできる。
【0031】
ホログラム原器3は、被検物体Oからの反射光L3及び分波回折格子15からの直進ビームL2の双方を入射することが可能な位置に配置される。
【0032】
光学素子移動機構5は、ホログラム原器3を平行移動及び回転移動させる装置である。換言すれば、光学素子移動機構5は、分波回折格子15を直進した直進ビームL2の進行方向と垂直な方向にホログラム原器3をスライドさせる機能と、分波回折格子15を直進した直進ビームL2の進行方向に対してホログラム原器3を傾斜させる機能とを有する。
【0033】
結像レンズ16は、分波回折格子15を直進した直進ビームL2がホログラム原器3に入射して回折した再生光とホログラム原器3を直進した被検物体Oからの反射光L3との干渉光L4を結像するためのレンズである。このため、結像レンズ16は、ホログラム原器3からの干渉光L4を入射することが可能な位置に配置される。
【0034】
第2のピンホール17は、結像レンズ16の焦点付近に配置され、不要な成分を除去する空間フィルタとしての役割を担う光学素子である。
【0035】
CCDカメラ6は、受光面が結像レンズ16による干渉光L4の結像面を形成する位置に配置される。すなわち、CCDカメラ6は、結像レンズ16からの干渉光L4を受光し、受光した干渉光L4の位置ごとのエネルギに応じた強度の電気信号に変換することによってデジタル画像信号として2次元(2D: two dimensional)の干渉画像データを取得するカメラである。
【0036】
すなわち、図1の例では、光源2、複数の光学素子4及びCCDカメラ6によって、被検物体Oに反射した反射光L3とホログラム原器3からの再生光との干渉光L4による干渉画像を取得する結像手段が形成される。但し、CCDカメラ6の代わりに、干渉画像取得手段として、干渉光L4の結像面を形成する位置に他の撮影機器を設置したり、或いは、干渉光L4の結像面に干渉画像の観察用の鏡面等の物体を設置することによって結像手段を構成してもよい。
【0037】
データ処理装置7は、CCDカメラ6の出力側及び光学素子移動機構5と接続される。データ処理装置7は、コンピュータにプログラムを読み込ませて構築することができる。但し、回路を用いてデータ処理装置7を構成してもよい。
【0038】
データ処理装置7は、CCDカメラ6から出力された干渉画像データに対して必要に応じてデータ解析処理を施すことによって被検物体Oの表面形状の理想形状からの誤差データを取得する機能と、干渉画像データ及び誤差データを表示装置8に表示させる機能を有する。
【0039】
また、データ処理装置7には、光学素子移動機構5に制御信号を出力して制御することによってホログラム原器3の位置及び傾斜を調整する機能と、光学素子移動機構5によるホログラム原器3の位置制御情報としてホログラム原器3の位置及び傾斜を表す位置情報を取得する機能が備えられる。そして、データ処理装置7では、ホログラム原器3の位置及び傾斜に基づいて干渉画像データに対するデータ解析処理を施すことができるように構成されている。
【0040】
ここで、形状検査装置1による被検物体Oの形状誤差の測定原理及び測定原理に基づくホログラム原器3の設計方法について説明する。
【0041】
図2は、図1に示す形状検査装置1による被検物体Oの形状誤差の測定原理を説明する図である。
【0042】
図2に示すように分波回折格子15とホログラム原器3とが直線的な光路上に配置され、被検物体Oが分波回折格子15により分波回折された斜め方向の入射光L1を反射し、かつ反射光L3をホログラム原器3に入射可能な位置に配置される場合を例に説明する。尚、ホログラム原器3に記録されている干渉縞のピッチは、ホログラム原器3に入射する光に対して位相変化を与えないように分波回折格子15のピッチと同じであるものとする。
【0043】
分波回折格子15に垂直に平行ビームL0が入射すると、回折によって直進する0次光と±1次光に分波される。ここでは、+1次光が入射光L1として被検物体Oに照射されるものとする。被検物体Oの表面に入射した+1次光の反射光L3は、入射角と同じ反射角でホログラム原器3に入射する。一方、0次光は直進ビームL2となってホログラム原器3に入射する。
【0044】
この結果、ホログラム原器3において分波回折格子15からの直進ビームL2の回折によって生成された−1次方向に進む再生光と、ホログラム原器3に斜め方向に入射して直進する被検物体Oからの反射光L3とが互いに干渉する。そして、ホログラム原器3から−1次方向への再生光と斜め方向に直進する被検物体Oからの反射光L3とによる干渉光L4が得られる。
【0045】
ここで、被検物体Oの理想形状に対する基準面として、実線及び点線で示されるように、分波回折格子15からホログラム原器3への直進ビームL2である0次光の進行方向と平行な平面を仮定すると式(1)の関係が成立する。
p sin(π/2-θ) = p cos θ = λ (1)
但し式(1)において、pは分波回折格子15のピッチ、θは被検物体Oへの入射光L1の入射角、λは分波回折格子15に入射する平行ビームL0の波長である。
【0046】
また、AからEの点を図2に示すように定めると、分波回折格子15からホログラム原器3への直進ビームL2と、分波回折格子15から被検物体Oに反射してホログラム原器3に入射する光との光路長の差は式(2)で与えられる。
(AC+CB)-AB = 2h(1-sinθ)/cosθ (2)
但し式(2)において、hは分波回折格子15からホログラム原器3への直進ビームL2の中心線となる光線ABから被検物体Oの表面までの距離である。
【0047】
一方、被検物体Oの理想形状が平面ではなく、基準面上に設定された二次元座標系の各位置(x, y)において基準面に対して垂直方向にΔh(x, y)だけ表面が変位している曲面や粗面である場合には、式(2)で示される光路長差は式(3)で示す長さだけ変化する。
(CD+DG)-CF = 2Δh(x, y)cosθ (3)
【0048】
従って、被検物体Oの理想形状からの反射光L3は、基準面となる平面からの反射光L3に対して位相が変化する。具体的には、被検物体Oの理想形状からの反射光L3の位相変化量Δδ(x, y)は、式(4)で与えられる。
Δδ(x, y) = 4πΔh(x, y)cosθ/λ (4)
【0049】
従って、被検物体Oの理想形状が基準面からの距離Δh(x, y)で表される場合には、ホログラム原器3からの−1次方向への再生光が-Δδ(x, y)の位相変化量だけ位相が変化するようにホログラム原器3を製作すればよい。そうすると、ホログラム原器3から−1次方向への再生光と斜め方向に直進する被検物体Oからの反射光L3との干渉による干渉縞が結像面に得られる。この干渉縞は、被検物体Oの表面の理想形状からの誤差を表している。
【0050】
式(4)において最大の位相変化量Δδ(x, y)を2πとすると、式(5)の関係が得られる。
4πΔh(x, y)cosθ/λ = 2π (5)
よって式(5)から式(6)が導かれる。
Δh(x, y) =λ/(2cosθ) (6)
【0051】
式(6)は、形状検査装置1の感度がλ/(2cosθ)であることを意味している。被検物体Oの表面に垂直に光を反射させて干渉を利用して表面形状の誤差を測定する従来法における感度は、λ/2である。
【0052】
従って、形状検査装置1によれば、基準面からの変位量Δh(x, y)として表される表面形状の凹凸が従来よりも大きい被検物体Oであっても同一の波長λの光を用いて形状検査を行うことが可能である。換言すれば、被検物体Oへの入射光L1の入射角θを大きく設定すると、入射光L1の実効的な波長を、実際の波長λを1/cosθ倍だけ拡大した長さにする効果を得ることができる。
【0053】
更に、被検物体Oからの反射光L3の進行方向と平行でない方向にホログラム原器3を光学素子移動機構5により平行移動させると、干渉光L4の位相を変調させることができる。同様に、分波回折格子15及び被検物体Oの一方又は双方を、光を横切る方向に微小移動させることによってもホログラム原器3からの干渉光L4に位相変調を与えることができる。
【0054】
従って、図1では、光学素子移動機構5によりホログラム原器3のみを移動させる場合の例を示しているが、ホログラム原器3、分波回折格子15、被検物体O及び干渉光L4に位相変調を付与する光学素子の少なくとも1つを微小移動させる光学素子移動機構5を干渉光L4の位相を変調する位相変調手段として形状検査装置1に設けるようにしてもよい。
【0055】
干渉光L4の位相変調を行う場合には、位置(x, y)に対応する干渉縞模様の濃淡を表す画像値I(x, y)は、式(7)に示す関数として表すことができる。
I(x, y) = a1+a2cos{φ(x, y)+Δφ} (7)
但し式(7)において、a1及びa2は係数を、φ(x, y)は位置(x, y)に対応する干渉光L4の位相を、Δφは位相変調量を、それぞれ示す。
【0056】
式(7)に示すように、干渉縞模様を表す画像値I(x, y)は、係数及び位相の3つのパラメータを用いた関数で表すことができる。従って、干渉光L4の位相変調によって異なる複数の位相変調量に対応する3つ以上の複数の干渉画像を取得すれば、式(7)についての連立方程式を解くことにより、干渉縞模様の画像値I(x, y)を表す関数を求めることができる。すなわち、位相変調を伴う3枚以上の複数の干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データとして干渉縞模様を表す関数を求めることができる。
【0057】
この互いに異なる位相変調を伴う複数の干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを求める機能は、データ処理装置7に設けることができる。すなわち、データ処理装置7を、互いに異なる位相変調を伴う複数の干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを求める検査データ取得手段として機能させることができる。
【0058】
尚、干渉光L4の位相変調に代えて、或いは干渉光L4の位相変調に加えて、光源2から照射されるレーザ光の波長を変えるようにしてもよい。その場合には、光の波長を変更することが可能な光源2が形状検査装置1に備えられる。そして、データ処理装置7において、異なる光の波長又は異なる位相変調量に対応する3つ以上の複数の干渉画像データに基づいて、被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データとして干渉縞模様を表す関数を求めることができる。
【0059】
一方、ホログラム原器3に記録されている干渉縞のピッチを、被検物体Oへの斜め方向の入射光L1を生成するための分波回折格子15のピッチと異なるピッチにすることもできる。この場合、ホログラム原器3又は分波回折格子15を異なるピッチを有する他のホログラム原器又は分波回折格子と置換すればよい。或いは、ホログラム原器3、分波回折格子15及び被検物体Oの少なくとも1つを傾斜させることによっても簡易に分波回折格子15に入射する光に対する実効的なピッチとホログラム原器3に入射する光に対する実効的なピッチとを互いに異なるピッチにすることができる。
【0060】
図1は、光学素子移動機構5によりホログラム原器3のみを回転移動させて所定の角度に傾斜させるようにした例を示している。すなわち、ホログラム原器3の傾斜機能によってホログラム原器3の干渉縞が分波回折格子15のピッチと異なるピッチとなるようにホログラム原器3を配置することができる。もちろん光学素子移動機構5により分波回折格子15や被検物体Oを傾斜できるようにしてもよい。
【0061】
ホログラム原器3と分波回折格子15とを互いに異なるピッチにすると、ホログラム原器3からの再生光と被検物体Oからの反射光L3との干渉により搬送波を含む非対称な干渉縞を結像面に結像させることができる。すなわち、データ処理装置7において、変位させた干渉画像を取得することができる。特に、ホログラム原器3及び分波回折格子15の少なくとも一方のピッチの適切な調整により、端部のない縞が存在しない干渉画像データを得ることができる。
【0062】
このような閉じた縞のない開いた縞のみで構成される1枚分の干渉画像データが得られれば、変位させた干渉画像データに対するフーリエ変換(FT: Fourier transform)による周波数解析によって被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを計算することができる。
【0063】
この変位させた干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを求める機能は、データ処理装置7に設けることができる。すなわち、データ処理装置7を、変位させた干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを求める検査データ取得手段として機能させることができる。
【0064】
データ処理装置7に、異なる位相変調を伴う複数の干渉画像データ又は変位させた干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状に対応する連続的な検査データを求める機能を設ければ、干渉縞における縞の間隔よりも被検物体Oの表面の凹凸のピッチが短い場合であっても、被検物体Oの表面形状を検査することが可能となる。
【0065】
(動作および作用)
次に形状検査装置1の動作および作用について説明する。
【0066】
まず図1に示すように予め被検物体Oの理想形状からの反射光L3が再生光として再生されるように縞模様が記録されたホログラム原器3を含む光学素子群及び光源2が配置されることによって形状検査装置1が構成される。そして、被検物体Oの設置位置に被検物体Oが設置される。
【0067】
また、観測される干渉縞模様に位相変調を与える場合には、光学素子移動機構5により位相変調量に応じた距離だけホログラム原器3の位置がスライドされる。更に、変位させた干渉縞模様を観測しようとする場合には、光学素子移動機構5によりホログラム原器3が所定の角度に傾斜される。ホログラム原器3のスライド量及び傾斜量は、データ処理装置7による光学素子移動機構5の制御によって自動調整することができる。
【0068】
次に、光源2からレーザ光が出力される。出力されたレーザ光はノードフィルタ9に入射し、ノードフィルタ9において明るさが調整される。ノードフィルタ9を直進したレーザ光は、レンズ10に入射して一旦絞られる。レンズ10で絞られた光からは、レンズ10の焦点近傍において空間フィルタとして設けられた第1のピンホール11により不要な成分が除去される。第1のピンホール11を経由して広がった光は第1の反射鏡12及び第2の反射鏡13に順次反射することによって更に幅が拡大された光となる。
【0069】
次に、第2の反射鏡13に反射した光はコリメータレンズ14に入射し、コリメータレンズ14において平行ビームL0に変換される。コリメータレンズ14からの平行ビームL0は分波回折格子15に入射し、分波回折格子15において被検物体Oに所定の入射角で入射する斜め方向の入射光L1と直進する直進ビームL2とに分割される。
【0070】
分波回折格子15における回折によって+1次光として被検物体Oに入射した入射光L1は、位置ごとに異なる基準面からの変位を有する被検物体Oの表面において反射する。この結果、被検物体Oからは、変位量に応じた位置ごとに異なる位相を有する反射光L3が生じる。被検物体Oからの反射光L3は、−1次方向からホログラム原器3に入射する。
【0071】
一方、分波回折格子15を直進した直進ビームL2はホログラム原器3に入射する。この直進ビームL2によってホログラム原器3からは、−1次方向に進む再生光が生じる。
【0072】
この結果、ホログラム原器3から−1次方向に進む再生光と、ホログラム原器3に−1次方向に入射して直進する被検物体Oからの反射光L3は、進行方向が同方向となるため互いに干渉する。この再生光と反射光L3との干渉光L4は、結像レンズ16に入射して絞られる。そして、結像レンズ16で絞られた干渉光L4からは、結像レンズ16の焦点近傍において空間フィルタとして設けられた第2のピンホール17により不要な成分が除去される。
【0073】
第2のピンホール17を経由して広がった干渉光L4は、結像面を形成するCCDカメラ6の受光面にて干渉縞模様として結像する。CCDカメラ6は、干渉縞模様となって結像した結像レンズ16からの干渉光L4を受光し、干渉光L4の位置ごとのエネルギに応じた強度の電気信号に変換する。これにより干渉縞模様を表す干渉画像データが生成される。生成された干渉画像データは、CCDカメラ6からデータ処理装置7に出力される。
【0074】
更に、必要な干渉画像データの収集が同様な流れで実行される。特に位相変調を伴う干渉画像データの収集を行う場合には、位相変調量を変えて同様な流れで同一の被検物体Oから異なる位相変調量に対応する3つ以上の複数の干渉画像データが収集される。例えば、位相変調量ΔφがΔφ=0, 2π/3, 4π/3の3つの値に設定されている場合には、3つの位相変調量Δφ=0, 2π/3, 4π/3に対応する干渉画像データがデータ処理装置7に収集される。
【0075】
データ処理装置7では、必要に応じて干渉画像データに基づくデータ処理が実行される。ホログラム原器3を平行にスライドさせることによって、異なる位相変調量に対応する複数の干渉画像データが収集された場合には、複数の干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状誤差を数値又は関数として表す連続的な検査データを算出するデータ処理がデータ処理装置7において実行される。また、ホログラム原器3を傾斜させことによって、変位させた干渉画像データが収集された場合には、変位させた干渉画像データに基づいて被検物体Oの形状誤差を数値又は関数として表す連続的な検査データを算出する解析処理がデータ処理装置7において実行される。
【0076】
そして、データ処理装置7において得られた被検物体Oの形状誤差を示す干渉画像データ又は連続的な検査データは表示装置8に表示される。これにより、ユーザは表示装置8に表示された干渉縞模様の干渉画像又は連続データを画像化した干渉縞模様の検査画像を観察することによって、被検物体Oの表面形状の理想形状からの誤差を確認することができる。
【0077】
図3は、図1に示す形状検査装置1によって得られた干渉縞の画像の一例を示す図である。
【0078】
図3は、形状検査装置1によりセラミックスで構成される被検物体Oの表面形状を検査して得られた干渉縞模様である。図3によれば、被検物体Oの表面形状の誤差を干渉縞模様として確認できることが分かる。
【0079】
つまり以上のような形状検査装置1は、被検物体Oに斜め方向に光を照射して得られた反射光L3とホログラム原器3からの再生光との光干渉を利用して被検物体Oの表面形状の理想形状からの誤差を干渉縞模様として測定するようにしたものである。
【0080】
(効果)
形状検査装置1によれば、被検物体Oへの入射光L1の入射角をθとすると、実効的な光の波長を1/cosθ倍に拡大することができる。すなわち、凹凸の高さが大きく非球面度の高い被検物体Oであっても表面形状の誤差を検査することが可能である。加えて、被検物体Oに斜め方向に光が照射されるため、従来よりも広い範囲の表面を検査することが可能である。
【0081】
従って、形状検査装置1によれば、従来の被検物体に対するサイズ上の制限と非球面度上の制限の双方を解消することができる。このため、形状検査装置1を多種多様な工業部品の精密測定に利用することができる。特に比較的大型の非球面や粗面の形状誤差であっても形状検査装置1により簡便かつ高速に測定することができる。例えば、切削加工面やセラミックス材料面等の粗面の表面形状を、従来のように研磨することなく測定することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態に係る形状検査装置の構成図である。
【0083】
図4に示された形状検査装置1Aでは、分波回折格子15とホログラム原器3とを互いに置換した点が図1に示す形状検査装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す形状検査装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0084】
すなわち形状検査装置1Aでは、コリメータレンズ14からの平行ビームL0を入射可能な位置にホログラム原器3が配置される。また、ホログラム原器3から回折によって斜め方向に生じる+1次再生光L5を所定の入射角で入射可能な位置に被検物体Oが配置される。更に、被検物体Oに+1次再生光L5が反射して生じた反射光L3及び平行ビームL0の進行方向と平行な方向にホログラム原器3から生じた0次再生光L6の双方を入射可能な位置に分波回折格子15が配置される。
【0085】
このような構成を有する形状検査装置1Aでは、ホログラム原器3からの位相差を伴う+1次再生光L5が所定の入射角で被検物体Oに斜め方向に入射する。そして、被検物体Oから反射して−1次方向に分波回折格子15を直進する反射光L3と、分波回折格子15における0次再生光L6の回折によって−1次方向に分波される−1次再生光との干渉光L4が結像レンズ16に入射してCCDカメラ6の受光面にて干渉縞模様として結像する。
【0086】
このため、図4に示す第2の実施形態における形状検査装置1Aによれば、図1に示す第1の実施形態における形状検査装置1と同様な効果を得ることができる。加えて、被検物体Oに、被検物体Oの理想形状に対応するホログラム原器3からの再生光を入射させることができる。すなわち、被検物体Oの表面形状の凹凸の高さ及び傾斜に最適な入射角で再生光を入射させることができる。
【0087】
このため、基準面からの変位量が大きい表面形状を有する被検物体Oであっても、良好な反射光L3を得ることにより、より明瞭な干渉画像を収集することが可能となる。換言すれば、凹凸の高さ及び傾斜が大きい自由曲面を表面形状として有する被検物体Oであっても、表面形状の理想形状に対する誤差を測定することができる。
【0088】
(第3の実施形態)
図5は本発明の第3の実施形態に係る形状検査装置の構成図である。
【0089】
図5に示された形状検査装置1Bでは、分波回折格子15をホログラム原器3に置換することによって2つのホログラム原器3A、3Bを設けた点が図1に示す形状検査装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す形状検査装置1と実質的に異ならないため同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0090】
すなわち形状検査装置1Bには、被検物体Oの理想形状に対応する再生光をそれぞれ再生する第1のホログラム原器3A及び第2のホログラム原器3Bが備えられる。
【0091】
第1のホログラム原器3Aは、コリメータレンズ14からの平行ビームL0を入射可能な位置に配置される。また、第1のホログラム原器3Aから回折によって斜め方向に生じる+1次再生光L5を所定の入射角で入射可能な位置に被検物体Oが配置される。
【0092】
一方、第2のホログラム原器3Bは、被検物体Oに+1次再生光L5が反射して生じた反射光L3及び平行ビームL0の進行方向と平行な方向に第1のホログラム原器3Aから生じた0次再生光L6の双方を入射可能な位置に配置される。
【0093】
このような構成を有する形状検査装置1Bでは、第1のホログラム原器3Aからの+1次再生光L5が所定の入射角で被検物体Oに斜め方向に入射する。そして、斜め方向に入射した+1次再生光L5によって−1次方向に生じた被検物体Oからの反射光L3と、第1のホログラム原器3Aから被検物体Oを経由しない0次再生光L6が第2のホログラム原器3Bに入射する。
【0094】
このため、第2のホログラム原器3Bからは、第2のホログラム原器3Bを直進する被検物体Oからの反射光L3と、第2のホログラム原器3Bにおける0次再生光L6の回折によって−1次方向に分波される−1次再生光による干渉光L4が生じる。
【0095】
図5に示す第3の実施形態における形状検査装置1Bによれば、第1のホログラム原器3Aからの+1次再生光L5を被検物体Oに斜め方向に入射することができるため、図4に示す第2の実施形態における形状検査装置1Aと同様な効果を得ることができる。
【0096】
(第4の実施形態)
図6は本発明の第4の実施形態に係る形状検査装置の構成図である。
【0097】
図6に示された形状検査装置1Cでは、被検物体Oの表面形状に応じた平行でない入射光L1'を被検物体Oに斜め方向に入射させるようにした点が図1に示す形状検査装置1と相違する。他の構成および作用については図1に示す形状検査装置1と実質的に異ならないため、分波回折格子15とホログラム原器3との間における構成のみを図示し、同一の構成については同符号を付して説明を省略する。
【0098】
形状検査装置1Cでは、被検物体Oの表面形状に応じた適切な入射角で入射光L1'が入射するように、平行でない入射光L1'を被検物体Oに入射させるためのレンズが設けられる。図6は、被検物体Oの表面形状が凹面であり、この凹面に適切な入射角で被検物体Oへの入射方向に向かって広がる入射光L1'を入射させるために2枚の凹レンズ20A、20Bと1枚の凸レンズ21を分波回折格子15とホログラム原器3との間に配置した例を示している。
【0099】
すなわち、第1の凹レンズ20Aが、分波回折格子15において分波された直進ビーム及び斜め方向の平行ビームの双方を入射可能な位置に配置される。また、第1の凹レンズ20Aによって幅が拡大する斜め方向の入射光L1'を適切な入射角で凹面状の表面に入射させることが可能な位置に被検物体Oが配置される。
【0100】
一方、凸レンズ21は、第1の凹レンズ20Aを経由して中心線が直進する非平行ビームL7を入射可能な位置に配置される。更に、第2の凹レンズ20Bが、幅が拡大する入射光L1'が被検物体Oの凹面に反射することによって中心線が−1次方向に生じ、かつ幅が収縮する反射光L3'及び凸レンズ21を経由して中心線が直進する非平行ビームL7の双方を入射可能な位置に配置される。また、第2の凹レンズ20Bを経由して平行ビームとなった−1次方向に進行する反射光及び第2の凹レンズ20Bを経由して0次方向に進行する平行ビームの双方を入射可能な位置にホログラム原器3が配置される。
【0101】
このような構成を有する形状検査装置1Cでは、分波回折格子15において分波された+1次方向への平行な入射光L1が第1の凹レンズ20Aにより幅が広がる入射光L1'となって所定の入射角で凹面状の表面形状を有する被検物体Oに斜め方向に入射する。このため、斜め方向に入射した入射光L1'の凹面における反射によって被検物体Oからは、幅が収縮する反射光L3'が−1次方向に生じる。
【0102】
一方、分波回折格子15において分波された0次方向への直進ビームL2も、第1の凹レンズ20Aにより中心線が0次方向に向かい、かつ幅が広がる非平行ビームL7となる。この幅が広がる非平行ビームL7は凸レンズ21に入射して幅が狭くなる非平行ビームL7となって0次方向に進行する。
【0103】
そして、幅が狭くなる非平行ビームL7は第2の凹レンズ20Bにより再び0次方向に進行する直進ビームL2となってホログラム原器3に入射する。また、被検物体Oから−1次方向に進行する幅が収縮する反射光L3'も第2の凹レンズ20Bにより平行な反射光L3となってホログラム原器3に入射する。これにより、ホログラム原器3における直進ビームL2の回折による−1次方向への再生光とホログラム原器3を−1次方向に直進する反射光L3との干渉光L4が得られる。
【0104】
尚、図6において、被検物体Oの表面形状が凸面である場合には、各凹レンズ20A、20Bを被検物体Oの表面の曲率に対応する凸レンズに置換する一方、凸レンズ21を凹レンズに置換すればよい。この場合、凸レンズを経由した幅が狭くなる入射光L1'を被検物体Oの凸面に斜め方向に入射させることが可能となる。
【0105】
図6に示す第4の実施形態における形状検査装置1Cによれば、曲率が大きい凸面状又は凹面状の表面形状を有する被検物体Oであっても、被検物体Oの曲率に合わせて幅が拡大又は収縮する非平行な入射光L1'を適切な入射角で被検物体Oに照射することができる。このため、良好な反射光L3をホログラム原器3に入射させることができる。この結果、曲率及び傾斜が大きな被検物体Oであっても、良好な精度で干渉画像データを得ることができる。
【0106】
尚、図6に示すように被検物体Oの表面形状が凹面である場合には、レンズ10、第1のピンホール11、第1の反射鏡12及び第2の反射鏡13等の光学素子4の配置及び特性を調整することによって凹面の曲率に応じて所望の拡大率で幅が拡大する発散光を得ることができる。この場合、コリメータレンズ14及び凹レンズ20Aを省略することができる。つまり、被検物体Oの曲率に合わせて幅が拡大又は収縮する非平行な光を分波回折格子15に入射させるようにしてもよい。
【0107】
他方、被検物体Oの凹面に反射した反射光L3は幅が収縮するため、凹レンズ20 B及び結像レンズ16を省略することもできる。
【0108】
また、第2又は第3の実施形態における形状検査装置1A、1Bにおいて、ホログラム原器3、3Aから被検物体Oに入射させる+1次再生光L5を、レンズによって幅が拡大又は収縮する非平行な再生光に変換して入射させるようにしてもよい。
【0109】
(第5の実施形態)
図7は本発明の第5の実施形態に係る形状検査装置の構成図である。
【0110】
図7に示された形状検査装置1Dでは、被検物体Oからの反射光L3の代わりに透明な被検物体Oを経由した透過光L8を利用して干渉光L4を生成するようにした点が他の実施形態における形状検査装置1、1A、1B、1Cと相違する。その他の構成および作用については他の実施形態における形状検査装置1、1A、1B、1Cと実質的に異ならないため、被検物体O近傍のみを図示して共通の特徴については説明を省略する。
【0111】
形状検査装置1Dでは、透明な被検物体Oを経由した透過光L8が干渉光L4の生成に用いられる。図7は、分波回折格子15からの入射光L1、L1'又はホログラム原器3、3Aからの+1次再生光L5が入射する被検物体Oの表面と反対側の裏面に第3の反射鏡30を設けた例を示している。
【0112】
この場合、所定の入射角で透明な被検物体Oに斜め方向に入射した入射光L1、L1'又は+1次再生光L5の一部は、被検物体Oの材質に対応する屈折率に応じた屈折角で屈折して被検物体Oの内部に斜め方向に進行する。被検物体Oの内部に斜め方向に進行した入射光L1、L1'又は+1次再生光L5は、第3の反射鏡30において反射する。これにより、第3の反射鏡30からの反射光が被検物体Oの内部を斜め方向に進行する。この反射光は、被検物体Oの屈折率に応じた屈折角で屈折し、被検物体Oの透過光L8として被検物体Oの外部に斜め方向に進行する。
【0113】
従って、被検物体Oの表面形状に応じて被検物体Oの内部における光路長が変化する。このため、被検物体Oの表面形状に応じて位相が変化した被検物体Oの透過光L8がホログラム原器3、3B又は分波回折格子15に−1次方向に入射する。これにより、被検物体Oの透過光L8を利用した干渉光L4を得ることができる。
【0114】
尚、被検物体Oの表面形状に応じて位相が変化する透過光L8を得ることができれば、所望の光学素子群を所定の位置に配置することによって形状検査装置1Dを構成することができる。従って、第3の反射鏡30を設けずに、被検物体Oの裏面側において透過光L7の進行方向を横切る位置にホログラム原器3、3B又は分波回折格子15を配置して形状検査装置1Dを構成してもよい。
【0115】
図7に示す第5の実施形態における形状検査装置1Dによれば、他の対応する実施形態における形状検査装置1、1A、1B、1Cと同様な効果を得ることができる。
【0116】
(他の実施形態)
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0117】
1、1A、1B 形状検査装置
2 光源
3、3A、3B ホログラム原器
4 光学素子
5 光学素子移動機構
6 CCDカメラ
7 データ処理装置
8 表示装置
9 ノードフィルタ
10 レンズ
11 第1のピンホール
12 第1の反射鏡
13 第2の反射鏡
14 コリメータレンズ
15 分波回折格子
16 結像レンズ
17 第2のピンホール
20A、20B 凹レンズ
21 凸レンズ
30 第3の反射鏡
L0 平行ビーム
L1、L1' 入射光
L2 直進ビーム
L3、L3' 反射光
L4 干渉光
L5 +1次再生光
L6 0次再生光
L7 非平行ビーム
L8 透過光
O 被検物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物体の理想形状に対応する再生光を再生するホログラム原器と、
前記被検物体に所要の入射角で斜め方向に光を入射する一方、前記ホログラム原器に光を入射することによって、前記被検物体に反射した反射光又は前記被検物体を経由した透過光と前記ホログラム原器からの前記再生光との干渉光による干渉画像を取得する結像手段と、
を備える形状検査装置。
【請求項2】
前記結像手段は、前記ホログラム原器の再生光を前記被検物体に斜め方向に入射させるように構成される請求項1記載の形状検査装置。
【請求項3】
被検物体に所要の入射角で斜め方向に光を入射する一方、前記被検物体の理想形状に対応する再生光を再生するホログラム原器に光を入射するステップと、
前記被検物体に反射した反射光又は前記被検物体を経由した透過光と前記ホログラム原器からの前記再生光との干渉光による干渉画像を取得するステップと、
を有する形状検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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