説明

形状測定方法および装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鏡面物体に好適な物体の形状を測定するための形状測定方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】各種工業分野において、物体の立体形状測定は製品の組立て、検査、さらに工程の自動化等に欠かすことのできない重要な技術である。また、これらの各分野の製品においては、例えばオートバイのマフラー、あるいは切削、研磨加工された物体等、その表面が鏡面状態、あるいは光沢度の高い状態となっている物体が多々存在する。
【0003】その表面が鏡面状態、あるいは、光沢度の高い状態(以下、光沢面と記す)を有する物体(以下、単に光沢物体と記す)の立体形状測定は、その物体表面で光が正反射するため、一般の拡散反射面を有する物体を対象とした立体形状測定法をそのまま適用することは不可能である。
【0004】このため従来より光沢物体を対象とした立体形状測定方法が種々試みられてきた。例えば、図4に特公平7−58172号で提案されている立方形状測定装置を示す。この例は同一軸X上に一定の距離Bをおいて設置された2個の拡散点光源Ll ,Lr と、それらの拡散点光源と空間的に等価な位置に置かれた2台のITVカメラCl ,Cr とによって構成された光沢物体の立体形状測定装置の例である。図4において、対象物Tは二つの拡散点光源Ll ,Lr によって同時に照射される。ここで、対象物面上のi番目の点をPti 、拡散点光源Ll から点Pti へ出た光の光路をRli 、拡散点光源Lr から点Pti へ出た光の光路をRri とすると、拡散点光源Ll から対象物T上のa4番目の点Pta4へ出た光路Rla4の光は、点Pta4で正反射し、光路R′la4を通りITVカメラCr に入射する。
【0005】一方、拡散点光源Lr から出たある特定の光路Rra4の光は、拡散点光源Llからの光路と全く同一の光路を逆に進み、点Pta4で正反射し光路R′ra4を通りITVカメラCl へ入射する。各ITVカメラへの光の入射角θla4,θra4は、各ITVカメラの結像面Il ,Ir 上における光点Qla4,Qra4の位置とITVカメラの焦点距離Fより算出することができる。対象物T上の反射点Pta4の位置は入射角θla4,θra4および2台のITVカメラ間の距離Bを用いて三角測量の原理によって得ることができる。対象物Tの立体形状は、対象物Tを回転、あるいは移動しながら上記測定を繰り返し行うことにより求められる。この手法は拡散点光源の移動、あるいは照射タイミングの切替え等の可動機構等を必要とせず、固定した拡散点光源とITVカメラのみの簡単な構成で光沢物体の立体形状を測定できるという点において優れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記方法においては、光沢物体の立体形状の測定に関して、一方の拡散点光源から出てそれと異なる位置にあるITVカメラへ入射する光のみを扱っている。しかしながら、実際の測定においては、対象物の形状、あるいは対象物の位置によっては、ある拡散点光源から出た光がそれと同一位置にあるITVカメラに入射する場合が生じる。
【0007】例えば、図4の例において、拡散点光源Ll から出たある特定の光路Rlb4の光は、対象物T上のある点Ptb4で正反射し、光路Rlb4と同一の光路R′lb4を戻りITVカメラCl へ入射し、光点Qlb4を結ぶ。同様に、拡散点光源Lrから出たある特定の光路Rrc4の光は、対象物T上の点Ptc4で正反射し同一光路R′rc4を戻りITVカメラCr へ入射し、光点Qrc4を結ぶ。
【0008】この結果、ITVカメラCl の結像面Il には拡散点光源Lr からの光による光点Qla4と、拡散点光源Ll からの光による光点Qlb4の二つの光点が同時に存在することとなる。また、ITVカメラCr の結像面Ir には拡散点光源Llからの光による光点Qra4と、拡散点光源Lr からの光による光点Qrc4の二つが同時に存在することとなる。このため、ITVカメラの結像面上の光点に関し、どの光点が点Pta4からの反射光によるものか不明となり、その位置の算出が不可能となる。
【0009】上述のように特公平7−58172号の提案ではITVカメラと異なる位置にある拡散点光源からの入射光についてのみしか扱われておらず、ITVカメラと同一位置にある拡散点光源からの入射光については何ら考慮されていない。このため実際の測定においては、ITVカメラ結像面に光点が二つ現れた場合、測定点位置算出に用いる光点の特定不能、あるいはITVカメラ結像面間の光点の誤対応が生じ、測定点位置算出が不能となる問題を有しているという点において、上記提案には未だ改善すべき点が残っていた。そこで、本発明の目的は、測定性能を向上した鏡面物体の形状測定方法および装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために、請求項1の発明は、同一軸上に一定の距離を置いて2つの拡散点光源を設置し、各々の前記拡散点光源と空間的にほぼ同一位置に2台の撮像装置を設置し、前記各々の拡散点光源から測定対象物に光を投射し、該測定対象物より反射した光を各々の撮像装置で撮像する工程と、前記各々の撮像装置の結像面上における光点を検出する工程と、前記光点の数を記憶する工程と、前記結像面上の光点の位置を検出する工程と、当該検出位置を記憶する工程と、前記結像面上の光点が複数の場合、前記撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別する工程と、前記判別した光点の位置のみを検出する工程と、前記各々の撮像装置への反射光の入射角、前記各々の撮像装置のカメラパラメータ、および前記拡散点光源、前記各々の撮像装置の設置位置に関する幾何学的値より前記測定対象物の光の反射点の空間的位置を算出する工程とを具えたことを特徴とする。
【0011】請求項2の発明は、同一軸上に一定の距離を置いて架台上に設置された2つの拡散点光源と、各々の前記拡散点光源と空間的にほぼ同一位置に設置され、前記各々の拡散点光源から測定対象物に投射された光の該測定対象物より反射した光を撮像する2台の撮像装置と、各々の前記撮像装置の結像面上の光点を検出すると共に該光点の数を記憶し、前記結像面上の光点の位置をそれぞれ検出すると共にその検出位置を記憶し、前記結像面上の光点が複数の場合、前記撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別し、この判別した光点の位置のみを取り出す光点信号処理装置と、前記各々の撮像装置への反射光の入射角をそれぞれ算出し、前記各々の撮像装置のカメラパラメータ、および前記拡散点光源、前記各々の撮像装置の設置位置に関する幾何学的値より前記測定対象物の光の反射点の位置を算出する形状演算装置とを備えたことを特徴とする。
【0012】請求項1,2の発明では、撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別し、撮像装置と同一位置にある拡散点光源からの反射光による光点を除去し、異なる位置にある拡散点光源からの反射光による光点のみを検出する。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0014】図1は本実施例を上面から見た構成を示す。図1において、Tは測定対象物、Ll ,Lr は拡散点光源、Cl ,Cr はITVカメラ、Ml ,Mr はハーフミラーであり、それぞれは架台Kの上に設置されている。またS11L、およびS11Rは光点信号処理装置、そしてS12は形状演算装置である。
【0015】測定系の座標軸は架台Kの長手方向にX軸を、そのX軸に垂直にY軸、Y′軸をそれぞれ図1のように取り、X軸とY軸の交点を原点Oとし、X軸とY′軸の交点をO′とする。ハーフミラーMl ,Mr はそれぞれ交点O、およびO′に設置され、その面はX軸に対し、例えば、角−45°、および角+45°を有している。拡散点光源Ll ,Lr はY軸、およびY′軸上でO,O′より負方向に各々距離Dの位置に設置されており、また、ITVカメラCl ,Cr はそのレンズ主点がX軸上でO,O′より各々距離Dの位置で、かつその光軸がX軸と一致するように設置されている。
【0016】すなわち、左右どちらの構成も、ハーフミラーから拡散点光源までの距離、およびハーフミラーからITVカメラまでの距離は等距離Dであり、拡散点光源とITVカメラの位置は等価的に同一となっている。またこの時、ITVカメラCl ,Cr 間、および拡散点光源Ll ,Lr 間の距離をBとすると、Y軸、Y′軸間の距離はB−2Dである。
【0017】本構成において、拡散点光源Ll ,Lr は同時に対象物T全体を照射する。拡散点光源Ll より対象物Tに向けて投射された光は、ハーフミラーMl を通過し対象物T全面を照射する。対象物Tの表面は光沢面である。従って、投射された光は全てその面上で正反射される。この時、対象物T面上のi番目の点をPtiで表わすものとすると、a1番目のある特定の光路Rla1の光のみが対象物T上の点Pta1で正反射され光路R′la1を通り、さらにハーフミラーMr で反射されITVカメラCr へ入射する。拡散点光源Lr に関しても、そこから出たある特定の光路Rra1の光のみが対象物T面上の点Pta1で反射され、光路R′ra1を通り、ハーフミラーMl を経てITVカメラCl へ入射する。ここで光路Rla1とR′ra1、およびRra1とR′la1は光の正反射の法則により全く同一の経路となり、測定系の幾何学的条件によって唯一定まる経路である。
【0018】一方、対象物Tの形状、あるいは位置によっては、拡散点光源Ll から対象物Tに投射された光のうち上記光路Rla1とは異なるある特定の光路Rlb1の光は、対象物T面上のb1番目の点Ptb1で正反射され、光路Rlb1と同一で逆向きの光路R′lb1を通りさらにハーフミラーMl で反射され拡散点光源Ll と同一の位置にあるITVカメラCl に入射する。同様に、拡散点光源Lr から対象物Tに投射されたある特定の光路Rrc1を通る光は、対象物T面上の点Ptc1で正反射され、その光路と同一で逆向きの光路R′rc1を通りさらにハーフミラーMr を経てITVカメラCr へ入射する。従って、このような場合にはITVカメラCl 、およびCr のそれぞれの結像面には複数(2つ)の光点が結像することとなる。
【0019】光点信号処理装置S11L、およびS11Rは、各ITVカメラの結像面上の光点の数、およびそれらの光点の位置を検出し、もし光点が複数であった場合にはそのITVカメラの位置と異なる位置の拡散点光源による光点の位置のみを取出す。形状演算装置S12は光点信号処理装置S11L、およびS11Rから得られた各結像面上の光点位置をもとに対象物T上の反射点Pta1の位置を三角測量の原理によって算出する。
【0020】図2を用いて本実施例の測定原理を説明する。図2においてTは測定対象物で凸物体(含、平面物体)であるものとし、その面上のi番目の点をPti (xi,yi )で表わす。Ll ,Lr は拡散点光源である。Cl ,Cr はITVカメラで、その焦点距離を共にFとする。
【0021】ここで、ITVカメラCl ,Cr は、そのレンズ主点がそれぞれ点O,O′の位置で、かつそれらの光軸が各々Y,Y′軸に一致するように設置されており、また、拡散点光源Ll ,Lr は各々点O,O′の位置に設置されているものとする。なお、この構成は図1に示した実施例の光学系に対し等価である。
【0022】測定系の座標軸X,Y、およびY′を図のように定める。Y軸、Y′軸はそれぞれX軸に垂直で、X軸とY軸の交点を原点O、X軸とY′軸の交点をO′とする。座標軸Y,Y′間の距離はBである。ITVカメラの結像面座標系に関して、ITVカメラCl の結像面Il 上の座標軸をU、ITVカメラCr の結像面Ir 上の座標軸をWとする。U軸はY軸の−Fの位置でX軸と平行、Y軸に垂直で、かつその向きはX軸と逆方向である。Y軸とU軸の交点を原点Ou とする。W軸はY′軸の−Fの位置で、X軸と平行、Y′軸に垂直で、かつその向きはX軸と同方向である。Y′軸とW軸との交点を原点Ow とする。また、U軸、およびW軸上のi番目の光点の位置を一般にQli (ui )、およびQri (wi )で表わすものとする。
【0023】対象物Tは光沢物体である。従って、拡散点光源Ll から対象物Tに向けて投射された全ての光、すなわちi番目の光路Rli の光は、対象物T面上の点Pti (xi ,yi )で正反射され光路R′li の光となる。この時、光の正反射の法則より、ある特定の光路Rla2の光のみが特定の点Pta2(xa2,ya2)で正反射され、光路R′la2を通りITVカメラCr へ入射し、W軸上に光点Qra2(wa2)を結ぶ。対象物Tへ照射された他の光路Rli (i≠a2)の光も対象物T面上の点Pti (xi ,yi )(i≠a2)で正反射されるが、それらの光はITVカメラCr へは入射しない。同様に、拡散点光源Lr から対象物Tに向けて投射された全ての光、すなわち光路Rri の光も点Pti (xi ,yi )で正反射され光路R′ri の光となるが、それらの光のうち、ある特定の光路Rra2の光のみが特定の点Pta2(xa2,ya2)で正反射され、光路R′ra2を通りITVカメラCl へ入射し、U軸上に光点Qla2(ua2)を結ぶ。
【0024】特定の点Pta2(xa2,ya2)に関する光路Rla2とR′ra2、および光路Rra2とR′la2は、向きが逆で、かつ同一の光路を有している。すなわち一方の拡散点光源から出て対象物で正反射し、他方の位置にあるITVカメラへ入射する光の光路は、それぞれの拡散点光源について全く同一の逆の経路であり、これは対象物が凸物体である限りただ一つ定まるものである。
【0025】ここで、X軸と光路Rli との成す角をθli 、X軸と光路Rri との成す角をθri とすると次式が成立する。
【0026】
【数1】


【0027】
【数2】


【0028】上式より、対象物T上の点Pti (xi ,yi )の位置は一般に次式で求められる。
【0029】
【数3】


【0030】
【数4】


【0031】従って、点Pta2(xa2,ya2)の位置は次式となる。
【0032】
【数5】


【0033】
【数6】


【0034】上式で示される様に、2台のITVカメラの各結像面における光点間の対応が得られた場合、対象物上の測定点の位置は、それぞれのITVカメラの結像面における光点の位置ui ,wi 、ITVカメラ間の距離B、およびITVカメラの焦点距離Fを用いて求めることができる。
【0035】一方、ある拡散点光源から出た光のうち、その光路がある特定の条件を満たした光は、対象物T面上のある点で正反射し、往きの光路を逆向きに戻り拡散点光源と同一位置にあるITVカメラへ入射する。すなわち、拡散点光源Ll から投射された特定の光路Rlb2の光は、点Ptb2(xb2,yb2)で反射し、光路Rlb2と同一で逆の光路R′lb2を通りITVカメラCl へ入射し、U軸上に光点Qlb2(ub2)を結ぶ。この結果、ITVカメラCl の結像面Il には拡散点光源Lr からの光による光点Qla2(ua2)と、拡散点光源Ll からの光による光点Qlb2(ub2)の二つの光点が同時に存在することとなる。
【0036】同様に、拡散点光源Lr から出た光のうち特定の光路Rrc2の光は、点Ptc2(xc2,yc2)で反射し、それと同一で逆の光路R′rc2を通りITVカメラCr へ入射し、W軸上で光点Qrc2(wc2)を結ぶ。従ってITVカメラCr の結像面Ir にはITVカメラCl と同様に二つの光点Qra2(wa2)、およびQrc2(wc2)が存在することとなる。
【0037】ここで、拡散点光源の光路と対象物の法線の関係を考える。
【0038】図に示すように、対象物T上の点Pti (xi ,yi )における接平面に対する垂直線を法線Ni とし、X軸と法線Ni との成す角をθxni (xi ,yi )、光路Rli と法線Ni との成す角をθrni (xi ,yi )とする。この時、角θrni (xi ,yi )は次式で表わされる。
【0039】
【数7】θrni(xi,yi)=θxni(xi,yi)−θli(xi,yi)また、拡散点光源Ll から出た光が点Pti (xi ,yi )で正反射しITVカメラCr に入射するためには、光路Rli とR′li はBを底辺とする三角形を構成しなければならない。従って、角θrni (xi ,yi )は常に次の条件を満足しなければならない。
【0040】
【数8】θrni(xi,yi)>0すなわち、
【0041】
【数9】θxni(xi,yi)>θli(xi,yi)一方、i=b2の時、拡散点光源Ll から出た光が点Ptb2(xb2,yb2)で正反射し、その拡散点光源と同一位置にあるITVカメラCl に入射する場合には光路Rlb2と法線Nb2が一致しなければならない。
【0042】
【数10】θrnb2(xb2,yb2) =0すなわち、
【0043】
【数11】θxnb2(xb2,yb2) =θlb2(xb2,yb2)ここで、対象物が凸物体であるとすると、xi >xb2の時、その曲率Kは常にK≧0となる。従って、点Pti (xi ,yi )に関して次式が成立する。
【0044】
【数12】
θxni(xi,yi)≧θxnb2(xb2,yb2) (xi>xb2)一方、点Pti (xi ,yi )がオクルージョンなしに観測されるためには、点Ptb2(xb2,yb2)を通る直線(光路)Rlb2に関して点Pti (xi ,yi )は常にその負の領域になければならない。この時、次式が成立する。
【0045】
【数13】
θlb2 (xb2,yb2) >θli(xi,yi) (xi>xb2)従って、数11式、数12式および数13式より次の関係が成立する。
【0046】
【数14】
θxni(xi,yi)≧θxnb2(xb2,yb2) >θli(xi,yi) (xi>xb2)上式より、xi >xb2の時、条件θxni (xi ,yi )>θli (xi ,yi )の関係が常に成立する。すなわち、数9式の条件を満足するためには、xi>xb2でなければならない。図2において、点Pta2(xa2,ya2)の位置はPtb2(xb2,yb2)より常に右側、すなわち、X軸に関しxa2の位置はxb2より常に大きな位置となる。従って、常にθlb2(xb2,yb2)>θla2(xa2,ya2)が成立する。この結果、結像面Il のU軸上における光点Qla2(ua2)の位置は光点Qlb2(ub2)よりも常に大きな値(ua2>ub2)となる。
【0047】同様に、ITVカメラCr に関して、点Pta2(xa2,ya2)の位置はPtc2(xc2,yc2)より常に左側、すなわち、X軸に関してxa2がxc2より常に小さな位置となる。この時、常に角θlc2(xc2,yc2)>θla2(xa2,ya2)である。従って、結像面Ir のW軸上における光点Qra2(wa2)の位置は光点Qrc2(wc2)よりも常に大きな値(wa2>wc2)となる。
【0048】すなわち、ITVカメラの結像面における光点の位置は、他の位置にある拡散点光源からの反射光による光点の位置は、そのITVカメラと同一位置にある拡散点光源による光点の位置より常に大きな値となる。従って、その結像面上の光点位置を比較することにより、どちらの拡散点光源による光点かを判別可能である。
【0049】このような原理により光点を判別する光点信号処理装置S11L、およびS11Rの内部構成を図3R>3に示す。図3において光点信号処理装置S11Lは光点検出回路31L、光点位置検出回路32L、光点判別回路33Lより構成されている。同様に光点信号処理装置S11Rは光点検出回路31R、光点位置検出回路32R、光点判別回路33Rより構成されている。
【0050】光点検出回路31L、および31RはITVカメラCl 、およびCr 各々の映像信号を入力とする。光点検出回路31L、および31Rは各入力映像信号に関し、スレッショルド回路による信号レベル検出等の周知の手法により光点と背景の信号を分離、結像面の光点を検出し、その数を記憶する。光点位置検出回路32L、および32RはITVカメラの水平、あるいは垂直走査方向について、その走査信号のスタート時より光点検出回路31L,31Rで検出された光点までの時間を計数する等の周知の手法により、その光点位置を検出し、その値を記憶する。光点判別回路33L、および33Rは、光点検出回路31L,31Rで検出された光点数のデータに基づき、光点が二つある場合には光点位置検出回路32L,32Rで検出された光点位置を比較し、その位置の大きい光点のみを検出する。また、光点が一つの場合にはその光点の位置を取り出す。
【0051】形状演算装置S12は光点信号処理装置S11L、およびS11Rにより得られた光点位置より、数3式、数4式に基づき対象物上の点Pti の位置を算出する。
【0052】
【発明の効果】以上述べた様に、請求項1,2の発明では、撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別し、撮像装置と同一位置にある拡散点光源からの反射光による光点を除去し、異なる位置にある拡散点光源からの反射光による光点のみを検出する。これにより対象物の形状、位置、あるいは測定装置の設置位置等の測定系の幾何学的構成条件に拘束されることなく対象物の立体形状測定が可能であり、各種産業分野に広く適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の測定原理を示す説明図である。
【図3】本発明実施例の光点信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の光沢物体の形状測定法を示す構成図である。
【符号の説明】
T 測定対象物
l ,Lr 拡散点光源
l ,Cr ITVカメラ
l ,Mr ハーフミラー
l ,Ir ITVカメラ結像面
K 架台
S11L,S11R 光点信号処理装置
S12 形状演算装置
31L,31R 光点検出回路
32L,32R 光点位置検出回路
33L,33R 光点判別回路
F ITVカメラ焦点距離
B ITVカメラ間の距離、拡散点光源間の距離
C ITVカメラとハーフミラー間の距離、拡散点光源とハーフミラー間の距離
Rl,Rr 拡散点光源からの光の光路
R′l,R′r 測定対象物で反射した光の光路
Pt 測定対象物上の点
Ql,Qr ITVカメラ結像面上の光点
N 法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 同一軸上に一定の距離を置いて2つの拡散点光源を設置し、各々の前記拡散点光源と空間的にほぼ同一位置に2台の撮像装置を設置し、前記各々の拡散点光源から測定対象物に光を投射し、該測定対象物より反射した光を各々の撮像装置で撮像する工程と、前記各々の撮像装置の結像面上における光点を検出する工程と、前記光点の数を記憶する工程と、前記結像面上の光点の位置を検出する工程と、当該検出位置を記憶する工程と、前記結像面上の光点が複数の場合、前記撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別する工程と、前記判別した光点の位置のみを検出する工程と、前記各々の撮像装置への反射光の入射角、前記各々の撮像装置のカメラパラメータ、および前記拡散点光源、前記各々の撮像装置の設置位置に関する幾何学的値より前記測定対象物の光の反射点の空間的位置を算出する工程とを具えたことを特徴とする形状測定方法。
【請求項2】 同一軸上に一定の距離を置いて架台上に設置された2つの拡散点光源と、各々の前記拡散点光源と空間的にほぼ同一位置に設置され、前記各々の拡散点光源から測定対象物に投射された光の該測定対象物より反射した光を撮像する2台の撮像装置と、各々の前記撮像装置の結像面上の光点を検出すると共に該光点の数を記憶し、前記結像面上の光点の位置をそれぞれ検出すると共にその検出位置を記憶し、前記結像面上の光点が複数の場合、前記撮像装置の位置と異なる位置の拡散点光源からの反射光による光点と他の拡散点光源による光点とを比較し、その位置の大きい光点のみを異なる位置の前記拡散点光源からの反射光による光点の位置として判別し、この判別した光点の位置のみを取り出す光点信号処理装置と、前記各々の撮像装置への反射光の入射角をそれぞれ算出し、前記各々の撮像装置のカメラパラメータ、および前記拡散点光源、前記各々の撮像装置の設置位置に関する幾何学的値より前記測定対象物の光の反射点の位置を算出する形状演算装置とを備えたことを特徴とする形状測定装置。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【特許番号】特許第3044285号(P3044285)
【登録日】平成12年3月17日(2000.3.17)
【発行日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−312411
【出願日】平成7年11月30日(1995.11.30)
【公開番号】特開平9−152320
【公開日】平成9年6月10日(1997.6.10)
【審査請求日】平成7年11月30日(1995.11.30)
【審判番号】平10−3679
【審判請求日】平成10年3月5日(1998.3.5)
【出願人】(000001144)工業技術院長 (75)
【指定代理人】
【識別番号】220000356
【氏名又は名称】 220000356 工業技術院電子技術総合研究所長
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 平5−26619(JP,A)
【文献】特公 平7−58172(JP,B2)