説明

形状測定装置および形状測定方法

【課題】検出用走査を行うことなく、ワンショット撮影により、高さ方向のダイナミックレンジの大きい、被検面の1ライン上の微細な凹凸形状情報を容易に取得し得る、形状測定装置および形状測定方法を提供する。
【解決手段】 空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源10からの照明光を、対物レンズ13A、Bを介して参照面14および被検面20に照射し、得られた参照光と測定光を干渉させ、その干渉光をスリット16Aにより線状に整形し、分光器16により分光し、2次元撮像手段17により得られたスペクトル干渉情報に基づき被検面20の形状を解析する。光源10、被検面20、スリット16A、および光源10、参照面14、スリット16Aは各々互いに共役である。被検面20を介する系路の光路長と、参照面14を介する経路の光路長との間にオフセットが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸表面形状の測定等に用いられる形状測定装置および形状測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、微細な表面形状を測定する光学装置として、コンフォーカル顕微鏡が知られている。コンフォーカル顕微鏡は、焦点の合った部分だけが明るく撮像される特性を有しており、高分解能な計測を可能とし得るという、利点を有している。しかし、その一方で、被検面の断面形状(1ラインの形状プロファイル)を得るためには、高さ方向(Z方向)と横方向(X方向)の2方向に(2次元的に)走査する必要があり、測定の効率化が図れない。そこで、コンフォーカル顕微鏡において、対物レンズに色収差を付与し、高さ方向(Z方向)の走査を不要にする技術が知られている。この技術においては、送光側のピンホールから白色光を射出し、被検面からの反射光をコンフォーカル系で受光側のピンホールに導き、この受光側のピンホールを通過した光を分光系で分光して分光信号を得るようにしている。対物レンズに色収差を付与することでいずれかの波長の光が被検面表面に集光し、集光した波長の光検出強度が高くなることを利用して、高さ方向(Z方向)の走査なしに被検面の高さ情報を検出することができるようにしている。なお、Z方向のダイナミックレンジは与えた色収差の量に依存する。
【0003】
また、一般に低コヒーレンス干渉計においては、エンベロープ(光強度信号の包絡線)のピークを探索するために、測定光と参照光との光路長差をスキャンしながら干渉信号を繰り返し取得する必要があり、測定の効率化が図れないため、例えば、下記特許文献1に示される低コヒーレンス干渉計のように、上記スキャンする範囲の幅を縮小して測定の効率化を図り得るようにしたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−122043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した対物レンズの色収差を利用したコンフォーカル顕微鏡においても、被検面の断面形状(1ラインの形状プロファイル)を測定するためには少なくとも横方向(X方向)の1次元走査が必要となることから、測定の効率化には自ずと限界があった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載されている低コヒーレンス干渉計においても光路長差のスキャン範囲の幅は縮小できるものの、スキャン自体をなくすことができるものではなく、やはり測定の大幅な効率化を図ることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、高さ方向のダイナミックレンジを大きくとることができ、検出用の走査なしに、ワンショット撮影により、被検面の1ライン上の凹凸形状情報を容易に取得し得る、形状測定装置および形状測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明を例示する形状測定装置の一態様は、
空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源からの照明光を光分割手段により2系路に分割して一方を被検面に、他方を参照面に各々導くとともに、前記被検面と前記参照面からの前記照明光の反射光を光重畳手段により互いに重畳させて干渉させ、該干渉させた光により生成されるスペクトル干渉情報を取得する干渉計と、前記光分割手段により2系路に分割された平行光が前記光重畳手段により重畳されるまでの各々の系路中に配される対物レンズとを備え、
前記スペクトル干渉情報を取得する手段は、前記干渉させた光を線状に通過させるスリットを備えた分光器と、この分光器により分光された分光信号によるスペクトル干渉情報を取得する2次元撮像手段を備えるとともに、この2次元撮像手段により取得されたスペクトル干渉情報に基づき前記被検面の形状を解析する形状解析手段を備え、
前記光源、前記被検面および前記分光器のスリットが互いに共役となる位置に配されるとともに、前記光源、前記参照面および前記分光器のスリットが互いに共役となる位置に配され、
前記光源から前記被検面を介して前記スリットに至る光路長と、前記光源から前記参照面を介して前記スリットに至る光路長との間に干渉可能な範囲内でオフセットが設けられてなる、ことを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明を例示する形状測定方法の一態様は、
空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源から射出された照明光を光分割手段により2系路に分割して一方を被検面に、他方を参照面に各々導くとともに、前記被検面と前記参照面からの前記照明光の反射光を光重畳手段により互いに重畳させ、干渉させてスペクトル干渉情報を取得し、取得されたスペクトル干渉情報を解析して前記被検面の表面形状を測定する形状測定方法において、
前記光源、前記被検面および前記分光器のスリットを互いに共役となる位置に配するとともに、前記光源、前記参照面および前記分光器のスリットを互いに共役となる位置に配し、
前記光源から前記被検面を介して前記スリットに至る光路長と、前記光源から前記参照面を介して前記スリットに至る光路長との間に干渉可能な範囲内でオフセットを設け、
前記スペクトル干渉情報を取得する際には、前記干渉光を前記スリットに通して線状に整形し、この整形された干渉光を分光器により分光せしめて、分光信号を撮像し、
この後、取得したスペクトル干渉情報に基づき前記被検面の形状を解析する、ことを特徴とするものである。
【0010】
なお、上述した「面状の光源」には、光射出領域が2次元的に広がる光源のみならず、光射出領域が元々またはマスク等により、スリット状(1ラインも含む)に形成された場合も含むものとする。また、「面状の光源」がスリット状(1ラインも含む)に形成されている場合には、そのスリットの長手方向と、前記分光器のスリットの長手方向が、互いに対応する向きに配置する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の形状測定装置および形状測定方法によれば、高さ方向のダイナミックレンジを大きくとることができ、検出用の走査なしに、ワンショット撮影により、被検面の1ライン上の凹凸形状情報を容易に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1(変型例を含む)に係る形状測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例2(変型例を含む)に係る形状測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る形状測定装置の2つの実施例および各々の変形例について説明する。
【0014】
<実施例1>
実施例1における形状測定装置1は、図1に示すように、ビームスプリッターを中心として十字形状をなす干渉計タイプに構成されており、被検面情報を有するスペクトル干渉縞を解析して被検面の微小な表面形状を測定するものである。
【0015】
すなわち、図1に示すように、形状測定装置1は、白色光を射出する面光源10と、この面光源10からの発散光を平行光に変換するコリメートレンズ11と、この平行光を2系路に分割するとともに、一度分割した2つの光を再度重畳させるビームスプリッター12と、該2系路の各々に配される対物レンズ13Aおよび対物レンズ13Bと、対物レンズ13Aの焦点位置に配された参照面14と、対物レンズ13Bの焦点位置に配された被検面20を有する被検体21を所定位置に保持する被検体保持手段22と、ビームスプリッター12で重畳された干渉光を集光させる集光レンズ15と、該集光レンズ15の焦点位置にスリット16Aが配され、このスリット16Aの像を結像させる分光器16と、このスリット16Aの像が結像され、該干渉光によるスペクトル干渉縞が撮像される2次元撮像素子17と、この2次元撮像素子17により得られたスペクトル干渉縞による干渉情報を解析して被検面20の表面形状を解析する解析手段18と、解析された被検面20の表面形状を表示する表示手段23を備えている。さらに、コリメートレンズ11とビームスプリッター12の間に配された照明側の絞り19Aと、ビームスプリッター12と集光レンズ15の間に配された検出側の絞り19Bと、を備えている。
【0016】
なお、上記面光源10は、空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源からなり、例えば、点光源素子をアレー状に配列したものである。
【0017】
また、面光源10、被検面20および分光器16のスリット16Aは互いに共役となる位置に配されるとともに、面光源10、参照面14および分光器16のスリット16Aとも互いに共役となる位置に配される。
【0018】
また、上記面光源10としては、光射出領域をスリット状に形成(光射出領域が元々スリット状に形成されていてもよいし、マスク等により遮光して光射出領域をスリット状に形成してもよい)すれば、ノイズ等の不要光の混入を防止することができる。ただし、面光源10をスリット状(1ラインも含む)に形成した場合には、そのスリットの長手方向と、前記分光器のスリットの長手方向を、互いに対応するような向きに配置する。
【0019】
また、面光源10から被検面20を介してスリット16Aに至る光路長と、面光源10から参照面14を介してスリット16Aに至る光路長との間に干渉可能な範囲内(コヒーレンス長の範囲内)でオフセットが設けられている。
【0020】
また、分光器16は、スリット16Aと分光手段である回折格子(図示せず)と結像光学系(図示せず)を有してなり、スリット16Aを通過した1ラインの干渉光を回折格子に入射させ、この回折格子により、干渉光をスリット16Aの幅方向に一度に回折させ、空間分解方向(スリット長手方向)の広がりと波長分解方向(スリット幅方向)の広がりとを有する分光信号とする。
【0021】
また、2次元撮像素子17上には、分光器16によりスリット16Aの像が結像され、スリット16Aを通過した干渉光に係る被検面形状情報(分光器16により得られた分光信号)を1次元位置情報と波長情報(高さ情報)として受光する。
【0022】
解析手段18は、2次元撮像素子17から出力された分光信号を演算処理し、被検面20の微小な凹凸表面形状を求め、これを、図示しない記憶手段に格納するとともに、必要に応じて表示手段(表示画面あるいはプリンタ等)23に出力する。
【0023】
次に、本発明の実施例に係る形状測定方法について図1を用いて説明する。
【0024】
面光源10の各点光源から射出された光はコリメートレンズ11で平行光に変換される。なお、コリメートされた平行光の光軸に対する角度、方位は、面光源10上の射出点の座標で決まる。
【0025】
コリメートされた平行光は照明側の絞り19Aを経て、ビームスプリッター12で測定光と参照光に2分割される。分割された2つの光のうち、参照光は対物レンズ13Aによって参照面14上に、測定光は対物レンズ13Bによって被検面20上に、各々集光する。
【0026】
上記面光源10と上記参照面14は共役の位置に配されており、面光源10の像が参照面14上に結像される。参照面14で反射した光(光源10の各点からの光)は対物レンズ13Aで平行光に戻され、ビームスプリッター12を透過し、集光レンズ15によって分光器16のスリット16A上に集光される。すなわち、面光源10、参照面14および分光器16のスリット16Aが互いに共役な位置関係にある。
【0027】
他方、上記面光源10と上記被検面20は共役の位置に配されており、面光源10の像が被検面20上に結像される。被検面20で反射した光(面光源10の各点からの光)は対物レンズ13Bで平行光に戻され、ビームスプリッター12で反射されて、集光レンズ15によって分光器16のスリット16A上に集光される。すなわち、面光源10、被検面20および分光器16のスリット16Aが互いに共役な位置関係にある。
【0028】
スリット16Aから分光器16内に入射した測定光と参照光の干渉光は、この分光器16内に配された回折格子により分光され、結像光学系により2次元撮像素子17上に結像される。これにより、2次元撮像素子17上に、被検面20の表面形状情報に応じたスペクトル干渉縞が形成される。
【0029】
2次元撮像素子17により得られたスペクトル干渉縞の情報は、解析手段18に送出され、測定光と参照光の光路長差に応じて、変調周波数および位相が異なる分光強度信号が求められる。ここで、測定光と参照光の間には所定の光路長差(オフセット)が付与されているので、上記分光強度信号は、比較的高い周波数の正弦波状の強度信号となる。このようにして、変調周波数および分光強度信号を求めることにより、被検面20の高さ方向(Z方向)の形状を、高精度に求めることができる。このような原理は、干渉光をスペクトル分解し、撮像素子にて検出し、その検出信号をフーリエ変換して被検面高さ方向の光強度プロファイルを得るフーリエドメイン方式として知られている。なお、この強度信号は、光源スペクトル形状との積として得られる。
【0030】
被検面20の表面形状の各位置におけるZ方向高さ(基準位置からのずれ量)に対応して各々光路長差が異なるので、上記分光強度信号も被検面20の各位置からの反射光毎に、正弦波状の周波数が異なることになる。この分光強度信号を光の波数でフーリエ解析すれば光の波数毎の複素振幅の位相を求めることができるので、対応する測定光と参照光の光路長差を求めることができる。具体的には、2次元撮像素子17により得られた分光強度信号を光の波数でフーリエ変換し、その信号成分をバンドパスフィルターで抽出し、逆フーリエ変換することにより、その際に求められた光路長差から被検面15の高さ方向の情報を求めることができ、被検面20の表面形状を求めることができる。
【0031】
ところで、上記被検面20に凹凸形状が存在している場合に、分光器16のスリット16A上において、参照光の光スポットが十分に小さな径で形成されているのに対し、測定光の光スポット径はその凹凸の大きさに応じて広がってしまう。
【0032】
しかし、空間的にインコヒーレントな光を射出する面光源10を用いて、参照光と測定光の干渉成分を抽出しているので、測定光のスポット広がりがあっても、この測定光と隣接する点光源からの参照光とのクロストークは生ぜず、正確な信号解析が可能である。
【0033】
そして、スペクトル干渉縞を分光器16で分光して検出しているので、1回の撮像(シングルショット)により断面測定(1ラインの形状プロファイル測定)に必要な情報が得られ、振動等の外乱に強い測定が可能となる。
【0034】
<変形例>
ところで、被検面20の表面の凹凸がさらに大きくなると、分光器16のスリット16Aを通過する光が弱くなり、S/Nの劣化が起こり、さらには検出そのものが困難になる。
【0035】
そこで、図1の実施例装置の変型例では、ビームスプリッター12と被検面20との間に配された対物レンズ13Bに所定の色収差を付与している。
【0036】
すなわち、参照光に関しては上述した実施例1の基本形の装置の場合と同様であるが、測定光に関しては、対物レンズ13Bに付与された色収差の効果により、波長に応じて被検面20上での集光点の高さが異なる。したがって、被検面20の各位置の高さに応じて、分光器16のスリット16A上に集光する光の波長が異なる。分光器16で分光され、2次元撮像素子17により撮像された分光強度信号(スペクトル干渉縞)は、被検面20の各位置の高さに応じたエンベロープピークをもち、かつ、測定光と参照光の光路長差に対応した変調周波数および位相情報を有する。
【0037】
そこで、この分光強度信号を光の波数によりフーリエ解析することで、干渉成分に係るエンベロープおよび位相情報を求めることができる。
【0038】
また、この位相情報からは、下述の如く、光路長差を求めることができるが、対物レンズ13Bの色収差が既知であれば(別途、校正などにより求める)、干渉光を用いたことにより得られたエンベロープのピーク位置情報に基づき、高い分解能を維持しつつ効率よく被検面20の高さを求めることもできる。そして、面光源10から射出された光のうち、いずれかの波長の光により面光源10と被検面20の各点が共焦点状態になり、このような共焦点状態における分光強度信号を利用してこの被検面20の表面形状を解析しているので、横方向にボケのない高い横分解能での計測が可能になる。
【0039】
なお、位相情報に基づき光路長差を求める際に、光路長差を(n+σ/2π)λ(ただし、nは整数、λは波長、σは位相)で表わしたとすると、nが不定であるので、このnを決定する必要がある。なお、位相σが複数の波長λについて求められているので、複数の波長に対して矛盾のないようにnを決定する。
【0040】
また、得られた正弦波信号の周波数スペクトルのピーク位置、あるいは上述したエンベロープのピーク位置の波長から求めた光路長差の付近で、矛盾がないような値に光路長差を決定することになる。
【0041】
また、被検面20に凹凸が存在すると、共焦点状態とはならない波長の測定光も多く存在することになるが、これらは分光器16のスリット16A上で広がってしまう。
【0042】
この変型例においても上記基本形の場合と同様に参照光のスポット径に変化はなく十分に小さなスポットを形成しているものの、空間的にインコヒーレントな光を射出する面光源10を用いて、参照光と測定光の干渉成分を抽出しているので、測定光のスポット広がりによる、隣接する点光源からの参照光とのクロストークは生ぜず、高精度な信号解析が可能である。
【0043】
この後、解析手段18により解析された被検面20の表面形状が、表示手段23上に表示される。
【0044】
また、面光源10をインコヒーレントな複数の点光源を配列するようにして構成し、分光器16のスリット16A上に、該点光源配列に対応したマスク配列(スリット16Aの、点光源に対応した部分以外は遮光するマスクパターン)を設けてもよい。これにより、不要光の混入を防止できるので、S/Nを高めることができる。
【0045】
また、SLD(スーパー・ルミネッセント・ダイオード)等のスペクトル幅の広い、空間的にある程度以上のコヒーレント性を有する光源に、回転拡散板(デコヒーラ)等のコヒーレンス解消機能をもった素子を組み合わせて、インコヒーレントな光を射出する面光源部を構成してもよい。
【0046】
また、上記ビームスプリッター12と被検面20との間に配された対物レンズ13Bは、テレセントリック性を備えたものであることが望ましい。これは、被検面20上の凹凸高さによらず、正しい横座標に対する高さ情報を検出できるためである。
【0047】
また、被検面20の表面形状において傾斜が大きい場合には、対物レンズ13A、13Bの検出側のNAを、対物レンズ13A、13Bの照明側のNAよりも小さく設定することが望ましい。具体的には、絞り19Bを絞り19Aよりも小さく設定する。
このように設定することにより、分光器16のスリット16A上での測定光スポットの位相分布の傾きを小さくでき、参照光スポットとの局所的な干渉縞の空間周波数を小さくでき、画素平均化の影響を低減することができる。
【0048】
ここで、上記実施例1に係る装置と、先行技術として示した、対物レンズに色収差を付与したコンフォーカル顕微鏡において、送光側および受光側のピンホールを複数個配列した系との比較を行った場合、この先行技術に係る系では、共焦点状態からずれ、測定光の光スポットが拡大された場合、その光が、受光側の隣接するピンホールに混入してしまい、隣接するピンホールの測定結果に誤差を生じてしまう。これに対して上記実施例1のものでは、インコヒーレントな光を用いることにより、その被検面20上の各位置からの干渉情報毎に分離抽出することができるので、隣接する位置から混入する測定光の影響を受けずに高精度な測定が可能となる(混入する光は参照光と干渉せず、DC成分が増加するだけなので、その後の信号解析によって除去することができる)。さらに、実施例1の発明においては干渉信号の位相情報(エンベロープのピーク位置情報等)を利用できるので、高さ方向(Z方向)の測定も高い分解能を維持することができる。
【0049】
<実施例2>
以下、実施例2における形状測定装置101について、図2を用いて説明する。
【0050】
実施例2に係る形状測定装置101は、上述した実施例1に係る形状測定装置1と同様の機能および特徴を有しているので、重複した機能を有する部材については、その説明を省略し、実施例1において対応する部材に付した数字に100を加えた数字を符号として与える。また、上述した実施例1の装置との主たる差異については以下に説明する。
【0051】
実施例1の形状測定装置1においては、面光源10からの光を分割する光分割手段と、参照光と測定光を重畳させる光重畳手段とが、1つのビームスプリッター12により構成されているが、この実施例2の形状測定装置101においては、光分割手段がハーフミラー112Aにより、他方、光重畳手段がハーフミラー112Bにより、各々独立に構成されており、また、ハーフミラー112Aにより分割された参照光の光路を参照面114方向に折り曲げるハーフミラー112Cと、ハーフミラー112Aにより分割された測定光の光路を被検面120方向に折り曲げるハーフミラー112Dと、を備えている。
【0052】
また、実施例1の形状測定装置1においては、照明側の絞り19Aと検出側の絞り19Bが各々1つずつ設けられているが、この実施例2の形状測定装置101においては、分割後の参照光の光路中において、照明側の絞り119Aaと検出側の絞り119Baが各々1つずつ設けられるとともに、分割後の測定光の光路中において、照明側の絞り119Abと検出側の絞り119Bbが各々1つずつ設けられる点において相違している。このように、分割後の参照光および測定光の光路中において、各々照明側の絞りと検出側の絞りを設け、NAを独立して調整可能とすることにより、横分解能、測定可能な被検面傾斜量およびクロストーク量等を指標にした系の最適化を行うことができる。
【0053】
なお、実施例2の変形例として、ハーフミラー112Dと被検面120との間に配された対物レンズ113Bに所定の色収差を付与したものが挙げられる。この実施例2の変型例も、上記実施例1の変型例と同様の作用効果を得ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の形状測定装置および形状測定方法としてはこれらに限られるものではなく、その他の種々の変更態様を採用することができる。例えば、装置の光学配置としても種々の態様の変更が可能であり、レンズや絞りの配置も適宜変更可能であり、例えば図1に示す実施例1に係る形状測定装置1において、絞り19A、19Bに替え、ビームスプリッター12と対物レンズ13Aの間、およびビームスプリッター12と対物レンズ13Bの間に、各々絞りを配設してもよい。
【0055】
なお、上記被検面の全面に亘って形状測定を行いたい場合には、分光器のスリットの幅方向と対応する方向に被検面を走査しながら、本発明に係る形状測定を行うと効率的である。
【符号の説明】
【0056】
1、101 形状測定装置
10、110 面光源(光源部)
11、111 コリメートレンズ
12 ビームスプリッター
13A、13B、113A、113B 対物レンズ
14、114 参照面 15、115 集光レンズ
16、116 分光器
16A、116A スリット
17、117 2次元撮像素子
18、118 解析手段
19A、19B、119Aa、119Ab、119Ba、119Bb 絞り
20、120 被検面 21、121 被検体
22、122 被検体保持手段
23、123 表示手段
112A、112B、112C、112D ハーフミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源からの照明光を光分割手段により2系路に分割して一方を被検面に、他方を参照面に各々導くとともに、前記被検面と前記参照面からの前記照明光の反射光を光重畳手段により互いに重畳させて干渉させ、該干渉させた光により生成されるスペクトル干渉情報を取得する干渉計と、前記光分割手段により2系路に分割された平行光が前記光重畳手段により重畳されるまでの各々の系路中に配される対物レンズとを備え、
前記スペクトル干渉情報を取得する手段は、前記干渉させた光を線状に通過させるスリットを備えた分光器と、この分光器により分光された分光信号によるスペクトル干渉情報を取得する2次元撮像手段を備えるとともに、この2次元撮像手段により取得されたスペクトル干渉情報に基づき前記被検面の形状を解析する形状解析手段を備え、
前記光源、前記被検面および前記分光器のスリットが互いに共役となる位置に配されるとともに、前記光源、前記参照面および前記分光器のスリットが互いに共役となる位置に配され、
前記光源から前記被検面を介して前記スリットに至る光路長と、前記光源から前記参照面を介して前記スリットに至る光路長との間に干渉可能な範囲内でオフセットが設けられてなる、ことを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記光分割手段により分割された平行光のうち、前記被検面を介する系路中に配される対物レンズに所定の色収差が付与されていることを特徴とする請求項1記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記形状解析手段により前記スペクトル干渉情報を解析して得られた位相情報に基づいて、前記被検面の形状を求めることを特徴とする請求項1または2記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記形状解析手段により前記スペクトル干渉情報を解析して得られた変調周波数情報に基づいて、前記被検面の形状を求めることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記形状解析手段により前記スペクトル干渉情報を解析して得られたエンベロープの強度情報に基づいて、前記被検面の形状を求めることを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記光源が、空間的にインコヒーレントな光を各々射出する点光源アレーからなり、
前記分光器のスリット上に、上記点光源アレーのアレー配置に対応する配置とされたマスクアレーを設けたことを特徴とする請求項1から5のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記光源が、空間的にコヒーレントな光源と、この光源から射出された光をインコヒーレントな光に変換するデコヒーラとにより構成されることを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記光分割手段により分割された平行光のうち、前記被検面を介する系路中に配される対物レンズがテレセントリック性を有するように構成されていることを特徴とする請求項1から7のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記光分割手段により分割された平行光のうち、前記被検面を介する系路中に配される対物レンズの検出側のNAが、該対物レンズの照射側のNAよりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項1から8のうちいずれか1項記載の形状測定装置。
【請求項10】
空間的にインコヒーレントで広帯域スペクトルを有する光を射出する面状の光源から射出された照明光を光分割手段により2系路に分割して一方を被検面に、他方を参照面に各々導くとともに、前記被検面と前記参照面からの前記照明光の反射光を光重畳手段により互いに重畳させ、干渉させてスペクトル干渉情報を取得し、取得されたスペクトル干渉情報を解析して前記被検面の表面形状を測定する形状測定方法において、
前記光源、前記被検面および前記分光器のスリットを互いに共役となる位置に配するとともに、前記光源、前記参照面および前記分光器のスリットを互いに共役となる位置に配し、
前記光源から前記被検面を介して前記スリットに至る光路長と、前記光源から前記参照面を介して前記スリットに至る光路長との間に干渉可能な範囲内でオフセットを設け、
前記スペクトル干渉情報を取得する際には、前記干渉光を前記スリットに通して線状に整形し、この整形された干渉光を分光器により分光せしめて、分光信号を撮像し、
この後、取得したスペクトル干渉情報に基づき前記被検面の形状を解析する、ことを特徴とする形状測定方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−24734(P2013−24734A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160035(P2011−160035)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】